「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(第1回)


  1. 日 時:平成25年2月8日(金)17:40〜18:50
  2. 場 所:官邸4階大会議室
  3. 出席者:
    「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」メンバー
     岩間 陽子政策研究大学院大学教授
     岡崎 久彦特定非営利活動法人岡崎研究所所長・理事長
     葛西 敬之東海旅客鉄道株式会社代表取締役会長
     北岡 伸一国際大学学長・政策研究大学院大学教授
     坂元 一哉大阪大学大学院教授
     佐瀬 昌盛防衛大学校名誉教授
     佐藤 謙公益財団法人世界平和研究所理事長(元防衛事務次官)
     中西 寛京都大学大学院教授
     西 修駒澤大学名誉教授
     村瀬 信也上智大学教授
     【座長】柳井 俊二 国際海洋法裁判所長(元外務事務次官、元駐米大使)
        (田中 明彦委員、西元 徹也委員は欠席)
     
    政府側
     安倍 晋三内閣総理大臣
     菅 義偉内閣官房長官
     加藤 勝信内閣官房副長官
     世耕 弘成内閣官房副長官
     礒崎 陽輔内閣総理大臣補佐官
     杉田 和博内閣官房副長官
     兼原 信克内閣官房副長官補
     櫻井 修一内閣官房副長官補
     (その他、内閣法制局、内閣府国際平和協力本部事務局、外務省、防衛省から各1名のオブザーバーが出席。)
     
  4. 議事概要
    (1)安倍総理から挨拶として、我が国の平和と安全を維持するために、我が国は何をなすべきか、過去4年半の、更に将来見通し得る我が国をめぐる安全保障環境の変化を念頭に置いて、改めて、柳井座長の下、再び議論いただきたい旨発言があった。
    (2)柳井座長から、2006年に安倍総理からの諮問を受けて取りまとめた「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書を安倍総理に手交し、2008年の懇談会報告書の結論を説明。また、柳井座長は国際海洋法裁判所長の職にあり、ハンブルク在住であり、懇談会の会合に毎回は出席できないことから、北岡委員に座長代理への就任を依頼し、北岡座長代理を中心に検討を行っていくこととなった。
    (3)菅官房長官から、今回のテーマは、我が国の安全保障政策の根幹に関わる問題であり、現在進めている防衛大綱の見直し作業や日米ガイドライン改定に大きな影響を与えることとなると思っている旨発言があった。
    (4)最後に礒崎総理補佐官から、次回会合については、座長、副座長及び委員の日程を勘案し、追って決めることとしたい旨説明があった。


  5. 意見概要
    ○ 委員から概要以下の発言があった。
    自らの個別的自衛権が発動されることが十分あり得るという前提で大丈夫かということをまず見なければならない。その際に、曖昧な形で、国家及びそれに類する集団からの攻撃なのかどうか本当に分からないというような状況からエスカレーションが起こっていくことがあり得るという前提で、日本の法的基盤はそれに対応できるのかということを見ていかなければならない。どの時点で、首相官邸からのトップダウンに変えていけるのか、それが、警察権から個別的自衛権・防衛出動への移行ということともある程度関わると思う。
    アメリカ海軍の一番の希望は、第七艦隊のパトロールに自衛艦隊が参加することである。第七艦隊はタスク・フォースを組んでパトロールを行っていることから、これに日本の艦隊が参加できればよい。報告書は米艦のみの防護を取り上げているが、これを「日本の安全保障と密接な関係がある国」としなければならない。敵から攻撃を受けた場合に、現在では武器等防護以外では反撃できないが、これでは米軍と一緒に行動できず、この点を直さなければならない。タスク・フォース参加の都度、総理の指示によって、「自衛権の行使は、自衛艦あるいは密接な関係のある国の艦船に対して、これを必要とするような外部からの武力攻撃が生起した事態であること、及び、当該武力攻撃に対抗し、それを排除するために合理的に必要と判断される限度であること」とすべきであり、そうしておかなければ突然攻撃があった場合は、防衛出動が発動されていないので、武器等防護以外はできない。
    前回の懇談会における報告書は、当時としては野心的であったと思うが、現在の環境の変化に際しては、やはり見直すべきではないかと思う。もともと国家があって憲法があるのであって、憲法があって国家があるわけではない。したがって、国の生存権に関わるような問題については、憲法の条文というのは、柔軟に弾力的に解釈すべきだと思う。憲法で許されるものを限定列挙するという形はやめたほうがいいと思う。集団的自衛権の行使は一般的に可能であり、こういう場合はこれを差し控えなければならないというふうに、原則と例外を変えるような方向を議論の中にとらえておくべきではないかと思う。
    我が国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しており、日米同盟の抑止力を強化する必要性は言うまでもない。同盟協力とは相互協力であり、その相互協力の法的基盤を強化する必要性が増している。集団的自衛権の行使を認める必要がある。これまでのようにいかなる場合でも集団的自衛権の行使はできないという姿勢のままでは、強い相互協力はできないと考えている。
    2004年6月の政府答弁書は、「憲法第9条は、外部からの武力攻撃によって国民の生命や身体が危険にさらされるような場合にこれを排除するために必要最小限度の範囲で実力を行使することまでは禁じていないと解している」としているが、この中の「国民の生命や身体」という文言を、「自国民又は他国民の生命や身体」と変更することはできないか。憲法前文に、「国際社会における名誉ある地位を占めたい」とあるが、国際社会における名誉ある地位とは、国際環境と国力の関数である。国際環境と国力が変化した今、これまで自国民を守る必要最小限のものしかできないと言われた憲法解釈を変更すべきである。
    4類型、とりわけ第1、第2類型は、5年前において問題意識に上った事案についてのものであって、当時は、今日・明日の問題への目配りがなかった。具体的には、例えば2001年の9.11型の非国家主体であるテロリスト集団の「攻撃」に際して、安保理はこれを事実上武力攻撃であると見なし、集団的自衛権の行使を許容した。日本は9.11のようなケースが起きた場合に、今後集団的自衛権の行使を断念し続けるのかということである。これは、国家主体の武力行使ではなく、非国家主体による武力行使であったが、そういう問題が現に起きてきている。
    サイバー攻撃に対する対応をどうするのか、これは、自衛権の問題であるというのだったら、直ちに出てくるのは、集団的自衛権の問題であるのかという議論である。
    結局、類型をあげて対処を考えていくということでは、イタチごっこになる。1981年の政府見解そのものを廃棄する必要がある。
    前回我々が検討を行った時と比べると、我が国をめぐる情勢は格段に厳しくなっている。我が国と地域の平和と安定のために、日米同盟の強化を推し進めることが必須である。集団的自衛権の行使を認めることは、日米同盟の信頼性を高めるという基本的重要性を持つが、こういう事態である以上、日米の共同行動、協力を進めなければならない。その内容を充実させ、高めていくためには、集団的自衛権の問題はぜひ解決しておかなければならない。日米ガイドラインの見直し中であるが、その内容を充実し、実効的ならしめるためにも、是非とも早く集団的自衛権の問題を解決しておくべきである。
    憲法解釈で行使を認めるとして、実際それを行使するためには、自衛隊法等の法制度が必要であるが、そのときの発動基準・発動手続を運用上支障のないようにする必要がある。例えば、現在の自衛隊法第76条の防衛出動といった手続で果たして必要な場合の集団的自衛権の行使ができるのか、いとまのないような場合はどうするのかということを議論していきたい。もう1点は、個別的自衛権に関係する分野である。我が国の場合は、防衛出動が下令されないと自衛権が発動できないこととなっているが、防衛出動が下令される以前の緊急事態があるわけであり、それに対してどのように対応するのかということを、新たな環境を踏まえたふさわしい法的基盤として議論していくべきである。
    防衛出動に至るプロセスについて法的な制度を改めて検討する必要がある段階にあるということであろう。とりわけ、国連安保理に侵略・侵害があったということを報告する手続と防衛出動とが並行的に行われると思うが、そういうプロセスがどのように展開するかということを踏まえながら、政府が対応できる制度を考えておくことが必要である。
    サイバーセキュリティについては、世界的にも法的なコンセンサスが得られていないが、それをどう扱うかという問題がある。
    4類型では、海軍の問題を扱っているが、航空監視等の共同任務の問題も含めて考える必要があると思う。
    アメリカ以外の国との関係、とりわけ東南アジア諸国、オーストラリア、韓国等を含めた国から何らかの支援を要請された時にどのように対応するかということも検討しておく必要がある。
    憲法9条は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」また、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」「国の交戦権は、これを認めない。」と全部、否定形で書かれている。したがって、憲法解釈としては、本来は否定されているものをきちんと考えるべきであり、後は政策判断であると考えている。しかし内閣法制局は、何ができる、何ができる、という積み立てなので、隙間が出てきた。その隙間が限界に達し、それが4類型という形で問題提起されたと思う。我々の報告は出ているので、あとは実行に移していただきたい。何を検討してどういう結論を出したのか、まずは分かりやすく問題点を広報する活動をする必要がある。
    集団的自衛権の対象国としては、アメリカが中心であるが、集団的自衛権の適用範囲をオーストラリア、インド等に拡大して考えていく必要がある。
    いわゆるマイナー自衛権に関わるが、今の状況では、自衛権の行使イコール武力行使であり防衛出動であり、自衛権発動の要件があるが、それ以外は全部、非自衛権たる武器の使用ということになっている。武力行使なり自衛権の行使、武器の使用、その曖昧な部分を、ぜひきちんと押さえなければならない。例えば中国の艦船による火器レーダー照射について、他の国であれば自衛権で対応するのであろうと思うが、日本の場合はどうなのか、武器等防護になるのかどうか、その辺の自衛権の考え方をもう少しきちんと押さえなければならないと思う。今までの議論を踏まえながら、まだ曖昧になっているところを是非詰めていくべきである。
    いわゆるグレーゾーンについて、今は2つのグレーゾーンの問題があると思う。1つは、域外的な執行活動であり、海賊やテロリズム、邦人救護の問題は基本的には法執行活動を域外で行うということである。アフガニスタンも基本的にはそのように理解している。この域外的な法執行活動というものが我が国ではきちんと整理されていないと思う。これは自衛権とは別のカテゴリーで説明しなければならない。法制的にもそれを確保しなければいけないと思う。もう1つのグレーゾーンは、いわゆる低水準の戦闘活動にどう対応するのかということである。これを日本ではマイナー自衛権という形で説明してきたが、それは非常に曖昧であったと思う。レーダー照射もそれ自体は武力攻撃ではなく、武力による威嚇でもない。ただ、それが何度も繰り返される場合、集合的な概念として、それが武力による威嚇や武力の行使に至るということは国際法上も議論されている。