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アジア・ゲートウェイ戦略会議(第1回)
議 事 要 旨


日 時:平成18年11月8日(水)16:00〜17:30
場 所:官邸南会議室(3階)
出席者:安倍内閣総理大臣、塩崎内閣官房長官、根本内閣総理大臣補佐官、伊藤委員(座長)、氏家委員、白石委員、中北委員(座長代理)、中村委員、深川委員

○根本内閣総理大臣補佐官 それでは、ただいまから「アジア・ゲートウェイ戦略会議」の第1回の会合を開催させていただきます。私は総理補佐官を務めている根本でございます。委員の皆様におかれましては、今日は大変多忙な中、お集まりを賜りまして、本当にありがとうございます。それでは、最初に会議の開催に当たりまして、当会議の議長である安倍内閣総理大臣よりごあいさつをさせていただきます。

○安倍内閣総理大臣 「アジア・ゲートウェイ戦略会議」の第1回目の会合に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。委員の先生方におかれましては、大変お忙しい中、委員をお引き受けいただきましたことをまずもって厚く御礼を申し上げる次第であります。私の所信表明演説の中におきまして、ヒト、モノ、カネ、情報、文化の流れにおいて、日本がアジアと世界の架け橋となるアジア・ゲートウェイ構想を打ち出したわけでございます。
 日本の成長にとりましては、世界の成長センターであるアジアの成長をこの日本にしっかりと引き込んでいくことが不可欠ではないかと、このように考えております。そのためにもアジアとオープンな関係を構築していくことが重要であると考えております。
 また、アジアの、そして世界の人材や情報が日本に集まり、そして日本から世界に発信されていく。つまり、そのように日本が世界にとって、アジアにとって極めて魅力的な場所になっていくことが重要であると考えております。これがまさに日本の強さになっているのではないかと思います。産業やブランド力に限らず、アニメや音楽、映画などのコンテンツ、食文化や伝統文化、国際的なイベントや各般の人材の交流に至るまで、日本がアジア、そして世界にとっての中核となり得る、限りない可能性が日本にはあるのではないかと、私はこのように確信をいたしております。
 この構想の具体化に際しまして、まとめ役を根本補佐官にお願いをしているわけでありますが、根本補佐官の助力の下にこのアジア・ゲートウェイ構想、ひいては成長戦略を具体化して、日本の未来に向けて新たな活力を生み出していきたいと思います。
 先生方におかれましては、それぞれの御見識を生かしていただきまして、ゲートウェイ構想をすばらしいものにまとめ上げていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○根本内閣総理大臣補佐官より出席者の紹介があった。

○議長より伊藤元重委員が座長に任命された。

○座長より中北委員が座長代理に指名され、委員の了承を得た。

○根本内閣総理大臣補佐官より、会議の運営方法について確認があり、委員の了承を得た。

○伊藤座長 それでは、根本内閣総理大臣補佐官に代わりまして、議事進行を務めさせていただきたいと思います。早速議事に入りたいと思いますが、委員の皆様に討議いただく前に、まず根本内閣総理大臣補佐官より、アジア・ゲートウェイ構想に関する基本的な考え方及びこの戦略会議の目標などについて、御説明をお願いしたいと思います。

○根本内閣総理大臣補佐官 お手元に資料1、資料2と用意させていただいております。フリーディスカッションでこれから議論を詰めていきたいと思いますが、一つのたたき台的なものが必要だということで、用意をさせていただきました。
 最初の「アジア・ゲートウェイ戦略会議について」の資料1でありますが、まず「1.目的・ねらい」。これは今、安倍総理からもお話がありました。所信表明にもあるとおり、アジアなど海外の成長や活力を日本に取り込むことが重要な課題となっております。世界に誇れる自然、歴史、文化、伝統を改めて評価し、これはいわゆる日本のカントリーアイデンティティーを再確認することではないかと思いますが、美しい国、日本の魅力を世界にアピールする。更に新たな創造と成長を目指して、オープンな経済社会を構築して、日本がアジアと世界の架け橋となる「アジア・ゲートウェイ構想」を推進するという目的・ねらいで議論をいただきたいと思います。
 「2.検討の方向」でありますが、これまでも経済財政諮問会議やいろんな省庁の懇談会、審議会におきまして、グローバル化、オープン、イノベーション、競争力強化、さまざまなテーマで提言がとりまとめられております。今回の戦略会議では、総理所信のアジア・ゲートウェイ構想に掲げられた項目やイノベーションを始めとする今までの答申・提言なども含めて、幅広く意見交換を行いまして、新たな成長戦略につながる政策についても戦略をとりまとめることとしたいと思います。
 「3.検討の進め方」でありますが、会議では、あるべき姿だけではなくて、できるだけ具体的な内容についても議論の対象とさせていただきたい。正式なこのメンバーによる会議の開催以外にも、適宜、各分野の専門家、実務家等々から広くヒアリングを実施して、その成果を反映させていただきたいと思います。
 なお、今回のこの戦略会議は、霞が関の視点だけにとらわれずに、広く内外の意見を直接聞き取りたいということも考えておりますし、各分野、各省横断的な政策課題にも対応していきたいと思います。霞が関に経済産業省あるいは財務省、いろいろな省庁がありますが、今までの政策決定は霞が関から官邸に上がってくるというルートが通常のルートでありましたが、今回はこの「アジア・ゲートウェイ戦略会議」の中で、外部の情報や知恵を取り入れる。要は政策決定を複線型にしていくというねらいも持って運営していただいたらどうかと思っております。
 「4.スケジュール」でありますが、年内に基本的考え方についてとりまとめて、諮問会議等に提示をさせていただきたいと思います。年度内をめどに政策課題を抽出し、6月ごろまでに具体的な方針や政策手法などをとりまとめることとしたいと思います。ただ、議論の過程でもう具体的に既に動かしていった方がいいテーマについては、この議論の中で適宜、対外的に政策として打ち出して、進めていきたいと思います。
 次に資料2でありますが「アジア・ゲートウェイ構想のイメージ」ということで、たたき台をつくらせていただきました。
 「I.アジア・ゲートウェイ構想推進のねらい〜今、日本に何が求められているか〜」という項目で整理をさせていただいております。
 今の日本は、長い経済の停滞のトンネルを抜け出して、未来への展望が開ける中で、創造と成長を目指して、世界に開かれた魅力と活力にあふれた美しい国をつくるという段階に来ているのではないかと思います。4つの観点から、アジア・ゲートウェイ構想を推進したいと思います。
 「1.発信する日本(日本の魅力、強みを高める)」ということで、日本は自然、歴史、文化、伝統の資源が全国に豊富な存在しておりますし、これらの魅力や強みを高めて、美しい日本の魅力を世界にアピールする。これが1つの視点。
 「2.開かれたアジアの成長を支える〜日本がアジアや世界にとっての中核となる〜」という観点が必要なのではないか。1.で書いてありますが、自由と規律のある開かれたアジアに向けて、日本が責任ある役割を果たす。更に人・モノ・サービス、資金、文化、情報の流れにおいて、しっかりとした位置づけを確保することが重要なのではないかと思います。特に日本が先行している環境、エネルギー、防災等の分野でもアジアへの貢献が重要ではないかと思います。
 「3.アジア・世界の成長を日本に取り込む〜『オープン』なくして『成長』なし〜」ということだと思います。今アジアは発展をしておりますが、アジアの成長や活力を日本に取り込む。その点では国内でも国際的に遜色のない制度改革を進めて、協調的で開放的な国づくりにつなげるという視点が重要なのではないかと思います。
 こういう視点の下に、これからのアジア・ゲートウェイ構想の実現をするために必要なことということで、横断的な視点で5つほどの切り口に整理をさせていただきました。
 「1.日本の魅力、強みを高める〜日本らしさを世界に発信する〜」という視点。「2.『開かれたアジア』の成長を支える〜オープンなアジアづくり〜」という視点。「3.『オープン』な日本を構築し、新たな創造と成長を目指す〜国内の諸制度の改善・インフラ機能の強化〜」という視点。「4.アジア・ゲートウェイ構想を推進するための地域戦略〜官民が一体となった戦略的な地域活性化〜」が必要ではないかという視点。「5.アジアで、世界で活躍できる日本に向けて〜人材育成、社会・組織力カルチャーの変革〜」。こういう5つの横断的な視点で、具体的なアジア・ゲートウェイ構想を進めていったらどうだろうかと考えております。
 多少繰り返しになりますが、アジア・ゲートウェイ構想推進のポイントとしては、あるべき姿ではなくて、できるだけ具体的な内容についても議論の対象としたい。官邸主導によって横断的な視点で課題解決に取り組みたいと思います。
 また、構想についてはスピーディーに実効性のある政策として、機動的、戦略的に取り組んでいきたいと思います。
 私の方からは、アジア・ゲートウェイ構想のイメージにつきまして、多少雑駁な説明になりましたが、説明に代えさせていただきます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、本日は第1回の会議でございますので、委員の皆様全員から、自己紹介もかねまして、このアジア・ゲートウェイ構想に関して、重要と考えられる論点について、順次まず御発言をいただきたいと思います。
 では、最初に座長代理の中北さんの方からお願いします。

○中北委員 中北でございます。よろしくお願いします。
 私はもともと外交官をやっておりましたけれども、今からかれこれ30年前に民営化いたしまして、当時、英国にも留学しておりましたので、その後、学者を続けております。現在は金融とミクロの産業組織を中心に国際経済学を学んでおります。
 今、たたき台を補佐官の方から詳しく御説明いただきました。私は基本的にこのたたき台で大変共感を覚えますし、大きい枠組みは基本的には齟齬はないといいますか、同じ認識を持っております。ただ、諸前提といいますか、現在を踏まえて、今後どういう状況になっていくかということをもう少し詰めておく必要があるのではないかという感じを持っております。幾つか手短にお話しさせていただきます。
 1つ目は、勿論、成長戦略の一環としてアジアとのオープンな関係を構築していく。これはもう言うべきもないと思いますし、経済外交を再構築していくという意味でも重要だと思いますが、やはり具体的に重要なのは中国の問題ではないかと思います。
 中国の経済成長に関してはオリンピックまで、あるいは上海万博までという見方が支配的なようでありまして、それはそれで私も非常に説得力はあると思います。しかし、日本の戦後の高度成長を見ますと、ちょうどオリンピックの後にもう陰りが見えた。それで転換期だ、低成長だと、多くの主流派のエコノミストがとらえまして、実はそれが大きく間違ったという経過がございます。むしろ、在野の少数のエコノミストが高めの成長を主張しまして、それが次々に当たった。結果的にはどうなったかといいますと、いわゆるいざなぎ景気へとつながっていって、戦後、世界にも類例のない長い成長を続けて、その結果、日本は押しも押されもせぬ経済大国にのし上がった。この点が私はある意味で重要だと思います。
 勿論、だからといって、中国の経済がこのままずっと安定的に成長するというつもりはありません。しかし、やはり一度成長過程に乗り続けた経済は強い。ましてや中国に関しては、特に今日最後の論点にございましたが、人的資本、ヒューマンキャピタルは大変なものがあると思います。つまり、考える力、吸収していく意欲。これは残念ながら日本には今かなり欠けている。大学を見てもそうでありますし、企業のダイナミズムを見ても、ここはむしろよく観察して、我々もしっかり学ぶ必要があると思います。エズラ・ボーゲル氏によりますと、アメリカのハーバードに留学しているアジアの留学生は、もう量だけではなくて質においても中国が日本人留学生をいよいよ凌駕したということを先日、個人的に語っておられました。技術水準は中国があるところまで達したとはいえ、まだまだギャップがあります。管理能力もまだ低いわけですから、今後更に吸収の余地は高いと思います。したがって、ポテンシャルには成長力は高いと私は見ております。
 特にセオドア・シュルツというアメリカのノーベル賞をもらった経済学者がおりますけれども、彼はやはり人的な投資、教育も含めてでありますが、市場のメカニズムが内外の信頼を得ながら発展していく、この重要性を強調しております。一言で言うと、そういう経過を通じて、中国は普通の先進国に変わっていくというのは時間の問題ではないかと改めて強調したいと思います。
 2点目はそれを踏まえて、日中関係。この力関係の変化だと思います。これまでは日本はキャッチアップをして先進国になったわけですが、これからは日本はキャッチアップをしてくる国を今度は受け止める。主客が逆転するわけです。中国が経済大国になるということは、日中の経済関係のみならず、勿論、中国は政治、軍事大国でありますから、これは大変なインプリケーションがあると思います。
 そのような意味でも、日中友好という言葉の意味は大変深いものがあると思います。つまり単に表層だけ仲よくして歓迎するというのは勿論なんですが、本当の意味の友好ということをここで真に認識しておく必要があるのではないかと思います。
 その点では、かつてのイギリスの例を見ますと、イギリスは日本がキャッチアップして、イギリスは日本によって繊維産業その他が凌駕されていきます。ちょうど今の自動車のような関係だと思いますが、その結果、歴史的に戦前の転換期にもう逆転してしまった。その関係を考えてみますと、イギリスは大西洋同盟というのを維持しながら、ある意味で手玉に乗せながら、それで自分たちの外交あるいは経済関係はたっぷりしていますので、そこら辺に私は一つのヒントがあると思います。つまり、当時のイギリスは経済面だけ見ても、巨大な鉄道その他、直接投資をしています。そのような関係を通じて、しっかりした経済戦略を構築しながら、オープンな関係をしっかり打ち立てていくことは重要ではないかと思います。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 では、順番で次に、氏家委員の方からお願いします。

○氏家委員 先ほど補佐官から御説明いただきましたたたき台の中で、1〜4のうち2番目と3番目について、つまり「開かれたアジアの成長を支える」という点と「アジア、世界の成長を日本に取り込む」という2点について、製造業ではなくて金融業といいますか、お金の面からこれを見てみたいと思います。
 日本がアジアと世界の架け橋となるといったときに、それを資金とか資本とかいう面から考えますと、結局アジアの成長をアジアの貯蓄で資金繰りをどうやって付けていったらいいだろうか。そのためには日本がやはりアジアの中で金融技術も一番進んでいますし、金融知識も進んでいるので、その点で十分役に立っていけるのではなかろうかと考えるわけです。
 97年、98年のときに、いわゆるアジア金融危機というのがございましたけれども、あれは結局は欧米のドルですとか、そのほかの通貨の短期資金がアジアの成長を支えていたために、その外貨の短期資金が急に引いたときに大きな危機に陥ったということでしたから、こういった間違いをもう犯さないためには、アジアの通貨で長期的にアジアの成長を支えていくということを考えていかなければいけないと思っています。
 まずそのためには、日本からアジアへの投資を促進していかなければいけない。アジアは成長率が一番高いわけですから、普通ですと自然にアジアに日本から投資資金が流れていかなければいけないんですけれども、なかなかそうなってはいない。日本の個人資金の金融資産の50%強は依然として貯蓄にありまして、これが日本の投資にもアジアの投資にもまだ回っていっていない状況です。これはやはり改善していかなければいけないと一つは思っています。
 2つ目は、アジアの中でアジアの貯蓄のお金を回していくという問題なんですが、ここに日本の金融技術、金融知識を使っていかなければいけないと考えていますが、結局アジアの国の中に資本市場、金融市場というのが育っていかないと、アジアの貯蓄はウォールストリートですとかロンドンに行って、それでまた戻ってくることになってしまっているわけです。これをアジアの中で回していくために、日本は十分イニシアティブを取っていけると考えておりますし、また現に政府レベルでも、例えば通貨が攻撃にさらされたときに一緒にその通貨を融通しあいましょうという枠組みもできましたし、アジアの中でボンドのマーケットを大きくしていこうという動きも出てきましたし、これを進めて更にアジアで、例えば株式市場をしっかりつくっていくというのを進めていけば、アジアの大きな貯蓄が世界で一番成長するアジアの経済を支えていくという動きにつながっていって、その中心には日本がいるという形になると思っています。以上です。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、白石委員、お願いいたします。

○白石委員 2点申し上げたいと思います。1つは、アジア・ゲートウェイといったときに、そもそもどういうアジアが今できつつあるのかということでして、アジアというのは急速に変わっております。その変わり方は国のレベルで変わっているというよりも、むしろ社会、経済のところでものすごく変わっています。
 2つだけ申し上げますと、1つは、特にこれは東南アジアを見るとはっきりしておりますけれども、かつては英語と、例えばタイ人でしたらタイ語、あるいはインドネシア人だったらインドネシア語というバイリンガルの人たちがエリートだとか企業の経営者だとか研究者だとかジャーナリストだとか、そういう人たちだったわけですけれども、今はその子どもたちはむしろトリリンガルになりつつあるんです。つまり英語と中国語と東南アジアのそれぞれの国の言葉ができる。そういう世界ができつつあります。
 それは、必ずしも私は、例えば華人が中国人になり戻っているということではなくて、新しいタイプのアジア人ができつつあるということで、日本人もやはりアジアの中で活躍していくためには、トリリンガルにならないといけない時代がもうすぐそこまで来ているということ。これが第1点です。これはもう本当に私などは大学の仕事としては決定的に重要なことだと思いますけれども、人材育成との関連で申し上げたいことです。
 もう一つは、特に文化産業などの関連で申しますと、やはりこの分野もマーケットが今、急速に変化しておりまして、それは単にいろんなコンテンツの伝達方法が変わっているだけではなくて、私は映画が好きなものですから映画などを見ておりますと、今は例えば香港の映画というのは日本と中国と東南アジア、場合によったら韓国のマーケットまで見た上で内容を逆につくっていくということをやっております。そういうマーケットリサーチの上に文化的な商品をつくっていくということをやっておりますけれども、幸か不幸か日本の場合には、まだ日本の国内市場が非常に大きいものですから、余り外のマーケットのリサーチをせずに文化商品をつくっているようなところがある。だから、その意味で決して私は専門家でないんですけれども、マーケットが今どういうふうに変化しているのかを是非考えていただきたい。
 2番目の大きい点は、日本の魅力ということでございますが、今、アジアにおける日本の比較優位というのはどこにあるのだろうか。1つは外国から、特にアジアから日本に来て、日本というのはいいところですね、ということを言うときに彼らがよく言うのは、ともかく日本だと夜中でも平気で歩けるし、水道をひねれば水が出るし、電気はいつもついているしという、我々にとってはごく当たり前の社会システムがちゃんとワークしている。あるいは国家のシステムがワークしている。これは実は非常に貴重なことだと思っております。
 それを具体的にもう少し申しますと、最近、東アジアの地域では、専門的な言葉を使いますと「非伝統的安全保障」といって、軍ではなくてテロだとか海賊だとか人身売買だとか越境犯罪だとかこういうところで、これは事実上の経済統合が進展しますと当然マフィアも地域化していくわけです。そういう中で越境犯罪が今どんどん問題になっております。
 人間の安全保障ということでいいますと、例えば鳥インフルエンザだとかいうのは本当に深刻な問題ですけれども、これにどう対処するかということでよく地域協力とか世界的な協力ということがいわれるのですが、アジアの場合、一つ問題なのは、地域協力の前提になる国家の能力が付いていっていないところが非常に多い。日本は勿論そういう能力を持っております。けれども、アジアで日本以外にどこが持っているかというと、恐らくシンガポールが持っていて、あとは韓国と台湾ぐらいしかもっていない。中国などはまだまだでしょう。例えば鳥インフルエンザの情報、鳥から鳥への感染がどこで起こったか。中国の中央政府などはほとんど知るシステムをもっておりません。これはベトナムに行ってもタイに行ってもインドネシアも同じです。こういうところで要するに国家の能力をどうやって高めていくか。それを制度づくりと人材養成と両方で貢献できる、そういう能力と資源を持っている国というのは、実はアジアでは日本しかないと私は思います。
 ですから、アジア・ゲートウェイと言ったときに、マーケットはもちろん大事なんですけれども、実は国をもうちょっとしっかりさせるような政策を是非考える必要があると思います。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、中村委員からお願いします。

○中村委員 私からは2点感じておりますことを述べてみたいと思います。まず1点は、私はアジア、中国の方々と仕事柄お会いする機会が多いのですが、最近非常に日本に対する期待が高まっていると感じています。その反面、日本人自身が日本の強みということに対して、いささか自信喪失といいますか、そういった面があるのではないかと危惧いたしております。
 一例だけ挙げますと、日本と中国のGDP総額では2対1のところまで追い付かれましたけれども、中国の人口は日本の10倍ですので1人当たりで見ますと20対1ということになります。やはり日本人自身が日本の強さ、あるいは日本の美しさを自覚していくことが肝要であると思っております。
 つい先だって北京に行く機会がございまして、そのときに数名の方とお話しいたしました。総理が訪中されましたときに、何年ぶりかに日の丸が天安門広場に上がったということを、中国の清華大学の学長からお聞きしまして、私は非常にうれしく思ったのであります。日本と中国の関係が前進していることから、中国に駐在している多くの日本人の安心・安全が保障される第一歩になったということに、御礼を申し上げておきたいと思います。
 中国は日本と互恵関係をより前進させたいという念願を持っております。それは中国自身が多くの極めて深刻な問題を抱えているからだと思っております。例えば中国と日本のGDPを生み出すエネルギー消費効率を比較しますと、日本が1に対して中国は7.2 倍のエネルギー消費となっております。また、北京辺りは飲料水が不足しているという問題もございます。最近では反日デモ以後、日本の製造業の企業家の投資マインドが冷え込みまして、今年の7−9月では前年同期比30%減という結果になっております。これは天安門事件のときに4割以上落ちたわけでありますが、それに次ぐ投資の減退であります。そういったことも中国にとりまして、非常に不安となっております。
 加えまして、投資マインドが復活して初めて日本の持っております先端技術が中国に技術移転されることも可能になりますので、そういう面での中国からの要請が出てきていると言えます。環境技術といった日本の得意な分野で私たちは中国のみならず、アジアに貢献できることを大いに期待されており、その点において、ゲートウェイになれる能力を持っているといえます。また、それをもっと発揮していかなければいけないということを、製造業の立場で申し上げたいと思います。
 次は、お手元にパンフレットを配付させていただきましたが、新日本様式についてご紹介させていただきます。新日本様式協議会は昨年1月に発足いたしまして、我が国が持っておりますハイテク技術と伝統的なデザイン、日本的なデザインを融合させた製品、そういう製品のみならず、建築物あるいはコンテンツといったものを世界へ発信していこうというねらいで設立された協議会であります。この10月に53品目が選定されまして、日本橋の三井タワーで展示をいたしました。これはほんの一例でありますが、品位のある、日本らしさ、日本の美しさ、そういったものを世界に紹介していく一助になればと考えております。
 以上でございます。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、深川さん、お願いします。

○深川委員 私は、もともとは実は朝鮮半島の研究者なんですけれども、経済のことをやっていまして、最近では日中韓の自由貿易協定のような話、日韓は全然ちっとも進まないものですから、そういうことを近年やってきました。
 今回のをいろいろと拝見しまして、やはり発信する日本であるべき。それからイノベーションを中心とした成長に回帰していくべきというのは全く正しい方向だと思っています。
 特に、この失われた10年の間、必ずしも日本のポテンシャルを生かしてこられなかったという思いが国民にもありますけれども、やはり外国人も非常に残念だと思っている。アジア人はみんなそう思っているわけですから、そちらの方向に行ってくれということは非常に歓迎されていると思います。
 ただ、この間、中国の台頭というのがございましたので、表現の仕方というのはやはり発信するときに気を付ける必要があるかなと思っていまして、やはりスマートであるべき。よくメディアとかによくあるジャパン・ファイツバック・アゲンスト・チャイナ式な感じの、中国にやられそうだからやっと腰を上げたようだ的な印象を与える必要はないので、もう少しスマートに、余りナショナリスティックでなくやる必要があって、それには例えば発信するときに、もはや日本の美しさとか日本の文化を日本人だけで発信する時代は終わったと思います。
 今、北海道の温泉をオーストラリア人が開発していたりとか、いろんなデザインもフランスとかロンドンを経由して、また日本に帰ってくるような欧米風のジャパネスクみたいなのがあるわけですね。やはりそれぞれの国の人が日本のいいところを発見してくれるのであれば、日本人だけでがむしゃらにやる必要はない。いろんな人の発信力をうまく利用していくのが私はいいと思います。
 その意味では、勿論アジアからの留学生というのは、残念ながらアジアに帰ると最近ジャパンスクールは非常に落ち目でございますので、彼らをもっと活用していく必要があって、私ども大学の責任でもあるんですけれども、もう少し戦略的に考えていくべきかなと思っています。
 2番目は、そのイノベーションの方向ですが、スマートであるべきということとも同じことなんですけれども、総理がまだ総理になる前に、官房長官にもお出ましいただいた中国との会議を言論NPOというところで私もやっていたんですけれども、そのときにも多分、課題先進国という言論NPOのうたい文句の言葉があったかと思うんですが、結局その環境にしてもエネルギー制約にしても少子高齢化にしても、その少子高齢化の圧力を受ける農業問題にしても、ほとんどアジアはこの課題を抱えています。
 実はアジアに命令しようと思って覇権的にやっているわけではなくて、この内なる課題にまっしぐらに取り組んでいけば、おのずとアジアは付いてくるのが一番彼らの利益になるという構造になっていますので、やはりそういうところをターゲットとしてやることに意味があるかと思います。
 例えば農業とかも韓国とのFTAも全然うまくいっていませんが、大体水産業と農産物はいつも問題になっているんですけれども、例えば最近、韓国がつくった国際自由都市という経済特区みたいなのがあるんですけれども、そこで例えば新しい形の農業。いわゆる農産物をただつくるというのではなくて、種苗の知財の段階からやるような形のすごくハイエンドな農業の実験をお互いの特区でやってみるとか、いろんなことが可能だと思います。FTAは、もう既に遅くて非常にけちだというレッテルを張られていますので、これは速度においても内容においても取り返す必要があると思います。
 特に官邸主導ということをおっしゃいましたので、その中で私が2つ思いましたのは、1つはFTAは経済交渉ではありますけれども、やはり外交交渉の一つなので、どの国とするかというのを経済効果だけで決めている国はないと思います。日本の今までのFTAを見ると非常に役所主導の行政的な交渉をしていたものですから、外交的に日本がそれをどう考えているかという姿は、アジアには全く伝わっていませんでした。
 今、米韓FTA交渉をやっていますけれども、多分できないと思いますが、米韓FTA交渉が万が一できてしまった場合、アジアのFTA構図というのは一変します。これはアメリカが政治性を持ったFTAをアジアに持ち込んでくるからです。そういうことを考えると、日本も地域外交としてのFTAを考えていくべきだし、それは今の役所の縦割りでは無理だと思うので、官邸がふさわしいと思います。
 当然のことながら、その省庁の壁を超えたものというのも官邸のリードが必要で、例えば物流のようなもの。松下さんもそうですけれども、東アジアの日系企業というのは本当に産業集積も大きくなっていますから、後は物流の機能を強化してやれば、もっと強くなり、もっと生産性を上げることができる。しかし、これも省庁間に分かれていますので、こういうことからいろいろ具体的にやっていけることはあるのではないかと思っております。

○伊藤座長 どうもありがとうございました。
 それでは、私も1つだけお話しさせていただきたいと思います。アジアの問題というのはずっと御議論されてきておりまして、私も例えばFTAの民間の旗振り役で5年くらいやっているんですけれども、いつも非常にわびしい気持ちをしていたのは、政治のトップの方がFTAは大事だとおっしゃっていただいているんですけれども、どちらかというとリップサービスで、その前に重要な政策がいっぱいあって、5番目か10番目ぐらいであるということです。
 そういう意味では、今回こういう形でアジア・ゲートウェイを日本も開いていくということを政策のかなり重要なところに置いていただいたことは非常にいいことだと思いますので、是非こういう場を通じて、こういう政策を有効にすることを我々も一生懸命踏まえていきたいと思います。
 その上で誤解も恐れず、多少乱暴な議論を3つさせていただきたいと思います。1つは、やはり政策のプライオリティーにこのアジア問題をとらえたということで、できるだけこれが後の歴史に残るような発信ができたらと思います。
 ここはいろいろと議論しなければいけないと思うんですけれども、そういうときに多分ものすごく重要なのは、何人かの方がおっしゃったんですけれども、中国というものを我々がどう考えるかということについて、具体的な政策レベルも含めて考えていかなければいけない。
 先日、実は新日中友好委員会の件で安倍総理が訪問したときに非常にいいことをおっしゃっていただきまして、日中は友好関係ではないんだ。我々の委員会は友好という名前が付いているんですけれども、戦略的互恵だとおっしゃいまして、私はずっと考えていたんですけれども、友好関係というのは要するに恋人みたいなもので、仲よくなることが目的なので、どこかに仲よくないものがあるとそこで問題になってしまう。戦略的かどうかわかりませんが、互恵関係は夫婦みたいなもので、これはお互いの関係がお互いにとって非常に利益になるんだということで、そういう意味では、まさに戦略的互恵というのをどうやってつくっていくのかをやはり考えていくと、既に出ているエネルギーだとか水だとか、あるいは人の交流だとか、こういうところを中心に新しい時代の、別に中国だけではないんですけれども、アジアを含めた発信というものができればなと思います。これが第1点です。
 第2点は、せっかく根本補佐官が中心になってこういうものをまとめていただくとすると、もうアジアとかオープンでいろんなところでいろんな政策が行われているので、やはりあるプライオリティーをどこに置くかということを少し出していただいた方がいいのかなと思います。
 ここは政治的に非常に難しい問題もあるということはよくわかっているんですけれども、結局ここで出てきたものが世の中から評価されるかどうかのかなり重要なポイントというのは、まさに日本の国内をどれだけ開放的にするか。具体的な例を申し上げれば、例えば農業だとか、あるいは人の移動だとかいうところにどこまで恐らく組み込めるかということなんです。
 ちょっと持論を申し上げさせていただきたいんですけれども、成長戦略ということを総理はおっしゃって、非常に大事なことだと私は思うんですけれども、例えばアメリカで今どこが一番成長に貢献しているかというデータを見ますと、流通とか金融とか物流なんです。どうしてかというと、そこはものすごくウェートが大きいからですね。
 では、日本がどこでこれから成長をやるかというと、勿論製造業も非常に大事なんですけれども、実はGDPの経済規模の8割を占めている食料、農業、金融、教育、公的サービス、あるいは医療とか、こういうところがどれだけアクティブになるかということで、そうしたときに実はまさにオープンにするというのはものすごく大きなポイントだと思うんです。
 無理に今ある制度を変える必要はないんですけれども、やはりそういうところにいる方もこれだったら自分のときは苦しいけれども、子ども世代だとか、あるいは次の時代には本当にやっていけるのではないかというような、ある意味でいうと非常に希望を持てるいいチャンスだと思いますので、是非国内の開放に入っていただきたい。
 最後はせっかくこういう会議をやりますから、やはり新規軸で、先ほど根本補佐官がおっしゃったように、これをやるという象徴的なものを幾つか持てればと思います。
 幾つか例を挙げますと、1つはやはり2009年の羽田空港の問題で、これは日本にとって最初で最後の人の移動のチャンスですね。ですから、これを無駄に使ってはいけない。もう既に新聞報道に出ていて、そのとおりなんだろうと思うんですけれども、中国との間で上海空港とのあれを広げたというのは、想像以上に影響が大きいと思うんです。そういうことをもうちょっとできないだろうか。
 例えば今、アジアの便というのは、出張に行くとよくわかるんですけれども、オーバーナイトで成田に戻ってくるんです。実はこれは非常につらいんです。あるいはヨーロッパに行くときに夜に成田を出て行くのです。羽田の夜と朝のところはキャパシティーがあるんです。そうであれば、例えばアジア便の幾つかを羽田に朝着くとか、あるいはヨーロッパ便、アメリカ便もあればと思うんですけれども、夜遅い時間に出すということだけで、単に飛行機の意味を超えて、日本が本格的にいわゆる人の流れ、クロスワンのところでグローバル化したというメッセージを与えると思います。実はアジアのほかの国は自分の空港を国際的なハブにしようということを考えているわけですから、日本もそういうことで考えているんだと。そういうのは空港ではできると思います。
 それから、通信のところで、これはこの前、総理に日中のところでも言わせていただいたんですけれども、中村委員が出したのは非常によくて、先日北京に行って非常にショックだったのは、韓国や特にフランスを我々は見させていただいたんですけれども、すばらしい交流センターを今つくっているんです。それは本屋もあれば中にワインのショップもあれば、フランススクールもあって、要するにそこに行ってフランスの文化に触れたくなるという発信になる。
 日本の方も努力されているんですけれども、残念ながらガードが厳しくて、中に入るとスチール製の本箱に入った資料があって、文化交流というと能や狂言が大事ではないとは申しませんけれども、能や狂言がやはり中心になっている。
 これをそのまま中国、東南アジアに持っていったら、これはものすごく魅力があるわけで、こういう空間をつくって、それに私だったら是非日本酒と焼酎と寿司ぐらいはそこにあればもっといいと思うんですけれども、そういう象徴的な文化発信拠点みたいなものをまさに官だけではなくて官民、ここに出ているような、まさに非常に感性のある人、場合によっては外国とやるべきかと。これはそんなにお金がなくてもできる話だと思います。そういう意味では先ほどおっしゃった文化発信ということを、もう一回今の本当の日本のよさを知ってもらうということで、是非考えていただきたいと思います。
 最後に人の交流を是非、留学生をやっていただきたいと思います。私は最近思うんですけれども、留学生の世界で一つ新機軸があるかなと思っているのは、青田買いができないだろうか。官房長官の例を申し上げて申し訳ないんですけれども、私と官房長官は高校の同じ時期にアメリカに留学しているんですが、高校の留学というのはすごくインパクトがあります。もし今度タイに行かれましたら、恐らくタイの向こうの通訳、私のゼミ生なんですけれども、高校のときにタイから来ているんです。そういう意味では、若い人たちを少し動かしてみるということが、すぐにはインパクトはないかもしれませんけれども、ひょっとしたら1人で恐らく十人力の留学生のインパクトを持つのではないだろうか。これもそんなにお金が要る話ではないと思いますけれども、かなり象徴的になります。
 ほかにもいっぱいいろんなアイディアはあるんですけれども、何かこういう機会に新機軸でやってみると、そこから非常に大きなインパクトが出るのかなという気がします。
 私が余り話しても申し訳ありませんので、またの機会にお話しさせていただきたいと思います。今日は残念ながら、宮田委員は御欠席でございますけれども、この構想につきまして、積極的な御意見があると伺っておりますので、次回は御本人からお話をいただくということにしておきたいと思います。
 まだ多少時間がございます。今日は総理はこの後、いろいろと日程が詰まっておりますので、遅くとも5時10分ぐらいには議論を終わりにして、総理にまたお話しいただきたいと思っておりますけれども、何か続けて、言い忘れたこととか、あるいはコメントとかいうことで更に御発言いただければと思います。どなたでも結構です。

○中北委員 では、1つだけ短く。中国の話を強調していただいたんですが、私は影のもう一人のプレイヤーというのは、やはりアメリカではないかと思うんです。それでアジア全体を見ますと、アジアの自立性というのは確かに高まってきていると思うんです。域内の貿易とか域内の投資とかですね。
 しかし、ちょっと翻ってみますと、かつての日本がアメリカに大量に輸出して貿易摩擦を起こした構造が、ちょっと強調しているかもしれませんが、今度は中国に変わっただけという面もある。つまりアジア全体で見ると、やはりアメリカにかなり依存しているという面は払拭できないのではないと思います。これはプラスの面も勿論あります。
 特に感じますのは、アメリカも非常にある意味では弱ってきているし、アメリカにも非常にリスクがたまる。したがって、アジアにもはね返ってくる。
 先ほど氏家会長の方から金融のお話もありましたけれども、例えば金融一つ取ってみましても、アメリカに随分依存すると、アジアが元気でもアメリカが非常に危機に遭遇するとアジアも巻き込まれる。
 例えば、例の9.11のときに、あの翌々日ですか。アメリカで相場が立つか、あるいは決済ができるかどうかということで、関係者はかたずをのんでいたわけです。アジアの成長はだんだん景気づいていたわけなんですが、なぜかというと結局、日本あるいはアジアのお金をまたアジアのお金にかえようとすると、一回ドルを通さないといけない。
 そういう制度が昔からつくられているので、アジアの中で交換する、アジアの中でシステムをお互いに楽に使える構造はないわけです。結局アメリカと日本がつながっている、シンガポールとアメリカがつながっている、中国がアメリカにつながっているということです。アジアの中で一つのループができ上がっていない。そうしたループがアジアの中で出来上がることはアジアのためにも勿論なりますし、やはりアメリカの負担、あるいは世界のリスクがニューヨークに過分に集まってしまっているのは世界全体から見ても問題があるので、私はそういう角度も今回、アメリカはここには勿論入っていないかもしれませんが、影の問題ということで重要な視点ではないかということを強調させていただきたいと思います。

○伊藤座長 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

○白石委員 1つ補足です。私は確かに中国は重要だと思いますが、今、本当に考える必要があるのは中国が経済的に台頭してくることによって、アジアの秩序そのものが好むと好まざるとにかかわらず、変わりつつある。
 それが急速な変化、つまり現状を非常に大きく急速に変えるようなものになると、これは非常に困るわけで、漸進的に変わっていくということが望ましい。その中で今まで我々がつくってきたルールとかシステムを中国は基本的に受け入れる。あるいは受け容れるように調整して。そういう大きなプロセスの中で中国の問題を考えることが大事だと思います。
 ですから、総理のおっしゃったとおり、戦略的互恵という考え方は決定的に重要だと思いますが、それと同時にもう一つ強調したいことは、共通のルールをつくっていくということです。
 中国を見ていて痛感しますのは、一見すると中国にはもちろん政治的なリーダーシップはある。だから、目覚ましいこと、例えばアフリカの国々の首脳を呼んできて何かやるというのは上手だ。しかし、リサイクルのシステムをどうつくるか、知財のシステムをどうつくるかということになると、そういうシステムのつくり方もよく知らなければその能力も十分でない、人もいない、そういうところがある。日本が一番強いのはそこのところであって、日本のリーダーシップは、ちょっと妙な言い方をしますと、そういうところで陰徳を積むことが日本の力になるように思います。
 先ほど深川さんが指摘されたことですが、それを別に日本人だけでやる必要はない。同じような考えを持っている人たち、我々と同じような物の考え方をする人たちと一緒にやっていく。それがおそらくアジア・ゲートウェイの基本的な考え方の一つかと思います。

○伊藤座長 私も現場を見て、いつか日本もやらないといけないなと思ったのは、アジア通貨危機の後、インドネシアの金融がぐちゃぐちゃになったときに、ハーバード大学がすごいチームをつくって送り込んで、いろんなアドバイスをしているとか、あるいは中国がWTOに入る前にオーストラリアの大学が政府からお金をもらって、中国のWTOに関わる中堅の官僚に3週間缶詰でWTOに関することを教えるとか、そういうシステムとか何とかいって、日本はもう少しね。

○白石委員 実はそういう期待は日本に対してすごくあります。例えばアジア経済危機の後、新しい投資法をつくりたいので、是非日本の専門家を送ってほしい、そういう要望がインドネシアであった。ところが日本でJICAにお願いして、そういう法律案を書ける人がいるかというと、一人いるけれども忙しくて手が回らないというわけです。そういう人を育てていくことで日本はシステムづくりのレベルで随分いろいろなことができると思います。

○氏家委員 先ほど伊藤先生がおっしゃられた点で、例えば中国の経済成長を考えた場合に、2008年で屈折点を迎えるのか、2010年で屈折点を迎えるのか。この辺が議論されるときに結局、金融システム、銀行に不良債権がたまっていて、それを外貨準備でどんどんきれいにしていくというのが続いていますね。でも、これはよくよく考えてみると、日本が十何年間かけて解決してきた問題でございます。
 これだけ巨額の不良債権を銀行のバランスシートに乗せてしまって、それを解決してきたという経験を持っているのは我が国だけであって、その知識を中国に持っていく。それによって中国の持続的な成長を支えていくというのは、彼らにとってみれば非常に多とするポイントではないのかなと思います。
 もう一つはちょっと離れるんですが、中国がやはりどうしても気になるわけですが、確かに1年間の出張の比率で見ても3分の1ぐらいは中国。つまり5回ぐらいは中国ということになるんですが、ここのところに来て、中国プラス1ではなくて、中国とインドというふうに考えざるを得ないと思うんです。
 日本の投資家もこのところで間接投資、直接投資を含めてインドへずっとお金を持っていっているということですから、中国も非常に注視していかなければいけないんですけれども、インドに対する配慮、検討。これに力を入れていかなければいけないのではないかと思っています。

○伊藤座長 深川委員、どうぞ。

○深川委員 皆さんのおっしゃっていることと同じような方向にあると思うのですけれども、やはり知恵を出して日本人はもっと積極的に活躍して、あのときそう言えば日本の人がやっていたなという記憶が残ってくれることが望ましいと思うんです。
 例えばASEAN+3も、考えてみれば通貨危機の後は600 億ドルからコミットしたのは世界で日本だけで、アメリカは1ドルも出していないわけですから、ASEAN+3のフレームワークはそのときに初めて概念として存在するようになったんですけれども、いろいろあって今になってみると、もうASEAN+3は気が付くと中国のフレームワークになぜかなってしまっているんです。
 それは日本にも日本の戦略の違いがあると思うんですけれども、やはり印象に残ること。特に草の根の人たちの印象に残ることを、例えば先ほど白石委員のおっしゃったような鳥インフルエンザは東南アジアや中国は非常に深刻な問題なので、それを日中国境なき医師団とかつくって行く。でも、やはりその団長は日本から出す。そういう保健システムとか医療システムのレベルが全然違いますし、田舎の津々浦々もとにかく鳥インフルエンザをこれ以上出さないようにしてもらうということをする。そういうことで協力していくと、日韓のときもそうだったんですけれども、日韓、日中というのは必ず難しい組み合わせなので、何か共通の課題を一緒に乗り越えたという信頼感を積み上げていくことが非常に大事だと思うんです。やはり韓国とは一緒にサッカーをとにかくホストして、曲がりなりにもうまくいったというのは今でも資産として残っているので、中国というのはそういう相手としてうまく組んでいけば非常にいい相手ではないかと感じます。

○伊藤座長 よろしいですか。どうぞ。

○中村委員 1件、特に強調させていただきたい点がございます。この資料2の2の日本が先行している環境、エネルギー、防災云々のところであります。日本は2回の石油危機を乗越えアジアの他国にはみられない多くの、しかも優れた環境技術を民間も官も持っているわけであります。したがって、そういった環境技術を集めて、アジアの国々の方に見ていただく、活用していただくといった機会を、例えば東京で持つということになれば、アジアの国々すべてが賛同し、多くの人が日本に来てくれると思います。そういうことを具体的に進めることが、アジアの国々の賛同を得る第一歩のような気がしておりますので、付け加えさせていただきます。

○伊藤座長 さくら丸というのは御存じですか。戦後、日本が輸出を増やさなければいけないというので船を借り切って、日本のものを全国世界中に持っていってやったということで、今の案なども非常に面白いですね。今の日本がアジアに向けていくときに、船で行かなくてもいいんですけれども、環境技術みたいのをまとめてみて、それをアジアに見せる。それで商売がうまくいってもいいし、あるいは援助でもいいと思うんですけれども、何か象徴的なことができればいいかなと思います。
 深川さんがおっしゃったことは重要で、この政策の中で印象に残ることをやるということが重要で、1つは深川さんがおっしゃったように現地のアジアの方々が、日本はこれをやっているんだということを草の根レベルで印象を持ってもらうということは大事ですけれども、多分もっと大事なことは日本の国内の人がこれをやることによって、自分の何かが変わると思ってもらえるかどうかということで、私は幾つかあると思うんです。
 先ほどの根本補佐官のメモの中に非常に大事なことが書いてあって、地域が直接アジアと結び付くというここはしっかり考えて、地域社会として、それぞれのアジアの地域がどういうふうにやれるかというプロジェクトみたいなことを考えないといけないのかなと思います。たまたま先ほど申し上げた日中友好委員会の会議の場が青島だったものですから、下関と友好都市として長年の交流があるということで、すごく盛り上がったんですけれども、やはりそういう地域の枠でできないかということ。
 2つ目は、女性に恐らく喝采を浴びていくかもしれない。非常に議論はあるんだと思うんですけれども、やはり少子高齢化の中で家事労働みたいなものをどう考えるか。これはかなり難しい議論だということがよくわかっているんですけれども、日本の女性というのは非常にこの少子化あるいは核家族の中で困っているときに、そういう人たちを入れるのかどうか。あるいは介護の人材をどうするかというところは、一つ大きなイシューになるのかなと思います。
 高齢者の方にどういうふうな評価をしてもらうかということで、先ほど白石さんがおっしゃったように、若い高齢者ですね。能力を持っている方はいっぱいいらっしゃるわけです。例えば日本の税関の仕事をやっている方は、税関の仕事は詳しいわけですけれども、仕事がそろそろ引退という方にある種のキャラバンみたいのを組んでやってもらうとか、具体的に日本の国内でこういう人たちがこういうことをやると、自分たちもこのアジア・ゲートウェイに参画しているな、あるいはそれによって自分たちの生活を変えられるということがもし本当に出てくると、それは非常に成功なのかなという気がいたします。
 ほかにまだ何かありますでしょうか。

○白石委員 まさに伊藤座長がおっしゃったように、アジア・ゲートウェイは日本の国民一人ひとりが確かに自分に直接顧みていいことなんだと思えるような施策が幾つかこれで出せるというのがすごく重要なことだと思います。
 そのことで申しますと、もうそろそろ私なども定年に近づいていますけれども、確かに日本には結構元気のいい人はいっぱいいる。そういう人は例えば年金でかなりの部分は生活できるわけですから、安く協力していただければ、それはそれで生きがいのある新しい生活ができるわけですし、いろんな形で具体的に個々の国民に意味のあるものを是非考えていければいいなと思います。

○伊藤座長 ほかによろしいですか。
 ひととおり議論をいただきまして、時間も迫っておりますので、根本補佐官の方にお返しししまして、何かもしございましたら、お願いします。

○根本総理大臣補佐官 今日は大変多様な意見をいただきまして、ありがとうございました。今日のような議論をしていただいて、これはたたき台として提示させていただきましたが、どんどんふくらませていきたいと思います。
 最後に総理からもお話をさせていただきたいと思いますが、事務局的な話をします。これからの進め方でありますが、できるだけ短期間に集中した密度のある議論を行いたいと思っております。
 11月下旬及び12月中旬の2回程度、会合を開催させていただきたいと思います。総理と官房長官の日程調整もありますので、具体的な日程については追って事務的に御相談させていただきたいと思います。
 実際の進め方でありますが、日程調整をすると委員の皆様全員がおそろいになるのはなかなか難しいものですから、先生方から今日いろいろなアイディアもいただきましたので、例えば2〜3名の委員の方と、外部の有識者の参加も必要に応じていただいて、また皆さんの関心の高い事項について議論をする機会を設けたらどうかなと思います。
 この辺の点については論点の整理と併せて、また日程については御相談させていただきたいと思います。委員の先生方で御関心の分野があれば、更に是非とも提示していただきたいと思います。
 最後に総理からお願いします。

○安倍内閣総理大臣 国民の中でいろんな不安があると思うんです。一番大きなものは人口が減少している。あるいはまたそのグローバル化というものに対して何となく不安もあるし、また例えば台頭する中国とどう向き合っていくかという不安がある。
 やはりそれを解決していく上で、むしろそうした状況変化をチャンスに変えていく。その一つひとつの方法が私はアジアのゲートウェイではないだろうか。アジアの人たちはグローバル化する中で、例えばやはりニューヨークやロンドンやパリではなくて、日本を目指してくる。
 そこで優秀な人材が集まる中で、日本は日本のよさを発信するんですが、先ほど深川さんもおっしゃったように、そういう人たちが入ってくることによってアジアミックスとなった力が更に世界に発信をされていく。勿論アジアだけでなくはいいんですが、いろんな人材が来る中において、この日本が独特の強さを持っているいろんな文化やよさを取り込んでいって、それを日本様式に変えていくという、またそれを発信していく力というのもあると思うんですが、この得意技をグローバルな時代にこそ使うべきではないだろうかと思うんですが、そのためにもやはり世界から日本を目指してくるということが極めて重要ではないかなと思うんです。
 先般の東京国際映画祭がありましたが、あれはアジアの映画だけを集めてやっているわけですね。そうしますと、アジアの映画監督やプロデューサーが日本のこの映画祭で受ければ、これは世界に、ハリウッドにも出られる。ですから、直接ハリウッドや香港やヨーロッパに行くのではなくて、日本で受けることが実は世界のマーケットに、世界からここに買いに来ているという場になるということが大切であって、また日本に行けばアジアの優秀なものが集まっていると、一つの典型ではないかなと思うんですが、このようにいろんなグローバル化等々をチャンスに変えていくことが重要ではないだろうかと思います。
 また、インド、中国という例を挙げていただいたんですけれども、それぞれ環境の面とかエネルギーの消費の問題において、日本ができることもたくさんあると思いますし、また更にはやはり随分日本の今までの援助も含め、かなり我々が思っている以上に陰徳を積んでいるのではないかと思うんです。
 だから、日本にやってもらいたいという国は非常に多くて、アフリカの国々も日本に対する期待というのは非常に高くて、経済のアドバイザーで引退した人でもいいから、だれか数年間住んでアドバイスしてくれる人はいないかということを、私はこの前ある大統領に頼まれて今、探しているんですが、なかなかそこに行ってくれる人はまだ見つかってはいないんですが、そのように日本が今まで積んできた陰徳において、日本と付き合うのは安心だということにもなっているのかなと思います。
 殊更それを強調する必要はないんですが、せっかくそういうあるべき資産を未来に生かしていくことも大切ではないかと思いまして、このアジア・ゲートウェイというのは大変間口の広いイメージなんですが、そうであるからこそ、いろんな未来に向けてのアイディアを是非皆様方に出していただきたいし、具体的な政策も出していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○根本内閣総理大臣補佐官 塩崎官房長官からは何かございますか。

○塩崎内閣官房長官 総理のお言葉で十分です。

○根本内閣総理大臣補佐官 それでは、これで終わらせていただきます。
 本日はありがとうございました。