アジア・ゲートウェイ戦略会議(第5回) | |||||||
| 日 時: | 平成19年2月23日(金)17:30〜19:00 |
| 場 所: | 官邸南会議室(3階) |
| 出席者: | 安倍内閣総理大臣、塩崎内閣官房長官、根本内閣総理大臣補佐官、伊藤委員(座長)、氏家委員、白石委員、中北委員(座長代理)、中村委員、深川委員、宮田委員、伊藤隆敏経済財政諮問会議グローバル化改革専門調査会会長、池尾慶應義塾大学教授、河合アジア開発銀行研究所所長、倉都RPテック代表取締役社長、中島みずほ総合研究所チーフエコノミスト、吉野慶應義塾大学教授 |
○根本内閣総理大臣補佐官 ただいまより第5回アジア・ゲートウェイ戦略会議を開会いたします。委員の皆様におかれましては、御多忙のところ御出席を賜り、ありがとうございます。
本日は、委員の皆様全員出席でございます。そのほかに、本日は伊藤隆敏東京大学大学院教授に御出席をいただいております。また、5名のゲストスピーカーをお招きしております。まず、伊藤隆敏教授は経済財政諮問会議の民間議員で、同会議の下に設けられたグローバル化改革専門調査会の会長を務めておられます。
5名のゲストスピーカーにつきましては、慶應義塾大学の池尾和人教授。
アジア開発銀行研究所の河合正弘所長。
RPテック株式会社の倉都康行代表取締役社長。
みずほ総合研究所株式会社の中島厚志チーフエコノミスト。
慶應義塾大学の吉野直行教授に御出席をいただいております。
これからの議事進行は伊藤座長にお願いいたしますが、総理は本日この後、文化庁メディア芸術祭に御出席をなされます。この芸術祭は、日本が世界に誇るメディア芸術について、日本だけでなく世界中の優秀な作者・作品を顕彰・展示するイベントでありまして、アジア・ゲートウェイ構想の一環である文化産業戦略に直接結びついたこの芸術祭へ総理に出席いただけることは、大変意義深いものと考えております。
総理は6時ごろ御退出の見込みでございますので、大変恐縮ですが、冒頭の御発言はそれぞれ5分以内にしていただくように、御協力をお願いいたします。
○伊藤座長 それでは、早速、議事次第の3となりますけれども、伊藤グローバル化改革専門調査会会長より御発言がありますので、よろしくお願いいたします。
○伊藤氏 本日はお招きをいただきまして、アジア・ゲートウェイについて私の考えを述べさせいただきます。
この背景にありますのが、昨年11月24日に経済財政諮問会議で安倍総理から御指示があったことでありまして、次のような御指示です。「空港・港湾の24時間体制、またオープンスカイ等の問題提起もあった。これは前から言われていたことだが、なぜ難しいかはわかっている話だから、何とか時間を置かずに、私の内閣で是非取り組んで解決をしていただきたい」、これが総理の発言でございます。これに基づきまして、私が日ごろ考えておりますことで、皆様方のアジア・ゲートウェイの会議で参考になるであろうと思われることをお話ししたいと思います。
お手元にお配りしてある資料に基づいてお話ししたいと思いますが、まず、羽田空港の深夜・早朝時間帯の国際線への活用というのが非常に重要な点であると思います。理由は、羽田の深夜・早朝の時間帯を国際線に開放することは、決断すれば今すぐ実現することであるからです。よく、羽田空港は2009年の第4滑走路の供用を待たないと国際線化できないという話があるのですが、これは全くそうではありません。深夜・早朝に関しては今すぐできるということであります。これは成田が離発着が禁止されておりますので、成田の競合という関係は発生しません。
これが実現しますと、次のような大きな政治経済的なメリットがあると考えられます。
まず、第1に、東京における国際金融センターの再構築の追い風になるということであります。これは、ビジネス環境が非常によくなるということです。
それから、このアジア・ゲートウェイ会議の主題でありますが、アジアにおけるゲートウェイの役割というものを活発にすることができるだろうということであります。
日本からあるいは海外から日本への旅客も非常に増加すると期待されます。
羽田周辺の空港関連事業の需要・雇用を増加させることができると考えることができます。
これによって、政治的あるいは経済的連携を強化する日本の政治経済戦略の重要な手段になると考えております。
具体的な改革案をそこにお示ししておりますので御参照いただきたいと思います。1ページの下に「改革案、その1(今すぐできる)」ということが書いてあります。航空交渉は協定が必要ですので交渉することになりますが、相手国との合意が整えば、内外航空会社を無差別に羽田空港の深夜・早朝時間帯、23時から6時の間、国際線に開放することができます。
同時に、必要なインフラ、入国、税関、都心との公共交通機関ですが、これを整備するように働き掛けるということが重要です。
期待される結果は次のとおりでありまして、深夜、羽田発、欧州の主要都市に早朝到着するといった便を開設することができます。これによって、日本で終日仕事をした上で、深夜に発つということが可能になる。現在は午前便しかありませんので非常に不便ということになります。
○根本内閣総理大臣補佐官 伊藤先生、申し訳ありませんけれども、一度ここで切らせていただきまして、総理からのごあいさつをお願いします。
○安倍内閣総理大臣 皆様、どうも大変お世話になっております。アジア・ゲートウェイ構想について、大変活発な、また、深い御議論をいただいておりますことに対しまして、御礼を申し上げたいと思います。
本日で第5回目となるわけでありますが、7つの重点政策の中の金融資本市場機能の強化と「国内市場型」産業の競争力強化について議題としていただいているわけでありますが、特に本日は、経済財政諮問会議から伊藤先生に御出席をいただくとともに、金融庁の国際化に関するスタディグループの池尾座長をはじめ、5人の有識者の先生方に御出席・御参加をいただきました。日本の国際金融センター化とアジアにおける金融資本市場の育成について、具体的な政策の提案を含めて活発な意見交換を是非お願いしたいと思います。
とりわけ金融システムは不良債権問題への緊急対応から、消費者ニーズを重視したサービス業への転換が求められておりまして、1,500兆円にも及ぶ個人金融資産の収益性を高めることも重要な観点ではないかと思います。今日の国会においても、金融分野の競争力を高めていくことが必要だということを私も答弁したわけでありますが、この分野はある意味では、まだまだ余地が残っているということにもなるのではないかと。成長の余地が十分に残っているのではないかと、このように思います。
国民が実感できる改革として、供給サイドのみならず、一般の投資家やアジア内外の企業などの需要者に魅力的な市場を実現する方策についても、幅広く御議論をお願いしたいと思います。
また、これまで右肩上がりの経済成長の中で、国内需要を中心としてきた農業をはじめとする、いわゆる「国内市場型」も経済成長が著しいアジアに目を向けて、いわば挑戦をしていくことが私は大切ではないかと思っています。
次回の政策課題の取りまとめに向けて、忌憚のない意見交換を行っていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○伊藤氏 総理が来られる前に少し始めていたのですけれども、昨年11月24日の総理の御指示に基づいて私なりの改革案をまとめて、是非、アジア・ゲートウェイ戦略会議で御審議いただきたいということでお持ちしたのが、私の資料でございます。
羽田の深夜・早朝時間帯を国際線に開放するということは今すぐできるということであります。第4滑走路の活用を待たずにできることであると。これは国際金融センター、アジア・ゲートウェイ、海外からの旅客の増加、空港関連事業の需要・雇用の増加に非常に大きなメリットがあることだと考えております。
改革案、その1でありますが、相手国との合意が整えば、内外航空会社を無差別に羽田空港の深夜・早朝時間帯に国際線に開放するということでありまして、これによって欧州との往復が非常に便利になると。日本で終日仕事をした後、欧州に飛んでいく。あるいは欧州から帰ってくるときも、朝、羽田に着けば9時の会議には間に合うということであります。
第2に、アジアとの日帰り圏が飛躍的に増加するということでありまして、朝、羽田に着くあるいは深夜羽田に着くというアジアからの帰国便を活用することができる。現在、近距離のアジアに関しては、むしろ帰ってくる便が午後2時半とかそのぐらいに終わってしまう、マニラ、香港、北京であります。東南アジアからは確かに6時半、7時半に成田に着くのですが、地上インフラが悪いものですから、朝9時の会議には間に合わない。
それでは、本日のゲストスピーカーで、中国の専門家でもいらっしゃいます国分先生に、自己紹介も兼ねて御発言をお願いしたいと思います。
今朝、私もバンコクから帰ってきたのですけれども、7時に成田に着きましたけれども、大学の研究室に入ったのは9時半ですから、非常に効率が悪い。これが羽田であれば、朝一番の会議に間に合うということになります。
よく第4滑走路の工事のために夜間使えないという話があるのですが、これも閉鎖をするのは恐らく3時間ぐらいですから、午前1時くらいまで、それから、午前5時からは十分使えるということが言えます。
改革案、その2でありますが、第4滑走路の供用をにらんで、今やらなくてはいけないということがあります。これは国際線ターミナルというものをつくるわけですけれども、これと国内線との非常に便利な結合ができないと、せっかくの国際線開放というのが国内のネットワークにつながらないということですから、国際線ターミナルから地下で無人運転のシャトル便を出すということでつなげることが重要であると。
もう一つは、韓国など近隣諸国との間では、出入国管理を一体化することによって、出発地で日本に帰ってくる入国審査、検疫を済ませてしまう。そうすると、韓国便が帰ってきたときには日本で国内線のゲートに着くことができますから、そこで国内線等の乗換えが非常に便利になる。これを相互に行うということが非常にアジアとの連携を深める上で重要であると思います。
羽田のキャパシティが増えた後では、便数、乗り入れ空港の選択については、なるべく自由化するということで、市場の需給に応じて届出だけで柔軟に増減便できるという仕組みをつくることによって、航空会社あるいは旅客の便宜を高めるということができます。
最後に、30秒だけ港湾の24時間化についてお話ししておきます。これは資料はないのですが、この25年で主要港のシェアというのは非常に低下しました。これは手続時間の長さと高コストの2点に尽きます。したがって、搬入から申告までの時間縮減というのはほとんど進んでいないということと、ここの部分の短縮の余地は残っています。それから、高コストの是正というものも是非取り組むべき課題であると思います。これによって日本の主要港のハブ機能を強化するということが必要であり、航空貨物の取扱いについても同様に、物流の一体化を図るということが重要だと思います。
最後に、もう一度、安倍総理が昨年11月の経済財政諮問会議において指摘されたアジア・ゲートウェイの24時間化ということを、是非このアジア・ゲートウェイ戦略会議において具体策に取り組んでいただきたいということを私からお願いしたいと思います。
以上です。
○伊藤座長 どうもありがとうございました。
では、意見交換は後でまとめて行うことといたしまして、引き続き議事次第4、日本とアジアの金融資本市場の機能強化に入ります。最初に、根本補佐官の方から御説明をお願いいたします。
○根本内閣総理大臣補佐官 それでは、私の方から御説明をしたいと思います。
アジア・ゲートウェイ構想で金融資本市場の機能強化、これまで私も前段でいろいろ御議論もさせていただきましたが、これらも含めて資料1、資料2という形でまとめさせていただきました。
資料2で簡単に説明させていただきたいと思います。まず、簡単に問題意識を述べさせていただき、内容はいずれも検討途上のものでありますが、本日の皆様の御意見も踏まえて、これから練り上げていきたいと思います。
2点目は、資産運用における低い収益性。資金運用側から見ても、十分に利益を還元できていないということが課題であろうと。
3点目、アジアにおける不安定な資金構造と書いてありますが、アジアの資金が直接アジアに環流していない、こういう3点の課題があるのではないかと思います。
今、グローバル化、IT化の進展によりまして、資金は有利な場所を求めてグローバルに動き、企業も最も有利な市場で資金調達を行っております。そのため、世界の金融資本市場の競争が激化していると思っております。我が国の金融資本市場は、政策の視点で書いてありますが、資金の運用者にも調達者である企業にも魅力を感じてもらい、選ばれることが必要ではないかと思います。大事なのは、いかに日本の金融資本市場を使ってもらうかという利用者の視点、銀行や証券会社などの業界からの目線だけでは不十分ではないかと思います。
2ページ目に移らせていただきます。具体的な政策の方向性あるいは検討テーマを考えるに当たっては、目指すべき金融資本市場のイメージというものが必要なのではないかということで、まだアイデア段階でありますが、目指すべき金融資本市場のイメージを提示させていただきました。今後広く意見を伺いまして、イメージを固めていきたいと思います。
イメージとしては「預金者・資金運用者にとっての魅力」「アジア内外の資金調者(企業)にとっての魅力」ということで整理をさせていただきました。
例えば、預金者・資金運用者にとっての魅力という点では、世界最新のIT環境が実現している、あるいは資金調達者にとっての魅力としては、アジアの企業にとっても言語・慣行面などでバリアーなく取引できる金融資本市場であることなどを挙げさせていただきました。実はここに挙げたもの以外にも、例えば、日本に行けばアジアの成長企業の情報は何でも手に入りますよと、世界中から評価されるようになることが望ましいと思いますし、これが実現することで日本がゲートウェイとなり得るのだろうと思います。
このような目指すべき金融資本市場の姿を示した上で、それを実現するための制度や組織の在り方などを掘り下げて検討していく必要があると思います。具体的な検討テーマで3点挙げさせていただきました。
例えば、一例だけを挙げますと「利用者に魅力的な『国際金融センター』実現に向けた改革」の中で書かせていただきましたが、グローバルに投資家を呼び込むために、投資のプロにとって使いやすい市場となることも重要ではないか。国際会計基準の採用や、あるいは英文開示を許容する証券取引所の市場を創設することなどは重要な課題だと認識しております。
また、出席者の皆様から事前に伺ったアイデアも含めまして、これから議論の上、具体化していきたいと思います。
本日も活発な議論を期待しております。
○伊藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、議事次第4について、本日のゲストスピーカー5名の方がいらっしゃいますので、順次、御発言をお願いしたいと思います。
最初に、池尾慶應義塾大学教授から自己紹介も兼ねて、御発言をお願いいたします。
○池尾氏 慶應義塾大学の池尾と申します。金融審議会の委員をやっております。
与えられた時間が非常に限られておりますので、3点だけ手短に申し上げたいと思います。お手元に「コメント」と題した1枚紙があると思いますので、それを御参照いただければと思います。
ただいま根本補佐官から御説明がありましたアジア・ゲートウェイ構想の金融の部分に関しまして、基本的方向性として「金融サービス産業の競争力を高めていくことを国家的戦略目標とする」と書かれております。この点については、大いに賛同したいということであります。ものづくりというのが我が国経済の中心であって、製造業が日本経済を専ら支えているという状況があるわけです。したがって、製造業の競争力を引き続き維持・向上させる努力をしていくことが不可欠であるというのは当然のことですが、しかしながら、だからといって、金融サービス産業というのはものづくり産業に奉仕していればいいのだと、安いコストで安定的に資金供給をしていればいいのだという位置付けにとどめるのは不十分な段階に我が国は来ていると思います。それは、アジアの新興諸国の追い上げの中で、産業構造を高度化していかなければいけないとか、国内のサービス産業の生産性を改善していかなければいけないということを考えた場合に、金融サービス産業それ自体が雇用と所得を生む産業と位置付けて、その競争力を強化していくという観点が非常に重要だと思います。
従来そうした金融資本市場あるいは金融サービス産業について、競争力という観点がやや乏しかったように思います。勿論、市場の競争力というものと産業の競争力というのは厳密に言うと違うことですから、その関連を本来説明しなければいけないのですが、今は時間がありませんので省略させていただきますが、競争力という観点が従来乏しかったと思います。そこに括弧書きしましたように、金融ビッグバンの場合も「Free、Fair、Global」であって、Competitiveということはスローガンの中に含まれていなかったわけですが、現時点ではやはりCompetitiveというものをスローガンの中にはっきりと含めることが必要だと思っております。
その際に、特に資金運用の観点、御報告においても運用の観点というのが強調されておりまして、これは非常に重要だと思います。それは調達の観点がどうでもいいという話ではなくて、調達の観点からの議論というのはこれまで積み重ねてきたという背景もありますから、総体的に言うと不足しているのは資金運用の観点であって、企業に対してガバナンスをきかせるといいますか、ややdemandingな金融資本市場というのを我が国に確立していくことが重要ではないかと思っております。
そうしたことを考えた際に、何をしなければいけないかということですが、狭い意味での法制度という範囲での制度整備は、2000年代に入って一定程度前進してきたと評価できると思います。それは下に書かせていただいていますように、会計ビッグバンと称されるような一連の会計基準の改正でありますとか、倒産法制の全面的な見直しから始まって新会社法が設定されたとか、証券取引法を抜本的に改組して金融商品取引法が成立したとか、そのような形で、狭い意味での金融制度整備はある程度前進したと評価しております。
勿論、制度面での一層の改善の努力をしていかなければいけない問題は多く残っているということは確かですが、総体的に申し上げますと、人材育成でありますとか、先ほど伊藤隆敏先生から御説明のあった空港の利用のようなインフラ整備ということが、法制度整備と並んで重要性を高めている。人材とインフラと法制度という3本柱で考えいかなければいけない時点に差し掛かっているのではないか。
その際に、人材を育成していくという点で申し上げますと、当然のことですが、人材交流を促進するような工夫が必要なのと、日本の金融機関の中では、とりわけ文系が有利で、理系は不利だというのがありまして、メーカーだとエンジニア出身のCEOというのは珍しくないわけですが、多分日本の銀行とか証券会社でエンジニアが社長になれるかというと、その道は閉ざされているわけですね。そういうプロモーションのシステムしかないところで、金融エンジニアが少ないということを言っても、それはインセンティブがそもそも与えられていないということでありまして、単に教育をすれば日本の金融技術が発達するということではなくて、しっかりしたインセンティブを与える必要があって、やはり銀行も装置産業化、IT産業化しているわけですから、銀行の頭取も技術者出身が出るというような形に、金融機関自身の経営改革も図っていくことが重要だと考えております。
以上です。
○伊藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、河合アジア開発銀行研究所所長、お願いいたします。
○河合氏 アジア開発銀行研究所の河合でございます。私は、アジアを対象に仕事をしておりますので、アジアの視点から日本のアジア・ゲートウェイということを数分お話しさせていただきます。
根本補佐官が御用意されたペーパーで、基本的方向、我が国の金融資本市場を利用者にとって魅力的なものにする、そして、日本をアジア・ゲートウェイとするとともに、金融サービス業の競争力を高めていくことを国家的戦略目標とするということに関しましては、私も全面的にサポートさせていただきたいと思います。
まず、日本を考えるときにアジアの視点から考えますと、アジアの中ではやはり香港やシンガポールという非常に進んだ金融市場があるわけです。そして、今、中国がどんどん成長してきている、上海が金融市場としてまた伸びてきている。そういった中で、ソウルやバンコクやクアラルンプールといったようなところも、金融サービスの活性化・国際化にここのところずっと力を入れてきているわけです。
日本でも努力はされてきましたけれども、私が思いますに、今の日本のペースのままですと、アジアの中で日本の金融市場はひょっとすると埋もれてしまうかもしれないという危惧を持っております。
日本以外の主に東アジアを中心にしたアジアの中で何が問題かといいますと、その金融システムにはまだまだ弱いところがあります。アジアの中には非常に大きな貯蓄があるのですが、それが根本補佐官のペーパーにもありますように、ニューヨークですとかロンドンをめぐってアジアに帰ってくるという構造になっています。アジアの中では経済成長が進んでおり、非常に大きな潜在的なインフラ需要があり、企業の投資需要もあります。このアジアの貯蓄をいかにアジアのインフラ投資あるいは企業投資に結びつけていくかということが、アジアの中で非常に重要な課題になっています。
そして、日本の中にも非常に大きな貯蓄がありますので、これがニューヨークとかヨーロッパだけではなくて、やはりアジアにも投資されていく、そして、アジアの中で採算性のある、バンカブルなプロジェクトを日本自身が、日本の金融機関が見つけていく、そういう役割を果たしていくことが非常に重要なのではないかと思います。
東京あるいは日本がそういう日本のリスクマネーをアジアに投資する、さらにそれだけではなく、アジアのリスクマネーを日本に呼び込んできて、金融仲介を行ってアジアに投資していくといったことが必要なのではないかと思っております。そのためには、やはり日本で競争的な金融機関が育つ、しっかりした人材が育つ、より自由で市場志向的な活動ができるといったような体制が必要なのではないかということです。それに基づいて、アジアのさまざまな金融情報、投資情報を日本が蓄積し、アジアに投資していく、そして、高い収益性を得ていくといったことが必要だと思っています。
そうしなければ、やはり日本の金融市場は相対的にどんどん遅れていってしまうのではないかという懸念を持っております。
以上でございます。
○伊藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、倉都RPテック代表取締役社長、お願いします。
○倉都氏 倉都でございます。私は、民間の金融機関でディーラーといいますか、いわゆる金融の工事現場のようなところでずっと仕事をしてきた人間なのですが、アメリカの会社にいたり、香港とかロンドンにいたりという機会が何年かあって、そういう意味では、日本を客観的に見る立場が割と多かったのですけれども、やはりニューヨークとかロンドンとはちょっと違う形での日本の金融の発展の仕方はあるだろうとずっと思い続けていたわけですが、その中で、まさにこのアジア・ゲートウェイ構想にありますように、アジアの経済成長率と日本の資本を結びつけるというのは、非常に理にかなった、非常に有意義な考え方だと私は思います。
その中で、幾つかやや経験則的に言いますと、アジアといいますのは、なかなか直接金融が育ちにくいという土壌がありまして、日本も同じなのですが、どうしても間接金融というものが主流になる。では、これが一気に欧米式に変わるかというのは、なかなか難しいところがあるとすれば、やはり間接金融というものを使いながら、証券化とかいろいろな意味での金融技術を直接金融とのパイプとしてつなげていくと、これは十分可能な環境にあります。
ですから、そういったことを考えながら、今まさに河合所長がおっしゃいましたように、アジアのいわゆるプロジェクトファイナンスといいますか、インフラ整備のプロジェクトファイナンスというものを一つ取っ掛かりにして考える。そういった構想もあるのではないかと思います。
もう一つ、ファイナンスで避けて通れないのは通貨という問題でして、言ってみれば資本市場で通貨問題というのは裏腹の関係にあると私自身は思うのですが、その中で、例えばドルとユーロという世界であれば、なかなか日本の出番がない。そうなると、どうしても日本の円、或いはアジアの通貨ということになります。そういった意味で、資本市場を考えるときには、どうしても日本円という昔ながらの悩ましい問題と直面していかざるを得ないという問題があろうかと思います。
根本補佐官が用意されました資料の中で幾つかコメントさせていただくとすれば、大枠は私も全く異存はございませんけれども、例えば、安心して投資できる環境ということがございます。これは非常に重要なポイントであると同時に、非常にハードルの高い問題なのですが、やはりアジアが対象になりますと、そのリスクを誰が分析するのだ、リスクの判断は誰がやるのだという意味で、非常に信頼感の置ける金融機関がどうしても介在する必要が出てくる、そういったところがポイントになるのではないかと思いますし、いわゆる言語とか慣行のバリアフリーは非常に重要なポイントだと思うのですが、これも既に御指摘のとおり、香港、シンガポールという先行している国がある。そこに対して優位性をどこに求めるかということになりますと、またちょっと違う角度から、やはり日本にいた方が都合がいいといった合理性を強調してアピールしていく必要があるのではないかと思います。
それから、最後になりますけれども、利用者に魅力的なセンター、これは非常に重要なポイントだと思います。ここも利用者といいますと調達をする人、仲介をする人、それから、運用する人といういろいろなタイプがいるわけですが、私も実は池尾先生がおっしゃいましたように、投資、要するにお金を運用する人をどうやってアクティベートするかというのは非常に大きな問題で、金融というのは電流みたいなもので、プラスからマイナスに流れていくと、そういう回路を設計するのは、確かに環境整備という意味で設計できるのですが、そこに電圧を加えないと電流は流れない。電圧とは何かと言いますと、金融で言えば投資家をその気にさせるということだと思います。そういう意味で、投資家のエネルギーをいかに引き出すかというのを、ここの構想の中に入れて再構築していくといったポイントがあればいいのではないかと思います。
以上です。
○伊藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、中島みずほ総合研究所チーフエコノミスト、お願いいたします。
○中島氏 みずほ総合研究所の中島でございます。
私は、お手元に資料を用意していますが、これに沿って1点だけ、日本からお金をもっと付加価値をつけてアジアに流すべきという視点で申し上げたいと思います。
1ページ目は日本からのお金の流れでございますが、昨年基本的には欧米に8割方流れておりまして、しかも、それが比較的単純な債券投資でございます。欧米に流れたお金がその後、欧米のファンド等で加工されまして、より収益性の高い、かつ、投資先の国の企業等にも恩恵を与えるようなお金としてアジアに投資されているというのが現状でございます。
2ページ目をご覧いただきますと、欧米のファンドの中で最近ではアジアの企業を買収するようなファンドが増えていることを示したものでございます。これがプライベート・エクィティファンドというものでございまして、左側をご覧いただきますと、世界の中でこういう企業投資ファンドの投資先として、アジアを含む日本が19%ということになっております。右側の棒グラフが、これらのファンドが、地域別にどこから来ているかということを示したものでございます。実は、日本はほとんど皆無でございまして、まさしくアジア企業等の企業価値を上げてその上で売却し、自らも利益を図っていく、こういう動きはほとんど欧米のファンドが担っているということでございます。
勿論、企業買収ファンドにはハゲタカファンドのようなものあるわけでございますが、今申し上げましたように、最近では企業価値を上げるという方向で企業を再編していくようなファンドが増えているという点が注目点でございます。こういうことを考えますと、当然日本としてもこのようなお金の使い方を行って、欧米経由で流すよりも、自らが直接アジアにお金を流すという方が付加価値もあるし、アジアの国々の経済・企業にも寄与するということでございます。ベンチャー企業あるいはインフラ関連等と、成長性のある分野でありながらお金が足りないという分野がアジアにはございますので、こういう分野にお金を流していくという形ができるように、是非、政府も協力して日本版のファンドのスキームを構想の中でもお考えいただくということをお願いできればと思う次第でございます。
以上でございます。
○伊藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、吉野慶應大学教授、お願いいたします。
○吉野氏 私は2つパワーポイントの資料を用意してございまして、「アジア地域のネットワーク(1)」というものをごらんいただきたいと思います。
1ページをめくっていただきたいと思いますが、右下にページ数が2と書いてございます。私は政官民学による連携、まず、政治のネットワークをつくっていただきたい。それから、官僚のネットワーク、民間、学者のネットワーク。それぞれがアジアの中で連携というのが非常に必要だと思います。更には、1、2、3、4を上下に加えました上でのネットワークがコンスタントに必要だと思います。例えば、電話だけをすれば安倍総理といろいろな方々がすぐ心と心で通じ合う。そのためには、頻繁に各国に行っていただき、あるいは各国の方が来られることによって、それぞれの心が通じるというネットワークを是非構築していただきたいと思うし、それがいろいろなレベルで必要だと思います。企業、金融、学者という感じだと思います。
次の3ページをごらんいただきたいと思いますが、これまで御議論がありました。3つ円グラフがございますが、左はアジアからどこにお金が流れているかというものであります。青いところがアメリカに42%アジアからお金が流れています。ヨーロッパに37%、アジアからアジアは8%しか流れておりません。
下の図は、どこからアジアに来ているか。アメリカが37%、ヨーロッパが30%です。
右がヨーロッパの図ですけれども、ヨーロッパは域内で65.56%がお互いに回っているわけです。ですから、アジアの場合にはアジアからアメリカ、ヨーロッパに行き、その金がまたアジアに来る。そうすると、結局儲けているのはアメリカ人とヨーロッパ人で、日本は全然金融で稼げないと。
4ページでございますが、これは貯蓄率がいかにアジアが高いかという、Table1と左に書いてありますが、左の方がアジアの企業、個人を含めました貯蓄率、GDPの比率です。これを見ていただきますと、2004年ですと、ほとんどの国で30%以上、40%近い貯蓄率があります。
それから、一番右が投資の比率ですが、左側の貯蓄がしっかりアジアで回れば、すべてアジアの投資は賄えるということになります。
5ページですが、では、なぜこのようになかなかアジアで資金が回らないかといいますと、まず1つは金融商品が余りない。ですから、預貯金か株式か。中間が余りないわけであります。
2番目は、アジアの金融情報が非常に少ないわけです。大体我々に情報として入るのはアメリカとヨーロッパの情報であります。ですから、今後アジアのさまざまなマクロ、ミクロ、部門別、地域別、こういう情報が個人の投資化あるいは金融機関にわかるようにすることが必要だと思います。
それから、3番目は、規制とか税制のさまざまなところがよくわかりません。
6ページをごらんいただきたいのですが、こういう金融情報マトリックスというものが必要ではないかと思います。それぞれの国が税制とか参入要件とか会計基準とか、こういうものがどうなっているのかと。こういうものが一覧表になることによって、それぞれの国が相手の国に投資しやすくなるのではないかと思います。
7ページは貿易のマトリックスを書きましたが、一番右を見ていただきますと、50%以上がアジア域内でお金が回っているということでありまして、貿易の関係では民間が自主的にネットワークを張っております。ところが、金融ではこのネットワークがないというわけです。
8ページをごらんいただきたいのですが、これは直接投資がどんなふうに動いてきたかというカラーの図であります。80〜90年代に掛けますと、シンガポールとかタイというところに直接投資が増えました。それから、一番最近ですと、紫色の下から出ている中国に増えているのです。これは民間の企業の方々が自分の必要性としてこれが動いている。しかし、金融ではこういうところはないわけであります。
9ページでございますけれども、そういう中で今アジア債権市場、伊藤先生とか河合先生を中心に進んでおりますが、これまで進んでいるのは国債の市場、2番目が電力債の市場であります。今後必要なのが住宅ローンの証券化、それから、先ほどもございましたが、インフラ整備のための資金が必要であります。これは、一つのやり方としては、レベニューボンドというように、インフラから入ってきます収入を投資家の方々に変動金利で分配していくというやり方であります。これは先々週、タイの国連でお話ししましたら、国連の方々がこれをインドとかスリランカで使いたいとおっしゃっております。ですから、こういうインフラ整備のための資金、しかも、それが投資信託のように収入に応じて変わるということが必要だと思います。
それから、5番目、アジアでは中小企業が非常に多いわけですから、ここに対する中小企業金融あるいは債権、証券化商品というのが必要だと思います。
10ページは、どういう形でレベニューボンドが組まれるかというものをお示しいたしまして、これは日本の場合ですけれども、一番左が風力発電でありまして、それを例えば固定金利と真ん中がレベニューボンド、それから、出資金に分けることができるというわけであります。
それから、(2)の方をごらんいただきたいと思います。1ページめくっていただきますと、産業構造の図がございます。これを見ていただきますと、左側が日本の付加価値でありますが、製造業が減ってくる中で、金融・保険業が稼げていない。右側がイギリスの図でありますが、製造業が減ってくる中で、金融・保険・不動産で稼いでいる。やはり日本の場合には、金融・保険業でもこれを上に上げるということが是非必要ではないかと思います。
その理由といたしまして、次は英語で恐縮なのですけれども、先々週国連で発表したものです。日本の金融機関がなぜアジアに行っているかといいますと、既に日本の企業が行っているから、それにくっついていくと。そこでの市場の発展性があるからというのが大半であります。ですから、日本の金融機関は日本企業にくっついて資金を供給しているわけです。
その次のページをごらんいただきたいと思いますが、こちらは製造業ですけれども、この場合には新しい生産の拠点あるいは新しいビジネスセンターとしているわけであります。
次のページをごらんいただきたいのですが、どれくらいの期間アジアにおられますかということをアンケートに答えた方にお聞きしますと、製造業の人は4年とか5年と期間が長いわけです。その次の金融業を見ていただきますと、1年とか2年あるいは1年未満の方が多い。つまり、短期間でしか金融機関の方はおられない。しかし製造業は長くいて、そこの現地を知って、それでビジネスをしている。ですから、日本の金融業の場合は、やはり現地を知りながら、そこでビジネスをするということが必要ではないかと思います。
時間の関係で、ここでやめさせていただきます。
○伊藤座長 どうもありがとうございました。
以上、5名の方、それから、伊藤隆敏さんに御発言をいただきました。
続きまして、委員の中から中北座長代理より発言がございますので。
○根本内閣総理大臣補佐官 ここで総理は退席させていただきます。
○安倍内閣総理大臣 申し訳ございません。
○伊藤座長 それでは、引き続き、中北座長代理より御発言がございますので、よろしくお願いいたします。
○中北座長代理 ただいまの補佐官、諸先生方の御報告を聞いておりまして、全く賛成であります。私個人は賛同しています。これは事前の勉強会でもいろいろ議論が出たところであり、改めてその気持ちを強くしたと思っております
ただ、もう一度、東京市場の開放とか活性化という問題とちょっと離れて、アジアへどういった金融面での貢献ができるか。ある意味で、ほかの諸国との差別化ということを考えてみることも重要ではないか。それから、既にありましたように、競争力がいろいろな意味で非常に大きいということを多少客観的に考えてみたときに、次のような補完的な視点ということも重要ではないかということです。
つまり、これまでお話しいただいたことは、あえて言いますと、金融市場政策という開放策のいわばアジア版の議論ということになりかねないと。それはそれでグローバルな議論ですから、アジアというのは当然包摂するわけですけれども、アジアに対してどういうメッセージを我々は送れるかということも考えてみる必要があると思うわけです。
そういう意味で、どういう協力ができるかということを考えますと、勿論、東アジア共同体構想を推進する中で金融をポジティブに位置付けるということになるわけですが、私はEU型の共通通貨構想といった大掛かりの人的なものではなくて、既にあるものを一つ一つ機能面で積上げていくということが重要ではないかと思います。つまり、テキストブック型ではなくて、既に日本が高度成長期で実習しているものを、やりやすい身の回りから積み上げていくというアプローチが、かえってそういうことも再評価してみる余地があるのではないかと思います。
特に、これからお話しします協同組織金融機関などは、これまでの金融改革あるいは破たん処理という流れの中でそれなりの見直しもしてきて、市場のフィルターにも以前よりは掛かっているわけですから、かなり洗練もされてきているので、そういったノウハウを移転する余地があるのではないかというのが視点であります。
3番目ですけれども、では、具体的に何をやるかということですが、アジア諸国と日本を考えたときに大変大きな技術の差があり、そして、日本は全般的な意味で技術レベルを提供できる余地があると思います。それは金融に限った話ではないということですが、金融面で考えてみますと、大きく2つ挙げられると思います。
1つは、既にお話がありましたけれども、チェンマイ構想などによる危機対応です。これはかえって結束力を高めたということで、名前はどうであれ「IMFのアジア版構想」と言われているわけですが、これは積み上げて官も民も大変協力されておられる。もっとPRしてプレーアップしていくことも重要ではないか。それから、今朝の新聞にもありましたけれども、周辺国にそれを広げていく、インドも包摂していくということが重要ではないかと思います。
更に言えば、パブリックな意味では中央銀行あるいは東証、これはインザマーケットであり、そして、アジアの中にあるという問題意識、ビジョンというものをもう少し打ち出していく。これは純然たる政府の機関ではありませんが、だからといって株式会社でもない。その性格付けというのは非常に難しいのだけれども、こういった官と民、いわば公の役割というのをもっとクローズアップして、そこのいいパフォーマンスを出していくためのいろいろな試みが必要であると思います。いわゆる、パブリック・プライベート・パートナーシップのような考え方が必要になってくると思います。
もう一点は、マイクロファイナンスという意味で、マイクロクレジットと言ってもいいと思いますが、技術、人材、雇用、援助というものを一体的に推進していくプロジェクトとして、日本の協力の余地というものを認識してみるということです。つまり、もう少しミクロの観点から考える。それは4番目ですが、日本の戦後の経験を中小企業、地域開発、重点分野といった面で、いわばそのまま自然に技術移転をして、そこに場合によってはODAもつけて、あるいはいろいろな人材教育というものをセットにして、アジアの地域開発に協力していくということも必要ではないかと思います。
1つは、協同組織金融機関、それから、財投というと日本では余り評判がよくないですが制度金融、つまり地域のお金を地域で活用する。これは、欧米でもアメリカも地域社会ではクレジットユニオンという意味で、8割ぐらいがそういう中で結構競争力もあって活用していく余地がある。
金融の周りには財務マーケットインフラの整備というものも必要。
それから、もう一点はシニア協力隊ということで、これまでの金融機関でメガバンクも含めてですが、団塊の世代がリタイアされる。その再雇用という意味でも、現地指導のいわば担い手として活躍していただく余地があると考えます。これは、ある意味でJICAと今度統合されますが、JBICとの統合後の一体的な協力の絵をどう描くかという問題と表裏一体の問題であり、これは政府にとっても大きい宿題ではないかと思います。
以上です。
○伊藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、私の方からも恐縮ですが、お時間をいただいて1つだけ御報告させていただきたいと思います。
お手元に、総合研究開発機構のNIRAと書いた色のついた紙がございます。これは、根本補佐官とも御相談させていただいて、NIRAでこれまで日本とアジアの金融資本市場に関連した研究をやっておりましたので、その一部を「NIRAアジア金融プラットフォーム小委員会提言サマリー」として本日ご披露させていただきました。今回のアジア・ゲートウェイ構想に併せて、かなり詳しい研究調査をしております。提言の全体をお持ちしても大部になりますので、今日はサマリーしかございませんが、もし御関心がございましたら、後ほど全文をお届けしたいと思います。またNIRAのホームページにも掲載いたします。
時間も限られておりますので、中身に入るというよりも、どういうことをやったかということを一言だけ申し上げます。5ページに金融サービス市場の構成要素についての概念図がございますので、そこを見ていただきたいと思います。先ほど河合さんの方から総合的・包括的なアプローチが必要であるというお話があったのですが、あえて2つ申しますと、1つは、やはり金融サービス市場インフラのグランドデザインを国家戦略としてきちんとつくる必要があるということと、もう一つ、包括的ということで見ると、結局、全体観を捉えながら個別のディテールに入った議論をしないことには動かないだろうということです。その2点から議論させていただきました。
特に、先ほど池尾さんからのお話にも関連するのですが、1つは、市場のシステムのインフラとしてどういうものをつくらなければいけないのかという点を議論しております。もう一つは、既に法制度の改革がかなり進んでいるとは言っても、法規制あるいはそれに関連するいろいろな紛争解決機関等々まで含めて、いわゆる社会インフラのようなものをどうつくるかということについても、かなり詳しく議論をさせていただいております。
この研究会には、6ページにメンバーリストが出ておりますけれども、基本的に、民間の方々で、実際に内外の市場で活動をされてこられたユーザーの方々を中心にお話を伺っております。具体的に、どういうことを今後我々日本として進めていくべきか、ということに関して書いてありますが、また是非、今日の皆さんの御意見等も参考にしながら、我々も研究をさらに進めさせていただきたいと思います。
それでは、今日はたくさんの御発言がございましたので、ここで少し自由討議をさせていただきたいと思います。
最初に、伊藤グローバル化改革専門調査会会長から、主に空港の話を中心にお話がございまして、それから、ゲストスピーカーの方々から、日本とアジアの金融資本市場の機能強化についてお話がございました。限られた時間でございますけれども、ここで自由に意見を出していただければと思います。
○氏家委員 日本とアジアの金融資本市場についてなのでございますが、日本がアジアの成長資金を提供して、資金運用の果実によって日本も豊かになると。これが金融版アジア・ゲートウェイ構想の基本理念かと思いますが、これこそ金融国際化戦略の中核に位置付けられるべきと思っております。
これを実現していくポイントは、先ほどから出てまいりました幾つかのペーパー、特に根本補佐官のところでまとめられました紙に的確に盛り込まれていると思いますが、実務の面から少しコメントさせていただきたいと思います。
今、アジアの優良企業は、欧米の株主と違う観点を持った日本の投資家に是非株を持ってもらいたいと思っています。ただ、こうした企業にとっては日本の市場のハードルというのはかなり高いということです。それは1点目としまして、会計基準の問題があります。国際会計基準にのっとったアジアの優良企業の財務諸表でも、現状では必ずしも日本で受け入れられるとは限っておりません。形式的な会計基準が整っていたといたしましても、その元の国の監査法人がしっかり企業を見ているかという話になってまいりますので、そう簡単に受け入れられないということでございます。
こうした点は、ここが問題だ、あそこが問題だと、だから、日本に来るなということではなくて、日本の政府も民間も、その国の金融システム全体の整備や企業のガバナンスの向上など、さまざまなレベルで知的支援、技術的支援を惜しまないから一緒になって問題をクリアしましょうと、是非日本に来てくださいと。勿論、日本も過剰な規制は直します、税制も見直します、貯蓄から投資へ進めますからという姿勢に変わっていくべきではないかと考えております。例えば、過剰な規制ということで言いますと、諸外国で考えた場合の市場で過去3年分の財務諸表の提出でいいのですが、日本は過去5年間要るというようなことも、アジアの企業にとっては負担になるということです。
2つ目としまして、金融の世界は標準語は英語ですが、英語の開示でいいという市場をつくろうということが、このペーパーにも出ております。しかし、言葉だけ英語にしても法規制の解釈や運用のところに日本固有のものが出てくると、かなりハードルが高くなるということです。根本補佐官のペーパーは非常によくまとめられているのですが、構想の中で提案されている国際会計基準でOKですよ、英語でOKの市場ですよというのを形式面だけではなく、実質面でもグローバルに開かれた市場で、それは日本はもとより世界の、先ほどお話に出ましたプロの投資家であれば使えるというインフラにしていった方がいいのではないか。
それから、3点目ですが、先ほどからお話が何回か出ていますが、個々のアジアの市場というのは規模か非常に小そうございますし、海外からの資金の流入・流出によって市場が大きく振れるというものでございます。また、現地通貨建て投資は為替リスクの問題のほかにも、為替規制等々がある国がございますので、問題があります。したがって、日本を含む海外の投資家が投資をしようかと、気軽に投資をする状況にはなっていないというのが現状でございます。
そこで、例えば、直接現地の株式に投資するのではなくて、投資信託などの形態で、日本の取引や日本のインフラを通すことによって各国の商品に投資できるようにすれば、手間、コスト、リスクの観点から、投資家や金融機関にとって、利用者にとって非常に魅力的になると思います。そのようになれば、個別の企業の証券だけでなくて、いろいろな種類のアジア関連の金融の新商品、先ほどの住宅ローンの証券化もそうだと思うのですけれども、新商品の取引が拡大して、アジアの金融ダイナミズムにあふれた世界に類を見ない市場を育てることができると思っています。
以上です。
○伊藤座長 どうもありがとうございました。
ほかに、ゲストスピーカーの方も含めてどうぞ。
○吉野氏 今の氏家委員のは非常にいいと思うのですが、1つは、ヨーロッパの投資家とお話ししたときの感じなのですが、ヨーロッパとアメリカの方々というのは面でさまざまな金融を見ている。つまり、地域がどうか、あるいはそこの業種がどうか。それでこの株に投資する。それに対して、日本の一部の金融機関の方は点で見まして、この商品がいい、あの商品がいいと。ですから、是非、投資信託のようなものでプロジェクトなどいろいろなものを組んでいただく場合には、まず面で見る、そこから金融商品を紹介していただくということをしませんと、結局、日本人が投資して後で損をして、みんながまたそこに向かなくなったということになると困ると思います。
○伊藤座長 ほかにどうぞ。
○池尾氏 今、氏家さんがおっしゃっていたことを実現するためには、市場型の間接金融を発展させるということが重要だと思うのです。というのは、マーケットに直接参加するプレイヤーがどういう種類の人かということで、必要とされる投資家保護のレベルとか、制度整備の内容が変わってきますから、個人が直接参入するような市場だと、それはある程度厳格なことをやらざるを得ないので、直接参加者をプロに限定したような市場にすれば、開示基準にしろ規制にしろ、自己責任は十分に問うような形でやっていけるという余地が増えると思うのですね。そこに間接的に個人の資金がファンド等を通じて入るというような重層的な仕組みにすればいいと思うのですけれども、その際に重要なのは、やはりファンド等の受託者責任の方であって、制度整備の要請はそこでは重くなるということですよね。マーケットの投資家保護の仕組みはプロ相手だと緩くできますけれども、その代わりに、ファンドとか機関投資家とか一般の金融機関のfiduciaryの部分に関する制度的な手当てというのは厳重にやる必要があるということだと思います。
○伊藤座長 ほかにいかがですか。あるいは空港の話でも何かコメントがあれば。
○池尾氏 空港の話は大前提ですよ。アジアの主要都市に日帰りできないようで、どうして金融センターになれるのかという。
○根本内閣総理大臣補佐官 伊藤先生から非常に具体的な提案をいただきました。更に、国交省と具体的になぜできないか、どうすればできるかということで。
○伊藤氏 できるのです。
○根本内閣総理大臣補佐官 更に詰めさせていただきます。
○伊藤座長 ほかにどなたか。
○中北座長代理 私は、池尾先生の金融市場の再活性化というのは大賛成で、私は10年前から池尾先生とはよく意見交換をしていますが、ほかの皆さんも。ただ、今ものづくりへの回帰ということを割と歓迎するというか、礼賛するような雰囲気も一方で国民の間で大変強いような印象を受けるのですね。それをどういうふうに経済学の分野で考えるかとかいろいろあると思うのですけれども、私はそれを押してでも仕上げあるいは第2段階ということで推進すべきだと思うのですが、もしやるとなると、大変腰を据えてやらないと、ひょっとした国民の反発を招くということも、あるいは誤解を招くということもあり得るので、もっと言うと、政治家の方によほど覚悟を持って臨んでいただくということも、ここでお願いしないといけないかと思います。
特に、例えば5月になると、外資による参画、合併、買収が始まってきます。解禁になりますよね。そうすると、例えば欧米だけではなくて、ひょっとしたら中国の企業が日本企業をM&Aの対象にするとかそういうことも起こり得るので、それは市場原理のまさに成果なのですが、そういう国民感情ということも少し、学者は余りそういうことを考えなくていいということであれば勿論私は万歳なのですけれども、しかし、これはかなり重い問題じゃないかということを申し上げさせていただきたいと思います。
○伊藤座長 どうぞ、ほかにどなたか御意見がございましたら。
○深川委員 先ほど氏家委員からも御指摘があったのですけれども、やはり通貨危機の後アジアの企業というのは真っ二つに分かれてしまったのですよね。本当にローカルで生きていくしかないものと、スーパーグローバルになってしまうところと、真っ二つに分かれてしまって、当分はこれは続くと思うのです。そうすると、日本でせいぜいお相手できるのは、日本にそのまま上場してもらうとか、資金調達していただけるようなグローバルな人たちであって、そういう人たちに見合った枠組みが今あるかというと、多分ないですね。マザーズとかいいじゃないですかと言いますけれども、マザーズの規模ではないわけですね。三星電子にマザーズに行けとはどう考えても言えないでしょう。それははるかに背中が遠くなってしまったので、彼らは今の状態では全く東京市場は見てくれないと思うのですよね。
でも、ああなる前に昔、DRを出したい時期というのはあったのです。DRを出したくても日本にはDRを引き受けてこなす仕組みがなかったので、結局、これも米銀にとられました。今一番大きいアジアのグローバル企業が考えているのは、いろいろなグローバリズムにもみくちゃにされた記憶だけものすごく鮮明に持っているので、自分の国はまともな機関投資家とかがないですから、安定株主というものが存在せず、やはり誰か信用できて安定できて、しかも、自分を適切にガバンナンスしてくれる人にある程度長期に持ってもらいたいという感覚はものすごく強く持っているのですね。そのとき、日本の機関投資家とか日本の銀行を結構頼りにしてきているところがあって、DRをはじめとしていろんな工夫を考える意味があると思います。もうDRの時代ではなく、いきなりリストするという人たちも増えているかもしれないですけれども、今の東京市場の基準ではなかなか困難でしょう。DRみたいなものを一時期持ったりするような枠組みがあれば、企業を育てていくということに寄与すると思うのですね。だから、やはり日本側も相手に見合った商品とか見合った枠組みを開発しないと、
今のままではなかなか立ち行かないと思います。
あと、日本が持っている情報は決してばかにしたものではなくて、邦銀も日系企業もアジアであれだけ事業をやっていて、ものすごい情報量があるのですね。でも、死蔵されていて、邦銀さんの受身な、お上の言うとおりにとにかくついていって、ちょっと失礼ですが、その枠内で何とかしようというメンタリティを超えて、やはり相手国の政府と交渉して、あなたのところはこういう商品がいいじゃないですかという働き掛けができるような枠組みをつくらないと、相変わらずあつものに懲りて、もう日系企業しか貸しません式の状態がまだ続いている。その枠を超えていく努力というのは必要だと思います。
○○中島氏 今の深川先生の話にちょっと補足なのですけれども、まず、前半のお話なのですが、アジアの企業が日本で起債するあるいは資金調達するということばかりではなくて、むしろ日本のお金がアジアに行くということでも、効果は同じだと思うのです。ただ、これも先ほど来お話がありますように、アジアの資本市場というのは、いずれもまだまだ発展度合いも未熟ですし、規模も小さいということがあります。そもそも、日本に外から証券投資が入ってくるというのは、外でファンド等が整備されたから自動的に入ってきたのではなくて、国内の市場が整備されたから入るようになったという経緯があります。DRを日本市場で出すというところであればそれなりに大きい企業と思うのですが、はるかに小さい企業で日本で起債できないところはいっぱいあるので、そういうところをベンチャーファンド的に育てていく意義はありますし、まさにこのように現地市場で企業を育成することを可能とする市場整備に日本の政府の役割というものもあると思います。これは、アジア資本市場の育成を図るという、今までの日本の戦略を、債券市場だけではなくて株式市場についても行うということだと思います。
それから、後段についてちょっと申し上げたいのですけれども、確かに、日本の金融機関はあつものに懲りたという面があると思うのです。ただ、少なくとも私が金融グループの中にいて見聞きしている範囲で申し上げると、基本的には、まだまだ日本のメガバンクといえどもアジアでの展開というのは、アジアの一部の大企業ないしは中国の国営企業のトップグループ的なところとの取引にとどまっているというのが現状でございます。とても、日本国内のように、中堅・中小企業に手を伸ばして貸出をしていこう、あるいは資金供給、資金調達のお手伝いをしようということにはなっていないわけです。その意味では、これは日本の銀行の努力もこれから必要だと思いますし、アジアの市場ないしは企業、産業等に精通した人――これはアジアの方々でもいいと思うのですが――を、いかに日本側としても使っていくかということも、あるいはそういう人を育成して使っていくということも含めて考えていく必要があると思います。
○伊藤座長 中村委員、もし何か製造業の立場からあれば。
○中村委員 ちょっと我田引水ですが、本社の財務運用の仕組みを少し紹介して、アジアの問題を話してみたいと思います。当社の場合は、約20年前から各地域ごとに10拠点のグループ内金融会社を設立いたしまして、今現在はオランダのアムステルダムにハブとなるトレジャリーセンターを去年設立し、年間約20兆円をグループ内で資金決済しております。それで比較的うまく運用しているわけでありますが、アジアについては全般的に税制面の規制が強く、また国ごとに金融制度も異なるということもありまして、現在当社はアジアにシンガポール、香港、マレーシア、中国、タイの5つのグループ内金融会社を持っております。しかし、アジア地域におけるグループ内金融会社の資金集中度(集約度)は約75%で、25%は集中できておりません。特に、フィリピンを管轄しているシンガポールでは、外貨は取り扱えるけれども、自国通貨は取引できないというような規制がございます。
それから、何といいましても、これから事業拡大させて参りたいベトナムですが、これについても金融インフラが極めて未整備であります。カントリーリスクも高いのですが、インフラ制度をきちんと日本の手で整備をしていけば、我々製造業と一体となってベトナムに大きな貢献ができるのではないかと思っています。
1998年のアジア通貨危機で苦い思いをした経験もございまして、私は以前この会議で氏家委員がおっしゃられたように、アジア資金はアジアの中で還流させていくという、そういう仕組みがやはり長期的に必要であると思います。そのためには、アジア共通のバスケット通貨の導入、そして、遠い将来であるけれども、統一通貨というものを打ち出していくということが大事ではないかと思います。今のままでは、アジア諸国すべてが欧米に食われてしまうという危機感を持っております。是非そういう点を考慮いただきたいと思います。
○伊藤座長 どうもありがとうございました。
官房長官、何か御発言ございますか。
○塩崎内閣官房長官 大変勉強になりました。方向としては先生方のおっしゃっているとおりだと思うのですが、幾つか申し上げると、1つは、随分問題点が指摘されていますけれども、特に東京の市場の改革というのを本当にやらないといけないなということは、私も会計小委員長とかやってきて、つくづく思っています。
会社法などにもかかわってまいりましたけれども、例えば、去年ボンベイの取引所に行って彼らの話を聞いてみると、やはり取扱い料とか上場の企業の数とかそういうことも言いますけれども、市場に上場している企業のコーポレートガバナンスの質の高さというものを言うのです。本当に高いかどうかよくわかりませんが。世界で俺のところは2番目だとか言っているのですが、何を言っているかというと、それぞれのコーポレートガバナンス、例えば、独立取締役の定義とか、ほとんどアメリカ・ニューヨークと同じルールブックで、ちゃんと見せてもらいましたけれども、そうなっている。東京というのは、相変わらず社外取締役で済ませている世界で、日本には日本の資本主義があると多分おっしゃるのでしょうけれども。
それから、会計基準についても、今、コンバージェンスについては、一応方向としてそれでいいじゃないかと経済界がおっしゃっているのですが、では、本当にギリギリ詰めていってコンバージできるのかというと、多分経済界のお考えはそういうところまでいっていないのではないかと思います。ですから、コーポレートガバナンスにしても会計基準にしても、書いていただいていますけれども、これまでいろいろやってきた、商法小委員長というものもやっていたものですから、やはり経済界がその気になってくれない限りは、東京市場はそういうふうにならない、質が上がらない。今、西室さんが頑張ってくれていますけれども、ニューヨークと組もう、ロンドンと組もうといろいろやっていますが、やっぱり質の面で質の高い市場だと思われない限りはだめなので、そのキーは日本の経済界も一緒に変わってもらわないと、多分そうならないだろうなと思います。
ですから、ここに書いてあることは全くそのとおりだと思いますけれども、グローバルな市場になろうと思ったら、やはりグローバルな質を持っていないといけない。それはアジアのためにも、今もグローバル競争ですから、アジアの中での競争でもグローバルな競争でも、勝つためにはやはりやらなければいけない。東証の今度の自主規制の機能のトップは、まさに資本市場のど真ん中の自主規制という質を決める一番のところですので、やはりメッセージとして世界に何を発するのかということを、私は考えた方がいいのではないかと思っています。
2番目は、市場の国際化とともに、今いみじくも、みずほの中島さんがおっしゃったのですけれども、日本の金融機関がもっともっと国際的に頑張ってもらいたいなと。勿論頑張っているのですが、先ほどおっしゃったように、銀行も日本の企業のお相手をするのが基本的な仕事ということで、リテールもほとんどやっていないということで、やはりアジアは言ってみれば日本の庭ですから、こっちから出て行かないで日本にだけ来てくださいと言ってもなかなか難しい話で、やはりこっちからどんどん出ていって、デファクトスタンダードをつくるという努力もしていただくとともに、やはり世界の金融機関から恐れられるような金融機関に銀行も証券もなっていただいたらうれしいと思っています。
タイと日本の間のFTAの交渉が一応一段落になっていて、少し政権の関係で止まっていますけれども、アメリカとタイの間のFTAの交渉で最大の問題になったのは2つあって、1つは知的財産で、もう一つは金融なのです。日本は早々と下りて、もうほとんどできてしまっているけれども、全く金融のことは入っていません。したがって、デファクトスタンダードはアメリカがつくるという格好になるのだと思います。
中国もやはり銀行はHSBCとかヨーロッパ系は強いのと、シティ等も強いのでしょうけれども、やはりこっちからデファクトスタンダードを持っていってなじんでもらって、日本スタイルもいいじゃないかとなるぐらい根を下ろしていくことが、また日本に来てもらうことにもなるのではないかと思っています。
いずれにしても、市場と金融機関と両方とももっといろいろ改革をしていって、日本の強さというものを証明していければと思います。
○伊藤座長 どうもありがとうございました。
それでは、議事次第5のテーマなのですけれども、「国内市場型」産業の競争力強化に移ります。
最初に、根本補佐官から御説明をお願いしたいと思います。
○根本内閣総理大臣補佐官 それでは、アジア・ゲートウェイ構想の柱の一つである、「国内市場型」産業の競争力強化につきまして、私の方から説明をさせていただきます。
資料3、資料4を用意させていただきました。資料4を中心に御説明させていただきたいと思います。1ページのポイントで説明をさせていただきます。
農業やサービス業など、従来国内需要への対応ばかり考えていたような産業をいわば「国内市場型」産業と称しましたが、総じて競争力が弱いという状況にあります。「国内市場型」産業が成立した理由、そして、今起きている変化を3つに整理しました。
右肩上がりの経済成長が終焉しまして、国内市場は飽和傾向にあります。一方で、アジアは急拡大をしているという需要面での変化が出てまいりました。一方で、冷凍技術や電子商取引などの物流・IT革命がありまして、今まで不可能だと思っていたことが可能になってきたのではないか。国内外の直接・間接の参入障壁も低下しておりますし、資本だけでなくて人の移動までも自由化の流れにあると。
「国内市場型」産業が国際展開することで、スケールメリットの獲得や海外のノウハウ吸収などによる生産性の向上も期待できるだろうと思います。直接投資による国際展開は所得収支の黒字を拡大し、投資立国にも貢献するのではないかと思います。
産業ごとに当然特性も課題も異なりますが、大きな政策の基本的方向として共通課題を3つ抽出させていただきました。
1つは、市場のボーダレス化に対応した経営改革・構造改革が必要だろうと。特に、アジア市場のさまざまな情報を集め、活用する経営力が重要で、そのためにも、国際人材を育て、受け入れることがカギになるだろうと思います。
2つ目は、魅力的な財・サービスの提供・発信であります。日本の魅力、日本の強みを活かして現地ブランドといかに差別化するか。この点は、次回の戦略会議のテーマとも関係しますが、魅力的な財・サービスの提供・発信が2つ目の共通課題だろうと思います。
3つ目は、海外ビジネス環境の整備で、投資障壁も撤廃し、知的財産権の保護といった法制・規制の話と、広い意味での産業基盤の話の両面があるだろうと思います。
資料の2ページ目に、最近の事例を紹介させていただきました。1つは、農産物の輸出、成功事例が出てきております。私も上海、香港に1月に出張し、成功例と潜在力の大きさを目の当たりにしてまいりました。やはり、基本は販売力のある農業経営を育成することが課題だと思いますし、日本の食文化を発信して、日本産のブランド価値を高めていくこと、あるいは検疫手続の円滑化などによる輸出環境を整えていくことも、農産物の輸出については必要ではないかと思います。今回は時間が限られますので、説明は省略いたしますが、3ページ目以降に、「国内市場型」だと思っていた産業のアジア中心の展開例が出てきております。
例えば3ページ目は、中国で育児産業が展開しております。あるいは大手楽器メーカーがピアノの販売と同時に、中国で音楽教室を展開するという事例も出てまいりましたし、大学も海外進出の時代に来ております。
4ページ目は水関連ビジネス。これは大分のミネラルウォーターの輸出例、これも私も中国で直接見てまいりましたが、中国の富裕層に健康志向が高まっておりますから、ミネラルウォーター消費が拡大している、あるいは日本に中国の観光客が工場を含めて見に来るという事例も出てきております。水の輸出と観光の両面で地域活性化が図れるという状況も出てまいりました。
更に、5ページ目は建設関連ビジネス。これも日本の建設技術力で建設関連の展開、一時低下しましたが、最近また出てまいりました。
あるいは、6ページ目で、安全・安心に関するニーズも増大しておりまして、大手の警備会社が中国で警備サービスを開始するという事例も出てきております。
要は、安全性や技術力などの日本の強みを活かして、高付加価値化を図っている事例が多いということがこれからもわかりますが、こういった面が非常にこれからの可能性として大事だろうと思います。やはり成功例をどれだけつくっていけるのか、共通課題として人材育成などを挙げましたが、そのほか特に何を重視すべきか御議論をいただきたいと思います。
○伊藤座長 どうもありがとうございました。
ディーパーインテグレーションということで、今までなかったようなものがいろいろ出てきたというお話だったと思いますが、何か御意見・御質問がございましたら、どなたでもどうぞ。
○中北座長代理 1点だけ。水のビジネス、水道の話というのは大変関心がありまして、日本の場合は民間の企業というのではなくて、多くは国をはじめ自治体がほぼ独占してきて、高い技術を自治体にいる技術系の方が持っていると。ですから、いきなりマーケティング、販売という前に、実際には民営化という形も視野に入れながら検討していくことが必要なのではないかと思います。今、地方ではいろいろ財政の問題もあって再編していますが、そういったものもきっかけになるのではないかと思います。大変いいことだと思うので、推進していただきたいと思います。
○伊藤座長 ほかにございますか。
○宮田委員 3ページに楽器メーカーのお話がございましたが、これはもろ産業になります。それは楽器だけではなくて、美術系のものも含めて非常に面白いです。工具にしても何にしてもはるかに日本は優秀ですので、それを皆さん求めておりますから、それと同時に人材、テクニックの両方を持っていく。それから、日本へ呼ぶという関係が必要かと思います。日本に来た人たちは、向こうで必ず指導者になっておりますので。
○伊藤座長 ほかにいかがですか。
○中村委員 ちょっとデータも何もないので恐縮ですが、今、東京、大阪でブランド物をお買いになる中国、韓国の人が急増しています。それはなぜかと思い、この間、中国の人に「なぜ香港に行かないのですか?」と聞きましたら、「香港に行くと偽物をつかまされる」ということなのです。今はやはり東京、大阪しか本物は売ってないというわけです。また、ここが中国の人の面白いところですが、ロレックスを3つ買って、2つ売って1つただにするという。まさに、これはボーダーレスなのですね。何十年か前、日本人がパリやミラノに行ってやっていたことが今、外国人がやってきて日本で起こり掛けているといえます。これはやはり「ホンモノ日本」と銘打って売り出したら面白いのではないかと思うのですが、御参考まで。
○白石委員 留学生の問題は、また別の機会に恐らく議論されることになると思いますけれども、3ページの大学の海外進出の関係で、是非、国費留学生制度そのものを一度見直す必要があるのではないだろうかと私は思っております。ここの問題だけに限って申しますと、仮に日本の大学が外国に進出して、いい学生を引きつけようと思ったら、国費留学生、勿論大学がちゃんとファンドを持っていて、フェローシップを出せればいいですけれども、日本の大学というのはそういう力はありませんので、そうすると、どうしても国のお金でそれを戦略的にフェローして使うような仕組みをつくらなければいけない。今のシステムだとそれはできませんので、そういうことも含めて、是非ある機会に国費留学生制度の問題は御検討いただければと思います。
○伊藤座長 前にもおっしゃっていましたね。やはり戦略性がないというのは一度メモでも出していただけるといいと思います。
○塩崎内閣官房長官 どうやったらいいですか。大使館推薦はやめる。
○白石委員 そうです、大使館推薦はやめる、それは間違いなく。それから、もう一つは、大学がある実績に応じてフェローシップをあらかじめ持っている。それを大学がアドミッションして出すようなシステムというのがいいと思います。ですから、大学の自由度を上げる。
○伊藤氏 合格者につけないと。合格できないような人にあげていてはいけない。
○伊藤座長 ほかにございますか。
○伊藤氏 倉都氏 水の関連のところで、いわゆる環境問題というのがありますけれども、温室効果ガスの売買市場という問題が、これは金融とは直接関係ないのですけれども、割と間接的に金融とセットになるところでして、欧米の金融機関というのは割とこの分野に熱心なのですね。これは今はほとんどヨーロッパが主導でやっていますけれども、アメリカでも動き出しましたし、新聞によりますと、今度は中国が国連と組んで何かやると。その辺に関して日本の動きというのが、余り私自身は見えていないのですけれども、金融機関辺りが少し絡んだような排出権市場のプロジェクトというものも一つ考えられていいのではないかという気はしています。
○伊藤座長 時間が大分迫ってまいりましたので、ここで議事の進行をお返ししたいと思います。
○根本内閣総理大臣補佐官 ありがとうございました。
本日は、アジアの金融資本市場の強化について具体的な提言をいただきました。
先ほど申し上げましたように、私がまとめさせていただいているたたき台はアイデア段階のものを随分入れていまして、具体的な制度の中身は、今日の先生方の御意見も踏まえて、具体的な内容については更に詰めさせていただきたいと思います。
それから、伊藤隆敏先生の御提言は、総理も官房長官も私も基本的に同意していますから、またお知恵を拝借しながらやらせていただきたいと思います。
総理からは、国民が実感できる改革あるいは一般の投資家やアジア内外の企業などの需要者に魅力的な市場を目指すべくという発言がありましたので、このアジア・ゲートウェイ構想の視点は、いかに日本の金融資本市場を使ってもらうかという利用者の視点でありますので、この視点に基づきまして、更に先生方の意見を踏まえて引き続き詰めていきたいと思いますので、御協力をお願いしたいと思います。
それから、「国内市場型」産業は、残念ながら時間が短かったので十分な議論ができませんでしたが、宮田委員と中村委員の御指摘・御提言は、次回にやります日本の魅力の向上・発信という中で、再度取り組ませていただきたいと思っております。この「国内市場型」産業については、別の機会を設けて、有識者の皆様を交えて議論を深めていきたいと思います。
次回の3月の戦略会議は、アジアの活力を取り込む地域戦略と、日本の魅力の向上・発信というテーマを扱いたいと思います。政策課題の抽出ということで、3月は中間的な整理を行う一つの節目にもなりますので、盛りだくさんの内容になるかと思いますが、精力的に検討を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
本日はありがとうございました。