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第2回BT戦略会議 議事録


1 日 時:平成14年8月30日(金) 13:30〜14:40

2 場 所:内閣総理大臣官邸 大会議室

3 出 席 者:【別紙】

4 議事内容:

(1)開会
○岸本座長 それでは定刻になりましたので,ただいまから「BT戦略会議」第2回の会合を開催させていただきたいと思います。皆様方お忙しいところご参集いただきまして,誠にありがとうございます。なお,本日は小泉総理は他の公務のためご欠席でございます。

(2)起草委員会の設置について
○岸本座長 早速ですが,まず前回設置をご了承いただきました起草委員会について,そのメンバーをお諮りいたしたいと存じます。起草委員には,伊丹,井村,歌田,大石の各委員にお願いしたいと思います。起草委員長には伊丹委員にお願いいたしたいと思います。
 起草委員会には極力私も出席させていただきたいと思っております。起草委員以外の有識者委員にも,そのテーマごとに応じてご参加いただく機会を設けたいと思っておりますので,よろしくお願いしたいと思います。以上のとおりで,よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

(3)BTをめぐる現状と課題について
○岸本座長 それでは,起草委員の先生方よろしくお願いいたします。
 本日は,はじめに事前のお申し出をいただいています委員の方々からお考えを述べていただきまして,その後,各大臣からご意見を伺い,自由討論にしたいと思います。前回は3人の委員の方からご意見をいただきましたので,今回はそのあとの7名の方々から資料提出いただきましたので,ご意見をお伺いしたいと思います。前回は,お一人1分とお願いして失礼いたしましたけれども,今回は少し余裕がありまして,お一人4分以内でお願いをしたいと思います。
 それでは,五十音順に,まず伊丹委員からお願いします。

○伊丹委員 4倍の時間をいただけて,感謝の限りでございます。まず,私の資料1をベースに,大胆不敵にも私が考える3つの鍵と申すようなものをご説明してみたいと思います。
 ページをめくっていただきますと3つ大切なことがあると思っております。1つは,BTへの国家予算投入を多分5倍くらい増やさないと,これは長期的な将来が危うい。2番目は,前回申しましたように,この産業は非常に産業と研究の現場が短い。その短いつなぎをきちんとするために,産業側の受け皿の構造の大改革を,多分しなければいけない。3点目は,日本の強みを生かして,バイオエレクトロニクス,少し変な言葉ですが,広い意味のバイオとエレクトロニクスの融合分野に特に集中した方がいい。それが結論であります。
 それぞれ内容をご説明しますと,まず第1の鍵,「国家予算の5倍増」ですが,これは日米のライフサイエンス関連の予算を単純に比較してみますと,前回も井村委員からご説明がありましたが,アメリカではNIHだけで3兆円の国費を毎年投入している。日本では,各省庁合わせて大体4,400 億円程度,これを5倍にしたとしてもまだ2兆円強です。追い付く側がより少ない投入で追い付けるかという極めてシンプルな問題がございまして,その問題をお考えいただくために,エレクトロニクス産業で,日本が今から30年前にアメリカにどんどんキャッチアップしていったころに,人材の投入として,どれくらいの大学の学士号を取った電子・電気関係の人たちが,日本とアメリカで毎年生まれていたかという3ページのグラフをご覧になりますと,実線が日本で,点線がアメリカです。70年代を見ていただきますと,印が付いたのは日米倍率ですが,一番ピーク時の77年には日本はアメリカの1.8 倍の学士を,毎年送り出していました。日本の人口は半分ですので,ざっと言って国民一人当たり4倍の数がいた。だから,多分追い付けたのだろう。それと同じようなことを,今,考えなければいけない時期ではないか。それか第1の鍵です。
 第2の鍵,産業構造の大改革です。この点については,私は産業側の話を主に申し上げますが,産業側の受け皿としてベンチャーの重要性については,広く既に言われているところですが,これがなかなかうまくいかない。おそらく日本の社会の様々な構造上の理由があって,この大きな手段に改革の受け皿の中心を任せるのはおそらく得策ではない。したがって,大企業セクターをどのように活発化させ,再編成し,それが受け皿としてうまくいくかというのが,おそらく日本型のモデルになるのではないか。更にベンチャーも当然大切ですので,大企業とベンチャーの間の連携のあり型が,アメリカのようにベンチャーが動き,それが買収されていくというだけでよいのか。あるいはベンチャーがそのまま成長していくというのではなくて,日本型の何か連携の仕方を深く考えるということが必要です。
 なぜ,大企業セクターの再編成が必要かということをご覧いただくために,5ページ,6ページの2つの表は,医薬と化学の世界ランキングを載せたよくある表ですが,例えば,ベスト50に日本の企業が登場するか。これは日本が強い自動車やエレクトロニクスですと,ベスト10に必ず日本の企業が2割,3割登場してまいります。いかに日本の企業の規模が小さいかということがよくおわかりいただけますし,7ページの「ポスト・ゲノム関連分野の日米欧の特許出願者の比較」という円グラフを見ていただきますと,日本と欧州を比べていただきたいのですが,特許を取った人は,日本も欧州も大企業が中心である。アメリカはベンチャーが中心ですが,日本と欧州は構造が似ている。しかし,その欧州は大企業が先ほどのランキングでは上位に何社もおります。つまり,日本は相当数が,比率はこうだけれども,絶対数が相当少ないということはご理解いただけるかと思います。
 3番目は,バイオエレクトロニクスの集中ですが,バイオとエレクトロニクスの融合,例えば,様々なチップや,あるいは解析機器,さらには全く新しい原理のコンピュータとか,そのようなものをバイオテクノロジーの技術を利用して,そちらに行くというようなことが日本の取るべき道ではないか。過去,日本の産業が様々に成功してきたパターンの1つの基本的な典型は,異なる分野と思われていた技術の融合に成功した例です。ここでも,それが多くを占めています。事実,それに対する動きは起きているようでして,9ページ目を開いていただきますと,これは日米欧のポスト・ゲノム関連技術の特許出願人の上位15社を書いたものですが,日本では日立製作所,富士通,日本電気という電気会社が上位15に3つもあります。アメリカ,欧州はご覧いただければわかるように,医薬品ばかりです。どのようなところに関連があるのかという一例として,「バイオ産業連関マップ」と,よくこの産業分野で言われますマップを示しました。このツール,情報というところで,おそらくエレクトロニクス,ITの技術は生きるであろう。
 最後に,この会議での議論として3つのことを中心的に考えた方がいいのではないか。1つは,逆張り戦略です。遅れてキャッチ・アップする日本が,アメリカと同じことをやっていたら,おそらく追い付けない。逆張りが必要です。2番目は,産業全体への影響を考えて,ポスト・ゲノムとか医薬品だけではなくて,食品,エネルギー,情報などの広い関連を考えるべきです。3番目は,わかりやすい目標像を,国民の理解を得るためにもきちんと作らなければいけない。この3点を公表したいと思います。

○岸本座長 5年くらい前アメリカで,これからの科学の中心はコンピュータとDNAの結婚であると言われていましたが,そのような面で,日本もコンピュータもある程度強い,ライフサイエンスも同じですが,いわゆるバイオ・インフォマティックスという分野が非常に遅れている。そういう境界領域があり,これからはそれがないと,薬をつくるにしても,何をするにしてもいけないのであり,そういう分野をどうしていくかということを考えなければいけないと思います。
 それでは,次に大石委員,お願いいたします。

○大石委員 大石でございます。資料2にまとめてまいりました。
 私,いろいろ考えたのですが,皆さん個々の問題について非常に貴重なご意見はあったのですけれども,私自身,非常に長い間外国にいたということと,それから現在もかなり外国との情報交換がありますので,客観的に見た日本のバイオテクノロジーが現在どういうものであるか。それに対する対策及び展望をまとめてみました。
 まず1ページです。これは皆さんから指摘されていますように,現在のところ非常に遅れが著しいというわけではありませんが,かなり現在は立ち遅れています。その原因をもう一度ここできちんと押さえておく必要があるのではないか。はっきり言えば,新しいバイオのような革新的なテクノロジー,これはITもそうですが,国家的戦略の確立及び思い切った集中投資が決定的に遅れてしまった。
 参考資料1ですが,これは5ページと7ページをご覧いただきたいと思いますが,5ページはアメリカの学生がどのような形で変化しているか。これは85年から95年の10年間ですけれども,生物学の場合には,医学も含めまして約5割の増加です。それと同時に,7ページをご覧いただきたいのですが,これはアメリカの大学における政府の予算の分布です。医学部を含めた生命科学が現在のところ,7年前の1995年が約59%,残りの41%がそれ以外のすべての自然科学です。おそらく,日本は生命科学への配分が30数%と,私は現在推定しているわけです。
 2番目には,バイオテクノロジーについての技術開発,すなわちバイオテクノロジーの持っている特色の理解が非常に不十分だったということと思われまして,これは従来の企業化,いわゆる技術からの企業化と根本的に違う開発方式ですので,その点について8ページから10ページまで,私なりの資料をまとめてまいりました。
 それから,その次の2ページですけれども,このような現状で,私自身,かなり厳しい日本のバイオについての印象を持っているわけですが,いろいろありますが,大きく分けて,この前も少し申し上げましたが,いわゆる数が有限なヒトの遺伝子,約3万から4万ですが,これを今猛烈な勢いで外国は特許化しています。ヒトの遺伝子は新しくつくることができませんので,あと100 万年くらいすればもう2つ3つ増えるかもしれませんが,現在,これをどのような形できちんと外国企業が急激に所有権を確立して囲い込みをしているということでして,それに伴って懸念される結果,これはこの前坂口厚生労働大臣からコメントがありましたけれども,やはり外国企業による特許化と独占,それをもとに開発された外国製医薬品の輸入による医療費,医薬品費の国家負担の増加が非常に懸念されます。
 もう一つは,これは割合日本では重視されていないのですが,現在,外国ではアグリテクノロジー,農業へ膨大な投資を行っております。これによって既に農業を,単なる農業という形ではなくて,近代産業としてとらえつつありまして,それで非常に高品質な安価な農作物をつくって,現在,外国に輸出している。これはいろいろな問題があるわけですが,基本的なトレンドは私は変わらないと思っています。それによって,我が国の近代化と遅れと食料自給率が一層低下するのではないか。これは私個人の問題も含めまして,非常に懸念しているところです。
 3ページです。今後の対策としては,やはり皆さん方から指摘されていますように,バイオ研究,技術を21世紀の国家的技術戦略の中核の1つに据えていただきたい。特に日本の持っているバイオテクノロジーの幾つかの優位な点,これは参考資料IIIにまとめてきましたが,これを是非戦略的に優位にしていただきたい。11ページに,私なりにまとめてまいりました。
 日本のバイオ,必ずしも見捨てたものではなく,ここ数年来,非常に基礎的な分子生物学を中心とするバイオ研究のレベルが上がっていること。それから,伊丹委員からご指摘がありましたように,電子とか精密機械,工学などの関連技術が非常に優れていますので,これをDNA解析,分野は限られていますが,そこへ使えるのではないか。それから発酵技術,バイオプロセス技術,農作物の品種改良技術。これは,おそらく世界的なレベルに行っていると思います。
 その次は,特許の数は,日本のバイオの特許は結構あります。しかし,基本特許が非常に欠けているということが問題だと思います。これはやはり基礎的な研究を重視していかなければ,基本的にはいけないのではないか。応用,応用と偏るよりも,やはり基礎的な研究を車の両輪のように重視することが大事だと思っております。
 最後は,現在の国の研究機関というのは,ともすれば新しいバイオの研究体制に対応していないのではないか。ですから,そのためには,基礎から応用,開発を同時に行うような研究機関を新しくつくって,そこにバイオの持っている特徴を生かすような形でつくりたい。既に現在ある大学の国家研究機関の研究体制の抜本的な見直しが必要なのではないか。これは12ページから14ページに,現在の国立大学及び研究機関の主な問題点とその解決案,私自身が過去何年間でまとめたものをここに書いております。
 大体そういうことですが,最後に将来の展望として,世界的科学技術国家としての復権を目指す,これは当たり前のことですが,是非これをバイオを中心として目指したい。もう一つは,科学技術による世界への貢献。これは特にバイオテクノロジーというのは,ほかの科学技術と比べまして,人道的な面が非常に強い。人類の生存とか,医学とかという面がありますので,そういうことを通じて技術援助をしていくという意味においては,経済的な援助よりも,私としては,経済性もありますし,インパクトも強いのではないか,そう思っております。以上です。

○岸本座長 どうもありがとうございます。非常に重要な点をいろいろ指摘していただいたと思うのですが,例えば,卒業生の専門分野を見ましても,日本では,例えば大阪大学で卒業証書を授与するときに立ち上がる人は,会場の半分以上は工学部で,これは工科大学かと思うくらい工学系が多いわけです。生物系は非常に少ない。やはり急がば回れで,バイオをよくしていくためには,大学院における生物系の人材を増やす,そういう分野の学部を増やす,バランスをこれから変えていくということが重要なのではないかなと。20世紀型の産業から,21世紀型の産業,サステーナブルなグロースということを考えた場合には,やはりそういうことではないかと思います。
 最後に言われた新しいバイオの研究所と言いますか,日本にもいろいろ厚生労働省,文部科学省,経済産業省の研究所があるわけですが,うまく統合してNIHのような全体バイオ,生命科学をそこで全部するということになれば,リダンダンシーがなくなったり,いろんな良い面が出てくる。非常に難しいことですが,そのようなことを考えに入れていっていいのではないかなと思います。
 一番大事なことは,長期的には人材の育成だと。すべてのことにそれは関わってきます。生物系の人間を,カルフォルニア工科大学とか,マサチューセッツ工科大学といっても,今は生物系の方が多いくらいで,そういう意味で,日本の大学のバランスを変えていかなければならないとも思っております。次は,庄山委員にお願いいたします。

○庄山委員 資料3につきまして,ご説明いたします。
 私からは,産業界全体の立場を踏まえまして,BT国家戦略の構築に当たって重視していただきたい基本事項について申し上げたいと思います。
 1ページ目に「BT戦略の意義」を確認しておきたいと思っております。本会議の目的は,バイオテクノロジーという技術革新を,日本の経済社会にいかに適用させるかということで,技術革新の積極的活用戦略を策定することだと思っております。そのためには,もう既にお話に出ておりますが,医療と健康,食品と農業,環境とエネルギーといった分野にわたって,このイノベーションを起こして,国民生活の向上と産業競争力強化につなげることだと考えておりまして,そのためにBT戦略の骨子を示しております。その中から代表的なものについて,以下2ページ以降ご説明したいと思います。
 最初に2ページ目ですが,「国民にメリットがわかる目標の設定」が必要だと思っておりまして,例えば,「世界一健康な国をつくる」という例ですが,バイオテクノロジーそのものは治療医学ですとか,予防医学に革命的な発展をもたらすものだと認識しておりまして,その結果,例えば国民生活の質的向上だけでなく,医療費の削減でありますとか,経済の活性化というものが期待される効果としてあると思っております。それが具体的に数字となって表れませんと,本戦略に対する国民の理解というのが得られにくいのではないかと思っておりまして,例えばこの目標,下にグラフで書きましたが,例えばがんの死亡率を減らすとか,あるいは「健康寿命の延伸」をはかるというようなことを目標に掲げていただきたいと思っております。
 3ページ目,次にBT戦略の重点政策とすべき項目を申し上げたいと思います。最初は,これも既に出ていましたが,戦略的知的財産権の取得です。バイオ特許は,繰り返しになりますが,今後,海外に押さえられた場合には非常に大変なことになってしまう。今後の我が国の国民生活においては,大きな負担となるということでして,国としても基本的なバイオ特許の取得に向かいまして,全力を傾注すべきであると思っています。そのために特許化支援体制の強化が必要でありますし,バイオ関連の知的財産分野における人材育成,あるいは政府による戦略的なバイオ特許政策の推進が重要であろうと思っております。
 次に4ページ目ですが,第2の重点政策といたしまして,研究開発の強化です。研究開発投資の継続的な拡充が重要でして,その際,基礎研究と実用化研究の一体的な推進が重要です。しかも,ページの右側に書きましたが,バイオテクノロジー,ナノテクノロジー,IT,情報通信技術といったBT,NT,ITの融合に留意することが必要だという認識です。特にバイオ・インフォマティクスでありますとか,あるいはDNAシーケンサなどの解析機器ですとか,あるいはナノテクを使ったチップによるDNAの解析は,機能解析の決め手となるのではなかろうかと思っておりまして,こうしたところは日本の強みも発揮できる分野ですので,研究開発力の強化が必要です。これらの特質を考えてみますと,研究開発にあたって産学官の連携,医学と工学,あるいは省庁横断などの連携は非常に重要なことで,連携が必然のものになってくるという認識です。
 5ページ目は,重点政策の第3は,バイオテクノロジーの産業化のための環境整備です。全く新しい段階に入った,バイオ分野の技術革新を産業化していくためには,医療や食品等における制度,ルール等の整備が成功の鍵を握ってくると思っております。例えば,新しい医薬や,医療機器に対する審査の問題,治験の適切かつ迅速な実施,個人の遺伝子情報などに関わる制度,ルール等の整備が必要なのではないかという認識です。特に医療分野で,技術革新を患者さんなどに最も適切に生かしていくことが大切であろうと思っております。
 そのためには,医療保険,薬価等,諸制度をどう改革したらよいのか。あるいは財政上の問題や,公平性の観点なども考慮しながら,小手先ではない抜本的な改革論議を行う必要があると思っております。産業化にあたって特に重要な点としては,このほかにコンピュータの共同利用環境の整備など,研究開発成果の産学官による有効な活用や,ベンチャーの支援などがあげられると思います。
 なお,ご説明で触れませんでしたが,いろいろな課題につきましては,日本経団連としてまとめた資料があり別紙にとりまとめましたので,ご検討のほどよろしくお願いしたいと思っています。
 以上でございます。

○岸本座長 どうもありがとうございます。それでは,次に杉山委員。

○杉山委員 それでは「植物BTをめぐる現状と課題」と題しまして,今日は市場の現状,それから近い将来予測をベースにして,実用化,産業化に向けての戦略を構築するという上で,植物バイテクに特徴的な課題を指摘させていただきたいと思います。
 まず最初の資料をご覧いただきたいのですが,これは我が国の植物関連バイテク市場の現状です。これは既に先立つ委員が触れておりますので,詳しいことは申し上げませんが,1.2 〜1.3 兆円の中で,およそ25%が農林と食品,つまり植物に関連の深い市場だと判断されます。農林関係市場の圧倒的な部分というのは,ご存じかと思いますが,輸入の遺伝子組換え植物が主体です。2番目に位置するのが,近年,私どもの身近にもなってきた組織バイオ,種苗というものが占めているとお考えいただいていいと思います。
 農業バイオの世界市場は,2010年にはおよそ2,500 億ドル,日本円で300 兆円という見込みがなされていますが,遺伝子組換え技術の実用化にブレーキがかかっています。したがって,予測どおりに事が運ばないという可能性も指摘されています。しかしながら,今年の2月号の雑誌『Science 』で詳しく報じられていますように,中国のこの分野での進展は非常に目覚しいものがあります。具体的には組換え技術を駆使して,世界市場に参入展開をはかりつつあるということです。こういった発展の原動力は,欧米からの頭脳流出組を呼び戻すといったこと,これによって国の基盤研究を活性化させるということが1つ根底にあると思います。
 もう一つは,害虫の防除を強化した遺伝子組換え作物(ワタ)などを中心にして,ユーザーの立場を重視した技術展開もあると,このリポートは報じております。我が国でも遺伝子組換えの技術開発は,将来に備えて必ず努力しなければいけないところですが,その場合にユーザーの立場で社会的な理解を得るといった努力が必須であると思います。
 次のページをご覧いただきますと,これは我が国のバイテク市場における環境産業の市場規模の将来予測と植物関連バイテクの展開です。これは現状として,1997年と2010年,市場規模を予測したデータですが,これによると市場規模は25兆円から40兆円に達すると言われています。右のコラムに私が要約しましたように,環境修復と保全機能,それともう一つは,太陽エネルギーによる植物のものつくり機能の活用が,今後,環境産業市場に大きく展開されることが期待されています。
 次のページは,これは私が今回申し上げるまとめですが,産業化・実用化促進に向けての植物絡みのBTの課題です。先ほども大石委員が紹介されたように,欧米や台頭著しい発展途上国に比べ,私どもの国のアグリビジネスとか,あるいは植物BT産業の活力は総じて低いと言わざるを得ないと思います。しかしなから,我が国を含めて先進国では,基盤となる植物の新しい機能とメカニズムの理解が,近年急速に進んでいるということもご紹介があったとおりです。この機能をいかにして生かすのかという段階に,今や達していると思います。このように,植物バイテクは食料問題だけではなくて,地球環境問題の克服と,国民の健康向上という,いわば二律背反的な課題解決の潜在的な切り札になると考えております。
 植物は,環境を探査しながら,これに適応化するということに秀でた生き物であるということでありますが,この機能を,例えば環境モニターだとか,汚染物質の状況など,環境の保全と修復に活用すべきであります。また,植物は,昨今厄介物扱いを受けている二酸化炭素を主食にしておりまして,ここから様々な物質をつくり上げる。この機能を生かして,薬理物質とか健康維持に資する物質,こういった付加価値の高い有用物質の生産物質を開発して,これまで蓄積してきた我が国の伝統的な産業と申し上げるんでしょうか,発酵とか,化学産業,こういったものにつなげていくということが1つの方法ではないかと思います。また,成分が分解しやすいプラスチックなどの原料や,いわゆるバイオマスとしてエネルギーの提供などの,新しい技術開発の展開が見込めるということです。
 我が国の植物関連バイテクにおいて,産業化と実用化に向けて,特に指摘したいことは,私は2つあります。1つは,大学等の研究機関で得られる基礎研究,これは前回も手短に申し上げましたが,質の高い基礎研究は,潜在的には大きな活用を生むということはご理解いただけると思いますが,その成果は基礎研究を促進するということは言うまでもありません。その成果を業界の目に見える形にする。いわゆるシーズからニーズへの橋渡しの体制の強化と整備が実質的に必要だと思います。質と独自性の高い基礎研究を発掘して,実用化へと導く上で,ここでも言われると思いますが,ベンチャー的な技術に加えて,その上流を特に強化すべきであるということです。
 最後になりましたが,前回も手短に述べましたが,アグリ産業界に既に活動を始めて,自動車産業だとか,エネルギー産業などの異種業界の参入を大きく奨励しながら,新しい植物バイテク産業を誘導すべきであると思います。最後に付け加えた参考資料は,私が今述べましたことの,ややディテールでありますので,ご覧いただければ幸いかと思います。以上です。

○岸本座長 ありがとうございます。それでは,寺田委員。

○寺田委員 資料5を用いて説明いたします。BTの目覚しい発展によって,最も大きく変わるのは,当然ですが健康分野でありまして,健康寿命の延伸を目標に,産業界,あるいは研究者だけでなく,国民・患者を巻き込んだ全体の改革が必要だと考えています。このことが,結局21世紀の産業と言われる我が国のBT産業界の発展につながることだと考えます。
 健康分野の特徴は,資料5の1ページに書きましたが,国民・患者,研究者,産業界という4つのプレイヤーの間に,医師など医療関係者が入っているということが特徴でございますし,そのためにこの間も申し上げましたように,BTの一番大事なところは安全性,有効性をパブリック,国としての判断,あるいは標準というところが,ほかの産業とは大いに変わっているところであると考えております。人の命は,一人でも非常に重たいものであるというのが,BTの一番大事なところだと考えます。
 国民・患者を中心にした産業,さらには医療界,規制などをスパイラル的に改革すべきであって,そのためには生命倫理の確保や,国民のご理解を得ることが不可欠です。研究について言いますと,継承的に現実に沿った医療現場,国民のニーズにあった研究を展開することが必要です。我が国では,学問はともすればお茶,お花と同じく,役に立たないことが大事であるということがありますが,その部分も確かに大事なところがありますが,国家目的としてやる場合は,やはり国民の健康を守る,促進するという現実の目的を明らかにして取り組む必要があると思います。
 2ページでは,具体的な治験に関しまして,考えを述べさせていただきます。治験や根拠に基づく医療のための臨床研究推進のためには,医師などの研究者,特に患者,これから多分,予防医学が発達しますと,患者になっていない国民全体,そのための臨床研究を推進することが非常に大事だと思います。そのためには,医師とか看護師さんとか,そういうことだけではなくて,生物統計学者,あるいは国際的な一流の臨床医師の評価に耐え得る研究計画をつくれる生物統計学者を育てないといけないと思います。治験や臨床研究を行った人が恵まれる,あるいは人事の面での評価でも臨床家として優秀であるだけではなくて,臨床研究の実績を持つ人を評価するようなことも必要だと考えます。
 患者さんにとりましては,ともすれば治験というのは人体実験という暗いイメージがありますが,あらゆる機会を通じて,先ほどから出ています,小学校,中学校時代からの生物学に対する教育を含めて,これが一番大事かもしれませんが,患者さん自身にも役に立つということを十分理解してもらい,またお医者さんが立派な臨床医であることが臨床研究をする一番の基になるということを忘れてはいけません。
 臨床研究を妨げる大きな要因の一つは,医学部における学閥であります。この学閥をできるだけなくして,オールジャパンとして臨床の面における我が国最高レベルの病院を,学閥あるいは省庁を超えたネットワークをつくって,欧米に劣らぬスピードと研究の質を確保することが非常に大事だと考えます。
 さらには臨床研究で先端医療をやるためには,臨床そのものの専門家でなくてはいけません。いろいろな考え方があるでしょうが,私が1960年に医学部を卒業したころと比べまして,医学部の研究の内容,臨床の教室の内容は,どうしても多くの場合,基礎研究志向でして,臨床家としての専門家を育てるシステムになっていないという感じがしております。そういうことで,がんセンターにいたものとして身びいきのところがありますが,基礎研究に裏付けられた臨床研究の専門家を養成できるような,そういう大学院のような,がんセンターのようなものを,省庁の枠を超えて一部の大学の付属病院などと一体化したような臨床研究中心の機関をつくる必要があるのではないかと考えております。
 3ページの安全・承認については,大事なところですが,細かいところは除きますが,やっと厚生労働省の中で新しい独立法人ができますが,これもアメリカのFDAで薬の部門に2,600 人,日本の場合240 人と,食品の方もそのぐらいです。アメリカ全体でFDAとCDCで,軍隊として国民の健康を守っている国家公務員が1万5,000 人いる,NIHがやはり1万5,000 人いる,両方で3万人で国で守っているという態度,あるいは安全はただでないということをよくわかる必要があると考えております。
 細々したことはいろいろありますが,この前言いましたように,安全と評価と国民の理解が一番大事でして,今日は薬のことを主に言いましたが,食品についてもこれから薬と食品の間の境界がなくなってきまして,特に生活習慣病,あるいは個々人の病気のなりやすさ,病気になっていないときに病気の可能性が高いということが,ゲノムの解析によってわかってまいりますと,それに対する予防として,予防食品ということが非常に大事な産業になってくると思います。
 以上でございます。

○岸本座長 ありがとうございます。一番最後にFDAのことが書いてありますが,薬をつくるというのは,バイオ産業の一番重要の部分の一つです。その審査が数値でも10 分の1ですが,高度専門性というか,非常に専門性の高い研究者が少ないと,国際会議でいつも会うような研究者もFDAにはたくさんいますし,ずっとそれをやって継続性というのがあるのですが,日本のものは何か核になるような人が何年かごとにくるくる変わるとか,いろいろそういう問題も考えなければならないのではないかと思います。次に,平田委員からお願いします。

○平田委員 それでは,資料6に基づきまして,申し述べたいと思います。
 1ページ開いていただきまして,「日本の強みを活かしたBTの実用化,産業化戦略策定」において,私が重要と考えております5つの課題をここに示しています。時間が限られていますので,背景説明は省略して,以下ポイントだけを述べさせていただきます。
 次のページで,最初にいわゆるテーラーメイド医療を目指したゲノム創薬の推進です。このためには,我が国が特に世界をリードしている,そういう技術蓄積のある分野を,さらに強化,スピードアップし,産業化につなげる戦略が重要ですが,まだなかなか舗装ができていません。そこの仕組づくりが重要と考えております。環境整備としては,より集積度の高いクラスター化が必要と考えておりますし,ここに記しておりますもろもろの基盤整備,中でも日本全体として十分なバイオ・インフォマティクスを統括する司令塔の創設を提案したいと思います。
 また,日本が比較的強いと言われているタンパク質や糖鎖の研究においても,機能解析などのよりバイオロジーの研究を充実したセンター化が必要と考えます。また,産業化の視点からは,ベンチャーの育成のために,クラスター内にインキュベーションラボをもっと充実させることが必要と考えますし,産業界としても,先端技術にもっとリスクを取って参加する姿勢が求められているのではないかと思います。
 次に,いわゆる先端医療においては,この倫理性と科学性に基づく臨床研究の基本指針の制定に加えて,安全性や品質を保証するGMP適合施設の確保などのインフラ整備が急務と考えます。また,特に新薬の治験・推進について,寺田先生からもご指摘がありましたように,企業サイドの治験担当医の最大の問題は,担当医師の十分なインセンティブが不足しているのではないかというご指摘があります。是非,この辺の仕組づくりも喫緊の課題と考えております。
 次に医療とともに環境問題というものは,やはり21世紀の最大の課題です。発酵産業での日本の強みを生かし,加えてポスト・ゲノムにおける微生物のゲノム情報を生かした,新しい物質生産系の開発は,化石燃料に頼らない環境にやさしいグリーンプロセスとして,大きな期待がかけられています。中には国民の理解,合意形成が必要なものもあります。ここにお示しした諸施策の実施をお願いしたいと思います。
 次は人材です。遺伝子への対応も重要ですが,その前にアメリカや中国の動きを見ておりますと,人材の囲い込みも非常に早急に対策を打つべきものと考えます。特に先端のバイオ研究開発の競争に勝つためには,多数の優秀な頭脳の確保が何より優先されなければなりません。そのためにも,例えば外国人が暮らしやすい生活環境,例えばインターナショナルスクールなどの指定の教育環境の整備,処遇とか,評価システムなどにおける人事面においてそういう魅力的な条件整備をして,是非,具体的な数値目標を定めて実行すべきと考えます。
 最後に知的財産ですが,申すまでもなく資源小国の日本においては,世界に伍して最大の武器です。特にバイオテクノロジーの場合は,基礎と研究開発が近いと言いながらも,産業化までには非常に長い道のりを要するわけですし,また成果もまだまだ不確実です。そのように,多大な投資リスクを伴うわけで,それを保証するためにも知的財産権のしっかりとした保護とともに,合理的な対価で基本発明が広く活用される制度も必要かと思います。是非,国民がこのBTの恩恵を享受できるよう,研究開発への十分なインセンティブを担保する施策をお願いしたいと思います。
 最後に参考資料として,インフォマティクスと糖鎖研究の重要性を付記しました。後でご覧いただければと思います。以上でございます。

○岸本座長 それでは最後になりましたが,三保谷委員,お願いいたします。

○三保谷委員 三保谷でございます。私は国民を代表するという立場だと思うのですが,「国民が適切に判断し,選択できるシステムづくり」について,1ページを開いていただきたいと思います。
 皆さんが懸念されている,国民の理解というのが一体どこにあるのかという現状を把握したいと思いまして,資料をいただきました。今年の3月に内閣府が行った,「ヒト胚に関する国民意識調査」という大変よくまとまったものがあるのですが,是非,会議の先生方には読んでいただきたいと思いました。それによりますと,これは医療現場の話についてのアンケートなので,期待することというのでは,最先端の医療に対して大変期待が大きいという一方で,やはり研究者の倫理とか,安全性の問題について懸念があるというのが同じぐらいの割合で出ていたと思います。国民の意識がどうかというときに,そういうアンケートによって,知りたいと思うことがちゃんと自分なりに理解できたというようなことがありましたので,是非,直接国民の意見を聞くアンケートなどを回を重ねてやっていただきたいと思います。
 それから導き出されたもの,知りたい,考えたい,研究者と議論して自分の考えも言いたいし,一体どのようにしたいのかを自分なりに情報を得たいというのが素朴な意見だったと思います。
 私たちが何を選ぶか選択する場合に,やはり命を考える教育というのは,まさしく欠かせないところで,読んだり,書いたり,計算したりという基礎学力に加えて,もう一つ,一番大事な命の教育を,小さい段階から是非行ってほしいと思います。今,総合的な学習の時間ではテーマが自由に選択できるようですが,そこで命とは何だろうとか,食べるとは何だろうということなどを学ぶことによって,科学的な目を養うという手段が小さいうちから身に付いていくのだと思います。
 科学的な目が養われていないという象徴的な例だと思うのですが,麻疹の予防接種というのが今,問題になっていると思います。これだけ衛生的に管理されて,医療が発達した日本で,今,麻疹の予防接種をしないことによって1年に80人ぐらい小さい命を失っていると統計で出ています。それは親御さんたちの科学的な目,今,自分たちの子どもに何を選択するのが大事かという能力が,残念ながら身に付いていないのではないかということです。それを勉強するにはどうしたらいいかということなのですが,資料の左側の丸の中にありますが,情報の開示というところですが,今,研究が行われている中で安全管理などいろいろ研究されていると思いますが,現時点で絶対安全の一番いい方法は何かということをしっかり示してくだされば,国民なりの判断というのはできると思います。
 次に,資料の上の丸の双方向のコミュニケーションですが,私たちはこういうことが心配であるという問いに,研究者の回答が得られる市民会議の場とか,あとはネット上での交流とか,マスメディアを通しての市民会議のようなものも可能性としてはたくさんあると思います。マスメディアの利用では,マスメディアも一方的な情報ですから,是非情報の信憑性というのを判断できる能力も育てる必要があると思いました。
 3ページです。今,最先端の医療が国民に望まれるかということですが,やはり病気になった方にとっては,唯一の救いだと思いますが,そうではない多くの方にとっては予防が大事だと思うのです。予防というときに,人間は周囲の動植物を食べて生きているわけですから,まず根幹となる毎日の食事,毎日の生活をしっかり組み立てましょう。それで足りないところは補いましょうと,そこははっきりさせたいと思います。それが食生活を補完するという意味での,機能性食品,サプリメントやアレルゲンフリー食品になると思います。例えば,宣伝で,「これは何にいいです。このドリンクはあれにいいです」と目や耳に入ります。子どもたちは無差別に情報が入ってきますから,それだけで生きていけるというふうに判断されては困ります。そういうときに,家族やまわりの大人たちが,人間が食べるということはこういうことなのだと,基本は家庭での食事にあるわけですが,その補えないところをプラスアルファーとして,これらの食品を利用するのがいいのだという,食べ方や選び方の教育もしっかりしなければいけないと思います。
 あとは病気になったときですが,今それこそ遺伝子解析などで,余分な投薬や余分な治療を避け,的確な治療ができるという意味で望まれるところだと思うのですが,そこで治療を効果的にするための食べ方とか,あとは質の問題などにも力を入れていただきたいと思います。以上です。

○岸本座長 ありがとうございました。なお,本日ご欠席の新井委員からは資料が提出されております。お手元の資料8をご覧ください。
 それでは,次に事前にお申し出のありました関係大臣からご発言を頂戴したいと思います。まず,尾身大臣からお願いします。

○尾身科学技術政策担当大臣 この戦略会議でもご指摘がありましたように,BTに関しましては,基礎研究と産業の応用が極めて近い関係にあり,我が国のBT及び関連産業の発展は,まさに研究開発の成否にかかっていると言えると思います。前回もご報告いたしましたが,総合科学技術会議にBT研究開発プロジェクトチームを設置いたしまして,今,具体的な検討を始めておりますが,主な問題点,指摘された点は,当面これから申し上げるいくつかの点です。
 まず,基本的な考え方としては,欧米の後追いをするだけでは必ずしも成功しないということで,5年後,10年後を見据えた日本としての重要課題を明確にして,それに向けた戦略的な研究開発を進めていくことが大事であると考えております。
 例えば,具体的に申しますと,1つはBTに関しては基礎と産業応用が近いという特徴があるので,新しい画期的な新薬開発のためにも,大学等における基礎研究を充実するべきである。当然のことですが,それが基本的に大事だと思っております。
 2つ目は,研究開発の進展のための分析や解析に関わる,新しい機器とか,新しい手法の開発です。エレクトロニクスやナノテクノロジー等の,いわゆる日本の強みのある製造技術を生かして,バイオセンサーとかバイオチップとか,あるいはDNAのシーケンサーというような,解析機器の関係の研究開発を相当進め,これにより,融合分野の研究開発を促進していくことが大変大事となります。
 3つ目ですが,基礎医学の成果を臨床医学に活用するということが大事で,臨床研究を進めるその基本的,具体的な方向を決めるのと同時に,大学における臨床の研究センターのようなもの,これはアメリカでは既に70か所くらいあるそうですが,現在,日本では5か所ぐらいしかないので,その整備を進めていくということが大事だと考えております。
 4つ目ですが,基礎研究と産業の結び付きを深めるという意味で,大学や公的試験研究機関から,技術移転を促進していかなければならない。BTの分野ですと,基本特許の取得がその後の実用化に大きな影響を与えるために,日本版バイドール法の規定を,日本ではまだ全てには適用されていませんので,あらゆる研究プロジェクトに適応することが必要です。これは,総合科学技術会議でもそういう方向が出ておりますが,これをやっていきたいと思います。
 5つ目ですが,基礎研究と産業の橋渡しという意味でこの分野でベンチャーを育てていかなければなりませんが,ベンチャーについては初期投資が極めて高い,そしてリスクが大きいということでありまして,間接金融では不十分であるため,直接金融の充実が不可欠であります。つまり,間接金融から直接金融,出資という形での資金供給が大変大事でして,例えばエンジェル税制とか,そういうものを促進していくことが必要であります。また,公的な試験研究機関の民間への開放についてですが,今でもある程度行われておりますが,価格の問題とか,あるいは時間待ちの問題とか,そういうことで必ずしも十分ではありません。公的な試験研究機関を民間にどんどん使っていただくということが,もっともっと弾力的にできるようにしなければならないと考えております。
 今,いろいろなご意見が皆様から出されましたが,私どもの総合科学技術会議の本件に関するBT研究開発プロジェクトチームでも,今後も精力的に調査検討を進めまして,この会議にご披露しながら,全体としてしっかりとしたBT戦略ができるように我々も取り組んでいきたいと考えております。

○岸本座長 どうもありがとうございました。それでは,引き続きまして,遠山大臣からお願いします。

○遠山文部科学大臣 資料9をご覧いただきたいと思います。我が省の資料は,それぞれ出されました資料の中で,最も薄いわけですが,実はもう既に先行してバイオテクノロジーの重要性に鑑みまして,いろいろな振興策を打っておりますし,具体的な研究テーマに基づく膨大なファイルのものがあるわけでございます。今日は,基本的な考え方と具体的取組について,まさにぜい肉を取り去った骨の部分だけ資料にしたわけです。
 2ページ目の「バイオテクノロジー推進についての基本的な考え方」ですが,重要なポイントは3つだと思っておりまして,このBTの研究成果の実用化の推進を最重要事項の一つとして掲げておりまして,その姿勢を明確にしたいというのが第1です。基礎研究とプロジェクト研究とをバランスよく推進すること,これが2番目です。3つ目は,研究活動の質の高さと層の厚さの実現確保に向けて,国際水準を目指して研究のための基盤を,早急に整備充実するということに集約できると思います。
 次のページですが,こうした考え方に基づきまして,具体的な取組としては,第1は研究のための基盤の強化です。このうち,まず基礎研究の強化,もう多くの委員の方からもご指摘いただきましてありがたいと思っておりますが,競争的な環境の下で研究者が切磋琢磨しながら,多様なアイデアを磨いていくことを支援していくことが重要でして,5か年間での競争的資金の倍増の目標は,是非とも達成したいと思っております。ゲノム解析については,日本の榊教授を中心にしまして,大変日本がリードいたしております。昨日も,この国際チームの各国代表が表敬に来てくれましたが,こういう得意な分野をどんどん伸ばしていく,このヒトゲノム解析については,来年の4月にはもうすべて解析が終わるわけでして,それがまさにポスト・ゲノムの時代の開幕になるわけですが,その時代になりますと,特に産業界との連携というのは,非常に大事だと思っております。
 次に研究体制の整備についてですが,最先端の知見とか技術に精通して,これを駆使して研究を進めることができる優れた研究人材をいかに増やしていくかが,今後のバイオ分野の発展のかぎでして,何人かの委員からもご指摘がありました。そういうことも考えまして,ホスドクなどの支援などによりまして,若手研究者の質と量を高めたいと考えております。国際的な水準の研究成果を効果的に創出していくためには,先端的で優れた研究拠点の形成が重要でして,これらの拠点を中心としてあちこちにばらまくということではなくて,重点的に研究を推進していきたいと考えております。
 第2は,戦略的なプロジェクト研究の推進です。選択と集中という方針の下で,世界的に水準を目指して真に必要な課題について重点的に取組みたいと考えております。その際には,思い切った資源配分,それから研究計画や研究結果を厳しく評価していくということが,研究者の意欲と責任感を向上させると思っておりまして,例えばタンパク質の解析,タンパク3000プロジェクトですとか,遺伝子情報の医療応用,テーラーメイド医療実現化プロジェクトなどを重視していきたいと考えております。
 第3は,研究成果の移転・活用でして,これが非常に大事だと思っております。このために,大学の知的財産の戦略的な創出・移転を行うための体制整備と,そのために大学に知的財産本部を整備する事業を推進したいと思っておりますし,大学発ベンチャー創出などのことを考えております。
 いろいろアイデアがありますが,そういったことの中身については,起草委員会にも,大いに今後寄与しながら,一緒になって日本の戦略を考えてまいりたいと思います。よろしくお願いします。

○岸本座長 どうもありがとうございました。時間が少し超過しますが,どうも済みません。それでは,簡単に要点を坂口大臣からお願いいたします。

○坂口厚生労働大臣 時間もないようですので,簡単に申し上げたいと思います。今日は専門家の先生方ばかりですし,多くの先生方からご指摘をいただきましたので,あえて私の方から重複をして申し上げることはありません。医学の分野におきましては,ややもすると,今日,藤山委員もご指摘していただいておりますが,薬の方もかなり遅れを取っておりますから,何とか遅れを挽回しなければならないと思いますが,薬だけに偏り過ぎてもいけなくて,診断,あるいは治療器材,その他を含めまして,バイオの方のこれからのウェートは非常に大きいと思います。また,予防の方につきましての範囲も,非常に大きいと思いますので,その方向に是非進めていきたいと思っております。
 それから,食品につきましても,大石委員からご指摘がありましたが,これはもう食品か医薬品か,だんだんわからなくなってきておりますし,特に植物等の問題も大きいので,そうしたことも大切な項目として挙げていきたいと思っております。寺田委員から大学院大学のお話がございまして,私は賛成でございますが,何とかそういうもので盛り上げていくということが大事だと思いますが,その前に現在の日本の医学といいますか,医療といいますか,何となくタコツボに入ったようなところがあります。医学というタコツボに入る,あるいはまた何々大学というタコツボに入っているというようなところがありますから,その中に入ったままで大学院大学をつくりましても,また何々大学系大学院などということになってしまって,全然意味を成さないと思いますから,まず,タコツボから出ることからやらないといけないという気がいたしております。そういう前提条件を付けて,賛成をしたいと思います。

○岸本座長 どうもありがとうございました。それでは,武部大臣お願いします。

○武部農林水産大臣 BT戦略の策定に当たりましては,キャッチアップという従来の発想ではなくして,我が国が優位性を発揮できる分野に重点を置いて,技術開発を推進していくという視点が重要だろうと思います。こうした考え方に立てば,例えば,国際コンソーシアムの下で,我が国が主導的な役割を発揮しているイネゲノムの研究ですとか,100 年以上の研究蓄績と世界有数の遺伝子資源を有するカイコの研究は,世界をリードし得るものでありまして,これまでの成果の蓄積を発展させていくことが,極めて重要と認識しております。
 これらに関する技術開発の一例としては,品種開発期間を従来の半分以下に短縮することが可能な,DNAマーカーを利用した育種技術の確立,遺伝子組換え技術を活用しまして,有用な物質を植物や昆虫の体内で大量・安定的に生産するシステムの開発等が挙げられると思います。農林水産業の飛躍的発展のほか,革新的な製品や新産業創出が可能になるものと期待しております。
 このほかの農林水産・食品分野としては,我が国が世界で初めてその概念を提唱いたしました機能性食品の開発や我が国が得意とする発酵技術等の食品バイオ研究に取り組むことが,活力ある長寿社会の実現や食品産業の活性化を図る上で求められているものと理解しています。
 さらに,環境分野においては,それぞれご発言もありましたが,バイオマス利活用の推進が不可欠であると認識いたしまして,お手元に資料11−1,2とありますが,バイオマスの総合的な利活用に関する戦略の年内策定を目指し,バイオマスの生産,収集,変換,利用の全行程にわたって取り組むべき事項を総合的に検討しているところで,去る7月30日に骨子としてとりまとめたものが,資料11−2です。この中には,バイオ技術の活用によるエネルギー変換効率の向上等,今回のBT戦略と密接に関連する部分もありますことから,BT戦略会議におかれても,是非このバイオマス戦略の検討内容を,大いに活用いただきたいと思います。以上です。

○岸本座長 どうもありがとうございました。最後になりましたが,平沼大臣,お願いします。

○平沼経済産業大臣 では簡単に申します。各委員から大変有益なご意見をいただきまして,心から感謝をいたしております。何人かの委員の方々から,国民にわかりやすくというご指摘がありまして,そのとおりだと思っております。国民の目線で見て,そして今,例えばジレンマが幾つかありますが,その1つは,長寿社会を実現していく過程において,非常に医療費が増大する。あるいは,経済成長をやるとCO2の排出が増える。これは20世紀型の技術ではなかなか解決できなかった。これをバイオを突破口として,やはり新しい道を切り開いていくという視点が大切だと思います。
 そういう意味では,産業界の役割は非常に大きいと思っておりますので,経済産業省といたしましては,国民の目線に立って,そしてこれを政府をあげて取り組む,そして皆さん方の力をあげて取り組むということは画期的なことですので,我が省としてもバイオ元年と名付けて強力にやっていきたいと思っております。また,予算関係でもいろいろご要望がありますが,ここを重点化しまして,5倍というのはなかなか難しいわけですが,厳しい財政状況の中で,私どもとしては精一杯それを獲得するという形で努力をしてまいりたいと思っております。以上でございます。

○岸本座長 どうもありがとうございました。
 それでは,私から今後の審議について,ご説明を申し上げます。委員の先生方,各大臣から2回にわたってご意見を伺いました。そのご意見を整理させていただいたのが,資料12でありまして,各項目があげてありますが,こういう問題に関しまして,今後,起草委員会でご検討いただいて,議論の中間の整理案をつくっていただきまして,次回の会議に出していただいて,またご検討いただきたいと思います。
 起草委員の先生方以外にも,関係ある委員の方々にご出席いただければと思います。
 今日は,座長の不手際で,時間が5分ほど延びてしまいましたけれども,最後に尾身科学技術政策担当大臣からごあいさつをいただきたいと思います。その前にプレスの入室をお願いします。

(報道関係者入室)

(4)尾身科学技術政策担当大臣あいさつ
 官房長官からのあいさつを,私が代わりにさせていただきます。
 今までの審議に基づきまして,BT戦略大綱について論点が,かなり明らかになったと考えている次第でございます。
 バイオテクノロジーが,健康,環境,食料など,国民生活や社会経済の基盤である分野におきまして,大いに期待できる技術であるということを改めて認識した次第でございます。
 これからも,またこの会議で活発な議論が行われることを期待しておりますが,起草委員の皆様を始め,委員の皆様におかれましては,これらの論点をより深めていただきまして,実り多い戦略を策定いただきますよう,お願いを申し上げる次第でございます。
 大変お忙しいところありがとうございました。

(報道関係者退室)

(5)閉会
○岸本座長 どうもありがとうございました。それでは,今日お伺いいたしましたご意見等に関しましては,私が記者会見で話をさせていただきます。
 次回は,10月18日の金曜日,午後5時から1時間を予定で調整させていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。本日は,どうもありがとうございました。




第2回BT戦略会議 出席者

(政府側)
福田 康夫内閣官房長官
尾身 幸次科学技術政策担当大臣
遠山 敦子文部科学大臣
坂口 力厚生労働大臣
武部 勤農林水産大臣
平沼 赳夫経済産業大臣
大木 浩環境大臣(奥谷 通 環境大臣政務官が代理出席)
安倍 晋三内閣官房副長官(政務・衆)
古川貞二郎内閣官房副長官(事務)

(委員)
岸本 忠三座長・大阪大学総長
新井 賢一東京大学医科学研究所所長
伊丹 敬之一橋大学大学院商学研究科教授
井村 裕夫総合科学技術会議議員
歌田 勝弘日本バイオ産業人会議世話人代表・味の素株式会社相談役
大石 道夫財団法人かずさディー・エヌ・エー研究所所長
庄山 悦彦(社)日本経済団体連合会産業技術委員会委員長
(株)日立製作所代表取締役社長
杉山 達夫理化学研究所植物科学研究センター長
寺田 雅昭国立がんセンター名誉総長
平田  正協和発酵工業株式会社代表取締役社長
藤山 朗日本製薬団体連合会会長・藤沢薬品工業株式会社代表取締役会長
三保谷智子女子栄養大学出版部「栄養と料理」編集長