平成12年3月
犯罪被害者対策関係省庁連絡会議

犯罪被害者対策関係省庁連絡会議報告書

〜犯罪被害と当面の犯罪被害者対策について〜


目 次

第1 検討の経緯

第2 犯罪被害について

1 犯罪被害者の受ける被害(一次的被害と二次的被害)
2 犯罪被害者等の意識調査結果

第3 当面の犯罪被害者対策について

1 刑事手続における犯罪被害者対策について (1)刑事手続における犯罪被害者保護のための二法案の今国会(第147回国会)への提出
(2)その他の事項

2 犯罪被害者に対する経済的な支援について (1)犯罪被害給付制度について
(2)犯罪被害者への就労あっせん・犯罪により障害を負った者の雇用の促進の支援
(3)民間の被害者支援組織への支援

3 犯罪被害者に対する精神的な支援について (1)厚生省による犯罪被害者に対する心のケア
(2)警察による犯罪被害者支援
(3)検察庁における犯罪被害者支援
(4)犯罪被害にあった児童生徒の心のケア

4 犯罪被害の回復方策について (1)「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案」の今国会への提出等
(2)警察における被害回復方策

5 犯罪被害に対する啓発活動について (1)犯罪被害者対策に直接携わるスタッフを対象とする専門研修の実施を含めた職員の教育と啓発の充実
(2)被害者に接する職員を対象とする教育と啓発の充実
(3)犯罪被害者やその家族が働き続けることができる職場理解の促進
(4)犯罪被害者問題に対する地方公共団体での理解の促進
(5)犯罪被害者についての一般への広報啓発活動

6 犯罪被害者の安全確保方策について (1)警察における犯罪被害者の安全確保方策
(2)ドメスティックバイオレンスの被害者が一時避難を要する場合の措置

7 交通事故被害者対策について (1)警察における交通事故被害者対策
(2)運輸省における交通事故被害者対策 

8 その他 (1)犯罪被害者のプライバシーの保護
(2)犯罪被害の実態に対する調査の実施

第4 資料


第1 検討の経緯

近年、我が国では、犯罪被害者の問題について国民の関心が高まっている。

昭和49年8月に発生した過激派集団による無差別爆破事件を契機に、このような爆弾事件やいわゆる通り魔事件の被害者が、実質的にほとんど救済されてこなかったという実情から、犯罪被害者やその遺族に対して政府による対応を求める世論が高まり、55年には「犯罪被害者等給付金支給法(昭和55年法律第36号)」が制定され、生命・身体を害する犯罪によって死亡した被害者の遺族又は重障害を受けた被害者に対して、一定の範囲で国による給付金の支給を行う制度が導入された。

 さらに、平成7年3月20日に発生した地下鉄サリン事件等を契機に、被害者が犯罪による直接的な被害のみならず、精神面、経済面等において様々な被害を受けていることについて国民の認識が深まるとともに、その後の刑事司法の過程においてもいわゆる二次的被害を受けて被害者の精神的被害がさらに深まる場合があることなどが問題とされ、被害者の保護・支援に対する関心が高まっている。

 このような被害者の保護・支援に対する関心の高まりは国際的にもみられ、1960年代には、ニュージーランド、イギリス(イングランド及びウェールズ)、オーストラリアの一部の州等で被害者補償法が制定され、1970年代に入り、西欧各国にその動きが広まってきた。また、1985年11月、国連総会において「犯罪及び権力濫用の被害者のための司法の基本原則宣言(以下、「国連被害者宣言」という。) Declaration of Basic Principles of Justice for Victims of Crime and Abuse of Power (GA/Res/40/34)」が採択されたが、この宣言は、被害者が、その尊厳への配慮と敬意をもって扱われるべきこと、被害者が被った被害について、司法制度を利用し、速やかな賠償を受ける権利を与えられること、重大な身体的・精神的被害を受けた被害者が加害者から十分な賠償が得られない場合には、国が経済的補償を行うよう努力すべきことなどが提言されている。この提言を受けて、1996年5月、国連犯罪防止刑事司法委員会第5回会合において、この宣言の活用及び適用についてのマニュアルを作成するとの決議案が採択され、国連専門家グループにより、「(国連被害者宣言の活用及び適用のための)被害者をめぐる司法に関するハンドブック Handbook on Justice for Victims 」等が作成された。

 このような状況の下で、近時、我が国の刑事司法機関等においても、犯罪被害者の保護等の観点から様々な取組みが行われている。警察では、平成8年2月に、被害者対策に関する基本的事項を取りまとめた「被害者対策要綱(警察庁次長通達)」を制定し、11年6月には、「犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)」を改正して、被害者の心情を理解し、その人格を尊重することとする規定のほか、被害者に対する捜査経過等の連絡、被害者の身辺の保護を行うこととする規定などを設けた。また、検察庁においても、同年4月から、事件の処理結果、公判期日、判決結果等を被害者等に通知する被害者等通知制度を全国的に統一して導入した。さらに、法務省においては、犯罪被害者等に対するより適切な配慮と一層の保護を図るため、「刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案」及び「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案」を今国会(第147回国会)に提出している。

 しかし、犯罪被害者の保護・救済・支援のために、犯罪被害者が政府に望む施策は、広範でかつ多岐にわたるところから、そのための対策、いわゆる犯罪被害者対策を関係省庁の密接な連携の下に検討・推進するために、平成11年11月11日、内閣官房に「犯罪被害者対策関係省庁連絡会議(議長 古川内閣官房副長官)」を設置した。(資料1「犯罪被害者対策関係省庁連絡会議の設置について」 参照)

 連絡会議の設置以降、犯罪被害者団体、犯罪被害者の援助・支援に直接従事している者、有識者等から犯罪被害者の実情と犯罪被害者対策として政府に望む事項等について聴取し、関係省庁において検討を行った。(資料2 「犯罪被害者対策関係省庁連絡会議・同幹事会の開催状況」参照)

 今般、本報告書のとおり関係省庁の検討結果を取りまとめたものである。

第2 犯罪被害について

1 犯罪被害者の受ける被害(一次的被害と二次的被害)

 犯罪によって被害者が受ける被害は、
  ○ 家族を失う、けがをする、財産を奪われるなどの生命、身体、財産上の被害
  ○ けがの治療費等の負担や失職による収入の減少等の経済的被害
  ○ 犯罪に遭った際の恐怖、悲しみ等の精神的被害
といった犯罪それ自体から直接に生じる被害(一次的被害)と、被害後の刑事手続の過程で新たな精神的ショックを受ける事態に遭遇する、被害に遭ったことを理由に、周囲や報道機関から不利益・不快な取り扱いを受けるなどの二次的被害とがある。

2 犯罪被害者等の意識調査結果

 犯罪被害に関する調査は、近年、法務省、警察庁によって実施されており、その結果は資料3 参考文献に掲載され、公表されている。その中で広範な犯罪被害を対象とした調査で最新のものは、平成11年に法務総合研究所(以下、「法総研」という。)が実施したアンケート方式による被害者等の意識等に関する調査(犯罪白書平成11年版掲載)である。その調査結果(1、100名余の被害者又はその家族から回答を得たもの。)によると、事件による影響等は以下のとおりである。

 殺人等及び業務上過失致死の遺族については、そのほとんどが多様な精神的影響を受けており、生活面の影響についても、「家庭が暗くなった」ものの比率が、共にほぼ70%と、他の罪種よりも高くなっている。

 また、強姦及び強制わいせつの被害者については、その多くが多様な精神的影響を受けており、特に「異性に対して恐怖を覚えるようになった」とするものの比率が、強姦で約67%、強制わいせつで約51%と高く、生活面の影響では、「引っ越さなければならなくなった」とするものの比率が、共に他の罪種よりも高くなっている。

 その他の罪種の被害者については、いずれも、80%台の被害者が何らかの精神的影響を受けたとしており、生活面での影響では、「生活が苦しくなった」とするものの比率が、傷害等、業務上過失致傷及び詐欺等で、いずれも40%前後、「仕事や学校を続けられなくなった」とするものの比率が、業務上過失致傷及び傷害等で、共に20%前後と高くなっている。

第3 当面の犯罪被害者対策について

1 刑事手続における犯罪被害者対策について

(1)刑事手続における犯罪被害者保護のための二法案の今国会(第147回国会)への提出

 刑事手続における犯罪被害者保護のため、「刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案」及び「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案」を今国会に提出したところである。

 この二法案に盛り込まれた内容は、以下のとおりである。

 ア 刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律案
@ 証人尋問の際の証人への付添い
 証人の著しい不安又は緊張を緩和するため、適当な者を証人に付き添わせることができるものとする。(法務省)
A 証人尋問の際の証人の遮へい
 証人が被告人や傍聴人の面前で証言することの精神的負担を軽減するため、証人と被告人や傍聴人との間を遮へいする措置を採ることができることとする。(法務省)
B ビデオリンク方式による証人尋問
 証人が公開の法廷で証言することの精神的負担を軽減するため、証人を法廷以外の場所に在席させ、映像と音声により相手の状態を相互に認識しながら通話をする方法(ビデオリンク方式)により尋問することができることとする。(法務省)
C 性犯罪の告訴期間の撤廃
 強姦罪等の性犯罪においては、性犯罪の被害による精神的ショックのため短期間では告訴の意思決定が困難な場合があるとの指摘があることから、親告罪である性犯罪について告訴期間(犯人を知った日から6月)を撤廃する。(法務省)
D 公判手続における被害者等による心情その他の意見の陳述
 裁判所は、被害者から申出があるときは、公判期日において、被害者に、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見を陳述させるものとする。(法務省)
E 検察審査会への審査申立権者の範囲の拡大等
 検察官の不起訴処分について、検察審査会に審査の申立てをすることができる者の範囲について、被害者が死亡した場合には、その遺族も申立てができることとする。(法務省)

 イ 犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案
@ 被害者等の傍聴に対する配慮
 刑事被告事件の係属する裁判所の裁判長は、被害者等から申出があるときは、申出をした者が当該被告事件の公判手続を傍聴できるよう配慮しなければならないものとする。(法務省)
A 被害者等による公判記録の閲覧及び謄写
 刑事被告事件の係属する裁判所は、被害者等から訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、当該被害者等の損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合その他正当な理由がある場合であって、相当と認めるときは、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせることができることとする。(法務省)
B 民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解
 被告人と被害者等は、両者の間における被告事件に関連する民事上の争いについて合意が成立した場合には、刑事被告事件の係属する裁判所に対し、共同して当該合意の公判調書への記載を求める申立てをすることができ、その合意が公判調書に記載されたときは、その記載は裁判上の和解と同一の効力を有することとする。(法務省)

(2)その他の事項

 ア 犯罪被害者への情報提供等
@ パンフレット「被害者の手引」の作成・配布
 警察では、殺人、傷害、強姦等の身体犯、ひき逃げ事件、交通死亡事故等の被害者・遺族を対象として、刑事手続や被害者連絡制度のほか、犯罪被害給付制度、損害賠償請求制度その他援助・救済制度、各種相談機関等に関する情報を取りまとめたパンフレット「被害者の手引」を作成し、配布しているところであるが、引き続き、その確実な配布に努めるとともに、情報内容の充実及び配布対象の拡大を図ることとしている。(警察庁)
A 被害者連絡・被害者等通知制度の確実な実施
・ 警察では、平成8年から被害者連絡制度を導入して、身体犯やひき逃げ事件、交通死亡事故の被害者・遺族に対して、捜査状況のほか、被疑者を検挙した場合にはその旨及び被疑者の氏名・年齢、送致先検察庁等について、さらに、被疑者を逮捕した場合には起訴・不起訴等の処分結果、起訴された裁判所等についても連絡を行っているところであるが、引き続き、検察庁の被害者等通知制度との連携を図りつつ、被害者連絡の確実な実施に努めるとともに、告訴・告発のあった事件の被害者並びにストーカー事案及びドメスティックバイオレンス事案における被害者に対する被害者連絡の実施を推進することとしている。(警察庁)
・ 検察庁においては、平成11年4月から、全国統一の制度として、被害者等通知制度を導入し、通知を希望する被害者等に対し、事件の処理結果、判決結果等を通知することとしており、被害者等が特に通知を希望するときは、公訴事実の要旨、公判経過等を通知することができることとしており、今後とも、この制度を適切に運用していくこととしている。また、第145回国会に提出された「少年法等の一部を改正する法律案」では、被害者等から申出があるときは、家庭裁判所からその申出をした者に対し、少年等の氏名及び住居並びに決定の年月日、主文及び理由の要旨を通知する被害者等に対する通知制度を設けている。
 また、犯罪者の刑務所等からの釈放に関する情報を知りたいとの犯罪被害者の立場も十分考慮されるべきであるが、他方、犯罪者の改善更生やそのプライバシーの保護も重要であることから、両者の要請をどのように調整するか等について、鋭意検討を進めていきたい。(法務省)
・ 海上保安庁では、「海上保安庁犯罪捜査規範(海上保安庁長官訓令)」を改正し、被害者に対する捜査状況等の連絡について規定するとともに、「被害者連絡実施要領(海上保安庁警備救難部長通達)」を策定、実施している。(海上保安庁)

 イ 証人尋問の際の証人への付き添い
・ 警察では、犯罪被害者対策上必要がある場合には、被害者支援要員等が、被害者が証人として公判に出廷したり傍聴したりする際に被害者の送迎、被害者の付添い等を行っている。(警察庁)
・ 平成11年度から、検察庁においては、被害者等からの相談対応、被害者等通知制度に基づく通知の補助、来庁した被害者等への対応、法廷への被害者等の案内・付添い等の各種被害者支援業務に従事する専門スタッフである「被害者支援員」の配置を開始している。(法務省)

 ウ 証拠品である被害者の遺品等の適正な還付
 現行法においては、押収した贓物で被害者に還付すべき理由が明らかなものについては、被害者に還付しなければならず、また、被告人等が遺留した被害者の所有物を領置したケースにあっては、被告人等の権原の有無といった事実関係等にもよるが、一般的には、被告人等に対してではなく、直接、被害者又はその遺族に返還すべきものと考えられる。
 差押えや任意提出に係るケースにおいても、検察においては、所有者である被害者等が証拠品の返還を希望するときは、被差押人等を説得して、証拠品が被害者等に返還されるよう努めてきたところ、被差押人等が被害者等への返還に応じないときには、当該証拠品の処分に先立って、被害者等と連絡を取るなどして、被害者等がその権利を行使する機会を確保するなどの配慮を巡らし、いやしくも被害者等への保護に欠けるとのそしりを受けることのないよう努めたいと考えており、本年2月には、刑事局所管課長から全国の検察庁に対して、被害者等の所有に係る証拠品の処分に関し、被害者等への配慮を一層徹底するよう通知したところである。同様に、本年2月に、矯正局所管課長から拘置所等の施設の長に対して通知を発出し、裁判所又は検察庁からの連絡等により、還付品が被害者の所有に係る物であることが判明した場合には、被収容者が廃棄を願い出ても、施設において保管し、あるいは被害者側に返還するなど、被害者や遺族に十分配慮した取扱いをするよう徹底を図ったところである。
 なお、最高裁判所においても、本年2月に、下級裁判所に対して書簡を発出し、押収物の還付先に関する平成2年の最高裁決定の射程には種々解釈があり得ることを伝えるとともに、押収物を正当な権利者でないことが明らかな元被告人等である在監者等に対し還付せざるを得ない場合において、所有者である被害者又はその遺族に対する返還を促す書面を送付したときには、元被告人等が収容されている施設の長にもその旨連絡して権利関係について注意を喚起するよう指導するなどして、その趣旨を徹底していると承知している。

 エ 事情聴取場所の改善・整備
 犯罪被害者が安心して事情聴取に応じられるようにするためには、犯罪被害者のプライバシーが保たれ、かつ、被害者の立場にふさわしい施設を使用する必要があることから、事情聴取場所の改善・整備、被害者対策用車両の整備等に努めている。(警察庁)

 オ 性犯罪捜査における被害者対策
 各都道府県警察本部に「性犯罪捜査指導官」及び「性犯罪捜査指導係」を設置し、性犯罪の捜査の指導・調整,発生状況等の集約、専門捜査官の育成等を行っているほか、性犯罪捜査員に女性の警察官を指定している。
 また、被害者に負担をかけずに証拠採取を行うために必要な用具や証拠として被害者の衣類の提供を受けた際の着替え等をまとめた「性犯罪捜査証拠採取セット」の整備、事件発生時における迅速かつ適切な診断・治療及び証拠採取や女性の医師による診断等を行うための産婦人科医等との連携の強化等を図っている。このほか、性犯罪に係る相談を受け付ける「性犯罪被害110番」等の相談電話や相談室を設置しているほか、痴漢等の性犯罪被害の届出や相談を行いやすいようにするため、「女性相談交番」の指定や鉄道警察隊における「女性被害相談所」等を設置し、女性の警察官が届出の受理に当たっている。(警察庁)

2 犯罪被害者に対する経済的な支援について

(1)犯罪被害給付制度について

 ア 犯罪被害給付制度の適切な運用
 警察では、犯罪被害給付制度発足以来、ポスター・パンフレットの作成・配布、「被害者の手引」への掲載等の方法により、本制度の広報及び紹介に努めている。平成11年中には、犯罪被害者等給付金の申請を行った265人の被害者・遺族が約6億4,500万円の給付金を受け、本制度が実施された昭和56年1月から昨年12月までの19年間の累計では、4,218人の被害者・遺族に約99億円の給付金が支給されてる。本制度は、犯罪被害者等給付金支給法で定める要件を充足するすべての被害者・遺族が給付金を受けることを期待するものであるが、これが機能するためには、広く国民の間に本制度が周知されていなければならないことから、引き続き、本制度の適時、適切な広報等に努めるとともに、被害者・遺族に対する教示を積極的に行っていくこととしている。(警察庁)

 イ 犯罪被害給付制度の充実に関する検討
 犯罪被害者等給付金については、これまで3回にわたり給付金に係る給付基礎額の見直しを行い、遺族給付金及び障害給付金の最高額をそれぞれ1,079万円、1,273万円まで引き上げるとともに、障害給付金を給付すべき事由となる重障害の範囲の拡大も行ったところであるが、現在、被害者学の専門家に犯罪被害者対策に資するための総合的な調査研究を依頼しているところであり、その調査結果及び被害者のニーズ等を踏まえ、犯罪被害給付制度の拡充を含めた犯罪被害者支援の在り方について検討していくこととしている。(警察庁)

(2)犯罪被害者への就労あっせん・犯罪により障害を負った者の雇用の促進の支援

 公共職業安定所において、犯罪被害者又はその遺族等であって就職を望む者に対して、プライバシーにも配慮しつつ、綿密な職業相談及び職業紹介を実施し、就職の促進を図るほか、必要な場合には公共職業訓練のあっせんを行い、就職に必要な職業能力の向上を図ることとしている。

 また、「障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)」に基づき、障害者に対する職業紹介、職業指導等の職業リハビリテーションの実施、身体障害者及び知的障害者の雇用義務に基づく障害者雇用率制度の運用、障害者雇用納付金制度等に基づく助成措置の活用により、障害者の雇用を図っているところである。(労働省)

(3)民間の被害者支援組織への支援

 ア 民間の被害者支援組織等への援助
 平成12年3月現在、ボランティアを募って、警察と連携を図りながら、電話相談、面接相談、ボランティア相談員の養成、自助グループ(遺族の会等)への支援、被害者支援のためる広報啓発等を行っている民間の被害者支援組織(以下「民間ボランティア団体」という。)が全国で13団体あり、全国被害者支援ネットワーク(平成10年5月結成)を構成している。警察では、犯罪被害者対策における民間ボランティア団体の重要性にかんがみ、その活動に積極的に協力、支援を行っているが、一部の民間ボランティア団体には地方公共団体からその活動に関し普及、啓発等の協力や財政的支援が行われている。引き続き民間ボランティア団体の活動に対する地方公共団体の理解を求めていく。
 また、警察では、都道府県の被害者支援連絡協議会及び警察署・地域単位の被害者支援ネットワークの事務局を担っていることから、これら協議会等の活動の充実の推進に努めていく。
 なお、財団法人犯罪被害救援基金においては、助成財団からの補助金を活用して、民間ボランティア団体のカウンセリング業務を支援する犯罪被害者対策事業を行っている。(警察庁)

 イ 民間の被害者支援組織の法人格の取得
 経済企画庁では、「特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)」の適切な運用に努めるとともに、市民活動に関する調査・分析など、犯罪被害者保護・救済を行う団体を含む民間非営利団体の活動の促進のための環境整備を行っているところである。

 今後、民間の被害者支援組織が同法に基づき法人格の取得の申請がなされた場合には、同法に基づき適切に対応することとしている。(経済企画庁)

3 犯罪被害者に対する精神的な支援について

(1) 厚生省による犯罪被害者に対する心のケア

 ア 心の健康づくり等相談事業の実施
 精神保健福祉センターや保健所においては、心の健康づくり等の相談事業を実施している。児童相談所や児童養護施設においては、児童の心身の状況に応じて、心理判定員や医師などによる心理療法やカウンセリングを行っている。
 なお、厚生省においては、心的外傷後ストレス障害(PTSD)について、精神医療及び精神保健福祉の従事者を対象として研修事業を実施している。(厚生省)

 イ 心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する相談活動のあり方に関する研究の実施 
 心的外傷後ストレス障害(PTSD)等の外傷的な出来事を経験した後に生じる心の問題を対象とした適切な相談の在り方等に関する研究を厚生科学研究費を活用して推進しており、今後さらに充実に努めることとしている。(厚生省)

(2)警察による犯罪被害者支援

 ア 指定被害者支援要員制度の導入
 警察では、平成10年から犯罪被害者に対する専門的な支援を要する事案が発生したときに、捜査員とは別のあらかじめ指定された警察職員が事件発生早期から被害者に付き添い、被害者からの相談対応、被害者への情報提供、被害者連絡、民間ボランティア団体等相談機関の紹介などの支援活動を行う「指定被害者支援要員制度」の警察署等における導入を始めている。(警察庁)

 イ 被害者支援ネットワークの構築
 平成11年2月までにすべての都道府県に、警察のほか、地方検察庁、知事部局や市の関係部、弁護士会、医師会、臨床心理士会、県や市の相談機関、民間ボランティア団体、警察関係団体等で構成する「被害者支援連絡協議会」が設立された。さらに、個別事件の被害者支援については、被害者のニーズに応じた継続的かつきめ細かな支援を行う必要があることから、市区の関係課、弁護士、税理士、病院、工務店、不動産業者、被害少年サポーター、警察関係団体等幅広い分野の関係機関・団体、企業等が参加する警察署・地域単位の被害者支援ネットワークの構築が進められている。(警察庁)

 ウ 相談・カウンセリング体制の整備
 住民からの各種要望及び相談に対応するため、警察本部に警察総合相談室を設置し、また、電話による相談についても全国統一番号の相談専用電話「#9110番」を整備したところである。さらに、このような総合的な相談に加え、犯罪被害者のニーズに対応して、性犯罪相談、少年相談、交通事故相談等個別の相談体制の整備・充実に努めているところである。
 また、大きな精神的被害を受けた犯罪被害者に対しては、初期の段階から専門的なカウンセリングを実施することが、その後の精神的立直りに極めて有効であることから、心理学等の専門的知識やカウンセリング技術を有する心理カウンセラーを採用、配置し、さらに、部外の精神科医や臨床心理士に委嘱するなどカウンセリング体制の整備に努めているところである。(警察庁)

 エ 被害少年対策
 警察では、犯罪等により被害を受けた少年の精神的負担を軽減し、その立直りを支援するため次のような施策を推進している。○少年警察部門に配置されている少年補導職員、少年相談専門職員等により、個々の被害少年の特質を踏まえたカウンセリング等の心理的な手法の活用、保護者等と連携した家庭等の環境調整等の継続的な支援を行う。○少年補導職員等が被害少年の要望に的確に対応できるようその増員や拠点警察署を中心とした集中運用、「被害少年対策係」の設置などの体制の整備に努めるとともに,被害少年等に対する支援を行うための専門組織としての「少年サポートセンター」の構築を進める。○大学の研究者,精神科医,臨床心理士等を「被害少年カウンセリングアドバイザー」として委嘱して必要な助言を受けるとともに、民間ボランティアを「被害少年サポーター」として委嘱して、少年補導職員等と一体となって、家庭や地域と連携した相談、環境調整等の支援を行う。○このほか、被害少年等が気軽に相談できるよう専用の相談窓口等を設けるとともに、相談室の充実等を図る。(警察庁)

(3)検察庁における犯罪被害者支援

 本報告書第3の1(2)イのとおり、検察庁においては、平成11年度から、「被害者支援員」の配置を開始したほか、被害者等からの照会等を受け付ける専用電話である「被害者ホットライン」を設置するなどの施策を進めているところである。(法務省)

(4)犯罪被害にあった児童生徒の心のケア

 学校における犯罪被害者を含めた児童生徒の心のケアに関し、養護教諭を対象に、児童生徒の心の健康相談活動を行うために、必要な知識や技術に関する研修を実施して、その資質の向上を図るとともに、教師用参考資料の作成・配布などの施策を講じているところである。(文部省)

4 犯罪被害の回復方策について

(1)「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する   法律案」の今国会への提出等

 ア 犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案」の今国会への提出
 本報告書第3の1(1)イのとおり今国会に提出した「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律案」には、被害者等の損害賠償請求権の行使等に資するため、公判記録の閲覧及び謄写並びに民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解に関する措置の制度が盛り込まれている。
 なお、これ以外の制度についても、引き続き広い視野からの検討を続けることとしている。(法務省)

 イ 犯罪被害者等による不起訴記録等の閲覧及び謄写
 不起訴記録については、刑事訴訟法第47条により、原則として公開を禁じられているが、被害者等が民事訴訟等において被害回復のため損害賠償請求権その他の権利を行使するにつき必要と認められる場合、実況見分調書、検視調書等の客観的証拠で、かつ、代替性がないと認められる証拠の閲覧又は謄写については、保管検察官において、開示により捜査・公判へ支障を生ずるおそれや関係者のプライバシーを侵害するおそれの有無等を個別に判断しつつ、弾力的な運用を行うものと考えている。
 少年事件記録については、「少年審判規則(昭和23年最高裁判所規則第33号)」第7条第1項により、家庭裁判所の許可を受ければ、記録又は証拠物の閲覧等をすることができるものとされており、家庭裁判所において少年事件の秘密性の要請と被害者側への開示の必要性の要請を比較考量して、個別具体的に判断されているものと承知している。(法務省)

(2)警察における被害回復方策

 暴力団犯罪等の被害者については、暴力団対策法に基づく中止命令等を発出した事案のうち、みかじめ料の要求等の暴力的要求行為の相手方からの申出があり、その申出が相当であると認められるときは、当該暴力団員の連絡先の教示、被害回復交渉を行う場所としての警察施設の供用等の援助を行っており、これにより暴力団犯罪等による被害者の被害の回復が図られている。また、暴力的要求行為等のうち暴力団対策法に規定する要件を満たさないために中止命令等が発せられないもの、又は暴力団員により行われた犯罪であって当該犯罪の被害回復交渉に当たり暴力団の威力が示されるおそれがあるものについても、同様の措置をとるよう努めているところである。(警察庁)

5 犯罪被害に対する啓発活動について

(1)犯罪被害者対策に直接携わるスタッフを対象とする専門研修の実施を含めた職員の教育と啓発の充実

 ア 警察庁
 警察では、平成8年の「被害者対策要綱」の制定以来、「警察官が被害者に敬意と同情をもって接し、被害者の尊厳を傷つけない」という警察の犯罪被害者との対応に関する基本原則を第一線の警察官に徹底するため、新たに採用・昇任した警察官に対して犯罪被害者対策に関する教養を実施しているところであり、また、犯罪被害者対策に直接携わるスタッフを対象とした専門教養の充実強化に努めているところである。また、被害少年支援担当職員、性犯罪捜査に従事する女性警察官等を対象とした研修会の開催、部外における研修会への参加、部内における有識者等による講演会の開催等各種機会を通じた教養を実施している。(警察庁)

 イ 法務省
 検察庁職員を始めとする刑事司法に携わる法務省職員については、法務省が従来から、職員の経験や能力等に応じて実施している各種研修等を通じて教育や啓発を行い、この問題に対する理解と認識を深めるように努めてきたところであるが、今後も研修を一層充実させるなどして、職員の教育と啓発を図ることとしている。(法務省)

 ウ 厚生省
心的外傷後ストレス障害(PTSD)については、厚生省において、精神医療及び精神保健福祉の従事者を対象として研修事業を実施している。虐待された児童の処遇等については、児童相談所や児童養護施設等の職員の資質の向上のための研修を実施している。暴力被害女子の相談や施設保護を担う婦人相談所及び婦人保護施設の職員並びに婦人相談員に対して、被害女子の抱える問題に配慮した接遇ができるよう研修事業を実施している。
 なお、医師については、卒後臨床研修の充実を図り、単に専門分野の疾患を治療するのみでなく、患者又はその家族の抱える様々な身体的、心理的、社会的問題を的確に認識・判断し、その問題を解決することができるような能力、いわゆる患者を全人的に診る能力を身につけた医師の養成を行っているところである。今後、厚生省は、従来からの取組に加え、警察庁との連携の下で、精神保健福祉センター、保健所、児童相談所、婦人相談所等の職員に対して、警察庁等が実施している各般の犯罪被害者対策の内容等について周知を行うこととしている。(厚生省)

 エ 海上保安庁
 海上保安庁においては、新たに採用した職員については、当庁の教育機関である海上保安大学校及び海上保安学校において、憲法、行政法及び刑法等の授業により、人権に関する知識を教授しているところである。
 また、海上保安官に対する各種階層別研修においても、行政法、海上警察権論等の講義により海上保安業務に関する行政と法と人権の関わりを教授しているところである。(海上保安庁)

(2)被害者に接する職員を対象とする教育と啓発の充実

 ア 文部省
 初等中等教育に携わる教員については、子どもの悩みを受け止め適切に指導できるよう、各都道府県等の実施する初任者研修等の機会に、カウンセリングに係る研修が実施されている。
 また、大学の教職課程において、カウンセリングについての内容を含む「教育相談」が必修科目とされている他、平成10年の教職員免許法の改正により、学問的知識より教え方や子どものふれあいを重視する観点から、教職に関する科目を格段に充実させたところである。(文部省)

 イ 労働省
 女性行政職員については、相談者に配慮した対応が可能となるよう、職員研修の場を通じ、セクシュアルハラスメントに関する相談の対応の仕方等、専門的な知識及び手法等の向上を図っているところである。
 また、職業安定行政職員については、職業紹介に従事する中堅職員に対して、様々な問題を抱えられた求職者の方々に適切な対応を図るため、主にカウンセリング等を中心とした研修を実施しているほか、障害者の雇用の促進等を目的とした研修も安定所における同業務担当職員を対象に実施しているところである。(労働省)

(3)犯罪被害者やその家族が働き続けることができる職場理解の促進 

  犯罪被害者及びその家族においては、裁判への出廷、被害者の介護等のため、職場を欠勤しがちになったり、犯罪の被害による後遺症等のために、職業生活への影響が避けられないことから、労働省においては、これらの者に対する的確な雇用管理が行われるよう、事業主、上司、同僚など職場の理解の促進を図るとともに、職場等で発生した犯罪の被害者に対するメンタルヘルスケアの促進を図ることとしている。(労働省)

(4)犯罪被害者問題に対する地方公共団体での理解の促進

 地方公共団体において、職場における犯罪被害者問題の理解の促進が図られるよう、警察庁、厚生省等関係省庁と連絡をとりながら、地方公共団体の職員に対し、必要な情報提供や啓発等が行われるよう努めることとしている。(自治省)  

(5)犯罪被害者についての一般への広報啓発活動

 ア 犯罪被害の調査と結果の公表
・ 「地下鉄サリン事件被害者の実態に関する調査」は、科学警察研究所が、平成10年5月、事件後の社会生活上の変化、心身の状況、国や警察に対する要望等を調査し、発表したが、事件の長期的影響について分析するため、平成12年3月に同様の内容の第2回調査を実施することとしており、平成12年中に結果を取りまとめる予定である。(警察庁)
・ 犯罪被害の実態や被害者等の意識、刑事司法機関に対する要望等を把握するため、平成11年、法総研において被害者に対するアンケート調査を実施し、その結果は「犯罪白書 平成11年版」において公表しているが、引き続き、暗数も含む犯罪被害実態調査を行うなどし、その結果を公表することで犯罪被害の実態を明らかにしていく予定である。(法務省)

 イ 被害者対策広報用ホームページ
 被害者に対して警察の取り組んでいる被害者対策や被害相談窓口に関する情報を提供するとともに、広く一般から警察の被害者対策に関する理解と協力を得ることにより、支援の輪を広げ、被害者対策のさらなる発展を図ることを目的として、被害者対策広報用ホームページを制作し、平成12年4月から公開する予定である。(警察庁)

6 犯罪被害者の安全確保方策について

(1)警察における犯罪被害者の安全確保方策

 ア 再被害防止措置
 警察では、平成9年、刑務所から出所したばかりの加害者の「お礼参り」により被害者が殺害されるという凶悪事件が発生したことなどから、被害者の再被害防止のための取組みを更に強化したところである。具体的には、殺人予備、殺人未遂、性犯罪等の凶悪事件の検挙の都度、その発生経緯等を分析して再被害のおそれについて総合的に検討を加えた上、緊密な被害者連絡、関係警察署の連携による防犯指導、警戒活動等の措置を継続的かつ組織的に実施しているところであり、特に非常時の被害者の安全を確保するための緊急通報装置等の整備にも努めている。
 暴力団犯罪等にの被害者については、その積極的な被害の申告を促すため、専用電話を開設するなどして暴力団関係相談の受理体制を整備し、相談者の不安感が払しょくされるよう適切な助言を行うとともに、事件検挙、暴力団対策法の規定に基づく中止命令等の発出、警告等の措置を講じているほか、都道府県暴力追放運動推進センター等とも連携しつつ、事案の内容に応じて適切な解決がなされるよう努めている。さらに、これらの暴力団犯罪等の被害者や参考人の安全を確保するため、被害者等との連絡を密にし、状況に応じて自宅や勤務先における身辺警戒やパトロールを強化するなどして、危害の未然防止に努めている。(警察庁)

 イ 児童虐待事案に対する取組みの強化
 児童虐待事案に対しては、昨年12月に「女性・子どもを守る施策実施要綱」等を制定するなどし、次のような取組みの強化を図ることとしている。○各種警察活動における事案の伏在を念頭においた対応の促進及び関係部門間の連携による組織としての情報の集約を図る。○児童相談所等への確実な通告並びに児童相談所等による立入調査及び児童の一時保護等に際しての適切な援助を実施するほか、児童のカウンセリング及び保護者に対する助言指導の実施、適切な事件化を通じて、事案に適切に対応する。○児童相談所、保健医療機関、学校、民間ボランティア団体等関係機関・団体との連携を図る。(警察庁)

 ウ ストーカー事案及びドメスティックバイオレンスにおける被害女性対策
 昨年12月に「女性・子どもを守る施策実施要綱」を制定し、ストーカー事案及びドメスティックバイオレンスに対しては、被害女性の立場に立って、刑罰法令に抵触する事案については、被害女性の意思を踏まえ、検挙その他の適切な措置を講じ、さらに、刑罰法令に抵触しない事案についても、事案に応じて、防犯指導、自治体の関係部局、弁護士等の他機関への紹介等の方法により、適切な自衛・対応策を教示するとともに、必要があると認められる場合には、相手方に指導警告するなどして、被害女性への支援を行うとの方針で対応することとしている。また、女性警察職員による被害者相談体制の整備を図るため、各都道府県警察の実情に応じて可能な限り、女性警察職員を担当者とする「女性に対する暴力」対策係を各警察署に設置し、女性からの相談への対応、防犯機器の紹介、民事訴訟による解決方法等の助言を行うほか、個別の事案ごとに必要性を勘案の上、相談者宅への訪問、関係者からの事情聴取、ストーカーに対する指導警告、他機関との連絡等の活動を行うこととしている。(警察庁)

(2)ドメスティクバイオレンスの被害者が一時避難を要する場合の措置

 厚生省においては、ドメスティックバイオレンスの被害者を一時保護するための専用施設はないが、一時保護が必要な場合には次の施設を利用することとしている。

 ア 婦人保護事業
 「売春防止法(昭和31年法律第118号)」に基づく婦人保護事業では、従来から、家族関係の破綻や生活困窮等に係る相談に対応するとともに、一時保護や婦人保護施設への収用保護を実施してきたところであり、家庭内暴力による被害を受けた女性に対しても、他に対応するものがない場合、婦人相談所での一時保護や婦人保護施設での収容保護を行っている。また、都道府県単位での対応が困難な場合には、広域的対応を推進している。
 今後においては、社会福祉機関はもとより、警察、司法関係機関等との間で、個別のケースに即して連携して取り組むため、婦人相談所を中心とした、暴力被害女子支援ネットワークの構築を推進するなど、個別のケースにふさわしい支援を行うことができるよう、可能な限りの取組みを行うように努めることとしている。(厚生省)

 イ 児童福祉法上の施策
 「児童福祉法(昭和22年法律164号)」上の施策としては、児童福祉の観点から、児童虐待を受け、保護が必要な児童については、児童相談所による一時保護を行い、さらに、児童の状況に応じて児童養護施設などにおける保護を行っているところである。母子ともに保護が必要な場合には、母子生活支援施設における保護が行われているところであり、引き続き、関係機関と連携しながら、母子や児童の家庭環境、心身の状況などに応じた適切な処遇が行われるよう、努めていくこととしている。(厚生省)

7 交通事故被害者対策について

(1)警察における交通事故被害者対策

 平成11年中の人身交通事故発生件数は、850,363件と史上最高を記録し、また、交通事故死傷者は、1,059,403人であった。交通事故被害者については、従来、主として生命、身体、財産上の被害及び経済的被害が問題視されていたが、近年、精神的被害について国民の関心が高まってきており、また、平成10年に交通事故被害実態調査研究委員会が実施した調査からも精神的被害(苦痛)が深刻であることが明らかにされている。警察では、交通事故被害者の精神的被害の回復、軽減のため次のような施策を推進しているところである。○各都道府県警察の本部及び警察署において「交通相談係」の表示を掲げて、交通事故の当事者からの相談に応じて、損害賠償請求制度、援助・救済制度等の概要の説明、各種相談窓口、カウンセリング機関等の紹介、調停、訴訟等による解決のための基本的な制度や手続等の一般的事項の説明等を行っている。○平成10年4月から都道府県交通安全活動推進センター(都道府県交通安全協会)では、職員のほか、弁護士、カウンセラー等を相談員として配置し、交通事故に係る保険請求,損害賠償請求,示談等の経済的な被害の回復に関する相談のほか、交通事故による精神的な被害の回復に関する相談に応じ、必要な助言を行っている。○このほか、被害者連絡対象の拡大、カウンセリング等の専門的相談体制の整備を図っている。(警察庁)

(2)運輸省における交通事故被害者対策

 ア 保険金支払い適正化対策
 交通事故の被害者及びその家族に対しては、自賠責保険をはじめとする自動車損害賠償保障制度の的確な運用を通じ、適正な損害賠償を保障することによって、その保護を図るシステムを確立している。
 しかしながら、運輸省は、交通事故により被害者が死亡しているのに加害者に損害賠償の責任がないとして自賠責保険が支払われない、いわゆる「死亡無責事故」が社会問題化したことを受け、死亡無責事故等について、特に慎重かつ客観的な審査を行わせるため、損害調査を行う自動車保険料率算定会に平成10年4月から医師や弁護士が参加する「審査会」、「再審査会」を設置させた。同制度の導入により、年間約1000件前後であった死亡無責件数は、約600件前後まで大幅に減少している。
 また、運輸省は政府再保険制度の一環として実施している保険会社への再保険金支払いの審査において、年間約200件の過少払いの是正を実施しており、過少払い是正額は保険金ベースで年間約4億3,000万円にのぼっている。(運輸省)

 イ 交通事故被害者援護対策
 重度後遺障害者及びその家族等は、介護面、生活面で深刻な状況にあることが多く、保険金の支払いにとどまらない、特別な援護対策が必要である。
 このため、現在、自動車事故対策センターにおいて、交通事故起因の重度後遺障害者に対し、介護料の支給を行ったり、重度後遺障害者を植物状態から脱却させるための治療機関である療護センターの運営等を行っている。療護センターについては、全国に3ヶ所設置されているが、一人でも多くの入院待機患者に治療の機会を与えることができるよう、現在4ヶ所目となる中部療護センターの新設や、東北療護センターにおける介護病床の整備を推進している。
 また、交通事故被害者保護の充実強化対策として、日弁連交通事故相談センターの無料法律相談事業、交通遺児に対する育成資金給付や無利子貸付の事業等に対し、年間約40億円の補助等を行っている。(運輸省)

 ウ 後遺障害者に対する支援のあり方に関する検討
 運輸省では「今後の自賠責保険のあり方に係る懇談会」を設置し、交通事故被害者の保護を重点に、自賠責保険制度全般の見直しを行った。平成11年9月に提出された報告書においては、交通事故被害者保護の一層の充実を図るために、死亡無責事故の被害者等現行制度で何ら公的救済を受けられない被害者を対象に、自動車損害賠償保障制度により最小限の保障を行うシステムの導入や、重度後遺障害者に対する自賠責保険金額限度の引き上げ等が検討課題としてとりまとめられた。今後、これらの制度問題について、任意保険や社会保障制度全体との関係に配慮しつつも、具体的な施策を進めていく必要がある。
 また、重度後遺障害者の急増や、介護保険制度の導入に伴い、同制度の給付対象とならない65歳未満の交通事故被害者を中心に、後遺障害者に対する支援のあり方が社会問題化している。
 このため、運輸省では平成12年2月から、「今後の自賠責保険のあり方に係る懇談会」に、医療行政や障害者介護専門の学識経験者、自宅で介護に携わる被害者の代表、保険関係者、自動車関係者、厚生省等が参加する「後遺障害部会」を設置し、重度後遺障害者やその家族に対する支援のあり方等について、平成12年6月頃に一定の結論を得ることを目標に検討している。(運輸省)

8 その他

(1)犯罪被害者のプライバシーの保護

 犯罪被害者のプライバシーの保護は重要な問題であるが、事実と異なる内容や事実を過度に誇張した内容の広報や報道がなされた場合には、犯罪被害者のプライバシーとの関係で微妙な問題が生じるおそれがあるとの指摘がなされている。
・ 警察では、事件・事故発生時の記者発表については、犯罪被害者のプライバシーに十分に配慮して行っているところである。一般的には、犯罪被害者の氏名等個人を特定できる事項が公表されることにより、犯罪被害者の名誉が侵害され、又は犯罪被害者が他人から危害を被る可能性が生じると認められる場合等においては、原則として犯罪被害者を特定できる情報は公表していない。性犯罪については、積極的な広報は差し控えるべきと判断されるが、社会的な反響の大きい事件、連続・広域事件等のうち、広報することにより新たな被害の防止、あるいは被疑者に関する情報の提供等がなされるなど社会的利益がその不利益を上回る場合には広報することもあるが、その場合には、当該事項の公表により犯罪被害者の名誉、信用又はプライバシーが侵害されないか、犯罪被害者に対するいやがらせ、非難、中傷等が行われる危険性はないか等を慎重に判断して行っているところである。今後とも、事件・事故の公表は、犯罪被害者のプライバシーに十分に配意して行っていくこととしている。(警察庁)
・ 法務省の人権擁護機関では、犯罪被害者のプライバシーの保護を含む各種人権問題について相談を受け付けており、その内容を十分に聴取・検討した上、権利を守るために必要な裁判手続等を助言したり、その問題を取り扱う関係官公署への通報をするほか、裁判手続の費用に関し資力に乏しいと認められる場合には法律扶助協会への紹介をする等事案に応じた方法、手段等を教示している。また、人権侵犯の疑いのある事案について調査を行い、人権を侵犯した者等に対して、人権尊重思想を啓発することにより、自主的に人権侵犯の状況を停止、改善させるなど事案に応じた措置を講じている。なお、被害者のプライバシーの保護を含む様々な人権問題に対する救済制度の在り方については、現在、法務省に設置されている人権擁護推進審議会において調査審議が進められており、その結果も踏まえ、法務省の人権擁護機関としてどのような取組を行うことができるかについて、更に検討する予定である。

 また、検察においては、起訴時等に犯罪事実等を公にする際には被害者名を匿名にし、公にする範囲を限定するなど、被害者のプライバシーを保護するための配慮を行っている。(法務省)

(2)犯罪被害の実態に対する調査の実施

 ア 警察庁
 地下鉄サリン事件の被害者について過去1度被害実態についてアンケート調査を実施しているが、事件発生後5年が経過したことから、改めて第2回目の犯罪被害の実態に対する調査を行い、その結果を今後の犯罪被害者対策に役立てることとしている。

 イ 法務省
 法務省では、暗数を含んだより正確な犯罪動向(罪種別の犯罪被害の有無、警察への申告の有無、犯罪に対する不安等)を把握するとともに、犯罪被害実態に関する国際比較を行うために、国連犯罪司法研究所を中心として実施されている2000年国際犯罪被害実態調査(ICVS)に参加する形で、犯罪被害実態調査を実施することとした。

第4 資料編

資料1

犯罪被害者対策関係省庁連絡会議の設置について

>TABLE>平成11年11月11日
内閣官房長官決裁
  1. 犯罪被害者対策に係る問題について、関係省庁の密接な連係を確保し、政府として必要な対応を検討するため、内閣に、犯罪被害者対策関係省庁連絡会議を設置する。

  2. 連絡会議の構成は、次のとおりとする。ただし、議長は必要があると認めるときは、その他の関係者の出席を求めることができる。
    議長内閣官房副長官(事務)
    副議長内閣官房内閣内政審議室長
    構成員警察庁長官官房長
    経済企画庁国民生活局長
    法務省刑事局長
    文部省体育局長
    厚生省保健医療局長
    運輸省運輸政策局長
    海上保安庁次長
    労働省職業安定局長
    自治大臣官房総務審議官

  3. 連絡会議に幹事を置く。幹事は、関係行政機関の職員で議長が指名した官職にある者とする。

  4. 連絡会議の庶務は、警察庁及び法務省の協力を得て、内閣官房内政審議室において処理する。

  5. 前各号に掲げるもののほか、連絡会議の運営に関する事項その他必要な事項は、議長が定める。

 

犯罪被害者対策関係省庁連絡会議幹事一覧

警察庁長官官房給与厚生課長

経済企画庁国民生活局国民生活政策課余暇・市民活動室長

法務大臣官房参事官

文部省体育局学校健康教育課長

厚生省保健医療局地域保健・健康増進栄養課長

運輸省運輸政策局政策課長

運輸省自動車交通局保障課長

海上保安庁総務部秘書課長

労働省職業安定局業務調整課長

自治大臣官房企画室長

資料2

犯罪被害者対策関係省庁連絡会議・同幹事会の開催状況

平成11年11月11日 犯罪被害者対策関係省庁連絡会議(第1回)を開催し、政府として犯罪被害者対策に取り組むことを決定し、詳細は幹事会において検討することとした。
平成11年11月24日 犯罪被害者対策関係省庁連絡会議幹事会(第1回)を開催し、今後の検討課題と日程について協議した。
平成11年12月21日 犯罪被害者対策関係省庁連絡会議幹事会(第2回)を開催し、次の団体関係者からヒアリングを実施した。
・被害者支援ボランティア「小さな家」:主宰 大久保恵美子
・地下鉄サリン事件被害者の会:代表世話人 高橋シズエ
・全国交通事故遺族の会会長:井手 渉
平成12年1月17日 犯罪被害者対策関係省庁連絡会議幹事会(第3回)を開催し、次の団体関係者等からヒアリングを実施した。
・全国被害者支援ネットワーク会長:山上 晧
・日本被害者学会:中央大学教授 宮澤浩一、常盤大学学長 諸澤英道
・武蔵野女子大学教授 小西聖子
・全国養護教諭連絡協議会会長:林 典子
平成12年3月24日 犯罪被害者対策関係省庁連絡会議幹事会(第4回)を開催し、本報告書案について検討した。
平成12年3月30日 犯罪被害者対策関係省庁連絡会議(第2回)を開催し、本報告書を了承し、本報告書に盛り込まれた犯罪被害者対策を関係省庁において一層強力に推進することを申し合わせた。

資料3 参考文献

平成10年警察白書

平成11年警察白書

犯罪白書平成11年版

平成11年9月 「今後の自賠責保険のあり方に係る懇談会」報告書