ふるさとづくり団体との意見交換・視察
静岡県(川根本町、NPO法人かわね来風)

 「ふるさとづくりの推進」を担当する秋葉内閣総理大臣補佐官は、「ふるさとづくり」に取り組む現場の声を直接聞くために、静岡県川根本町において4世代が幸せに暮らせるまちづくりを行っている「NPO法人かわね来風(らいふ)」の取組を、令和2年7月21日(火)に視察しました。
 全国的に新型コロナウイルス感染症の発生が続く中、視察先の皆様と共に、人との間隔の確保、マスクの着用、手指消毒、換気などの感染症対策に努めながらの視察となりました。


JAおおいがわ直売所まんさいかん藤枝の視察

 藤枝市内にあるJAおおいがわ直売所まんさいかん藤枝では、ここから遠く離れた川根本町生産物が「川根やまそだち」のシールを付けて売場に並んでいます。まんさいかん藤枝までの生産物の輸送は、NPO法人かわね来風が立ち上げ、現在は農家が実施している川根農産物直送便により行われています。
 JAおおいがわでは4店舗の直売所があり、その中でもまんさいかん藤枝は出荷者1、300人、売上げは年間8億6千万円と規模の大きな直売所で、新鮮な農産物等を求めて多くの消費者が来店するほか、周辺の飲食店も仕入れに利用しています。また新型コロナの影響で内食が増えていることから売り上げが伸びています。
 その他、JAおおいがわでは、農産物アイドルユニット「茶果菜(ちゃかな)」をプロデュースしており、地元農作物のPR活動を通じて地域の農業を応援しています。

まんさいかん藤枝の視察

まんさいかん藤枝の視察

手指消毒の様子

手指消毒の様子

食と遊びの三ツ星村の視察

 NPO法人かわね来風では、平成25年度に大井川鐵道下泉駅近くに「食と遊びの三ツ星村」を開設しました。ここは、野菜の直売や加工品、地域の特産品の販売や飲食の提供を通じ、地域の女性たちの活躍の場となっているところです。
 地場産品を使った昼食を頂いた後、かわね来風の前田理事長、浜谷事務局長から説明を受けました。
 新型コロナの影響で令和2年4月から休業し、そのまま閉店することも考えたそうですが、本施設は町の入口の顔ともなっているため、大根そばとゆずの店として7月に再開しました。
 またかわね来風では、ゆず協同組合と連携してゆずの生産拡大と販路拡大の取組を進めており、新たに商品開発したゆず粉、ゆずパウダーが好評で、令和2年1月には新会社を立ち上げ、輸出にも取り組む予定でしたが、新型コロナが深刻な影響を及ぼしており、事業の持続化に向けた方策についても意見交換しました。

前田理事長(右から2番目)、浜谷事務局長(左端)、スタッフの皆さん

前田理事長(右から2番目)、浜谷事務局長(左端)、スタッフの皆さん

昼食の様子(新型コロナ対策として対面にならないよう配慮)

昼食の様子(新型コロナ対策として対面にならないよう配慮)

浜谷事務局長からの説明の様子

浜谷事務局長からの説明の様子

天空の宿(農家民宿)の視察

 川根本町には農家民宿が10軒以上あり、そのうちの1軒、山上にある絶景の「天空の宿」を視察しました。女将の渡邉さんからは、農泊を始めたきっかけや現在は新型コロナの影響により8月末まで休業予定であること、昨年度の実績としてインバウンドが約4割を占め、地元の農作物や加工品が人気で、特にこんにゃく、自然薯が好評だったことなどをお話頂きました。
 天空の宿では、接客に集中するため1日1組限定としているのがこだわりで、また必ずお手紙を書いて渡すことにしています。リピーターに同じ料理を出さないよう、開業以来7年間の全てのレシピを保存しており、全て手作りで料理を提供するなど、心のこもったおもてなしが人気です。
 NPO法人かわね来風では、協議会を立ち上げて町内の小規模農家等による農業農村体験や農家民宿を推進しており、農泊の開業支援やサービス向上などのサポートを行っています。

農家民宿ならではの古くから伝わるひな人形や神棚(右が渡邉さん)

農家民宿ならではの古くから伝わるひな人形や神棚(右が渡邉さん)

説明の様子(右上が渡邉さん)

説明の様子(右上が渡邉さん)

説明の様子(左が渡邉さん)

説明の様子(左が渡邉さん)

記念撮影(左:前田事務局長、右:浜谷事務局長、右から2番目:渡邉さん)

記念撮影(左:前田事務局長、右:浜谷事務局長、右から2番目:渡邉さん)

川根農産物直送便の取組視察

 川根本町は、最寄りのJA直売所「まんさいかん」まで35km以上離れており、地域の農業者がJA直売所を利用することが困難でした。そこで、平成25年度にNPO法人かわね来風が牽引役となって「川根清涼野菜出荷協議会」を立ち上げ、地域農産物を集荷しJA直売所に届ける「川根農産物直送便」の仕組みづくりと、「川根やまそだち」のロゴづくりなどによるブランディングを進めました。
 平成29年度にかわね来風から協議会事務局を引き継いだかみなか農場の上中さんからは、藤枝市など都市部との標高差により野菜類の出荷時期がずれて有利に販売できることや、栽培技術や消費者ニーズに合った包装の工夫等の指導を行っていることの説明のほか、JA大井川徳山支店に設置された、直売所への出荷まで野菜を一時保管する冷蔵庫を見せて頂きました。

まんさいかんへ出荷するための冷蔵庫内を視察
まんさいかんへ出荷するための冷蔵庫内を視察(左が上中さん)

まんさいかんへ出荷するための冷蔵庫内を視察(左が上中さん)

三ツ星オートキャンプ場の視察

 NPO法人かわね来風がその活動初期の平成21年度から川根本町より管理運営を受託している三ツ星オートキャンプ場を視察しました。受託前は年間利用者が500名程度と低迷していましたが、高校生の遠足受け入れ、ピザ焼きやヤマメのつかみ取りなどのワークショップで人気を集め、利用者は現在年間約1万人と大きく増えています。このキャンプ場の収益が、かわね来風の活動を大きく広げる基盤となっています。

前田理事長の説明の様子

前田理事長の説明の様子

人気のピザ釜

人気のピザ釜

ママ宅による高齢者支援の視察

 NPO法人かわね来風が仕組みを作り平成25年度から始まった「ママ宅」は、子育て中のママたちが子どもと一緒に、高齢者にお弁当や日用品を届けるユニークな宅配サービスです。視察では、自身も配達経験のある事務スタッフの小川さんから説明頂きました。
 川根本町では、高齢者の独居世帯が全世帯の3分の1を占め、車の運転ができない高齢者は外出が難しく、一日中誰とも話すことなく過ごしている人もいます。そこでママたちは、物を届けるだけでなく、同時に利用者の健康状態等の見守りも兼ね、子どもを介して利用者と世代を超えて交流しています。
 ママ宅は、高齢者支援にとどまらず、小さな子どもを抱えて家にこもりがちなママが外へ出るきっかけをつくり、利用者とコミュニケーションをとることで、ママたちにとっても学びや気分転換になり、子どもにとってもお年寄りとふれあうことで心の成長につながっています。

ママ宅の説明の様子

ママ宅の説明の様子

右が小川さん

右が小川さん

鈴木敏夫川根本町長との意見交換

 川根本町の鈴木町長は、秋葉内閣総理大臣補佐官とは奇しくも大学の先輩・後輩の関係に当たります。人口6千6百人の川根本町はお茶の名産地であり、また日本で2番目に星空が美しいと言われるところですが、SLで有名な大井川鐵道のお客さんも以前の半分程度で、新型コロナが町の観光業に大きな影響を及ぼしているとのお話がありました。
 また、町の面積の9割を占める森林の将来的な管理のあり方についても意見交換しました。

鈴木町長(左上)との面談

鈴木町長(左上)との面談

鈴木町長との面談

鈴木町長との面談

ふるさとづくりに係る意見交換会

 川根本町役場において、NPO法人かわね来風をはじめ、静岡県、川根本町、地元の農業生産者の皆様の出席による意見交換会を開催しました。
 鈴木町長からは、本町では森林管理や電源開発を通じ外部の人を受け入れる文化が育ち、また千年の学校という持続可能なまちづくり、人づくりにも取り組んでおり、その成果として町内の高校は半数が町外の生徒であるとのお話がありました。
 NPOかわね来風からは、現在移住・空き家対策に力を入れており、また官学民有志の「プロジェクトK」で呼び込んだベンチャー企業とも連携し「川根本町ゆず」を新たなブランドとして育てたいとのお話がありました。
 また、お茶の生産振興やゆず生産の現状、県の美しく品格のある邑(むら)づくり及び一社一村しずおか運動についても紹介頂きました。
 秋葉内閣総理大臣補佐官からは、今回の視察を通じ、こうした取り組みが町全体の魅力に繋がっていること、空家活用やゆずの販路拡大及び輸出、農産物輸送等の課題については、国としても必要な支援をしていきたいとお話があり、ふるさとづくりを更に進めていく上で有意義な意見交換会となりました。

秋葉補佐官からの挨拶

秋葉補佐官からの挨拶

意見交換の様子
意見交換の様子
意見交換会に出席した皆さん

意見交換会に出席した皆さん