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はじめに

「我が国が5年以内に世界最先端のIT国家となる」

 この野心的な目標が2001年1月の「e-Japan戦略」で掲げられて以来、我が国においては、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)を中心とした官民の総力を挙げた取組を図ってきた。具体的には、

○「e-Japan重点計画」(2001年3月)
○「e-Japan2002プログラム」(2001年6月)
○「e-Japan重点計画、e-Japan2002プログラムの加速・前倒し」(2001年11月)
といった政府の行うべき施策を定めた各種計画を次々と策定するとともに、「e-Japan重点計画」の220の具体的施策について、初年度予定された103施策を全て措置する等、これらの計画を着実に実施してきたところである。その結果、輸出入・港湾諸手続のシングルウィンドウ化実現のための方針策定、医療情報化のための戦略的グランドデザインの策定、「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律案」の国会提出等、具体的な成果が上がりつつある。インターネット人口普及率も1999年12月末の21.4%から2001年12月末の44.0%へと大幅に上昇するに至っている。

 ただ、経済・社会のあり様を根底から変革する要因たるIT化のうねりは、世界的潮流であり、各国がこぞって最優先課題の一つとして取り組んでいるため、我が国のインターネット人口普及率の世界的な国別順位は13位から16位になる(「e-Japan重点計画」と「e-Japan重点計画−2002」にそれぞれ添付されたベンチマーク集における比較)など、IT革命の推進につき、一瞬たりとも気を緩めることなく取り組まなければならないのも事実である。「世界最先端のIT国家となる」上で、これから2005年という目標年次の中間段階に差し掛かることもあり、これまでの政府の動きを更に一層加速していかなければならない。

 このため、昨年3月に「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」(IT基本法)第35条に基づき策定された「e-Japan重点計画」を見直し、新たに、諸外国と比較した現在の我が国の位置付けやこれまでの成果の的確な評価を踏まえ、目標達成を更に確実なものとすべく、ここに、高度情報通信ネットワーク社会の形成のために政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策の全容を明らかにする「e-Japan重点計画−2002」を策定することとする。

 今後、IT戦略本部を中心とした内閣のリーダーシップの下に、この「e-Japan重点計画−2002」を確実に実施し、その達成状況を継続的に調査するとともに、この計画に記載された施策を必要に応じ更に加速・前倒しすることにより、「世界最先端のIT国家となる」という目標を着実に達成するものとする。


I 基本的な方針

  1. IT革命の意義

     IT革命は産業革命に匹敵する歴史的大転換を社会にもたらすものである。産業革命が世界を農業社会から工業社会に移行させたように、情報通信技術の活用は、情報流通の費用と時間を劇的に低下させ、密度の高い情報のやり取りを容易にし、世界規模での急激かつ大幅な社会経済構造の変化を生じさせることとなる。この結果、世界は工業社会から高度情報通信ネットワーク社会、即ち情報と知識が付加価値の源泉となる社会に急速に移行しつつある。

     他方、「e-Japan重点計画」が策定された2001年3月当時の情報通信分野における我が国の現状を見ると、ハードウェアの製造に関しては世界最高水準の競争力を誇り、また、音声電話や放送については世界でも最高水準の普及率を達成している一方で、諸外国が情報通信政策の主軸に位置付けているインターネットの普及率は、未だ主要国の中でも低いレベルにあり、またITのビジネスや行政への浸透という点でも我が国の取組は遅れていると言わざるを得なかった。

     こうした状況を打破するため、この一年、法律改正等による公正競争条件の一層の整備、東・西NTT回線等のアンバンドル1に関するルール整備、線路敷設の円滑化に関する各種措置等を集中的に講じたことにより、DSL2技術を活用したインターネットサービスの展開や光ファイバ網の整備が顕著に行われるとともに、複数事業者間の競争が発生し、通信料金が一層引き下げられ、加入者数が著しく増加するという効果を生じた。

     さらに、そのほかにも、「e-Japan重点計画」等に定められた諸施策を累次にわたり実施してきたことにより、

    ○法的措置による公正競争条件の整備、未利用光ファイバの利用促進、集合住宅における高速・超高速インターネット接続の円滑化等、高度情報通信ネットワークの加速的形成
    ○すべての公立小中高等学校、盲・ろう・養護学校等へのインターネット接続
    ○電子商取引に関する様々な法的問題点について、現行法規の解釈を示す「電子商取引等に関する準則」の策定
    ○国・地方の行政手続をオンライン化することを可能にする法案の国会提出
    ○電子政府の情報セキュリティ確保のためのアクションプラン、重要インフラのサイバーテロ対策に係る官民の連絡・連携体制の策定
    等の成果が挙がっているところである。

    諸施策の実施による効果は、

    ○インターネット普及率が37.1%(2000年12月末)から44.0%(2001年12月末)に増加。
    ○ADSLの通信料金(加入基本料を除く)が、6,000円程度(2001年2月)から2,500円程度(2002年3月)に低廉化。
    ○公立学校におけるインターネット接続率が、81.1%(2001年3月末)からほぼ100%(2002年3月末)に増加する見込み。
    ○IT関連の修士・博士号取得者数が、1999年度の12,650人(修士)、1,568人(博士)から、2000年度の13,509人(修士)、1,637人(博士)に増加。
    ○電子商取引の市場規模が、BtoBの市場規模は22兆円(2000年)から34兆円(2001年)に、BtoCの市場規模は0.8兆円(2000年)から1.5兆円(2001年)に増加。
    ○国の行政機関の申請・届出手続のオンライン化実施数については、124手続(2001年3月時点)から590手続(2002年3月時点)に増加。
    といったベンチマーク(指標)においても明確に見ることができる。

     ただ、一方において、「世界最先端のIT国家を目指す」との我が国の目標は極めて高く、かつ、IT革命を支える技術や市場環境は、時々刻々と、しかも急速に変化するものであるため、IT革命の推進に向けての歩みを一刻たりとも止めることは許されるものではない。

     もとより、IT革命の推進は、経済社会のあり方をその根底から変革する全世界的な営みであり、それだけに、今世紀の国際社会における我が国の位置付けを決定づけるものである。したがって、変化を恐れず、英断をもって邁進していかなければならない。

     今後は、IT革命がもたらし得るメリットである経済構造改革の実現、産業活動の効率化や、更には生活の利便性の向上や多様なライフスタイルの実現といった国民生活全般の変化を現実のものとするため、「e-Japan戦略」に係るITに関する基本戦略を更に強力に推し進め、また、「e-Japan戦略」に記述された「必要とされる制度改革や施策を2001年からの5年間に緊急かつ集中的に実行していく」という方針の下、この「e-Japan重点計画−2002」に基づき、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部を中心に政府一丸となって必要な施策を戦略的、重点的かつ迅速に推進していくこととする。

  2. 目指すべき高度情報通信ネットワーク社会の姿

     「e-Japan戦略」では、「我が国が5年以内に世界最先端のIT国家となる」ことが目標とされている。この目指すべき「世界最先端のIT国家」、即ち高度情報通信ネットワーク社会とは、ITを経済・社会のあらゆる局面に効果的に利活用し、国際社会の中で、豊かな国民生活や事業活動が実現できる、以下のような社会であると考えられる。

     第一に、「すべての国民がITのメリットを享受できる社会」である。5年以内に少なくとも3,000万世帯が高速インターネットアクセス網3に、また1,000万世帯が超高速インターネットアクセス網4に常時接続可能な環境が整備され、必要とするすべての国民が低廉な料金で常時接続できるようになり、更には、2005年のインターネット人口普及率が現時点での予測値である60%を大幅に上回ることとなり、すべての国民の情報活用能力が向上する結果、すべての国民が多様な情報・知識を世界的規模で入手・共有・発信できるようになる。

     第二に、「経済構造改革の推進と産業の国際競争力の強化が実現された社会」である。ITの活用を通じた絶え間ない新規産業の創出と既存産業の効率化により、経済構造の高度化と国際競争力の強化、更にはそれらを通じた持続的な経済成長と自己実現の場としての雇用の拡大が達成されることとなる。

     第三に、「ゆとりと豊かさを実感できる国民生活と、個性豊かで活力に満ちた地域社会が実現された社会」である。2003年度には電子情報を紙情報と同等に扱う電子政府が実現され、また電子商取引の市場規模が70兆円を大幅に上回るまでに成長し、更には遠隔教育や遠隔医療等も普及することにより、地理的な制約や年齢・身体的条件に関係なく、すべての国民がインターネット等を通じて、いつでも必要とするサービスを受発信することができると同時に、様々なコミュニティへの社会参加等を行えるようになる。

     第四に、「地球規模での高度情報通信ネットワーク社会の実現に向けた国際貢献が行われる社会」である。IT関連修士、博士号取得者が増加し、また3万人程度の優秀な外国人人材を受け入れることなどにより、日本において世界最先端の情報通信技術が開発され、また我が国で作られた世界最高水準のコンテンツ5が世界に発信されるようになるなど、グローバルなインターネット社会の発展にこれまで以上に大きく貢献するようになる。

  3. 基本方針

    (1)官民の役割分担

     この「e-Japan重点計画−2002」に盛り込まれているすべての施策の推進に当たっては、その前提として、官民の役割分担が明確となっていなければならない。

     官民の役割分担についての原則は、情報通信分野においては民間が主導的な役割を担うということである。したがって、まずは民間が意欲を持ってIT革命を推進していくことが重要である。その上で、政府は、自由かつ公正な競争の促進、規制の見直し等の市場が円滑に機能するような環境整備や、縦割り行政の弊害を排除しつつ、国と地方の連携の強化等を通じて、民間の活力が十分に発揮されるための環境整備を行わなければならない。

     一方、政府は、電子政府の実現、政府部門における情報セキュリティの確保、デジタル・ディバイド6の是正や基盤的技術の研究開発といった民間主導では実現し得ない部分について、予算の効率的配分に留意しつつ積極的に対応していくことが必要である。

     高度情報通信ネットワーク社会の実現のためには、民間が自由で公正な競争を通じて様々な創意工夫を行い、IT革命の強力な原動力とならなくてはならない。これまでの競争政策により、例えば、インターネットの常時接続において、NTT東西以外の事業者がシェアの過半を超えるとともに、料金は劇的に低下し、加入可能地域も拡大しつつある。今後とも、安全性・信頼性を確保しつつ、引き続き、競争政策のあり方について不断の見直しを行い、適切な市場環境を形成していくことが必要である。

     政府としては、「e-Japan重点計画−2002」に盛り込まれた施策を早急に実施することにより、IT革命の推進に向けた民間の積極的・創造的な取組を支援していく。

    (2)重点政策5分野

     この「e-Japan重点計画−2002」では、IT基本法第35条に基づき、高度情報通信ネットワーク社会の実現のために特に重点的に施策を講ずべき5分野、即ち
    (i)世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成
    (ii)教育及び学習の振興並びに人材の育成
    (iii)電子商取引等の促進
    (iv)行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進
    (v)高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保
    に集中的に取り組むこととしている。

     高度情報通信ネットワーク整備と人材育成は、高度情報通信ネットワーク社会の実現に不可欠なインフラを形成することとなる。また、ネットワーク・インフラを活用した取引や活動を活性化するためには、電子政府の実現と電子商取引の促進が必要である。更に、高度情報通信ネットワークの安全性と信頼性の確保は、すべての国民がネットワーク・インフラを安心して活用するためには不可欠な基盤となるものである。

     また、「e-Japan重点計画−2002」においては、個別分野のそれぞれにおいて、「既に講じられた施策」であって特に実効を得たものをこれまでの主な成果として記述するとともに、新たに、
    (i)「世界最先端のIT国家となることを目指す」という目標の実現に資する施策
    (ii)政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策
    (iii)原則として当該施策の具体的目標及びその達成の期限が定められている施策
    との条件を満たす諸施策を盛り込むこととする。また、継続的施策についても、「世界最先端を目指すとの野心的な国家目標を実現するには、『e-Japan重点計画−2002』に盛り込まれた施策を着実に推進することが必要かつ十分である」との意義を十分踏まえつつ、目標達成との連関性において精査の上、「e-Japan重点計画−2002」に取り込むものとする。

     なお、これらの取組に当たっては、内外の意見を十分考慮するとともに、特にIT利用者の立場に配慮することが必要である。

     具体的には、重点政策5分野のそれぞれにおいて、その課題と方向性、主要施策について、概要以下のような取組を行うこととしている。

    (i)世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成
    @ 課題と方向性
     1つの端末にとらわれず、いつでもどこでも接続できる、十分な伝送容量を備えたネットワーク環境を目指し、設備ベースの競争と多様なネットワークの構築を促進する。その際、安価なサービスが提供されるとともに、当該ネットワークインフラについて、高い品質と信頼性を備えたものとすることが必要である。
    A 主要施策
    ア)ネットワーク整備の促進・円滑化
     線路敷設の円滑化、ダークファイバの開放、地理的情報格差の是正、電波の有効利用の促進、IPv67の普及促進、集合住宅における高速・超高速インターネットアクセスの円滑化、新たな無線アクセスシステムの導入などにより、多様なネットワークの整備を図る。
    イ)自由かつ公正な競争環境整備の促進
     新たな競争の枠組みの検討、非対称規制の着実な実施、多様なビジネスモデルの展開への支援、消費者への情報提供の推進などにより、利用者利便の向上に資する自由かつ公正な競争環境整備の促進を図る。
    ウ)超高速ネットワークのための研究開発の推進
     光情報通信技術、インターネット基盤技術、移動通信技術等の開発を行い、ネットワークの高速化・大容量化を推進する。

    (ii)教育及び学習の振興並びに人材の育成
    @ 課題と方向性
     ITを主体的・積極的に活用する環境を醸成するとともに、我が国の国際競争力を強化し、また、ブロードバンド化等の時代の変化へ的確に対応するため、「IT人づくり」を推進する。
    A 主要施策
    ア)学校教育の情報化の加速
     インターネット利用環境の向上、IT活用型教育の本格的実施の推進、教員の指導力の向上、教育用コンテンツの充実・普及、障害のある子どもたちへの対応により、学校教育の情報化を加速する。
    イ)国民のIT活用能力の一層の向上
     IT講習事業の成果分析を踏まえた、インターネットの継続的な利用機会の確保、インターネット利用環境の整備、障害者・高齢者の利用促進、電子政府等のサービス利用の促進により、国民のIT活用能力の一層の向上を図る。
    ウ)IT分野における高度な専門家の育成・活用及び職業能力開発
     大学・大学院における専門教育のあり方、戦略的人材育成、高度な外国人IT人材の受入、IT能力開発機会の提供、IT技能向上のための環境整備、IT技術者研修市場の活性化により、IT分野における専門家の育成・活用、職業能力開発を図る。

    (iii)電子商取引等の促進
    @ 課題と方向性
     電子商取引市場の着実な拡大に向けて、引き続き必要な環境整備を行うとともに、ネットワーク上を流通するコンテンツの飛躍的な増大を目指して、知的財産権の適正な保護・利用のための環境整備を行う。また、事業者における経営の効率化や経営革新等を促すため、事業活動における積極的なIT活用を促進する。
    A 主要施策
    ア)電子商取引等の浸透のための制度整備の充実
     電子商取引等の円滑な促進のため、刑事法制の見直し、ADR8に関する共通的な制度基盤整備等の情報化社会の基本ルールの整備を行う。
    イ)デジタルコンテンツの流通促進
     著作権等の権利処理の円滑化のためのシステム・ルールの整備、不正コピー・不正利用防止のための技術・システムの確立支援、海賊版の取締りの強化などにより、デジタルコンテンツの流通促進を図る。
    ウ)事業者のIT活用の促進
     中小企業等のIT化に対する支援、会社等法人の内部業務・手続の電子化のための制度整備、電子商取引の基盤となるソフトウェアの競争力強化などにより、事業者におけるIT活用の促進を図る。
    エ)消費者保護対策の着実な実施
     個人情報保護法などの制度整備や消費者に対する情報提供により、消費者のIT活用の促進と保護を図る。

    (iv)行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進
    @ 課題と方向性
     行政の情報化に関しては、国・地方を通じた行政情報化の総合的・一体的推進を図るため、申請・届出等に限らず行政手続全般にわたるオンライン化、手続の簡素化・合理化等を実施する。特に、電子自治体に関しては、国と歩調を合わせた行政の情報化を進めるよう、地方公共団体の取組を支援する。
     一方、公共分野に関しては、ITS、保健医療分野のIT化等の国民生活に密接に関係する施策の充実を図るとともに、民間における利用促進を図るための環境整備を行う。
    A 主要施策
    ア) 電子政府の実現
     申請・届出等手続に関するオンライン化実施時期の前倒し、手続の簡素化・合理化、ワンストップサービスの更なる推進、人事、給与等の内部管理業務の電子化等新たに必要な取組への対応、情報化推進のための統括責任者、スタッフの機能強化等各府省推進体制の確立等を図る。
    イ) 電子自治体の構築の推進
     電子自治体構築のための共通基盤の整備支援、地方公共団体が個別手続についてオンライン化するために必要な実施方策の提示、都道府県・市区町村が一体となったシステムの構築等により、電子自治体の構築に関する地方自治体の取組を支援する。
    ウ) 公共分野におけるIT化の推進
     ITS、GISの本格的な普及を図るとともに、芸術・文化、医療、食料の信頼確保、防災、公共交通分野等におけるIT化を推進するため、関連システムの整備、デジタルアーカイブ9化の推進、技術の標準化等、所要の施策を推進する。

    (v) 高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保
    @ 課題と方向性
     昨年9月の米国における同時多発テロ等を踏まえたサイバーテロ対策、サイバー犯罪条約署名等の国際的な取組のほか、電子政府の前倒し実現・電子自治体の推進への対応、国民が安心してネットワークを利用できるような環境整備について重点的に進める。
    A 主要施策
    ア) サイバーテロ等からの電子政府及び重要インフラの防護対策の充実強化
     サイバーテロ等の脅威から電子政府や重要インフラを防護するため、各省庁におけるポリシー運用の徹底や防御・監視対策の強化、官民における重要インフラ防護のための作業、緊急対処能力の向上を推進する。
    イ) 国際調和のとれた情報セキュリティ対策推進体制の整備
     国際的な動向を踏まえた刑事基本法制や捜査体制の整備、情報セキュリティ技術評価・認証事業の国際相互承認、情報セキュリティに関する国際的な連携・協力を推進する。
    ウ)情報セキュリティに係る国内全体の人的・技術的基盤等の整備
     情報セキュリティに係る技能標準、暗号技術の評価や事業者のセキュリティに関する評価基準の整備、情報提供・相談体制の充実や普及啓発、研究開発の推進により、情報セキュリティに係る重層的な基盤を整備する。
    エ) 個人情報の保護
     個人情報保護法、行政機関個人情報保護法等に基づいて、官民を通じる個人情報の適正な取扱いの確保を図る。

    (3)横断的な課題

     上述の重点政策5分野の施策を推進して高度情報通信ネットワーク社会を実現するに当たっては、重点的な対応が必要となる横断的な課題が存在することから、政府として、これらの課題についても積極的な対応を行っていくこととする。

     第一に、情報通信分野では技術が発展の原動力であり、技術革新こそが今後の高度情報通信ネットワーク社会の発展の基盤となる。科学技術基本計画(平成13年3月30日閣議決定)においても、情報通信分野は特に重点を置く4分野の一つとされている。したがって、IT戦略本部と総合科学技術会議との連携を図りつつ、産学官連携の強化、研究開発システムの改革等により、世界最先端のIT国家の実現に必要な基盤技術等についての研究開発を戦略的に推進することが必要である。

     第二に、インターネットは世界的規模で急速に普及していることから、高度情報通信ネットワーク社会を実現するためには、国際的な協調及び貢献として、世界の情報拠点(ハブ10)を目指して、アジア地域内の次世代高速インターネット網の整備、アジア発の次世代技術の確立、アジアのIT人材の育成・流動化を、アジア諸国と連携して戦略的に推進していくことが必要である。

     第三に、高度情報通信ネットワーク社会においては、すべての国民がインターネット等を容易にかつ主体的に利用し、個々の能力を創造的かつ最大限に発揮できる環境が実現されることが重要である。このため、地理的な制約、年齢・身体的な条件等により情報通信技術の利用機会及び活用能力の格差が生じないよう、各種施策を推進していくことが必要である。

     第四に、IT分野における雇用機会の創出及び人材の円滑な移動の促進等により雇用問題に的確に対応するとともに、青少年の健全育成並びに違法行為及び違法・有害情報の流通の対応等、新たな問題についても的確かつ積極的に対応していくことが必要である。

     第五に、現在行われているサッカー・ワールドカップ、2005年に予定される日本国際博覧会等、世界がインターネットと携帯電話を使うようになって以来初めて、世界から膨大な数の人々が日本を訪れることとなる。そこで、国民のITに関する理解の増進、最先端技術の実用化等を図るため、広報活動を充実させるとともに、世界最先端のIT国家の姿を広く提示するための「e!プロジェクト」を推進することが必要である。

    (4)ベンチマーク(指標)

     我が国のIT化の現状を示すとともに、重点政策5分野毎の目標の達成状況を定量的に評価する際のベンチマーク(指標)については、「世界最先端のIT国家となる」という目標の達成度をより的確に計測できるようにする。また、国で行っている各種統計について、ITに関する調査を加える等の改善を行い、将来的には、IT関係統計を更に充実させることとする。

    (5)高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部の役割

     この「e-Japan重点計画−2002」に掲げられた施策の着実な実行を確保するため、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部は、遅くとも1年以内に本重点計画の見直しを行うとともに、毎年春と秋に施策の推進状況の調査を行い、その結果を随時公表することとする。さらに、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部は、引き続き、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策で重要なものの企画に関して審議し、その施策の実施を推進することとする。その際、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部は、民間部門及び「e-Japan重点計画−2002」で直接の対象となっている政府以外の公的部門に対しても、我が国が全体として「世界最先端のIT国家となる」よう、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関し、必要な協力依頼等を行うものとする。
     このように、官民の総力を結集し、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部が中心となって、世界最先端のIT国家を目指すこととする。


1 アンバンドル:他事業者からの回線接続に際し、機能に応じて電気通信設備を細分化し、必要な機能に限定して電気通信設備へ接続させること。

2 DSL:Digital Subscriber Line(デジタル加入者線)の略。電話用のメタリックケーブルに専用モデムを設置することにより、高速のデジタルデータ伝送を可能とする方式の総称。

3 高速インターネットアクセス網:音楽データ等をスムーズにダウンロードできるインターネット網のことをいい、現時点ではDSL、CATVインターネット、加入者系無線アクセスシステムを利用したインターネット網が代表的な例。

4 超高速インターネットアクセス網:映画等の大容量映像データでもスムーズにダウンロードできるインターネット網のことをいい、現時点では加入者系光ファイバ網を利用したインターネット網が代表的な例。

5 コンテンツ:「情報の内容、中身。」。「マルチメディアコンテンツ」や「Webコンテンツ」という使い方をする。「Webコンテンツ」と言った場合には、インターネット上のWebサーバーに掲載されているテキストやグラフィックの内容を指す。

6 デジタル・ディバイド:デジタル技術(いわゆるIT)の普及に伴い、所得、年齢、教育レベル、地理的要因、身体的制約要因等により、その利用及び習得する機会に格差が生じた状態。社会問題として認識されつつあり、この問題を端的に「デジタル・ディバイド」と呼ぶ。

7 IPv6:IP(インターネットプロトコル)の次期規格の名称で、アドレス長が現行の32ビットから128ビットへ拡張されるなどの特徴がある。

8 ADR:裁判外紛争解決(Alternative Dispute Resolution)又はその制度全般を指す。判決などの裁判によらない紛争解決方法を指し、民事調停・家事調停及び行政機関や民間機関による仲裁、和解、あっせん等を意味。

9 デジタル・アーカイブ:「アーカイブ(archive)」は文書や記録の集積を意味し、デジタル技術により、様々な資源を、文字、映像、音声等により記録集積し、インターネット等で配信したり検索し再利用したりすることを可能としたもの。

10 ハブ:活動等の中心・中枢。