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IT新改革戦略 政策パッケージ


平成19年4月5日
IT戦略本部決定


1.策定の趣旨


2006年1月に策定した「IT新改革戦略」では、ITの持つ社会構造を改革する力を利用者視点に立って有効に使い、国民生活及び産業競争力の向上に努めるとともに、日本の抱える社会的課題の改革に取り組み、その成果を世界に向けて発信していくこととした。

 こうした中、本年1月に決定された今後の中期方針である「日本経済の進路と戦略」では、日本経済の負の遺産を取り除くための改革ではなく、新しい可能性を切り拓き、「創造と成長」による美しい国づくりを目指すことを掲げたところである。

我が国が少子高齢化への対応や国民生活の安心・安全の確保など様々な課題に取り組んでいく上で、今ほどITの果たす役割が期待されていることはない。このため、成長力強化による活力に満ちた経済社会、健全で安心できる社会の実現等を図る観点から、構造改革の推進を超えて、社会経済における新たな価値の創出等の更なる発展・飛躍を目指して、IT政策の一層の重点化と新たな戦略的取組の強化を図る必要がある。

 そこで、IT新改革戦略の加速につながるドライビング・フォースとなり、また、我が国の新しい可能性を切り拓く改革や創造のエンジンとなる政策をIT戦略本部主導で推進し、我が国の新たな発展に向け克服すべき課題の正面突破を図るため、今後のIT政策に関する基本的な方向性を取りまとめた政策パッケージをここに策定する。

この政策パッケージを政府及び関係者が一体となって迅速に実行に移すことにより、いつでも、どこでも、誰でも ITの恩恵を実感でき、真にあらゆる分野における創造的かつ活力ある発展が可能となる社会の早期実現に向けて取り組んでいく。


2.全体目標

 本政策パッケージが目指す政策目標は以下のとおりである。

(1) 効率性・生産性向上と新価値の創出

社会経済活動の分野では、人口減少の局面においても、日本経済が安定的な成長を続けていくためには、経済全体としての生産性を大幅に向上させることが重要である。このためには、ITの活用により、公的部門、民間部門を問わず、社会の多様な分野において、効率性・生産性向上、新たな付加価値の創出を図ることが必要である。すなわち、ITは社会全体の生産性向上等の改革を実現するために重要な役割を果たすものであり、ITをエンジンとして、社会的なイノベーションの実現を目指すことが必要である。

特に、GDPの7割を占めるサービスセクターにおいて、ITにより生産性の向上を図ることの意義は大きい。また、米国における近年の医療サービス分野のように、ITが推進するイノベーションによって新たな市場、雇用を産み出すことが重要である。

(2) 健全で安心できる社会の実現

 また、国民生活の分野では、老後や暮らしに心配なく、老若男女を問わず全ての人が安心して質的にも豊かな生活を送ることができる社会を実現することが重要である。

2007年から、いわゆる「団塊の世代」が60歳に到達し、大量の定年退職者が出ることが見込まれており、ITの活用により、老後を健康で安心して暮らせるように医療、社会保障分野等の改革を推進していく必要がある。

さらに、若い世代が子どもを産み育てながら仕事と両立ができ、働き続けたいとの意志がある高齢者が体力的に無理なく働けるなど、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を実現するための環境整備にITが果たす役割は大きい。また、ITの活用による交通安全の推進やネットの安全利用など国民生活の安全・安心の確保を図る取組の一層の推進も重要である。

(3) 創造的発展基盤の整備

 さらに、こうした効率性・生産性の向上、健全で安心できる社会の実現といったITによる改革を進めることにより、将来の創造的発展を図るためには、社会経済活動や国民生活に必須となった、「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」使えるデジタル・ディバイドのないインフラであるユビキタスネットワークや世界最先端の利活用が可能なモバイル等のIT基盤の一層の高度化や未来の我が国の成長を担う「頭脳」である高度IT人材の育成等の発展基盤の整備が重要である。

 



3.重点的な取組の推進

今後、ITによる効率性・生産性の向上と新価値の創出、国民が健全で安心できる社会の実現、将来の創造的発展を導く基盤の整備において、以下のような基本的な方向性に基づき、より強力なアクションを起こすために、IT戦略本部が主導して重点的な取組を推進する。

 これらの重点的な取組は相互に連携して推進することで相乗的に幅広く効用を引き出すことが可能であり、これによって、社会経済活動が一層活性化し、国民の一人ひとりが幸福で安全・安心に暮らせる環境、すなわち、いつでも、どこでも、個人や企業が多様なサービスを主体的に選択でき、リスクから自動的に守ってくれる社会を実現する。そのために、我が国のブロードバンドネットワーク基盤及びそれを先駆的に活用していくための認証基盤を含めた共通基盤を世界に先駆けて構築していくことが重要である。

また、以下の3つの政策目標を達成するためには、重点的な取組以外にも国民のニーズを適時的確に捉えて裾野の広い施策を総合的に推進する必要があり、2007年度以降の政府の重点的なIT施策をとりまとめる重点計画-2007については、こうした基本的な方向性を十分踏まえ、選択と集中の原則に留意しつつ策定する。

なお、重点計画-2006では、防災・治安、環境、研究開発、国際貢献をはじめ、その他にも重要な分野の取組が取り上げられており、これらについてもIT政策の継続性に留意しつつ、当該分野の取組に対する評価等を十分踏まえて、重点計画-2007をとりまとめる。

 

(1) 効率性・生産性向上と新価値の創出

目標: 行政、企業ともに世界最高水準のIT基盤を戦略的にフル活用し、組織を超えたネットワーク化等により我が国全体の効率性・生産性の大幅向上、さらに国民にとっての新たな価値の創出等を目指す。

【ア 基本的な方向性】

 我が国全体の効率性・生産性向上、新価値の創出には、行政分野、企業分野におけるIT活用を一体となって総合的に推進していく必要がある。

行政分野については、IT活用により行政運営の簡素化、効率化、及び透明性の向上を図るとともに、利用者の視点に基づき、利便性・サービス向上が実感でき、真にIT活用による便益を享受できるように、国・地方を含めたシームレスな電子行政の実現を目指す。また、企業分野については、市場環境の急激な変化の中で生き抜いていくためにIT活用の高度化、さらに我が国企業の99%以上を占める中小企業、今後一層重要になるものの生産性の低いサービス産業を含めて企業経営をITで最適化することにより、世界トップクラスのIT経営を実現し、生産性向上を推進していくことが必要である。

さらに、ICT産業は我が国の経済成長の主要なエンジンであり、経済成長を大きく牽引し、利用分野の産業とイノベーションの好循環を生むことが期待されるが、ICT産業の世界市場において日本の主要メーカの売上高の全合計が海外主要メーカ1社にも及ばない状況もあるなど、多くの市場を海外企業に支配されており、ICT産業の国際競争力強化を図ることが急務となっている。

こうした方向性に基づき、以下の重点的な取組を推進する。

 

【イ 重点的な取組】

(ア)        国・地方の包括的な電子行政サービスの実現

国民が実感できる実現目標

 国民や企業にとって、飛躍的に簡素で便利、かつ効率的な行政サービスの実現に向け、国・地方の枠を超えた電子行政窓口サービスの展開を念頭に置き、利用者ニーズ等を的確に踏まえつつ、フロントオフィスとバックオフィス及びバックオフィス相互間の連携や民間手続との連携を図ることにより、様々な行政手続を基本的にワンストップで簡便に行える第2世代の電子行政サービス基盤の標準モデルを2010年度を目途に構築することを目指す。また、並行して個人事業主等にとって使い勝手のよい、包括的な電子行政サービス利用に向けたソフトウェア・マニュアル等の策定のための環境整備を進める。

これらの基盤の確立により、紙ベースの申請に対する電子申請の利便性の飛躍的高まりを国民・企業が実感できる環境を実現し、電子行政サービスが基本の社会の構築を一層推進する。

 

実現のための方策

2007年度は国・地方の枠を超えた電子行政窓口サービス等を実現していく上での課題の抽出と分析を行い、その解決に向けた方向性を整理する。そのため、関係機関・有識者等による検討体制を立ち上げ、現行の申請・届出等に係るオンライン手続の利用状況の把握及び利用者視点に基づく行動フローの分析やニーズの把握を行う。その上で、2008年度以降、事業化に当たっての個別具体的な課題の抽出と分析を行い、改善すべき点を改めた上、2010年度を目途に、第2世代の電子行政サービス基盤の標準モデル等を構築することを目指す。

   

(イ) ITによるものづくり、サービスなど経済・産業の生産性向上(特に中小企

業の取組強化)

国民が実感できる実現目標

 「部門」や「企業」を超えたIT活用をより一層進めるとともに、特にIT投資が低迷している中小企業のIT活用を促進し、さらにはものづくり・サービスの双方でのIT活用を促進することが必要である。このため、企業や業種・業界を超えた横断的なIT活用のための共通基盤の整備を促進するとともに、IT投資効率の向上を通じて抜本的な付加価値向上とコスト低減を図り、2010年度までに、企業経営をITによって最適化する企業の割合を世界トップクラスの水準に引き上げるなど、あらゆる産業分野や経済社会全体の生産性の向上を目指す。

 

実現のための方策

企業・業種・業界の壁や従来の取引関係を超えた情報共有の取組を進めるため、EDIや電子タグを活用した業種横断的なIT活用のための共通基盤の整備を促進する。また、IT経営の一層の強化を目指し、2007年度以降、中小企業の経営支援ツールの開発・普及、経営相談体制の拡充等「IT経営応援隊事業」の一層の充実、IT投資に対する支援措置の強化等を図る。さらに、ものづくりやサービスにおけるソフトウェアやシステムの投資効率を向上させ、我が国産業全体の国際競争力強化に活かすため、2007年度以降、企業・業種横断的な共通基盤化・モジュール化を支援するとともに、それらの政府調達における展開を促進する。

 

(ウ) ICT産業の国際競争力強化等

国民が実感できる実現目標

我が国のICT産業が今後も活力を維持し、安定した経済成長に寄与していくためには、成熟した国内市場に偏重した国内志向から飛躍的拡大を続けるグローバル市場を先導していく海外志向に向けて誘導し、その国際競争力を強化する必要がある。このため、今後2年間を国際競争力強化年間と位置付け、産学官が危機意識を共有し戦略的な取組を図ることで、2011年までにICT産業の国際競争力強化を実現する。

 

実現のための方策

2007年度にICT産業の国際競争力強化の基本戦略を策定し、官民が国際競争力強化に関する戦略を練る体制を整備し、現状把握・分析、個別具体的な分野・対象国に対する戦略の検討等を行う。さらに、政府与党合意に基づき通信・放送の融合・連携に対応した制度整備、及び実験無線局の範囲の拡大等の制度整備を図るとともに、我が国の強みを活かしたナショナル・プロジェクト、プラットフォームの整備、ODAやOOF等の戦略的活用、映像国際放送の充実等を通じた戦略的な情報発信等を推進する。

 

なお、これらの取組に加え、アジア、さらにはロシアまで見通して、各国と我が国の相互の発展に向け、戦略的な協力を一層推進するとともに、世界的な情報流通で我が国のポジションを「最果て」から転じていくことが重要である。このため、国際的な研究協力において、我が国を中心として米国、アジア、欧州との間で次世代光・ブロードバンドネットワーク基盤を構築し、それを活用した先端的な研究協力を推進する。

 

(2) 健全で安心できる社会の実現

目標: IT基盤のフル活用により、老後や暮らしに心配なく、老若男女を問わず全ての人が安心して質的にも豊かな生活を送ることができる社会の実現を目指す。

【ア 基本的な方向性】

全ての人にとって健全で安心できる社会の実現には、高齢化社会の進展等により、国民の将来の生活に不安が生じないように、医療、社会保障の分野でITを最大限活用していくことが重要である。国民医療費の急速な伸びが予想される中、ITによる健康情報の活用により、疾病の予防、医療の質の向上と効率化等を図るとともに、健康情報、年金情報等を希望する国民が自ら入手・管理できる仕組みの構築など、より長く元気に生活を楽しむための健康管理、親切で信頼できる社会保障の実現を目指す。

また、今後、高齢者ドライバーが急速に増加するなどの状況において認知ミス等による交通事故の発生を未然に防いだり、通学時の子どもの見守りを行ったり、深刻な社会問題となりつつあるネット上の違法・有害情報等から若い世代を守るとともに、子育て世代や高齢者、障害者、介護者等の全ての人が安心して働けるITを活用した多様で柔軟な就労環境の整備を図り、全ての働く人に優しい社会の実現を目指す。

こうした方向性に基づき、以下の重点的な取組を推進する。

 

【イ 重点的な取組】

(ア) 国民の健康情報を大切に活用する情報基盤の実現

国民が実感できる実現目標

健康情報の電子的活用により、1)個人の健康情報を自らが管理し医師等に提示することによる病歴や体質に応じた医療の提供、2)異なる医療機関間においても患者の健康情報が分断されない継続性ある医療の提供、3)疾病情報や臨床データの分析による根拠に基づいた医療の提供、が可能となり、医療の質の飛躍的な向上が期待される。これら3つの要素を実現するための世界最先端の国民健康情報基盤を構築する。そのため、健診結果等の健康情報を個人が活用するとともに全国規模で収集・分析する仕組みを2011年度当初までに構築する。

 

実現のための方策

希望する全ての国民が自らの健康情報を電子的に入手できる仕組みを構築するため、2008年度末までにデータ形式や提供ルール等を定める。また、レセプトオンライン化により、原則として全ての医療機関等が相互に接続されるネットワーク基盤を2011年度当初までに構築するとともに、必要となる統一的なセキュリティ要件を2007年度までに確立する。さらに、匿名で全国的に収集すべき項目・活用主体及びその方法について、2007年度中に結論を得て、順次、収集・分析を行う。併せて、希望する個人が健診情報等の健康情報の閲覧・管理に役立てるための「健康ITカード(仮称)」の導入について2007年度中に検討し、結論を得る。これら取組を円滑に進めるため、必要となるインセンティブや制度整備について継続的に検討を行う。

 

 (イ) 国民視点の社会保障サービスの実現に向けての電子私書箱(仮称)の創設

国民が実感できる実現目標

社会保障に関する国民個々の情報は、医療機関や保険者等、機関毎に個別管理されており、これらは自らの情報であるにも関わらず、本人が必要に応じて自由にアクセスし、利活用できる状態にはない。そこで、これらの情報を国民が自らのものとして簡単に収集管理可能な仕組み「電子私書箱(仮称)(電子情報アカウント)」を検討し、2010年頃のサービス開始を目指す。この電子私書箱が生活をサポートする重要なツールとして利活用される社会の実現を目指す。

 

実現のための方策

電子私書箱サービスのあり方(サービス主体者、将来像等)及び実施方法(安全に情報交換するための仕組み、データ形式、ガイドライン等)について、2007年度に内閣官房で産学官からなる検討会を立上げ、1年を目処に検討を行う。その結果を踏まえ、関連する制度整備等を行う。

さらに、電子私書箱の社会保障以外の分野(電子申請・民間サービス等)への利用拡大について検討を行う。

 

 

 (ウ) 交通事故の削減に資する世界に先駆けた安全運転支援システムの実現 

国民が実感できる実現目標

インフラ協調による安全運転支援システム(以下、安全運転支援システム)は、ITにより交通事故の削減に資するものであり、公道での実証実験を実施し、インフラ機器から車両への注意喚起・警報等の情報送信による交通事故の削減効果等を検証し、2010年度以降、効果のあるシステムについて、順次全国への展開を図る。これにより、世界のフロントランナーとして安全運転支援システムの仕様の国際標準化を主導し、海外展開を目指す。

 

実現のための方策

内閣官房、関係省庁、民間企業からなる「ITS推進協議会」において、国際的な展開の観点も踏まえた安全運転支援システムの実用化に向けた工程表を取りまとめる。2007年度はシステムの機能確認・機能改良を実施し、2008年度までに特定地域の公道において事故削減効果や受容性の検証を目的とした大規模な実証実験を行う。

 

(エ) ネット上の違法・有害情報に起因する被害の抜本的減少を目指した集中対策の実施

国民が実感できる実現目標

ネット上の違法・有害情報は、出会い系サイト関連犯罪の被害者となる児童が年間千人を超えるなど深刻な状況であり、国民が安心してネット利用を行う上で喫緊に対応を強化すべき課題である。このため、出会い系サイトの被害者となる児童数の抜本的縮小等のための集中対策を実施し、2010年までにネット上の違法・有害情報に起因する被害児童等を大幅に縮小することを目指す。

 

実現のための方策

内閣官房、関係省庁からなる「IT安心会議」において、出会い系サイト関連問題等違法・有害情報への集中対策を2007年9月を目途に取りまとめる。具体的には、児童の携帯電話へのフィルタリング導入を促進する民間企業等への支援をはじめ、有害サイト運営者による利用者の年齢確認に関する検討を2007年中に実施するほか、違法・有害情報対策を含む情報モラル教育を積極的に推進するため、2007年度以降学習指導要領の改訂等を行う。

 

(オ) ワーク・ライフ・バランスの実現のためのテレワークの推進

国民が実感できる実現目標

場所と時間を自由に使った柔軟な働き方であるテレワークは、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を可能とするとともに、多様な就業機会や起業・再チャレンジ機会を創出するものである。少子高齢化の中で、育児期の親、介護者、障害者、高齢者等をはじめ、個々人の働く意欲に応え、その能力を如何なく発揮し活躍できる環境を構築し、また、家庭、社会及びその活力を維持していく上で、そうした就業環境等を早急に整備していく必要がある。このため、2010年までにテレワーカーが就業者人口の2割を達成することを目指した取組を推進する。

 

実現のための方策

産学官の連携の下、2007年度以降、より実際の就労環境に適応したテレワークシステムのモデル構築等による環境整備、導入サポート・相談体制の整備・充実、テレワークによる柔軟で多様な働き方の実現に資する採用システムや雇用契約の導入普及策の検討を行うとともに、テレワークの一層円滑な普及に資する労働関連の制度環境整備を図る。また、2007年度に、企業や国民各層における取組を促進するためのテレワーク推進月間や表彰制度の創設等を行う。さらに、2007年度以降、公務員分野においてもテレワークによる育児と仕事の両立に資する勤務形態の弾力化・多様化に向けた必要な制度整備等を進める。

 

 

(3) 創造的発展基盤の整備

目標: 効率性・生産性向上と新価値の創出、国民が健全で安心できる社会の実現を図る基礎となり、将来の創造的発展を導く基盤の整備及び活用を目指す。

【ア 基本的な方向性】

 我が国が人口減少の局面でも将来の創造的発展を図っていくためには、世界に先駆けた先導的IT基盤や人的基盤等の発展基盤の整備が不可欠である。

IT基盤については、地域の社会経済の活性化が喫緊の課題となる中で、全国どこでも利用可能な情報格差のないブロードバンドネットワーク基盤を整備し、地域のニーズに応じた活用を図り、ITによる地域の課題解決を目指す。また、電子決済、ウェブ、地上デジタル放送等の多様な機能が携帯電話に集積しつつあり、次世代の生活基盤として世界に先駆けてその高度化を推進することが重要である。

また、人的基盤については、ITを活用して高い付加価値を創造できる高度IT人材が、ITによる社会改革の先導役としてさらに重要になってくるが、世界経済のフラット化が進む中で、毎年多くのIT人材を生み出す諸外国に比べて我が国がIT分野の競争力を失わないためにも、高度IT人材の育成強化が重要である。

 加えて、生産性向上につながるIT活用の促進や国際競争力強化につながる次世代技術の研究開発等の将来の発展基盤の整備等を図るため、重点的な資源配分を行っていく必要がある。

こうした方向性に基づき、以下の重点的な取組を推進する。

 

【イ 重点的な取組】

別紙

 
(ア) 多様なサービスを安全かつ簡易に利用できる次世代モバイル生活基盤の構築

国民が実感できる実現目標

我が国の強みとも言える世界最高水準のモバイル技術をもとに、世界を先導していくためには、1人1台という特徴を生かし、次世代の高速モバイル技術(4G、WiMAX等)の利用も視野に入れ、高度なセキュリティを実現した本人認証技術を活用していくことが重要である。これにより、電子行政サービスの利用、銀行口座の開設などの本人認証が必要な場合も含め、携帯端末により、ペーパレス、キャッシュレスはもとより、多様なネットワークサービスを飛躍的に安全かつ簡易に利用可能となる世界最先端の次世代モバイル生活基盤を2010年を目途に構築する。本取組の推進により、多彩な生活モデル、ビジネスモデルを創出し、世界に発信していく。

 

実現のための方策

2007年度に内閣官房及び関係府省が連携してモバイル認証技術を用いた電子行政サービスのあり方を検討し、認証基盤等に関する必要な要件を整理するとともに、次世代の高速モバイル技術の利用も含め、民間におけるモバイル認証技術の高度化及びその実用化への取組を支援し、産学官が協調して取組を推進する体制を整備する。

 

(イ) いつでもどこでも誰でも恩恵を実感できるユビキタス・コミュニティの実現

国民が実感できる実現目標

「地方の活力なくして国の活力なし」の観点から、地方の社会経済の活性化によって魅力ある「強い地方」を創造するためには、デジタル・ディバイドをなくし、地方においてもIT基盤を活用して情報やチャンスへの公平なアクセスが可能となり、都市と地方のバランスある発展を図っていく必要がある。このため、産学官民の協働により、生活に密着した分野でITの恩恵を実感できる先進的な取組を推進し、その成果の全国展開を図ることで、地域の抱える諸課題の解決が図られるような地域社会(ユビキタス・コミュニティ)を2010年までに実現する。

 

実現のための方策

地域ニーズに配慮しつつ、2010年度までに光ファイバ等の整備を推進し、いつでもどこでも誰でも使えるブロードバンドネットワーク基盤の構築を図る。また、2007年度より、関係省庁、地方公共団体をはじめ産学官民で協働し、そうしたIT基盤を活用した児童・独居老人の見守り等、福祉、教育、交通等の地域生活に密着した分野で先進的な取組モデルを構築し、その成果を共有することにより、地域特性に対応したデマンド・プル型のIT基盤の構築を推進する。

 

(ウ) 高度IT人材育成の好循環メカニズムの形成

国民が実感できる実現目標

時代のニーズに応えうる高度IT人材の育成強化のためには、産学官連携による大学院等での実践教育の充実のほか、有為な人材の能力が存分に活かされるための構造改革等産業側における環境形成と、ITの持つ素晴らしさを知り、才能を伸ばすための学校教育の改革を併せて実現させる必要がある。こうした取組を総合的・集中的に実施することにより、高い収益力・社会的地位によって集まってきた優秀な人材が収益・社会価値を更に高めていくような人材育成の好循環メカニズムの形成を目指す。

 

実現のための方策

関係府省の施策の集中等既存の取組の見直し・強化によって大学院等での実践的なIT教育の機能強化等の教育の実質化を推進するとともに、高収益な業務形態への転換、IT人材の流動性の拡大、海外人材の活用等を通じて情報サービス産業等の構造改革を推進する。また、学校IT基盤の一層の整備の下でのIT活用教育の充実や子どもの問題解決能力の向上、先進的IT関連技術の創造につながる能力の育成等初等中等教育におけるITに関する能力の伸長・底上げに資する改革を推進する。これらについては、内閣官房、関係省庁からなる連絡会議において、施策の工程表を2007年9月を目途に取りまとめ、政府一体となって推進する。



4.推進方策

 IT新改革戦略を加速し、ITによる社会的なイノベーションを推進するためには、国民の後押しが不可欠である。このため、3の「重点的な取組の推進」に掲げたような、国民に身近な分野で閉塞感を打ち破り解決へのブレークスルーとなるような重点的な取組をIT戦略本部主導で推進することにより、国民がIT化の恩恵を実感できるような成果を生み出し、IT戦略への理解を深めていくことが重要である。こうした取組の推進に当たっては、重点計画において施策の実施に責任を持つ府省を明確にするとともに、関係府省はIT戦略本部に適宜報告を行い、IT戦略本部がその進捗状況の把握・分析、改善策の検討等のフォローアップに十分関与していく必要がある。

 また、IT新改革戦略に関する政府の取組状況の評価を行い、IT戦略本部に提言を行うために、2006年8月からIT新改革戦略評価専門調査会が精力的な活動を行っている。国民や利用者の視点に徹し、最初の年度評価の結果を今後のIT政策に適切に反映させるなど、PDCAサイクルを確実に回していくことが重要である。

こうしたことから、本パッケージでは、経済財政諮問会議、規制改革会議、総合科学技術会議等の他の関係する会議等との連携を密にし、以下のような方針に基づき政策を推進していくこととする。

 

1) 構造改革の推進を超えて、社会経済における新たな価値の創出等の更なる発展・飛躍を目指して、IT戦略の一層の推進を図る。

2) 「国民一人ひとりがITの恩恵を実感できる社会」の早期実現を目指して、IT化の恩恵が国民に見えるように、国民に身近な分野において取組を強化する。

3) 国民・企業・行政が情報の利活用を安心して推進できるように、情報セキュリティ、個人情報保護等に十分に留意する。

4) 関係府省を束ねた政府一丸となった取組による全体最適の実現やIT化の効果を最大化するために非IT施策への切り込みなど、強力なリーダーシップが必要な分野について、IT戦略本部主導で取組を推進することにより解決へのブレークスルーを図る。

5) 国民や利用者の視点に徹した「見える化」による評価結果を次のIT政策に十分反映させることにより、PDCAサイクルのC(Check)からA(Action)、さらにはP(Plan)に確実につなげていく。