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首相官邸 カテゴリー:IT戦略本部
 トップ会議等一覧IT戦略本部e-Japan重点計画-2003 印刷用(PDF形式)


I 基本的な方針

  1. IT革命の意義

     IT革命は産業革命に匹敵する歴史的大転換を社会にもたらすものである。産業革命が世界を農業社会から工業社会に移行させたように、情報通信技術の活用は、情報流通の費用と時間を劇的に低下させ、密度の高い情報のやり取りを容易にし、世界規模での急激かつ大幅な社会経済構造の変化を生じさせることとなる。こうした変化によって、世界は工業社会から高度情報通信ネットワーク社会、即ち情報と知識が付加価値の源泉となる社会に急速に移行しつつある。

     2001年3月に決定された「e-Japan重点計画」が実施に移されてから2年半、官民を挙げた取り組みの結果、「高速・超高速インターネットの利用可能環境整備」の目標を早期に達成し、また、複数事業者間の競争の進展により、通信料金の低廉化が進んだことによって、通信料金は世界的にも最も安価な水準になり、インターネット人口普及率も50%を超える状況となった。
     さらに、「商法等の一部を改正する法律」や、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」、さらに「行政手続等における情報通信技術の利用に関する法律」等の関連法律が公布・施行されるとともに、関連する政省令も整備されるなど、IT国家の実現に向けた制度整備が着実に進んでいる。

     一方において、「世界最先端のIT国家を目指す」との我が国の目標は極めて高く、かつ、IT革命を支える技術や市場環境は、時々刻々と、しかも急速に変化するものであるため、IT革命の推進に向けての歩みを間断なく続けていかなければならないのは論を待たない。
     もとより、IT革命の推進は、経済社会のあり方をその根底から変革する全世界的な営みであり、それだけに、その成否は今世紀の国際社会における我が国の位置付けを決定づけるものである。したがって、変化を恐れず、英断をもって邁進していかなければならない。

     この際、これまでの絶え間ない取り組みの結果、IT基盤の整備というIT戦略の第一期の目標は、ほぼ達成されつつあることを踏まえれば、今後は、これまでに整備された基盤上に様々なIT利活用の仕組み、及びそれを支える社会基盤を構築し、必要な方策を実施するという、我が国のIT戦略第二期の利活用戦略に移行することが必要となってきている。

     そこで、「e-Japan戦略U」(2003年7月2日IT戦略本部決定)が指し示す、21世紀にふさわしい新たな社会・経済システムへの移行を実現し、また我が国が世界が羨むような最も輝いた国の一つとなり、将来に亘った活力を生み出すためにも、この「e-Japan重点計画−2003」に基づき、IT戦略本部を中心に政府一丸となって必要な施策を戦略的、重点的かつ迅速に推進していくこととする。

  2. 目指すべき高度情報通信ネットワーク社会の姿1世紀にふさわしい新たな社会・経済システムへの移行を実現し、また我が国が世界が羨むような最も輝いた国の一つとなり、将来に亘った活力を生み出すためにも、この「e-Japan重点計画−2003」に基づき、IT戦略本部を中心に政府一丸となって必要な施策を戦略的、重点的かつ迅速に推進していくこととする。

     「e-Japan戦略」では、「我が国が5年以内に世界最先端のIT国家となる」ことが目標とされ、「e-Japan戦略U」では、「社会全体が元気で、安心して生活でき、新しい感動を享受できる、これまで以上に便利な社会」となることが戦略の大目標とされている。この目指すべき「世界最先端のIT国家」かつ「元気、安全、感動、便利」社会とは、これまで培われた基盤の上で、ITを経済・社会のあらゆる局面に効果的に利活用し、国際社会の中で、豊かで安心できる国民生活や、事業活動が実現でき、それとともに新たな文化が興り、感動が生み出される、以下のような社会であると考えられる。

     第一に、「構造改革を進め、新たな価値を創造する社会」である。ITの活用を通じ既存の仕組みにおける無駄を排除し、経営資源を有効活用することにより、投資効果を最大限に引き出す仕組みを再構築し、同時にその果実を新たな産業・市場の創造に振り向けて新たな価値が創造され、国際競争力の強化、更にはそれらを通じた持続的な経済成長と自己実現の場としての雇用が拡大されることとなる。この際、人と人だけでなく、人とモノ、モノとモノまで遍く繋ぐユビキタスネットワークを世界に先駆け導入し、その環境の上で、新産業やサービスを創ることにより、新たな形態での社会参加、娯楽等が芽生え、ひいては新たな文化や価値が生まれることとなる。

     第二に、「ITのメリットを十二分に活かすことにより、便利で、安心して暮らせ、知的感動を生み出し、個の力を最大限に引き出す社会」である。電子政府が実現され、遠隔教育、遠隔医療や在宅健康管理等が普及することにより、地理的な制約や年齢・身体的条件に関係なく、いつでも必要とするサービスを受けることが可能となる。また、これらアプリケーションの多様化・高度化とネットワークの高速化・多様化・高度化・高信頼化が相互に刺激しあうことにより、高速インターネットアクセス網 1や超高速インターネットアクセス網 2の利用者が増加し、さらに、移動体におけるブロードバンド接続可能な環境や、高速のLANシステム等が全国的に利用できる環境が整備され、かつ情報セキュリティが確保されたインターネットを利活用できる環境が構築される。
     さらに、我が国の知的財産をネットワーク上で円滑に流通させるための枠組みが整備され、知的財産を付加価値の源泉とする産業が我が国を代表する産業となり、伝統文化とあわせて、我が国の知的財産によって、新たな感動が生み出されるようになるとともに、経済的にも、豊かで便利となることは勿論、ITによって力を与えられた個が、安心して豊富な知的資源をネットワーク上で交換・流通させることにより、個の可能性が最大限に発揮されるようになる。
     このようにして便利で、安心して暮らせ、知的感動を生み出し、個の力を最大限に引き出す社会がつくられる。

     第三に、「ITを軸とした包括的な協調関係を構築することにより新たな国際関係が展開する社会」である。ITを軸として、各国との協力の下に、ネットワークインフラ整備、電子商取引及びコンテンツ 3流通基盤整備、人材育成・流動化促進、技術交流促進等の各分野にわたり、包括的な関係を、特にアジア各国と築き、多方面に展開していくことにより、アジア地域が世界の中でも繁栄した地域となるよすがを得ることができる。
     また我が国から発信された世界最高水準のコンテンツが世界で受信・評価されるようになるなど、グローバルなインターネット社会の発展にこれまで以上に大きく貢献するようになる。

  3. 基本方針

    (1)官民の役割分担

     官民の役割分担についての原則は、「民を主役に官が支援する」ということである。し たがって、まずは民間が意欲を持ってIT革命を推進していくことが重要である。高度情報 通信ネットワーク社会の実現のためには、民間が自由で公正な競争を通じて様々な創意工夫を行い、IT革命の強力な原動力とならなくてはならない。

     このため、政府は、民間を支援するための取り組みとして、自由かつ公正な競争の促進、規制の見直し等の市場が円滑に機能するような環境整備や、縦割り行政の弊害を排除しつつ、国と地方の連携の強化等を通じて、民間の活力が十分に発揮されるための環境整備を行わなければならない。今後とも、安全性・信頼性を確保しつつ、引き続き競争政策のあり方について不断の見直しを行い、適切な市場環境を形成していくことが必要である。
     また、民間の主導的な取り組みを推進するために、政府が民間に対し、展望の共有と行動を積極的に呼びかけていくことも併せて必要である。

     一方で、政府は自らの取り組みとして、電子政府の実現、情報セキュリティの確保による安全・安心な利用環境の整備、デジタル・ディバイド 4の是正や基盤的技術の研究開発、国際連携の推進といった民間主導では必ずしも実現し得ない部分について、予算の重点的・効率的な配分及び執行に留意しつつ、積極的に対応していくことが必要である。

     以上のことから、政府の役割を整理すると、以下の5つに分類することができる。

    ア)大きな方向性の提示
    イ)市場競争を重視した規制改革・競争政策
    ウ)民間の活動に対する動機付け
    エ)最小限の投資、格差是正、安全性確保
    オ)政府自らの活動の効率化・高度化と資源の効率的配分

     政府は、これらの役割を踏まえつつ、「e-Japan重点計画−2003」に盛り込まれた施策を着実に実施することにより、官民一体となったIT革命の実現を推進していくこととする。

     なお、「e-Japan重点計画−2003」の各分野に記載している具体的目標は、以上のような官民の役割分担のもと、それぞれの努力により達成されるべきものであり、社会全体の行動目標として設定している。

    (2)先導的取り組みによるIT利活用の推進

     この「e-Japan重点計画−2003」では、IT戦略の第二期である「e-Japan戦略U」を踏まえ、これまでの取り組みにより整備が進んできたIT基盤を活用し、「社会全体が元気で、安心して生活でき、新たな感動を享受できる、これまで以上に便利な社会」を実現するという観点から、特に国民にとって身近で重要な7つの分野、すなわち、

    (@)「医療」  (A)「食」  (B)「生活」  (C)「中小企業金融」
    (D)「知」  (E)「就労・労働」  (F)「行政サービス」

    における先導的取り組みを新たに推進することとする。

     これら7分野におけるIT利活用の取り組みを、前述の役割分担に基づき、民と官が連携して実践することにより、 例えば、無駄な支出や待ち時間が減少する、安心で便利な生活環境が実現する、一人ひとりが適材適所で能力を発揮できるなど、国民が便益を身近に実感することができる。同時に企業にとっても、ITの利活用を進めることにより、効率的な資金調達の確保、業務改善による生産性の向上、高付加価値化による新たなサービスと市場の創出、雇用機会の創出、国際競争力の回復が可能となる。

     具体的には、先導的取り組み7分野のそれぞれにおいて、概要以下のような取り組みを行うこととしている。社会的に大きな効果が期待できるこれら7つの分野については、先導的にIT利活用を行うこととするが、その成果を国民に広く提示することにより、今後この輪を広げていくこととする。

    (@)医療
     患者の選択の尊重と情報提供、質の高い効率的な医療提供体制、国民の安心のための基盤づくりを実現するという基本的考え方に基づき、電子カルテ、遠隔医療、病院事務の電算処理等の保健医療分野の情報化を推進する。

    (A)食
     消費者に支持される「食」の供給体制を構築するため、食品トレーサビリティシステムの構築、食品の取引の電子化、農林漁業経営のIT化を推進し、「食」の安全と安心を確保するとともに、良質な食品が消費者に合理的な価格で安定的に提供されるようにする。

    (B)生活
     利用者が意識しなくてもより高度な安全や快適が確保されるような、温かく見守られている生活を実現するとともに、生活の利便性向上と家庭内サービスの選択肢の拡大を図る。また、災害・緊急時の通報・連絡システムの確立によって、生活の安全を確保し社会的費用を抑制する。

    (C)中小企業金融
     日本経済活性化に大きな役割を果たす中小企業が、その財務状況を改善し、より積極的に事業を展開できるようにするため、ITを活用することにより、中小企業の資金調達環境改善や、売掛金回収リスクの軽減を図る。

    (D)知
     ITの利用により、個の学習スタイルを多様化し、個の能力を向上させるとともに、我が国の人材の競争力向上を図る。また、コンテンツ産業等の国際競争力の向上を図るための総合的な取り組みを推進するとともに、海外における日本文化への理解向上を図るため、様々な分野の情報のデジタルアーカイブ化を推進する。

    (E)就労・労働
     労働力需給の結合および民・官間の人材交流を促進することにより、一人ひとりが適材適所で能力を発揮できる社会を実現する。またテレワークなど個人のニーズに応じた多様な就労形態の選択を可能とすることで、一人ひとりがより創造的な能力を最大の能率で発揮しうる社会を実現する。さらに起業化・事業拡大を支援することで、就業機会の創出・拡大を図る。

    (F)行政サービス
     国民の利便性を重視し、効率的で質の高い、24時間365日ノンストップ・ワンストップの行政サービスの提供を推進するとともに、業務の外部委託や調達制度の改革等により政府行政部門の業務効率向上を図り、財政支出を抑制しつつ、行政サービスの向上を実現する。また、政治・行政・司法部門の情報をわかりやすく提供し、広く国民が行政に参画できる社会の形成を目指す。

     これら先導的取り組みの実施にあたっては、各先導的取り組みに係る分野の既存の制度等について、それ自体ITと直接関係がないものであっても、各分野のITの利活用の促進、あるいは、高度情報通信ネットワーク社会の実現の妨げとなっているものは、当該制度等の本来の政策目的を踏まえつつも、積極的にその改革に取り組む必要がある。

     また、先導的取り組みの実施にあたっては、取り組みの効果を適切に評価し、適宜見直していくことが極めて重要である。したがって、「U.先導的取り組みによるIT利活用の推進」では、各分野のそれぞれにおいて、「評価の具体的な考え方」を明示している。評価に当たっては、後述「(6) IT戦略本部の役割と主導体制の確立」の専門調査会において、資産活用効率や費用対効果、利用者満足度等の計測可能で適切な指標や基準を検討し、これらを活用しつつ、適切な事後評価を行う。

    (3)重点政策5分野

     我が国がIT戦略の第一期において重点的に進めてきたIT基盤の整備は、第二期のIT利活用の高度化に不可欠な社会基盤整備として更に推進する必要がある。このため、「e-Japan重点計画−2003」では、前述の先導的取り組み7分野のみならず、IT基本法第35条に基づき、高度情報通信ネットワーク社会の実現のために特に重点的に施策を講ずべき5分野、即ち

    (@)世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成
    (A)人材の育成並びに教育及び学習の振興
    (B)電子商取引等の促進
    (C)行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進
    (D)高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保

    についても、引き続き政策資源の集中的、効果的配分を行なうこととする。
     これにより21世紀の新たな価値や産業創造を支えると同時に、ますます多くの人々が、様々な機器を通して、安全・快適に超高速・高速ネットワークに繋がり、その上を多様なコンテンツが流通し、新しいサービスや価値をいつでも享受できる環境の整備を目指す。

     「e-Japan重点計画−2003」においては、個別分野のそれぞれにおいて、新たに、

    (@)「世界最先端のIT国家となることを目指す」という目標の実現に資する施策
    (A)政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策
    (B)原則として当該施策の具体的目標及びその達成の期限が定められている施策

    との条件を満たす諸施策を盛り込むこととする。
     継続的施策についても、「e-Japan戦略」に掲げられた「5年以内に世界最先端のIT国家となる」という野心的な国家目標の実現のため、着実に推進することが必要不可欠であると判断した施策について、「e-Japan重点計画−2003」に取り込むものとする。
     なお、既に講じられた施策であって実効を得たものについては、「資料編」にこれまでの主な成果として記述する。

     これらの取り組みに当たっては、内外の意見を十分考慮するとともに、特にIT利用者の立場に配慮することが必要である。
     具体的には、重点政策5分野のそれぞれにおいて、概要以下のような取り組みを行うこととしている。

    (@)世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成
     ブロードバンド型サービスの本格的展開のため、高速・超高速インターネットを全国的に普及させると共に、無線インターネットの普及のための環境整備等によって、いつでもどこでも何でもつながるユビキタスネットワークの形成を推進し、デジタル情報が個の間で自由に交換、共有できる基盤を整備する。

    (A)人材の育成並びに教育及び学習の振興
     我が国の国際競争力向上のために必要な高度なIT人材を広範に育成するとともに、遠隔教育等を活用して海外のIT人材の育成・確保を図る。さらに、ITを利活用した学習の振興等により、障害者や高齢者も含めて全ての人々が知的満足の享受や新たな価値の創造を可能とする社会を形成する。

    (B)電子商取引等の促進
     ITによる企業の経営改革・業務改革、新たなビジネスの創造を促進するとともに、消費者が安心して市場に参加できる環境を整備するため、@ITによるビジネスプロセスの構造改革、AITを活用した新たなビジネスの創造、B安全・安心な電子商取引環境の整備、3つの視点から総合的な施策を実施することにより、企業そして社会全体を「元気」にすることを目指す。

    (C)行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進
     行政の情報化に関しては、国民の利便性の向上と行政運営の簡素化、効率化、信頼性及び透明性の向上を図るため、2003年○月策定の「電子政府構築計画」に基づき、利用者本位の行政サービスの提供と予算効率の高い簡素な行政の実現を目指し各種施策を推進する。
     特に、電子自治体に関しては、国と歩調を合わせた行政の情報化を進めるよう、地方公共団体の取り組みを支援する。
     一方、公共分野に関しては、保健医療分野や食品安全管理等のIT化といった国民生活に密接に関係する施策の充実を図ることにより、国民生活の全般的な質の向上を目指す。

    (D)高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保
     電子政府や電子自治体、重要インフラ等の公共的分野における体制整備や情報システムの評価・検証と改善、運用管理の適切な実施、広く一般への普及啓発、研究開発や人材育成の推進のほか、情報セキュリティ関係事案に対処するための国際的な協力関係の構築等により、誰もが安心してインターネット等を利活用できる環境整備を図る。

    (4)横断的な課題

     上述の先導的取り組み7分野及び重点政策5分野の施策を推進して高度情報通信ネットワーク社会を実現するに当たっては、これらに共通して対応することが必要となる横断的な課題が存在することから、政府として、これらの課題についても積極的な対応を行っていくこととする。

     第一に、IT戦略の第二期においては、ネットワークの更なる高速・超高速化に加えて、無線技術との融合や、いつでもどこでも何でもネットワークにつながる状況(ユビキタスネットワーク化)が顕著になり、ネットワーク上のアプリケーションから社会の仕組みまでが大きく変化して行くことが想定される。このような環境下においては、単なる技術開発にとどまらず、常に社会、個人とのかかわり合いを意識しつつ研究開発を推進、強化することが社会の継続的発展にとって重要である。

     第二に、我が国を含めたアジア諸国が豊かなIT社会の恩恵を享受し、新たな発展軸を構築してゆくためには、我が国がリーダーシップを発揮し、アジアにおけるブロードバンドの普及と利活用の推進を図るとともに、アジア諸国と二国間、または多国間における協力関係をきめ細かく構築していくことを通じて、世界の情報流通の不均衡を改善し、アジア全体として世界の情報拠点(ハブ)を目指すことが重要である。

     第三に、高度情報通信ネットワーク社会においては、すべての国民がインターネット等を容易にかつ主体的に利用し、個々の能力を創造的かつ最大限に発揮できる環境が実現されることが重要である。このため、地理的な制約、年齢・身体的な条件等により情報通信技術の利用機会及び活用能力の格差が生じないよう、各種施策を推進していくことが必要である。

     第四に、IT分野における雇用機会の創出及び人材の円滑な移動の促進等により雇用問題に的確に対応するとともに、青少年の健全育成並びに違法行為及び違法・有害情報の流通の対応等、新たな問題についても的確かつ積極的に対応していくことが必要である。

     第五に、国民のITに関する理解の増進、最先端技術の実用化等を図るため、国民への広報活動を充実させるとともに、世界最先端のIT国家の姿を広く提示するため、実証等を行う各施策において積極的に国民の参加を進めていくことが必要である。

    (5)ベンチマーク(指標)

     我が国のIT化の現状を示すとともに、各分野毎の目標の達成状況を定量的に評価する際のベンチマーク(指標)については、「世界最先端のIT国家となる」という目標の達成度をより的確に計測できるようにする。また、国で行っている各種統計について、ITに関する調査を加える等の改善を行い、将来的には、IT関係統計を更に充実させることとする。

    (6)IT戦略本部の役割と主導体制の確立

     IT革命の推進は政府の喫緊の重要課題であり、IT戦略本部が戦略に則って主体的に方向性を示し、府省の縦割りを排して施策を立案することが求められている。かかる観点を踏まえ、本重点計画に掲げられた施策の着実な実行を確保するため、IT戦略本部が毎年本重点計画の見直しを行うとともに、予算要求の過程において、過去の政策評価を踏まえた重複投資の回避、優先順位等の判断、更に方策実施の過程において、進捗状況の管理、事後評価等、責任をもって行い、特に府省横断的な方策については、関与する複数の府省を統括してその整合的かつ効果的な実施を確保する等、IT戦略本部の役割を強化することが必要である。その際、評価結果については随時公表することとする。なお、引き続き、IT基本法の施行状況の検討を行うにあたっては、これら役割強化の必要性に留意するものとする。
     戦略及び本重点計画の成否は、政府の各種方策の実施状況につき、達成目標を踏まえて的確に評価することによって明らかにされる。このため、民間有識者等から構成される専門調査会を、IT戦略本部の下に2003年早期に設置する。この専門調査会は、新戦略に関する政府の取り組み状況を事後評価し、他国との比較や新施策の提案を行う等、IT戦略本部に対して民間の立場から貢献することを目的とする。
     構造改革や新価値創造という新戦略の改革の柱は、日本経済全般にとっての鍵となるものであり、経済財政諮問会議とも認識を共有している。一方で、規制改革が新戦略の重要な部分を占めること、科学技術の戦略的開発が高度情報通信ネットワーク社会の基盤となることも、言うまでも無い。IT戦略本部は、経済財政諮問会議、総合規制改革会議、総合科学技術会議等、他の関係する会議・本部等との意見交換を密にし、役割分担を明確化すると共に、方策の提案や実施において緊密に協力し、その効果を最大化することとする。
     本重点計画に記された方策を実施する過程においては、公正取引委員会による独占禁止法を中心とした競争法の厳正かつ適正な運用に則った、専門的知見に裏付けられた競争政策の強力な推進が不可欠である。また、それぞれの事業を所管する府省は、公正競争ルールを整備する一方で、事後規制原則を強化することにより、市場への自由な新規参入を促進することとする。

     政府は、「e-Japan重点計画−2003」を確実に遂行することにより、「5年以内(2005年)に世界最先端のIT国家となる」という大目標を実現するとともに、2006年以降も世界最先端であり続けることを目指す。


    1 高速インターネットアクセス網:音楽データ等をスムーズにダウンロードできるインターネット網のことをいい、現時点ではDSL、CATVインターネット、加入者系無線アクセスシステムを利用したインターネット網が代表的な例。

    2 超高速インターネットアクセス網:映画等の大容量映像データでもスムーズにダウンロードできるインターネット網のことをいい、現時点では加入者系光ファイバ網を利用したインターネット網が代表的な例。

    3 コンテンツ:「情報の内容、中身。」。「マルチメディアコンテンツ」や「Webコンテンツ」という使い方をする。「Webコンテンツ」と言った場合には、インターネット上のWebサーバーに掲載されているテキストやグラフィックの内容を指す。

    4 デジタル・ディバイド:デジタル技術(いわゆるIT)の普及に伴い、所得、年齢、教育レベル、地理的要因、身体的制約要因等により、その利用及び習得する機会に格差が生じた状態。社会問題として認識されつつあり、この問題を端的に「デジタル・ディバイド」と呼ぶ。