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首相官邸 カテゴリー:IT戦略本部
 トップ会議等一覧IT戦略本部e-Japan重点計画-2003 印刷用(PDF形式)


U.先導的取り組みによるIT利活用の促進

1.医療

<目標>

1) 生涯にわたる健康状態を国民自らが把握し、健康増進に役立てるための総合的な保健・医療サービスが提供される体制を整備する。
2) 患者が複数の医療機関において継続性のある治療が受けられ、専門家の意見も踏まえながら適切な医療機関を選択できるなど、患者基点の医療体制を整備する。このため、2005年までに、保健医療分野における認証基盤を整備するとともに、すみやかに電子カルテのネットワーク転送、外部保存を容認する。
3) 医療機関における各種の重複(検査、投薬、事務作業等)を削減することにより、医療機関の経営効率と医療サービスの質を向上させる。
4) 診療報酬請求業務の効率化及び合理化を進めることにより、医療機関のキャッシュフローの改善を図る。このため、診療報酬請求業務のオンライン化について2004年度から開始し、2010年までに希望する医療機関等について100%対応可能とする。
5) ITを活用した山間僻地・離島等への遠隔医療サービスを提供する。

(1)現状と課題

 我が国の医療は、誰でも最適な医療を受けられる医療提供体制の整備と国民皆保険制度の下で発展し、世界最高水準の健康水準を達成するに至っている。しかしながら、患者のニーズの多様化、医療の高度化・専門化等が進む中で、患者本位で、より質が高く効率的な医療を提供するための環境整備が課題となっている。
 こうした課題を解決する方策として、ITは有効なものである。
 患者や医療機関に関する情報をITによって共有化を図ることにより、患者が複数の医療機関において継続性のある治療が受けられ、専門家の意見を踏まえながら適切な医療機関を選択できるなど、患者基点の医療体制を整備する必要がある。
 また、医療機関における業務のIT化を推進することにより、各種の重複(検査、投薬、事務作業等)の削除等、医療機関の経営効率と医療サービスの質の向上を図る必要がある。特に、レセプトのオンライン化により、診療報酬請求業務の効率化・合理化を推進するとともに、電子レセプトに係る診療報酬を担保にした金融機関からの融資等医療機関のキャッシュフローの改善を図る必要がある。
 さらに、ITの活用により、医学情報の整理・収集・公表や遠隔サービスを推進する必要がある。

(2)具体的施策

 1) 保健医療分野における認証基盤の開発・整備及び電子カルテのネットワーク転送等の容認(厚生労働省、経済産業省)

 患者本人の意志とセキュリティに十分配慮しつつ、必要に応じて患者医療情報を医療・保健機関間で連携できるようにするため、2005年までに、保健医療分野における認証基盤を開発・整備するとともに、速やかに電子カルテのネットワーク転送、外部保存を容認する。

 2) 保健医療分野のIT化に対応したセキュリティ等に関するガイドラインの作成(厚生労働省)

 保健医療分野のIT化に対応しセキュリティ等の確保を図るため、2003年度にレセプトのオンライン請求に対応したガイドラインを作成するとともに、2005年度までのできるだけ早期に、電子カルテの医療機関間における連携活用に対応したガイドラインを作成する。

 3) 医療機関の機能評価及び医療情報のデータベース化等の環境整備(厚生労働省)

 第三者機関による医療機関の機能評価への支援を行うとともに、医療に関する情報を広く国民に提供するため、各種情報のデータベース化、ネットワーク化等の環境整備を2003年度以降も引き続き推進する。

 4)  オーダリングシステムの導入(厚生労働省)

 2003年までに全病院の2割以上にオーダリングシステムの導入を目指す。

 5) 電子カルテの普及促進・高度化(厚生労働省、経済産業省)

  電子カルテについては、2003年度までに用語・コードの標準化を図るとともに、診療情報共有モデル事業の導入効果の検証結果等を踏まえて、システムの高度化等所要の策を講じ、2004年度までに全国の二次医療圏の中核的な病院、2006年度までに400床以上の病院および全診療所のうち6割以上に普及を促進する。

 6) レセプト電算化の普及促進及びオンライン請求の開始

  ア) レセプト電算化の普及促進及びオンライン請求の開始(厚生労働省)
 レセプトの電算化については、所要の普及促進策を講じ、2004年度までに全病院レセプトの5割以上、2006年度までに全病院のレセプトの7割以上の普及を実現する。また、オンライン請求は、2004年度から開始し、2010年までに希望する医療機関等について100%対応可能となるよう所要の措置を講じる。
  イ) レセプト電算システムの高度化(経済産業省)
 2004年度までにソフトウェアのWebダウンロードシステムの開発・実証実験等を行う。

 7) 遠隔医療のシステム整備支援(厚生労働省、経済産業省)

 遠隔医療については、システムの整備に対して支援を行うことにより、2005年度までに全都道府県での導入を目指す。

 8) 診療ガイドライン等のデータベース化及びインターネット等による情報提供(厚生労働省)

 EBM 1を推進するため、2003年度までに診療ガイドライン及び最新の医療情報をデータベース化し、インターネット等を利用した情報提供を行う。

(3)評価に当たっての具体的な考え方

 1) 患者本位の医療が実現し、医療の質向上と、選択肢の拡大が達成されたか。

 2) 医療機関は、より良質な医療を高い経営効率の下に提供できるようになったか。

 3) 政府行政部門、健保組合は、国民の健康増進、医療費の抑制、疾病についての情報収集、医療事故等が発生した場合の原因究明・対策等について改善できたか。


2.食

<目標>

1) 食品の安全性に関して予期せぬ問題が発生した際の原因究明や、問題食品の追跡・回収の迅速化が図られるとともに、食品に関する正確で十分な情報が提供されることによって、消費者が不安なく、気に入った食品を選択して購入できる、豊かで安心できる食生活を実現する。
 このため、2004年までに、100%の国産牛について、個体識別番号により、BSE発生等の場合に移動履歴を追跡できる体制を整備し、2005年までに、100%の国産牛の精肉(挽肉、小間切を除く。)について、生産履歴情報がインターネット等で確認できる体制を整備する。牛肉以外の食品については、その特性に応じたトレーサビリティシステムを早期に開発し、対応する。
2) 2005年度までに、食品流通業者のおおむね半数程度が電子的な取引を実現することにより、物流、在庫等の流通コストを削減し、食品流通に係る事業者の競争力を強化するとともに、経営にITを活用する農林漁業経営を大幅に増加させることにより、消費者嗜好、市況情報などを収集・活用した効率的かつ安定的な農林漁業経営を育成し、良質な食品が消費者に合理的な価格で安定的に提供されるようにする。

(1)現状と課題 

 BSEの発生に端を発し、大きく揺らいだ「食」に対する消費者の信頼を回復し、消費者に支持される「食」の供給体制を再構築するためには、「食」の安全と安心を確保し、良質な食品が消費者に合理的な価格で安定的に提供されるようにする必要がある。
 「食」の安全と安心を確保するためには、食品の安全性に関して予期せぬ問題が発生した際の原因究明や、問題食品の追跡・回収の迅速化が図られるとともに、食品の生産、加工、流通過程の情報を記録し、消費者の要求に応じて迅速に提供することができるトレーサビリティシステムを普及させる必要がある。
 また、食品の取引の電子化により、食品の流通に係る物流、在庫等の流通コストを削減するとともに、経営にITを活用する農林漁業経営を大幅に増加させることにより、流通・生産を通じた高コスト構造の是正を図る必要がある。

(2)具体的な施策

1) 食品トレーサビリティシステム2 の構築

 食の安全と安心を確保するため、生産・加工・流通等の各段階において、食品とその情報を追跡し遡及できるシステムを構築し、食品の履歴情報を国民が容易に知ることができるようにする。

  
ア) 牛肉の履歴情報に係るシステムの普及(農林水産省)
   2004年までに、100%の国産牛について、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」を施行し、個体識別番号により、BSE発生等の場合に移動履歴を追跡できる体制を整備する。また、2005年までに、100%の国産牛の精肉(挽肉、小間切れを除く。)について、生産履歴情報をインターネットで確認できる体制を整備する。
イ) 牛肉以外の食品のトレーサビリティシステムの普及(農林水産省)
   青果物、米などの牛肉以外の食品について、食品の特性に応じたトレーサビリティシステムを確立するため、2005年度までに、地域や流通・加工段階を横断した相互運用性あるトレーサビリティシステムの開発及び運用体制の整備に向けた実証試験を実施することとし、2003年度においては、加工食品のトレース手法等について検討する。また、生産者、流通業者等の自主的な導入の取り組みを基本としつつ、2005年度までに、トレーサビリティシステムの普及を促進するため、必要なデータベースの構築、情報機器の整備等を支援する。
 生産履歴情報の信頼性確保に関しては、生産者等が消費者に正確に情報を伝えていることを第三者機関に認証してもらう生産情報公表のJAS規格について、2003年度以降、消費者のニーズ等を考慮しつつ対象となる食品を増やしていくことを検討する。また、民間が、信頼できる第三者機関としてトレーサビリティシステムの監査の体制を確立できるよう、トレーサビリティシステムの開発を進めながら情報提供等を通じ支援する。
ウ) 輸入食品への対応(農林水産省)
   2005年度までに、トレーサビリティシステムの普及活動と併せ、日本発の安全な食品流通の仕組みが、輸入食品においても普及するよう、セミナーの開催、パンフレットの作成等により情報提供を行う。

2) 食品の取引の電子化、農林漁業経営のIT化の推進

 良質な食品が消費者に合理的な価格で安定的に提供されるようにするため、食品の取引の電子化による物流、在庫等の流通コストの削減、ITの活用による農林漁業経営の高度化の取り組みを推進する。

  
ア) 生鮮食品流通におけるEDIシステムの確立(農林水産省)
   生鮮食品流通の効率化を図るため、関係省庁と連携を図りつつ、生鮮EDI標準3 を踏まえた商品物流管理のシステム開発を行うとともに、研修活動等によるシステムの普及を促進し、2005年度までに、生鮮食品流通に携わる事業者のおおむね半数程度が電子的な取引を実施する。
イ) 農林漁業経営に役立つデジタルコンテンツやIT利活用システムの整備(農林水産省)
   2004年度までに、農業改良普及センター等の経営支援を行う機関が有する栽培技術・気象・市況等の農林漁業経営に役立つ情報のデジタルコンテンツ化を推進するとともに、温室等の遠隔環境制御・監視システムや産直支援システム等のIT利活用システムの整備を支援する。こうした対応等により、農家のおおむね4割が農業経営にパソコンを利用することとする。 
ウ) 農業者等のIT活用能力の向上(農林水産省)
   2004年度までに、約1万人を対象とした農業者等に対するIT講習等を実施するとともに、普及職員や農業関係者等に対する農業IT指導者育成のためのIT講習等を実施し、指導人材を約1万人養成する。

(3)評価の具体的な考え方 

 1) 消費者が食品に対する正確で十分な情報を入手できるようになったか。

 2) 政府行政部門は、食品の事故拡大抑止力、事故発生時の追跡調査の機動性などが向上したか。

 3) 流通業者は、物流、在庫等の食品流通に係るコストを削減し、経営効率化などを達成したか。それによって国際競争力が向上したか。

 4) 国内生産者は、マーケティング力の強化や生産物のブランド化を進められたか。それによって国際競争力が向上したか。


3.生活

<目標>

1) 利用者が意識しなくても、より高度な安全や快適が確保されるような、温かく見守られている生活を実現する。特に高齢者等を意識し、在宅健康管理の充実及び生活の質の向上を追求する。(例えば2008年度までに、希望する全高齢者単身世帯に遠隔でビデオ会話及び安否確認が可能なシステムを導入する。)
また、生活の利便性向上と家庭で受けることができるサービスの選択肢を拡大する。(こうしたサービス創出の取り組みの一例として、2005年までに、ガス、水道、電気等の遠隔検針を実施し、2008年までに希望する全ての世帯について実施可能とする。)
2) 留守宅への侵入などの犯罪や火災などの不慮の事故防止、震災のような大規模災害を含む緊急時の通報・連絡システムの確立によって、生活の安全を確保し社会的費用を抑制する。

(1)現状と課題

 我が国の65歳以上人口は、2003年1月現在2381万人で、総人口の18.7%を占め、主要国の中でも高い水準となっている。今後も65歳以上人口は増加傾向が続き、2015年には3277万人、総人口の4人に1人が65歳以上になると見込まれている。また、65歳以上の単身世帯は2002年時点で340万世帯に達しており、こうした社会の変化に対応し、世界に先駆けて高齢者等が安心して生活できる環境を実現していくことが求められる。例えば在宅健康管理サービスなど、ITは、より高度な安全や快適が確保された生活環境作りの原動力として大きな力を発揮するものであり、今後、ITを用いたサービスの選択肢を拡大していく必要がある。

 そのため、家庭でのサービス提供に必要な基盤の整備費用低減やシステム間の相互接続性等の確保を図る必要がある。また、生活に係る新サービスの展開により、これまで以上にプライバシーの侵害や、詐欺や取引上のトラブルに巻き込まれるなど、安全性・信頼性の問題等の発生も危惧されるため、消費者保護対策の充実が不可欠である。

 2002年における侵入盗は338,294件、火災による損害は約1,740億円(概数)に達し、建物火災34,110件(概数)の32%は建物内の機器(こんろ、ストーブ、電気機器など)が原因である。緊急時の通報・連絡システムの確立によって、犯罪や火災等の事故の減少・防止、災害発生時における被害の抑制・防止を図り、社会的費用を抑制しつつ、生活の一層の安全を確保していく必要がある。

(2)具体的施策

1) 温かく見守られている生活の実現と生活の利便性向上
ア) 家庭でのサービス多様化推進方策の検討(内閣官房、総務省、経済産業省、厚生労働省及び関係府省)
   在宅健康管理、遠隔ビデオ会話や安否確認、遠隔共同検針などの多様なサービスについて、民間事業者による提供を推進するための方策を2003年度中に検討する。
イ) 緊急時の即応体制と安全便利を実現する環境の整備
   
a)緊急事案への対応を迅速化するためのシステムの推進(警察庁)
 緊急車両が現場に到着するまでの時間の短縮を図るため、緊急車両に優先信号制御を行う現場急行支援システム(FAST)を2005年度までに主要都市へ整備することを目指す。
b)健康サービス産業の活性化(経済産業省)
 ITの活用による健康・医療・福祉情報の提供や健康サービス産業の活性化に向け、先進的な健康サービス提供体制の構築に取り組む地域を支援するため、2003年度中に新たな健康サービス産業の在り方や次世代健康モニター機器の開発等の具体化方策等の検討を行う。
c)安全便利を実現できる環境の整備(総務省)
 インターネット基盤技術の高度化を進め、教育、地方行政、介護福祉等の分野に対し、2003年度中にIPv6や高速無線LAN等の最先端の技術を活用して構築したアプリケーションの実証実験を行い、その有効性を検証する。
ウ) 農業者等のIT活用能力の向上(農林水産省)
   2004年度までに、約1万人を対象とした農業者等に対するIT講習等を実施するとともに、普及職員や農業関係者等に対する農業IT指導者育成のためのIT講習等を実施し、指導人材を約1万人養成する。
エ) 家庭内の電力線の高速通信への活用(総務省)
   無線通信や放送等への影響について実用上の問題の有無をできるだけ早期に検証するため、2003年度中に電力線搬送通信に係る線路や設備等の条件について検討し、その結果を踏まえ、無線通信に影響を与えない方法で漏洩電波低減技術に関する実験を実施できるよう措置する。また、実験結果の公開や研究開発等を通じて実用上問題がないことが確保されたものについて、活用方策を検討する。
オ) システム間の相互接続、相互運用性の確保のための技術標準化
   
a)情報家電の主要技術の共有化・標準化(経済産業省)
 多様な技術仕様の乱立を避けるため、情報家電の主要な技術項目について、2005年度までに重要度に応じて段階的に共有化・標準化を実施する。
カ) 消費者保護対策の充実
  <後掲 V.3.電子商取引等の促進 (3)3) イ)>

2) 災害に強い社会基盤の整備
ア)様々な情報通信手段で緊急通報が可能な環境の整備
a) 携帯電話やIP電話等の様々な情報通信手段による緊急通報への対応(総務省)
  2003年度中に、今後普及が予想されるIP電話等の様々な情報通信手段に対応し、かつ災害弱者にも配慮した緊急通報システムの実現を図るため、携帯電話からの緊急通報者の位置特定の方策とIP電話からの緊急通報への対応を検討する。
b) 重要通信の優先的取り扱いのための研究開発(総務省)
  2003年度中にIPネットワーク上で緊急通信を含む重要通信を優先的に取扱うための研究開発を実施する。
c) IP電話からの110番通報を受理する際に必要となる技術の調査研究(警察庁)
  2005年度までに、IP電話のプロトコルやシステム形態を調査し、IP電話からの110番通報を受理できる技術的要件を確立するとともに、110番通報システムを不正アクセス等から守るために必要な調査研究を行う。
イ)防災分野の情報化
 <後掲 V.4.行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進 (3)2) キ)>

(3)評価の具体的な考え方

 1) 生活者の生活満足度は向上したか、具体的には、ITによる安全・健康サービス等を利用できるか、遠隔地の家族・知人との交流が容易になったか、家庭で便利なサービスを受けられるようになったか。

 2) 事業者にとって新規サービスの提供が容易になったか。

 3) 政府行政部門は、安全安心社会を構築するための負担が抑制されたか。具体的には、サービスの質を落とすことなく医療費、高齢者等の生活支援費用、家庭における犯罪及び火災等の不慮の事故防止並びに大規模災害等の対策にかかる社会的負担が抑制できたか。


4.中小企業金融

<目標>

 与信方法の多様化や融資に関する手続の簡素化により、中小企業の資金調達環境を改善するとともに、売掛金回収のリスクを軽減することで、その財務状況を改善し、中小企業がより積極的に事業を展開できる社会を実現する(その一環として、2005年までに信用保証の利用に係る事務手続をオンライン化する。)。

(1)現状と課題

 長引く景気の低迷から、中小企業の経営状況も年々厳しさを増している。中小企業は全企業数のうち、9割以上を占めるなど、日本経済の基盤をなすものであり、中小企業の経営状況が改善しなければ、日本経済の活性化は困難である。
 また、中小企業、特にベンチャー企業の中には、新しい分野へ進出するものや、従来とは異なる新しい手法によりビジネスに取り組むものも多い。これら中小企業の経営を改善することができれば、日本発の新しい先進的なビジネスが創出され、日本経済の活性化に大きな役割を果たすと考えられる。
 しかし、中小企業が事業を遂行する上で、必要な資金の調達・回収をすることが困難であるとの声も多い。このため、ITを活用することにより、これらの問題点を改善する方策を講じる必要がある。

(2)具体的な施策

 1) 中小企業の資金調達環境の整備
 金融機関が中小企業に関する信用情報等、よりきめ細かな情報を基礎として融資リスクを判断することを可能にするための基盤整備を行う。また、融資に関する手続の簡素化をITを利用して実現するための基盤整備を行う。
  ア) 信用供与の電子化(経済産業省)
  融資取引や掛取引等の信用供与をオンラインにより電子的に行うことを可能にし、これらの事務に係る中小企業の負担を軽減するため、2003年度に融資取引や掛取引等の信用供与を電子的に行うサービス(電子手形サービス等)に係る実証実験を行うとともに、信用供与の電子化に係る総合的な方策を検討する。
  イ) 信用保証の利用に係る事務手続のオンライン化(経済産業省)
  融資に関する事務手続について、中小企業の負担を軽減するため、2003年度に信用保証の利用に係る事務手続のオンライン化に関する実証実験を行う。
  ウ) 信用情報等の定型化・電子化(経済産業省及び関係府省) 
  金融機関が正確かつ詳細な情報に基づき、融資リスクを的確に判断し、リスクに見合った融資を可能とするため、2003年度中に、関係府省と連携を図りつつ、信用情報、契約情報、トレース情報等の定型化や電子化のための方策を検討する。
  エ) 電子債権市場の創設(経済産業省)
  中小企業と金融機関等がITを利用して信用情報等を入手し、債権の売買等により必要な資金を得ることのできる電子債権市場を2005年度までに創設する。

 2) 売掛金回収リスク軽減のための環境整備
  売掛債権を迅速かつ確実に回収できる決済手段であるエスクロー4 サービスの普及を図るための環境整備を行う。
  ア)エスクローサービス提供事業者の拡大(金融庁、法務省、経済産業省及び関係府省)
 2003年度にエスクローサービスの提供事業者の実態を把握するとともに、出資法第2条を含め、エスクローサービスの拡大の支障となっているとの意見がある制度等について、関係府省と連携を図りつつ検討を行い、その拡大のための方向性を示す。
  イ)搬送状況トレースの活用(経済産業省)
 エスクローサービスにおいて、売買の対象物の搬送状況を迅速かつ正確に把握することを可能にすることにより、エスクローサービスをより便利なサービスとするため、2003年度に、搬送状況トレースをエスクローサービスに活用するための方策についての検討を行う。

(3)評価の具体的な考え方

 1) 中小企業事業者は、積極的な事業展開を行い、販売機会(売上)を拡大させたか。

 2) 金融機関は与信方法の多様化や融資に関する手続の簡素化等を行ったか。

5.知

〈目標〉

 1) ITの利用により、個の学習スタイルを多様化し、個の能力を向上させるとともに国際的な労働市場における我が国の人材の競争力向上を図る。(この一環として、2005年度までにITを利用した遠隔教育を実施する大学学部・研究科を2001年度の約3倍とすることを目指す。)
 2) コンテンツについて総合的な取り組みを推進し、我が国の知的財産を利用した新たな価値を創造することで、コンテンツ産業等の国際競争力の向上を図るとともに、海外における日本文化への理解を向上させる。(この一環として、2003年中に民間放送用コンテンツにつき、2008年までに全ての放送用コンテンツにつき、放送事業者や番組制作会社等の放送用コンテンツの権利主体が希望すれば、ネット配信を可能にする環境整備を行う。)

(1)現状と課題

 我が国の国際競争力を維持・強化していくためには、高度で専門的な知識や技術について継続的に学習できる環境を整備する必要がある。一方、生きがいのための生涯学習のニーズも高まっている。このため、従来の講義形式のみならず、多様な教育方法を充実させていく必要があるが、特にITを活用した遠隔教育は、学習者にとって時間や場所の制約を克服できるものであり、有効な教育方法である。すでに、大学等においてインターネット授業を実施している事例もあるが、今後もITを活用した遠隔教育を一層推進していく必要がある。

 また、コンテンツに関しては、日本のゲーム、アニメ、漫画等は海外でも高い競争力を誇っている。この他に、我が国には伝統文化や地域文化等の優れた文化が存在している。しかしながら、権利処理作業の負担、不正コピーの危険性等の要因から、こうしたコンテンツの海外へのオンライン配信のみならず、国内でのオンラインコンテンツ市場についても十分には発展していない状況にある。我が国のコンテンツ産業の競争力の向上を図るためには、これらの課題を解決するとともに、我が国の知的財産を利用したコンテンツの創造を活性化させる必要がある。さらに、海外における日本文化の理解向上を図るために、様々な分野の情報をデジタルアーカイブ化し、海外に発信する必要がある。

(2)具体的な施策

 1) ITを活用した遠隔教育の推進(文部科学省)

 ITを活用して、誰もが時間や場所を選ばず、専門職に関する高度な知識・技術も含め、専門的な知識・技術や一般的な教養について生涯を通じて継続的に学習できる環境を整備する。

  ア)大学等のe-Learningの推進
  2005年度までに、ITを活用した遠隔教育を実施する大学学部・研究科を2001年度の約3倍とすることを目指し、遠隔教育を可能とするための環境整備を行う。
  イ)技術者の継続的能力開発・再教育
  技術者の継続的能力開発や再教育を支援するため、2003年度中に、時間や場所を選ばずに能力開発ができる技術者向け自習教材(2002年度末現在360件)の充実を図る。
  ウ)e-Learningを活用した教員のIT指導力の向上
  2005年度まで、教員が自由な時間に必要なITスキル等を学ぶことができるe-Learningを活用したネットワーク提供型の研修カリキュラムを開発し、その活用を推進する。
  エ)大学の公開講座の全国配信
  2004年度までに、衛星通信を活用して大学の公開講座を全国の公民館等に配信する総合的なシステムの管理・運営方法等に関する検討を行う。

 2) コンテンツ産業の国際競争力強化

 コンテンツ産業の国際競争力の向上を図るためには、コンテンツを創造し、それが円滑に流通し、利用者によって購入され、そして、その資金を元に新たなコンテンツを創造するという力強いサイクルを確立する必要がある。このため、ア)コンテンツ制作力の強化、イ)デジタルコンテンツの流通環境の整備、ウ)デジタルコンテンツ市場の拡大の3つの視点から、総合的な施策を推進する。

  ア) コンテンツ制作力の強化
  コンテンツ産業の活性化のためには、市場価値の高いコンテンツが豊富に生み出されることが不可欠である。そのため、魅力的なコンテンツを制作できる人材を育成する。また、そうした人材が、コンテンツ制作に意欲をもって取り組めるように、コンテンツ制作を活性化するための環境整備を行う。
 
a)人材の育成
i) コンテンツプロデューサ育成に向けた教育プログラムの整備(経済産業省)
  コンテンツプロデューサを育成するため、2004年度中に、各教育機関の参考となるよう知的財産管理・海外取引実務などを内容とする教育プログラムを整備する。併せて、大学等の人材育成機関の協力の下、教育プログラムの実証実験を行う。
ii) クリエイタの技能の客観的分析・標準化(経済産業省)
  2003年度中に、クリエイタの技能の客観的分析・標準化を行い、体系的な教育カリキュラムを策定する。また、その教育カリキュラムを実施する組織を整備する。
b) コンテンツ制作の活性化
i) コンテンツ投資協議会の設立(経済産業省)
  2003年度中に、コンテンツ制作に係る資金調達のノウハウの蓄積と提供、制作者と投資家の仲介機能等を有する「コンテンツ投資協議会」を設立する。
A) 商品ファンド法による「映画ファンド」組成の円滑化(金融庁、経済産業省)
  映画等の制作に係る資金調達の円滑化を図る観点から,商品ファンド法における許可要件の緩和等について、法目的である投資家保護の趣旨を十分踏まえつつ検討を行い、2003年度中に結論を得て、必要に応じ所要の措置を行う。
B) 信託の枠組みの整備(金融庁)
  映画やゲーム等のコンテンツ制作者の資金調達を円滑化し,デジタルコンテンツの制作を活性化させるため、知的財産を信託業法上の受託可能財産に追加することについて検討を行い、2003年度中に結論を得て所要の措置を行う。
C) 映画・アニメ等のコンテンツ制作等への支援(文部科学省)
  優れたコンテンツの創作等を活発化させるため、2003年度中に、映画製作への重点支援、新人監督やシナリオ作家の作品の製作支援、メディア芸術祭の開催等を行う。
D) 地域におけるロケーション誘致への協力(文部科学省、経済産業省及び関係府省)
  2003年度中にフィルム・コミッション5 の行う各地でのロケーション誘致への取り組みに関し、規制緩和,歴史的建造物等の管理者に対する協力促進の働きかけ、許諾の指針作りや,フィルム・コミッションの全国統一組織への協力などを行う。
E) 地域の特色ある文化等に関するデジタルコンテンツの制作等の促進(総務省)
  地域の多様なデジタルコンテンツの制作・流通等に向けた取り組みの促進を図るため、2004年度中に、地域の特色ある文化等に関するデジタルコンテンツの制作・流通等に関する先導的な事例について、その取り組みの有効性の検証やノウハウの普及等を行う。
F) ブロードバンドコンテンツ市場の拡大に向けた技術的ボトルネック等の解消(経済産業省)
  2005年度までに、ブロードバンド市場の拡大に向けて、コンテンツ制作基盤ツールの開発、ブロードバンドコンテンツ制作に対する支援等による技術的ボトルネック等の解消を図る。
G) gコンテンツ制作基盤の整備(経済産業省)
  <後掲 V. 4. 行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進 (3)2) カ)b)C)>
H) 住民の暮らしに身近な行政情報・地域情報を素材とするコンテンツ制作の支援(国土交通省)
  放送・通信融合技術の活用を視野に入れつつ、法令に位置づけられた防災情報の提供のあり方を含めて、気象、地震、火山、水位、土砂災害等に関する情報、河川等地域の魅力に関する情報、道路、交通観光に関する情報等からなる「住民の暮らしに身近な行政情報・地域情報」について、魅力的なコンテンツが制作されるよう、2003年度中にコンテンツ制作を担う民間および地域のNPO等の意見を聴取し、コンテンツ制作に役立つ素材の提供のあり方を検討する。
イ) デジタルコンテンツの流通環境の整備
 魅力的なコンテンツが、より多くの人の手元に届くように、知的財産の権利を適正に保護されたデジタルコンテンツが円滑に流通するための環境整備を行う。
 
a) 著作権契約に関する制度的枠組みの整理
i) コンテンツ取引に関する独占禁止法上の考え方の明確化(公正取引委員会)
 複雑・多様なコンテンツ取引の実態を十分踏まえつつ、2003年度中に、コンテンツの制作等に係る取引に関する独占禁止法上の考え方を明確化し、役務取引に関する独禁法ガイドラインの一層の整備等を図る。
ii) 著作権に関する法律ルールの整備(文部科学省)
 2003年度中に、著作権侵害に対する司法救済の充実等に必要な制度整備を行い、インターネット等新たな情報伝達手段の発展に対応した著作権制度の充実を図る。
iii) コンテンツ取引全般に関する契約見本の策定・周知(総務省、経済産業省)
 デジタルコンテンツの制作者、権利者、流通事業者のそれぞれが正当な報酬を得ることのできる環境の整備のため、2003年度中に、関係事業者間の十分な協議を踏まえた取引交渉のたたき台となる契約書の雛型(「契約見本」)の策定・周知など、具体的方法について検討し、その結果を公表する。
C)  自由利用マークの普及・意思表示システムの整備(文部科学省)
 2003年度以降、著作物の利用に関する権利者の意思を簡便に表示できる「自由利用マーク」の普及を図る。さらに、その普及状況を踏まえつつ、権利者の意思をより詳細に表示できる意思表示システムのあり方についての検討を行う。
b)著作権権利処理の円滑化
i) 著作権等のクリアランスの仕組みの開発・実証(総務省)
 2004年度までに、著作権に関する情報等のコンテンツに関する情報(メタデータ)を相互に交換し、不正利用を防ぎつつ流通するための権利処理システムを開発することにより、放送コンテンツを権利者と利用者との間で安全・確実に取引する市場形成を図る。また、当該システムを利用し、コンテンツの流通等に関する多様なビジネスモデルの試行を行い、民間における権利処理ルールの確立を支援する。
c) コンテンツ流通に関する研究開発
i) コンテンツの生体への影響に関する調査・研究(経済産業省、総務省)
 2003年度中に、映像コンテンツが生体に対して与える影響について、物理的・医学的な基礎調査および研究を行い、その調査研究結果を公表する。
ii) ブロードバンド・コンテンツ流通技術の開発・実証(総務省)
 2004年度までに、メタデータを活用したコンテンツの多様な視聴や高度な権利保護を実現する技術、WDM 6によるコンテンツ配信技術等、放送コンテンツ等の大容量映像デジタルコンテンツの光ネットワーク上での流通に関する技術の開発・実証を行う。
iii) デジタルコンテンツの複製防止技術等の確立のための環境整備(経済産業省)
 デジタルコンテンツ流通拡大のために、2004年度中に、複製防止技術等のブロードバンドコンテンツ流通のボトルネックとなっている課題の解決に向けた取り組みを行う。不正コピー防止については、法制面等の課題の検討もあわせて行う。
ウ)デジタルコンテンツ市場の拡大
 どんなに魅力的なコンテンツでも、市場で利用者に購入されなければ、ビジネスとして成り立たない。その一方で、著作権等に対する意識が低い利用者が多く参加する市場では、権利侵害の危険性が高いため、魅力的なコンテンツが市場に供給されない。そのため、デジタル時代に対応したコンテンツ市場の形成を図るとともに、そこに参加する利用者に対して著作権についての啓発活動を行う。
a) デジタル時代に対応したコンテンツ市場の形成
i) ブロードバンドコンテンツ流通に係る新たな事業モデルの構築支援(経済産業省)
 2005年度までに、ブロードバンドコンテンツ流通にかかる新たな事業モデルの構築に必要とされる円滑な権利処理や取引契約を含む適切な商慣行の構築を支援すると共に、セキュア技術やコンテンツID付与技術、EDI機能を含む、商慣行の実体に則したシステムの実証・検証を実施する。
A) コンテンツフリーマートの実証(総務省)
 2005年度までに、コンテンツを個人と個人との間で、著作権管理等を適切に行いつつ安全・円滑に交換し合うための基盤の構築、技術等の確立を図る。
B) バーチャル著作物マーケットの研究開発(文部科学省)
 2003年度までに、コンテンツの創作者と利用者がインターネット上で直接契約等を行えるシステム(バーチャル著作物マーケット)の研究開発を行う。
C) デジタル技術を活用したコンテンツの権利者と劇場等上映施設との間の仲介システムの実用化(経済産業省、文部科学省)
 デジタル映像技術を活用し、これまで十分な上映機関のない地域において、新たな地域上映経路を立ち上げるため、コンテンツに関する権利者と劇場等上映施設の間の仲介システムを開発、実証実験を行った上で、2005年度までに実用化する。
b) コンテンツ利用者に向けた著作権についての啓発活動
i) 学校における著作権教育の支援(文部科学省)
  <後掲 V.2.人材の育成並びに教育及び学習の振興>(3)3) イ)a)B)
ii) 国民一般のための著作権に関する知識・意識の普及(文部科学省)
 著作権に関する知識や意識を高めるために、2003年度中に、広く多くの国民を対象とした著作権講習会を10回程度開催する。また、2004年度までに、著作権に関する疑問・質問を集積し、それらに対する回答とともにインターネットを通じて情報提供を行うシステムを整備する。
c) 海外展開のための環境整備
i) コンテンツ産業の海外展開(経済産業省)
 2003年度中に、「コンテンツ産業国際戦略研究会」を立ち上げ、東京国際映画祭の国際コンテンツマーケットへの変革、海賊版対策の強化など、コンテンツの海外展開を積極的に支援するための総合的な施策のあり方を検討する。
ii) アジア地域における海賊版被害の実態調査(文部科学省、経済産業省、外務省)
 「コンテンツ海外流通促進機構」の具体的運営を支援し、2003年度中に、台湾を中心としてアジア地域での海賊版の流通状況の調査を行うほか、当該国での取締り強化の要請のための官民合同ミッションの派遣を行う。
iii) 海賊版対策に向けた国際機関の積極活用(文部科学省、外務省)
 2003年度も引き続き、世界貿易機関(WTO) 7や世界知的所有権機関(WIPO)8 等の国際機関を活用し、我が国著作物の海賊版が流通している国々に対して、法制度整備、エンフォースメントの強化を働きかける。
iv) 日中・日韓著作権関係協議(文部科学省)
 インターネット上の著作物の著作権の適切な保護のため、2002年度に開始された中国及び韓国との協議について、2003年度についても、代表団を派遣し引き続き協議を行う。
v) アジア地域著作権制度普及促進事業(文部科学省)
 2003年度中に、WIPOの協力を得て、新条約加盟促進を目的とするシンポジウムの開催、電子的権利システムの構築を支援するための専門家の派遣、権利侵害の紛争処理に必要とされる人材育成のための研修等を実施する。
vi) WIPOにおける著作権についての国際的なルールの構築(文部科学省、総務省、外務省)
 2003年度以降も、WIPOにおける「視聴覚的実演に関する条約(仮称)」及び「放送機関に関する条約(仮称)」についての議論に積極的に参画し、インターネットの発達などに対応した著作権に関する新たな国際ルールの構築を図る。あわせて、アジア地域を中心に、すでに発効しているWIPO新条約(WCT(著作権に関する世界知的所有権機関条約)、WPPT(実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約)を締結するよう働きかけを行う。

 3) 日本文化の情報発信

 日本文化への理解向上を図るため、様々な情報のデジタル化・アーカイブ化及び国内外への発信を推進し、このために必要な技術開発の推進を行う。
 ア)デジタルアーカイブ化及び国内外への発信
i) デジタルアーカイブ化の推進(内閣府、総務省、文部科学省及び関係府省)
  2005年度までに、放送・出版、映画等のコンテンツや、美術館・博物館、図書館等の所蔵品、Web情報、地域文化、アジア諸国との関係に関わる重要な公文書等について、デジタル化・アーカイブ化を推進し、インターネットを通じて国内外に情報提供が行われるよう必要な措置を講ずる。
ii) 共通索引システムの整備等(文部科学省、総務省)
  デジタルアーカイブ情報の検索を容易にするため、2005年度までに、国や地方公共団体、私立の美術館、博物館のネットワークの充実を図り、共通索引システムを整備する。また、2006年度までに、全国で1000館程度の美術館、博物館等が参加する文化情報に関するポータルサイトの確立を目指す。
イ) アーカイブ流通のための技術開発の推進
i) 映像表示・伝送技術の確立のための技術開発(総務省、経済産業省)
 高品質のアーカイブを円滑に流通させるため、2005年度までに、実物の色、質感・立体感・光沢を忠実に再現する映像表示・伝送技術の確立を目的とした研究開発を実施する。
ii) 安全・円滑な流通のための技術開発(総務省、経済産業省)
 コンテンツのネットワークによる利用を促進するため、2004年度末までに、メタデータを活用した一元的な高速検索技術の開発等、アーカイブ・コンテンツの安全・円滑な流通を可能とする技術の開発、実証等を推進する。

(3)評価の具体的な考え方

 1) 利用者は、自己が求める学習内容を必要なときに効率的に受けられるようになったか。

 2) コンテンツ作成者は、作品の提供に対して適正な報酬が確保されるようになったか。

 3) 知的財産の利活用により、魅力的なコンテンツが増加し、海外への輸出拡大が図られたか。

6.就労・労働

<目標>

1) 求人・求職活動において電子的な情報交換等を促進することにより、人材資源の移動の円滑化を図るとともに、一人ひとりが適材適所で能力を発揮できる社会を実現する。2005年までに、電子的な手段で情報を入手し、職を得る人が年間100万人となることを目指す。
2) ITを活用し、国民がそれぞれの人生設計に対応した多様な就労形態を選択することにより、就業において、一人ひとりがより創造的な能力を最大の能率で発揮しうる社会を実現する。ひいては、就業と家事・育児・介護の両立が可能となるなど、男女が共同して参画する社会の実現に資する。2010年までに適正な就業環境の下でのテレワーカー(注)が就業者人口の2割となることを目指す。
 (注:ここでは、情報通信手段を週8時間以上活用して、時間や場所に制約されない働き方をする人と定義する。)
3) ITを活用し、起業や事業拡大を支援することにより、就業の機会を創出・拡大する。これにより、人材資源の移動の円滑化及び就労形態の選択の幅の拡大に資する。

(1)現状と課題

 近年の我が国の雇用情勢は、完全失業率が5%台の高水準で推移する等、依然として厳しい状況にある。こうした情勢に適切に対応するため、政府では各種の総合的な雇用対策を図っているところであるが、こうした方策を一層効果的なものとするためには、人材等資源の柔軟かつ機動的な再配置を促すITの適切な活用が不可欠である。例えば、求人・求職活動や民・官間の人材交流において、誰もが必要な情報を時間や場所の制約なく一元的に入手し、比較検索できる電子的な仕組みを整備・充実させることで、労働力需給のミスマッチの一層の解消につながり、人材資源の移動の円滑化が図られ、一人ひとりが適材適所で能力を発揮できる社会が実現される。

 また、国民のライフスタイルに対する価値観の多様化等に伴い、個々人のニーズに応じた柔軟な就労形態に対する需要が労使双方において顕在化しているが、高速・低廉でセキュリティの高い通信ネットワークや、テレビ会議システムなどの近年の情報通信技術の進展は、多様な就労形態の選択肢を拡大するものである。こうした情報通信技術を活用した、能率が最も高まり、また創造性が最も発揮されるような場所と時間を選択した働き方の典型であるテレワーク9 や裁量労働については、日本においても近年導入する企業の増加が見られているが、欧米諸国に比べた導入の遅れや、また、裁量労働制に関する手続きの一層の緩和、労働時間管理に縛られない法制度設計の必要性も指摘されているところである。このような、個々の人生設計に対応した多様な就労形態の選択を可能とすることで、一人ひとりがより創造的な能力を最大の能率で発揮しうる社会が実現され、ひいては、就業と家事・育児・介護の両立が可能となるなど、男女が共同して参画する社会の実現にも資する。

 さらに、IT革命が雇用面に与える影響として、企業等の業務効率化に伴う雇用削減の可能性も予想されるところであるが、これに対しても適切な対応を図るため、IT関連も含めたベンチャー企業の創出・育成などを通じてセーフティネット(安全網)を整備していくことも重要である。こうした観点から、電子的手段を活用し起業・事業拡大の容易化を実現するとともに、特にIT関連分野における新事業創造支援を推進することを通じ、就業機会の創出・拡大を図っていくことが必要である。

(2)具体的施策

 1)  人材資源の移動を円滑化し、一人ひとりが適材適所で能力を発揮できる社会の実現
 ア) 求人・求職活動等における情報化の推進
a) 官民連携した雇用情報システム(しごと情報ネット)の充実(厚生労働省)
   全国の民間職業紹介事業者や公共職業安定所が確保した求人情報を、インターネットや携帯電話を利用して誰もがどこからでも容易に入手し、一覧、検索出来る仕組みを整備する。2001年8月から稼動を開始している官民連携ポータルサイト「しごと情報ネット」について、2003年度までに求職者に対する求人情報のメール配信サービス等の充実を図り、労働市場における一層の労働力需給調整機能の強化を通じ、失業者の早期再就職、在職者の失業なき労働移動の実現を図る。
b) 女性のチャレンジ支援のためのネットワーク環境の整備(内閣府及び関係府省)
   再就職等の雇用や起業、NPO、農林水産、まちづくり、地域社会等の様々な分野にチャレンジしたいと考える女性が、必要なときに必要な情報を効率的に入手できるような総合的な情報提供システムの構築を行う。2003年度より、関係府省、産業界、大学、NPO等の有識者により構成される「チャレンジ支援ネットワーク検討会」において情報提供システムの在り方についての検討を開始し、2003年度中に、ポータルサイト等による情報提供システムを構築し、一般公開する。
 イ) 長期雇用を優遇する制度の見直し(厚生労働省)
  従来型の年金に関わる制度や退職金に関わる税制等、長期雇用を優遇する制度が人材資源の流動化を阻害することのないようにする必要がある。このため、長期雇用を前提とした制度の見直しや、退職金に関する制度の中立性の確保等についての検討を進める。
  特に企業年金については、確定給付型年金の中途脱退者の通算制度の拡大など確定給付型年金のポータビリティ10 向上等につき、2003年度早期に検討を開始し、結論を得る。
 ウ) 官民間での人材交流の円滑な推進に向けた諸方策の検討(内閣官房、人事院、総務省、及び全府省)
  民・官の間での双方向のオープンな人材交流を推進するため、公務の中立・公正性の確保を踏まえつつ、2005年度末までに、官民人事交流制度、任期付職員制度において民間企業との雇用関係の継続を認めることとするなど、民・官間の人材の兼業規制を含む服務上の規定等の必要な見直しを行う。また、官民人事交流促進に関する方針を策定するなど人材交流の円滑な推進や有能な民間人の登用の促進に向けた諸方策の検討を行う。

 2)  多様な就労形態を選択し、より創造的な能力を最大の能率で発揮しうる社会の実現
 ア) 企業のテレワークの普及促進
a) 企業による適正な労務管理下でのテレワーク導入支援(厚生労働省)
  効率や成果を最も高めるための就労形態の一つであるテレワーク勤務については、通常の勤務と異なり勤務場所が自宅等であり、安全衛生や労働時間の管理についてその取扱いが明確ではないことから、在宅勤務者等(雇用型テレワーク)に対する適正な労務管理の推進を図るため、2003年度中に、在宅勤務等に関する労働基準行政上の取扱いを明確にしたガイドラインの策定を行い、説明会等の開催により事業主等に周知を図る。
b) 企業によるセキュリティの高いテレワーク環境導入支援(総務省)
 企業がテレワークを導入する際の障壁となる、セキュリティ対策等の情報通信面での阻害要因を分析するための調査研究を行い、その結果を踏まえ、2004年度中に企業によるセキュリティの高いテレワーク環境の導入を支援するためのガイドラインを整備し、シンポジウム等の開催による周知・広報活動を通じた普及啓発を行う。
 イ) 労働者が創造的能力を発揮するための労働関連制度の整備 (厚生労働省)
  職種の急速な多様化等の環境変化に俊敏に対応し、労働者が創造的能力を発揮できるよう、労働関連制度について、改正労働基準法の施行状況を把握した上で、従来型の規制の在り方について検討を引き続き行い、必要に応じて措置を実施する。
 ウ) 公務員のテレワークに関する制度等の環境整備(内閣官房、人事院、総務省、及び各府省)
  公務員のテレワークについては、「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律」等現行法制の下での導入は可能であり、かつ公務能率の向上に有効である場合もある。このため、各府省はテレワークに適する職種、労務管理等に関する検討、導入を速やかに行うとともに、人事院、総務省は、公務員のテレワーク導入を支援する観点から、制度面を含めた必要な対応を行う。また、人事院、総務省は、公務員の裁量労働制その他テレワークに資する制度環境の整備の検討を2003年中に開始し、速やかに結論を得る。検討に当たっては、内閣官房、人事院、総務省、関係府省等による連絡等の場を設ける。さらに、地方公共団体におけるテレワークの導入の検討に資するため、2003年度より必要に応じて情報提供等を行う。

 3)  起業・事業拡大支援による就業機会の創出・拡大

 ア) 起業・事業拡大等に関する情報等を効率的に入手できる仕組みの構築(総務省)
  情報通信ベンチャーの経営に必要な情報をワンストップで提供するポータルサイトを整備し、情報通信ベンチャー及びこれらの企業の創業を目指す個人を支援する様々なサービスを提供する。通信・放送機構のホームページ上に開設している「情報通信ベンチャー支援センター」について、専門家による経営相談、助成金等の支援情報のワンストップ検索等の既存のサービスに加え、2003年度中に、交流を希望する会員間のマッチングを自動化するシステムの開発等の拡充を行う。
 イ) 起業・事業拡大時に必要な手続きが簡易にできる仕組みの構築(経済産業省)
  2003年度までに、起業時に必要な行政機関及び民間企業等への各種手続きを行うことができる、民間事業者によって運営される官民連携ポータルサイトの研究開発及び実証実験を行う。
 ウ) 新事業創造支援等を通じた就労機会の拡大・創出(総務省)
  IT関連分野における就労機会の創出を支援するため、SOHO 11等が情報通信アプリケーションの開発に簡単に参入できるようにするため、2003年度中に、情報通信技術を活用したコミュニティサービス(電子会議室、地域通貨やWeb‐GISと連携した地域情報提供など)の開発等において求められる支援方策等に関する調査研究や、SOHO等がこれらの情報通信アプリケーションを効率的に開発できるようにするための共通基盤の検討等を行う。
 エ) 市民活動活性化モデル事業(市民ベンチャー事業)(経済産業省)
  まちづくり、生活支援等の分野で女性や高齢者が中心となって行う市民活動等のうち、ITを有効に活用して地域の新事業・雇用の創出に寄与する特に優れた事業を、2002〜2004年度において50件程度選定し、活動の立ち上げ、企業化を支援するとともに、全国への普及を図る。
 オ) 創業・起業に資する高度専門人材の育成支援(経済産業省)
 創業・起業促進や産業競争力強化等、企業において必要とされる高度な能力(スキル)を備えた人材の育成を支援するため、企業の人材ニーズに基づき、分野別のスキル基準の策定やこれらを習得するための研修カリキュラム・教材の開発等、効果的な育成を進めるための取り組みを行い、その成果を2004年3月までにインターネット等を活用して広く公開・提供する。

(3)評価の具体的な考え方

 1) 国民にとって、適材適所での就労の可能性が高まったか、多様で柔軟な就労形態が可能になったか。

 2) 企業および行政機関にとって、必要とする人材を柔軟かつ機動的に活用できる環境が整ったか、労働者の生産性・創造性は高まったか。

 3) 起業家から見て、起業がより容易になったか。具体的には、起業に関して越えなければならない障害の緩和、必要な情報・助言をより多く入手可能になったか。

7.行政サービス

〈目標〉

1) 日本の国際競争力の基盤となる効率的で質が高く、24時間365日ノンストップ・ワンストップの行政サービスを提供する。業務の外部委託や調達制度の改革等により政府行政部門の業務効率の向上を図り、財政支出を抑制しつつ、サービスの向上を実現する。このため、2005年度末までに、総合的なワンストップサービスの仕組みや利用者視点に立った行政ポータルサイト12 等の整備を図るとともに、業務分析の実施、業務プロセス等の抜本的な見直しを通じて、2005年度末までのできる限り早期に、各業務・システムの最適化に係る計画を策定する。
2) 国民が必要な時に政治、行政、司法部門の情報を入手し、発言ができるようにすることで、広く国民が参画できる社会を形成する。

(1)現状と課題

 行政サービス分野については、ITの活用により、国民の利便性の向上と行政運営の簡素化、効率化及び透明性の向上を図ることが可能となるものであることから、国においては、行政情報のインターネットによる提供、行政手続のオンライン化、業務のIT化に積極的に取り組んできたところである。しかしながら、これまでの取り組みについては、利用者の視点に立った取り組みが不十分であったり、既存の業務や制度を前提としたIT化にとどまるなど、必ずしも十分とは言い難いものであった。

 こうした現状を改善し、我が国の国際競争力の基盤ともなる効率的で質が高く、24時間365日ノンストップ・ワンストップの行政サービスの提供を推進するとともに、業務の外部委託や調達制度の改革等により政府行政部門の業務効率の向上を図り、財政支出を抑制しつつ、行政サービスの向上を実現していく必要がある。

 このため、国においては、2005年度末までに総合的なワンストップサービスの仕組みや利用者視点に立った行政ポータルサイト等の整備を図るとともに、業務分析の実施、業務プロセス等の抜本的な見直しを通じて、2005年度末までのできる限り早期に各業務・システムの最適化に係る計画を策定する。なお、こうした取り組みの効果を高めるため、国民等に身近な行政サービスを提供する地方公共団体とも十分な連携を図り、電子自治体構築に向けた地方公共団体の取り組みを支援する。

 また、行政ポータルサイトの整備などを通じて、国民が必要な時に政治、行政、司法部門の情報を入手し、発言ができるようにすることで、広く国民が参画できる社会の形成を目指す。

(2)具体的な施策

 国においては、ITの活用により、利用者本位の行政サービスの提供と予算効率の高い簡素な政府の実現を目指し、以下の具体的施策を着実に推進する。

 また、地方公共団体等の関係機関についても、国と同様の取り組みを推進するために必要な情報提供、助言等を行うなど、連携協力を積極的に推進する。

 1) 行政ポータルサイト等の整備

 政策立案過程、実施状況、事後評価等行政運営に関する情報を、国民がわかりやすく知ることができるようにするとともに、広く国民の行政への参画を容易とするため、「電子政府構築計画」(2003年7月17日各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)に基づき、行政ポータルサイト等を整備する。
 ア) 行政ポータルサイトの整備、充実(総務省及び全府省)
  電子政府の総合窓口(以下「e-Gov」という。)及び各府省のホームページについて、「行政組織単位による一方向の情報提供」から「利用者の視点に立った行政情報・サービスの提供」へ移行するため、その機能、役割分担等を見直し、ワンストップサービス、政府全体として分かりやすい情報の提供、国民等からの政策提言の一元的な受付等を行う新たな行政ポータルサイトとして、2005年度末までに整備する。
 イ) 多様な手段による電子政府利用環境の整備(マルチアクセス環境の整備)(総務省及び全府省)
  e-Gov、各府省のホームページや電子申請システム等の国民等利用者と行政との間の情報のやり取りに係る各種システムについて、多様な手段により電子政府を利用できる環境の整備を推進するとともに、電子申請システムの利用方法、個別手続の内容等についての相談・案内に関し、総合的・横断的に対応するための体制、仕組み(電子政府利用支援センター(仮称))を、2005年度末を目途に整備する。

 2) ワンストップサービスの整備

  「電子政府構築計画」に基づき、関連手続を一括してオンラインで申請できるワンストップサービスを整備する。
 ア) 輸出入・港湾手続のワンストップ化(財務省、法務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、外務省)
  輸出入・港湾手続について、民間システムとの連携等を推進するとともに、既存システムの相互接続にとどまらず、改めて徹底した見直しを行い、より信頼度が高くかつ運用コストの低廉な新しいシステム構築について検討し、既存の業務・システムに係る最適化計画を2005年度末までのできる限り早期に策定する。なお、国際標準への準拠、手続の簡素化の一環として、「国際海運の簡易化に関する条約(仮称)(FAL条約)」の締結について早急に検討し、2003年12月までに規制改革等の必要な措置を講ずる。
 イ)自動車保有関係手続 13のワンストップ化(国土交通省及び関係府省)
  自動車保有関係手続について、概ね2005年を目標に手続の電子化によるワンストップサービス・システムの稼動開始を目指す。このため、2003年度には、システムの開発を行うとともに、一部地域で、システムの実用化に係る試験運用を行う。
 ウ) 総合的なワンストップサービスの推進(総務省及び全府省)
  e-Govを活用し、国の行政機関はもとより関係機関の電子申請システムとも連携し、申請・届出等手続の案内情報の入手から実際の手続までをインターネットにより一元的に行うことができる総合的なワンストップサービスの仕組みを2005年度末までに整備する。

 3) 既存の業務等の抜本的な見直し、システムの共通化及び外部委託化

 民間経営管理手法を参考としつつ、既存の業務・組織・制度の抜本的な見直し、他システムとの相互運用性を確保した上で、IT活用を推進する。また、異なる行政機関が類似のITを導入することによる重複投資を排除し共通化を図るとともに、行政機関間の枠を超えた集約統合により合理化する。さらに、サービスの質と費用の観点から民間に任せることが可能な業務については民間に外部委託することを原則化する。なお、外部委託にあたって、個人情報の保護やセキュリティの確保等を図る必要があることから、委託管理の適正化を図る。
 ア) 内部管理業務の業務・システムの最適化(人事院、総務省、財務省及び全府省)
  官房基幹業務について、「電子政府構築計画」中の「内部管理業務の業務見直し方針」(2003年7月CIO連絡会議決定)に基づき、業務及び制度の見直しを実施し、人事・給与等業務については2003年12月までに、その他の官房基幹業務(物品調達・管理、旅費等)については2004年度早期に、業務・システムに係る最適化計画を、「電子政府構築計画」に基づき、策定する。
  なお、人事院、総務省及び財務省は、2004年度末までに人事・給与関係業務情報システム(仮称)の主要な部分を整備する。
 イ) 個別業務・システムの最適化(総務省及び全府省)
  各府省は、「電子政府構築計画」に基づき、業務の最適化やシステムの統合化等の効果が大きいと見込まれる業務について、2005年度末までのできる限り早期に、各業務・システムに係る最適化計画を策定する。特に、いわゆる旧式(レガシー)システムについては、当該システムを保有する府省において、最適化計画の一環として、「レガシーシステム見直しのための行動計画(アクション・プログラム)」に基づき、必要な見直しを行う。
 ウ) 外部委託の推進(全府省)
  各府省は、「電子政府構築計画」に基づき、「国の行政機関における情報システム関係業務の外注の推進について」(2000年3月行政情報システム各省庁連絡会議了承)を踏まえ、委託管理の適正化に十分留意しつつ、2003年度以降も引き続き、外部委託(アウトソーシング)を推進する。
 エ) 地方公共団体における共同アウトソーシングの推進(総務省)
  2003年度以降、地方公共団体に共通する住民サービス業務や内部管理業務を標準化・共同化し、民間企業のノウハウ・システムを有効活用して住民サービスの向上と地方公共団体の業務改革、地元IT産業の振興を図る「共同アウトソーシング」のシステム開発実証実験を実施するとともに、開発されたシステムを相互に活用できる体制を整備することにより電子自治体化に必要なシステムの導入を促進する。

 4) 民間保存文書の電子的保存の制度面・技術面の検討及び電子文書の長期保存の技術開発支援

 民間に保存が義務付けられている文書・帳票のうち、電子的な保存が認められていないものの電子的な保存を認める方向で、そのために必要な方策について社会制度及び技術の両面から官民協力して検討を進め、2003年度中に方向を定める。また、電子文書について、故意又は過失による改竄及び消去を防止しつつ、長期間に亘って保存するための技術開発支援を進める。
 ア) 民間保存文書の電子的保存の検討(内閣官房及び関係府省)
  民間に保存が義務付けられている文書・帳票のうち、電子的な保存が認められていないものについて、2003年度中に、関係府省は電子保存の容認の要件やスケジュール等の対応の方向性を明確化し、内閣官房が取りまとめる。
 イ) 電子文書の長期保存のための基礎技術の研究開発(経済産業省、総務省)
  2005年度までに、暗号技術、電子署名等の暗号技術、タイムスタンプ・プラットフォーム技術、デジタル・アナログ・ハイブリット保存技術等、電子文書の長期保存に必要となる基礎技術の研究開発を行う。

 5)調達制度の改革

 調達に伴う手続の合理化、透明性の向上、調達費用の低減、ベンチャー企業からの調達の一層の促進などを目指した調達制度の改革を推進する。
 ア) 政府調達の電子化
 非公共事業(総務省及び全府省)
 各府省は、「電子政府構築計画」に基づき、インターネット技術を活用した電子入札・開札を2003年度までに、導入する。
 公共事業(国土交通省及び関係府省)
 各府省は、「電子政府構築計画」に基づき、インターネット技術を活用した電子入札・開札を、原則として、2003年度までにすべての直轄事業において、導入する。  
 なお、国土交通省においては、公共事業支援統合情報システム(CALS/EC) 14を2004年度までに構築するとともに、その後さらなる高度化を図る。
 イ) 情報システムに係る政府調達の改善(総務省、経済産業省、財務省及び全府省)
  各府省は、「電子政府構築計画」中の「情報システムに係る政府調達制度の見直しについて」(2002年3月情報システムに係る政府調達府省連絡会議了承 2003年3月改定)に基づき、総合評価落札方式における加算方式による評価、低入札価格調査制度の活用、競争入札参加資格の柔軟な運用、開発工程管理手法(プロジェクトマネジメント手法)の活用を通じた調達過程の適正な管理等、質の高い低廉な情報システムの調達に必要な取り組みを推進する。
 ウ) ベンチャー企業からの政府調達の拡大(総務省、経済産業省及び全府省)
  IT分野の技術力の高いベンチャー企業の育成を図るため、米国のSBIR 15制度等も参考としつつ、技術力の高いベンチャー企業からの政府調達を拡大するために必要な措置について検討し、2003年度中に結論を得る。

 6)IT能力を有する職員の育成及び外部専門家の活用

 「電子政府構築計画」に基づき、業務分析、情報システム技術等のより高度なIT能力・専門知識を有する職員の育成に努めるとともに、専門知識・経験を有する外部専門家を活用する。
 ア) CIO補佐官の設置(総務省及び全府省)
   各府省は、IT能力・専門知識を有する職員の育成に努めるとともに、2003年12月までに、府省内の業務・システムの分析・評価、最適化計画の策定に当たりCIO及び各所管部門の長に対する支援・助言等を行うCIO補佐官を配置する。CIO補佐官には、原則として、専門的知見を有し、独立性・中立性を有する外部専門家を充てる。
 イ) CIO補佐官等連絡会議の設置(内閣官房、総務省及び全府省)
   CIO連絡会議において、2003年12月までに、専門的知見を有し、独立性・中立性を有する外部専門家を登用するとともに、政府全体の業務・システムの最適化を推進するため、同連絡会議からの指示を受け、当該最適化作業に関し、統一的な実施手順の維持・管理や各府省共通の課題の分析・解決方法の検討を行う体制として各府省のCIO補佐官等からなる「CIO補佐官等連絡会議(仮称)」を設置する。

(3)評価の具体的な考え方

 1) 国民は、質の高い行政サービスを効率よく受けられるようになったか(行政の情報を容易に入手し意見を述べられるようになったかも含む)。    

 2) 企業にとって、官側の電子化の一層の進展により事業活動の円滑化が促進されたか、外部委託や調達制度改革等を通じて事業機会は拡大したか。

 3) 政府行政部門は、住民や企業に対するサービスを低下させることなくIT導入を推進し、業務効率化と住民や企業に対するサービス改善を両立できたか。


1 EBM:Evidence-based Medicine の略。根拠に基づく医療。臨床医が臨床研究などの科学的データをもとに、個々の患者の価値観や意向を十分考慮した上で最適な治療法を選択する医療。

2食品トレーサビリティシステム:生産・加工・流通等の各段階において、食品とその情報を追跡し、遡及できる仕組み。

3生鮮EDI標準:生鮮4品(青果、食肉、水産物、花き)について、共通の考え方に基づき、取引の電子化に必要な商品コード、各取引段階で使用されるメッセージ等を標準化したもの。

4エスクロー:第三者預託。金融においては第三者が金銭や品物の受け渡しの仲介をすることにより、取引の安全性を高めるサービスをいう。

5フィルム・コミッション:自治体等を中心に設立されたロケーション(野外撮影)を誘致する非営利組織。

6WDM:wavelength division multiplexing(波長分割多重)。1本の光ファイバで波長が異なる複数の光信号を伝送することにより、光ファイバ上の情報伝送量を飛躍的に増大させることが可能となる。

7世界貿易機関(WTO):国際貿易を管理し、貿易の自由化を促進する機関。1995年設立。WTOはWorld Trade Organizationの略。本部はジュネーブ。

8世界知的所有権機関(WIPO):工業所有権や著作権等の知的所有権保護の国際的な促進を目的として、知的所有権分野における国際的規範と基準の確立、関係諸条約の管理、知的所有権に関する法的・技術的情報の提供及び開発途上国における知的所有権制度の確立のための援助を行う国連の専門機関。1970年設立。本部はジュネーブ。WIPOはWorld Intellectual Property Organizationの略。

9テレワーク:従来の定まった場所で定められた時間働くという考え方から離れて、効率や成果が最も高まるような場所と時間を選択して、ITを活用して仕事をすること。企業に雇用される「雇用型」と自営形態で行われる「非雇用型(自営型)」に大きく分類される。

10ポータビリティ:「携帯性」。年金のポータビリティとは、転職時等に年金資産を移管できることをいう。

11SOHO:Small Office Home Office の略。非雇用(個人事業主)のテレワーカーなどを指す。

12ポータルサイト:インターネットに接続した際に最初にアクセスするWebページ。分野別に情報を整理しリンク先が表示されている。

13自動車保有関係手続:自動車の保有に伴い必要となる各種の行政手続(検査・登録、車庫証明、納税等)。

14公共事業支援統合情報システム(CALS/EC):公共事業のライフサイクル全般(調査・計画、設計、入札、施工及び維持管理)において発生する各種情報を電子化し、ネットワークを利用して効率的に情報を交換・共有できるシステム。(CALS/EC:Continuous Acquisition and Life-cycle Support / Electronic Commerce)。

15SBIR:中小企業、ベンチャービジネスの技術革新と事業化支援のため政府の研究開発費予算を重点的に配分する制度(SBIR:Small Buisiness Innovation Research)。