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首相官邸 カテゴリー:IT戦略本部
 トップ会議等一覧IT戦略本部e-Japan重点計画-2003 印刷用(PDF形式)


W 横断的な課題

1.研究開発の推進

 (1)基本的考え方

 情報通信分野は技術が発展の原動力となる分野であり、この分野における急速な技術の革新は、今後の高度情報通信ネットワーク社会の発展の基盤であり、日常生活まで含めた幅広い社会経済活動に大きな変革をもたらすとともに、情報通信産業のみならずあらゆる産業の変革を通じて我が国産業の国際競争力の強化をもたらす源泉となる。

 米国では、このような認識の下、IT革命という変革期において長期間にわたる情報通信分野に対する研究開発投資が継続された結果、情報通信分野において世界最高水準の技術力を有している。これに対し、我が国は、特定の個別分野を除いて、情報通信分野の技術水準に関しては米国に大きな遅れを取っている。また、これまで大きな役割を果たしてきた民間の研究開発については、その投資額の日米格差が急速に拡大しており、内容的にも製品開発に重点を移しつつあるため、我が国の競争力強化に向け、リスクの高い研究開発等について国の役割が一層重要となっている。また、研究開発成果を実用に結びつける力も日米格差が拡大しており、基礎研究の成果が十分生かされていない。

 したがって、IT戦略本部と総合科学技術会議との連携の下、国、地方公共団体、大学、民間等の相互の密接な連携を図りつつ、情報通信産業における「国際競争力」を強化するとともに、我が国経済の構造改革を進め経済活性化を図るため、研究開発の実用化による社会・経済への迅速な還元が可能な領域の研究開発が推進されなければならない。同時に、長期的に我が国の「国際競争力」を高めていくとともに「知の創造と活用」を促進するためには、様々な技術の壁を越えるためのブレークスルーを目指した基礎的な研究開発を進める必要がある。

 IT戦略の第二期においては、ネットワークの更なる高速・超高速化に加えて、無線技術との融合や、いつでもどこでも何でもネットワークにつながる状況(ユビキタスネットワーク化)が顕著になり、ネットワーク上のアプリケーションから社会の仕組みまでが大きく変化して行くことが想定される。このような環境下においては、単なる技術開発にとどまらず、常に社会、個人とのかかわり合いを意識しつつ研究開発を推進、強化することが社会の継続的発展にとって重要である。

 これらに鑑み、我が国がこれまで培ってきた世界に誇れる強い技術をより強化する一方、重要性の高まるソフトウェア技術、情報セキュリティ技術、ヒューマンインターフェース(人と機械との接面)技術の研究開発の一層の強化と実証、次世代の高速ネットワークを先導する先端基礎技術の研究開発の継続とテストベッド(実証実験)ネットワークの整備、応用技術の研究開発を推進することが必要であり、以下に具体的施策を示す。

 ただし、情報通信分野の研究開発については、総合科学技術会議で科学技術振興の観点から策定されている「情報通信分野推進戦略」の推進も重要であり、「情報通信分野推進戦略」の重点領域に含まれるものについては、着実に推進することが必要である。また、「e-Japan重点計画−2002」にも掲げていたように、公共分野の情報化に資する研究開発等、市場原理のみでは戦略的・効果的に開発し得ないものについても、引き続き国が率先する形で研究開発することが必要である。

 なお、研究開発の推進にあたっては、以下の点にも留意すべきである。

 情報通信分野における研究開発の進展は、情報通信産業等の知識集約的な産業の創出・拡大のみならず、既存産業の革新のためにも重要であることから、情報通信分野固有の技術に加えて、他分野の技術との融合的な研究開発、及び情報通信技術が社会・人に与える影響等に関する研究開発を進めることも必要である。 

 産学官連携の強化については、産学官の各セクターの役割分担や各研究機関の特性を踏まえつつ、産学官の有機的な連携を促進して、産業界と公的研究機関の共通認識の醸成や、産学官連携のための組織的取り組みの強化を図ることが必要である。

 研究開発システムの改革については、創造的な研究開発を展開していくため、特に競争的な研究開発環境を整備する必要がある。このため、研究者が研究機関の外部から競争的資金を獲得することに加え、研究機関の内部でも競争的な環境を醸成するなど、あらゆる局面で競争原理が働き、個人の能力が最大限に発揮されるシステムを構築することが必要である。更に、競争的な研究開発環境の実現と効果的・効率的な資源配分のためには、研究開発の評価システムについて、評価の公正さと透明性の確保、評価結果の資源配分への反映、評価に必要な資源の確保と評価体制の整備等が行われることが必要である。

 情報通信分野の多くの領域では、研究成果が制度的あるいは実質的(デファクト)な国際標準として認められて実際に活用され、産業競争力の強化にもつながることが重要である。このため、民間における積極的な取り組みを促進するとともに、必要に応じて、国も可能な限り標準化のための支援を行う必要がある。さらに、国と民間企業等との連携の下、積極的かつ主体的に国際標準の獲得に努めていくことも重要である。

 (2)具体的施策

1) 我が国が世界に誇れる強い技術の推進
 モバイル、無線インターネット、光、デバイス、情報家電1 、ITの利活用に資するロボットなど我が国が世界に誇れる強い技術の研究開発を一層推進する。
ア)モバイル技術の開発
a) 第4世代移動通信システム実現のための研究開発(総務省)
 最先端の高速無線インターネット環境やシームレスな通信サービスが可能な第4世代移動通信システムを実現することにより、世界最先端のモバイルIT環境の実現を図る。世界でトップレベルにある我が国の情報通信分野の技術と産業集積を活かして、世界をリードする技術開発を推進するとともに、国際標準化においても我が国が大きく貢献しつつ、2005年までに必要とされる要素技術を確立し、2010年までに実現を図る。
b) 超小型無線端末実現のための技術開発(文部科学省)
 超小型無線端末を実現するため、2006年度までに複数の無線通信端末用LSIを開発するとともに、超小型かつ高密度に実装する技術を開発する。
イ) 無線インターネット技術の研究開発
a) 超高速無線LANの研究開発(総務省)
 屋内等におけるギガビットクラスの通信を可能とするため、2010年度までに超高速無線アクセスの実現を図る。
b) 高周波デバイスに関する技術開発(経済産業省)
 超高速・大容量・多機能の情報処理を担う無線通信技術に資するため、高周波領域で特徴を発揮する窒化物半導体を用いた低消費電力型高周波デバイスの基盤技術開発を2006年度までに行う。
ウ)光技術の研究開発
a)フォトニックネットワーク 2技術の開発推進
i) 1000波のWDM技術 3等の実用化(総務省)
 光多重化技術について、2005年までに光ファイバ1芯あたり1000波の多重化が可能となるようWDM技術の高度化に取り組む。また、光ノード技術4 について、2005年度までに10Tbps5 の光ルーター6 を実用化する。さらに、光ネットワーク技術について、2005年までに電気信号変換することなく光ネットワークを制御・管理する技術を実用化する。
ii) 100Tbpsの電子制御型ノード装置の実現(経済産業省)
 2006年までに、光ファイバ1チャンネル当たり40Gbpsに対応した電子制御型の相互接続装置を実用化するとともに、全体のスループットが100Tbpsの電子制御型7 ノード装置を実現するために必要となるデバイスの実用化の目処を立てる。
iii) ペタビット 8級ネットワーク通信技術の実用化(総務省)
 2005年までにペタビット級ネットワーク通信の基礎技術を確立し、2010年頃を目途に実用化を図る。
iv) 1兆〜1000兆分の1秒単位で光をON/OFFする技術の実用化(経済産業省)
 1兆〜1000兆分の1秒単位での光のON/OFFを実現する技術について、2005年を目途に実現を図り、2010年頃を目途に実用化を図る。
v) 1Tbit/inch2級の高密度等を実現する光記録技術の開発(経済産業省)
 2006年度までに、1Tbit/inch2級の高密度と記録・再生の高速性を実現する光記録技術を開発する。
vi) システムの総合性能を100倍向上させる技術の研究等(文部科学省)
 現状のシステム総合性能を100倍向上させるため、次世代光源等次世代フォトニックネットワークのキーデバイスを実現する基盤技術を2006年度までに開発する。
エ)デバイスの研究開発
a) 次世代半導体デバイス技術の開発(経済産業省、文部科学省)
 2007年度までに、情報通信分野で必要な高速・高信頼情報通信システム等において使用が期待される次世代半導体デバイスを実現し、国際半導体技術ロードマップ 9に示されている微細加工技術に関する技術課題を解決するため、半導体材料・プロセスの基盤技術やEUV露光技術 10の開発(特にEUV光源の開発については、経済産業省と文部科学省の連携により推進する。)等を行う。また、半導体アプリケーションチップ 11の実用化を2005年度までに図る。さらに、半導体に関して温暖化ガス削減など環境負荷の低減に資する技術を2003年度中に開発する。
b) 情報通信基盤を支えるデバイス技術の開発(経済産業省)
 情報通信機器の利便性を飛躍的に向上させることが可能な携帯用燃料電池12 、次世代強誘電メモリ13 及び超大容量記憶装置の開発を2006年までに行う。また、次世代のブレークスルーをもたらす萌芽的領域等への先行的投資として、インクジェット法14 による回路基盤製造技術及び超電導技術等の新しい原理・技術を用いた情報通信技術を2006年度までに開発する。
c) 新原理・新技術を用いた情報通信技術の開発(文部科学省)
 垂直磁気記録方式を用いたTbit/inch2級の超小型・大容量ハードディスク技術や磁気スピン15 を用いた次世代の高機能・超低消費電力メモリデバイス技術を2006年度までに開発する。
オ) 情報家電の研究開発
a) 情報家電のIPv6化に関する総合的な研究開発(総務省)
 2003年までにセキュリティ確保、端末即時認識等のIPv6の機能を拡充・活用する技術や、インターネットの対象を情報家電などパソコン以外の多様な機器に拡大するための技術を開発する等の取り組みにより、2005年までにすべての国民が、場所を問わず、自分の望む情報の入手・処理・発信を安全・迅速・簡単に行えるIPv6が実装されたインターネット環境を実現する。また、ブロードバンド時代に向けて必要となる端末機器等の通信・放送に係る研究開発、実証実験等を促進する。
b) 情報家電の普及のための実証実験(経済産業省)
 2005年までに、在宅勤務、コンテンツサービス、無線タグ利用等国民のニーズに応えるべき分野において、情報家電の有効性を実証し、我が国IT産業の国際競争力強化を図る。
カ) ネットワークロボットの実現に向けた情報通信技術の研究開発(総務省)
 ユビキタスネットワーク技術とロボット技術が融合したネットワークロボットの実現に向けて、必要な情報通信技術の研究開発を行い、2008年度までに必要な要素技術を確立する。
2) ソフトウェアの研究開発
 基盤ソフトウェア、ソフトウェアの高信頼化に関する研究開発を推進する。
ア) 基盤ソフトウェアに関する研究開発
a) 次世代の基盤的なソフトウェア技術開発の強化(経済産業省)
 我が国における最先端の取り組みと知見の結集により、世界市場を席巻しデファクトスタンダード(実質的な標準)を確保するような次世代の基盤的なソフトウェア技術開発の抜本的強化を図るため、2006年度までに世界市場で通用するソフトウェアを10本開発する。
b) ミドルウェアの開発
i) 高信頼・高安全なサービス提供のためのミドルウェア開発(経済産業省)
 ネットワークで接続された複数のサーバや記憶装置を、あたかも一つのコンピュータのように稼動するグリッドコンピューティング(以下「グリッド」という。)により、ビジネス利用に耐えうる高信頼・高安全なサービスを提供するためのミドルウェア開発を2005年度までに行う。
ii) 異なるグリッド環境を連携する基盤ソフトウェアの開発及び実証(文部科学省)
 研究開発分野におけるデータ共有中心の環境などの異なるグリッド環境を連携して一体的な運用を可能とする基盤ソフトウェアの開発及び実証を2006年度までに行う。
イ) ソフトウェアの高信頼化に関する研究開発
a) 高信頼、高品質なソフトウェア等の実現に向けた研究開発(経済産業省)
 高信頼、高品質なソフトウェアの実現及びその開発工程の生産性向上に向け、ソフトウェア開発工程においてソフトウェア工学からみて今後重要となる項目の抽出及び研究開発を2006年までに行う。また、ビジネスの基盤として必要となる基盤的なソフトウェアの開発やオープンソフトウェアを活用しやすい環境の整備等を通じて、高い信頼性・安全性の実現など情報通信システムを構築するためのソフトウェアの開発を2006年度までに行う。
b) 高信頼ソフトウェア作成等の基盤となるソフトウェアの開発(文部科学省)
 高度情報通信社会の基盤となる生産性・信頼性の高いソフトウェアの作成・評価・支援や、動的に、また自律的に情報の蓄積・検索等を行うソフトウェアの開発を2007年度までに行う。
3) インターネットの超高速化技術の開発及びテストベッド(実証実験)ネットワークの整備
 100GbpsからTbpsを視野に入れたインターネットの高速化技術に係る基礎開発を推進する。また、研究開発テストベッドネットワークを全国規模で整備し、ユビキタスネットワーク時代に向け超高速インターネットを活用する応用技術の研究開発と成果の基礎開発への還流を推進する。さらに、アジア大洋州で共同研究体制を進める国際テストベッドネットワークの整備を推進する。
ア) インターネットの高速化技術の基礎開発
a) テラビット級スーパーネットワークの開発(総務省)
 現在のネットワークの1万倍の処理能力とモバイルも含めた様々なシステム等からの3万倍の接続処理を実現するテラビット級ネットワークの実現に向けた研究開発を総合的に行い、2005年までにスーパーブロードバンドネットワーク技術の実現を図る。
b) 超高速・高機能ネットワークに必要となる要素技術の開発(総務省)
 光・電磁波と材料・物質の両面から、新機能の発現や極限的な光制御・計測に関する研究、数100nm16 の素子作成のための物質制御を実現する新機能・極限技術を2005年度までに開発する。
 また、ナノ技術 17やバイオ 18技術の優れた特性を活かした超高機能ネットワーク技術、知識獲得による自律ネットワーク進化技術19 等の研究開発を総合的に行い、次世代の高度情報通信ネットワークの構築に必要な要素技術の実現を2008年度までに図る。
c) 次世代プラットフォーム 20技術の研究開発(総務省)
 ブロードバンド時代に向けたネットワークの高度化、高品質化等に資する次世代プラットフォーム技術を2005年度までに実現する。
d) CATVインターネットの超高速化技術の実用化(総務省)
 現在30Mbps以上の超高速インターネット接続が行われているCATVインターネットの更なる高速化技術、FTTH化技術等について、2003年度中に要素技術を確定する。
イ) テストベッドネットワークの整備の推進
a) 次世代の超高速、高機能な研究開発テストベッドネットワークの整備(総務省)
 次世代の高速ネットワークを先導する先端技術や、超高速インターネット等を活用する応用技術の研究開発・標準化を促進するため、全国の主要研究拠点を結ぶ次世代の超高速、高機能な研究開発テストベッドネットワークを2005年度までに整備する。
b) アジア・ブロードバンド計画の着実な推進(総務省及び関係府省)
 <後掲 W.2.ITを軸とした新たな国際関係の展開 (2)2)>
4) ユビキタスネットワークに関連した研究開発
 IPv6によるインターネット技術の開発と共に、家庭内外の情報機器や電子機器が全て相互につながる環境を想定した、アプリケーション技術の開発を推進する。また、家庭内外のネットワークの発展を前提とした、セキュリティや認証に関する技術、個人情報の保護のための研究開発を推進する。さらに、健康、ストレス等にも配慮したヒューマンインターフェース技術の開発と実証を行う。
ア) 安全便利を実現できる環境の整備(総務省)
 <前掲 U.3.生活 (2)1)イ)c)>
イ) 家庭内外の電子機器等が相互につながる環境を想定した研究開発
a) 次世代ネットワークシステムの実現(総務省)
 1つの端末にとらわれず、いつでもどこでも接続できる、十分な伝送容量を備えたネットワーク環境の実現を目指し、メディアハンドオーバー 21技術、フォトニックネットワーク基礎技術、無線セキュリティプラットフォーム技術等を2005年度までに実現する。
b) 複合型携帯端末等の研究開発(国土交通省)
 スムーズな移動環境の実現のため、携帯電話とICカードの融合や複数通貨対応機能の導入により、交通に係る各種支払いに利用できる複合型携帯端末等の研究開発を国際的な技術動向を踏まえつつ2005年度までに行う。
ウ) 安全な情報通信を実現するネットワーク基盤技術に関する研究開発(総務省)
 ユビキタスネットワーク環境において、確実な本人確認や接続される情報家電等の様々な電子機器の安全な制御を実現する基盤技術の研究開発を2006年度までに行う。
エ) ヒューマンインターフェースの研究開発
a) ヒューマンコミュニケーション技術の研究開発(総務省)
 情報通信システムと人間が接するヒューマンインターフェースやコンテンツ基盤技術を人間中心の立場から見直し、新たな技術を確立するとともに、モデルシステムを2005年度までに実現する。また、人間が情報をやり取りする際の特質に関する基礎的な研究開発及び、バリアフリー通信技術、言語処理・伝達技術22 、仮想空間構築技術23 の3つの技術を柱とした基盤技術を2005年度までに実現する。さらに、人間の高次知的機能の脳内メカニズムの解明を通じた人に優しい情報通信インターフェース技術の基礎技術を2005年度までに実現する。
b) 次世代ディスプレイの開発(経済産業省)
 情報と人間との重要なインターフェースとして、大型壁掛けディスプレイ等を可能とする液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイや、薄くて折り曲げ可能なディスプレイを実現する有機EL 24等に関して、高機能・低消費電力化等を実現するために必要な技術の開発を2006年度までに行う。
c) 情報家電に関するヒューマンインターフェースの開発(経済産業省)
 情報家電の普及促進のため、利用者のニーズに適合したヒューマンインターフェースとして、学習機能付加型の進化するインターフェース、状況可変型インターフェース 25等の開発及び実証実験を2003年度中に行う。
5) 電子ID技術に関連した研究開発
 電子タグのハードウェア技術の研究開発及び実証実験を推進する。
ア) 電子タグのネットワーク高度利活用技術等の研究開発(総務省及び関係府省)
 ユビキタスネットワーク時代に対応可能な電子タグについて、電子タグとネットワークとの融合技術等ネットワークの高度化技術やその応用技術等の研究開発を行い、2005年度までに技術の実用化を図る。
イ) 商品トレーサビリティシステムの普及を目指した電子タグの開発・実証(経済産業省及び関係府省)
 電子タグを活用した商品のトレーサビリティシステムを普及させ、サプライチェーンの全体最適化を図るため、電子タグの要素技術やデータ受信・処理技術等の開発及び技術の実用化や運用体制の整備のための実証実験を2005年度までに行う。
ウ) 物流の効率化等を目指した電子タグの開発・実証(国土交通省及び関係府省)
 空港における手荷物輸送等の物流効率化等、コンテナ貨物等のセキュリティ向上を図るため、使用環境を考慮した電子タグの技術開発・実用化の検証等を2005年度までに行う。
6) 高精細映像等に関する研究開発
 対話型のインターネットテレビ会議やインターネットテレビ電話機器等の高精細映像相互利用技術に関する研究開発を推進する。また、デジタル放送の高度化の研究開発を推進する。
ア) 次世代高機能映像技術の研究開発(総務省)
 映像情報の高度化・高機能化に必要な映像相互利用技術等の研究開発を行い、2003年度中に次世代高機能映像技術26 を実現する。
イ) 放送のデジタル化に対応した研究開発(総務省)
 多様で、簡便、迅速、円滑な放送サービス等を実現するための放送のデジタル化に対応した未来型放送システム、移動中でも大容量の情報入手が可能となる地上デジタル放送方式の高度化の研究開発等を実施し、2005年度までに必要な要素技術を確立する。
7) 新技術を用いたシステムの安全性等に関する課題等の調査研究
 電子タグのような新しい技術を用いた情報システム全体の安全性・信頼性などに関する課題や必要な社会的規範の形成に向けて調査研究を推進する。
ア) ユビキタスネットワーク時代の電子タグに関する課題の調査(総務省)
 ユビキタスネットワーク時代の電子タグに求められる要件を明確化し、ネットワーク高度利活用に向け、情報システム全体の安全性・信頼性等の視点を考慮しつつ、取り組むべき課題等の調査を2003年度中に行う。
イ) 電子タグ等の情報管理に必要な社会的規範等に関する調査研究(経済産業省)
 電子タグに書き込む情報の管理について、個人情報の取り扱いを初めとするプライバシー、セキュリティ等に関する課題や必要な社会的規範について、2004年度までに調査研究を行う。
8) 研究開発を一層成果のあるものとするための方策
 上記の研究開発を一層成果のあるものとするため、研究開発に当たっては産学官連携を図るとともに、研究成果の社会移転及び国際標準化を推進する。また、最先端のユビキタスネットワーク環境の実証実験を利用者参加のもとに推進し、端末、相互接続性、相互運用性や利用性の飛躍的な向上を目指す。
ア) 産学官連携及び研究成果の社会移転推進のための方策(文部科学省)
 特許情報とそれに関連した技術情報を研究者が容易に検索できる環境を整備するため、論文等の書誌情報と特許情報との統合検索システムの整備に向けてシステムの仕様について2003年度中に検討する。
イ) ユビキタスネットワークサービスの実用化(総務省)
 全ての機器が端末化する遍在的なネットワークを構築し、ネットワークがすみずみまで行き渡った社会(ユビキタスネットワーク社会)を実現するため、ネットワーク利用の利便性・容易性の向上を図るために、多種多様な無線通信サービスを利用者が意識することなく柔軟に選択して利用でき、そのネットワークに接続された多種多様で、極めて多数の端末を安全で、リアルタイムかつ自律的に制御・協調できるネットワーク技術を2005年までに実用化する。
 また、これらの技術を総合的に活用するためのネットワーク利活用技術等を2007年度までに実用化する。
ウ) 国際標準に向けた研究開発の推進(総務省)
 <後掲 W.2.ITを軸とした新たな国際関係の展開 (2)Eイ)>

2.ITを軸とした新たな国際関係の展開

(1)基本的考え方

 世界的規模でインターネットの普及、社会の情報化が急速に進んでいる中で、現実の国際的情報流通は未だ欧米偏重である。この背景には、通信インフラ、技術、人材等の面における先行的取り組みによる蓄積の結果として総合的な情報創造力・発信力を欧米、特に米国が高水準に有しているからだと見ることが出来る。これに対してアジア地域は、大規模、集中的なIT投資が行われなかったこと等を背景に全体としてIT社会形成に立ち遅れが目立ち、かつ地域内におけるデジタル・ディバイドも看過できない状況にある。ただその一方で、中国やインド等巨大な潜在市場を抱え、またモバイルインターネットやDSL等分野によっては既に世界最先端の地位を占める国もあるなど、潜在的な発展性にはきわめて大きいものがある。

 この現状を踏まえ、我が国を含めたアジア諸国が豊かなIT社会の恩恵を享受し、新たな発展軸を構築してゆくためには、我が国がリーダーシップを発揮し、アジアにおけるブロードバンドの普及と利活用の推進を図るとともに、アジア諸国と二国間、または多国間における重層的な協力関係を木目細かく構築していくことを通じて、世界の情報流通の不均衡を改善し、アジア全体として世界の情報拠点(ハブ)を目指すことが重要である。これを実現する具体的目標として2008年までにアジアの10カ国以上と情報通信分野における協調関係の構築を推進すること、アジア地域と北米、欧州の情報流通量が共に欧米間の情報流通量と同程度になることを目指す。

 我が国がアジア全体の均衡あるIT社会の発展に寄与することにより、アジアが世界のハブになるためには、我が国自身が情報創造拠点として求心力を持ち、世界のハブになることが必要である。これらは、国内の各種施策を引き続き強力に推進するとともに、国際的な取り組みを体系的に強化することにより始めて達成可能なものであり、こうした取り組みがあってこそ、真の意味で世界最先端のIT国家となることが可能となるのである。

(2)具体的施策

1)アジアITイニシアティヴの推進(内閣官房及び関係府省)
 アジア諸国と我が国との間でIT分野における総合的・包括的な協力関係を二国間もしくは多国間の枠組みを用いて構築する。2008年までに協力関係の枠組みについて10カ国以上と合意形成を行う。
2) アジア・ブロードバンド計画の着実な推進(総務省及び関係府省)
 アジアにおけるブロードバンド環境を整備するため、アジア・ブロードバンド計画(2003年3月28日制定)に基づき、ブロードバンドに係るネットワーク・インフラの整備のための施策、ブロードバンド普及のための関連施策のそれぞれを、2005年度までに重点的に講じていく。
3) コンテンツ国際流通の積極的推進
 コンテンツの円滑な国際的流通を確保するためのルール作りを行うとともに、コンテンツにかかる知的財産権の適正な確保等を推進する。これにより、世界の主要都市において、放送番組を含む最新の日本のコンテンツを、放送、ケーブルテレビ、インターネット等様々な手段を介して、特に速報性が求められるものは、できる限りリアルタイムで視聴可能化するなど、コンテンツの積極利用を促進していく。
ア) 海賊版対策に向けた国際機関の積極活用(文部科学省、外務省) 
 <前掲 U.5.知 2)ウ)c)B)>
イ) WIPOにおける著作権についての国際的なルールの構築(文部科学省、総務省、外務省)
 <前掲 U.5.知 2)ウ)c)E)>
ウ) 日中・日韓著作権関係協議(文部科学省) 
 <前掲 U.5.知 2)ウ)c)C)>
エ) アジア地域著作権制度普及促進事業(文部科学省)
 <前掲 U.5.知 2)ウ)c)D)>
オ) コンテンツ産業の海外展開(経済産業省)
 <前掲 U.5.知 2)ウ)c)i)>
カ) アジア地域における海賊版被害の実態調査(文部科学省、経済産業省、外務省)
 <前掲 U.5.知 2)ウ)c)A)>
キ) デジタルアーカイブ化の推進(内閣府、総務省、文部科学省及び関係府省)
 <前掲 U−5.知3)ア)@)>
ク) 知的財産保護に係る体制の整備(警察庁)
 2004年度までに、インターネットを利用した知的財産権侵害事犯に関して、世界規模での連携の下、アジア諸国を始めとする各国取締機関との情報交換、権利者団体等と連携した広報・啓発活動、装備資機材の増強等、アジアの主要先進国として、知的財産権保護に十分な体制の強化を行う。
4) 国際電子商取引基盤の整備とそれに伴う新しい社会インフラの導入
 国際的な商取引の電子化が円滑に進展するよう、データ様式の標準化、電子的取引に関する安全性の確保等を行う。
ア) ドメイン名をとりまく諸問題の解決(総務省、経済産業省)
 2003年度も引き続き、ドメイン名に関する我が国のインターネット利用者の要望をインターネット制度整備に反映させるために、多言語ドメイン名の安定的な導入、ドメイン名における国名の保護等、ドメイン名をとりまく諸課題の解決に向けて、ICANN、WIPO等への働きかけを行う。
イ) 電子署名及び認証業務に関する国際的な連携の推進(総務省、法務省、経済産業省)
 <前掲 V.3.電子商取引等の促進 (3)1)ア)c)>
ウ) アジア域内で運用可能な公開鍵基盤(PKI)の整備(経済産業省)
 <前掲 V.3.電子商取引等の促進 (3)1)ア)d)>
エ) 貿易金融EDIとアジア諸国の政府手続用システムとの連携(経済産業省)
 <前掲 V.3.電子商取引等の促進 (3)1)イ)e)>
オ) アジア地域におけるebXMLの普及(経済産業省)
 <前掲 V.3.電子商取引等の促進 (3)1)イ)c)>
カ) 輸入基盤及び国内物流EDI基盤の国際標準化(経済産業省、国土交通省)
 <前掲 V.3.電子商取引等の促進 (3)1)イ)f)>
5) IT人材の開発と国際的人材流動基盤の整備
 アジア地域の豊富な人材がその能力をアジアで発揮し得る環境の整備等を行う。
ア) ITスキルの国際標準化(経済産業省)
 <前掲 V.2.人材の育成並びに教育及び学習の振興(3)1)ウ)a)@)>
イ) アジアにおけるe-Learningの促進(経済産業省)
 <前掲 V.2.人材の育成並びに教育及び学習の振興(3)1)ウ)b)>
ウ) 外国人受け入れ関連制度の見直し(法務省)
 <前掲 V.2.人材の育成並びに教育及び学習の振興(3)1)ウ)c)>
6) IT関連技術の国際交流・国際標準化活動の推進
 国際的なレベルでの技術交流やその標準化を推進することにより、高度なIT技術の普及・拡大を図る。
ア) 国際情報通信ハブ形成のための高度IT共同実験(総務省)
 我が国の国際情報通信ハブ化を促進するため、日本・中国・シンガポールで国際共同実験を実施し、2004年度までに、デジタルコンテンツの国際間取引を可能とする技術の実用化を図るとともに、2005年度までに、国際IX形成のための基盤的技術の研究開発、IPv6を含む国際間ブロードバンド技術の確立・普及及び多言語環境等アジアの特性に配慮したデジタルコンテンツの国際間電子商取引基盤の形成を行う。
イ) 国際標準に向けた研究開発の推進(総務省)
 情報通信分野において、IETF、ICANNなどの民間標準化及び運用団体、国際電気通信連合(ITU)等における我が国及びアジア・太平洋地域による連携・標準提案を推進し、2005年度までに20件程度の標準提案を行う。
ウ) IPv6に対応した情報通信機器共同研究(経済産業省)
 IPv6に対応した高性能のルーター等情報通信機器を用いた共同研究、実証運用を実施することにより、IPv6に対応した情報通信機器の普及、業界標準化を促進するため、2003年度より2004年度までに中国国内においてIPv6に対応した情報通信機器を用いたアプリケーション等共同研究、実証運用を実施し、高い実用性を検証する。
エ) セキュアなICカードに関する国際標準モデルの構築(経済産業省)
 ISOにおけるICカードの国際規格の策定に参画し、2003年度までにカードの電磁的性状等に関する国際規格の成立を目指すとともに、日本企業と海外の企業との間の交流・協力を促進し、セキュアなICカードシステムの標準的なモデルの構築を、2003年度を目途に国際的に進める。
オ) アジア・ブロードバンド衛星基盤技術の研究開発(総務省)
 衛星系ネットワークと地上系ネットワークが協調して信頼性・利便性の高い次世代の情報通信基盤を形成する環境整備を促進するため、次世代の通信方式であるIPv6に対応するブロードバンド衛星基盤技術をアジア諸国と共に研究開発し、2005年度を目途に当該基盤技術の標準化を図る。
カ) 日本学術振興会の拠点大学交流事業を通じた日韓の次世代インターネット研究(文部科学省)
 日本学術振興会が実施している拠点大学交流事業により、日韓において実施の中心となる拠点大学とその他協力大学の連合組織を設けることで、アジアにおける国際大容量ネットワークに関する共同研究を2003年度より4年間実施する。
7) IT政策・制度支援ネットワークの運用(総務省、外務省)
 2002年5月運用開始した同ネットワークを用い、2004年度までに国際的デジタル・ディバイドに関する情報提供、IT専門家グループと途上国のIT政策担当者とのオンラインディスカッション、IT関連プロジェクトの共有をウェブサイト上で実施する。
8) 沖縄における情報通信産業の振興(内閣府、総務省、経済産業省)
 沖縄においては、政府および県の連携・協力により、多数の情報通信関連企業の新規進出が実現する中で、観光に次ぐ新基幹産業として情報通信産業が発展してきている。今後、更なる集積促進を目指し、以下の施策を総合的に推進する。
ア) 政府系金融機関のベンチャー出資機能と民間ベンチャーキャピタルとの協調・連携の枠組みを2003年度中に確保し、企業誘致に平行して情報通信分野での内発的な企業育成に取り組む。
イ) ユーザーサイドのIT利活用に焦点をあてた施策の推進を図るべく、2003年度を初年度として、電子商取引の普及促進等の具体的事業を開始する。
ウ) 2002年度から開始した高度なITを活用できる人材を育成するための事業を2006年度までの5ヵ年計画事業として引き続き強力に推進する。
エ) 沖縄国際情報特区構想を踏まえ、以下の施策についても2003年度以降引き続き積極的に推進する。
a) 情報通信分野での国際的な企業活動の沖縄での集積促進に努める。
b) IT企業等の誘致を図るための共同利用型施設を整備する。
c) 沖縄の均衡ある発展に着眼したIT施策の更なる発展・充実に努める中で、県、県内市町村と連携し、離島を含め、ハード・ソフト両面にわたる情報通信インフラの整備を推進する。

3.デジタル・ディバイドの是正

 高度情報通信ネットワーク社会においては、すべての国民がインターネット等を容易にかつ主体的に利用し、個々の能力を創造的かつ最大限に発揮出来る環境が実現されることが重要である。このため、地理的な制約、年齢・身体的な条件等に起因する情報通信技術の利用機会及び活用能力の格差の是正を積極的に図っていくことが必要である。

(1)地理的情報格差の是正

 地理的な制約による情報通信技術の利用機会及び活用能力の格差が生じないよう、過疎地域、離島等の条件不利地域において、その活性化を図るためにも、必要に応じて、関連施策と連携し、情報通信基盤の整備や情報通信技術を活用した公共サービスの充実等を推進する。

1) 地域情報通信ネットワーク基盤の公的整備推進
ア) 地域公共ネットワークの整備推進(総務省)
 <前掲 V.1.世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成 (3)1)ア)b)>
イ) 高速・超高速インターネットの地理的格差の是正(総務省、農林水産省)
 <前掲 V.1.世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成 (3)1)イ)>
ウ) 移動通信用鉄塔施設の整備(総務省)
 <前掲 V.1.世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成 (3)1)イ)>
エ) CATVネットワークの整備推進(総務省)
 高速・超高速インターネットに対応するケーブルテレビ施設の普及・高度化を促進するため、地方公共団体等への支援を引き続き行う。
2) 民間事業者による高速・超高速ネットワークインフラ整備支援(総務省)
 <前掲 V.1.世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成 (3)1)ア)b)>
3) 情報通信技術を活用した公共サービスの充実
ア) 医療分野におけるサービスの充実(厚生労働省)
a) 遠隔医療のシステム整備支援
 <前掲 U.1.医療 (2)F>
b) 電子カルテの普及促進
 <前掲 U.1.医療 (2)D>
c) 保健医療分野における認証基盤の整備及び電子カルテのネットワーク転送等の容認
 <前掲 U.1.医療 (2)1)>
イ) 学習・教育分野におけるサービスの充実(文部科学省)
a)ITを活用した遠隔教育の推進
<前掲 U.5.知 (2)1)>

(2)年齢・身体的な条件の克服

 年齢、身体的な条件により情報通信技術の利用機会及び活用能力の格差が生じないよう、地方公共団体等における施設のバリアフリー化、障害者や高齢者、子ども等に配慮した情報提供等のバリアフリー化や情報通信関連機器・システム等の開発を推進する。
1) 情報提供のバリアフリー化
ア) 行政の情報提供サービス等におけるアクセシビリティの確保
a) 電子政府におけるアクセシビリティの確保(全府省)
 電子政府の構築に当たっては、電子政府構築計画に基づき、ユニバーサルデザインの確保やマルチアクセス環境の整備等により、高齢者、障害者の使いやすさにも十分配慮されたシステムやホームページを提供するよう努める。
b) 地方公共団体の公共サービスにおけるアクセシビリティ確保支援(総務省)
 地方公共団体のホームページや各種公共サービスにおけるアプリケーションやIT関連機器・システムについて、実態調査を含めたアクセシビリティチェック項目の洗い出しと評価方法の検討を行い、2005年度までに、評価方法、評価体制のモデルを確立する。
c) 地上デジタル放送の利活用に関する研究(総務省)
 <前掲 V.4.行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進 (3)1)イ)d)E)>
イ) 視聴覚障害者が健常者と同様に放送サービスを享受できる環境の整備
a) 視聴覚障害者向け放送ソフトの自動制作技術の研究開発(総務省)
 2003年度までに、ほぼすべての録画番組を対象として、音声がすべて文字化された原稿がない場合でも短時間で自動的に字幕を制作・付与できるシステムを開発する。字幕番組の制作の効率化、経費抑制を可能とすることで、視聴覚障害者向け放送時間の拡大に資する。
b) 字幕番組、解説番組及び手話番組制作に対する助成(総務省)
 字幕番組、解説番組及び手話番組を制作する公益法人に対して、制作費の一部を助成し、視聴覚障害者向け放送の充実を図るとともに、放送事業者の協力も得て、2007年までに字幕付与可能な全ての放送番組に字幕が付与されることを目指す字幕放送の普及目標達成に向けた取り組みを促進する。
2) 公共空間のバリアフリー化
 障害者、高齢者等が利用しやすい案内標識、信号機等を交差点等に設置するとともに、携帯端末等を活用した、歩行の円滑化及び信号交差点における安全性確保のためのシステムの開発・普及と標準化を関係省庁の適切な連携の下推進する。
ア) 障害者、高齢者等の安全で円滑な移動を支援するシステムの研究開発・導入及び標準仕様策定(警察庁、経済産業省、国土交通省)
 歩行者のための高度道路交通システム(ITS)の研究開発を推進するとともに、歩行者等支援情報通信システム(PICS)について、2003年度以降、視覚障害者等の利用の多い信号交差点等を中心に順次導入する。また、これらのシステムで共通に利用でき、障害者等に使いやすい携帯端末等に関する開発・実証実験を2005年に愛・地球博において行い、2006年度までに標準仕様を策定する。
3) 学校のバリアフリー化(文部科学省)
ア) 障害のある子どもたちへの対応
 <前掲 V.2.人材の育成並びに教育及び学習の振興 (3)3)カ)>
4) 障害者、高齢者、子どものための情報通信関連機器・システム、サービスの開発等
 障害者や高齢者が容易に利用できる情報通信関連機器・システム(パソコン等)、サービスの開発・普及等を促進する。また、障害者や高齢者が簡単にインターネット利用等をできるようにする技術等の研究開発や、障害者、高齢者にとってアクセシブルなホームページの普及を積極的に促進するなど、情報バリアフリー化を推進する。また、IT環境の整備にあたっては、子どもに配慮するとともに、子どもに親しみやすく安全なものとするよう留意する。
ア) 高齢者・障害者向け通信・放送サービスの提供・開発等の促進(総務省)
 高齢者・障害者の利便の増進に資する通信・放送サービスの開発・提供、又はこうしたサービスの充実に資する通信・放送技術の研究開発を行う者に対し、その実施に必要な資金の一部を助成する。
イ) ネットワーク・ヒューマン・インターフェース技術の研究開発(総務省)
 複雑な操作やストレスを感じることなく、誰もが安心して安全に情報通信を利用できる環境を実現するため、ネットワーク・ヒューマン・インターフェースについての総合的な研究開発を推進する。ネットワークと連携した携帯型の多言語音声翻訳システム、映像コンテンツの光刺激等に対する生体安全技術等の研究開発を産学官連携により推進し、2005年度までにこれらの技術を確立する。
ウ) ヒューマンコミュニケーション技術の研究開発(総務省)
 <前掲 W.1.研究開発の推進 (2)4)エ)a)>

4.社会経済構造の変化に伴う新たな課題への対応

(1) 雇用問題への対応

 IT革命の雇用面に与える影響としては、企業の情報化投資による業務の効率化等に伴い雇用削減が行われる可能性がある反面、IT関連ビジネスの成長により新たな雇用が生み出される等プラス効果も期待される。このため、IT関連も含めたベンチャー企業の創出・育成につき、資金調達及び人材確保を円滑化するための施策や、技術力を持ったベンチャー企業を創出するための施策を総合的に推進し、IT関連の良好な雇用機会の確保を図ることが必要である。さらに、IT革命の進展に伴い、職業能力に関するミスマッチの発生が懸念されることから、働く人すべてがIT化に対応できるようにするとともに、IT関連分野等における良好な雇用機会の創出と、それら雇用増が見込まれる分野への円滑な労働移動が図られるよう、以下に掲げる施策を推進し、雇用問題に的確かつ積極的に対応する。

 なお、ITは、労働市場に3つの変化をもたらす可能性がある。第一に、テレワークなどの働き方による就業形態の多様化をもたらし、労使双方の選択肢を増やす。第二に、労働市場の機能の強化をもたらし、失業なき労働移動の実現を含め需給調整機能の円滑化に寄与する。第三に、ITスキルの習得に係る企業及び個人の人的投資のインセンティブを高める。労働市場の制度設計においては、これら変化に留意することが肝要である。

(2)その他の課題への対応

 IT革命が進展するに伴い、雇用問題以外にも、個人の孤立化や人間関係の希薄化、更には有害情報の氾濫等を通じた青少年の健全育成への影響や、ハイテク犯罪や違法情報の流通等の問題が生じることが懸念されることから、こうした問題についても的確かつ積極的に対応する。

1) ITに関する職業能力の開発
ア) IT職業能力習得機会の確保・提供
  <前掲 V.2.教育及び学習の振興並びに人材の育成 (3)1)イ)>
イ) 高度なIT社会構築をリードする人材育成のための職業訓練の展開(厚生労働省)
  ITとものづくりを融合した分野における高度な技術・技能者、高度な情報通信技術者やeビジネスに従事するホワイトカラー等の高度な人材育成を図る先導的な職業訓練を展開する。
ウ) IT分野の能力開発に係る情報提供・相談等(厚生労働省)
  全都道府県に「地域IT化能力開発支援センター」を整備し、IT化に対応した職業能力開発施策の展開に係る連絡調整や労働者等に対する情報提供・相談等を行う。
2) 雇用機会の創出と円滑な労働移動の促進
  <前掲 U.6.就労・労働>
3) テレワーク・SOHOの導入促進
ア) 企業による適正な労務管理下でのテレワーク導入支援(厚生労働省)
  <前掲 U.6.就労・労働 (2)2)ア)a)>
イ) 企業によるセキュリティの高いテレワーク環境導入支援(総務省)
  <前掲 U.6.就労・労働 (2)2)ア)b)>
ウ) 情報通信を活用したテレワーク・SOHO支援方策の検討(総務省)
  テレワーク・SOHOを推進するため、テレワーク・SOHOの就労環境等の実態を把握するとともに、SOHO等の会社設立運営、仕事の受発注・事業提携及びテレワーカーの人材育成等に対する情報通信を活用した支援方策等に関する調査研究を行い、併せてシンポジウム等の開催によりその成果の周知・広報活動を2006年度まで実施する。
エ) SOHOコーディネーターの育成支援(経済産業省)
  クライアントとSOHO、またはSOHO同士を結びつけて横型ネットワーク組織(バーチャルカンパニー)を形成するコーディネーターとなりうる高度専門人材の育成支援を行う。2004年度中に、クライアントとSOHOをつなぐマッチングノウハウのほか、労働法、不正競争防止法等の法的知識、ヒューマンリソースマネジメント知識、マーケティング知識、IT知識等、必要とされるスキル基準の策定や、これらを習得するためのカリキュラム・教材開発等を行い、その成果をインターネット等を活用して広く公開・提供する。
1) 青少年の健全育成
 <前掲 V.2.教育及び学習の振興並びに人材の育成 (3)3)イ)a)iv)及びd)>
2) 違法行為、違法・有害情報の流通への対応
 <前掲 V.5.高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性 (3)3)キ)>

5.国民の理解を深めるための措置

 国民のITに関する理解を増進する上で、広報活動は重要な役割を担っている。このため、先導的取り組みによるITの利活用の推進、電子政府の構築等による「世界最先端のIT国家」の実現を政府の重点広報テーマとして位置づけて広報活動を一層充実させる。

 また、IT戦略の第二期においては、これまで以上に民が主導的に行動することが重要であり、このため政府は、「e-Japan戦略U」の展望の共有と民間の行動の呼びかけを積極的に行っていく(「e-Japan戦略U」W.方策一覧表)。

 さらに、実証等を行う各施策の実施にあたっては、ユーザーの参加を含めた実環境における実証等を通じて、新たな技術の社会的な受容に係る課題のフィードバックを適切に行うことも必要である。

 このような取り組みの一環として、2005年開催予定の「愛・地球博」において、ITの実用を促進するため、ブロードバンド時代、ユビキタスネットワーク時代に対応したインターネット技術、携帯情報端末技術、映像情報技術(バーチャル・リアリティーを含む)をはじめとした情報関連技術の実用化や最先端技術の実験を行う。

 我が国が、世界最先端のIT国家を目指すためには、このような国民のITに関する理解の増進、国民とのIT戦略の展望の共有、最先端の技術の実用化等を図っていくことが重要であり、政府はこうした国民の理解を深める措置についても積極的に取り組んでいく。


1 情報家電:簡単なインターフェースを利用して、インターネットに直接接続することが可能となる家庭用電気製品のこと。

2フォトニックネットワーク:基幹網やアクセス網だけでなく、ネットワークの端から端まですべてのデータ伝送等を光化して超高速化する技術。

3 WDM技術:wavelength division multiplexing(波長分割多重)技術。1本の光ファイバで波長が異なる複数の光信号を伝送することにより、光ファイバ上の情報伝送量を飛躍的に増大させることが可能となる。

4光ノード技術:ネットワークの接続点(ノード)における様々な伝送処理において、光信号を電気信号に変換することなく光のままで行う技術。

5Tbps:Tera bits per secondの略。10の12乗のbps。

6光ルーター:ネットワークの接続点(ノード)において伝送経路を選択する際に、光信号を電気信号に変換することなく経路を決める装置。

7電子制御型:光信号を電気信号に変換するもの。

8ペタビット:Peta bits per second。10の15乗のbps。

9国際半導体技術ロードマップ:国際半導体技術ロードマップ(ITRS:International Technology Roadmap for Semiconductor)は、15年先までの半導体製造技術の進展の予測をまとめたもの。米国、日本、欧州、韓国、台湾のエキスパートにより作成され、世界的にコンセンサスとなっている。

10EUV露光技術:EUV光(Extreme Ultra Violet:波長13〜14nmのX線に近い極端紫外線)を用い、45nm以細の微細加工技術に有望とされている露光技術。

11アプリケーションチップ:特定用途向けの応用チップ。

12携帯用燃料電池:携帯電話やノートパソコン等の携帯情報機器に用いる携帯用電源。

13次世代強誘電メモリ:強誘電体特性を利用した、電源を切っても記憶内容が消えない不揮発性メモリ。SRAM並みの高速性を併せ持つ。

14インクジェット法:金属インク等を小さい孔の空いたノズルから吐出し、直接描画する方法。

15磁気スピン:電子の性質の一つで、磁力の元になるもの。

16nm:ナノメートル。10の−9乗のm。

17ナノ技術:ナノテクノロジー。ナノメートルサイズで物質の原子・分子等を操作することにより、ナノサイズ特有の物質特性などを利用し、従来には無かった新しい機能の創生を可能とする技術。

18バイオ技術:バイオテクノロジー。ここでいうバイオ技術とは、生物情報工学と呼ばれるもので、生物の進化のメカニズムや環境への適応能力など生命科学とIT技術の融合された技術を指す。

19自律ネットワーク進化技術:生命の自己再生機能と言った生物の優れた機能をネットワークに応用することにより、障害に強く、高機能化を図る技術。

20プラットフォーム技術:各種流通コンテンツにおける品質保証、ネットワーク制御等のネットワークの高度化に資する技術。

21メディアハンドオーバー技術:様々な通信ネットワークを移り変わっても、同一端末でサービスを利用し続けることを可能とする技術。

22言語処理・伝達技術:言語による人間の情報伝達や意味理解の機構を解明し、誰もが使い易いヒューマンインターフェース実現のための基盤技術。

23仮想空間構築技術:高精細で臨場感ある三次元映像や立体音響により、遠隔地においても同一の疑似環境の共有を図る技術。

24有機EL:有機Electroluminescence。電圧をかけることにより発光する有機化合物を利用したディスプレイデバイス。バックライトが不要なため低消費電力化と薄型化が可能。

25状況可変型インターフェース:病院に入ると自動的に携帯電話をOFFにする等、ユーザの状況に応じて機器の設定が変更されるインターフェース機能

26次世代高機能映像技術:異なる映像メディア間で、デジタル映像情報を共有したり、画質を劣化させることなく相互に利用するための、映像圧縮、色変換等を行う技術