T.基本的な方針
1.はじめに
「e-Japan戦略」を決定した2001年当時、インターネットの普及など我が国のIT革命への取り組みは大きな遅れを取っていた。その遅れが将来取り返しのつかない格差を生み出しかねないという危機意識から、この3年半の間、さまざまな制度改革や施策を集中的・継続的に実施してきた。その結果、「2005年に世界最先端のIT国家となる」との目標達成が臨めるまでになってきたところである。目標年を来年に控え、残された課題に取り組み、この目標を達成するともに、2006年以降については、これまでのようなキャッチアップといった発想ではなく、我が国が新しいIT社会のフロンティアを切り拓く開拓者となることを目指し、その取り組みの成果を世界に広く提示し貢献するといった新たな発想に基づき、政策を推進してゆくことが重要である。
2001年1月に決定された「e-Japan戦略」では、IT革命の意義を次のように捉えている。IT革命は産業革命に匹敵する歴史的大転換を社会にもたらすものであり、産業革命が世界を農業社会から工業社会に移行させたように、情報通信技術の活用は、情報流通の費用と時間を劇的に低下させ、密度の高い情報のやり取りを容易にし、また人の空間的な移動を減らし、世界規模での急激かつ大幅な社会経済構造の変化を生じさせるものである。このような意義を踏まえ、IT革命の実現に向けて過去3年半に渡り、官民を上げて集中的な取り組みを行った。
その結果、地域網の開放等の公正競争政策や民間の積極的な新規参入、料金引き下げ努力などにより、「高速・超高速インターネットの利用可能環境整備」の目標を早期に達成し、また、通信料金は世界的にも最も安価な水準になるとともに、通信速度も世界トップクラスのサービスを提供するまでになった。インターネット人口普及率も60%を超えた。行政手続のオンライン化の実施、公的個人認証基盤、納税の電子化の運用開始など、ITの利活用の面における基盤整備も進みつつある。
昨年7月に策定された「e-Japan戦略U」では、ネットワーク・インフラなどIT社会を支える基礎的な部分の整備が進んだことを背景に、IT社会を、その基盤の上に構築される新たな社会・経済システムを持った社会として捉え直している。「e-Japan戦略」策定時には遠くに見えていたIT社会であったが、このように、目標年2005年を来年に控え、具体的な姿が明らかとなってきた。
我々が目指すIT社会とは、「社会全体が元気で、安心して生活でき、新たな感動を享受できる、これまで以上に便利な社会」である。これまで培われた基盤の上で、ITを経済・社会のあらゆる局面に効果的に利活用し、国際社会の中で、豊かで安心できる国民生活や、付加価値の高い事業活動が実現でき、それとともに新たな文化が興り、感動が生み出される社会である。
他方、2005年を目前にして、世界最先端のIT国家に向けての課題も明確になってきた。
評価専門調査会(2003年8月設置)は、本年3月30日に取りまとめた中間報告書の中で、ITの利活用に関して、その進捗が遅れている分野があると指摘し、先導的7分野における取り組みを着実に進めるよう提言している。また、「e-Japan戦略U加速化パッケージ」(本年2月6日IT戦略本部決定)では、重点的に政策を展開すべき5分野を定め、それぞれの分野における残された課題に対する施策を取りまとめた。
こうした課題を一つ一つ解決し、我が国が、世界が羨むような最も輝いた国の一つとなり、将来に亘った活力を生み出すためにも、この「e-Japan重点計画−2004」に基づき、IT戦略本部を中心に政府一丸となって必要な施策を戦略的、重点的かつ迅速に推進していくこととする。
| 2. | 基本方針 |
| 2.1 | 施策の考え方 |
| (1) | 2005年の目標達成への施策の重点化・体制整備と2006年以降に向けての布石 |
| | この「e-Japan重点計画−2004」は、以下の2つの位置付けを有している。
@ ラスト・プログラム(Last Program): 2005年の目標達成を確実にする重点計画
A プレ・プログラム(Pre Program): 2006年以降の布石を打つ重点計画
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| (i) | ラスト・プログラム(Last Program) |
| | IT戦略本部は、「e-Japan戦略U加速化パッケージ」を策定し、「e-Japan戦略U」を加速させ、「2005年までに世界最先端のIT国家となる」との目標を達成するために政府として取り組むべき重点施策を明らかにした。また、評価専門調査会は、我が国のIT化に関して、高速インターネット網の整備などの分野において大きく進展し目覚ましい成果を上げた反面で、ITの利活用面においてはその進展が遅れ、具体的な果実を国民に提供しきれていないと、指摘している。
こうした指摘や取り組みを踏まえ、「e-Japan重点計画−2004」において、以下のとおり施策を重点化し、また必要な体制を整備することによって、2005年世界最先端のIT国家の実現を確実にすることとする。
@ 「e-Japan戦略U加速化パッケージ」に盛り込んだ施策を具体化し発展させることにより、「e-Japan戦略U」を一層加速化する。
A 「e-Japan戦略U」で謳った先導的7分野における施策を重点的に展開することにより、IT利活用を一層促進する。
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| (ii) | プレ・プログラム(Pre-Program) |
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「e-Japan戦略U」は、上述の「2005年に世界最先端のIT国家となる」との目標を実現するとともに、「2006年以降も世界最先端であり続けることを目指す」とした。
IT革命を支える技術や市場環境は、日進月歩であり、しかも急速に変化するものである。こうした変化を的確に見据え、将来のIT社会の種を蒔き、2006年以降も世界最先端であり続ける上での布石となる施策を盛り込む必要がある。中長期的な観点から取り組むべき施策について、将来の展開や成長につながる芽となる施策についても盛り込むこととする。
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| (2) | 重点政策5分野 |
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IT基本法第35条第2項第2〜6号に基づき、高度情報通信ネットワーク社会の実現のために特に重点的に施策を講ずべき5分野、即ち
(@)世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成
(A)人材の育成並びに教育及び学習の振興
(B)電子商取引等の促進
(C)行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進
(D)高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保
について施策を整理する。重点政策5分野に関し、引き続き政策資源の効果的配分を行い、これにより21世紀の新たな価値や産業創造を支えると同時に、ますます多くの人々が、様々な機器を通して、安全・快適に超高速・高速ネットワークに繋がり、その上を多様なコンテンツが流通し、新しいサービスや価値をいつでも享受できる環境の整備を目指す。
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| (3) | 横断的な課題 |
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IT基本法第35条第2項第7号に基づき、横断的な課題に関する施策を整理する。上述の重点政策5分野に加え、高度情報通信ネットワーク社会を実現するに当たっては、研究開発の推進、ITを軸とした新たな国際関係の展開、デジタル・ディバイド1 の是正など、共通して対応することが必要となる横断的な課題が存在することから、政府として、こうした課題についても積極的な対応を取っていくこととする。
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| 2.2 | 推進体制の強化と評価の手法の導入 |
| (1) | 官民の役割分担 |
| | 高度情報通信ネットワーク社会の実現における官民の役割分担の原則は、「民を主役に官が支援する」ことである。まずは民間が意欲を持ち、自由で公正な競争を通じて様々な創意工夫を行い、IT革命を推進していかなくてはならない。
その上で、政府は民間を支援するための取り組みとして、自由かつ公正な競争の促進、規制の見直し等の市場が円滑に機能するような環境整備や、縦割り行政の弊害を排除しつつ、国と地方の連携の強化等を通じて、民間の活力が十分に発揮されるための環境整備を行わなければならない。今後とも、安全性・信頼性を確保しつつ、引き続き競争政策のあり方について不断の見直しを行い、適切な市場環境を形成していくことが必要である。また、民間の主導的な取り組みを推進するために、政府が民間に対し、展望の共有と行動を積極的に呼びかけていくことも併せて必要である。
一方で、政府は自らの取り組みとして、電子政府の実現、情報セキュリティの確保による安全・安心な利用環境の整備、デジタル・ディバイドの是正や基盤的技術の研究開発、国際連携の推進といった民間主導では必ずしも実現し得ない部分について、予算の重点的・効率的な配分及び執行に留意しつつ、積極的に対応していくことが必要である。
以上のことから、政府の役割を整理すると、以下の5つに分類することができる。
ア)大きな方向性の提示
イ)市場競争を重視した規制改革・競争政策
ウ)民間の活動に対する動機付け
エ)最小限の投資、格差是正、安全性確保
オ)政府自らの活動の効率化・高度化と資源の効率的配分
政府は、これらの役割を踏まえつつ、「e-Japan重点計画−2004」に盛り込まれた施策を着実に実施することにより、官民一体となってIT革命の実現を推進していくこととする。
なお、「e-Japan重点計画−2004」の各分野に記載している具体的目標は、官民の役割分担のもと、それぞれの努力により達成されるべきものであり、社会全体の行動目標として設定している。
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| (2) | 各府省や他会議との連携強化 |
| | IT革命の推進は政府の喫緊の重要課題であり、府省の縦割りを排し、連携を一層強化して取り組んでいくことが求められている。府省横断的な方策については、利用者の視点に立った成果に主眼をおいて、関与する複数の府省を取りまとめることによって、その整合的かつ効果的な実施を確保する役割等が求められている。
このような状況を踏まえ、内閣の統轄の下に、関係省庁の取り組みをこれまで以上に一体的・総合的に実施するために、本年2月にIT関係省庁連絡会議を設置した。本連絡会議を有効に活用し、関係府省で適切な役割分担のもと、一体的な取り組みを促進する。
また、構造改革や新価値創造という新戦略の改革の柱は、日本経済全般にとっての鍵となるものであり、経済財政諮問会議とも認識を共有している。一方で、規制改革が新戦略の重要な部分を占めること、科学技術の戦略的開発がIT社会の基盤となることも、言うまでもない。IT戦略本部は、経済財政諮問会議、規制改革・民間開放推進会議、規制改革・民間開放推進本部、総合科学技術会議、知的財産戦略本部等、他の関係する会議・本部等との意見交換を密にし、役割分担を明確化するとともに、方策の提案や実施において緊密に協力し、その効果を最大化することとする。
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| (3) | PDCAサイクルの確立 |
| | 評価専門調査会から提言を受けて、評価の手法を「e-Japan重点計画−2004」に導入し、実践することとする。具体的には、昨年8月にIT戦略本部の付託を受けて、政府の取組状況の評価等を行うために設置された評価専門調査会の評価結果を重点計画の策定に反映させる。これによって、「計画(Plan)−実行(Do)−事後評価(Check)−措置(Act)」のいわゆるPDCAサイクルがIT政策の枠組みの中に定着されることとなり、足りないものは直ちに足す、方向修正が必要なものは直ちに修正するという好循環を通じて、目標の実現に向けた取り組みを的確なものとする。
また、評価活動においては「利用者の視点に立った成果主義」を採用し、目標に対してどの施策がどれだけ寄与したか、その結果、成果は国民にどの程度還元されたかという総合的な視点を重視している。このため、重点計画に、利用者の視点に立った社会的に実現したい状態を示す「成果(アウトカム)目標」を新たに設定するとともに、成果目標と、成果を出すために担当する部門が行った施策の進捗状況に関する施策実施目標とが乖離しないよう両者を明確に対応させることとする。
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