国民の皆様へ

次代を担う青少年のために


−いま、求められているもの−

平成10年4月

次代を担う青少年について考える有識者会議


目 次

1 会議の趣旨

2 青少年たちの今の姿

(1)少年非行の現状

(2)少年補導の現場から見える姿

(3)前向きに生きる青少年

3 今、何をなすべきか

(1)基本的認識

(2)少子化への対応

(3)具体的対策の基本的方向

4 関係審議会等における今後の審議

5 国民的取組に向けて

参考資料


1 会議の趣旨

(1)昨年来、青少年による凶悪事件が多発し、国民に大きなショックを与えているほか、薬物の乱用、いじめや登校拒否、さらには性をめぐる問題など、青少年が直面している問題は、極めて深刻である。
 これら青少年による非行等問題行動は、現在の青少年が置かれている様々な問題状況が凝縮した形で現れていると考える。
 この問題を放置することは、青少年の将来、さらには我が国社会の将来に必ずや禍根を残すことになり、今、この問題に真正面から取り組んでいく必要がある。

(2)このような現下の青少年問題に対しては、関係省庁において、それぞれ緊急に対策を講じるとともに、この問題の根底にあるものの解決に向けて関係審議会が検討を進めるなど種々の取組が進められているところである。
 しかしながら、この問題は、様々な要因が複雑に絡み合っているものであり、また、その重要性にかんがみ、政府を挙げて関係省庁が連携して、また、社会全体で取組を進めていく必要がある。

(3)このような観点から、内閣総理大臣の下で、青少年にかかわる審議会の代表者を始め、マスメディア、青少年の育成にかかわる者等の有識者で構成する「次代を担う青少年について考える有識者会議」を発足させ、本年3月6日に第一回会合を開催した。

(4)当会議においては、内閣総理大臣を始め関係閣僚にも会議の議論に加わっていただき、関係審議会における審議状況について意見交換を行うとともに、
 @ 青少年の心を抑圧しているものを除き、青少年が夢とチャレンジ精神を持てるような社会にするためには、どうすればよいか
 A 大人社会の問題を含め、規範意識を持った自立した青少年が育つためには、どのような方策があるか
 B 青少年を取り巻く様々な環境、特に青少年に大きな影響を与えるテレビ、出版等のマスメディアの在り方はどのようにすればよいか
など青少年問題全般にわたり幅広い観点から議論を行った。
 3月6日以降、3月、4月に集中的に計4回の会議を開催し、このたび、これまでの会議において出された意見を整理して、取りまとめを行ったものである。

(5)もとより、当会議は、具体的な対応策を検討し、政府に答申する場ではない。
 当会議は、現下の青少年問題について、政府を挙げて、また、社会全体での取組を進めていくため、関係審議会や関係省庁がそれぞれの検討、取組を連携させ、より一体的なものとして進めていくとともに、それぞれの施策をより効果的なものとして早急に実施していくためのいわば“触媒”としての役割を担うものである。
 当会議で示された認識や意見を基に、関係審議会、関係省庁が必要に応じて連携しつつ、具体的な施策について専門的観点から検討を進め、政府を挙げて対策を順次実施に移していっていただきたいと考える。
 その際、今後とも、当会議を随時開催して、関係審議会や関係省庁の検討状況等について、適宜、報告を求め、意見交換するなどフィードバックを行いながら、この問題に取り組んでいくことを要請するものである。

(6)青少年問題の背景には、青少年を取り巻く家庭、学校、地域社会など環境の変化や、青少年自身、あるいは我々大人さらには社会全体の価値観の在り方にかかわる問題があるものと考えられる。教育のみの問題ではなく、社会の在り方そのものが問われているものといえる。対症療法的な対策のみでこと足りるものではない。また、万能の特効薬があるものでもない。
 問題の本質を深く洞察し、家庭、学校、地域社会さらにはマスメディアなどを含め、行政や教育関係者だけでなく、青少年にかかわりのあるすべての者が、自らの問題として青少年のことを考え、対応していくことが望まれる。
 また、青少年自身も、今日の社会状況の中でどのような立場に置かれているか現状を十分認識し、今後どのように社会にかかわっていくか、自らの問題として真剣に考えていくことを望みたい。
 当会議での議論が、より一層、政府を挙げての青少年問題への積極的な取組を促すとともに、青少年を含む国民一人一人が、青少年のことを思い、青少年のために行動していく契機になることを強く望むものである。

2 青少年たちの今の姿

(1)少年非行の現状
 我が国の将来を担う青少年の多くは、悩んだり、困難に突き当たったりしながらも、自分を見つめ、また、社会にも目を向けて着実に日々の生活を送っている。少年非行の問題を考えるに当たっては、このような青少年全般の姿も忘れてはならない。
 しかしながら、少年非行(14歳から19歳までの少年による非行)は、特に近年、量的、質的両面において極めて深刻化しており、危機意識を持つ必要がある。
 平成9年に刑法犯で補導された少年は、15万2,825人で、少年人口千人当たり16.1人となっており、これは5年連続で増加し、過去10年で最悪の水準となっている。このうち、凶悪犯(殺人・強盗・強姦・放火)は2,263人で、昭和50年以降最悪であり、特に近年凶悪化が目立っている(平成9年は対前年比51.3%増、10年前の約1.8倍) 。
 補導人員の人口比の推移は、現在、戦後第4の上昇期を迎えている。14歳以上の全人口に占める少年(14歳から19歳まで)人口の割合は9%に満たないが、全凶悪犯罪の34.1%、全粗暴犯罪の44.5%を少年による犯罪が占めている。
 前述の凶悪犯の増加と並んで、非常に目立つのが、中・高校生による覚せい剤の乱用で、補導人員は10年前の約4倍となっており、中学校1校当たり1.6人に覚せい剤使用経験があるという調査もある。また、もう一つ目立つのが、遊ぶ金欲しさの性非行であり、高校1校当たり4.5人の女子がテレクラを通じて性非行をしているという調査結果もある。さらに、非行により補導された中学生及び女子の増加が顕著である。

 このような少年非行の実態から見た問題点としては、
 @ 重大な非行にかかわる少年にその行為への抵抗感や規範意識がないということ、また、非行の重大性や被害者などの悲しみといった行為の結果に対する理解が全く欠けているということ
 A 重大な非行には、ほぼ例外なく前兆となる問題行動があるにもかかわらず、周囲の対応が適切になされていないということ
 B 覚せい剤の密売や児童買春といった少年をむしばむ大人の行為、さらには少年を取り巻く生活環境やマスメディア情報などの社会環境の悪化
などが挙げられる。

(2)少年補導の現場から見える姿

 少年補導の現場で取り組んでいる少年補導職員の立場から見えてくるのは、次のような青少年の姿である。
 @ 子どもたちの現状としては、第一に「罪悪感の欠如と被害者意識」である。罪悪感なく非行に走っており、補導されると逆に少年補導職員を非難するといった被害者意識を持つ例も目立っている。第二に「他律性」である。子どもたちは苦しみながら悩み、自ら問題を克服するという機会、プロセスがなくなっており、規範意識が内在化されていないために、いけないことにノーと言う自信がない。したがって、簡単に他の人に引きずられてしまう傾向がある。第三に「感情を言語化し、表現する力」が弱まっているという印象がある。他人とのコミュニケーションが不得手なゆえに問題行動や非行という形でイライラや不安を表現している面もある。
 A 家庭に関する問題としては、第一に「希薄な関係」である。子どもが「楽しいとか、しかられたという経験がない」という訴えを少年補導職員にしていたり、万引きの理由が「親が自分の方を向いてくれないから」という実例が報告されている。第二に「親の規範意識の欠如」である。例えば、親が「何でこんなことで補導されないといけないのか」と少年補導職員に詰め寄ることもある。第三に「親自身に自信がない」ことである。子どもに対して、これがいけないことだという確固たる自信が親になくなっている。
 B 地域社会及び学校の問題としては、それぞれ、「社会の無関心の広がり」、「学校外に無関心」ということが見受けられる。
 C 社会環境の問題としては、商業主義に巻き込まれて急激に悪化していく社会環境の下で、少年補導職員自身がどのように少年たちにかかわっていくのかという悩みの報告もなされている。

 また、現場の少年補導職員の声で、しばしば指摘されることは、子どもが自信をなくしていることに加えて、子どもを取り巻き密接にかかわっていくべき家庭・親、学校・教師、警察・少年補導職員のそれぞれに自信がないということや、密接にかかわるべき当事者が、それぞれの相手に対して不信感を持っている場合があるということである。子どもと親、親と学校、少年補導職員と学校の間に信頼関係がみられないとの声もある。
 こうした姿の根底にあるのは、「自信の欠如」と「相互不信」である。

(3)前向きに生きる青少年
 以上のように、青少年の現状には非常に憂慮すべき点が多く、青少年をめぐる様々な問題の中には、すべての青少年に共通するような問題もある。ただし、ごく一部の青少年による非行等問題行動のすべてを青少年一般に当てはめて考えることは、かえって問題の本質を見失わせるおそれがあることにも留意しなければならない。
 自由や個性を尊重されて育った現代の青少年は、社交性豊かで、なにごとにもものおじしないといわれている。オリンピックなどの大舞台において、プレッシャーをはねのけ、むしろ、それを楽しみながら自分の力に変えて活躍している若者などはよい例であろう。
 また、新たな情報を取り入れていくことにも積極的であるといえる。ポケベル、PHS、携帯電話、パソコン等を通じたインターネットなどは、既に青少年の日常生活になくてはならないものとなった感があり、これら高度に発達した情報通信機器を使いこなし、大人が考えつかなかったような新しい使い道を発見したり、そこから得た情報を活用して自らの可能性を切り拓いている。
 さらに、阪神・淡路大震災や日本海の原油流失事故の際に見られたように、青少年の社会貢献に対する関心の高まりも見逃してはならない。ひと昔前までなじみの薄かったボランティア活動が今日のように脚光を浴び、また、社会生活の中で不可欠な活動として定着しつつあるのも、人の役に立つ喜びを実感しつつこうした活動を支えている青少年によるところが少なくない。
 柔軟性に富み、活力に満ちた青少年は、いつの時代にあっても、将来の担い手として期待される社会の宝である。
 しかしながら、現下の青少年を取り巻く状況をこのまま放置すれば、青少年の非行等問題行動の状況がますます悪化するおそれがあり、我が国の将来に禍根を残すとの認識の下で、早急に対策を講じる必要がある。そのことにより、自立した青少年が、自らの夢を実現するために創造性とチャレンジ精神を存分に発揮できる、また、そのためにも伝統や文化を大切に受け継いでいくような社会になることを望むものである。

3 今、何をなすべきか

(1)基本的認識

・ 現在の青少年問題への対応は、青少年の非行、問題行動に対する適切な対策を講じるとともに、大人や社会全体の歪みが青少年に投影しているとの観点から、我が国社会のこれからの在り方の問題として捉え、中長期的視点から政府全体として取り組んでいく必要がある。

・ 今、戦後50年の我が国社会の在り方が問われているといえる。我が国の将来を担う青少年のあるべき姿を国民皆で考える時である。
  これまでに築き上げられてきたものであっても、今の時代にそぐわないものやうまく機能していないものがあれば、勇気をもって変革していくべきである。このような観点から、国や社会、他者への愛と責任を育てることの重要性を再認識するとともに、「自由」、「人権」と「公共の福祉」、「規律」のバランスを今一度検証し、次代を担う青少年にこれだけはどうしても守るべき最低限の規範があることをはっきり伝え、その上で、それぞれの個性、夢、希望を実現できる真の自由を大切にすべきである。

・ 社会全体の規範が低下しているのではないか。
  社会が次の世代を育てていくという意識が重要である。
  大人社会が、享楽的、拝金的、自分本位、思いやりや愛のないものであれば、それが青少年に反映するのは当然である。
  10年後、20年後の青少年の姿を考えていくとき、今の大人社会の利便性、効率性を犠牲にすることに後ろ向きであってはならない。

・ 現行の様々な制度や仕組み、大人の子どもへの接し方、意識等において、青少年の希望、夢、将来への期待、自信、自尊心などを阻害、抑圧しているものを除き、また、人生におけるチャンスが数多くあるような社会システムにし、失敗することをおそれず、夢とチャレンジ精神を持った、どんな環境の中でもしっかり自分をもった青少年が育っていくようにすることが重要である。

・ 青少年の現状を見ると、時間的に非常にゆとりがない現実がある。また、高校生ぐらいの年代で、大人として出会う人が親と学校や塾の先生しかいないという現状もある。子どもたちは、じっくり悩み、試行錯誤の過程を経てそれを解決するという経験を重ねることに欠けている。また、時間的、空間的ゆとりのないところで、心のゆとり、思いやりは生まれない。ゆとりのある中で様々な試行錯誤を経ながら、様々な人と触れ合い、スポーツ、芸術、ボランティアなど学校以外の様々な活動にも参加し、それが社会的に評価されるような社会にする必要がある。

・ 青少年問題を考える際には、大人の視点ばかりでなく、青少年たちの視点も重要である。青少年を巻き込み、青少年が主体となり、自らの問題として考え、取り組むような機会をより多くすることも考慮すべきである。青少年は、自分が役立った、重要な役割を担っていることを実感できれば、喜びとともに誇りや責任、規範意識を持つようになる。

・ “地獄への道は「善意」で敷き詰められている。”
 子どもたちの間違いを「教育的配慮」という優しさから、あいまいに処理することにより、問題を放置し、取り返しのつかないレベルまで増幅させていることはないだろうか。“まあまあ”で済ませてしまうのは、その時は楽である。子どものことを思い、“悪いことは悪い”ということをはっきりさせ、真剣に「叱り」、厳しく「罰し」、子どもに「課題を突きつける」態度が、大人に、さらに社会に求められる。また、子どもにも、悪いことは悪いと自覚させるため、法律によって厳しく処分することも視野に入れる必要があろう。
 子どもと真剣に語り合うことが重要である。家族間で、もっと話し合う機会を作る努力が必要である。大人が真剣に語りかければ、それに応える素地は子どもに十分ある。
 間違いを毅然と正すための教育の「自信」と包容力のある厳しさの回復が、真の優しさ、愛情につながるものである。

(2)少子化への対応

・ 少子化の進行は、核家族化とも相まって家族関係の希薄化などをもたらし、青少年問題のバックグラウンドともいうべき大きな影響を持つものであり、今後の我が国社会を考えた場合、それへの対応は不可欠である。
  少子化の最大の要因は未婚率が上昇していることであり、その要因として、特に女性が結婚生活あるいは結婚生活と仕事との両立に負担感を感じていることがある。今後の高齢社会を考えると女性の就業が増えることを前提として、仕事と子育てとの両立を支援するような施策が必要である。具体的には、@保育所等の整備、充実、A男女の固定的な役割分担意識の見直し(家事・育児を男女が共同で分担し、子どもとの時間をもっと使う等)、B雇用慣行の改善(労働時間の短縮、中途採用機会の拡充等)が重要である。「子育ては社会全体で支援する」という共通認識を持って家族の就業と子育ての両立を図ることが必要である。

・ 戦後、女性の教育水準が上がったものの社会制度は相変わらず男性中心の「男は仕事、女は家庭」というシステムのままであり、父親の教育への参加もほとんどなく、家事、育児の責任が女性に大きく偏っている面が少子化にも結びついているのではないか。戦前に戻すのではなく、女性が高い意識を持った現実の社会の中で、新しい解決を見いだすべきである。

・ 兄弟の数が減り、子どもが一人で豊かさを独占できるようになっている。プライバシーや自分のやりたいことをする自由が家庭内では満たされているが、反面、子どもの欲求を際限なく膨らませてしまったり、規範意識や忍耐心を失わせたりしている。一方、学校などは集団を前提としたシステムであり、画一的な教育、生活指導に対して不満が生じていることも多く、中高生にも豊かな社会や発達段階、個性に応じた選択の自由がもっと認められてよい。さらに、地域や家庭の中で子どもの抱える悩みは複雑、多様化しており、教育だけで問題を抱え込むのでなく、児童福祉と学校との連携を考えるべきである。

・ 少子化が進む中では、育児指導のノウハウを持つ保育所を仕事を持つ母親だけでなく、すべての子どもを対象とした公共サービスととらえてより積極的に活用していくべきである。子どもたちにとっても、他の子どもと接する機会ができ、希薄な人間関係から脱することができる。

(3)具体的対策の基本的方向

@ 幼児期の重要性=「親」の支援システム
 “三つ子の魂百まで。”教育においてその基礎、基本となる姿勢を育むのは乳幼児期から小学校入学までの間が特に重要な意味を持つ。その時に身についたものはその後の学習姿勢、生き方を大きく左右する。人間と人間との関係を育む上でもこの時期は大きな影響を持っている。“人を育むのはまず家庭”ということを再確認したい。
 “親は第一の教師”であるという観点から、免許状のいらない、誰でもなれる教師である「親」を支援するシステムづくりが必要である。その際、最も重要な視点は、「親」としての成長を促し、母性、父性を豊かに育むものとすることである。
 親や親となる者に対する“親としての学習”機会、“親になるための学習”機会の充実が必要であり、文部省・厚生省で連携して実施している母子保健の機会を利用した学習機会の充実は大変有効な手立てであり、父親を積極的に巻き込んでその充実を図っていくべきである。その際、父親や仕事を持つ母親が無理なく参加できるような配慮が重要である。
 また、幼稚園や保育所においては、子育て支援事業の充実、両者の連携の一層の推進を図る必要がある。

A 地域に開かれた学校=多様な価値観の下に育つ子どもたち 子どもの教育について学校に期待することは大きい。しかしながら、学校は万能ではない。
 学校外の様々な資源を教育に活用し、地域の人々と共に子どもを育てるという学校が望まれる。その意味で、父母を始めとする地域の人材を学校教育において積極的に活用していくことが重要である。その観点からも、伝統文化や地域で働くいわゆる“職人”などに授業に加わってもらうなど、多様な職業観や価値観を育む取組が学校でより一層行われるべきである。
 そのため、学校と地域が連絡協議を行う場を、積極的に設けることも必要である。また、教育委員会も学校の様々な創意・工夫をもっと伸ばすように支援すべきである。
 学校における子どもの評価は更に多様であってよい。学力中心の単一の尺度ではなく、子どもの様々なよさを思い切り誉め、それぞれの持味を大切にする学校であってほしい。その意味で、高等学校の一層の多様化を進めるとともに、大学入学者選抜方法の工夫・改善を望みたい。

B 子どもの規範意識を育む
 社会生活のルールを守ることは、人間が人間らしく生きていく上で非常に重要である。しかし今日、子どもたちの規範意識が低下していることも指摘されており、極めて憂慮されるところである。
 このため、まず家庭において、子どもに対し幼児期から、善悪の区別や社会共通のルールを守ること、自己抑制力を付けることなどについて、しっかりしたしつけを行っていくことが大切である。また、親自身も規範を守ることについて自らの姿をもって子どもに示していく必要がある。
 さらに、学校においても、道徳の時間などで社会生活上のルールの習得や基本的なモラルなどの倫理観の大切さの自覚を促すとともに、こうした道徳教育で学んだことが日常生活に生かされ、実践に結びつくようにしていくことが大切である。

C 学校における心の教育を支えるために
 子どもは、思春期に当たる中学時代には、精神的にも不安定になりやすく、様々なストレスを抱えている。また、この時期の子どもの心身は発達状況に個人差が大きく、きめ細かな対応が必要である。こうした子どものストレスを和らげ、生き生きとした学校生活を送れるようにするためには、一人一人の子どもを受け止め、話を聞き、目を向ける大人と場が身近に存在することが、今日、緊急に求められている。
 このため、生徒指導担当教員や養護教員等を増員したり、スクールカウンセラーの体制を充実する必要がある。さらに公立中学校に教職経験者や地域の青少年団体指導者等を相談員として配置し、子どもの悩み、不安等の相談に乗ったり、気軽な話し相手になったりすることにより、子どもが悩み等を抱え込まず、心にゆとりを持てるようにする必要がある。また、相談員が実際に相談活動等を行う場所として、あるいは子どもがくつろいだり自由に歓談したりする憩いの場として、学校内に「心の教室」ともいうべきカウンセリングルームの設置を進めるべきである。

D 自然体験、生活体験の重視
 少子化、都市化、核家族化傾向により、子どもたちが“自然から学ぶ”、“本物と接する”機会のないまま、知識としての理解は進むが、“感性や五感”を通じて“魂や体”で実感することが少なくなっている。
 また、異年齢児との交流やグループの中で生活体験を通じて、集団の中で協力し合い助け合うことによって「自立」が育っていくことも難しくなっている。
 学校教育や青少年団体等の活動において、合宿、長期キャンプ、ワークキャンプ等を通じて学んでいく様々な経験、知恵を重視することも必要である。
 中高生が幼稚園、保育所等において保育活動を手伝うことや乳幼児健診等の場で乳幼児と触れ合うことを通じて、命の大切さ、将来の子育ての楽しさを実感するようにすることも重要である。

E 学校外での青少年の居場所づくり
 放課後、子どもたち、特に思春期の感じやすい中高生の居場所が少ない。また、仕事を持つ母親が今後とも増加していく中で、小学生が楽しく、安全に過ごすことができる場が必要である。子どもたちの様々な個性を生かす“心の居場所”も必要である。武道、ボランティアだけでなく、最近の子どもが積極的に楽しめ、参加できるイラスト、ダンス、歌などの活動プログラムを提供するような公的な場を検討していく必要がある。
 一部自治体においては、学校施設を毎日の放課後に活用し、地域の人々や大学生、ボランティアなどの人材も配置し、異年齢の子どもたちが一緒に遊んだり、様々な活動を行っているところがあり、それぞれの自治体において、それぞれの実情に応じた地域の教育力を活用したこのような取組がなされることが望まれる。
 また、スウェーデンのディケアセンターなどの取組も参考としつつ、学校開放や児童館等の活用、これら施設の連携の促進などについて検討を行うとともに、放課後に保護者のいない児童の健全育成策を推進していく必要がある。
 適切な指導者、助言者の下に、子どもにとって魅力ある活動を行い、その際、子どもたちも当事者意識を持ち、活動の企画運営に携わり、中高生が小学生等と一緒に活動するなど、子どもたちの主体性を重視した取組を進めることも重要である。
 また、欧米にみられるような、地域におけるクラブ組織によるスポーツ活動の場を整備することや、芸術活動に参加できる機会の拡充も重要である。

F 青少年の問題行動への対応
 青少年の問題行動に適切な対応を行うためには、まずこれを認知することが重要である。このため、青少年の問題行動についての家庭の関心を高めるほか、学校内の問題行動を知り得る立場にある学校、家庭・学校外の問題行動を認知する立場にある警察が、それぞれの機能を強化するとともに、家庭も含めた相互の信頼関係に基づき、必要な情報交換等を行い、社会全体としての問題行動の認知機能を高める必要がある。
 警察や学校は、青少年の問題行動を認知した段階で、家庭に対する必要な連絡や助言・指導を行うほか、その子どもや家庭の抱える問題に応じた相談先や地域社会の中での子どもの「居場所」を紹介するといった施策も必要である。
 その意味でも、警察による少年相談、学校による教育相談、児童相談所の相談等の各相談機関相互の連携を緊密化するほか、少年補導センター、精神保健福祉センター、保健所、少年鑑別所が一層連携を図っていくとともに、これに、民間で活動を行う団体も加わり、ネットワーク化を図ることが課題である。
 さらに、青少年の規範意識の希薄化に対処するためには、関係機関を含む地域社会の持つ社会的資源をできるだけ活用して、少年の規範意識の形成の支援に当たることが必要と考えられる。現在、警察職員及び麻薬取締官OBを主に中・高校に派遣して薬物乱用防止教室を全国的に開催するとともに、一部地域においては、凶悪な非行を防止するため、警察職員を中学校に派遣して犯罪防止教室を開催しているところもあるが、少年非行問題全般について、少年補導職員も十分活用したこのような仕組みを構築することについても、今後検討していく必要があり、こうした面からの関係機関の連携の在り方を考えていくことも重要である。

G 国際化、地球化する社会の中で
 21世紀を迎えようとする今日、「ひとつの地球」の考え方に立って、「みんなの力」で地球号の進展を考えること、すなわち、貧困、飢餓、人口、資源、紛争など地球社会が抱える諸問題に対して国境を超えて互いに協力することが求められており、この点について、次代を担う青少年が果たす役割に期待するところが大きい。
 21世紀を担う青少年を育成するため、グローバルな国際環境教育を一層推進するとともに、青少年の国際交流事業を積極的に進め、個人志向に向かいがちと言われる青少年に異文化に対する受容性や包容力の涵養を図ることは、大変重要なことである。
 誰かが教えるのではなく、諸外国の青少年と交流する中でこそ、相手の国のことだけでなく、自分の国のことも自分なりに考え、判断するようになる。国際交流を一層積極的に行い、青少年同士の話し合いの中から学ばせることが重要である。
 また、海外から帰国した子どもや日本に在留する外国人の子どもに対する教育の充実を図り、こうした子どもと一般の子どもが共に学ぶ、異文化に開かれた学校となることも必要である。

H 教育産業も教育的観点を
 教育産業は、国民の様々な教育ニーズに応え、教育の機会を拡充する上で重要要な役割を果たすものである。
 しかしながら、近年、一部の教育産業においては、乳幼児を対象とした早期教育をあおるようなものや、中学・高校・大学入試等において親や教師なども巻き込んだ商業主義の行き過ぎたものも見られることから、より教育的観点を持って行動することを望みたい。

I 青少年を取り巻く社会環境の浄化
 (ア)マスメディア
 漫画などの出版物、テレビやビデオ、さらには近年のインターネット等のニューメディアは、青少年に多大な影響を与えており、ある意味では、親や教師以上の影響を持っているともいえる。そのようなマスメディアにより、青少年が夢や希望をかき立てられ、また、自分の心を癒されるということも少なくない。
 このようなマスメディアの果たす積極的な役割は十分評価される必要があり、そのような面の取組の一層の発展も期待するものである。
 一方、様々なマスメディアを通じた有害情報が青少年を取り巻いている現実もあり、幼少期の子どもたちの情報選択能力を考慮すれば、青少年に健全な情報を提供していくことは、大人の重要な役割である。
 青少年を取り巻く有害情報の改善については、諸外国の取組も参考にし、関係省庁や関係業界において検討を進め、早急に必要な方策を講じていくことが必要である。
 その際、雑誌等に関しては、書店以外のコンビニエンスストアなどにおける適切な販売方法の徹底、また、テレビ放送については、言論・表現の自由と公共の福祉とのバランスに留意しつつ、各局ごとの番組審査体制だけではなく、「放送と人権等権利に関する委員会」のような各局で共同した番組審査・評価や放送時間帯への配慮の在り方、Vチップの導入等についても、デジタル化等の今後の技術革新の動向も念頭に置いて検討していくことが望まれる。

 (イ)その他の社会環境
 少年を取り巻く環境は、各種メディアの問題ばかりでなく、少年をむしばむ行為(少年の福祉を害する犯罪・・覚せい剤密売、児童買春等)や少年の不良行為を助長する恐れのある営業(不良行為少年のたまり場となる恐れのある営業、飲酒、喫煙を助長する恐れのある営業等)の問題も視野に入れて考える必要がある。
 日本は自動販売機文化を高度に発達させてきたが、それによって青少年が酒類やタバコ、成人向雑誌・ビデオなどを自由に手にできる状況は放置できないものがある。大人社会の利便性よりも青少年を皆で育てることを重視する社会であることを示す意味でも、単に夜間の販売自粛にとどまらず、更に効果的な方策を検討する必要がある。

4 関係審議会等における今後の審議

(1)関係審議会等においては、当会議での意見整理を基に、今後、それぞれ、次のように審議を進めていくよう要請する。
 その際、他審議会における審議の動向に十分留意願いたい。

@ 青少年問題審議会(石川忠雄会長)は、平成9年7月28日、内閣総理大臣から「青少年の問題行動への対策を中心とした西暦2000年に向けての青少年の育成方策について」諮問を受けて審議中であるが、青少年の問題行動への対応を中心に、青少年の指導、育成、保護及び矯正に関する基本的かつ総合的な施策の推進の観点から更に検討を進め、本年6月頃には中間的なまとめを行うこと。

A 中央教育審議会(有馬朗人会長)は、平成9年8月4日、文部大臣から「幼児期からの心の教育の在り方について」諮問を受けて審議中であり、平成10年3月31日に、中間報告を公表したが、この有識者会議における中間報告についての意見や各方面からの意見を充分踏まえ、更に検討を進め、本年6月頃には答申をまとめること。

B 生涯学習審議会(吉川弘之会長)は、平成9年6月16日、文部大臣から「青少年の[生きる力]をはぐくむ地域社会の環境の充実方策について」諮問を受けて審議中であるが、地域社会における子どもたちの様々な活動を充実するための具体的方策について更に検討を進め、本年度内には答申をまとめること。

C 矯正保護審議会(稲田克巳会長)においては、現在、この問題について、審議が行われていないが、非行少年に対する処遇の充実強化の観点から、今後できるだけ早く、審議を進めること。

D 中央児童福祉審議会(江草安彦委員長)は、平成10年4月14日、企画部会・育成環境部会の合同部会を開催し、児童の健全育成について審議を開始したところであり、今後、児童の健全育成対策の観点から必要な審議を進めること。

E 国家公安委員会においては、「少年補導等の現場から見た現状の問題点と警察における今後の取組み」などに関する警察庁の総合的な検討結果について、本年5月中を目途に報告を受け、審議を行うこと。

 なお、当会議に参加していないが、法制審議会においては、少年審判手続の改正等の観点から、少年法の改正について、可能な限り早期に、審議することを検討している。

 以上の各審議会等において今後出される提言については、どのように具体的に実行していくかが最も重要である。それぞれ戦略的にどういう順序、方法で取り組んでいくかを明確にし、実行に移していくことが必要である。
 また、今後の各審議会等における審議に当たっては、青少年の声を聴く場を設けることも検討することが望まれる。

(2)政府全体で取り組むために
 以上のような関係審議会等における審議及び関係省庁における取組をより連携させ、政府全体でこの問題に一層積極的に取り組んでいくため、次の2点を要請したい。

@ 関係審議会等におけるそれぞれの審議状況等について、今後とも意見交換を行いながら、連携して進めていくため、当会議を必要に応じて随時開催することとし、本年夏頃に、それぞれの関係審議会等における検討状況について報告を受け、意見交換すること。

A 関係省庁が連携して取組を一層進めていくため、関係省庁で構成される「青少年対策推進会議」を機動的に開催すること。

5 国民的取組に向けて

 青少年問題の解決に向けては、関係省庁がより連携し、政府全体で取り組んでいくとともに、国民それぞれが、それぞれの立場で、積極的に対応していくことが重要である。
 そのため、以下のような取組を進めることにより、この問題が国民的な広がりをもった取組になっていくことを強く望むものである。

(1)総理や関係閣僚がテレビなどマスメディアを通じて、青少年問題について国民に語りかけていくことも有効であり、今後、そのような機会をできるだけ設けるよう検討すること。

(2)政府広報や関係省庁の広報において、青少年問題を重点的に取り上げて総合的な広報展開を図っていくこと。その際、マンガやイラストなどを積極的に用いて、青少年や国民が親しみやすいものとすること。

(3)青少年に関する国民運動を展開していくため、「青少年を非行から守る全国強調月間」、「社会を明るくする運動」、「全国青少年健全育成強調月間」や「青少年の野外教育体験月間」、「子どもと話そう全国キャンペーン」については、それぞれ、関係省庁、地方公共団体、青少年団体等のより一層の協力を得て、連携して実施する等、その充実強化を図っていくこと。

(4)青少年関係団体の自主的な連携強化を進めるため、(社)青少年育成国民会議や(社)中央青少年団体連絡協議会の活動の充実等を図ること。

(5)青少年問題は、極めて多岐にわたる問題であり、学校、警察等の政府関係機関が、それぞれの責務に応じて役割を分担しつつ、密接な連携をとってこれに対処していくほか、今後は、民間における各種の活動も重視していく必要があることから、共通の問題認識の醸成のため、関係機関、団体等からなるネットワークの構築について検討し、これを核とした国民運動を展開していくこと。

(6)青少年問題が国民的な広がりを持つためには、企業等雇用者の従業員に対する様々な理解、協力が不可欠であること、また、企業としても青少年問題に積極的に対応していくことが望まれることから、経済関係団体においても、様々な観点から、この問題に取り組んでいくこと。

(7)放送、出版等のマスメディアは、公共的性質を有し、我が国文化を担うものであること、また、青少年に多大な影響を与えるものであることを十分自覚し、それぞれの制作、編集等に当たること。

(8)青少年問題に関する国民的取組の展開のためには、地方公共団体レベル、住民レベルでの各種取組が不可欠であることにかんがみ、各地方公共団体におけるそれぞれの実情に応じた総合的な取組を早急に行うこと。また、国として今後、各都道府県の教育委員会、警察本部を含めた青少年関係部局担当者を招集した合同会議を開催すること。


参考資料

次代を担う青少年について考える有識者会議の開催について

平成10年3月3日
内閣総理大臣決裁

1 趣旨
 青少年の非行事件等問題行動が多発している状況等に鑑み、夢とチャレンジ精神を持ち、自立した、次代を担う青少年が育っていくようにするため、青少年の心や行動の問題、家庭や学校の在り方、放送・出版等青少年を取り巻く環境の問題等について、幅広い視点から検討を行うため、関係審議会の代表者等の有識者で構成する「次代を担う青少年について考える有識者会議(以下「有識者会議」という。)」を開催することとする。

2 検討課題
 次代を担う青少年が育っていくよう、国民的な取り組みを進めるため、幅広い視点から、検討を行う。

3 出席者
 有識者会議は、内閣総理大臣が別紙に掲げる審議会の代表者等の参集を求めて開催する。
 有識者会議には、必要に応じ、関係大臣その他関係者の出席を求めることができる。

4 庶務
 有識者会議の庶務は、総務庁の協力を得て、内閣官房において処理する。


(別紙)

次代を担う青少年について考える有識者会議名簿

(50音順)
(審議会等代表)
有馬 朗人(中央教育審議会会長)<座長代理>
石川 忠雄(青少年問題審議会会長)<座長>
稲田 克巳(矯正保護審議会会長) 
岩男 壽美子(国家公安委員会委員) 
江草 安彦(中央児童福祉審議会委員長) 
奥島 孝康(生涯学習審議会副会長) 


(有識者)
氏家 齊一郎((社)日本民間放送連盟会長)
香山 リカ(精神科医)
柴門 ふみ(漫画家)
杉原  正(ボーイスカウト日本連盟総コミッショナー)
田中 健五((社)日本雑誌協会理事長)
久田 恵(作家)
氷海 正行(船橋市総合教育センター副主幹・
前千葉県立国分高等学校教諭)
八代 尚宏(上智大学教授)


(参考)

次代を担う青少年について考える有識者会議関係大臣

内閣総理大臣橋本龍太郎
内閣官房長官村岡兼造
総務庁長官小里貞利
文部大臣町村信孝
自治大臣兼国家公安委員会委員長上杉光弘


「次代を担う青少年について考える有識者会議」の開催状況について
○ 第1回会議(平成10年3月6日(金)於 官邸大ホール)
(1) 会議開催に当たり、内閣総理大臣より挨拶が行われた。
(2) 会議の趣旨、検討課題、スケジュール、運営等について、古川内閣官房副長官から説明がなされた。
(3) 座長に石川忠雄委員、座長代理に有馬朗人委員が指名された。
(4) 関係審議会における検討状況について青少年問題審議会、中央教育審議会、生涯学習審議会の会長等から報告の後、青少年非行の現状と分析について岩 男国家公安委員会委員から報告がなされた。
(5) 検討テーマについて、意見交換が行われた。
 
○ 第2回会議(平成10年3月26日(木)於 官邸大ホール)
 青少年を取り巻く環境の改善について
(1) 岩男委員から、「少年非行の実態から見た問題点と対応策について」、
(2) 八代委員から、「少子化と人口減少社会を考える−人口問題審議会報告書のポイント−」について、
(3) 氏家委員及び田中委員から、放送・出版界における取組について、
報告があり、報告の都度それに対する意見交換がなされ、最後に全体を通じた意見交換が行われた。
 
○ 第3回会議(平成10年4月2日(木)於 官邸大ホール)
 有馬委員から「幼児期からの心の教育の在り方について」(中央教育審議会中間報告)の内容について説明がなされ、これを踏まえた意見交換の後、第1 回、第2回の議論等も踏まえた全体的な意見交換が行われた。
 
○ 第4回会議(平成10年4月21日(火)於 官邸大ホール)
 「次代を担う青少年のために−これまでの会議における意見整理を中心として−」(案)を基に、総括的な意見交換・整理が行われた。


国民の皆様へ

 いつの時代にあっても、青少年は輝く未来の創造者です。間もなく二十一世紀を迎える我が国社会を担っていくのは、現在の青少年たちです。青少年たちは皆、将来を嘱望されていますが、このところ、その一部に凶悪事件が相次ぎ、薬物の乱用、いじめや登校拒否、さらには性をめぐる問題などが深刻になっているばかりでなく、更に拡大しようとしております。この問題は、今や日本人すべてが解決に努力しなければならない国民的課題になっていると確信します。

 こうした背景には、家庭、学校、地域社会などの環境の変化や、青少年自身、あるいは我々大人、さらには社会全体の価値観の多様化などの様々な変化があり、それらが密接にからみ合いながら影響し合っているものと考えられます。言いかえれば、戦後五十年の私たちの社会の在り方そのものが問われているともいえましょう。

 この問題の根底にあるのは何か、今一度深く思いをめぐらせ、家庭、学校、地域社会、さらにはマスメディアなどを含め、すべての人々が自らの問題として、青少年のことを考え、対応していくことが必要です。

 また、青少年自身にも、自分たちが今日どのような立場に置かれているか、今後どのように社会とかかわっていくか、自らの問題として真剣に考えてもらいたいと思います。

 この会議での議論が、より一層、政府を挙げての青少年問題への取組を促すとともに、国民一人一人が、青少年のことを思い、青少年のために行動していく契機になることを願ってやみません。

平 成 十 年 四 月

次代を担う青少年について考える有識者会議