「人権教育のための国連10年」に関する

国内行動計画の推進状況




平成12年(2000年)9月21日
人権教育のための国連10年推進本部


T.概観

 人権教育のための国連10年推進本部は、平成8年12月6日に「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画(中間まとめ)を公表し、さらに、同本部において中間まとめに対して各方面から寄せられた意見等に十分配慮しつつ検討を進め、平成9年7月4日「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画を取りまとめ、公表した。

 政府においては、この国内行動計画に沿って関係省庁において関連施策を推進しているところである。平成10年度以降、国内行動計画の推進状況について取りまとめを行っているが、このたび、平成11年度における実施状況を中心として、推進状況について取りまとめを行ったものである。

 平成9年7月に国内行動計画を取りまとめ、公表してから3年が経過したが、この間、国内行動計画に基づき関係省庁において所要の施策が着実に推進されてきているものと認識している。

 また、人権教育のための国連10年(1995年〜2004年)は、本年、中間年を迎えたが、我が国においては、これまで3年間の施策の推進状況を踏まえ、今後5年間、本国内行動計画に基づき、人権という普遍的文化を構築するため、更に一層の推進に努めていくことが重要であると認識しており、このような観点から、これまでの評価と今後の課題を推進状況の概要に併せて記述するとともに、今後の展望の章を設けている。

U.推進状況の概要

1.推進本部の取組

(1)関係省庁の連携
 人権教育の推進を関係省庁の緊密な連携・協力の下に、総合的かつ効果的に行うため、推進本部の副本部長省庁を中心として関係省庁会議を適宜開催し、取組状況等について意見交換等を行うとともに、国内行動計画関連施策について概算要求、予算措置の状況を取りまとめ、公表した。

(2)研修等の充実
 人権教育の推進に当たっては、人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等の充実が重要であり、それぞれの省庁において関係職員に対する研修等の充実に努めているところである。これらの研修等のより効果的な実施を図っていくため、「人権教育にかかる研修等に関する関係省庁連絡会」において、研修等の効果的な実施に資するよう研修等の内容、教材等について情報交換等を行い、人権教育にかかる研修等の充実が図られるよう取り進めているところである。

(3)政府の取組状況についての情報提供等
 推進本部では、国内行動計画を広く、地方公共団体、関係団体等に配付するとともに、インターネット上でも国民がアクセスできるよう官邸のホームページに掲載するなど、その周知を図ってきている。

(4)都道府県の取組状況の調査
 人権教育の推進に当たっては、地方公共団体が果たす役割が大きいことに鑑み、各都道府県における「人権教育のための国連10年」に関する推進体制、行動計画の策定状況等について調査を行った。

2.あらゆる場を通じた人権教育の推進

 我が国社会においては、依然として様々な人権問題が存在しており、近年の国際化、ボーダーレス化が進展している状況下においては、各種の啓発と相まって人権に関する教育の一層の充実を図る必要がある。さらに社会の複雑化、個々人の権利意識の高揚、価値観の多様化等に伴い、従来あまり問題視されなかった分野においても各人の人権が強く認識されるようになってきたことから、新たな視点に立った人権教育・啓発の必要性も生じてきている。このような、現状に鑑み、関係省庁において平成11年度に実施した人権教育の取組状況は以下の通りとなっている。

(1)学校教育における人権教育の推進
 平成10年度に告示された新しい小学校、中学校及び高等学校学習指導要領において、総則に「人間尊重の精神を具体的な生活の中に生かす」ことを掲げるなど、学校の教育活動全体を通じて人権に配慮した教育を行うことを一層推進することとした。
 さらに、学校、家庭、地域社会が一体となった教育上の総合的な取組を推進するとともに、人権意識を培うため、教育の在り方について幅広い観点から実践的な研究等を行い、指導方法の改善及び充実を図ったほか、人権教育資料等を作成・配布するなど、人権教育の充実を図った。
(評価と今後の課題)
 幅広い観点から実践的な取組を行い、人権教育の充実を図った。今後、人権擁護推進審議会答申を踏まえ、体験活動などを学校教育活動の中に取り入れるモデル的な取組について推進していく必要がある。

(2)社会教育における人権教育の推進
 社会教育においては、生涯の各時期に応じ、各人の自発的学習意思に基づき、人権に関する学習ができるよう、生涯学習の視点に立って、公民館等の社会教育施設を中心に学級・講座の開設や交流活動などの人権に関する多様な学習機会の充実と、そのために重要な役割を果たす指導者の養成を図るなど、社会教育における人権教育の充実に努めた。
(評価と今後の課題)
 これまで、家庭教育を支援する観点から、子育てネットワークづくりや、家庭教育のあり方を盛り込んだ冊子の配布等を実施した。また、小中学校における多様な学習機会のひとつとして人権教育に関する講座も開設されてきている。引き続き、多用な学習機会の充実が図られるよう努めることが必要である。

(3)企業その他一般社会における人権教育等の推進
 企業その他一般社会における人権教育等の推進については、人権尊重思想のさらなる普及高揚を図る観点から様々な啓発活動を実施した。具体的には、全国各地で、テレビ、ラジオ放送、新聞紙及び週刊誌等のマスメディアを利用した啓発活動や講演会、座談会及びシンポジウム等の開催、ポスターの掲出、啓発冊子の配付等を行うとともに、人権擁護委員等に対し、人権教育の指導者の育成を図るための研修を行うなど幅広い取組を実施した。また、企業等に対して就職の機会均等を確保するための公正な採用選考システムの確立が図られるよう指導・啓発を行った。
 また、これまで法務省の人権擁護機関、都道府県、市町村等の多様な主体によってそれぞれ独自に実施されてきた人権啓発活動について、平成10年度から人権啓発活動を実施する主体相互間の連携・協力体制を強化するための「人権啓発活動ネットワーク」の整備を推進している。
(評価と今後の課題)
 平成11年7月29日の人権擁護推進審議会の答申において、この都道府県レベルでの人権啓発活動ネットワーク事業を市町村レベルにも拡大する必要があるとされたことから、これを可能とするよう整備計画の見直しを行った。
 このように、人権教育等については様々な態様で実施され一定の啓発効果を上げているが、一方では、その内容・手法が必ずしも十分に国民の興味・関心・共感を呼び起こすものになっていないことなどの課題があることから、今後は、具体的な人権課題に即し、さらに国民に親しみやすくわかりやすいテーマや表現を用いるなど様々な創意工夫を凝らしていくとともに、マスメディアの活用、人権教育等の各実施主体相互の有機的な連携・協力の強化等を積極的に推進していくこととしている。
 労働省としては、かねてより就職差別を未然に防止するための啓発、指導を行ってきたところである。
 しかしながら、採用選考の過程において、家族の職業など本人に責任のない事項等を尋ねるなど就職差別につながるおそれのある事象が依然として見受けられ、このため、今後とも、差別のない公正採用選考システムの確立を図るための企業に対する指導、啓発をより一層推進していくこととしている。

(4)特定の職業に従事する者に対する人権教育の推進
 人権教育の推進に当たっては、人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対して、人権教育に関する取組を強化する必要があることから、特定の職業に従事する者に対する研修等の充実を図った。

 @ 検察職員
 人権を尊重した検察活動を徹底するため、検察官及び検察事務官に対する研修において、人権をめぐる諸問題等のテーマで講義を行った。特に、検察官については、その経験年数に応じ、憲法及び人権に関する諸条約における人権保障、女性、外国人及び児童の人権問題、同和問題等の各種人権課題等をテーマとする各種研修を実施した。
 (評価と今後の課題)
 基本的人権を尊重した検察活動を徹底するため、引き続き検察官及び検察事務官に対する各種研修における人権教育を実施し、また、日常の業務においても、上司による指導を通じ、人権尊重に関する理解の増進に努めたい。

 A 矯正施設・更生保護関係職員等

  ア 矯正施設における被収容者の人権の尊重を図る観点から、本年度も矯正研修所及び同支所(全国8ヶ所)等で実施した各種研修において、被収容者の権利保障・国際準則等に係る研修等を実施した。
  (評価と今後の課題)
 研修についてはほぼ定着したが、今後はその内容等の更なる拡充が課題である。

  イ 保護観察対象者及びその家族等の関係人のプライバシーの保護や、仮出獄取消し等における手続の適正な執行において、人権への配慮を引き続き徹底し、もって保護観察対象者等の人権尊重を図る観点から、更生保護関係職員及び保護司に対する各種研修を実施した。特に個人情報については、流出することのないよう、今後も取扱いを慎重にしていくこととしたい。
 (評価と今後の課題)
 人権については、保護観察等の処遇の場面で考慮されなければならないことの一つであり、今後も各種研修により、更生保護関係職員及び保護司の啓発に努めたい。

 B 入国管理関係職員
 外国人の人権に配慮した入管行政を遂行するため、各種職員研修の場を通じ人権関係諸条約に関しても研修を実施し、人権に対する意識の一層の向上を図っている。本年度も、若手入国警備官に対する研修等の中で、外国人の人権に係る講座を設け、人権研修について、これまで以上に充実強化を図った。
 (評価と今後の課題)
 各種職員研修の場を通じ、人権関係諸条約に関しても研修を実施した結果、同条約等に職員が一段と精通することになり、これまで以上に外国人の人権を尊重した公正かつ適正な入管行政が遂行されることとなった。今後さらに研修内容の充実を図り、職員の人権意識の高揚に努めることとしたい。

 C 教員・社会教育関係職員
 校長・教頭・中堅教員等に対し、教職員等中央研修講座において、「人権尊重の教育」及び「児童の権利に関する条約」というテーマの講義を行い、人権に係る研修を実施した。社会教育関係職員については、社会教育主事講習において人権に関する講義を実施した。また、都道府県教育委員会等においても、教員・社会教育関係職員に対する研修の中で、各地域の実状を踏まえ、広く人権意識の涵養が図られるよう取り計らった。
 (評価と今後の課題)
 研修や講習の中で、人権に関する講義を実施することにより、人権に対する理解と意識の向上が図られた。今後も引き続き人権教育の推進に努めていく。

 D 医療関係者
 医療関係者を育成する学校・養成所においては、患者本位の立場に立った人間性豊かな医療関係者の育成が求められていることにかんがみ、様々な教育活動を通じて患者の人権を十分に尊重するという意識・態度の育成の一層の充実を図った。
 (評価と今後の課題)
 医療関係者を育成する各学校に対し、今後とも患者の人権を十分に尊重するという意識・態度を育成するよう適切な対応を求めていく。

 E 福祉関係職員
 児童福祉事業に従事しようとする者に基礎的な理論及び技術を体得させる中で、人権についての教育を充実させたほか、介護福祉士等の養成において、人権意識の育成を充実させた。また、福祉事務所や児童相談所等の行政機関の職員、社会福祉施設従事者等については、業務に必要な知識及び技術を習得させるため実施する研修等において人権に関する内容を組み込み、人権意識の高揚を図ったほか、訪問介護員(ホームヘルパー)養成研修について、人権の尊重などについて充実を図るようカリキュラムの改正を行っている。さらに、各都道府県等において、全民生委員・児童委員を対象に、福祉施策、人権の尊重等に関する研修を実施した。
 (評価と今後の課題)
 祉関係職員を養成する機関等に対し、今後とも人権を十分に尊重するという意識・態度を育成するよう適切な対応を求めていく。

 F 海上保安官
 海上保安大学校等の学生に対しては、大学校等における憲法等の講義により人権に関する知識を教授している。また、海上保安官に対しては、階層別研修において、行政法、海上警察権論等の講義により、海上保安業務に関連する行政や法と人権との関わりを教授した。
 (評価と今後の課題)
 海上保安官に対する人権教育については、これまで海上保安大学校等や階層別研修における講義において人権尊重に関する教育を行ってきたところであり、今後とも、憲法、行政法、海上警察権論、刑事訴訟法等人権に関連する科目の講義等において、犯罪捜査、留置業務、警備業務、救難業務等における被疑者、被留置者、被害者、被救助者等の人権に配意した適正な職務遂行を期するための教育の充実に努めていくこととしたい。

 G 労働行政関係職員
 労働基準監督署職員及び公共職業安定所職員に対して、各職員の職位に応じてその節目ごとに行う研修において、人権教育を実施した。
 (評価と今後の課題)
 労働基準監督署職員及び公共職業安定所職員に対して、各職員の職位に応じてその節目ごとに行う研修において、人権教育を実施した。今後についても、引き続き人権教育の充実に努めていくこととしたい。

 H 消防職員
 消防大学校における人権擁護にかかる教育については、本科においては昭和60年度から、上級幹部科においては平成4年度から、幹部研修科においては、平成7年度から実施している。
 また、本科、上級幹部科においては従前から、幹部研修科においては平成10年度から独立した科目として位置づけ、人権教育の継続的な実施に努めているところである。
 講義内容については、人権擁護をめぐる国内外の諸問題を重点としている。
 (評価と今後の課題)
 受講生の多くは、消防機関において職務上監督の地位にある幹部職員であり、消防大学校における教育内容を踏まえ、職員に対する教育、指導に当たっている。
 今後とも消防職員に対し、消防大学校における人権擁護の講義を通じて、引き続き人権教育の推進を図っていく。

 I 警察職員
 「警察職員の職務倫理及び服務に関する規則」(平成12年国家公安委員会規則第1号)において人権の尊重を大きな柱とする「職務倫理の基本」を定めるとともに、職務倫理に関する教育を警察教養の最重点項目に掲げ、職場、各級警察学校のあらゆる機会をとらえ、人権教育を推進した。また、留置担当官等に対し、被留置者の人権への配慮にも重点を置いた適正処遇等に関する教育訓練の推進を図るとともに、「被害者対策要綱」に基づき、警察庁及び各都道府県警察において被害者対策に関する各種教育を推進した。
 (評価と今後の課題)
 警察職員に対する人権教育については、これまで、新たに採用された警察職員や昇任した警察職員に対し、警察学校において、人権尊重に関する授業や訓育を行っているほか、犯罪捜査、留置業務、被害者対策等に従事する者に対し、警察学校における専門教育や職場における研修会等により、被疑者、被留置者、被害者等の人権に配意した適正な職務執行を期するための教育を行ってきたところであり、今後もこれらの教育の一層の推進を図る。

 J 自衛官
 防衛大学校、防衛医科大学校及び陸・海・空自衛隊の幹部候補生学校等の学生に対して、憲法の理念(基本的人権の尊重等)及びジュネーブ条約の内容(戦時における文民の保護等)についての講義を行い、人権に関する教育を昨年度に引き続き実施した。
 (評価と今後の課題)
 自衛隊員に対する人権教育は、十分な効果を上げているものと認識しており、引き続き、自衛隊員に対する人権教育の推進に努めたい。

 K 公務員
 人事院では、各省庁の職員を対象として、公務員が人権問題を正しく認識し、それぞれの行政において適切な対応が行えるよう、新規採用職員、係員級、係長級、課長補佐級等の階層別研修などにおいて、人権教育の充実を図るとともに、各省庁が実施する研修における人権教育の充実について指導を行った。
 (評価と今後の課題)
 人事院においては、各省庁の職員を対象とした階層別研修等における人権教育の充実を引き続き図るとともに、各省庁における人権研修の実施状況を把握し、その充実について一層要請していくこととしている。

 L マスメディア関係者
 従来よりマスメディアに従事する関係者に対して人権教育のための取組みがなされている。
 例えば(社)日本新聞協会においては、新しい「新聞倫理綱領」を定め、旧綱領の「公正」の項に盛り込まれていた人権について、新たに「人権の尊重」の項を設け「新聞は人間の尊厳に最高の敬意を払い、個人の名誉を重んじプライバシーに配慮する」とされている。
 (評価と今後の課題)
 マスメディア関係者の人権尊重に関する理解の増進が更に図られるよう、マスメディア業界が自主的に取り組むことが期待される。

3.重要課題への対応

 「人権教育のための国連10年」国内行動計画において重要課題としてかかげられた、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、刑を終えて出所した人々などの問題に対して、平成11年度において以下のように取り組んだところである。

(1)女性
 「男女共同参画2000年プラン」に沿って、関係行政機関が連携を保ちつつ、総合的に諸施策を推進しているところである。特に、政策・方針決定過程への女性の参画の拡大、雇用における男女の均等取扱いの促進を図るとともに、職場におけるセクシュアルハラスメント防止対策、性犯罪被害者対策、多様な機会を通じた啓発・広報活動等に取り組んでいる。さらに、男女共同参画社会の形成を目指し青年男女を対象としたセミナーや、女性の生涯学習を推進するための学習機会の整備、女性の学習を通じたエンパワーメントの促進など男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実に努めている。
 さらに、平成11年6月23日、男女共同参画社会基本法が公布、施行された。同法は、男女共同参画社会の形成に関し、基本理念を定め、並びに、国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の基本となる事項等について定めている。現在、同法の周知に努めているところである。また、男女共同参画審議会は、平成11年5月に基礎的部分を中心とした「女性に対する暴力のない社会を目指して」を答申したところであるが、同答申を受けて総理府が実施した「男女間における暴力に関する調査」の結果やその後の状況の変化を踏まえつつ、引き続き女性に対する暴力に関して調査審議を行っているところである。
 (評価と今後の課題)
 平成11年6月に男女共同参画社会基本法が公布・施行され、男女共同参画社会の形成に関する取組の全体の枠組みが明らかにされた。
 政府においては、同基本法に基づき男女共同参画基本計画を策定する必要があるが、現在、男女共同参画審議会において男女共同参画基本計画を策定していく際の基本的考え方について調査審議中であり、その答申を踏まえて平成12年中に策定する予定としている。
 1999年4月から改正男女雇用機会均等法が全面施行され、雇用の分野における女性に対する差別が禁止されているところである。
 改正法施行後は、大企業を中心に法に沿った取組が進められており、募集については男女不問に切り替わり顕著な改善がみられるとともに、従来女性が少なかった営業職や技術職への女性の配置等の職域拡大や女性の管理職への登用を進める企業も出てきており、新たに女性を配置するために製造ラインの改善や配置に当たっての特別研修の実施等を行っている企業がみられるなど、雇用管理の見直しが進んでいる。
 さらに、セクシュアルハラスメント防止についても、相談室の設置や研修の実施などの取組が進んでいる。
 今後とも、取組に遅れがみられる零細・中小企業を中心として改正均等法の一層の周知徹底を図るとともに、法違反に対しては厳正な是正指導を行うなどにより、雇用の分野における男女均等の実現に努めていくこととしている。

(2)子ども
 第51回人権週間において「子どもの人権を守ろう」を強調事項に掲げ、全国各地で様々な啓発活動を実施した。また、次代を担う青少年の健全な育成を図る観点から、7月の「青少年の非行問題に取り組む全国強調月間」や11月の「全国青少年健全育成強調月間」における集中的な広報啓発活動など、青少年の健全育成及び非行防止活動を総合的に推進した。
 学校教育等においては、幼児児童生徒の人権に十分配慮し、一人一人を大切にした教育指導や学校運営が行われるよう、人権教育に関する調査研究等人権に関する学習活動を総合的に推進した。また、学校におけるカウンセリング等の機能の充実のため、「スクールカウンセラー」や「心の教室相談員」の活用、効果等に関する実践的な調査研究を行い、さらに、いじめ問題に関するインターネット等を利用した相談機関・行政資料・対処事例・取組事例の情報提供やいじめ問題の解決のため地域社会と一体となった取組を推進した。また、いじめ問題をはじめ、自分の生き方や家族・友人関係などで悩みを抱えている子どもたちが、夜間、休日にかかわらず、いつでも気軽に24時間、電話などにより相談できる体制を整備した。
 子どもに対する虐待及び非行等の養育上の諸問題に対応するために、養護施設等の民間施設の専門性を活用して近隣地域の家庭から相談を受け、必要に応じて在宅支援を行うなどして、児童の権利擁護、健全育成、子どもの心の健康づくり等に関する事業を行った。また、平成11年度より児童に対する虐待が社会的な課題となっていることから、地域住民への啓発ビデオ等の作成、地域連絡網整備の促進、関係省庁・団体の対策協議会発足などの児童虐待に対する取り組みを行った。
 犯罪等の被害に遭った少年に対しては、都道府県における少年相談窓口の整備充実や、カウンセリング等による継続的支援活動を実施した。
 なお、平成11年5月、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律が成立し、同年11月に施行されたことに伴い、同法による積極的な取締り及び指導の保護等を推進した。
 (評価と今後の課題)
 「スクールカウンセラー」や「心の教室相談員」の配置により、児童生徒が悩みや不安を気軽に相談でき、問題行動等の予防や解消につながったなどの効果があった。
 これまでの成果を踏まえ、今後とも学校における教育相談体制の充実を図っていく必要がある。
 いじめ問題については、いじめ問題対策情報センターにおいて、これまで、いじめ問題に関する様々な情報提供等を行い、いじめ問題の解決や取組の支援をしてきたところである。平成11年度は、いじめ問題等で悩む子どもたちにより手厚い支援が行われるよう、電話相談の時間を延長した。
 今後は、時間帯ごとの相談者の傾向等を踏まえ、きめの細かい対応が可能となるような体制を作ることが課題となっている。
 また、「子ども24時間電話相談」については、今後は全都道府県への整備を目指すこととしている。

(3)高齢者
 高齢社会対策大綱に基づき高齢社会対策を総合的に推進しているところである。特に、本格的な高齢社会の到来に向けて、活力ある豊かな社会を形成するため、高齢者の学習機会の体系的整備と学習活動を通じた社会参加活動を総合的に促進するための条件整備を図り、10月を高年齢者雇用促進月間として定め、高齢者の雇用就業問題について事業主をはじめ広く国民全体の理解と協力を求めることを目的として啓発活動等を実施した。
 なお、平成11(1999)年は、国連の提唱による国際高齢者年であることから、国際高齢者年中央記念式典の開催をはじめとする各種事業を行った。
 また、平成11年度百歳到達者に対し、内閣総理大臣より祝状等を贈呈するとともに、平成11年9月15日(敬老の日)から7日間を「敬老の日・老人保健福祉週間」と定め、国民一人一人が高齢者問題を身近なこととして理解するよう運動を行った
 (評価と今後の課題)
 高齢社会対策大綱に基づき高齢社会対策を総合的に推進しているところであり、国際高齢者年における諸活動なども併せて、高齢社会の諸問題について一層の周知・啓発がなされたところである。今後とも、同大綱に沿って、高齢社会対策を総合的かつ効果的に推進していく必要がある。
 高年齢者雇用促進月間では、高齢者の雇用問題等の取り組みについて先進的かつ積極的な企業等及び高齢者が働きやすいよう職場改善等を行い高齢者の継続雇用の促進を図っている企業に対して労働大臣表彰を実施し、国民の高齢者雇用に関する意識の向上を図っている。
 これらの表彰は、各種媒体を通じて広報され、広く国民全体に周知されており、高齢者雇用に関する企業のインセンティブを高めることにつながっている。
 また、本月間中に積極的に高齢者向けの求人開拓及び集団面接会を実施しており、高齢者の雇用・就業問題の改善についても一定の効果を上げている。
 今後、我が国の高齢化がますます進展することに伴ない、高齢者の雇用・就業対策がより重要になると考えられることから、高齢者雇用に関する啓発・広報活動の効果的・効率的な実施のための検討を進め、今後一層国民の高齢者雇用に関する意識の向上を図っていくこととする。

(4)障害者
 障害者の「完全参加と平等」を実現し、障害者自らの社会的自立と社会参加への意欲ならびに国民の障害者問題に対する理解と認識をより一層高めることを目的として、障害者週間(12月3日〜9日)中に「障害者の日・記念の集い」や「障害のある人々を理解するためのポスター・メッセージ展」等様々な啓発活動を実施した。
 また、平成11年8月には、障害者施策推進本部において、障害者であることを理由に資格取得等を制限している「障害者に係る欠格条項の見直し」についての方針を決定した。平成11年度末において、対象63制度のうち3制度について見直しが終了し(いずれも廃止)、他60制度は見直し中である。一方学校教育の場においては、障害のある子どもに対する理解認識の推進のため、指導資料等の作成・配付や、地域や学校等の実情に応じた多様で継続的な交流教育を推進する事業を実施した。
 (評価と今後の課題)
 障害のある子どもに対する理解と認識を推進していく上で、分かりやすい資料やビデオの作成・配布が効果的であり、関係者の間で研修や実際の教育相談に広く活用されている。また、交流教育について、積極的な交流活動を通じて、障害のある子どもに対する理解と認識が深まったことが報告されている。
 障害のある人の「完全参加と平等」及びノーマライゼーションの理念を社会に定着させるためには、社会を構成する人々が障害及び障害のある人に対して十分な理解をし、配慮していくことが必要である。そのため、障害のある人に対する理解を深めるための啓発・広報活動として、毎年、「障害者の日記念の集い」の開催、障害者週間における行事、「心の輪を広げる体験作文・障害者の日ポスター」の募集及び表彰、年次報告書(白書)の作成、障害者施策推進地域会議の開催を行ってきた。
 国内行動計画策定以降の啓発・広報活動の結果、国民の障害及び障害のある人への理解が深まった。その成果として、障害者であることを理由に資格取得等を制限している障害者に係る欠格条項の見直しについて政府全体で取り組むこととなったこと、また、事業者に義務を課す「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(いわゆる交通バリアフリー法)が成立し、施行されようとしていること等が挙げられる。
 今後とも、ノーマライゼーションの理念を実現するために、障害のある人に対する国民一人一人の理解と認識を深めるための関係施策の推進、啓発・広報活動を推進していく必要がある。
  ○ 障害者雇用促進月間の設定、全国障害者雇用促進大会
 昭和38年より実施されている障害者雇用促進月間においては、障害者の社会参加と職業的自立を喚起するとともに、障害者の雇用問題に関する国民の関心と理解を図るための各種施策を行っているところである。
 平成11年度においては、当月間中に開催された全国障害者雇用促進大会において多くの国民に対して障害者雇用に対する理解を促し、また、月間中に集中的に開催された集団選考会等を通じて多くの障害者の雇用促進に努めたところである。
 今後とも、当月間を多くの障害者の雇用につながるような広報啓発活動の一環として実施することにより広く障害者雇用につての国民の関心及び企業の理解に努めていくこととする。
  ○ 全国障害者技能競技大会の開催
 全国障害者技能競技大会は、障害者の職業能力の開発を促進し、技能労働者として社会に参加する自信と誇りを与えるとともに、障害者の技能を通じて事業主をはじめ、広く国民に対し、障害者に対する社会の理解と認識を高め、その雇用の促進と地位の向上を図ることを目的として、昭和47年度より開催されており、平成11年度をもって第24回目を迎えたところである。
 障害者の技能競技大会を開催することにより、事業主をはじめ広く国民に対し、障害者に対する社会の理解と認識を高め、障害者の雇用の促進と地位の向上に資するものとして有効な施策である。
 今後ともノーマライゼーションの観点から、本事業を実施し、障害者の職業能力の開発・向上を図るとともに、広く国民の社会的理解を通じた雇用の促進を図っていくこととしている。
  ○ 障害者求人開拓推進員の配置
 厳しい雇用失業情勢のなかで、特に就職の困難な障害者については、平成10年7月より公共職業安定所に障害者向けの求人開拓推進員を配置して、個別企業に対する障害者雇用の協力要請、各種助成制度の周知等を行いながら、障害者の雇用の場の確保を図ってきたところである。
 平成11年度においては、障害者の就職率も前年度に比べて上昇するなど、障害者の就職状況に改善がみられているところである。
 今後とも、企業等に対する求人の要請を強力に行っていくとともに、個々の求職障害者に適した職種、職域における求人の開拓に努めていくこととしている。

(5)同和問題
 「閣議決定(同和問題の早期解決に向けた今後の方策について平成8年7月26日)」に基づき、同和問題に関する差別意識の解消に向けた教育及び啓発に関する事業については、人権教育・人権啓発の事業に再構成して推進することとされた。そこで従来、差別意識の解消に取り組んできた地域改善対策啓発活動事業においては、人権尊重思想の普及高揚事業に再構成し、様々な啓発活動を実施した。なお、第51回人権週間には「部落差別をなくそう」を強調事項に掲げ、啓発活動を展開した。教育に関する事業においては、教育総合推進地域事業等として、学校、家庭及び地域社会が一体となった教育上の総合的な取組等を推進した。また、事業者や雇用主等に対しても雇用主に対する指導・啓発事業等において指導や啓発活動等を実施した。さらに隣保館においても、地域社会全体の中で、福祉の向上や人権啓発の住民交流の拠点となる開かれたコミュニティーセンターとして総合的な活動の推進を図った。
 (評価と今後の課題)
 教育に関する事業については、幅広い観点から実践的な取組を行い、人権教育の充実を図った。今後、人権擁護推進審議会答申を踏まえ、地域における多様な学習活動を推進するとともに、体験活動などを学校教育活動の中に取り入れるモデル的な取組について推進していく必要がある。
 また、同和関係住民の就職の機会均等を確保することが同和問題解決の中心的課題であるとの観点から、雇用主に対し、人権に配慮した公正な採用選考システムの確立が図られるよう、ポスター、カレンダー等の啓発資料の作成・配布、新聞広報等各種広報媒体を通じた啓発活動、公正採用人権啓発推進員研修会の開催及び企業トップクラス研修の開催をし、雇用主に対する啓発、指導を行ってきたところである。今後とも、雇用主に対する啓発、指導を一層推進していくこととしている。

(6)アイヌの人々
 アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るため、「財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構」の行う事業に対して助成等を行った。また、生活館において、アイヌの人々の生活の改善向上・啓発等の活動の推進のための事業を実施した。さらに、アイヌの人々に対する人権侵害の発生を防止するため、啓発冊子「アイヌの人々と人権」(改訂版)を作成し、全国に配付するなどの啓発活動を実施した。
 (評価と今後の課題)
 平成12年度から北海道開発庁、文部省、北海道、財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構(以下「アイヌ文化振興財団」という。)及び社団法人北海道ウタリ協会との間でアイヌ文化振興等施策推進会議を設置し、アイヌ文化振興財団の行う事業のフォローアップ等を通じて今後の施策の充実に向けた検討を行う。

(7)外国人
 第51回人権週間において、「国際化時代にふさわしい人権意識を育てよう」を強調事項に掲げ、外国人に対する偏見・差別を除去するため、全国各地で様々な啓発活動を実施した。また、東京、大阪、名古屋、福岡、広島、高松の各法務局及び神戸、松山地方法務局に通訳を配置した「外国人のための人権相談所」を開設し、外国人のための人権相談体制を充実させている。外国人に関する具体的事案としては、北海道小樽市にある一部の入浴施設が外国人の入浴を拒否した事案について、法務省の人権擁護機関は、外国人の入浴を拒否している入浴施設に対して個別の啓発を実施するとともに、道内の市町村において人種差別撤廃条約に関するリーフレットを街頭で配布する等の地域啓発を実施した。
 (評価と今後の課題)
 上記のように、外国人に対する偏見・差別をなくすため、人権啓発・相談体制を充実させてきたが、日本における外国人の割合が大きくなるにつれて、外国人同士や、日本人と外国人間の人権を巡る問題はより複雑になっているため、今後とも、国民のすべてが真に国際化時代にふさわしい人権意識をはぐくむよう、創意工夫を凝らした施策を積極的に推進していくこととしている。

(8)HIV感染者等
 エイズに関する正しい知識の普及のため、エイズ予防ポスターの作成、「世界エイズデー」キャンペーン事業、保健所における青少年へのエイズ教育の実施等様々な啓発活動を実施した。また、学校教育においては、エイズ教育指導の充実のためエイズ教育担当者に対する都道府県研修会等の実施や、小学生用ポスター及び中・高校生用エイズ教育教材を作成し配布した。
 また、職場におけるエイズに関する正しい知識の普及を図るため、基盤整備として産業医等産業保健関係者をはじめ企業の人事労務担当者に対する講習会を開催した。さらに、平成11年10月告示予定の「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」においても、本国内行動計画の趣旨を踏まえた人権啓発事業と連携していくことを目標として掲げているところである。
 ハンセン病に対する差別や偏見の解消に向けては、ハンセン病療養所と地域住民との社会交流事業の実施や啓発普及推進のためのシンポジウムの実施や、ポスター等を作成して配布した。
 (評価と今後の課題)
 文部省においては、エイズ教育教材等作成事業を平成4年度から開始しており、その間、新たに、小学生用、中学生用教材の作成・配布、情報ネットワーク事業の実施、指導者用ビデオの作成・配布等の施策を展開してきたところである。今後は、エイズ教育を含めた感染症対策のより一層の充実を図っていくことが課題となっている。
 厚生省においては、エイズに関する正しい知識の普及のためのエイズ予防ポスターの作成・配布、「世界エイズデー」キャンペーン事業の実施等、また、ハンセン病に対する差別や偏見の解消に向けたシンポジウムの開催、ハンセン病療養所入所者と地域住民との社会交流事業の実施等の施策を展開してきたところである。今後とも、普及啓発活動を推進することで、より一層エイズ及びハンセン病に関する正しい知識の普及を図っていくこととしている。
 労働省においては、職場におけるエイズに関する正しい知識の普及を図るため、基盤整備として産業医等産業保健関係者をはじめ企業の人事労務担当者に対する講習会を開催した。今後とも当該講習会を実施する予定である。

(9)刑を終えて出所した人
 犯罪や非行を防止し、罪を犯した人や非行に陥った少年の更生を支えるため、地域住民の理解と参加を得て、第49回社会を明るくする運動を実施する中で、刑を終えて出所した人に対する偏見・差別を除去し、これらの者の社会復帰に資するための啓発活動を実施した。
 (評価と今後の課題)
 第49回“社会を明るくする運動”は全国で活発な活動が展開され、その一環として、刑を終えて出所した人々に対する地域の人々の理解と協力を求める活動を行った。
 しかし、刑を終えて出所した人に対する差別や偏見はまだ課題として残っているので、今後も、“社会を明るくする運動”を一層推進し、その理解と協力を訴えていきたい。

4.国際協力の推進

 平成11年度においては、第54回国連総会で「人権教育のための国連10年行動計画」の実施に向けて各国の一層の貢献等を求める「人権教育/人権広報活動」決議案の共同提案国となり、同案は決議54/161として採択された。
 また、国連に設けられた「人権分野における諮問サービス及び技術的援助のための自発的基金」をはじめとする人権関係基金に対する拠出を通じて人権教育関連のプロジェクトに寄与するとともに、二国間でもカンボジア等に対する人権教育関連の協力を継続した。
 また、平成12年の1月には、国連人権高等弁務官事務所主催により、「人権教育に関する国内行動計画に関するアジア・太平洋地域会期間ワークショップ」を東京で開催した。同ワークショップにはアジア太平洋地域より、29カ国、5つの国内機構、NGOの代表等多数の参加があり、参加者より活発な議論が行われた後、最終日には結論文書を採択した。
 (評価と今後の課題)
 「「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画」をいち早く策定した我が国としては、国際的に人権教育の重要性が認識され、人権尊重の態度と理解が涵養されるよう、今後とも、所要の国際協力に努めていく。

5.その他

(1)人権擁護推進審議会について
 国内行動計画の実施に当たっては、人権擁護施策推進法に基づき法務省に設置された人権擁護推進審議会における検討結果を反映させることとされている。
 人権擁護推進審議会は、平成9年5月に、第1回会議が開催され、法務大臣、文部大臣及び総務庁長官から「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について」(諮問第1号)、法務大臣から「人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策の充実に関する基本的事項について」(諮問第2号)、それぞれ諮問され、諮問第1号については、平成11年7月29日に開催された第29回会議において答申がなされた。
 答申においては、すべての人々の人権が尊重される平和で豊かな社会が実現されるためには、国民一人一人に人権尊重の理念についての正しい理解が十分定着するように努めることが重要であり、国を始めとする人権教育・啓発の実施主体のそれぞれの役割を明確にした上で、これらの実施主体がその役割に応じて相互に連携協力して人権教育・啓発を総合的かつ効果的に推進する必要があるとし、そのための施策として、@人権啓発活動ネットワーク事業の充実、A国レベルにおける人権教育・啓発の連絡協議体制の整備、B(財)人権教育啓発推進センターの充実、C啓発推進指針(ガイドライン)の策定・周知、D人権啓発地方委託事業の充実、Eマスメディアを活用した啓発活動の推進等を提言して、これを実現するため速やかに所要の行財政措置を講ずることを要望している。また、「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画の実施に当たって、本答申を踏まえた一層効果的な取組が行われることを期待するとしている。
 これを受けて、政府としては、平成12年度予算に所要の経費を盛り込み、答申で提言された諸施策の実現を図っているところである。
 なお、人権擁護推進審議会においては、平成11年9月17日に開催された第30回会議から、諮問第2号に係る調査審議が進められている。

(2)中央省庁再編後の人権教育・人権啓発のさらなる推進に向けて
 法務省では、従来より人権啓発や人権侵犯事件の調査処理等の人権擁護行政を所管してきたが、平成10年6月12日に施行された中央省庁等改革基本法に、法務省の編成方針として、「人権擁護行政について、その充実強化を図ること」が盛り込まれた。これを踏まえ、平成11年7月16日に公布された法務省設置法においては、その所掌事務として、「人権啓発」及び「人権相談」を明記し、さらに「人権侵犯事件に係る調査」と並んで「被害の救済及び予防」を掲げている。

(3)地方公共団体の取組状況について
 本行動計画の推進に当たっては、地方公共団体の果たす役割が大きいことから、地方公共団体において本行動計画の趣旨に沿った自主的な取組が展開されることを期待しているが、既に、平成10年の調査時点において、全都道府県で人権教育のための国連10年に係る担当部局を決定している。
 また、人権教育の国連10年に対応するための行政機構内の横断的組織(推進本部等)が、平成12年8月時点で、35都府県で設置されている。平成10年7月時点の20府県と比較して、15都府県で増加している。
 さらに、人権教育の国連10年に関する行動計画を策定しているのは平成12年8月時点で26府県で、平成10年7月の6府県と比較すると、20県で増加している。
 このほか、市町村においても推進本部等の横断的組織を設置したり、行動計画を策定するなど積極的に取り組むところも増えており、全体として、地方公共団体における取組は順調に推移しているものと考えられる。

V.今後の展望

 我が国では、平成9年7月に国内行動計画を取りまとめ、公表してから3年が経過した。この間、国内行動計画に基づき関係省庁において所要の施策が着実に推進されてきているものと認識している。
 また、平成11年7月の人権擁護推進審議会答申においては、所掌事務との関連で人権にかかわる啓発活動を行っている府省庁等が、それぞれの教育・啓発活動についての情報を交換し連携するための方策を協議し、人権教育・啓発の総合的な推進を図る連絡協議体制を整備することが肝要である旨の提言がなされており、現在、これに向けての諸準備が行われている。今後、新たに整備される関係省庁の連絡協議体制において、人権教育・啓発推進のための具体的諸方策に関し情報交換等が行われることにより、人権教育のための国連10年推進本部における関係省庁の緊密な連携・協力と相まって、我が国における人権教育のより効果的な推進が図られることが期待される。
 最後に、「人権教育のための国連10年」推進本部としては、今回の省庁再編の趣旨を踏まえ、人権啓発を所掌することとなる法務省を初め、関係行政機関が十分に協力しつつ、我が国における人権という普遍的文化の構築に向けて、人権教育・啓発に関する施策の一層の推進に努めていくこととしている。