「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画の推進状況
目 次
I.概観
II.推進状況の概要
1.推進本部の取組
(1)関係府省の連携
(2)研修等の充実
(3)政府の取組状況についての情報提供等
(4)都道府県の取組状況の調査2.あらゆる場を通じた人権教育の推進
(1)学校教育における人権教育の推進
(2)社会教育における人権教育の推進
(3)企業その他一般社会における人権教育等の推進
(4)特定の職業に従事する者に対する人権教育の推進3.重要課題への対応
(1)女性
(2)子ども
(3)高齢者
(4)障害者
(5)同和問題
(6)アイヌの人々
(7)外国人
(8)HIV感染者等
(9)刑を終えて出所した人4.国際協力の推進
5.その他
(1)人権擁護推進審議会について
(2)人権教育・啓発中央省庁連絡協議会の設置について
(3)人権教育及び人権啓発の推進に関する法律の成立について
(4)地方公共団体の取組状況についてIII.今後の展望
IV.「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画の関連施策実施状況(平成12年度)
2.あらゆる場を通じた人権教育の推進
(1)学校教育における人権教育の推進
(2)社会教育における人権教育の推進
(3)企業その他一般社会における人権教育等の推進
(4)特定の職業に従事する者に対する人権教育の推進3.重要課題への対応
(1)女性
(2)子ども
(3)高齢者
(4)障害者
(5)同和問題
(6)アイヌの人々
(7)外国人
(8)HIV感染者等
(9)刑を終えて出所した人4.国際協力の推進
5.計画の推進
参考
「人権教育のための国連10年」に係る各都道府県の取組状況について
1.各都道府県の担当部局について
2.行政機構内の横断的組織の設置について
3.行動計画の策定状況について
4.その他
(別紙)各都道府県の担当部局
(2)研修等の充実
人権教育の推進に当たっては,人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対する研修等の充実が重要であり,それぞれの府省において関係職員に対する研修等の充実に努めている。これらの研修等のより効果的な実施を図っていくため,「人権教育にかかる研修等に関する関係省庁連絡会」において,研修等の効果的な実施に資するよう研修等の内容,教材等について情報交換等を行い,人権教育にかかる研修等の充実が図られるよう取り進めている。
(3)政府の取組状況についての情報提供等
推進本部では,本国内行動計画を広く,地方公共団体,関係団体等に配布するとともに,インターネット上でも国民がアクセスできるよう官邸のホームページに掲載するなど,その周知を図ってきている。
(4)都道府県の取組状況の調査
人権教育の推進に当たっては,地方公共団体が果たす役割が大きいことに鑑み,各都道府県における「人権教育のための国連10年」に関する推進体制,行動計画の策定状況等について調査を行った。
2.あらゆる場を通じた人権教育の推進
我が国社会においては,依然として様々な人権問題が存在しており,近年の国際化,ボーダーレス化が進展している状況下においては,各種の啓発と相まって人権に関する教育の一層の充実を図る必要がある。さらに社会の複雑化,個々人の権利意識の高揚,価値観の多様化等に伴い,従来あまり問題視されなかった分野においても各人の人権が強く認識されるようになってきたことから,新たな視点に立った人権教育・啓発の必要性も生じてきている。
さらに,平成12年12月には「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が公布・施行され,学校,地域,家庭等の様々な場を通じて,国民が人権尊重の理念に対する理解を深め,これを体得することができるよう,人権教育及び人権啓発に関する施策を推進することとされた。
このような現状に鑑み,関係府省において平成12年度に実施した人権教育の取組状況は以下のとおりとなっている。
(1)学校教育における人権教育の推進
平成10年度に告示された新しい小学校,中学校及び高等学校学習指導要領において,総則に「人間尊重の精神を具体的な生活の中に生かす」ことを掲げるなど,学校の教育活動全体を通じて人権に配慮した教育を行うことを一層推進することとした。
さらに,学校,家庭,地域社会が一体となった教育上の総合的な取組を推進するとともに,人権意識を培うため,教育の在り方について幅広い観点から実践的な研究等を行い,指導方法の改善及び充実を図ったほか,平成12年度からは,人権擁護推進審議会答申を踏まえ,「人権教育に関する学習教材等の状況調査」を実施するなど,人権教育の充実を図った。
(評価と今後の課題)
幅広い観点から実践的な取組を行い,人権教育の充実を図った。今後も引き続き,人権擁護推進審議会答申及び人権教育及び人権啓発の推進に関する法律を踏まえ,体験活動などを学校教育活動の中に取り入れるモデル的な取組について推進していくことが必要である。
(2)社会教育における人権教育の推進
社会教育においては,生涯の各時期に応じ,各人の自発的学習意思に基づき人権に関する学習ができるよう,生涯学習の視点に立って,公民館等の社会教育施設を中心に学級・講座の開設や交流活動などの人権に関する多様な学習機会の充実と,そのために重要な役割を果たす指導者の養成を図るなど,社会教育における人権教育の充実に努めた。
(評価と今後の課題)
これまで,家庭教育を支援する観点から,地域における子育てを支援するネットワークづくりや,家庭教育の在り方を盛り込んだ冊子の配布等を実施した。また,多様な学習機会の一つとして人権教育に関する講座も開設されてきている。引き続き,多様な学習機会の充実が図られるよう努めることが必要である。
(3)企業その他一般社会における人権教育等の推進
企業その他一般社会における人権教育等の推進については,人権尊重思想の更なる普及高揚を図る観点から様々な啓発活動を実施した。具体的には,全国各地において,テレビ,ラジオ放送,新聞紙及び週刊誌等のマスメディアを利用した啓発活動や講演会,座談会並びにシンポジウム等の開催,ポスターの掲出,啓発冊子の配布等を行うとともに,人権擁護委員等に対し,人権教育の指導者の育成を図るための研修を行うなど幅広い取組を実施した。また,企業等に対して就職の機会均等を確保するための公正な採用選考システムの確立が図られるよう指導・啓発を行った。
さらに,これまで法務省の人権擁護機関,都道府県,市町村等の多様な主体によってそれぞれ独自に実施されてきた人権啓発活動について,平成10年度から人権啓発活動を実施する主体相互間の連携・協力体制を強化するための「人権啓発活動ネットワーク」の整備を推進してきたが,平成12年9月までに,都道府県レベルのネットワークの構築が完了した。
(評価と今後の課題)
現在は,この都道府県レベルでの人権啓発活動ネットワーク事業を市町村レベルにも拡充する必要があると提言している平成11年7月29日の人権擁護推進審議会の答申を受けて,平成12年度から,市町村レベルのネットワークの構築に努めている。
このように,人権教育等については様々な態様で実施され一定の啓発効果をあげているが,一方では,その内容・手法が必ずしも十分に国民の興味・関心・共感を呼び起こすものになっていないことなどの課題がある。今後は,具体的な人権課題に即し,さらに国民に親しみやすく,わかりやすいテーマや表現を用いるなど様々な創意工夫を凝らしていくとともに,マスメディアの活用,人権教育等の各実施主体相互の有機的な連携・協力の強化等を積極的に推進していく。
厚生労働省においては,かねてより就職差別を未然に防止するための啓発,指導を行ってきたところである。しかしながら,採用選考の過程において,家族の職業など本人に責任のない事項等を尋ねるなど就職差別につながるおそれのある事象が依然として見受けられ,このため,今後とも,差別のない公正採用選考システムの確立を図るための企業に対する指導,啓発をより一層推進していく。
(4)特定の職業に従事する者に対する人権教育の推進
人権教育の推進に当たっては,人権にかかわりの深い特定の職業に従事する者に対して,人権教育に関する取組を強化する必要があることから,特定の職業に従事する者に対する研修等の充実を図った。
3.重要課題への対応
「人権教育のための国連10年」国内行動計画において重要課題として掲げられた,女性,子ども,高齢者,障害者,同和問題,アイヌの人々,外国人,HIV感染者等,刑を終えて出所した人々などの問題に対して,平成12年度において以下のように取り組んだところである。
(1)女性
平成12年度においては,「男女共同参画社会基本法」及び「男女共同参画2000年プラン」にのっとり,関係行政機関が連携を保ちつつ,総合的に施策を推進した。また,男女共同参画社会の形成を目指し青年男女を対象としたセミナーや,女性の学習を通じたエンパワーメントの促進,幼児期から男女共同参画の視点に立った教育を家庭・地域で推進するための事業等,男女共同参画に関する学習機会の充実を図った。
平成12年12月,男女共同参画社会基本法に基づく初の法定計画として「男女共同参画基本計画」を策定した。本計画の策定に当たっては「男女共同参画2000年プラン」の内容を基礎に,男女共同参画審議会答申「男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方」(平成12年9月)及び「女性に対する暴力に関する基本的方策について」(平成12年7月)を受け,また国連特別総会「女性2000年会議」(平成12年6月)の成果を踏まえている。本計画では,「政策・方針決定過程への女性の参画の拡大」,「雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保」,「農山漁村における男女共同参画の確立」,「女性に対するあらゆる暴力の根絶」,「男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実」などの11の重点目標を掲げ,それぞれについて施策の基本的方向性及び具体的施策の内容を示している。
また,平成13年1月,中央省庁等改革により,内閣府に新たに,重要政策に関する会議の一つとして男女共同参画会議が設置されるとともに,男女共同参画局が設置され,男女共同参画社会の形成の促進に関する推進体制の充実・強化が図られた。
(評価と今後の課題)
男女共同参画社会基本法の制定,男女共同参画基本計画の策定,男女共同参画会議及び男女共同参画局の設置により,我が国における男女共同参画社会の形成の促進に関する取組・体制は格段に充実,強化された。今後も引き続き,基本法及び基本計画にのっとり,政府一体となって,関係施策を総合的,計画的に推進していく。
男女雇用機会均等法の履行確保を図るため,企業における男女差別的取扱いを是正するとともに,女性労働者と事業主との間の男女差別的取扱いに関する個別紛争については,都道府県労働局長の助言,指導,勧告及び機会均等調停委員会の調停を積極的に実施することにより,その解決を援助し,そのほとんどが解決された。
しかしながら,採用,配置,昇進等において,男女労働者間に事実上の格差が生じていることから,実質的な男女均等取扱いの実現を目指し,格差解消のための企業のポジティブ・アクションの取組を促進していく。特に,ポジティブ・アクションの取組を広く普及させていくためには,企業自らが主体的にポジティブ・アクションに取り組むことが必要であり,経営者団体を通じ傘下の企業に対し働きかけを行っていくことが効果的であることから,経営者団体との連携の下に女性の活用推進協議会を開催し,官民が連携して広くポジティブ・アクションの普及を図っていく。
職場におけるセクシュアルハラスメント防止対策については,大企業では防止対策が講じられているものの,中小企業等では取組にまだ遅れがみられる。また,相談窓口の設置はされているが十分機能していない,実際にセクシュアルハラスメントが生じた場合に適切な対応がなされていない等の現状がみられる。このため,均等法の一層の周知徹底を図るとともに,実効あるセクシュアルハラスメント防止対策を徹底していく。
また,これまで,性別に基づく固定的な役割分担意識を是正し,人権尊重を基盤とした男女平等観の形成を促進するため,男女平等を推進する教育・学習の充実を図ってきた。引き続き,男女共同参画を推進し,多様な選択を可能にする教育・学習の充実に努めることとする。
さらに,平成12年11月には,ストーカー行為等の規制等に関する法律が施行されたことに伴い,警察では同法の適切な運用に努めることとする。
(2)子ども
第52回人権週間において「子どもの人権を守ろう」を強調事項に掲げ,全国各地で様々な啓発活動を実施した。また,次代を担う青少年の健全な育成を図る観点から,平成12年7月の「青少年の非行問題に取り組む全国強調月間」や同年11月の「全国青少年健全育成強調月間」における集中的な広報啓発活動など,青少年の健全育成及び非行防止活動を総合的に推進した。
学校教育等においては,幼児児童生徒の人権に十分配慮し,一人一人を大切にした教育指導や学校運営が行われるよう,人権教育に関する調査研究等人権に関する学習活動を総合的に推進した。また,学校におけるカウンセリング等の機能の充実のため,「スクールカウンセラー」や「心の教室相談員」の活用,効果等に関する実践的な調査研究を行った。また,いじめの問題をはじめ,自分の生き方や家族・友人関係などで悩みを抱えている子どもたちが,夜間,休日にかかわらず,いつでも気軽に24時間,電話などにより相談できる体制を整備した。
子どもに対する虐待及び非行等の養育上の諸問題に対応するために,養護施設等の民間施設の専門性を活用して近隣地域の家庭から相談を受け,必要に応じて在宅支援を行うなどして,児童の権利擁護,健全育成,子どもの心の健康づくり等に関する事業を行った。平成12年5月に児童虐待の防止等に関する法律が成立し,同年11月に施行されたことに伴い,同法の趣旨を踏まえ,地域住民への啓発ビデオ,児童虐待防止,通告を促進するため,リーフレット等の作成,地域連絡網整備の促進,関係府省・団体の対策協議会の開催などの児童虐待に対する取り組みを行った。また,都道府県教育委員会等に対して,通知を発出し,同法の趣旨等について学校教育関係者及び社会教育関係者に対する周知を依頼した。
犯罪等の被害に遭った少年に対しては,都道府県における少年相談窓口の整備充実や,カウンセリング等による継続的支援活動を実施した。なお,平成11年5月,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律が成立し,同年11月に施行されたことに伴い,同法による積極的な取締り及び指導の保護等を推進した。
さらに,平成13年2月には,外務省及び(財)日本ユニセフ協会の共催により,「児童の商業的性的搾取に関するシンポジウム:第2回世界会議に向けて」を京都で開催した。同シンポジウムは,同年12月に我が国,UNICEF,ECPAT(国際NGO)及び児童の権利条約NGOグループの共催で,横浜にて開催予定の「第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」に向けて,児童買春,児童ポルノといった商業的な児童の性的搾取の問題に関する理解と関心を高めることを目的として開催された。
シンポジウムでは,国内外における児童の商業的性的搾取の問題の現状と取組,今後の課題について議論が行われ,国会議員,地方公共団体(京都府,京都市,大阪府,大阪市)の関係者,学識者,人権NGO団体,メディア関係者等239名が出席した。
(評価と今後の課題)
「スクールカウンセラー」や「心の教室相談員」の配置により,児童生徒が悩みや不安を気軽に相談でき,問題行動等の予防や解消につながったなどの効果があった。これまでの成果を踏まえ,今後とも学校における教育相談体制の充実を図っていくことが必要である。
また,「子ども24時間電話相談」については,今後は全都道府県への整備を目指す。
(3)高齢者
高齢社会対策大綱に基づき高齢社会対策を総合的に推進している。特に,本格的な高齢社会の到来に向けて,活力ある豊かな社会を形成するため,高齢者の学習機会の体系的整備と学習活動を通じた社会参加活動を総合的に促進するための条件整備を図り,10月を高年齢者雇用促進月間として定め,高齢者の雇用就業問題について事業主をはじめ広く国民全体の理解と協力を求めることを目的として啓発活動等を実施した。
また,平成12年度百歳到達者に対し,内閣総理大臣より祝状等を贈呈するとともに,平成12年9月15日(敬老の日)から7日間を「敬老の日・老人保健福祉週間」と定め,国民一人一人が高齢者問題を身近なこととして理解するよう運動を行った。
(評価と今後の課題)
高齢社会対策大綱に基づき,高齢社会対策を総合的に推進する中で,高齢社会の諸問題について一層の周知・啓発がなされた。今後とも,同大綱に沿って,高齢社会対策を総合的かつ効果的に推進していく必要がある。
高年齢者雇用促進月間では,高齢者の雇用問題等の取組について先進的かつ積極的な企業等及び高齢者が働きやすいよう職場改善等を行い,高齢者の継続雇用の促進を図っている企業に対して厚生労働大臣表彰を実施し,国民の高齢者雇用に関する意識の向上を図っている。
これらの表彰は,各種媒体を通じて広報され,広く国民全体に周知されており,高齢者雇用に関する企業のインセンティブを高めることにつながっている。また,本月間中に積極的に高齢者向けの求人開拓及び集団面接会を実施しており,高齢者の雇用・就業問題の改善についても一定の効果をあげている。
今後,我が国の高齢化がますます進展することに伴ない,高齢者の雇用・就業対策がより重要になると考えられることから,高齢者雇用に関する啓発・広報活動の効果的・効率的な実施のための検討を進め,今後一層,国民の高齢者雇用に関する意識の向上を図っていく。
(4)障害者
障害者施策の総合的かつ効果的な推進を図るため,中央省庁等改革を機に平成13年1月に,すべての国務大臣を構成員とする障害者施策推進本部を新たに設置した。
障害者の「完全参加と平等」を実現し,障害者自らの社会的自立と社会参加への意欲及び国民の障害者問題に対する理解と認識をより一層高めることを目的として,障害者週間(平成12年12月3日〜9日)中に「障害者の日・記念の集い」や「障害のある人々を理解するためのポスター・メッセージ展」等様々な啓発活動を実施した。
また,平成11年8月には,障害者施策推進本部において,障害者であることを理由に資格取得等を制限している「障害者に係る欠格条項の見直し」についての方針を決定した。平成12年度末において,対象63制度のうち8制度について見直しが終了し,他55制度は見直し中である。
一方,学校教育の場においては,障害のある子どもに対する理解認識の推進のため,指導資料等の作成・配布や,地域や学校等の実情に応じた多様で継続的な交流教育を推進する事業を実施した。
(評価と今後の課題)
障害のある子どもに対する理解と認識を推進していく上で,分かりやすい資料やビデオの作成・配布が効果的であり,関係者の間で研修や実際の教育相談に広く活用されている。また,交流教育について,積極的な交流活動を通じて,障害のある子どもに対する理解と認識が深まったことが報告されている。
障害のある人の「完全参加と平等」及びノーマライゼーションの理念を社会に定着させるためには,社会を構成する人々が障害及び障害のある人に対して十分な理解をし,配慮していくことが必要である。そのため,障害のある人に対する理解を深めるための啓発・広報活動として,毎年,「障害者の日記念の集い」の開催,障害者週間における行事,「心の輪を広げる体験作文・障害者の日ポスター」の募集及び表彰,年次報告書(白書)の作成,障害者施策推進地域会議の開催を行ってきた。
国内行動計画策定以降の啓発・広報活動の結果,国民の障害及び障害のある人への理解が深まった。その成果として,障害者であることを理由に資格取得等を制限している障害者に係る欠格条項の見直しについて政府全体で取り組むこととなったこと,また,事業者に義務を課す「高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(いわゆる交通バリアフリー法)が成立したこと等が挙げられる。
今後とも,ノーマライゼーションの理念を実現するために,障害のある人に対する国民一人一人の理解と認識を深めるための関係施策の推進,啓発・広報活動を推進していくことが必要である。
○障害者雇用促進月間の設定,全国障害者雇用促進大会
昭和38年より実施されている障害者雇用促進月間においては,障害者の職業的自立意欲を喚起するとともに,障害者の雇用問題に関する国民の関心と理解を図るための各種施策を行っている。
平成12年度においては,開催地の被災により,例年月間中に開催する全国障害者雇用促進大会は中止になったものの,予定されていた表彰等は実施し,多くの国民に対して障害者雇用に関する理解を促した。また,月間中に集中的に開催された就職面接会等を通じて多くの障害者の雇用促進に努めた。
今後とも,当月間を多くの障害者の雇用につながるような広報啓発活動の一環として実施することにより,広く障害者雇用について,国民とりわけ事業主の理解の促進に努めていく。
○障害者技能競技大会の開催
国際アビリンピックは,障害者の職業的自立を喚起するとともに,事業主及び一般社会の理解と認識を深め,さらに国際親善を図ることを目的として,昭和56年以来,概ね4年に一度開催されている。平成12年度の第5回大会はチェコ共和国のプラハ市で開催され,我が国からは国内の障害者が諸外国の優秀な技能障害者と交流することを目的として,89名(内選手41名)を派遣した。
なお,全国障害者技能競技大会(アビリンピック)は,障害者の職業能力の開発を促進し,社会に参加する自信と誇りを与えるとともに,事業主をはじめ広く国民に対し,障害者に対する社会の理解と認識を高め,その雇用促進と地位向上を図ることを目的として昭和47年度から開催されているが,平成12年度は国際アビリンピックの開催年であることから開催していない。
○障害者求人開拓推進員の配置
厳しい雇用失業情勢の中で,特に就職の困難な障害者については,平成10年7月より公共職業安定所に障害者向けの求人開拓推進員を配置して,個別企業に対する障害者雇用の協力要請,各種助成制度の周知等を行いながら,障害者の雇用の場の確保を図ってきた。
平成12年度においては,障害者の就職率も前年度に比べて上昇するなど,障害者の就職状況に改善がみられている。今後とも,企業等に対する求人の要請を強力に行っていくとともに,個々の求職障害者に適した職種,職域における求人の開拓に努めていく。
(5)同和問題
「閣議決定(同和問題の早期解決に向けた今後の方策について:平成8年7月26日)」に基づき,同和問題に関する差別意識の解消に向けた教育及び啓発に関する事業については,人権教育・人権啓発の事業に再構成して推進することとされた。そこで従来,差別意識の解消に取り組んできた地域改善対策啓発活動事業においては,人権尊重思想の普及高揚事業に再構成し,様々な啓発活動を実施した。
教育に関する事業においては,教育総合推進地域事業等として,学校,家庭及び地域社会が一体となった教育上の総合的な取組等を推進した。また,事業者や雇用主等に対しても雇用主に対する指導・啓発事業等において,指導や啓発活動等を実施した。さらに隣保館においても,地域社会全体の中で,福祉の向上や人権啓発の住民交流の拠点となる開かれたコミュニティーセンターとして総合的な活動の推進を図った。
(評価と今後の課題)
教育に関する事業については,幅広い観点から実践的な取組を行い,人権教育の充実を図った。今後,人権擁護推進審議会答申を踏まえ,地域における多様な学習活動を推進するとともに,体験活動などを学校教育活動の中に取り入れるモデル的な取組について推進していく必要がある。
また,同和関係住民の就職の機会均等を確保することが同和問題解決の中心的課題であるとの観点から,雇用主に対し,人権に配慮した公正な採用選考システムの確立が図られるよう,ポスター,カレンダー等の啓発資料の作成・配布,新聞広報等各種広報媒体を通じた啓発活動,公正採用選考人権啓発推進員研修会の開催及び企業トップクラス研修の開催をし,雇用主に対する啓発,指導を行ってきたところである。今後とも,雇用主に対する啓発,指導を一層推進していく。
(6)アイヌの人々
アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るため,「(財)アイヌ文化振興・研究推進機構(以下「アイヌ文化振興財団」とする)」の行う事業に対して助成等を行った。また,生活館において,アイヌの人々の生活の改善向上・啓発等の活動の推進のための事業を実施した。第52回人権週間において,「アイヌの人々に対する理解を深めよう」を強調事項に掲げ,全国各地で様々な啓発活動を実施した。
(評価と今後の課題)
国土交通省,文部科学省,北海道,アイヌ文化振興財団及び(社)北海道ウタリ協会との間でアイヌ文化振興等施策推進会議を設置し,アイヌ文化振興財団の行う事業のフォローアップ等を通じて今後の施策の充実に向けた検討を行っている。
(7)外国人
第52回人権週間において,「国際化時代にふさわしい人権意識を育てよう」を強調事項に掲げ,外国人に対する偏見・差別を除去するため,全国各地で様々な啓発活動を実施した。また,東京,大阪,名古屋,広島,福岡,高松の各法務局及び神戸,松山地方法務局に通訳を配置した「外国人のための人権相談所」を開設し,外国人のための人権相談体制を充実させている。
外国人をめぐる人権問題に対する具体的な取組の一例としては,外国人であるという理由だけで役務の提供を拒否した事案について,法務省の人権擁護機関は,外国人への役務の提供を拒否している経営者等に対して個別の啓発を実施するとともに,人種差別撤廃条約に関するリーフレットを街頭で配布する等の地域啓発を実施した。
(評価と今後の課題)
上記のように,外国人に対する偏見・差別をなくすため,人権啓発・相談体制を充実させてきた。日本における外国人の割合が大きくなるにつれて,外国人同士や,日本人と外国人間の人権を巡る問題はより複雑になっているため,今後とも,国民のすべてが真に国際化時代にふさわしい人権意識をはぐくむよう,創意工夫を凝らした施策を積極的に推進していく。
(8)HIV感染者等
エイズに関する正しい知識の普及のため,エイズ予防ポスターの作成,「世界エイズデー」キャンペーン事業,保健所における青少年へのエイズ教育の実施等様々な啓発活動を実施した。また,学校教育においては,エイズ教育指導の充実のためエイズ教育担当者に対する都道府県研修会等の実施や,小学生用ポスター及び中・高校生用エイズ教育教材を作成し配布した。
また,職場におけるエイズに関する正しい知識の普及を図るため,基盤整備として産業医等産業保健関係者,企業の人事労務担当者に対する講習会を開催した。さらに,平成11年10月告示の「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」においても,本国内行動計画の趣旨を踏まえた人権啓発事業と連携していくことを目標として掲げている。
ハンセン病に対する差別や偏見の解消に向けては,ハンセン病療養所と地域住民との社会交流事業の実施や啓発普及推進のためのシンポジウムの実施や,ポスター等を作成して配布した。
(評価と今後の課題)
文部科学省においては,エイズ教育教材等作成事業を平成4年度から開始しており,その間,新たに,小学生用,中学生用教材の作成・配布,情報ネットワーク事業の実施,指導者用ビデオの作成・配布等の施策を展開してきた。今後は,エイズ教育を含めた感染症対策のより一層の充実を図っていくことが必要である。
厚生労働省においては,エイズに関する正しい知識の普及のためのエイズ予防ポスターの作成・配布,「世界エイズデー」キャンペーン事業の実施等,また,ハンセン病に対する差別や偏見の解消に向けたシンポジウムの開催,ハンセン病療養所入所者と地域住民との社会交流事業の実施等の施策を展開してきた。今後とも,普及啓発活動を推進することで,より一層エイズ及びハンセン病に関する正しい知識の普及を図っていく。
また,職場におけるエイズに関する正しい知識の普及を図るため,基盤整備として産業医等産業保健関係者,企業の人事労務担当者に対する講習会を開催した。
(9)刑を終えて出所した人
犯罪や非行を防止し,罪を犯した人や非行に陥った少年の更生を支えるため,地域住民の理解と参加を得て,第50回社会を明るくする運動を実施する中で,刑を終えて出所した人に対する偏見・差別を除去し,これらの者の社会復帰に資するための啓発活動を実施した。
(評価と今後の課題)
第50回“社会を明るくする運動”は全国で活発な活動が展開され,その一環として,刑を終えて出所した人々に対する地域の人々の理解と協力を求める活動を行った。
しかし,刑を終えて出所した人に対する差別や偏見はまだ課題として残っているので,今後も,“社会を明るくする運動”を一層推進し,その理解と協力を訴えていきたい。
4.国際協力の推進
平成12年度においては,第55回国連総会で「人権教育のための国連10年行動計画」の実施に向けて各国の一層の貢献等を求める「人権教育/人権広報活動」決議案の共同提案国となり,同案は決議55/94として採択された。
また,国連に設けられた「人権分野における諮問サービス及び技術的援助のための自発的基金」をはじめとする人権関係基金に対する拠出を通じて人権教育関連のプロジェクトに寄与するとともに,二国間でもカンボジア等に対する人権教育関連の協力を継続した。
(評価と今後の課題)
「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画をいち早く策定した我が国としては,国際的に人権教育の重要性が認識され,人権尊重の態度と理解が涵養されるよう,今後とも,所要の国際協力に努めていく。
5.その他
(1)人権擁護推進審議会について
本国内行動計画の実施に当たっては,人権擁護施策推進法に基づき法務省に設置された人権擁護推進審議会における検討結果を反映させることとされている。
人権擁護推進審議会は,平成9年5月に第1回会議が開催され,法務大臣,文部大臣(当時)及び総務庁長官(当時)から「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について」(諮問第1号),法務大臣から「人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策の充実に関する基本的事項について」(諮問第2号),それぞれ諮問され,諮問第1号については,平成11年7月29日に開催された第29回会議において答申がなされた。
また,諮問第2号については,平成11年9月17日に開催された第30回会議から本格的な調査審議が行われ,委員による諸外国の人権救済制度についての海外調査(イギリス,スウェーデン,アメリカ,カナダ)や関係団体からのヒアリング,更に関係府省からの行政説明,自由討議等を経て,平成12年11月28日に「人権救済制度の在り方に関する中間取りまとめ」を公表し,広く一般の方々から意見募集を行うとともに,平成13年1月下旬に東京,大阪,福岡及び札幌において公聴会を開催した。その後,平成13年2月から,意見募集及び公聴会において寄せられた意見を踏まえて,更に調査審議が進められている。
(2)人権教育・啓発中央省庁連絡協議会の設置について(平成12年9月)
平成11年7月の人権擁護推進審議会答申「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について」において,人権教育・啓発の総合的かつ効果的な推進を図るための一方策として,「国レベルにおいて,法務省,文部省及びその所掌事務との関連で人権にかかわる啓発活動を行っている府省庁等がそれぞれの教育・啓発の総合的な推進を図る連絡協議体制を整備することが肝要である。」との提言がなされた。
この提言を受けて,平成12年9月26日,人権にかかわる教育・啓発活動を行っている府省等が,その役割を相互に認識し,人権教育・啓発を総合的かつ効果的に推進するとの観点から,それぞれの教育・啓発活動に関する情報を交換し,その密接な連携・協力を図るため,人権教育・啓発中央省庁連絡協議会が設置された。
(3)人権教育及び人権啓発の推進に関する法律の成立について(平成12年11月)
人権擁護推進審議会答申「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について」においては,人権教育・啓発に関する施策の推進に関して,所要の行財政措置を講ずることを望む旨を述べたものの,法的措置の必要性については触れられなかった。しかし,人権教育及び人権啓発に関する施策の一層の推進のためには法的措置が必要であるとして,議員立法により,平成12年11月29日に人権教育及び人権啓発の推進に関する法律が成立した。
この法律により,国に,人権教育及び人権啓発に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため,人権教育及び人権啓発に関する基本的な計画の策定が義務づけられた。これを受けて,現在,法務省及び文部科学省を中心に,策定の時期も含め,内容,手続等について検討を重ねているところである。
(4)地方公共団体の取組状況について
本国内行動計画の推進に当たっては,地方公共団体の果たす役割が大きいことから,地方公共団体において本国内行動計画の趣旨に沿った自主的な取組が展開されることを期待しているが,既に,平成10年7月の調査時点において,全都道府県で人権教育のための国連10年に係る担当部局を置いている。
また,人権教育の国連10年に対応するための行政機構内の横断的組織(推進本部等)が,平成13年11月時点で37都府県において設置され,平成10年7月と比較して,17都府県で増加している。人権教育の国連10年に関する行動計画を策定しているのは,平成13年11月時点で33都府県であり,平成10年7月と比較すると,27都県で増加している。
このほか,市町村においても推進本部等の横断的組織を設置したり,行動計画を策定するなど積極的に取り組むところも増えており,全体として,地方公共団体における取組は順調に推移しているものと考えられる。