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構造改革と経済財政の中期展望−2005年度改定

平成18年1月



構造改革と経済財政の中期展望−2005年度改定


1.はじめに−2005年度改定1について−

 政府は、2005年度及び2006年度(平成17年度及び18年度)の2年間を「重点強化期間」と位置付け、構造改革をより本格的に推進し、デフレからの脱却を確実なものとしつつ、新たな成長に向けた基盤の重点強化を図ることとしている。

 本改定は、この時点における、中期的な経済財政運営の基本方針と経済財政の展望を示すものである。

 なお、今後とも取り組むべき中期的な政策方針等のうち、本改定において言及していないものについては、「改革と展望」及びその改定に基づいて取組を進める。本改定は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」(平成17年6月21日閣議決定。以下「基本方針2005」という。)等と密接に関連しており、これらを一体として構造改革を推進する。

 本改定の対象期間は今後5か年とするが、財政の健全化については、より長い期間を視野に入れる。

2.経済財政状況

 「改革と展望」策定時の経済状況は、経済成長率が名目、実質ともにマイナスとなる(2001年度(平成13年度))とともに、金融部門においては巨額の不良債権を抱えるなど極めて厳しいものであった。しかしながら、その後の構造改革への取組等を通じて、主要行の不良債権問題が正常化2するとともに、成長の制約となっていた企業部門における3つの過剰(「過剰雇用」「過剰設備」「過剰債務」)が解消し、企業の体質が強化されるなど、我が国経済は、長期停滞を脱し民間需要中心の持続的な回復軌道をたどっている。
 我が国経済は、2002年(平成14年)初めから4年近くにわたる景気回復を続けており、2005年度(平成17年度)の経済成長率は、実質で2.7%程度、名目で1.6%程度となると見込まれる。また、雇用情勢は、2003年(平成15年)1月に5.5%まで悪化した失業率が、4%台半ばまで低下し、賃金も緩やかに増加するなど、厳しさが残るものの改善に広がりが見られる。他方、若年層の失業率が高い状況が続いているほか、景気回復には、地域によってばらつきが見られる。また、原油価格や世界経済の動向等には引き続き留意する必要がある。

 物価については、GDPデフレーター(物価変動指数)3は前年比で1%程度の低下を続けているが、景気回復による需給ギャップの改善等に加え、原油価格の上昇の影響もあって、国内企業物価は上昇を続け、消費者物価(生鮮食品を除く総合)についても、前年比0%近傍で推移している。こうした動向を総合的に見ると、デフレからの脱却に向けた進展が見られるものの、物価は依然としてデフレ状況にある。

 財政面では、政府の大きさ(一般政府の支出規模4のGDP比)については、2006年度(平成18年度)までの間、2002年度(平成14年度)の水準を上回らないこと、財政収支については、2010年代初頭の基礎的財政収支5を黒字化することを目指し、国・地方が共に歳出改革等に取り組んできた。
 政府の大きさについて、一般政府支出規模のGDP比を見ると、2002年度(平成14年度)38.0%の後、2005年度(平成17年度)36.1%程度、2006年度(平成18年度)35.6%程度と着実に縮小している。国の一般歳出(一般会計予算)を見ると、2002年度(平成14年度)47.5兆円の後、2005年度(平成17年度)47.3兆円、2006年度(平成18年度)46.4兆円、また、地方の一般歳出(地方財政計画)を見ると、2002年度(平成14年度)71.1兆円の後、2005年度(平成17年度)67.3兆円、2006年度(平成18年度)66.5兆円と厳しく抑制されている。
 また、財政収支については、こうした歳出面での政策努力に加え、税収動向も改善しつつあることから、基礎的財政収支の赤字は、2001年度(平成13年度)にGDP比4.4%となった後、2002年度(平成14年度)同5.7%と高水準に達したが、2005年度(平成17年度)同3.3%程度(見込み)と着実に改善し、2006年度(平成18年度)には同2.8%程度になると見込まれる6。他方、公債等残高7のGDP比は、2001年度(平成13年度)末の114.9%から2006年度(平成18年度)末に143.5%程度に上昇すると見込まれる。

3.中期的な経済財政運営の基本方針

 政府は、デフレからの脱却、民間需要主導の持続的な成長と財政の健全化の両立を目指し、以下の基本方針の下、経済財政運営を行う。

(1)経済財政運営とデフレ脱却に向けた取組

 政府は、民間需要主導の持続的な成長と財政の健全化の両立を目指し、後述するように「歳出・歳入一体改革」を進めるとともに、構造改革への更なる取組を行う。また、安定的な経済財政運営を行う。

 上述のような物価状況の下で、デフレ脱却に向けた取組は依然として重要な政策課題である。このため、重点強化期間内におけるデフレからの脱却を確実なものとするため、政府・日本銀行は一体となった取組を行う。
 また、デフレからの脱却の判断に当たっては、消費者物価のみならず、GDPデフレーター(物価変動指数)等種々の物価統計を総合的に見るとともに、原油価格上昇の影響等一時的要因や各種統計の特性を勘案するなど、物価の基調やその背景を考慮し、慎重な判断を行うことが必要である。
 中期的には、再びデフレに戻らないよう、民間需要主導の持続的な成長と両立するような安定的な物価上昇率を定着させることが、マクロ経済財政運営の基礎となる。
 政府は、需給ギャップの更なる改善を進めるためにも、民間需要・雇用の拡大に力点を置きつつ、規制、金融、税制、歳出の分野を中心とした構造改革を進め、日本銀行と一体となって、デフレ脱却に向け政策努力の更なる強化・拡充を図る。
 日本銀行には、政府の政策努力や本改定に示された経済の展望と整合的なものとなるよう、実効性のある金融政策運営に努めるとともに、市場における適切な期待形成を促進することを期待する。

(2)経済の展望8

 上述のような中期的なマクロ経済財政運営を行うことにより、2006年度(平成18年度)以降、実質成長率は1.5%程度あるいはそれ以上、名目成長率は2.0%程度あるいはそれ以上の成長経路をたどるものと見込まれる。

 また、上で述べたように、政府・日本銀行が一体となった取組を続けることにより、2006年度(平成18年度)には消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)やGDPデフレーター(物価変動指数)も、わずかながらプラスに転じ、その後、プラスに定着すると見込まれる。

(3)財政の健全化

 政府としては、財政の健全化に向けて、引き続き政府の大きさを抑制するとともに、まずは、2010年代初頭における国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を目指す。
 このため、2007年度(平成19年度)以降も、それ以前と同程度の財政収支改善努力を行うと同時に、民需主導の持続的成長を実現することが必要である。 
 具体的取組については、世代間の公平性など中長期にわたる検討課題も踏まえつつ、これまでの改革の成果の上に立って、政府の支出規模の目安や主な歳出分野についての国・地方を通じた中期的目標の在り方、さらには、歳入面の在り方を一体的に検討し、2006年(平成18年)の年央を目途に、「歳出・歳入一体改革」の選択肢及び改革工程を明らかにする。
 その際、「基本方針2005」に基づき、引き続き、以下の3原則に則って検討を進める。

  1. 「小さくて効率的な政府」原則:"歳出削減なくして増税なし"の考え方の下、「4.構造改革への更なる取組」で述べる政府資産・債務改革、公務員の総人件費改革などの各項目を含め、各般にわたる歳出削減、行政改革を徹底し、必要となる税負担増を極力小さくする。
  2. 活力原則:経済活力と財政健全化の両立を図る。
  3. 透明性原則:改革の選択肢や将来の見通し等を国民に提示しながら検討する。

 また、経済活力と財政健全化を両立させるため、「歳出・歳入一体改革」の経済に与える影響を十分に検討する。負担増を求める際には、経済社会に与える影響を勘案した負担の在り方を検討する。
 こうした取組を通じて、2006年度(平成18年度)中に「歳出・歳入一体改革」についての結論を得る。

4.構造改革への更なる取組

 政府は、「基本方針2005」等に基づき、「小さくて効率的な政府」を実現するとともに、少子高齢化とグローバル化に向けた基盤をつくり、また、デフレからの脱却と民間需要主導の持続的な経済成長を確実なものとするため、構造改革への更なる取組を推進する。 
 「歳出・歳入一体改革」においても、こうした観点から、グローバル化の下での国際競争力の強化、生産性の向上、地域経済・中小企業の活性化等を目指した新たな成長戦略の在り方などの検討とあわせ、必要な歳出削減を更に進めるための歳出改革の在り方、包括的かつ抜本的な税制改革の在り方などを検討し、更なる構造改革へとつなげる。
 また、「基本方針2005」以降の経済財政諮問会議における議論を踏まえ具体化が図られた項目について、下記の取組を推進する。

(1)「行政改革の重要方針」に基づく取組

 「行政改革の重要方針」(平成17年12月24日閣議決定)に基づき、「小さくて効率的な政府」への道筋を確かなものとするためには、与党の議論を踏まえこれまで以上に事業の仕分け・見直しなどを行いつつ、行政のスリム化、効率化を一層徹底することが必要であるとの観点から、以下の取組を行う。

(政策金融改革)
 政策金融の改革については、政策金融の貸出残高対GDP比半減、政策金融の機能の分類、政策金融機関の民営化、廃止及び統合などを内容とする抜本的改革を行い、2008年度(平成20年度)から新体制に移行する。

(政府資産・債務改革)
 政府の資産規模の対名目GDP比を、今後10年間でおおむね半減させるといったような長期的な目安を念頭に置きながら、資産のスリム化を進める9。また、売却可能な国有財産については、一層の売却促進に努めるとともに、明確な必要性がない剰余金・積立金については、国債残高の抑制等を図り、国民負担の軽減につなげるために活用する。
 国債発行に当たっては、国債の安定消化を図るとともに、各種のリスクを踏まえつつ、中長期的な観点から金利等のコストの抑制に努めることを基本とし、民間有識者・専門家の知見を引き続き十分に取り入れながら、債務管理政策の一層の充実を図る。

(規制改革・民間開放の推進)
 規制改革・民間開放推進会議と規制改革・民間開放推進本部との連携の下、官製市場や国民生活、産業活動に対する国の関与等に関する規制改革・民間開放を推進する。
 市場化テストの本格的な導入に向けて、「基本方針2005」等を踏まえ、公共サービスの質の維持向上・コストの削減等に資するよう、「公共サービス効率化法(市場化テスト法)案(仮称)」を平成18年通常国会に早期に提出する。

(特別会計の抜本的な改革等)
 特別会計について、各特別会計の性格に応じて、財政健全化への貢献を図るとともに、独立行政法人化・民営化や一般会計への統合等による廃止も含めた抜本的な制度改革を検討するなど、その整理合理化を推進する。道路特定財源については、「道路特定財源の見直しに関する基本方針」(平成17年12月9日政府・与党合意)に基づき見直すとともに、それ以外の特定財源についても、所要の見直しを行う。

(公務員の総人件費改革)
 総人件費改革に強力に取り組む。今後5年間については、国家公務員(日本郵政公社職員を除く。)の5%以上純減と地方公務員の4.6%以上の純減上積みによる定員の純減、真に職務と職責に応じた給与体系への移行と官民比較方法の見直しによる給与制度改革の強力な推進等に取り組む。

(2)その他の取組

(「国から地方へ」の改革)
 国と地方に関する「三位一体の改革」について、平成18年度までの三位一体の改革に係る「政府・与党合意」及び累次の「基本方針」を踏まえ、4兆円を上回る国庫補助負担金改革、3兆円規模の税源移譲及び地方交付税改革を確実に実施する。18年度までの改革の成果を踏まえつつ、更に地方分権を推進し、国・地方を通じた行財政改革を進める観点から、今後とも、真に地方の自立と責任を確立するための取組を行っていく。

(地域再生)
 知恵と工夫による地域経済の活性化に向け、地域再生のためのひとづくりや人材ネットワークの構築、補助金改革等による地域の自主裁量性の向上、民間の資金・ノウハウの活用促進により地域再生の取組を推進する。特に、大学等と連携した地域の自主的な取組を支援するため、省庁連携による支援措置を盛り込んだ「地域の知の拠点再生プログラム」を推進する。

(持続的な社会保障制度の構築)
 少子高齢化が進展する中で、経済・財政と均衡がとれ、将来にわたり持続可能な制度を構築するため、年金、医療、介護、少子化対策、生活保護等社会保障制度全般の一体的見直しを進め、重点強化期間内を目途に結論を得る。
 年金制度については、長期的な給付と負担の均衡を確保しつつ、平成16年改正法に基づき、2009年度(平成21年度)までに基礎年金国庫負担割合を2分の1に引き上げるものとする。また、被用者年金制度の一元化を推進する。
 医療制度については、国民皆保険を堅持し、将来にわたり持続可能なものとしていくため、政府・与党医療改革協議会による「医療制度改革大綱」(平成17年12月1日)に基づき、「安心・信頼の医療の確保と予防の重視」、「医療費適正化の総合的な推進」、「超高齢社会を展望した新たな医療保険制度体系の実現」という基本的考え方の下、構造改革を推進する。

(金融システム改革)
 金融・投資サービスに関する横断的法制としての「投資サービス法(仮称)」について早期の法制化に取り組むなど、利用者の満足度が高く、国際的に高い評価が得られ、地域経済にも貢献する『金融サービス立国』を実現するための諸施策を着実に実施する。

(包括的かつ抜本的な税制改革)
 「基本方針2005」やこれまでの与党税制改正大綱を踏まえ、包括的かつ抜本的な検討を引き続き進め、重点強化期間内を目途に結論を得る。


1「構造改革と経済財政の中期展望」(平成14年1月25日閣議決定。以下「改革と展望」という。)において、経済の変動等に適切に対応するため、毎年度改定する旨規定。2005年度改定は、4度目の改定。
2主要行の不良債権比率が2001年度(平成13年度)末の8.4%から2004年度(平成16年度)末には2.9%まで低下し、「金融再生プログラム」に基づく半減目標が達成されている。
3名目成長率からGDPデフレーターの変化率を差し引くと実質成長率になる。
4国民経済計算(SNA)と異なり、翌年度への繰越を考慮していない。
5国と地方を合わせたプライマリーバランス(国民経済計算(SNA)ベース)。「借入を除く税収等の歳入」から「過去の借入に対する元利払いを除いた歳出」を差し引いた財政収支。
6国民経済計算上「公的企業」に属する特別会計からの繰入れを除く。2006年度(平成18年度)の基礎的財政収支の赤字は、財政融資資金特別会計から国債整理基金特別会計への繰入れ(12.0兆円)等を除いた数値。こうした繰入れを含めた場合の2006年度(平成18年度)の赤字はGDP比0.5%程度。
7普通国債、地方債、交付税及び譲与税配付金特別会計借入金の合計。
8ここで述べた経済や財政に関する将来展望には種々の不確実性が伴うため、相当の幅を持って理解されるべきである。今後の「歳出・歳入一体改革」の検討においては、そうした可能性も含め幅広く検討を行う。
9一定の政策目的のために保有している外為資金・年金寄託金等及び売却困難な道路・河川等の公共用財産はスリム化の対象としないが、それぞれの政策目的に照らして、資産を合理的に管理する必要がある。