首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸
 トップ会議等一覧経済財政諮問会議 印刷用(PDF)

政策金融の抜本的改革に関する基本方針

平成14年10月7日

 わが国の政策金融は諸外国に比べ規模が大きく、かつ時系列的に増大傾向にある。このことが、金融資本市場の資源配分機能をゆがめてきた。わが国にとって、金融資本市場の効率化は最重要課題であり、民間部門の自由かつ自発的な活動を最大限引き出す方向での政策金融の抜本的改革が必要である。こうした観点から、政策金融改革の基本方針をとりまとめた。この基本方針に沿って個別の政策金融機関のあり方について検討を行い、年内に結論を得ることとする。

1. 政策金融のあるべき姿

 政策金融の存在意義が明確に認められるのは、政策の必要性が明らかであると同時に金融機能をもって対処することが必要な場合である。
 具体的には(1)(2)の条件が共に当てはまるものである。

 (1)公益性:政府の介入によって明らかに国民経済的な便益が向上する(社会的な便益が社会的な費用を上回るため、政策的助成により「高度な公益性」が発生する)場合
 (2)金融リスク評価等の困難性:情報が乏しいこと、あるいは不確実性や危険性が著しく大きいことによって、リスクの適切な評価等が極めて困難なため、民間金融による信用供与が適切に行われない(金融機能面における「リスク評価等の困難性」ゆえに資金不足が生ずる)場合

以上二つの基準を踏まえて、政策金融の活動領域を整理すれば次のようになる(図)

 (A)(1)(2)が共に該当する場合は、政策金融固有の活動領域である。
ただし、金融的手法であっても、直接貸出に限らず債務保証等の他の手段と比較して、どれが適切か厳密な選択が必要である。
 (B)(1)に該当するが、(2)には該当しないものについては、金融手段による政策介入の必要性は乏しいため、政策金融で行う必要はない。補助金などの他の政策手段と比較し、コスト最小化の観点から、不断に厳格な検証を行うことが必要である。
 (C)(1)(2)のいずれにも該当しない場合は、政策的介入の必要性はない。
 (D)(2)に該当するが、(1)には該当しない場合は、政策的必要性が乏しいことから、基本的に政策金融の必要はない。むしろ、リスク負担を行う民間の貸手が登場するように、民間の金融市場の整備を図ることが重要である。

2. 改革の進め方

 従来は、政策金融の活動領域に関する基準が不明確であった。今次改革にあたっては、上記1.の「公益性」、「金融リスク評価等の困難性」の基準を厳格に適用し、諸外国の事例も参考にしながら、民業補完を貫徹するための新たな仕組み・枠組みを導入する必要がある。また、政策金融を行う場合でも、事前と事後の評価を行うことが不可欠である。
 なお、構造改革の基本原則である「官から民へ」を踏まえれば、「民間にできることは民間に委ねる」ことは当然として、「長期、固定、低利」を含め民間ではできない場合であっても、それのみをもって政策金融の存在が正当化されるわけではないことに留意する必要がある。

 (1) 機能の廃止・見直し

政策的介入と政策金融の範囲の見直し
 上記1.の基準に従って、各分野毎の政策的特性を踏まえて、各政策金融機関の機能を個々に精査し、業務内容により仕分けを行う。その上で、類似の目的を有する他の政策手段・機能も考慮し、廃止・民間業務への移行、継続領域での各機関の整理・合理化・統合をも視野に入れて合理化を図っていく。
 また、基準の厳格な適用により、わが国の政策金融の規模・範囲が国際的にみても大きくなっている現状を改め、諸外国の水準を参考に見直しを行う。
政策金融に代替する手段の整備
 民間部門における資金調達の多様化、具体的には直接金融や証券化など民間市場機能の拡充・整備を進め、政策金融機能の廃止・見直しを行う。また、PFI・PPP等の官民協調方式による事業手法において真の民間資金活用の一層の推進を図る。
政策金融の手法の革新
 政策金融が必要と認められる領域においても、諸外国の民業補完の事例を参考にしつつ、政策コストの最小化等の観点から、間接融資、債務保証等の手段への移行、あるいは、直接貸出を行う場合でも協調融資への移行を図るなど、手法の革新を行う。

 (2) 組織の整理・統合

 組織の見直しを行うに当たっては、まず、上記改革に基づいて各政策金融機関別に残すべき機能を峻別した上で、現行政策金融機関が有する資源にも配慮しつつ、廃止・民営化を含め思い切った整理・合理化・統合を進める。その際、経営責任の明確化、事業運営の効率性の向上等の観点から、経営責任者任用において、民間人登用も含め適材適所の考え方に立つとともに、最も適切な組織・形態を採用する。また、常に存続の必要性やコストをふまえた妥当性が国民によって正しく監視されるよう、情報開示の徹底、第三者機関の設置の検討も含めた事前・事後の評価・監視体制の整備等の必要な措置を講じ、厳格なガバナンスを構築する。

 (3) 改革達成に向けての道筋

 政策金融の改革は、民間金融の改革、郵政改革、財投改革と表裏一体の関係にある。金融市場全体の資金の流れについての改革を進めつつ、可能な限り早急に政策金融改革を実行に移す必要がある。また、現下の厳しい経済金融情勢に鑑み、金融システム全体に無用の混乱を生じさせないよう、民間金融機能の正常化への道筋を踏まえて、改革全体の中期的なスケジュールを明確にする。
 この改革にあわせ、市場型間接金融や直接金融の拡大など、資本市場・民間金融機能の高度化を進める。そのために、関係府省が一体となって環境整備に取り組む。その際、移行過程において政策金融を活用する場合には、市場本来の機能が最大限に発揮されるよう、適切な配慮を行う。
 現下の厳しい経済金融情勢において、あるいは将来の不測の事態によって生じ得る金融環境の激変、連鎖倒産のおそれ等に際しては、円滑な資金供給を確保する等、セーフティネット面での対応について、万全を期す。






(図)公共性・金融リスクの評価等の困難性からみた政策金融の位置付け