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金融再生プログラム


― 主要行の不良債権問題解決を通じた経済再生 ―

平成14年10月30日
金 融 庁

 日本の金融システムと金融行政に対する信頼を回復し、世界から評価される金融市場を作るためには、まず主要行の不良債権問題を解決する必要がある。平成16年度には、主要行の不良債権比率を現状の半分程度に低下させ、問題の正常化を図るとともに、構造改革を支えるより強固な金融システムの構築を目指す。そこで、主要行の資産査定の厳格化、自己資本の充実、ガバナンスの強化などの点について、以下に示す方針で行政を強化する。
1.新しい金融システムの枠組み
 構造改革を加速するための新しい金融システムを構築することを目的に、以下の措置を講ずる。

(1)安心できる金融システムの構築
 国民が金融機関に対する不安を抱くことなく暮らせるようにすることを目的に、以下の措置を講じて安心できる金融システムを構築する。
(ア)国民のための金融行政

 金融行政が護るべき対象は、預金者、投資家及び借り手の企業や個人など国民であることを確認する。


(イ)決済機能の安定確保

 決済機能の安定確保を図るために、その全額を保護の対象とする「決済用預金」を平成17年4月に導入する。それまでの間については、不良債権処理の加速等の政策強化を進める中で、預金者にいたずらに不安を与えることのないよう、ペイオフの完全実施を延期する。


(ウ)モニタリング体制の整備

 金融庁内に「金融問題タスクフォース」を新設し、平成16年度には不良債権問題を終結させるという目標の達成に向け、その状況をモニタリングする。

(2)中小企業貸出に対する十分な配慮
 主要行の不良債権処理によって、日本企業の大宗を占める中小企業の金融環境が著しく悪化することのないよう、以下のセーフティネットを講じる。
(ア)中小企業貸出に関する担い手の拡充

 中小企業の資金ニーズに応えられるだけの経営能力と行動力を具備した新しい貸し手の参入については、銀行免許認可の迅速化や中小企業貸出信託会社(Jローン)の設置推進などを積極的に検討する。


(イ)中小企業再生をサポートする仕組みの整備

 実態に合わせて中小企業の再生をサポートできるよう、信託機能やデット・エクィティ・スワップ等の活用など、金融上の仕組みの整備を検討する。


(ウ)中小企業貸出計画未達先に対する業務改善命令の発出

 健全化計画における中小企業貸出計画に関する重度の未達先に対しては、原則として業務改善命令を発出し、軽度の未達先に対しては、即時に改善策の報告を徴求する。


(エ)中小企業の実態を反映した検査の確保

 中小企業の実態を反映した的確な検査等を確保する。また、借り手企業に対し、金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)の趣旨・内容を周知徹底する。


(オ)中小企業金融に関するモニタリング体制の整備

 金融機関による不当な「貸し剥がし」等が発生しないように、モニタリング体制を強化するほか、必要な場合には効果的な検査を実施する。

@「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」の創設

 中小企業が、今回の一連の措置や金融検査マニュアルなどを理由に、金融機関から貸し渋り、貸し剥がし等の不当な扱いを受けた場合に、金融庁に直接通報できるよう、ファックスやEメールの受付窓口を金融庁内に設ける。

A「貸し渋り・貸し剥がし検査」の実施

 「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」によって通報された内容を吟味した結果、重大な問題があると判断される場合には、その金融機関に対して報告を徴求するほか、必要があれば検査を実施し、適切な行政処分を行う。

(3)平成16年度に向けた不良債権問題の終結
 金融機関の不良債権問題の解決に対して政府が積極的に関与するとの立場から、以下の措置を講ずる。

(ア)政府と日銀が一体となった支援体制の整備

 個別金融機関が経営難や資本不足もしくはそれに類似した状況に陥った場合等には、以下に示す「特別支援」の枠組みを即時適用し、万が一にもシステミックリスクが発生し、または経済が底割れすることのないよう、政府・日本銀行が一体となって万全の対応を期す。

@ 日銀特融による流動性対策

 万が一金融危機のおそれが生じた場合には、金融庁は責任をもって適切な対応を取るとともに、日本銀行に特別融資等必要な措置を要請し、一体となって万全の危機管理体制を整備する。

A 預金保険法に基づく公的資金の投入

 必要な場合には、現行の預金保険法に基づき、速やかに所要の公的資金を投入する。

B 検査官の常駐的派遣

 「特別支援」の対象となった金融機関(「特別支援金融機関」)の取締役会や経営会議などに、検査官を陪席させることを検討する。


(イ)「特別支援金融機関」における経営改革

 「特別支援金融機関」においては、経営を改革し、早期健全化を行う。

@ 経営者責任の明確化

 「特別支援」を受けることとなった金融機関を代表する経営者については、責任の明確化を厳しく求める。

A 適切な管理方法

 「特別支援」を受けることとなった金融機関においては、「新勘定」と「再生勘定」に管理会計上分離し、適切に管理する。

B 事業計画のモニタリング

 「金融問題タスクフォース」は、「特別支援金融機関」の新しい経営陣による事業計画をチェックしてその妥当性について金融担当大臣に助言するほか、その履行状況をモニタリングし、金融担当大臣に報告する。なお、上記適切な管理方法を適用した後も黒字体質に転換しないなどにより必要と思われる場合は、適切な措置を金融担当大臣に進言する。


(ウ)新しい公的資金制度の創設

 金融システムの安定に万全を期しつつ、不良債権問題を終結させるため、迅速に公的資金を投入することを可能にする新たな制度の創設の必要性などについて検討し、必要な場合は法的措置を講ずる。

2.新しい企業再生の枠組み

 構造改革を更に加速するため、以下のように、新しい企業再生の枠組みを可及的速やかに実現する。

(1)「特別支援」を介した企業再生

 「特別支援金融機関」は、新しい経営陣の下で知恵と工夫を活かし、企業再生を図るため、以下の点に関して経営努力を傾注する。


(ア)貸出債権のオフバランス化推進

 破綻懸念先以下債権等について、RCCや企業再生ファンド等に売却することによって、企業再生のプロセスを加速する。その際、RCCによる買取に関しては、必要に応じ財政的措置についても検討する。


(イ)時価の参考情報としての自己査定の活用

 破綻懸念先以下債権をRCCに売却する場合には、「特別支援」の枠組みの下で十分な引当を積んだ自己査定であることを前提に、RCCの買取価格である時価を判断する際の一つの参考情報として採用することを検討する。


(ウ)DIPファイナンスへの保証制度

 法的整理手続に入った企業について、当該「特別支援金融機関」がDIPファイナンスを担う場合において、再生可能な部分を甦生させるための信用保証制度について検討する。

(2)RCCの一層の活用と企業再生

 以下の点に配慮しつつ、RCCへの不良債権売却の促進や企業再生ファンドの活用、再生対象企業に対する政府系金融機関による支援など、企業再生を促進する枠組みを早急に整備・活用する。


(ア)企業再生機能の強化

 企業再生機能を強化するため、RCC内における企業再生部門の強化等を検討する。そのための人員確保や政策投資銀行、国際協力銀行などを活用した企業再生ファンドの拡充、企業再生のノウハウを有する商工中金等との連携強化などについては、積極的に対応する。


(イ)企業再生ファンド等との連携強化

 RCCは、購入した債権に関しては回収・売却を加速するとともに、企業再生ファンドなどへの橋渡しを果たすことにより回収の極大化を図る。このような観点から、購入して短期間で回収できない案件については、原則として、売却する方向で早急に検討する。


(ウ)貸出債権取引市場の創設

 RCC及び政府系金融機関等は、保有している貸出債権の売却を加速することによって、日本における貸出債権の取引市場の創設に努力を傾注する。その際、RCCの貸出債権毎の採算についてより機動的な対応ができるよう、総合的に検討する。


(エ)証券化機能の拡充

 RCCは、自らが保有する大量の貸出債権を対象ポートフォリオとした証券化の機能を強化し、実際に資産担保証券の売却を進める努力を継続する。

(3)企業再生のための環境整備

 企業を再生する環境を整備するため、政府が目指すのは企業淘汰ではなく企業再生であるとの認識の下、経済産業省、国土交通省などの関係府省との連携をこれまで以上に強化し、以下の施策を講じる。


(ア)企業再生に資する支援環境の整備

 不良債権の最終処理と企業の早期再生を支援するとともに、中小企業への円滑な金融の確保に努めるため、税制、投融資制度、商法の特例などについて、実現可能なものから出来る限り早く整備を行うよう、関係府省に要請する。


(イ)過剰供給問題等への対応

 過剰供給問題や過剰債務問題に正面から取り組むべく、産業・事業分野が供給過剰になっているかどうか等について政府としての指針・考え方をまとめるとともに、安易な企業再生に政府の「お墨付き」を与えることのないよう適正な基準を定めることを、関係府省に要請する。


(ウ)早期事業再生ガイドラインの策定

 企業が自ら事業再生に着手するよう、「早期事業再生ガイドライン」の策定作業を早急に進め、関係者間のコンセンサス形成を図るよう、関係府省に要請するとともに、金融庁も検討に参画する。


(エ)株式の価格変動リスクへの対処

 金融機関保有株式の価格変動リスクは、金融機関経営の大きな不安定要因となっており、その存在は企業再生プロセスに不測の影響を与えかねないことに鑑み、日本銀行による金融機関保有株式の買い取りの円滑な推進を期待する。


(オ)一層の金融緩和の期待

 企業再生のプロセスを支えるため、一層の金融緩和が行われるよう日本銀行に期待する。

(4)企業と産業の再生のための新たな仕組み

 企業・産業の再生に取り組むため、新たな機構を創設し、同機構が再生可能と判断される企業の債権を金融機関から買い取り、産業の再編も視野に入れた企業の再生を進める必要がある。このため、政府が一体となって、速やかに所要の作業準備が進められるよう要請する。

3.新しい金融行政の枠組み

 構造改革を加速するための金融行政の新しい枠組みを構築することを目的に、以下の措置を講ずる。

(1)資産査定の厳格化

 金融機関の資産査定については、これまでにも増して厳格化を図るため、以下の施策を講ずる。


(ア)資産査定に関する基準の見直し

 資産査定の基準については、市場評価との整合性を図るため、以下の措置を講ずる。

@ 引当に関するDCF的手法の採用

 主要行において要管理先の大口債務者については、DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)方式を基礎とした個別的引当を原則とし、早急に具体的手法を検討する。

A 引当金算定における期間の見直し

 主要行において、暫定的に定められている1年基準及び3年基準について、米国等の扱い等を踏まえ検討を行う。

B 大口債務者に対する銀行間の債務者区分の統一

 主要行について正常先でない大口債務者の債務者区分に関しては、適正な資産査定を実施している先にレベルを揃えるための具体的な仕組みを導入する。

C デット・エクィティ・スワップの時価評価

 株式を上場しているなど合理的に株価を算定することが可能な大口貸出先向けのデット・エクィティ・スワップに関しては、取引の時期を問わず、時価評価を適用することを検討する。

D 再建計画の厳格な検証

 再建計画の進捗状況や妥当性を継続的に検証することを目的とした専門家を含む検証チームを設置する。

E 担保評価の厳正な検証

 鑑定評価を担保評価に用いている場合には、原則として独立した不動産鑑定士による法定鑑定を用いる方向で検討する。


(イ)特別検査の再実施

 平成15年3月期について、リアルタイムの債務者区分の厳格な検証を継続する形で、特別検査の実質的な再実施を行う。


(ウ)自己査定と金融庁検査の格差公表

 これまで実施された金融庁検査を基に、主要行の自己査定と検査結果の格差について集計ベースで公表する。自己査定と検査結果の格差については、今後定期的に公表する扱いとし、各行に格差是正を求める。


(エ)自己査定の是正不備に対する行政処分の強化

 正当な理由がないにもかかわらず自己査定と検査結果の格差が是正されない場合には、当該行に対し、業務改善命令を発出する方針を明確化する。


(オ)財務諸表の正確性に関する経営者による宣言

 資産査定を含む財務諸表が正確であることに関し、代表取締役に署名を求めることを検討する。

(2)自己資本の充実

 金融機関の自己資本については、資本の質の実態を見極めつつ、真の充実を図るため、以下の施策を講ずる。

(ア)自己資本を強化するための税制改正

 金融機関の自己資本を強化するため、以下の措置を関係府省に強く要望する。

@ 引当金に関する新たな無税償却制度の導入

 破綻懸念先以下の債務者に関しては、金融庁の監督と検査の下での自己査定の結果を以って無税対象と認定する制度の導入を要望する。また、部分直接償却により企業会計上損失が確定した場合についても、例えば、無税償却に係わる担保処分要件の緩和等特段の配慮を求める。

A 繰戻還付金制度の凍結措置解除

 欠損金の繰戻還付について、凍結措置の解除及び期間の延長を要請する。

B 欠損金の繰越控除期間の延長検討

 現行5年となっている繰越控除期間の延長を要請する。


(イ)繰延税金資産に関する算入の適正化

 繰延税金資産については、その資本性が脆弱であるため、自己資本比率規制における取扱いについては、会計指針の趣旨に則ってその資産性を厳正に評価するとともに、算入上限についても速やかに検討する。


(ウ)繰延税金資産の合理性の確認

 主要行の経営を取り巻く不確実性が大きいことを認識し、翌年度を超える将来時点の課税所得を見積もることが非常に難しいことを理解した上で、外部監査人に厳正な監査を求めるとともに、主要行の繰延税金資産が厳正に計上されているかを厳しく検査する。


(エ)債務者に対する第三者割当増資部分の検討

 債務者が引き受けている第三者割当増資部分に関しては、実質的な迂回融資になっていないかなど、資本としての適格性を念入りにチェックする。


(オ)銀行の自己資本のあり方に関する考え方の整理

 今回の一連の措置で整理し切れなかった論点については、金融庁としての見解を引き続き検討し、今後の自己資本比率規制の見直しにつなげる。


(カ)自己資本比率に関する外部監査の導入

 自己資本比率規制上の自己資本比率の算定を外部監査の対象とすることについて、法令上の手当を含めて検討する。

(3)ガバナンスの強化

 金融機関経営におけるガバナンスを強化するため、以下の施策を講ずる。

(ア)外部監査人の機能

 資産査定や引当・償却の正確性、さらに継続企業の前提に関する評価については、外部監査人が重大な責任をもって、厳正に監査を行う。


(イ)優先株の普通株への転換

 政府が保有している銀行の優先株の普通株への転換については、期限の到来、経営の大幅な悪化など諸条件に該当する場合には転換する方向で、運用ガイドラインを可及的速やかに整備する。


(ウ)健全化計画未達先に対する業務改善命令の発出

 健全化計画等の未達に関しては、その原因と程度に応じて必要性を判断し、行政処分を行うとともに、改善が為されない場合は、責任の明確化を含め厳正に対応する。


(エ)早期是正措置の厳格化

 早期是正措置における現行区分のあり方を含め、各区分における措置の内容を厳格に見直す。


(オ)「早期警戒制度」の活用

 自己資本比率に表されない収益性や流動性等、銀行経営の劣化をモニタリングするための監督体制を整備する。

4.今後の対応

 主要行を対象とした以上の措置を速やかに実施に移せるよう、本年11月を目途に作業工程表を作成、公表する。また、関連する諸制度の整備に努める。
 また、中小・地域金融機関の不良債権処理については、主要行とは異なる特性を有する「リレーションシップバンキング」のあり方を多面的な尺度から検討した上で、平成14年度内を目途にアクションプログラムを策定する。