改革と展望−2002年度改定平成15年1月20日
経済財政諮問会議 |
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「構造改革と経済財政の中期展望」(2002年1月25日閣議決定。以下、「改革と展望」という)策定後、2002年7−9月期まで実質GDPは緩やかに回復してきたものの、デフレについては依然厳しい状況が続いている。さらに、不良債権は2002年3月期に大幅に増加し、9月期に減少したものの依然高水準にある。また、各分野における構造改革は進展しつつあるが、厳しい内外経済環境の下で、未だ経済全般に十分な成果を発揮するまでには至っていない。
デフレと不良債権問題は密接に関連しつつ、近年の日本経済を低迷させてきた。こうした状況の下で、これら2つの問題への対応を含め総合的な取組みを今こそ強化する必要がある。 政府は、不良債権問題を2004年度に終結させることを目指して、不良債権処理を加速することを決定した。さらに、潜在的な民間需要を顕在化し、雇用を拡大する改革を中心に構造改革をより抜本的かつより迅速に推進する決意が必要である。また、デフレの克服を目指し、政府・日本銀行は一体となって取り組む。こうした努力により、中期的に「活力に溢れる民間部門と簡素で効率的な政府」を構築するとともに「民間需要主導の持続的成長」を実現することを目指す。 現実に経済社会を活性化していく主役は国民である。この「改革と展望−2002年度改定」(以下、「今次改定」という)が示す諸改革の加速について、国民の理解が深まり、積極的な対応がとられることによって、改革の成果が実を結び、日本経済の実力が強化されることとなる。 |
| 1.「改革と展望」の改定について |
| ・ | 「改革と展望」は、経済の変動等に適切に対応するため、毎年度改定することとしており、その第1回として本改定を行う。 |
| ・ | 常に5年程度の中期的な基本方針と展望を持ちつつ経済財政運営を行うため、「今次改定」の最終年度は2007年度までとする。また、プライマリーバランスの2010年代初頭における黒字化などの課題については、より長い期間を視野に入れる。なお、「改革と展望」の最終年度までに行うこととした政策については、これを延期せず、2006年度までに実行する。 |
| ・ | 「今次改定」は、中期的な経済財政運営の基本方針と経済財政の将来展望、並びに「金融システム改革」、「税制改革」、「歳出改革」、「規制改革」の4本柱の構造改革の加速が中心となっている。「今次改定」において言及していない中期的な政策方針等については、「改革と展望」が政策運営の基礎となる。 |
| ・ | また、「今次改定」は、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(2001年6月26日閣議決定)及び「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(2002年6月25日閣議決定)と密接に関連しており、これらを一体として構造改革を推進する。 |
| 2.「改革と展望」策定後の経済財政状況 |
| ・ | 「改革と展望」の策定後、2002年7−9月期まで実質成長率は概ね想定に沿って回復してきた。しかし、資産デフレを含めデフレ傾向は根強く継続している。デフレは、企業等の実質的な債務を増加させることなどを通じ、民間需要や雇用を圧迫するなど国民生活に様々な影響を及ぼしている。また、不良債権については特別検査等を受け2002年3月期に大幅に増加した。財政面では税収の減少に加え、追加的な財政支出が見込まれることから、2002年度において財政赤字は拡大する。 |
| ・ | また、世界経済の先行きへの懸念や国際的な株価低迷の影響等を背景とした経済の不確実性の高まりは、当面の景気に対してマイナスに働くものとみられる。 |
| ・ | このように、「改革と展望」で想定した以上に厳しい内外経済環境の下で、デフレや不良債権等金融的側面で問題が大きくなっている。こうした状況の下で、持続的な経済成長に向け、景気を本格的に回復させていくためには、金融仲介機能の回復や根本的な企業再生が必要不可欠であり、そのためには不良債権処理を加速することが必要である。政府は、2004年度に不良債権問題を終結させることを目指して不良債権処理を加速することを決定した。しかしながら他方で、不良債権処理の加速により、当面、景気の下押し圧力が生じることも予想される。こうしたことに対応するため、「改革加速のための総合対応策」とこれを補完・強化する「改革加速プログラム」を決定した。またこれに必要な予算措置を含む2002年度補正予算を第156回国会に提出した。日本銀行は、更なる金融緩和措置をとった。 |
| ・ | デフレが長引くと不良債権問題の終結が遅れ、不良債権処理の遅れはデフレを長引かせるという相互関係があり、デフレと不良債権処理の双方に強力に取り組むことが必要である。 |
| 3.中期的な経済財政運営――構造改革の加速 |
| 厳しい経済財政状況を踏まえつつ、「民間需要主導の持続的な成長」の実現を目指し、以下に述べる基本方針の下、適切な経済財政運営を行うとともに、「活力に溢れる民間部門と簡素で効率的な政府」の実現に向け、4本柱の改革を中心に構造改革を加速する。 |
| (1)経済財政運営の基本方針 |
| (安定的な経済財政運営) |
| ・ | 対象期間中の経済財政政策は、「今次改定」を踏まえて安定的に運営する。その際、財政の自動安定化機能に配意する。また、デフレスパイラルが懸念されるなど景気が極めて厳しい状況の下では、大胆かつ柔軟な政策運営を行う。 |
| (集中調整期間とデフレの克服に向けた取組み) |
| ・ | 不良債権問題、世界経済の先行きへの懸念や国際的な株価低迷など「改革と展望」で想定した以上に厳しい内外経済環境が続いていることから、不良債権処理など諸改革を加速すると同時に、「集中調整期間」を1年程度延長し、2004年度までの間、改革を集中的に推進する。 |
| ・ | 集中調整期間は、中期的に民間需要主導の成長を実現するための重要な準備期間である。また、この期間において最も重要な課題は資産デフレを含めデフレの克服に向けた取組みを行うことである。このため、政府は「金融再生プログラム」に沿って不良債権処理を加速すると同時に、民間需要、雇用の拡大に力点を置いた構造改革を中心に改革を加速する。 |
| ・ | また、デフレの現状を踏まえれば、金融面など総合的な対応が重要であり、政府・日本銀行が果たすべき役割は大きい。日本銀行は「今次改定」を踏まえつつ、さらに実効ある金融政策を行うことが期待される。政府・日本銀行が一体となって、デフレ克服を目指し、できる限り早期のプラスの物価上昇率実現に向けて取り組む。 |
| (経済の展望) |
| ・ | 上記のように厳しい内外経済環境が続いていることから、2004年度までの集中調整期間においては、少なくとも当面、実質成長率は1%以下程度、名目成長率はさらに低いものとならざるを得ないとみられる。 |
| ・ | 適切な対応がとられない場合、デフレは長期にわたって継続する可能性が高い。しかし、上述のような政府・日本銀行一体となった取組みを通じ、デフレは改善し、集中調整期間の後にはデフレは克服できるとみられる。 |
| ・ | 中期的には、不良債権処理の加速は金融仲介機能を回復させるとともに、産業・企業再生を通じて新たな成長分野への資源の移行を促すことを通じて、持続的な経済成長を促進する効果を発揮する。同時に、4本柱を中心とした構造改革は民間需要・雇用を創出し、産業の競争力を強化する。想定した以上に厳しい内外経済環境やデフレ傾向の根強さなどを考慮すれば、実質1?%程度あるいはそれ以上、名目2?%程度あるいはそれ以上の中期的な成長経路に達する時期は遅れざるを得ないが、2005年度ないし2006年度頃にはこれに近づいていくものと見込まれる。 |
| (歳出抑制の目標とプライマリーバランス) |
| ・ | 2006年度までの4年間、政府の大きさ(一般政府の支出規模のGDP比)は現在(2002年度)の水準を上回らない程度とすることを目指す。また、受益と負担の関係についても引き続き検討を行うこととする。なお、2003年度予算においては、一般会計歳出総額ならびに一般歳出を実質的に前年度以下にすることを具体的な目標とした。また、地方財政についてもこれに準じた方針がとられた。 |
| ・ | 我が国の人口が2007年頃には減少に転じること、2010年〜2015年頃にかけ、これまで労働力人口の中核であったベビーブーム世代が年金受給者となることなどを考慮すれば、2010年代初頭にはプライマリーバランスを黒字化することが望まれる。 |
| ・ | 他方、現在の財政状況をみると、税収の減少に加え、追加的な財政支出が見込まれることから、2002年度の国と地方のプライマリーバランス赤字のGDP比は5%強程度になるとみられる。また、2003年度においても、減税の先行実施等により、当初予算の歳出削減努力にもかかわらず、プライマリーバランス赤字のGDP比は高水準を続ける可能性が高い。 |
| ・ | 着実な経済成長と適切な財政構造改革なくして財政の健全化はあり得ない。政府は、中期的に財政収支を確実に改善していくため、民間需要主導の持続的成長を実現するための構造改革を加速するとともに、歳出改革を加速する。こうした取組みにより、プライマリーバランスの赤字は縮小し、そのGDP比は現状(5%強程度)から「今次改定」の最終年度(2007年度)前後には半分程度に近づいていくものとみられる。 |
| ・ | また、2006年度までに、国と地方双方が歳出削減努力を積み重ねつつ、必要な行政サービス、歳出水準を見極め、また経済活性化の進展状況および財政事情を踏まえ、必要な税制上の措置を判断する。 |
| ・ | 2007年度以降も、それ以前と同程度の財政収支改善努力を行うことが重要である。こうした取組みと同時に民間需要主導の持続的成長を実現することにより、2010年代初頭におけるプライマリーバランスの黒字化を目指す。 |
| ・ | 変化の激しい時代にあって、ここで述べた経済や財政に関する将来展望には種々の不確実性(例えば、海外の景気の著しい悪化やデフレ、あるいは景気の急拡大等)を伴うため、相当の幅を持って理解されるべきである。 |
| (2)構造改革の加速 |
| 各分野において構造改革は進展しつつある(別紙参照)。こうした成果を基礎としつつ、さらに以下のように改革を加速する必要がある。 |
| (不良債権処理の加速と産業再生) |
| ・ | 経済活動を支えるより強固な金融システムを構築するため、不良債権処理の加速に強力に取り組み、不良債権問題を2004年度に終結させることを目指す。 |
| ・ | 産業再編や事業の早期再生を目指し、産業再生機構の創設及び産業再生法の抜本改正等により、産業・金融一体となった対応を強力に進める。 |
| (包括的かつ抜本的な税制改革) |
| ・ | 2003年度税制改革は包括的かつ抜本的な税制改革の第1弾である。引続き更なる税制改革の検討を進める。 |
| ・ | その際、(1)持続的な経済社会の活性化に向けた更なる改革、(2)租税負担と社会保障負担の総合的な検討の下での国民年金法平成12年改正法附則(「当面平成16年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の1/2への引上げを図るものとする」と規定)への対応、B2003年夏までに取りまとめることとされている国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方についての三位一体の改革について早急に検討する。 |
| (歳出の主要分野における改革の加速) |
| ・ | 民間部門の活性化と簡素で効率的な政府の実現を目指し、歳出改革を加速する。また、真に必要な分野に予算配分を集中し、より効率的で効果的な予算を実現するため、引き続き、政策評価の活用等を含め予算編成プロセスの改革を進める。 |
| ・ | 将来にわたって持続可能な社会保障制度を確立するため、年金制度改革等に取り組む。 |
| ・ | 国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方について三位一体で改革を推進する。 |
| ・ | 真に必要性の高い事業を厳選し、それを最も効率的に整備する仕組みを確立するため、公共投資に関する改革をさらに進める。 |
| ・ | 環境と経済の両立を図ると共に、農林水産業については新たな「食料産業」としての再生を目指す。 |
| ・ | 郵政改革、政策金融機関の改革、特殊法人改革、年金改革の具体化等を踏まえつつ最適な資源配分を実現するための資金フローのあるべき姿を明確にし、必要な改革を進める。 |
| (規制改革、特区創設の加速) |
| ・ | 新規需要・雇用の創出や、多様な選択肢が確保された豊かな国民生活を実現する規制改革に対する期待は今まで以上に高まっており、規制改革をより一層積極的に推進する。 |
| ・ | また、規制改革の突破口と位置づけられる構造改革特区については、2003年4月からの構造改革特別区域法の施行準備と併行して、制度の一層の充実を図る。 |
| (「経済活性化戦略」の推進と生活産業の創出) |
| ・ | 経済の活性化を実現するためには、「基本方針2002」でとりまとめられた「経済活性化戦略」を着実に実行することが重要である。このため、同戦略のフォローアップを通じて、今後、取組みを加速・拡充する必要があることが明らかとなった人材育成・人的交流、FTAの推進等について、その推進方針等を明らかにし、施策の加速を図る。また、4分野に関する産業の発掘についての戦略(2002年12月 内閣官房とりまとめ)の具体化に取り組む。 |
| ・ | また、国民の潜在的需要を顕在化し、国民生活を豊かにするとともに、雇用機会や事業機会を拡大するためには、生活産業を創出することが極めて重要である。このため、文化・観光産業、健康に資する産業の活性化等を通じた生活産業の創出や新しい時代の暮らしを実現するイノベーションの創造を促進する。 |
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別 紙
「改革と展望」策定後の改革の進展状況
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| 「改革と展望」の策定後、各分野において構造改革が進展しつつある。主な進展状況は以下のとおりである。 |
| (1)経済活性化に向けた構造改革 |
| <税制改革> |
| 平成15年度税制改正において、現下の経済・財政状況を踏まえつつ、持続的な経済社会の活性化を実現するための「あるべき税制」の構築に向け、次の改革等を一体として行う。 |
| ・ | わが国産業の競争力強化のための研究開発・設備投資減税の集中・重点化 |
| ・ | 次世代への資産移転の円滑化に資する相続税・贈与税の一体化及び税率の引下げ |
| ・ | 「貯蓄から投資へ」の改革に資する金融・証券税制の軽減・簡素化 |
| ・ | 土地の有効利用の促進に資する登録免許税等の軽減 |
| ・ | 人的控除の簡素化等の観点からの配偶者特別控除(上乗せ部分)の廃止 |
| ・ | 消費税に対する信頼性・透明性を向上させるための免税点制度等の改革 |
| ・ | 法人事業税への外形標準課税の導入 |
| ・ | 酒税及びたばこ税の見直し |
| <歳出改革> |
| ・ | 15年度予算において、対前年度2割増の概算要求を認め、民間需要の創出効果の高い新重点4分野などに予算を重点配分 |
| ・ | 科学技術予算については、優先順位付けを踏まえて大胆に配分 |
| <規制改革> |
| ・ | ベンチャー企業等新しい事業の創出のため、より簡易な起業制度を整備 |
| ・ | 事業活動をより円滑に推進していくため、実験無線局の免許要件の緩和等77項目にわたり、行政手続の簡素化等を行うことを総合規制改革会議においてとりまとめ |
| ・ | 雇用の選択肢の更なる拡充を進める労働者派遣制度の見直し、有期労働契約の拡大にかかる法改正を予定 |
| ・ | 地域の特性に注目した規制改革を実施することにより地域経済を活性化することなどを目指した構造改革特別区域法が成立 |
| ・ | 民間事業者の創意工夫のある都市開発事業の推進等を目指し、都市再生特別措置法を制定し、都市再生緊急整備地域を指定(全国で44地域) |
| (2)より強固な金融システムの構築等にむけた構造改革 |
| ・ | 2004年度に不良債権問題を終結させることを目指し、「金融再生プログラム」及び「作業工程表」をとりまとめ |
| ・ | 企業・産業再生を強力に推進するため、産業再生・雇用対策戦略本部において「企業・産業再生に関する基本指針」を決定 |
| ・ | 政策金融改革については、経済財政諮問会議において、政策金融機関の大胆な統合集約化、3段階で改革を進めること等をとりまとめ |
| (3)国民が安心できる持続可能な社会保障制度の確立に向けた構造改革 |
| ・ | 持続可能な医療保険制度を構築するため、健康保険法等を改正 |
| ・ | セーフティネットとしての雇用保険制度の役割を踏まえ、15年度予算において、雇用保険制度の安定的運営の確保を目指し、抜本的に見直し |
| ・ | 15年度予算において、年金額等について14年の消費者物価の変動に見合った改定を実施 |
| (4)国の関与の縮小、地方の権限と責任の大幅拡大、国・地方を通じた行政のスリム化を目指した構造改革 |
| ・ | 「改革と展望」の期間中における改革を目指し、国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方について三位一体で検討を推進 |
| ・ | 15年度予算において、国庫補助負担金の大幅な削減、地方交付税の改革、税源移譲を含む税源配分の見直し(自動車重量税の地方譲与割合の引上げ)を実施 |
| (5)効率的で簡素な政府の実現に向けた構造改革 |
| ・ | 社会資本整備の重点化・効率化を一層推進するため、国土交通関係の9本の公共事業関係計画を一本化 |
| ・ | 米の生産調整や水田農業関連施策の改革を含む米政策改革大綱を決定 |
| ・ | 国立大学等の施設整備、公務員住宅の施設整備等国レベルでもPFI事業を推進 |
| ・ | 行政に係る申請・届出等の手続きのオンライン化時期を前倒しするなど、電子政府の構築に向けた動きを加速 |