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第1回新健康フロンティア戦略賢人会議
子どもを守り育てる分科会
議事要旨

 
日 時平成18年12月27日(水) 14:00〜16:00
 
場 所内閣府本府講堂
 
出席者 
  黒川清(内閣特別顧問)、大杉立(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)、奥山千鶴子(NPO法人びーのびーの理事長)、神尾陽子(国立精神・神経センター精神保健研究所、児童・思春期精神保健部長)、土屋律子(東京都福祉保健局医療政策部医療政策課歯科担当副参事)、中島洋子(まな星クリニック院長)、服部幸應(服部栄養専門学校校長・医学博士)、藤本純一郎(国立成育医療センター研究所副所長)、松平隆光(日本小児科医会副会長)、桃井真里子(自治医科大学小児科教授)、内閣官房副長官補、内閣審議官、内閣府食育推進室長(代理:内閣府食育推進担当参事官)、文部科学省大臣官房総括審議官、厚生労働省技術総括審議官、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長、厚生労働省大臣官房審議官(健康、食品安全担当)、厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課長、厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健推進官、農林水産省大臣官房技術総括審議官、経済産業省商務情報政策局長(代理:経済産業省医療・福祉機器産業室長)
 
議事概要

(厚生労働省:千村雇用均等・児童家庭局母子保健課長)   本分科会は、安倍総理が提唱される新健康フロンティア戦略の策定、推進に向けて設置された「新健康フロンティア戦略賢人会議」の下に置かれた四つの分科会の一つであり、子どもの心と身体の健康のために必要な取組等について有識者に議論をしていただくために設置された。委員から、子どもの心や身体の健康等の問題について幅広く意見をいただきたい。

(内閣官房副長官補)   「新健康フロンティア戦略」は、総理が所信表明演説で安倍内閣としてやるべきこととして提唱された。実は安倍総理は昔からこれらに取り組んでおり、自民党の社会部会の部会長のときに「メディカルフロンティア戦略」、幹事長のときに「健康フロンティア戦略」の策定に取り組まれた。いずれも基本的な発想は「元気で長生き」、「予防を重視する」という発想であり、総理になり「新健康フロンティア戦略賢人会議」を設けた。当分科会は「子ども」という視点で検討する会である。その他、「中高年・高齢者」、「女性」、「人間活動の領域拡張」という四つの視点から、それぞれ専門家の協力を得つつ取りまとめたい。
 医学、栄養学、工学についても、例えば電子機器が近年発達しており、今までできなかったようなことができるようになった。そのような技術をさらに発達させることがまず第一に必要であり、そういう技術や科学が実際に使われ広がって、実際にいろんな人の役に立たなくてはあまり意味がなく、うまく使われていくような社会の仕組みについても考えなければならない。国民に知識として広がることも必要。そこで専門家による分科会を設けて、さらに詳細に議論を詰めていただきたいと考えている。
 特に子どもというのは、何といっても人生の初めであり、先が長い。そのような意味では、健康、育ち方が最も重要な時期。広い視野から社会というものをどうしたらいいかということまで含めて議論をいただきたい。

(黒川分科会長)   非常に大事な問題なので、各委員の意見を聞きながら、いい提言をしたい。

(大杉委員)   「食育」は食育基本法、その後の食育推進基本計画に基づいて国民的に推進している。食べ物は「生命(いのち)」である。地球上の生物は他の生命(いのち)を食べないと暮らしていけない。そのことを、特に子どもの世代に認識させることが「食育」の基本ではないかと思っている。
 そのために、生命あるいはその表現型である生物に関する知識、科学的な知識をきちんと教えていくことが非常に重要であると思っている。学校の授業で言うと、生物に当たるが、実際には生物をきちんと勉強して大学に入ってくる学生は非常に少ないという状況の中で、生命あるいは生物というものに対して謙虚な気持ちを持つということをどうやって育むことができるかという意味で、生命、生物に関する知識、特に科学的な知識を小さい頃からきちんと植えつけていくことが重要だと思っている。そのことを踏まえた上で、実際に営農地、生命を育てている現場をきちんと理解し、身体で覚え、できたものを食べる。我々は食べるときは「いただきます」と言い、終わるときは「ごちそうさま」と言うが、食べ物の生命を「いただく」という基本を、実際にそういう気持ちを抱きながら体験していくということは重要だと思っている。
 附属農場では、実際に畑や田、場合によっては家畜を飼うようなフィールドを持っており、そこで実際に作物を育て、家畜を飼育し、研究・教育をしている。
 同時に農学部本体では、もう少し先端的な遺伝子界の研究も行っており、先生もその農場に行って一定の教育をする。そこでは実際の生命、生物を育てている場を体験すると同時に、生命、生物に対する科学的な知識をきちんと把握する場としても有効な場ではないかと思っている。大学附属農場は50カ所ぐらいあり、食育の場として有効に利用していけると考えている。
 また、どういうものを食べさせていくかということになると、どうしても食の安全・安心という問題が重要な問題になる。一方で、食物に新しい機能性を与えていくような研究もいろいろされており、さらにいろいろな形で国民的な運動や研究を展開していく必要がある。例えば遺伝子組換作物についても、「安心」という点で危惧されていることが多く、そのような不安を除くような情報はまだまだ足りない。そのような情報を蓄積するような研究が必要である。また様々な機能性を付加したような作物の研究はされているが、なかなかこれといったものは出てこない。そのような分野で有望だと思うものについてはターゲットを決め、各方面に働きかけながら世の中に出していくことが重要だと思っている。

(奥山委員)   3歳未満の子どもがいる場合、全国平均でも8割が保育所に預けずに手元で子どもを育てている。また、引っ越してきたばかりで地域の情報がないとか、家にいると24時間待ったなしの子育てでトンネルの向こうが見えないとか、近所に知り合いを作りにくいとか、親たちがつながりにくいといった状況を改善する目的で、「つどいの広場」事業を作ることになった。平成14年度から国の事業になり、全国で700カ所ぐらいの規模になってきている。事業内容は、親子が交流し、お互いに支え合うような場の提供である。スタッフが必ずいてちょっとした相談に応じたり、地域の情報を集まってきた親子に提供したり、地域の人たちに向けて、もしくは親に向けての講習などを実施し、情報発信したりしている。実施場所は生活に身近なところで小さな居場所を確保して運営している。
 「つどいの広場」の特徴は、地域の住民の身近な場所にあることである。運営主体が自治体の直営である場合もあるが、社会福祉法人NPOなどにも広く開かれており、地域人材をうまく活用している。子どもを切り口として地域の住民が集い、子育てをサポートする、そういう事業になっていると思う。
 乳幼児期の家庭支援を通じて、親への支援体制がないことを実感している。0歳から3歳の、まだ幼稚園、保育園に行ってない段階では、特に親が責任を持たなくてはいけないが、今はその半分が子どもと触れ合うことなく親になってしまっている。また、6歳未満の子どもを育てている家庭の8割が核家族である。以前は祖父母や地域住民の支援があったが、今は母の手にゆだねられ、就労をしていた頃は、朝、昼、晩、外食をしていたり、夜も夕飯が8時、9時なんていう生活をしていた人が、いきなり子どもができて早寝・早起き・朝ごはんということで、9時に寝かせなければならなくなり、なかなか生活習慣を見直していくのに時間がかかっている。また、食の安全を提供する場所がない。
 また、技術や科学がどんどん進歩しても、それをどうやって国民に広めて普及させ知識にしていくのか今問題になっていると思う。「つどいの広場」で大事にしていることは、食べること、寝ること、遊ぶことである。家で子育てをしていると、食べることも、母一人子一人である。一生懸命つくった離乳食を子どもが食べてくれないということが非常にストレスにもなる。
 「つどいの広場」では一緒に昼食を食べるように取り組んでいる。一緒に食事をすることは生活体験を一緒にすることであり、隣の人の弁当に関心を持つことなどから、一緒に食べることがとても大事だと感じる。それから、昼寝ができる空間や子どもたちが遊びに熱中できる環境を提供している。その中でちょっとした生活リズムのことをスタッフがアドバイスしている。
 次に出産・周産期のケアということで、生まれてからが実は大変だったというようなことがある。地域にどう根ざしていくのかという連携の部分が求められているのではないか。
 それと小児医療体制について、多分、産婦人科医・小児科医も働き方が厳しい中で、親は医学的知識が乏しく、救急の知識を学べるような仕組みがあるといいのではないか。カナダのチャイルド・ケア・サポート・ネットワークでは病院間が連携し、一の病気に対してどこの病院に行けばいいかという情報提供が親になされている。我が国においてもこのような仕組みが確立されればいいと思う。
 また、自然体験が不足している。例えば農村体験を修学旅行の中に組み込むような取組があったらどうかと思う。
 放課後子どもプランは学校でやる方向性であるが、学校に限らず地域に開かれていることが大事。

(神尾委員)   まず一点目、「子どもの健やかな生活習慣を育てる」というところで、現在は健康キャンペーンが世間で行き渡っているが、健康度というのは測れないし、100%健康である人はいないだろう。それぞれが持つ健康度を長く維持させるということが重要になってくるので、個人差があることを念頭においた上で、健康の意味合いは深いものであることを踏まえつつ、あまり強迫的にならないようにするべき。
 また、健康情報が氾濫している。孤立しがちな若い親は情報に振り回されている。情報を読み解けるような教育を一般の国民で高校レベルから進めていくべきではないか。今、研究プロジェクトの一つとして発達障害の早期診断に携わっており、言葉を発する前に障害を発見しようとしている。よく受ける親の質問としては、「目が合いますか」という質問をすると、「目を見て育てるんですか」、「抱っこするときには、子どもが落ちないように手元を見ていた」というような質問を受けることが少なくない。子どもがどのように発達していくかということを、少子化世代の一般の人たちに分かるように、結婚前の若者に教育するのも重要。
 二点目の「子どもの病気に適切に対応する」について。身体医学というのは、医学モデルができ上がっているが、心の医療・治療に関してはモデルができていない。心の治療モデルには、異なる専門家がチームで子どもを育てていくような仕組みが必要。厚生労働省においても、子どもの心の診療医を育てることについて取り組んでいる。
 そして、医療に限らず、子どもの心に取り組む体制が、諸外国と比べて遅れている。そもそも精神科と児童精神科が分かれていない。今ではアジア諸外国、台湾、韓国、中国でもChild Psychiatry(児童精神医学)が独立している。日本ではまだ科名標榜も認められておらず、専門性が未確立である。児童精神と小児神経についてもチームを作って治療にあたれる体制作りが急務である。
 そして不登校、いじめ、ひきこもり、発達障害など、子どもの心の問題の指摘は限りなく多いにもかかわらず、専門的理解が未整理である。これは恐らく家族のケアに依存してしまっていたところに要因があるかもしれない。
 医療については、個々の臨床レベルは決して技術的に低くはない。ただ、体制が整備されていないので、子どもの治療薬の安全性確認の研究にしても、心理療法に関してもきちんとしたエビデンスが確認されていない。だから若い医者たちが学ぶにも基準がなく、いわゆる職人技術になってしまっている。大人の精神医学ではそれぞれの疾患について治療間の比較をして有効性の検討がなされてはいるが、大人と同じような方法を子どもや発達障害には適用できない。それでもアメリカのNIMH などでは子どもや発達障害の治療研究のための基準づくりの検討会が立ち上がったばかりであり、我が国でも、ワーキンググループを立ち上げて、臨床ガイドラインをつくる取組を急ぐべきである。
 さらに子どもの発達に関しては、予防的観点が重要である。遺伝と環境の要因は複雑に絡まっており、それらの発達に及ぼす影響を調べるためには、病院を訪れる一部のお子さんだけではなく、地域全体を対象とした大規模な前向きコホート研究が必要である。イギリスとアメリカでは60年代ぐらいからずっと現在も続いている大規模なコホート研究があるのに対して、我が国では取組みはなされているが、非常に遅れている。これは一地域ではできないし、地域で得られた知見は国全体に普遍化できないので、国主導で全国規模で行う必要がある。
 最後に、「子どもの成長を守る」というところで、虐待に関しては、かなり国主導で地域に対策が広まってきた。発達障害は虐待のリスク要因のひとつであることが分かってきた。発達障害は、はっきり目に見える形で分からない分、なぜそのような行動をとるのか理由が分からないことから、子育ては困難となり、その結果、母親は自分を責め、ストレスを高めるという悪循環になる。また、自閉症などの発達障害は重症度はさまざまであるが、共通しているのは対人関係がうまくできないことである。子育てというのは人生のなかで最も難しい対人関係であり、そこでつまずく女性が多い。そういう親たちに分かりやすい子育て支援の方策がない。発達障害は、問題が起きてから対応するのではなく、人生の早期から対策を講じることが、虐待の予防にもつながり、子どもが思春期になってからの情緒障害、行動障害などの二次障害の予防にもなるため、世代を超えて精神保健に貢献する早期投資であるといえる。
 また、日本には、乳幼児検診という世界に誇れるシステムがあり、そこに言葉をしゃべる前の子どもたちのコミュニケーション行動をチェックする項目を少し足すだけで、早期発見の効率性が上がるということをパイロットスタディで確認している。
 最後に、子どもの心の問題を支えるには、医師、看護師、保健師だけでなくて、臨床心理士、作業療法士、言語療法士、教師などの様々な専門職がチームとして連携することが必要であり、病院の中で閉じてしまってはいけない。地域の様々な機関とも連携できるチームを作ることが重要だ。また、治療の基礎データを作ることも大切である。
 大人の精神疾患では、正しい理解について随分とキャンペーンがなされて、偏見が改善されてきた。これからは平均像と異なる子どもたちをどのように理解し、育てていくかについて国民レベルでの啓発・啓蒙が必要。

(土屋委員)   子どもたちの歯科疾患の現状について。3歳児のむし歯のない子どもの割合が順調に増加しており、12歳児の一人当たり平均むし歯数も急激に減少している。しかしながら依然として地域差が見られる。保健所等の現場では、むし歯のない子どもが増える一方、多くのむし歯がある子どもの存在が注目されている。また、歯肉炎や歯周病のある子どもというのは、5年間ほとんど変化が見られない。むし歯だけではなく、生活習慣である歯周病の予防もこれからの大きな課題。
 母子歯科保健の役割は、育児不安や課題を親とともに考え、解消する子育て支援の場を提供し、そこで子育ての楽しさ、喜びを実感できる場として機能していくことではないかと考えている。
 歯科健診満足度の向上として、利用者の視点に立った、母親の生の声、気持ち、生活に寄り添った対応が求められており、健診、相談の場で、具体的な支援をする。そのことが育児不安や育児の負担の軽減につながり、その延長線上に子育ての喜びを感じる母親の姿があると考えている。
 親の育児負担感と仕上げ磨きのときの子どもの反応に関係があるようで、歯みがきが楽しいと感じている親は子どもとのコミュニケーションをとりながら、その中で楽しいと感じ、子どもの心身の発達をあたたかくしっかりと感じ取っている。そこで、歯みがきという歯の健康づくり行動を、子どもとのふれ合いの楽しさ、子育ての喜びの実感というところに転換することを支援できないかと考えている。
 う触の多い子、う触ハイリスク児への対応も大切であると考えている。むし歯が多数ある子どもは、歯科保健の面だけではなく、いろいろな問題を多層的に抱えているということが言われており、生活全体の支援を考慮する場合が多い。地域コミュニティが希薄になった今、地域の様々なネットワークを使って子育てを支援するということが必要だと考えている。
 また、「楽しく食べる」というテーマについて、もう少し歯科から関われることがいろいろあると考えている。例えば保健所の職員は、食や食環境の問題を把握しているが、そのような仕事を歯科の切り口で支援する、連携するといったことも必要。
 歯や歯肉を見ることによって体の状態を直接観察することができ、歯や歯肉は貴重な教材であると言われている。歯肉炎が適切な歯みがきで改善することは、自分の体は自分で気をつけて大切にすれば応えてくれるという貴重な実感を体験することでもあり、一つの問題発見解決型学習の題材となる。また、「食育」という視点から、学級担任・養護教諭・学校栄養職員とともに、学校歯科医や地域の歯科衛生士などが連携したチームティーチングや他の保健活動というものも効果的に推進すべき。

(中島委員)   子どもの置かれている状況が随分変わり、社会病理が子どもに対して様々な影響を与えている。健康な子どもたちは、世の中がどのようになってもちゃんとやっていけるが、少し弱い子どもたちが社会病理にさらされやすくなっているということを強く感じる。子どもたちが自信とプライドを持ち、夢を持って成長できる環境が少し緩んでいるような気がする。まず自分らしさが大切にされていない。また、人間関係が希薄になり、一面的な対人関係になっているように感じる。
 それから、子育て支援は親の都合に合わせた子育て支援に終始しているのではないか。子どもの発達リズム、子どものニーズに沿った支援ができておらず、そういった支援ができる家庭が減っている。これに対しては、一般的な啓発や、教育に関して、全員が同じコースを選択するのではなく、スローコース、レギュラーコース、非常に早いコースがあったほうが望ましい。子どもたちが社会の中でどのような役割を担い、機能をしていくための選択肢が教育の中にあるべき。もちろん居場所づくりも必要。
 文部省の調査では、通常学級に在籍する子どもたちの6.3%に学習上の問題又は行動上の問題があるという調査結果がある。40人学級のうち2人か3人は何らかの先生の指導に沿えない状況があり、先生たちの立場も大変。少人数学級の20人学級で4人も新しく発達障害の子どもが進学するといった学校もある。
 発達障害は、広汎性発達障害、アスペルガー障害、自閉症、ADHD、LDというものを含むが、そのうちの最も深刻な問題は、自閉症スペクトラム障害(ASD)であり、その発生率は少なくとも1、2%程度。そうなると100万人以上の問題となる。そしてこの障害については、ようやく発達障害者支援法が制定されたが、障害としての位置づけが十分でなく支援体制が圧倒的に不足している。ASDは放置すると適応障害や行動障害が出てくる。このことについて説明する。ASDで、IQが85以上である、正常範囲に入っている症例だが、未診断で未介入のまま経過し、思春期以降になって、初めて専門機関を受診した85例(人)について調べたところ、受診をした時点で半数に非社会的問題が生じていた。適応障害については、まず人間関係が孤立し、いじめ体験を80%以上の人が受けており、半数以上が不登校となっている。さらにその3分の1がひきこもりを経験している。不登校の開始の時期というのは小学校の高学年、中学校ぐらいが多いが、小学校低学年、高校、大学でも不登校になり得る。
 次のデータは、行動上の問題だが、介入をした時点では、既に状態が悪くなっており、興奮しやすく、非常に衝動的・攻撃的になり、30%は家庭内暴力を起こしており、また30%近くが反社会的問題を起こしている。反社会的問題というのは虚言、徘徊、万引き、金品盗み、触法、高額浪費、性的問題、ストーカーなど。さらに精神症状の合併を起こすケースも多い。
 最後に、85例(人)について、その親に対して発達について何か気になったかどうかを調査したところ、35%は「何ともなかった」、65%が「気になっていて、あちこち相談に行ったが、ASD問題であると適切に診断をされなかった」である。教育センター、児童相談所、保健所、成人の精神科の診療所、大学病院、様々なところでASD問題は診断をされずに経過し、悪化しているのが現状である。
 ASD問題というのは、適切な支援、継続的な支援がないと加齢とともに症状が拡大し、問題が悪化していく性質のもので、「第4の障害」ではないかと考えている。学級崩壊、キレる子どもたち、こだわり、パニック、不登校、引きこもり、ニート、家庭内暴力、触法、非行、うつ病、精神障害、虐待等々といった社会問題として現れている。最近の社会経済、情報化社会、就労環境がさらに成年期以降の自立困難者を増加させているのではないか。そうしたことから発達障害者支援法ができたが、その中でも特にASDに限定し重点的に組織的な対策が早急に展開されないといけないのではないかと考えている。
 早期対応として、健診、診断、相談、専門医、小児科、児童精神科医などの確保が必要。早期こそ親が一番不安に思っている時期であり、相談窓口を充実させ、教育していくことが一番大切である。
 脳の機能障害だが、機能障害に対する適切な子育て、科学的な子育てを教育していかないと親も子も挫折体験を経験し、さらには親子関係さえ壊れていく。
 それから、学校教育に関しては、高機能の方について、高等教育、就労前教育がないので、自立という概念が育たないまま、みんなと同じ中で、卒業すると自立できないという状況が起きている。最近は、様々な就労支援がなされているが、就労支援にまで至らない人たちが圧倒的に多い。さらに保健医療の充実も必要である。
 虐待問題については、発達障害が被虐待になりやすい。定型発達の子どもよりも4倍〜10倍虐待を受けやすく、また、親も発達障害であるケースも多い。虐待の世代間伝達というよりは、むしろ発達障害の世代間伝達が虐待を悪化させていると思う。そして家庭の基盤がない被虐待児、また、家庭の基盤がない被虐待発達障害の子どもたちは、自立できず、20歳になるとすぐ生活保護を受給するというのが現状。
 また情報化社会によって、有害な刺激の排除や不必要な情報や多過ぎる刺激が子どもたちを混乱させている。このような情報や刺激に関するセーフティネットを作っていかないといけない。

(服部委員)   食育を推進している立場として、子育ては非常に重要であると考えている。今、不登校、虐待、発達障害、反社会的問題が多く、学校の中でもそういった問題が生じているが、本質的には親の力がなくなったことが原因。私は親に対して子育てに関する教育をする必要があると考えている。
 私の学校で19年前に実施した実験で、学生に、1週間の食事日記を提出させた。朝食抜きやバランスの悪い食生活、ダイエットしているなどといった学生が非常に多い結果であった。その2年後、卒業する前に再度1週間の食事日記を提出させて比べたところ、改善度がたったのたったの6%だった。他の学校3校で同じ調査を実施したが、やはり5〜6%の改善率であった。要は頭で理解していても行動には結びつかないのである。子どものときからの生活習慣は大事であり、18歳から20歳位になってからではなかなか生活習慣は改善されないことが分かった。
 0歳から3歳は、スキンシップが大事。現在、親がどのくらいスキンシップをしているかというと、40年前と比較して3分の1程度しか親子のスキンシップがない。
 3歳から8歳は、食卓で子どもと一緒に食事をする機会を持つことが大事。食べられないものがあったり、箸が持てなかったりしたときに、親がきちんとそれを指摘してあげる必要がある。その注意や小言がこの頃なくなっている。私は脳の研究もしてきて、ほとんどの脳学者は、子どもに対して、小言はいけないとしているが、そうではなく食卓においてはマナーのためにも悪い行動を訂正させるためのストレス教育が必要である。悪いものは悪い、いいものはいいという教育をしなければいけない。それによって大人になって、善悪の判断がつくようになる。さらに我が国では、こういう躾の場でテレビを見ながら食事をしている。諸外国と比較してもテレビをつけて食事をするのは日本ぐらい。テレビを見ながら食事をすると、甘い、辛い、酸っぱい、しょっぱいは分かるが、味が分からなくなる。また、親から子どもに必要な指摘ができない。
 このような環境を直すのに大事なのは、行動予防という立場で、そのようになる前にどうしたらいいのかということ。このまま放っておけば、勝手気ままで我がままな自分を制することのできない子どもたちが多く出てくる。
 犯罪について、16年前に「食育」の取組を開始したときに、年に2件から3件、子どもがキレて人を殺した事件があった。15年経った今、表に出ているケースは39件に増加。親が子どもを刺し殺し、子どもが親を殺すというケースである。
 団塊の世代は一番いい教育を受けた世代である。大家族で兄弟(姉妹)が多かった。ところが団塊の世代が結婚することになったときに、核家族を選んだ。その中で子どもの育て方が曖昧になり、躾もなく、自由奔放に育ててしまった。その子どもたちが、いわゆる団塊ジュニア世代といわれているが、今30代になり、子育てをする世代となった。これからキレないような人を作っていくということが大事であり、親、子ともに教育する必要がある。
 また、今から13年前に、世界20カ国の高校生対象に「先生を尊敬しますか」、「親を尊敬しますか」という調査をしたところ、北京では80.3%の高校生が、先生を尊敬すると答えている。アメリカでは82.2%、ヨーロッパEU諸国15カ国の平均が82.7%、韓国は84.9%という結果であった。50%を切ったら、国家として危ないと言われているのにも関わらず、日本は21%であった。今現在でも世界で一番最悪な事態なのが日本である。
 今は学校では規範意識を重要視してない。教育基本法の改正で規範意識を入れた。中央教育審議会の委員会の中で、規範意識が入っていないのは世界中で日本だけだと発言した。
 そして、0歳〜20歳までは「身体をつくる」、0歳〜8歳までは「精神をつくる」というところに、力点を入れて考えたい。

(藤本委員)   「子どもの難病に対する病態解明と新しい治療法開発の現状と展望」であるが、病気の原因については様々なものがある。いろんな要素が重なって初めて発病するというものもあるが、子どもではある特定の遺伝子の、例えば一個の遺伝子の配列が違うだけで、確実に病気になるというものもある。多くの難病はそういうタイプのものだが、今まではそういう病気に対しては全く治療法がなかった。最近は状況が変わりつつあって、いろんな新しい治療法ができてきた。
 一つ目は造血幹細胞移植であるが、もともとはがんに対する補助的な治療法として開発されたが、今は先天性の代謝異常や先天性の免疫不全症に非常に効果を上げている。二つ目は、遺伝子組換えの技術を使って、様々な蛋白製剤・薬ができている。その薬が、我が国の新薬の承認の新たな仕組みの設置もあり、いろんな病気に対して承認が進んできている。三つ目としては遺伝子治療であるが、今後の有望な治療法になると思う。一つの遺伝子の機能を修復することで、根治的な効果が期待できる。まだまだ定着した医療法ではなく、研究的なものではあるが、世界ではかなりの成果を上げている。副作用もあるが、克服できるものと期待されている。
 我が国でもADA欠損症という、生まれつき免疫がない病気であるが、この患者について2例に実施例があり、成功している。今までは、免疫グロブリンを受けるとか、酵素の補充療法を受けるといった治療が必要だったが、成功例については、全く何もせずに元気に学校に通える状況である。
 現在は、慢性肉芽腫症という免疫不全症について、遺伝子治療を行うべく前臨床試験を実施している。他にも例えば未熟児網膜症に対して予防的な処置で予後が著明に改善する、難聴に対して早期介入ができるような装置の開発に成功したとか、そういう新しい動きが出てきている。
 細胞治療・再生医療の分野では、いろんな臓器から組織の種になるような幹細胞といわれるものの分離が可能になってきており、成人では既に心臓の病気などに応用が開始されている。子どもでも、生まれつき体の一部が欠損しているといった病気の治療研究が開始される見込みである。
 「子どもの病気に関する基本情報を整備し活用する」必要がある。一つ目は、成長曲線を使って、いろんな病気、障害の早期発見、早期介入に利用できるのではないかと思っている。二つ目は、我が国で欠けているのは病気に対する基本情報がないということ。ここに子どもの死因の中で、子どものがんは、不慮の事故などを除くと病気による死因としてはかなり順位が高い。患者数、病状などに関する基本的な情報がない。欧米諸国では、20年以上前からそういう基本情報を集めており、我が国でも同様に取組まなければならないと考えている。
 コホート研究によって、現在あるいは将来の子どもの健康状態、あるいは母親の健康状態がどうなっていくのかということを前向きに研究する必要がある。例えばノルウェーでは10万人規模、アメリカでは最近10万人規模の21歳までの追跡調査が始まった。長期的な調査によって、「新健康フロンティア戦略」の成果がどうであったのかという評価の方法につながると思う。
 最後に、まだまだ子どもの難病といわれるものの課題が多く残っている。いわゆる「希少疾患」とは、おおむね患者数が5万人に満たないものであるが、子どもの病気は一つの病気に対して100人にも満たないケースが多い。病気の種類は1万以上にものぼっており、子どもの病気へは数の論理ではなく、特別な配慮が必要。
 ただ、少ない難病の患者にどういった医療を提供するかということについては、日本の中で拠点となる病院を設けて、そこで高度先進的な医療を行うことと、それから全国的な病院のネットワークを形成し、そこで様々な疾患に対する共同臨床研究の推進を行い、最終的に医療の標準化を図るべき。こういった作業の繰返しによって研究に基づいた治療法を開発し、医療におけるエビデンスを経験に基づくものではなく、体系だったものにしなければならない。

(松平委員)   東京の文京区で小児科を30年間開業しており、現場で子どもの変わりようを実感している。日本の子どもの数が減ったということだけではなく、子どもの社会性が乏しくなり、家庭や地域での育児機能が衰えを感じている。
 地域医療における取組として、急性疾患の病気だけではなく、子どもの心の問題に対して知識を持つ目的で、日本小児科医会では、「子どもの心の研修医」の認定制度を実施している。
 それから、初期救急医療というのは、これは一つの大切な育児支援であることから、地域の小児科開業医がどう地域の初期救急に携わっていくかということを問題点にして研究している。
 日本医師会では、「子ども支援日本医師会宣言」の中で「妊娠を望む人たちへの支援」、「より安全な妊娠・出産に向けての医療環境の充実」、「満足できる妊娠・出産に関する社会環境の整備」を進め、さらには「子どもが育ちやすい医療環境の充実」ということで、1)乳幼児の医療費の助成制度の充実、2)15歳までの医療費の1割負担、3)小児救急医療体制の整備、4)ペリネイタルビジット事業の充実、5)予防接種の充実を提言している。
 また、「子育てに関する社会環境の整備」で、1)病児保育の問題、2)保育所の問題、3)子育てサークルなどについて検討している。
 現在、子どもの疾病構造が変化し、子どもの病気が慢性と難治性疾患、他科の医師でも十分対応できるような軽い病気の二つの病気に二極化している。
 また、小児を診る医師が増加し、小児科専門医だけではなくて、内科・小児科の医師が小児を診るケースが多くなっている。さらに、小児科医の大病院への偏在や出生率の低下と小児人口の減少、小児科関係、病院も含め、医療収入が低いことなどが現在の小児科の問題点として挙げられる。
 その原因は、児童手当、日本の小児に対する社会保障給付費が貧しいからだといえる。医療だけでなく、福祉サービスも含め、日本は子どもに対する施策が遅れている。国民医療費を見ても、小児医療に対する医療費の配分が極端に少ない。
 児童の受診動向を調べると、小さい子どもも小児科専門医ではなく、内科・小児科医にかかっているのが実態。医療ネットワークをつくって、3歳くらいの子どもは小児科専門医を受診できるような体制づくりをしたい。
 まずは小児医療の現状把握が必要である。小児の時間外診療は決して救急医療ではなくて、実態は初期救急、時間外診療になっている。95%は治療の必要のない軽症な患者。これは、一つには両親の子育て機能の衰退の影響もあるが、小児科開業医が時間外診療に携わらなくなったことも問題。小児科医会としては、どのように我々小児科開業医が時間外診療に参画するかということを検討している。
 これからの小児科開業医の問題点について。第一に、家庭や地域の育児支援機能は、少子化と人間関係の希薄化で衰退する。このために小児科開業医が地域の子育ての手助けをすることが求められている。第二に、子どもの数が減るだけでなく、感染症などの従来主流を占めていた病気が減り、生活習慣病などの慢性疾患や心の問題の病気が増えてくるので、小児科開業医はこれに対応しなければいけない。第三に、少子化により若年の年金、福祉や医療への負担が増大する中で、医療費の抑制も今より厳しく実行されるようになる。このため、本当に必要なところに医療費を配分することが必要という点が挙げられる。
 小児科医による家庭医制度。「子どものかかりつけ医」、自分のかかりつけ医をもっと認識してかかりつけ医を決めて、かかりつけ医は子どもの病気を診るだけでなくて、子どもが生まれてから成人になるまで、心・身体ともに健康になるように育てる義務がある。これが子どものかかりつけ医制度である。小児科開業医が子どものかかりつけ医機能を十分持ち合わせないと、これから小児科開業医とは言えない。
 「小児保健法」といったようなもの、母子保健法に準じた法律を子どものために作るべきである。この「小児保健法」は、母子保健、医療保健、福祉などを包含した子どものための法律で、国としての財源確保をした上で、包括的な法律を制定するべきである。

(桃井委員)   この国は本当に子どもを守る気があるのかと小児科医の立場から感じる。病院小児医療は崩壊寸前である。崩壊しないのは、小児科医が頑張って激務に耐えているためといっても過言ではない。
 小児病院の1床当たりの赤字は年間1,000万である。したがって、100床あれば10億の赤字である。公的病院でも小児科は赤字で、不採算となっている。病院小児医療の不採算がこれほど持続している中で、本当に子どもを守る気が、国としてあるのか疑問である。国として守る気がなければ改善しない。改善していないため、国が子どもを守る気がないと、小児科医は判断せざるを得ないのが現状である。
 今度の新しい診療報酬改正の案の方針として、「小児」の言葉が出てくるのが「小児救急」の3カ所。小児医療は小児救急のみならず、新生児医療、24時間集中医療、病院小児医療を抱えており、すべての小児医療が崩壊寸前になっている現在、この不採算医療を放っておくわけにはいかない。小児科医が増えるわけがないのが小児科医を育てている立場としての感想である。「10カ年計画」でなく、早急に改善する必要がある。
 各論であるが、高度小児医療の在り方は、各国に比べて医師、看護師以外の必要な職種がないのが日本の医療の特徴。小児はいろいろな職種を必要とするため、病院医師の過重労働に支えられるような医療体制を抜本的改革する必要がある。
 小児科医として神経を担当しているため、発達障害や虐待に接する。病院小児医療の貧困さと虐待発見後の養育施設の貧困さを感じる。小児医療も虐待も発達障害も安易な補助金政策のみならず、この何年間で抜本的に何をしたらいいのか、優先課題は何かということを、ぜひこの会議で検討し、具体的な案を出して欲しい。

(黒川分科会長)   私の基本的な考え方は「子どもは社会を映す鏡」であるということ。「子どもを育てる、みんなで育てる」。例えば大学で学長から学生まで、年に20時間ボランティア活動することについて単位化するべきである。ナポレオン三世は、何歳から子どもの教育を始めるかという問いに対して生まれる20年前からだと回答したそうだ。そういう社会作りを考えてもらいたい。

(文部科学省大臣官房総括審議官)   お手元の参考資料1に「子どもを守り育てる観点から」、一点目は「子どもの健やかな身体を養う」ということで国民運動を展開している。今、子どもの生活リズムを向上させる目的で、「『早寝早起き朝ごはん』国民運動」を展開している。また、体力向上のキャンペーンの充実に努めているところ。
 食育の推進に関しては、学校での食に関する指導体制を推進するために、昨年度「栄養教諭」という制度を創設し、さらに学校給食などを通じて「食育推進プラン」の充実を図っている。また、子どもの体力が低下傾向であるため「体力・運動能力の育成」を目的として、プログラムの開発や運動習慣育成のための取組の推進も行っているところ
 二点目は「子どもの病気に適切に対応する」ということで、先端医療技術開発の推進や、基礎的な研究など科学技術研究の推進に努めているところ。
 三点目は「子どもの成長を守る」ということで、スクールカウンセラーによる学校での子どもに対するカウンセリングの実施、またスクールカウンセラーの活用に関する調査研究に対して助成を行っているところ。

(農林水産省大臣官房技術総括審議官)   食育に着目した施策を紹介する。「農林水産業・食品産業はいのちを支える『食』を国民に提供」することが基本的な使命であるため、食料の安定供給、食品安全の確保などを図る施策を重点的に推進している。併せて、「健全な心身を培い豊かな人間性を育む『食育』」を重点的な施策として推進している。
 具体的には、食育基本法に基づき、関係府省、特に厚生労働省と連携しながら健康面から見た食事の望ましい組み合わせやおおよその量を示した「食事バランスガイド」を策定し、その活用を通じた「日本型食生活」の実践や、さらには子どもに対することも含めて農業体験活動などを推進している。その際、特に女性、子どもなどそれぞれの立場に即して食の推進を図っていくことが重要。
 そういう意味で、まず一つ目は、特に近年子どもの食生活の乱れが見られるため、子どもたちに対して、食に関する正しい知識や望ましい食習慣を身につけさせることを推進している。また、二つ目は、子どもたちに命の大切さ、自然の恩恵などを理解する上で絶好の機会となる農業体験学習を推進しており、子どもたちが心身ともに健康に育つ上で有効であると考えている。
 具体的な施策としては、まず一点目は文科省などと連携し、学校給食の場面において、「日本型食生活」の普及・定着を図るための取組。二点目は、農業体験学習や児童・生徒などが収穫した農作物を利用した料理教室の開催。三点目は、地域における農作業体験などの機会の提供、いわゆる「教育ファーム」の推進である。

(経済産業省医療・福祉機器産業室長)    産業面や技術開発という面に着目した施策を紹介する。基本的には健康増進のためには、国民の方々一人ひとりの取組が重要。このため、個人が自らの健康状態を的確に把握し、健康への投資を積極的に行うような環境を整備することが重要。
 この環境を整備するためには、民間の活力や創意工夫というものを活用し、科学的根拠に基づいた確実に効果を産み出す健康産業を育成したい。また、これらに関する医療機器・医療薬品等のイノベーションの活性化というものを進めたいと考えている。
 子どもの関係で強調したい事例としては、「キッズデザインの推進」である。子どもの死亡要因のトップが不慮の事故である。この不慮というのは基本的に社会そのものが子どもにとって安全な形になっていないのではないために起こるので、この安全性を高めるために「キッズデザイン」を推進していきたい。
 三つの項目から成り立っており、企業や自治体など50団体ぐらいが集まって協議会を作って、子どもの事故情報を収集し、各種のイベントを行って安全性を高めることを進める。また、子どもの安全・安心に貢献するようなデザインに対して表彰するというキッズデザイン制度を作る。こうした情報を収集し、大きなネットワークを作り、それぞれが情報が共有できるような施策に取り組んでいる。

(黒川分科会長)   子どもはみんなの財産だという価値観がどう出てくるか。内閣府の調査では、国民が気にしているのは「健康」や「医療」が一番。雇用とか経済ではない。つまり国民の意識と実際の政策がどうやって反映されているかというプロセスがなかなかマッチしない。
 二番目は、OECD各国の中で、人口当たり医師数は日本は圧倒的に少ない。実際医師免許を持っていても使ってない人が多く、そういう人もカウントされていることを勘案すると圧倒的に少ない。世界最先端の高齢社会なので、どういうふうに予算を確保し、政策に結びつけるかが問題。
 小児科や産科の問題は国民的な関心事項である。厚労省も何もしてないわけではなく、今年から第5次の医療計画において、それぞれの都道府県で医療計画を5年かけて作ることとしている。しかし、施策がなかなか国民には伝わってないので、厚労省には、広報活動、意見募集を積極的に行うよう提言している。
 もう一つは、総理の肝入りで「健康フロンティア戦略」を2年前に策定し、今回再度「新健康フロンティア」を策定するという、総理の強い思いをぜひ何とか生かしたい。そういう意味では、だれが日本の政策を書くか、ある程度独立したシンクタンクがいろいろな健康政策を通じて提示をする。それを国会、立法府、政府案とどのように整合するのかといった議論を展開し、十分な情報を国民に開示する。開示してアピールするというのはメディアの問題だが、それによってそういうことを主張する政治家がまた選挙で勝つというような仕組みにしなければなかなか変わらない。しかし、子どものことをアピールしてどれだけ票が取れるのかという問題があり、高齢者をアピールした方が多分票が取れる、民主社会というのはそういう部分があるので、そういう意識を共有しながら、政策に反映させていくのが大事。
 それから、「食育」については検討がかなり進められているが、子どもの成長について日本は狭いので、食事をするテーブルがキッチンと別の部屋になっている家が少ない。部屋が狭いというのはハッピーじゃない状況であり、果たして世界で2番目のGDPなのか、それが日本の現状である。健康な生活というのは、ハッピーな住環境、食生活、生活習慣が支える。8割が都市化して少子化ともなると、みんな孤独である。奥山さんの話にあったような自発的な地域密着型のサークル、世代を超えてみんなが協力していくという社会を形成していくのが大事である。
 短期間なので、なかなか難しいところもあると思うが、協力いただきたい。