5 「構造改革特区」制度の適切な実施と早期改善に向けて
【問題意識】
総合規制改革会議は、7月23日に本年度の「中間とりまとめ」を決定・公表し、この中で「規制改革特区」に関する提言を行ったが、本特区制度についてのそれ以降の政府の取組と、これに対する評価は、以下のとおりである。
1 総合規制改革会議の「中間とりまとめ」の概要
当会議は、本年4月以降、「規制改革特区ワーキンググループ」において、「特定の地域に限定して、その特性に注目した規制改革を実施することにより、全国的な規制改革につなげ、我が国全体の経済活性化を図ることを目的とする『規制改革特区』」について積極的な検討を行ってきたが、その結果として、7月23日に決定・公表した「中間とりまとめ」において、特区制度に関し、以下を内容とする提言を行った。
(1)基本理念
- 地方公共団体の自発的な立案に基づく制度とすること
- 従来型の財政措置は講じないこと
- 可能な限り幅広い規制の特例を対象とすること
(規制の特例は、地方公共団体や民間の提案により毎年追加) 等
(2)制度設計の方向(法的枠組み)
- 申請、認定等の法的手続・決定プロセスを内閣に一元化し、各省ではなく内閣主導で特区を認定する「通則法」を基本とすること
(地方公共団体の提案する分野横断的・省庁横断的な規制改革をパッケージとして実現すること)
- その他主な法的論点(代替措置、地域、規制の選定基準) 等
(3)今後の推進方法
- 推進母体における民間や地方公共団体の人材の活用
- 提案公募の実施
- 当会議は推進母体に対し、必要に応じ意見を述べるとともに、対象規制の選定に際し最大限協力すること 等
(4)特区構想例
2 その後の推進母体(特区推進本部及び特区推進室)の取組
その後、7月5日に特区制度の推進母体として内閣官房に設置された「構造改革特区推進室」(以下、単に「特区推進室」という。)が中心となり、また、閣僚レベルでは、全閣僚をメンバーとし内閣総理大臣が本部長を務める「構造改革特区推進本部」(以下、単に「特区推進本部」という。)が7月26日に設置され、政府一体となった取組が開始された。
(1)特区推進室における民間や地方公共団体の人材の活用
- 総合規制改革会議が、その「中間とりまとめ」において、「特区制度の企画・立案のため、先般、内閣官房に設けられた推進母体においては、特区制度の目的が達成されるよう、企業経営や具体的事業に通じた民間や地方公共団体の人材を、積極的に活用することを検討すべきである」と提言した点については、特区推進室において、8月以降、民間から3名及び地方公共団体から4名が、新たに追加採用されたことにより、提言の内容が実行された。
(2)地方公共団体等に対する提案公募の実施
- 当会議が「中間とりまとめ」において、「推進母体において、検討対象とすべき規制を選択するに先立ち、地方公共団体や民間からオープンな形で広く提案を受け付けるべきである。特に、地方公共団体に対しては、提案機会の均等性を周知徹底する意味からも、一定期間、集中的に提案を受け付ける機会を設けるべきである。」とした提案した点については、特区推進室が、7月26日から8月30日までの約1か月間、特区に関する提案の募集(以下、「第1次提案募集」という。)を行った。9月6日に、この募集結果が公表されたが、合計249の主体(公的主体;231、民間主体;18)から寄せられた具体的な特区構想は426件にも上り、その中で提案されている具体的な個別の規制改革要望は、903事項にも及んだ。
これらの中には、当会議が「中間とりまとめ」において、「特区の構想例」として例示した多くの事項が含まれており、当該構想例が、地方公共団体や民間における検討に貢献したものと評価できる。
(3)特区推進本部における構造改革特区推進のための基本方針及びプログラムの決定
- こうした政府一体となった取組の結果、特区制度については、特区推進本部において、以下のとおりの決定がなされた。
@ 構造改革特区推進のための基本方針
9月20日の第2回特区推進本部において、「構造改革特区推進のための基本方針」が決定された。
その内容は、特区制度の目的(地方公共団体や民間事業者等の自発的な立案により、地域の特性に応じた規制の特例を導入する特定の区域を設け、当該地域において地域が自発性を持って構造改革を進めること)、推進のための取組みの方針(地方公共団体や民間の「知恵と工夫の競争による活性化」、「自助と自立の精神」の尊重、可能な限り幅広い規制を対象、内閣における手続き、決定プロセスの一元化、特例措置の評価の実施)等であり、これらは、当会議が「中間とりまとめ」において提言した「基本理念」の内容に、ほぼ全面的に沿うものであった。
A 構造改革特区推進のためのプログラム
また、10月11日の第3回特区推進本部においては、具体的な制度の骨格、特例措置を講じることができる規制及びその条件、今後のスケジュール等を内容とする「構造改革特区推進のためのプログラム」(以下、単に「プログラム」という。)が決定された。
その内容に対する評価については、「構造改革特別区域法案」(以下、単に「特区法案」という。)と併せて、下記4において詳述することとする。
(4)特区法の成立
- プログラムの決定を受けて、今臨時国会(第155回国会)に向けての特区法案に関する立法作業が本格的に開始された。同法案は、11月5日に閣議決定を経た後、国会に提出され、その後、12日間にわたる衆参両院における審議を経て、12月11日に「構造改革特別区域法」(以下、単に「特区法」という。)として成立した。現在は、地方公共団体からの特区計画等の申請等が始まる来年4月1日の同法の完全施行が待たれているところである。
3 推進母体への協力を始めとする当会議の取組
当会議は、その「中間とりまとめ」における「推進母体における今後の検討が、この中間とりまとめを実現する形で進められるよう、推進母体は、法案策定に当たり当会議と密接に意見交換すべきであり、当会議は推進母体に対し、必要に応じ意見を述べるものとする。」との提言に基づき、特に以下の諸点につき、特区推進室及び特区推進本部に対する協力を始めとする積極的な取組を行ってきた。
(1)プログラムの決定に当たっての関係団体、関係省庁等との意見交換
- 9月末から10月初旬にかけて、当会議としては、プログラムに記載される「特区制度において講じられる規制の特例措置」を可能な限り幅広いものとするため、特区推進室とも密接に連携しつつ、関係各団体、関係各省庁との意見交換を行った。
この際、「中間とりまとめ」における「特区制度の対象とすべき規制を選定するに当たっては、各省との調整の段階で当会議は、プロセスの透明性を確保しつつ、規制改革全般の観点から関与することとし、関係各省との折衝・調整等に関し、推進母体に対して最大限の協力を行うものとする。」との提言内容を踏まえ、当会議は、本意見交換について、プレス等を含め、外部に完全公開するとともに、行われた意見交換についての詳細な議事録の公開を行った。
(2)特区法案に関する関係省庁との意見交換
- また、特区法案の策定に際しても、特区推進室とも密接に連携しつつ、関係各省庁との意見交換を行った。
なお、プログラムにおいても、「『経済財政運営と構造改革の基本方針2002』(平成14年6月25日閣議決定)を踏まえ、引き続き総合規制改革会議等の意見を聴きつつ、その推進を図る」とされているところであり、今後とも当会議としては、引き続き、特区制度の円滑な施行やその見直し等の検討に当たり、特区推進室等に対し、上記と同様の取組を行うものとする。
4 プログラム及び特区法に対する評価(これらの策定過程において、全国において実施することとなった規制改革事項に対する評価を含む。)
(1)評価
- プログラムに基づき整備された特区法は、「申請、認定等の内閣における手続き、決定プロセスの一元化」を実現する「一本の法律(いわゆる「通則法」)の制定」として、「幅広い規制の特例措置からの地方公共団体による選択」、「規制の特例措置の定期的な追加」といった、総合規制改革会議が「中間とりまとめ」において提言した制度設計の方向性を概ね踏襲したものとなっている。
こうしたいわゆる「通則法」が整備されたため、今後とも地方公共団体や民間からの要望次第で、規制改革事項の追加が、一定のシステムの下で機動的に行われることになった点は、大いに評価されるものである。なお、特区地域の認定に際しての同意とは、広範な自由裁量が認められているとの趣旨ではなく、要件に該当すれば同意するとの覊束裁量を意味しており、関係行政機関の同意が必要とされる要件については、これが各省庁による実質的な拒否権を意味しないことを明確にする必要がある。
また、第1次提案募集において地方公共団体や民間から要望のあった規制改革事項のうち、特区法の対象となる法律事項を含む「特区で実施可能な規制の特例措置」(別表1)としての93事項のみならず、「特区に限定されるのではなく全国において実施する規制改革事項」(別表2)としての111事項についても、プログラムにおいて盛り込まれた。このことは、この短期間(半年弱)に、合計200以上の規制改革事項が前進したとして、大きな意味を持つものと評価できる。なお、プログラムには記載されていないが、別途「現行制度で対応可能」とされたものも、311事項に上った。
さらに、特区法案においては、計画の認定の申請に当たって、特定事業及びこれに関連する事業に関する規制に関する法令の解釈について、関係行政機関の長に確認し、関係行政機関の長は回答する義務がある旨の規定が整備された。
(2)残された課題
- しかしながら、後述するとおり、地方公共団体や民間からの強い要望もありながら、医療機関や学校の株式会社による経営の解禁など、未だに関係各省等の反対により、今回の特区制度の対象とならなかった規制改革事項も多い。これらを早急に特区制度の対象とし、特区制度を真の意味で地方公共団体等の要望に応えていけるものとするよう、より一層の改善を図ることが、我が国の経済活性化にとっても重要である。
地方公共団体等からの提案や当会議の検討過程において議論のあった規制改革事項の主なものなどのうち、例えば、以下の事項については、新規の需要や雇用の創出効果が高いものと認識しており、当会議としては、これらを早急に、少なくとも特区制度の対象とすることを検討する必要があると考える。
| ○ | 株式会社等による学校経営の解禁 |
| ○ | 大学・学部・学科の設置等の完全自由化(認可制から届出制への転換) |
| ○ | 国立大学の教員への裁量労働制の適用 |
| ○ | 小中高一貫教育など、教育課程・教科設定・学習指導要領の弾力化(「構造改革特
区研究開発学校制度(仮称)」の運用が、必要以上に厳格なものにならないようにする) |
| ○ | 国公立大学の部局等管理職への外国人の任用の解禁 |
| ○ | 公立学校と私立学校との間の生徒の負担の平等を確保するための教育切符制の導入 |
| ○ | 株式会社等による医療機関経営の解禁 |
| ○ | 労働者派遣業務の医療分野(医師・看護師等)への対象拡大 |
| ○ | いわゆる「混合診療」の解禁 |
| ○ | 日本の医師免許を持たない外国人医師による日本在住外国人への医療行為の解禁(必ずしも「臨床修練」を主目的にしない場合についても解禁) |
| ○ | 公共職業安定所(ハローワーク)の民営化 |
| ○ | 高齢者・障害者に対する最低賃金法の適用除外を、当該自治体の判断で許可 |
| ○ | 幼稚園・保育所の一元化(資格試験の統合、設置基準の統一(保育所にのみに義務付けられた調理室設置義務の廃止等)など) |
| ○ | 地方公務員の臨時的任用の要件緩和 |
| ○ | 公有水面埋立地の用途変更の制限期間(10年)の短縮・撤廃 |
| ○ | 強制水先の必要な船舶の範囲の見直し |
| ○ | 株式会社等による農地取得の解禁 |
| ○ | 外国人弁護士による日本在住外国人向けサービスの解禁 |
なお、当会議がこれらを検討することについての関係各省の現在の考え方は、別紙のとおりである。
【具体的施策】
上記の問題意識を受けて、構造改革特区制度については、今後とも、以下の進め方に基づき、より一層の推進を図るべきである。
1 「構造改革特別区域法」の適切な施行に向けて
今臨時国会において成立した特区法については、来年4月1日の完全施行等の今後のスケジュールを踏まえ、その円滑な施行に向け、当会議として、特に以下の諸点について、特区推進室と協力しつつ関係各省庁に対する厳格な監視を行う。
(1)政省令、通達等の策定状況の監視
- プログラムの別表1に掲げられた事項のうち、政省令、通達等に関する規制の特例措置については、関係各省庁によりプログラムの別表1の「特例措置を講じるに当たっての条件」以上の制約が課されないように、また、特区法の完全施行までに、政省令、通達等の公布及び施行がなされるようにする必要がある。
このため、特区制度は内閣主導によるものという基本理念に則り、政省令、通達等に関する規制の特例措置の全項目に係る原案の策定については、プログラムに基づき、各省庁は内閣官房と所要の調整を行うこととなっているが、当会議としても意見を述べつつ厳格な監視を行うとともに、特区推進室と連携を図ることとする。
(2)「基本方針」の策定状況の監視
- 特区法第3条に規定される「構造改革特別区域基本方針」(以下、単に「基本方針」という。)については、特区法の施行後速やかに閣議決定を行うものとされている。
第1次提案募集における地方公共団体等からの要望内容と、これに対する各省庁の回答内容が不整合な場合等が多く見られることにより、自らの要望が結局のところ満たされるのか否か不明であるとの指摘を行う地方公共団体や民間も多い。
また、特区法のスキームでは、規制の特例措置等の対象を、法律、政省令のみとしており、訓令又は通達に関する事項については、特区法附則第3条において「この法律の規定に準じて、必要な措置を講ずる」とされているところである。
このため、基本方針においては、上記(1)の政省令、通達等に関する事項を含め、今次特区制度により講じられることとなった全ての規制改革事項について、それらの一覧性が確保された上で、地方公共団体等による要望が満たされるのか否かが明確に理解されるような形で記載されるべきである。また、訓令又は通達に関する事項も、法律、政省令事項と全く同一のスキームで取り扱われることを担保すべきである。
また、基本方針においては、特区法第4条第9号に規定される「内閣総理大臣が、地方公共団体の申請した特区計画を認定する際に求められる関係行政機関の同意」について、特区制度の基本理念にかんがみ、各地方公共団体が客観的に要件に適合していると判断されるものは、関係行政機関の長は原則として同意するものであり、特段の明確な問題がない限り地方公共団体の申請内容が認められるもの、すなわち、広範な自由裁量が認められているとの趣旨ではなく、要件に該当すれば同意するとの覊束裁量を意味していることが、明記されるべきである。
上記の諸点について、当会議としても意見を述べつつ厳格な監視を行うとともに、特区推進室と連携を図ることとする。
(3)特区で講じられた規制の特例措置の的確な評価
- 特区において講じられた規制の特例措置については、一定期間経過後に的確な評価を行うことによって全国大の規制改革に着実につなげていく必要がある。プログラムにおいては、「特区法案成立後、1年以内に構造改革特区において実施される規制の特例措置の効果、影響等を評価するための体制を定める。」とされており、これにしたがって早急に評価の体制、方法等を基本方針において定めるべきである。その際、情報収集や調査等の機能を有した第三者による評価が重要であり、その評価に基づき全国大の規制改革が加速されるよう、構造改革特別区域推進本部長たる内閣総理大臣が関係行政機関の長に対し、リーダーシップを発揮できるような機能が重要であることから、当会議としてもそのような評価体制の確立に向けて最大限の協力をしていく。
2 特区制度の活用も含めた更なる規制改革の推進
(1)「全国において実施する」とされた規制改革事項の深堀り等
- 特区を用いた規制改革の推進という戦略に関して、当初、特区での規制改革の結果を注視するという観点から、かえって国全体の規制改革を遅らせるのではないかという懸念もあった。しかし、現実には、地方自治体からの特区提案を契機に、むしろ全国的な改革が促進されたものも多い。
プログラムにおいて、「構造改革特区の推進と並行し、構造改革特区に限定するのではなく、全国において実施する規制改革事項(実施時期及び内容が明示されているものに限る。)」とされている事項(別表2の111事項)については、「総合規制改革会議の第2次答申に向けた検討において、対象とするものとする」とされている。
これらの規制改革事項については、本プログラムに基づき、当会議として本答申に向けた検討を重ね、本答申の末尾の別表において、プログラムにおける記載内容からより一層の深堀り等を図った形で記載しているところである。
当会議としては、これらの事項について、今後とも、引き続き、進捗状況の監視、更なる深堀り、前倒し等を進めることとするが、これら以外の事項も含めた、地方公共団体や民間から提案のあった規制改革事項について、全国規模の改革と特区での改革とが「二者択一」であることを原則に、その両面から規制改革の推進を図ることとする。
(2)「現行制度で対応可能」とされている規制改革事項の周知徹底
- 第1次提案募集において地方公共団体等から要望のあった規制改革事項のうち、「現行制度で対応可能」とされているもの(311事項)については、例えば、地方公共団体等に対する周知徹底が足りないことなどにより、地方公共団体等に認識されていないことに起因する場合も多いと考えられる。
このため、関係各省庁は、これらの規制改革事項について、通知等の文書などにより、速やかに可能である旨の周知徹底を行うべきであり、当会議としても、これに対し、引き続き、厳格な監視を行うこととする。
また、これらの事項を始めとする、特区において地方公共団体等が実施しようとしている事業のために、法令等の解釈を明確にしたい事項について、特区法第4条第7項に基づいて地方公共団体から規定の解釈についての確認があった場合には、30日以内に文書で回答するよう基本方針に明記すべきである。
3 第2次提案募集も活用した特区制度の対象となる規制の追加
第1次提案募集において地方公共団体等から要望のあった規制改革事項のうち、「今回は特区として又は全国において実施されないもの」とされたもの(141事項)のうち、例えば、新規の需要や雇用の創出による経済活性化の効果も高いと考えられるものなどについては、特区推進室及び関係各省庁は、当会議とも密接に連携しつつ、少なくとも特区において実施すべき規制改革事項としての検討を開始すべきである。
この際、来年1月15日を締切りとする地方公共団体や民間からの「第2次提案募集」における要望状況も、十分に勘案すべきである。
また、特区で行うことが適切かつ早急に必要であると考えられる規制改革事項については、速やかに基本方針を改訂し、特区制度の対象として追加するとともに、それらが法律事項である場合には、次期通常国会における特区法の改正も視野に入れ、検討を行うべきである。
さらに、地方公共団体や民間への十分なPRを行った上で、第3次募集、第4次募集と定期的な提案募集をすべきであり、基本方針において定期的な提案募集とそれに基づく基本方針の改定、法令等の改正の一連の流れを明確に規定すべきである。
こうした一連の流れを通じた規制改革を加速していくため、特区推進室による地方公共団体や民間に対するコンサルティング機能や情報発信機能を強化すべきである。
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