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第2章 各分野

1 競争政策

【問題意識】

 日本経済を活性化し、豊かな社会を実現していくためには、これまでの経済社会構造を見直し、市場における公正かつ自由な競争を積極的に促進することが必要であり、そのためには、基本的な競争ルールである独占禁止法のエンフォースメントの強化を図る必要がある。また、その機能・権限をつかさどる公正取引委員会については、市場参加者の声を十分に踏まえ、違反事件審査における事業者の秘密の保持の必要性等にも配慮しつつ、組織の中立性・独立性や審査の迅速性・透明性等を確実に担保する必要がある。ルールとそのエンフォースメントはまさに車の両輪であり、双方の改革により、我が国の経済社会を真に競争的なものにしていくための市場監視体制を構築していく必要がある。このことは、証券、電気通信、エネルギー等の特定の専門分野における市場監視についても同様であり、専門市場の監視体制は、このことを踏まえた上で、公正取引委員会と適切な連携を図っていく必要がある。
 また、我が国の経済活動に公正かつ自由な競争をより一層導入していく上では、政府自らがその範を示すことが是非とも必要である。政府調達については、結果平等から機会平等への転換、より一層の透明性と効率性の確保という観点から必要な改革に取り組むべきである。
 さらに、様々な業種や規模の企業が活力ある企業活動を行えるよう、持株会社や大規模会社の株式保有制限に関する規制や、親事業者と下請企業との間の規制等については、経済環境の変化に即応して、引き続き、適切な対応をする必要がある。

【具体的施策】

1 独占禁止法のエンフォースメントの見直し・強化【平成15年度中に措置】
 既に、独占禁止政策の分野においては、行政上の措置である課徴金制度を導入・強化する等、違反行為に対する抑止力強化のための対応を行ってきているが、競争秩序の維持という法益価値がこれまで以上に高まっていることを踏まえ、違反行為に対するエンフォースメントを、一層強化する必要がある。その際、課徴金制度を見直すとともに、行政上の調査・審査手続における適正手続(due process)を確保するような制度的な工夫が必要である。また、それに伴い、違反行為によって侵害される「自由競争」の価値を実質的に明らかすることの重要性がこれまで以上に高まることとなるので、違反行為の「悪質性」・「重大性」の考え方について、明確化していく必要がある。さらに、単一のカルテル参加事業者に対する課徴金と刑事罰の併科の是非についても、刑事罰が違反行為の抑止に重要な機能を果たしている現状を踏まえつつ、検討していく必要がある。

(1)刑事告発手続の見直し

 現行法上、公正取引委員会が証拠収集活動等を行う場合、行政処分を目的とする間接強制による行政調査手続に限られ、刑事事件の証拠収集を目的とする調査はできない(独占禁止法第46条4項)が、同委員会の方針として、悪質かつ重大な事案等については積極的に刑事処分を求めて告発を行うこととしているのであるから、手続面についてもそれと整合的にする必要がある。したがって、刑事告発を目的とする行政調査手続としての犯則調査手続の導入を検討すべきである。
 また、現行法上、検事総長への告発、不起訴の場合の内閣総理大臣への報告など、他法令に例がない厳格な告発手続が規定されているが、その妥当性について、見直しを検討すべきである。

(2)課徴金制度の見直し

 独占禁止法違反行為に対する抑止力強化の観点から、現行課徴金制度を見直すべきである。具体的には、独占禁止法違反行為を繰り返し行う事業者が跡を絶たないなどカルテル・談合体質が根強く残っている現状、並びに他の主要国における制裁金等の水準やその効果を踏まえ、課徴金制度の制定経緯等も考慮しつつ、現行課徴金制度の性格付けの見直しを含め、十分に抑止力のある効果的な制度を検討すべきである。
 なお、こうした制度の見直しに当たっては、適正手続の確保や不服申立ての手段等について、併せて検討を行うべきである。

(3)課徴金減免プログラムの導入

 課徴金制度の見直しと併せて、摘発率の向上と法執行の効率性を両立させる観点から、自ら独占禁止法違反に関与していることを公正取引委員会に申告し、その後の調査・審査等に全面的に協力した者に対しては、上記課徴金の免除、減免等を行うプログラムを導入すべきである。
 ただし、導入に当たっては、透明性及び予測可能性を確保する観点から、制裁減免のための要件とその効果を、告示やガイドラインの形で明確に定めて公表することとするなど、当局が過度の裁量権を有しないような工夫をすべきである。

(4)課徴金適用対象の拡大

 独占禁止法違反行為に対する抑止力を一層強化する観点から、課徴金の適用対象について、私的独占等の悪質な独占禁止法違反行為一般にまで拡大すべきである。

(5)審判制度の見直し

 上記のようなエンフォースメントの強化を行うに当たっては、更なる独立性や適正手続の確保等の観点から、審判制度の在り方を見直すことを検討すべきである。

(6)既往の違反行為に対する措置期限についての見直し

 現行の排除措置について、違反行為が既になくなっている場合でも、違反行為がなくなってから1年間は、違反行為が排除されたことを確保するための措置を命じることができることとなっているが、国際カルテル等に対しても十分対応できるよう、措置期限の延長を検討すべきである。また、現行3年とされている課徴金納付命令の措置期限についても、延長を検討すべきである。

(7)独占禁止法における民事責任制度及び差止制度の見直し

 独占禁止法の差止請求制度については、制度の実施状況を注視しつつ、事例の蓄積を待って必要性が認められる場合には、私人による差止請求対象行為の範囲の見直し等、民事的救済制度を更に充実した制度とするための検討に着手すべきである。

2 公正取引委員会における審査機能・体制の見直し・強化【平成15年度以降逐次実施】

(1)独占禁止法違反事件に関する審査機能・体制の見直し・強化

 平成13年度の公正取引委員会における独占禁止法違反事件の審査実績(不当廉売事案で迅速処理したものを除く。)を見ると、総審査件数124件のうち勧告等の法的措置に至ったものは、38件(約3割)に止まっている。また、こうした勧告等のほとんど(36件)が入札談合等(価格カルテルを含む。)であり、同委員会の役割に対する期待の大きい情報通信、エネルギー等の分野における勧告等がほとんどないこともあるため、不公正な取引方法や私的独占についての同委員会の取扱いは、十分とは言えないとの指摘もある。したがって、審査案件の発掘について民間からの直接の情報の吸い上げを含め、情報収集力を高める方策を検討するとともに、これらの事件を重点的に取り上げていく必要がある。
 また、審査期間について見ると、同年度の法的措置事件に関する平均審査期間(立入検査から法的措置までの期間(休日を含む))は286日(約9か月半)となっている。これは、我が国の経済社会や個別市場における競争環境の変化のスピードからすれば、長いものとなっており、同委員会においては、事件審査に要する期間の短縮に努める必要がある。
 さらに、同年度の総申告件数770件のうち審査処理されたものは87件(約1割)となっており、また、申告の受け付けや審査打切りの手続等に関連して、申告された案件について同委員会がどのように考えたのか説明が十分とは言えないなどの問題点が指摘されている。また、審査期間が長いことに加え、こうした審査における透明性の点についても、産業界等外部からの批判があることも事実である。
 こうした中で、同委員会が、我が国の競争政策における中核的存在、いわば「市場の番人」として機能することが、我が国において健全な競争社会を実現する上で極めて重要である。しかしながら、現在、同委員会の職員数は607名であり、違反事件の審査部門の職員数はその約半数の294名に止まっている。また、このうち、受け入れられている弁護士等の外部人材は、25名である。
 こうした同委員会の現状を見れば、同委員会は、このままでは、全ての産業や全ての取引についてカバーし、独占禁止法違反行為を摘発し、それを迅速に処理していくことは困難である。したがって、同委員会の人員の抜本的な拡充を図るとともに、これまで以上に多様な手段を講じつつ、同委員会の審査機能・体制を、早急かつ抜本的に強化していくことが必要である。

@ 民間等の外部人材の積極的な受入れ
 冒頭のような審査実績、特に、公正取引委員会の役割に対する期待の大きい分野の実績などを踏まえると、同委員会は、既存の研修の内容を向上させるとともに、例えば、弁護士、エコノミスト等の民間の専門家や、出向元との関係にも一定の配慮をした上での他省庁からの出向者など、外部人材の専門性が生かせる分野については、非法執行部門も含め、その受入れを積極的に検討し、審査部門の強化を図るべきである。さらに、審査に関わる職員の専門性を向上させるため、同委員会は、外部との人材交流の一層の拡充を図るべきである。

A 審査部門の人員の充実等
 公正取引委員会において、審査部門に重点を置いた一層の体制整備を進めるため、審査部門への人員の重点的配置等についても、迅速かつ計画的に行う必要がある。特に、違反事件の大型化、審判で争われる事例の増加等に対応するため、違反行為の監視体制の強化、事件処理の迅速化の観点から、審査部門の人員の抜本的な増強が必要である。このため、上記の外部人材の受入れと併せて、人員充実及び人員の重点的配置のための具体的な検討を速やかに行うとともに、審査部門内の機能・体制についても、より一層の審査の迅速化及び実績の向上に向けた検討を行うべきである。

B 審査の迅速化のための新たな目標の設定・公表と客観的な評価の実施
 公正取引委員会の平成13年度の平均審査期間(286日)は、経済・産業の実態における変化のスピードと比べると長いものとなっている。
 したがって、同委員会は、今後、審査の迅速化を図るため、人員の充実及びタスクフォースの活用等による専門性の向上を図るとともに、各事業分野における紛争処理機関等との性格の違いも踏まえつつ、一律の目標ではないにせよ、情報通信、エネルギー等の公益分野における新規参入案件などを中心に、国民の期待に沿った標準的な審査期間の目標を設定・公表し、その結果を評価することなどにより、迅速かつ効果的な事件の処理に努めるべきである。その際、こうした期間は一つの目安であって、たとえその期間を超えたとしても、関係人が措置の対象にならないわけではないことを明確にする必要がある。
 また、今後、こうした迅速かつ効果的な処理を通じて、同委員会の審査実績を飛躍的に向上させるためには、審査に関する目標を策定・公表するとともに、定期的に、政策評価を実施し、その枠組み等を活用して、客観的な評価に努めるべきである。
 その際、特に、情報通信、エネルギー等の公益事業分野については、実際の審査結果が、どのように新規参入や競争促進につながっているかなど、定性的・定量的な観点からの評価に努めるべきである。

C 警告・注意等の取扱いの改善
 公正取引委員会が、独占禁止法違反のおそれがあるとして行う警告、注意といった取扱い(平成13年度は合計41件)については、行政側からの一方的な通知であり、事業者がそれを法的な手続の中で争うことができない等の問題がある。こうした手段は、競争制限行為を迅速に除去するために、一定の範囲で必要性が認められるものの、上記のような問題があることを踏まえ、同委員会においては、違反行為を排除する必要がある場合には、勧告等の法的措置により対応することを原則としつつ、これら事実上の行政指導や注意喚起については、その取扱いを必要最小限とし、かつ上記のような問題点についての改善が可能かどうかを検証し、可能な場合には改善を図るべきである。

D 審査打切りの概要の公表
 審査打切り(平成13年度は8件)については、申告者に対し、その理由等について十分な説明がなされていないこと等も多いとの指摘もある。したがって、事案の関係人がその旨の公表を望む場合には、説明責任を果たす観点から、打切り案件のおおまかな概要の公表を行うべきである。

(2)企業結合に関する審査機能・体制の見直し・強化

@ 民間等の外部人材の積極的な受入れ及び内部体制の見直し・強化
 平成13年度の企業結合審査は、1,254件の届出に対し、僅か22名の体制によって対応しており、審査内容が不十分、かつ、審査期間が長期間になっているとの指摘も多い。したがって、審査能力・専門性を向上させるため、公正取引委員会は、審査人員を増加させるとともに、非法執行部門を含め、民間の専門家や、出向元との関係にも一定の配慮をした上での他省庁からの出向者など、専門性が生かせる分野について、積極的にこうした外部の人材を活用すべきである。また、企業結合審査部門への人員の重点的配置により、機能・体制の強化を図るべきである。

A 審査の迅速化のための目標の設定・公表
 企業結合の事案の中には、審査に長い期間を要する事案も多いとの指摘もあることから、公正取引委員会は、国民の期待に沿った標準的な審査期間の目標を設定し、これを公表すべきである。

B 審査対象の重点化のための明確な基準の策定
 今後の企業結合審査の効率性を高めるため、公正取引委員会は、更に審査の重点化を行うとともに、市場における予見可能性を高める観点から、事案の公表のより一層の充実を図るべきである。また、これらを含む過去の事例の蓄積を踏まえ、現行のガイドラインにおいて重点化に向けた明確な基準の策定・公表について検討すべきである。

C 企業結合案件に関する透明性の向上
 審査の透明性を向上させるため、合併等を認めたもの、認めなかったもののうちできるだけ多くの案件について、事業者の秘密に関する部分を除き、支障のない限り、その理由を含め、公表内容のより一層の充実化を図るべきである。
 公表に当たっては、予見可能性を高める観点から、どのような市場(一定の取引分野)をどのような基準(取引対象商品又は役務、地理的範囲)で画定したのか示すとともに、画定した市場における審査結果の内容、及び判断の根拠となる、市場シェア、順位、当事会社の競争状況(市場における競争者の数・集中度、参入、輸入、閉鎖性・排他性等)等の基準や、各合併等案件の市場の競争状況への影響をどう評価したかなどの判断の理由・基準等を示すべきである。また、当事会社が申し出た問題解消措置を前提として容認された事案については、当該問題解消措置に対してどのような評価を行ったかについても示すべきである。

D 事前相談の明確化・透明化
 公正取引委員会が正式の届出の前に事前相談を受け付けていること(事前相談件数は年間約150件)等については、企業側にとっての利便性の向上に資する面もある一方で、そのプロセスが不透明で場合によっては不公平感を生み出しているとの指摘や、企業側の予見可能性の低下を通じて事前相談件数が増大するとの悪循環が生じているとの指摘もある。このような指摘に対応するため、同委員会は事前相談制度を明確化・透明化すべきである。
 具体的には、事前相談のうちどのような案件を公表するかの基準を明示するとともに、同委員会が企業に求める提出資料リスト、審査期間等を明示・公表するなど、運用を明確化すべきである。

3 専門分野におけるエンフォースメントの強化

(1)証券取引分野における市場監視機能の強化等【平成15年度中に検討・結論】

 我が国経済の再生・発展にとって、市場機能を中核とした金融システムを確立していくことが喫緊の課題となっており、その際、一般投資家を含め、市場参加者の裾野を広げていくことが重要であるが、現状は、証券市場について国民の十分な信頼を得られているとは言いにくい状況にある。また、金融・証券取引の分野におけるルールは事前型から事後型へシフトしつつあり、事後型ルールに対する法益が増大している。そこで、一般投資者の市場に対する信頼感を醸成するためには、ルールの一層の整備が必要であるとともに、ルールに違反した者にきちんとペナルティを課せられることが最低限必要であり、また、法益の増大にかんがみると、そのペナルティも強化される必要がある。これらの点を踏まえ、証券取引分野においても、証券市場監視を強化する観点からのエンフォースメント手段の強化・拡充及び複線化、並びに罰則規定の見直し等が必要である。また、資本市場の健全性と公正性をより一層確保できるよう、市場の監視取締体制について、十分な人員及び予算を確保することが必要である。また、行政上の制裁措置等や、不公正取引、ディスクロージャー等に係る資本市場の監視取締に必要な規則の制定については、市場により近い証券取引等監視委員会が一層重要な役割を果たすことが肝要であり、そうした方向性に沿って、更なる独立性向上の必要性も含め、市場の監視取締体制の在り方について検討を行い、結論を得るべきである。

@ 民事・行政的な制裁的負担を賦課する制度に係る検討等
 機動的に必要十分な市場における違法行為への対応を行うためには、厳格な構成要件が要求される刑事罰と市場における仲介機関等を主たる対象とする行政処分というエンフォースメント手段の実効性を検証した上で、不公正取引や不実開示等の証券取引法違反行為について、行政上の制裁として、米英等の民事制裁金や独禁法上の課徴金の制度等も参考にしつつ、民事・行政的な制裁的負担を賦課する制度の導入について検討を行うべきである。その際、適正手続の確保策についても併せて検討すべきである。

A 差止命令や是正命令等の積極的活用
 証券取引等における詐欺的行為等に起因する被害の拡大の早期防止等、機動的な投資家保護の観点から、行政等の申立てに基づく裁判所による違反行為者に対する差止命令や是正命令等が活用されるような検討を行い、また、例えば、米国の差止命令・是正命令に類似する制度(行政限りでの差止命令・是正命令制度)についても、英米でのエンフォースメントの実態や、日米の法制の差異、我が国における違反行為の実情を十分精査した上、幅広い角度から検討すべきである。

B 証券会社の行為規制の見直し
 証券会社の行為規制については、法令違反に対する抑止力として十分な実効性が確保されているかどうか検証し、必要に応じて、適切な対応を行うべきである。

C 帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に対する罰則の強化
 法定帳簿は、顧客の投資判断には直接関係しないとはいえ、その虚偽記載は、行為の悪質性・重大性において、有価証券報告書等の虚偽記載と同等ではないかとの指摘もあり、他の法制における法定帳簿の取扱いとの整合性、証券取引法の他の罰則との整合性等を踏まえ、現行法令による抑止力の実効性について必要な検討を行うべきである。

D 民事責任規定の見直し
 開示規制の違反に関する民事責任規定は、これまで十分に使われてきているとはいいがたく、その実効性を高める観点から、開示制度の運用の実態に留意しつつ、その見直しを検討すべきである。また、不公正取引については、相場操縦に関する規定と短期売買差益の返還規定を除いて民事責任の規定が設けられていないが、この分野におけるルールのエンフォースメントを確保する観点から、@民事上の救済手段との関係をどのように考えたらよいか、A相場操縦以外の行為については必ずしも市場における行為が必ずしも前提となっていないことについてどのように考えるか等に留意しつつ、具体的な民事責任の規定の導入の是非について検討すべきである。

E 有価証券の定義の見直し
 現行の有価証券定義は限定列挙とされているが、投資家保護の観点から、包括的な定義規定を設けることに関し、定義規定の明確性の問題や証券取引法の規制内容に適した商品に限定できるかどうかといった問題も含め、検討すべきである。

(2)各事業分野におけるエンフォースメントの強化【平成14年度から逐次措置】

@ 電気通信事業分野におけるエンフォースメントの強化
 電気通信分野においては、平成13年に電気通信事業紛争処理委員会が設置され、紛争処理については一定の迅速性を持った対応がなされているところであるが、引き続き、市場参加者のより一層の信頼を得るべく、市場環境の変化に即応した競争ルールの見直しを図るとともに、情報収集、監視、紛争処理、制裁措置といったエンフォースメントの強化に一体的な取組を図るべきである。

A エネルギー分野におけるエンフォースメントの強化
 電気事業分野及びガス事業分野においては、市場の開放により競争が促進され様々な紛争が生じることが予想されることから、公平性・中立性・透明性が確保された機動的な紛争処理を行う組織を整備するとともに、競争促進ルールのエンフォースメントの強化という観点から市場監視機能の強化を図るべきである。

B 公正取引委員会と各事業所管官庁との連携の推進
 電気通信、エネルギー等の公益事業分野の競争促進の観点からは、公正取引委員会と各事業所管官庁の両者が協働して更なる連携の具体的方策を構築し、これによってエンフォースメントの一層の強化を図るべきである。すなわち、両者のエンフォースメントが重複し、市場に混乱が生じることがないようにするため、それぞれの具体的適用関係を明らかにし、適宜機動的に見直しを図るとともに、必要な場合には相互の連絡や情報提供がより円滑に行えるようにする等、所要の措置を講ずるべきである。

4 企業の経済活動を活性化するためのその他の事項

(1)一般集中規制に係るフォローアップ及び検討【平成16年度中に措置】

 企業を取り巻く環境が日々急速に変化しつつある中で一般集中規制については、平成14年の改正によって大幅な改善が図られたところであるが、今後も引き続き、実態の変化を踏まえつつ、施行状況をフォローアップすべきである。そして、当該規制については将来的には廃止することが適切であるとの指摘、事業支配力が過度に集中することにより競争が阻害されることのないよう十分配慮すべきであるとの指摘があることも踏まえつつ、評価・検討すべきである。

(2)景品表示法の改正【次期通常国会に法案提出】

 規制改革を推進し、事後監視型行政への転換を図るに際し、消費者が適正な商品選択をできる環境を確保することは不可欠であり、そのような観点から、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)(昭和37年法律第134号)の表示ルールのエンフォースメントの強化が求められる。したがって、同ルールについて執行力・抑止力の強化を行うほか、特に、裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有さないにもかかわらず商品又はサービスの効果、効能、性質を表示することを有効に規制することができるように、同法の規制対象となる表示類型について見直しを行うべきである。

(3)下請法の改正等【次期通常国会に法案提出、平成15年度中にその他の措置】

 現行の下請代金支払遅延等防止法(下請法)(昭和31年法律第120号)は、物品の製造委託及び修理委託のみを対象とし、これらに該当する下請取引の公正化が図られているところであるが、経済のソフト化・サービス化という環境変化を踏まえれば、役務の委託取引についても取引の公正化のための有効な枠組みを確立する必要性は高まりつつある。したがって、下請法の対象を一定の役務の委託取引に拡大するとともに、同法の執行体制の整備・拡充について、関係省庁の協力体制の整備を含め検討すべきである。
 また、役務の委託取引について、下請法で規制することができない取引や行為については、独占禁止法により厳正に対処する必要があり、そのため、役務取引に関する独占禁止法ガイドラインの改定等の検討を行うべきである。

(4)フランチャイズ・システムに関する業種横断的な制度整備

@ 情報開示制度のサービス分野への適用拡大等サービス・フランチャイズに関する環境整備【平成15年中、早期に措置】
 「フランチャイズ・システム」は、小売・外食・サービス業等の広範な産業分野における新規産業・雇用の創出に大きく貢献するシステムであり、近年、フランチャイズ・システムを採用する企業群は、小売業だけでなく、サービス業等の幅広い産業分野に広がっているが、最近では小売業以外のフランチャイズ産業のウェイトが高まるとともに、流通・サービス分野における異業種間の融合が急速に進展している。
 しかしながら、現在の中小小売商業振興法(昭和48年法律第101号)は中小小売商業の振興を目的とした法律であるため、同法に定めるフランチャイズ本部と加盟希望者間の契約締結の際の情報開示及び説明義務は、小売業以外の産業分野には適用されない。
 今般、サービス・フランチャイズの事業環境整備を図るため、フランチャイズ本部事業者・加盟店を対象とした実態調査が行われたところである。今後とも、フランチャイズ・チェーンシステムの普及促進等を通じた中小企業及びベンチャー企業の健全な発展を図るためにも、サービス業等の小売業以外のフランチャイズについても、契約締結時の情報開示等に関する制度の整備について、引き続き、検討するとともに、サービス・フランチャイズ契約全般の在り方について総合的な検討を行い、早期に結論を得るべきである。

5 政府調達制度の見直し

(1)官公需法に基づく「中小企業者向け契約目標」設定にかかる透明性の確保【平成15年度中に措置】

 官公需についての中小企業者の受注機会の確保に関する法律(官公需法)に基づき、毎年、「中小企業者に関する国等の契約の方針」が閣議決定され、中小企業者への配慮のための諸施策が講じられている。その際、「中小企業者向け契約目標」についての透明性を確保する観点から、閣議決定後にその内容をホームページに掲載する際、翌年度の契約方針作成に向けて広く意見を募るべきである。さらに閣議決定に至る手続きや各発注省庁ごとの「契約見込み額」と「前年度実績額」、それぞれの官公需全体における比率についても、併せて公表し、透明性の確保を図るべきである。

(2)多様な入札・契約方式の推進【平成15年度以降逐次措置】

@ VE(Value Engineering)方式の更なる推進
 国土交通省直轄工事においては、民間の技術開発を積極的に活用することにより、建設コストの縮減を図ることを目的に、施工方法等の技術提案を受け付ける方式として、入札時VE方式や契約後VE方式が試行的に導入されており、その提案の範囲についても工事目的物の変更も認められるようになるなど、積極的にその推進に取り組んでいるところであるが、今後、他の国等の機関や地方公共団体を含め、試行の拡大等により同方式での契約を本格的に導入する等、更なる拡大を図るべきである。

A 総合評価落札方式の推進
 公共工事の品質確保を図る観点から、国等の機関においては、環境維持、交通の確保、特別な安全対策等価格以外の要素を重視すべき工事については、価格とともに性能等を併せて評価する総合評価落札方式による発注を積極的に推進すべきである。

(3)地域要件の適正化の推進【平成14年度以降継続的に検討】

 地方公共団体の長が定める入札参加資格に関する事業所の所在地に係る要件については、官公需における中小企業者の受注機会の確保の在り方についての検討とも併せて、競争性の確保の観点から、過度に競争性を低下させるような運用とならないようにするための具体的な推進方策を検討すべきである。

(4)指名停止措置の更なる強化【平成15年度中に検討】

 違反行為に対する抑止力強化を図り、公共契約における不適当な業者の混入を排除する観点から、工事請負契約に係る指名停止等の措置要領(中央公契連モデル)における贈賄、独占禁止法違反、刑法談合等の不正行為者に対する指名停止について、その運用の明確性及び手続の適正性の確保に一層留意しつつ、指名停止期間の延長等の強化を図ることを検討すべきである。

(5)入札契約適正化法の遵守徹底【平成14年度以降逐次措置】

 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入札契約適正化法(平成12年法律第127号))により公表や通知が義務付けられている事項(指名競争入札基準の公表、談合と疑うに足りる事実の公正取引委員会への通知等)について、全ての地方公共団体において早期に完全実施されるよう、引き続き、適正化を推進すべきである。