2 法務
【問題意識】
本年度における法務分野における大きな課題としては、@国民が利用しやすい司法制度の確立と、A企業を取り巻く様々な環境変化に対応しつつ、我が国経済の活性化及び企業の競争力向上の確保を図っていくための幅広い法整備が挙げられる。
前者について、これを早期に確立するためには、法律サービスの質量両面での向上を図ることが重要であり、このためには、司法試験合格者数の大幅な拡大及び隣接法律専門職種の有する専門性の活用等により、法律サービスの担い手の増加を図り、これを通じて法律サービスを担う業種における競争の活性化を図ることが是非とも必要である。
後者については、民事基本法制のうちとりわけ商法について、企業統治(コーポレイト・ガバナンス)の実効性確保、高度情報化社会(IT社会)進展への対応、企業の資金調達手段の改善、企業活動の国際化への対応といった観点から、平成13年・14年と大規模な改正が行われたことにより、政府の「規制改革推進3か年計画(改定)」に記載されている措置事項についても概ね実施され、企業が経済活動を行っていく上での法制度の整備は従前に比べ飛躍的に向上したと言える。しかしながら、これらの法改正の動きは企業の経済活動の基本的なインフラである以上、今後とも引き続き、その法整備は企業を取り巻く環境の日々の変化を踏まえた上で、民法・商法等の基本法制にとどまらず幅広く行われることが必要であり、その際の視点としては、国内の状況だけでなくグローバルな環境変化にも対応したものである必要があるとともに、我が国における経済の活性化と企業の競争力の一層の向上を意識したものであることが極めて重要である。
【具体的施策】
1 司法制度改革の推進
(1)法曹人口の更なる拡大【引き続き実施】
- 司法試験合格者数を年間3,000人とするため、平成16年にはその達成を目指すべきとされている1,500人程度への増員以降、法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、平成22年頃にその達成を目指すべきとされている3,000人程度への増員に向けて計画的かつ早期の実施をすべきである。
また、実際に社会の様々な分野で活躍する法曹の数は社会の要請に基づいて市場原理によって決定されるものであり、平成22年頃までに3,000人程度に増員されても、これが上限を意味するものではないので、この点を踏まえて、その後のあるべき法曹人口について更なる研究・検討を行うべきである。
(2)法科大学院非修了者への司法試験受験資格の確保【平成14年度中に措置、以降も逐次実施】
- 平成18年度より実施される新司法試験においては、法科大学院を修了していない予備試験合格者であっても、法科大学院修了者と全く同じ条件で新司法試験を受験することができることが確保されるべきである。
さらに、予備試験の実施に際しては、法科大学院修了者と同様の素養があることを判断するためのものであるという本来の趣旨が確保される必要があり、したがって、新司法試験の合格率において予備試験合格者と法科大学院修了者との間で可能な限り差異が生じないようにすべき等との観点を踏まえつつ、両者の公平性が保たれるように予備試験の方法や合格者数等について見直しを行っていくべきである。
(3)専門分野(知的財産権、国際企業法務、医療等)に通じた法律家の養成【平成14年度中に措置、以降も逐次実施】
- 法科大学院の設置基準について、弁護士等の実務家が専任教員を兼務することが認められるべきであり、また、必要修得単位93単位の中には、有用な実定法以外の科目が含まれているべきである。こうした観点から、専門分野に通じた法律家を養成するため必要な場合には、必要専任教員数や必要修得単位数の引き下げも含めて対応策を検討し、適切な措置を採るべきである。
また、法科大学院の設置基準については、各法科大学院の判断で公認会計士、医師等の専門家を入学選抜試験で優遇することを可能とする基準とすべきである。
また、法学以外に専門を持たない法学部卒業者に関して必要に応じて法科大学院以外の大学院の科目の単位を取得するような指導も行いつつ、法学部出身者でない法学既修者に対しても、法学以外の学問を一定以上修得している法学部卒業者と同様に、2年での修了を積極的に認めるような運用がなされるようにするための措置を検討すべきである。
さらに、法科大学院への入学者選抜に際しては、同一の大学法人が設置する大学の学部卒業者が優遇されたり、法学部又は法学科出身者の割合が過大になることのないよう、第三者評価による情報公開などを通じた実効的な措置を講ずるべきである。
(4)法科大学院の設立等【平成14年度中に措置】
- 法科大学院の設立に関する制度設計については、必要な質を担保する客観的条件を満たす場合には設立を認めることとすべきであり、設立後は、市場の評価を通じた教育の質の改善ができるように、行政は正しく十分な情報公開を担保する措置を採るべきである。
(5)司法修習の給費制の見直し【平成15年度中に検討・結論】
- 司法修習に関しては、法科大学院設立による実務教育の実施を踏まえれば、給費制については、法科大学院を含めた法曹養成制度全体を視野に入れつつ、その廃止を含め見直すべきであり、また、修習期間が1年に短縮されること等に伴い内容についても見直しを行うべきである。
(6)弁護士法第72条の見直し【遅くとも平成15年度末までに措置】
- 弁護士法(昭和24年法律第205号)第72条について、隣接法律専門職種の業務内容や会社形態の多様化などの変化に対応する見地からの企業法務等との関係も含め検討した上で、その規制対象となる範囲・態様に関する予測可能性を確保することとし、所要の措置を講ずるべきである。
なお、法律サービスの質的向上のためには、その担い手の増加を通じた競争の活性化が重要であるところ、非弁護士の法律事務の取扱等を禁止する弁護士法第72条については、非弁護士の法律事務の取扱可能範囲を拡大させる観点から、例えば、以下のような指摘も行われており、上記の検討はこれらの指摘があることも認識しつつ行われるべきである。
| @ | 弁護士法第72条ただし書において、弁護士法で別に定める場合を例外としているが、司法書士法(昭和25年法律第197号)など他の法律で例外が定められていることを踏まえ、これを改めるべき |
| A | 法廷外法律事務について、弁護士以外の専門家(隣接法律専門職種に限定しない)が行えるようにすべき、少なくとも、会社がグループ内の他の会社の法律事務を有償で受託できるようにすることを含めて消費者保護の必要性が薄い対事業所向けの法律サービスについては直ちに弁護士法第72条の例外とすべき |
| B | 会社から権限を付与された社員が、当該会社の訴訟代理人となれるようにすべき |
| C | 弁理士の訴訟代理権について、弁護士との共同との条件を撤廃すべき |
なお、税理士、司法書士についても、法改正がなされ、隣接法律専門職種の業務に一定の法律業務が追加付与されたところであるが、規制改革委員会の第2次見解及び司法制度改革審議会の意見等を踏まえ、更なる業務拡大が可能かどうかの観点から、引き続き、これらの法律の改正後の状況について注視していくべきである。
(7)弁護士業に係る規制緩和【次期通常国会に法案提出】
- 国際化時代の法的需要に対応するためにも、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働を推進することは必須である。その見地から、共同事業についての目的制限の撤廃等による自由化を実施すべきであり、外国法事務弁護士による雇用禁止規定については、これを撤廃すべきという指摘等があることも踏まえて見直しを実施すべきである。また、これらの実施の際に弊害防止措置を設けるとしても、必要最小限のものとする必要がある。
また、司法制度改革審議会意見では、弁護士法第30条第1項に規定する公務就任の制限及び同条第3項に規定する営業等の許可制については、届出制に移行することにより自由化すべきであるとしており、早期に所定の措置を講ずるべきである。
2 投資事業有限責任組合制度(ベンチャー・キャピタル制度)の拡充【平成14年度に一部措置済み、平成15年度中に引き続き検討】
中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づく「投資事業有限責任組合」は、従来の民法上の組合により設立された投資事業組合と比べて、業務執行を行わない組合員の「有限責任」の法的担保と、「組合段階での非課税(課税上のパススルー)」の利点を持った組合形態の投資ファンドとして、幅広い投資家層による中小・ベンチャー企業への資金供給を促進する役割を果たしてきたが、多様なリスクマネーの供給により企業活動を一層活性化させるために、投資事業有限責任組合の投資対象や投資事業範囲の拡充が求められていた。
これについては、今般、いわゆる中小企業挑戦支援法(「中小企業等が行う新たな事業活動の促進のための中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律」)により、投資対象については従来の株式会社から有限会社や企業組合にも拡大がなされ、投資事業の範囲については従来の株式投資に加え、例えば、信託受益権取得等のプロジェクトファイナンスといった投資先の事業から生ずる収益の分配を受けるための投資も可能とされたところであるが、多様なリスクマネーの供給により投資の拡大を図るため、上記拡充の効果を踏まえつつ、なおその投資対象や投資事業範囲の拡充について検討すべきである。
3 動産・債権担保法制の整備による資金調達の円滑化【平成15年度中に検討開始】
現在の我が国の法制によれば、動産(集合動産を含む)及び債権(集合債権を含む)についての譲渡担保権はその要件や効果が全て判例法にゆだねられており、実務上これらの利用に不便があるとの指摘がある。また、一般に担保権の目的となった動産を第三者が善意取得すれば担保権者はその権利を失うとされており、このようなルールが担保権者と第三者との利害調整のルールとして妥当か否か再考の余地があるとの指摘もある。さらに、動産及び債権担保法制においては米国の法制のような公示制度を整備すべきであるとの指摘もある。他方、譲渡担保権については、立法化によりかえって制度が硬直化して利用の便が悪くなるとの指摘もある。また、例えば、集合動産譲渡担保権者と第三者との利害調整のルールには特段の問題がないとの見方もある。米国の法制を参考にするとしても、実効性のある公示制度を整備することは困難であるとの指摘もあるところである。
したがって、新規事業者や中小企業を中心とする事業者の資金調達の円滑化を支援する観点も踏まえ、動産担保法制及び債権担保法制の整備に関するニーズの有無、問題点の洗い出し等について検討を行うべきである。
4 産業再生法の改正(商法の特例措置)【次期通常国会に法案提出】
産業活力再生特別措置法(平成11年法律第131号)は施行当初、我が国経済における生産性の伸び率が低下している状況から脱却すべく、我が国の経営資源を効率活用し、生産性の向上を実現するために認定企業に対して税制・商法・金融面での特別の支援を行うことで、企業に「選択と集中」による事業再構築を促してきた。
しかしながら、現下の経済情勢から脱却し、経済の活性化と国際的な競争力強化を図るという我が国が抱える喫緊の課題に対しては、個々の企業における事業再構築はもとより国民経済全体あるいは産業全体における「選択と集中」を推し進めることが不良債権処理の促進とともに不可避であり、その際の商法面の支援として、とりわけ産業再編の加速に資する簡易組織再編の拡充や企業合併における対価の柔軟化等の特例措置がなされるべきである。
したがって、産業再編の加速化や事業の早期再生を迅速かつ円滑に進める観点から取締役会決議し得る簡易合併や簡易分割等の範囲の拡大、企業合併における対価の柔軟化、認定計画に従って行われる現物出資時等に要する検査役調査の免除等、商法上の特例措置を講ずるべきである。
5 株券の不発行制度の導入【平成15年中に法案提出】
現行の制度では、いわゆる株券不所持制度は用意されているが、株式会社は、会社成立後又は新株払込期日後遅滞なく株券を発行しなければならないとされている。
しかしながら、株式譲渡制限会社や株式の流通がほとんど行われない非公開会社については、従来から株券の不発行を認めるべきとの指摘があるほか、公開会社についても、株主は証券会社の保護預りや保管振替機関による株券保管振替制度を利用することによって、実際には株券を交付することなく株式の譲渡が行われる場合が少なくなく、また、株券の不発行を認めれば株券の受け渡しに伴うリスクやコストが減少する等の多大のメリットがあるものと考えられる。
したがって、株券の不発行を認める制度を導入するとともに、株式について新しい振替制度を構築すべきである。
6 インターネット等による公告制度の創設【平成15年中に法案提出】
平成13年の商法改正によって、株式会社がすべき公告のうち貸借対照表等の公告(決算公告)に限り、官報や日刊新聞紙による方法以外に電磁的方法によることが認められたが、それ以外の場合における公告についてはいまだ電磁的方法によることが認められていない。
しかし、高度情報化社会の進展に対応して、公告についても電磁的方法による路を開くことが適切である。
したがって、現在、官報や日刊新聞紙によることとされている公告一般について、インターネット等による電磁的方法で行うことを認めるべきである。
7 会社法制の現代化【平成15年度・16年度検討、平成17年度中に措置】
会社法制を規定する商法典は、これを利用者に分かりやすい平仮名の口語体に改めるべきであるとの指摘があり、また、商法本体に合名会社・合資会社・株式会社が規定され、有限会社については別個の法律が設けられ、利用者に分かりにくいとの指摘がある。さらに、近時、経済情勢の変化の早さに対応して短期間に多数回の商法改正が行われたため、会社法全体の整合性を図る観点からこれを全面的に見直す必要があるとの指摘も強まっている。
したがって、会社法制の現代化について検討し、結論を得るべきである。
8 外国人学生の実習に係る特定活動の在留資格に係る要件の緩和【平成15年度中に措置】
夏季休暇期間等を利用して本邦企業での実習活動(インターンシップ)を行う外国人学生の入国に際しては、原則として、その実習活動により当該学生の在籍する大学の単位が取得できるものでなければならないこととされているが、インターンシップを容易にする観点からは、この条件を廃止すべきである。また、同様の観点から、特定活動の在留資格により入国するために必要な提出書類を削減すべきである。
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