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5 医療

【問題意識】

 医療分野については、昨年の「規制改革の推進に関する第1次答申」(平成13年12月11日)において、患者本位の医療サービスを実現するため、@医療の質の向上や安全性の確保を図りつつ、医療サービス提供上の無駄を徹底的に排除し、効率的な医療サービスを実現すること、及びA医療の透明性が確保され自らの選択が尊重されるようになることが必要であるとの基本的考え方の下、医療に関する徹底的な情報開示・公開、医療分野のIT化の推進、保険者機能の発揮、診療報酬体系の見直し、医療分野における経営の近代化・効率化に向けた様々な施策を提言した。これに沿い、「規制改革推進3か年計画(改定)」が閣議決定されている。このうち、広告規制の緩和、「205円ルール」の見直し、薬価・医療材料の価格決定方法の見直しなど種々の分野で規制改革が進んだものの、保険者によるレセプトの審査・支払など実施されていない項目もある。
 当会議においては、上記の考え方を維持しつつ、患者本位の医療サービスを実現するための改革は未だ途上であり、不断の改革が必要であるとの認識のもと、さらに検討を重ねた。「規制改革推進3か年計画(改定)」の中で実施されていない事項については、早急な実施を求めるとともに、同計画よりも更に進めた改革を実施すべき事項及び同計画に盛り込まれていなかった新たな事項について、以下のとおり提言する。
 なお、医業経営の株式会社参入の問題については、「規制改革の推進に関する第1次答申」にて、「今後、株式会社方式などを含めた医療機関経営の在り方を検討するべきである。」と答申しているところであり、多様な運営主体による医療サービスの提供が行われ消費者選択の幅を拡大させるため、本年度はその実現に向け議論を重ねたが、未だ、関係各方面とは大きな隔たりがある。当会議としては、今後とも、積極的に議論していく考えである。

【具体的施策】

1 医療のIT化の推進による医療事務の効率化・質の向上

(1)電子カルテ等診療情報の医療機関外での保存【平成15年度以降速やかに措置】

 電子カルテ等診療情報の医療機関外での保存については、情報が瞬時に大量に漏洩する可能性があること、情報の漏洩源を特定しにくいことなどの理由のため、厚生労働省通知(平成14年3月29日医政発第0329003号、保発第0329001号)により、情報技術の進展、個人情報保護に関する法整備の状況に鑑み、医療機関または医療法人等が適切に管理する場所に限定されている。
 一方、今後、保存すべきデータの規模が膨大となった際、情報機器の維持管理を含め、個々の医療機関のみでは保守・管理に十分対応できない場合が生じることも想定される。
 したがって、診療を行った医療機関からの依頼を受けて、当該医療機関以外の事業者が電子カルテ等診療情報の保存を行う場合は、その事業者がデータ管理上必要不可欠な場合に、委託医療機関の了承を得て行う場合のみ、保存しているデータを見ることが出来ることを含め、個人情報と管理についての遵守の義務が確保されている場合には、医療機関等以外であっても保存を認める措置を講ずるべきである。

(2)医療分野における個人情報の保護【出来るだけ速やかに措置】

 医療分野における個人情報保護の問題については、不十分な状況である。今後、IT化がさらに進展することを考えれば、個人情報保護の重要性はますます高まっていく。
 したがって、医療分野における個人情報保護について、ガイドラインの作成などを早急に検討し、所要の措置を講ずるべきである。

2 保険者機能の強化

(1) 保険者によるレセプト審査・支払【平成13年度中に措置(未措置事項)】

 「規制改革推進3か年計画(改定)」においては、「レセプトの審査・支払は本来保険者の役割であり、保険者の自由な意思に基づき、@保険者自らが行う、A従来の審査・支払機関へ委託する、B第三者(民間)へ委託するなど、多様な選択を認める。このために、健康保険組合などに対して社会保険診療報酬支払基金に審査・支払を委託することを事実上強制している通達(昭和23年厚生省保険局長通達)や医療機関に対して費用請求を審査支払機関へ提出することを義務付けている省令(昭和51年厚生省令)の規定を廃止する場合には、公的保険にふさわしい公正な審査体制と、患者情報保護のための守秘義務を担保した上で、保険者自らがレセプトの審査・支払を行うことを可能とする。なお、その際、審査・支払にかかる紛争処理のルールを明確にする。(平成13年度中に措置)」として閣議決定しているので、速やかに措置するべきである。

3 患者(被保険者)の主体的な選択の促進

(1)公的保険と保険外診療の併用による患者選択の推進【平成15年度中に措置(逐次実施)】

 国民皆保険制度と医療機関へのフリーアクセスを基本的理念とする我が 国の医療制度においては、「いつでもどこでも一定水準」の医療が受けられる仕組みとなっているが、国民の生活水準が向上し、価値観やニーズが多様化した現在では、国民は「いつでもどこでも一定水準」の医療を受けることだけでは満足しておらず、より質の高い医療を受けることを求めており、また、医療提供者も、自らの能力や質に応じた十分な評価を受けることを望んでいる。
 一方、公的医療保険制度による医療費の増大を抑制する必要が生じる中で、公的医療保険制度の枠内では、国民(患者)の多様化するニーズに対応すること、医療提供者の質を適正に評価することについては限界がある。特定療養費制度は、高度先進医療、選定療養を対象としており、現在では、大病院での紹介によらない外来診療や長期入院に拡大されている。しかしながら、更に十分な患者満足が得られるよう、この枠組みを活用し、患者のニーズに応じたサービスを選択できる仕組み、医療機関にとっては患者による選択を通じて適正に評価される仕組みを更に推進するべきである。
 保険診療と保険外診療の併用について更なる改革を図るべきである。すなわち、国民が負担能力に関係なく適切な医療を受けられる「社会保障として必要十分な医療」は公的医療保険診療としてこれまでどおり確保しつつ、現行の特定療養費制度に関する厚生労働省告示等を見直し、例えば、患者の選択に応じ特定の医療機関における患者からの料金の付加徴収できる範囲を拡大するなどの患者選択による保険診療と保険外診療の併用を早急に推進するべきである。

4 診療報酬体系の見直し

(1)包括払い・定額払い制度の導入促進

 特定機能病院等における急性期入院医療については、平成15年4月より、包括評価の導入が予定されている。その際、平均在院日数の短縮化のインセンティブが働くように留意するべきである。【平成14年度中に結論、平成15年度に措置】
 また、診断群別定額報酬払い制度の導入は、医療機関に対し、効率的・効果的な医療サービスを提供するインセンティブを与え、結果として、医療機関の機能分化を促進し、入院日数の短縮・適正化や、標準的な医療の確立など、医療の質向上に資する。
 したがって、医療機関の機能分化を促進し、医療内容の標準化と平均在院日数の短縮化・質の向上などを目指しつつ、まず急性期入院医療について、包括払い・定額払いの利点を最大限に活かした方式である診断群別定額報酬払い制度の計画を策定して、導入に向けた検討を進めるべきである。その際、諸外国においてすでに相当の経験があることから、それらを参考にし、また国際的な整合性に留意するべきである。【平成15年度より計画を明示して検討】
 また、慢性期の医療においては、患者の日常生活動作能力(ADL:Activity of Daily Living)、病態像、看護度、介護度などを考慮した定額払いの導入を検討するべきである。【平成15年度より検討】

5 多様なマネジメント手法の活用

(1)派遣規制の見直し

 平成14年3月に社会保障審議会医療部会における議論を踏まえ、社会福祉施設等における業務については医療関連業務の労働者派遣を可能とする厚生労働省の提案が示され、現在、労働政策審議会にて議論がなされている。
 したがって、社会福祉施設等における医療関連業務の労働者派遣については、できるだけ早期に結論を出し、その結論を踏まえ措置を講ずるべきである。【平成14年度中できるだけ速やかに措置】
 また、上記の事項が措置されたとしても、医療機関における派遣は依然として認められていない。医療機関における医療従事者をニーズに応じて効率的・適正に配置し、医療提供体制の充実をどのように図っていくかは、国民(患者)本位の医療サービスの実現に大きく資する課題である。
 したがって、医療機関における医療関連業務に対する派遣について検討し、結論を得るべきである。【平成16年度中に結論】

6 医療提供制度

(1)地域医療計画(病床規制)の見直し【平成14年度より検討、平成17年度中の早期に措置】

 出来高払い方式が基本である現在の公的医療保険制度の下では、入院医療費と病床数とは、相関関係にあるとの基本的考え方から、現在の地域医療計画では、医療機関(病床数)の量的なコントロールを行っている。
 一方で、地域医療計画に基づき病床規制が行われている結果、医療機関の競争が働きにくいため、経営努力をしない者まで保護することになり、医療機関の許可病床数がいわば「既得権益化」しており、当該地域に質の高い医療機関が参入することを妨げているという問題点が指摘されている。また都道府県によっては、対人口比の地域間格差が3倍となっていたり、地域の実情・ニーズに応じた適切な機能別の病床数の確保が出来ていないなどの問題点も指摘されている。
 したがって、地域医療計画の策定に当たっては、急性期、慢性期、特殊診療などの病床の機能について、地域の実情・ニーズを適切に踏まえた基準病床数の算定基準を公正かつ厳格に設定した上で、適正な病床数に収斂するように管理が徹底されるように措置するべきである。また、医療内容の標準化と平均在院日数の短縮化など医療の質の面での医療機関相互の競争を促進することを通じ、適正な医療提供体制の確保を図る観点から、診断群別定額報酬払い制度の導入に向けた検討と併せ、病床規制の在り方を含め医療計画について検討し、措置するべきである。

(2)専門職医療従事者の充実【平成15年度中に措置】

 患者の多様なニーズに対応するためには、様々な専門性(知識・技術)に基づいた適切な治療やケアが行われることが望まれている。また、そのような状況を踏まえ、医療従事者の専門性についても細分化・機能の分化が進んでいるが、現在、特に、麻酔、病理診断などの分野における医師については不足が指摘されており、その充実が求められている。
 したがって、このような状況に対応するため、専門職の不足を解消するための方策について検討し、措置するべきである。

(3)遠隔診療の促進【平成14年度中に措置】

 近年、IT化の進展に伴い、対面によらない遠隔操作による治療やe−ICU(遠隔集中治療室)などの診療が重要度を増し、能力の高い医師による診療の機会を増やすことが医療の質の向上に有用であることが認識されている。しかしながら、遠隔医療については厚生労働省の通知において、僻地などにおける対面診療のあくまで補完的な診療として位置付けられているだけである。また、現在においては、僻地でなくとも患者の利便性を考慮し、対面によらない診療が求められており、IT化の進展によりそのような診療の可能性は高まっている。
 したがって、IT技術の進展に伴う遠隔診療については、対面診療を補完するものという基本的考え方を前提としつつ、例えば、僻地に限定することなく多様な場面での診療としても可能であることを明確にしたうえで、これを周知徹底し、促進するべきである。

7 医薬品に関する規制緩和

(1)医薬品に関する情報提供の促進【平成14年度中に措置(逐次実施)】

 薬事法施行令においては、がん、白血病及び肉腫の治療を目的とする医療用医薬品について、医薬関係者向け以外の一般消費者(患者)に対して広告を行うことを禁じている。また、これ以外の医療用医薬品についても、通達により、一般消費者(患者)に対する広告を禁じている。
 こうした規制は、患者と製薬企業との間には「情報の非対称性」があるため、患者が不当に誘引される結果、患者保護に支障を来たすという観点から設けられたものとされている。医療用医薬品は、医師の処方に基づくものであるため、最終的には、医師の適切な判断のもとに患者保護が図られることとなっているものの、患者中心の医療を実現するためには、むしろ患者においても医薬品に関する情報を十分入手できる体制を整え、必要な知識を得た上で受診できるようにする必要がある。
 したがって、上記通達の運用を見直し、現状、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構を通じて行っている医療用医薬品の添付文書や製品回収情報等のインターネットによる提供について、一般消費者(患者)が医薬品情報を十分に入手できるよう、広く周知するとともに、一般消費者(患者)にとって医療用医薬品情報についても入手しやすくなるような情報提供についての方策を検討し、措置するべきである。

(2)後発医薬品の使用の促進【平成14年度中に措置(逐次実施)】

 医療費の効率化等の一つの方策として、ジェネリック医薬品(いわゆる後発品)に関し、平成14年度診療報酬改定において、後発品を処方した場合の処方せん料等を、先発品を処方した場合よりも高くするなどの取組がなされ、その使用が促進されている。現在でも、医師が一般名で処方した場合の患者選択による調剤は可能であり、また、患者の求めに対し医師が認めた場合に限り薬剤名(商品名)での処方の場合においても、患者選択による調剤は可能である。
 今後、引き続き、医薬品の品質再評価を行い、後発品を含む医薬品の品質確保を図る一方、後発品使用を一層促進していくために、本年4月より、後発医薬品の一般名、商品名、企業名、価格等の情報について、厚生労働省ホームページの掲載を開始しているところであるが、この他にも、後発品とその品質の確保についての啓発を進める等、患者が適正に選択できるよう情報提供の充実を行うべきである。

(3)医薬品販売に関する規制緩和【平成14年度に専門家による検討の開始、平成15年度末を目途に結論】

 医薬品については、平成11年3月31日に行った15製品群の医薬部外品への移行に伴い、コンビニエンスストアなどの一般小売店において栄養ドリンク剤などの販売が可能となった。
 今後とも、一定の基準に合致し、かつ保健衛生上比較的危険が少ない等の専門家の評価を受けた医薬品については、一般小売店において販売できるよう、平成14年度中に専門家による検討を開始し、平成15年度を目途に結論を得るようにするべきである。