6 福祉等
【問題意識】
急速な少子高齢化の進展や働く女性の増加という社会環境の変化の中で、高齢者介護や児童保育などの福祉サービスは、従来の公的福祉から、利用者の自由な選択に基づくサービス産業への制度改革が進められている。
高齢者介護に関して、生活の質の向上を求める利用者のニーズは、合理的な価格で、質の高い多様なサービスを必要なだけ利用するという方向に変化してきている。
社会福祉法人立の介護施設は、大幅な公的助成の代償として、政府による制約が行われているが、これをサービス提供事業者全体の情報公開、第三者評価を推進することにより、事業者の経営形態に関わらず対等な競争条件を確保し、利用者間の負担格差を是正する方向へ改革することが必要である。
平成14年12月に成立した「構造改革特別区域法」において、公設民営方式又はPFI方式による株式会社等の参入が認められることとなり、一歩前進をみた。今後、経営主体の多様化をより進めるため、株式会社による特別養護老人ホームへの参入について、特区における特例措置の効果や影響等の評価も併せて行いながら、それ以外の方式でも、解禁・推進に向けた一層の検討を続けていくべきである。
NPOや民間企業を含む多様な経営主体の実質的な市場参入条件を確保することにより、良質で多様なサービスの供給が大幅に増大することが、福祉分野での規制改革の基本的な目標である。
一方、保育についても、民間事業者の参入や地方自治体による認証保育所制度などにより、保育サービスの供給量も全国的に増加しているが、特に都市部においては、依然として保育所への待機児童が多く存在している状況にある。また、働きながら子育てを支援するためには、夜間保育、休日保育、病後児保育、一時保育といった多様なニーズに対応した保育サービスが提供されるべきであるが、こうした利用者の保育需要に見合った供給側の対応はいまだ不十分である。
就学前の児童については、幼稚園、保育所のそれぞれの役割が近似してきており、双方の機能を併せ持った施設へのニーズが高くなるとともに、施設の共用化も増えている。しかしながら、行政の補助金の関係から、施設の一体的な運営が行いにくいことや、児童についても幼稚園児と保育所児との区別が要求されるなど、ニーズに制度的に応え切れていない部分も残っている。
今後、介護や保育の分野について、安全で質の高いサービスが受けられるよう利用者主体の規制改革を進めていく必要がある。
【具体的施策】
1 介護分野
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(1)介護分野への多様な主体の参入
@ 公設民営、PFI方式による在宅サービスの基盤整備の促進【平成14年度中に結論、平成15年度中に措置】
既に株式会社等による経営が可能とされているデイサービス施設やショートステイ施設など、在宅サービスに係る施設については、株式会社が経営する場合には施設整備費に対する補助が受けられない。こうした施設についても、公設民営方式又はPFI法の枠組みを活用し、対等な条件のもとでその整備を促進していくべきである。
A ケアハウスへの株式会社参入の許可に係る技術的助言の見直し【平成14年度中に意見聴取・平成15年度中に結論】
ケアハウスについては、昨年新たに株式会社の参入が認められたところである。しかしながら、本年1月の厚生労働省老健局計画課長通知においては、株式会社が経営する場合には、
ア 直前期の経常利益が1億円以上であること
イ 直前期末の純資産(総資産から負債を除したもの)が3億円以上であること
などの基準を満たした場合に許可することが適当とされている。
一方、関係者から、利益といった変動性の大きい要素を基準としている点、前期実績を要求している点で、新規設立会社の参入を阻害しており、また、社会福祉法人の要件に比して、バランスを失しているとの指摘がある。
したがって、こうした内容の技術的助言の妥当性について関係者から意見聴取を行い、必要に応じて見直しを行うべきである。
(2)特別養護老人ホーム等における利用者負担の見直し
- 「規制改革推進3か年計画(改定)」において、特別養護老人ホームについては、居住性に配慮した個室化を推進することにより居住環境が抜本的に改善されることから、入居者から、従来の介護・食事に係る利用者負担のほか、ホテルコストを原則として利用者負担として徴収するよう見直すとともに、そうした負担に耐えられない低所得者層について、一定の配慮を検討することとされており、これを着実に実施すべきである。【平成14年度中に結論、平成15年4月に措置】
また、介護保険における施設サービスと特定施設(有料老人ホーム及びケアハウス)やグループホームとの間にはいわゆるホテルコスト以外にも、食費、光熱費、清掃費などの負担に差があることから、介護保険制度全体の見直しにおける施設体系の在り方等の見直しの中で、在宅サービスと施設サービスとの間の負担の均衡を図る観点も含めて検討を行うべきである。【平成15年度中に検討開始、平成16年度中に結論】
(3)訪問介護において実施可能な身体介護業務の範囲明確化
- 在宅介護における痰の吸引・除去、傷口のガーゼ交換、軟膏・坐薬・浣腸薬・目薬等の投薬については一般に医療行為とされ、患者本人以外の者がどこまで行えるかが不明確であり、介護福祉士、ホームヘルパー等が介護サービスの一環としてこうした行為を行うことは医師法に抵触する場合があることとされている。また、個々の行為が医療行為に該当するか否かは、対象となる要介護者の身体の状況が千差万別であり、個別の行為の危険性を測ることが困難であることから一般的な判断が明示されていないことが介護現場の混乱を招いているとの指摘がある。
したがって、まずは既に示されている訪問介護と訪問看護の連携に関する具体的事例について更に周知を図るとともに、一定の場合についてホームヘルパー等が痰の吸引を行うことに関して具体的に検討し、結論を得るべきである。【平成14年度中に検討・結論】
引き続き、それ以外の行為についても、医師法上の取扱いについて検討し明確化していくべきである。【平成15年以降逐次検討・結論】
(4)保険者による介護保険施設定数の調整【平成15年度中に検討開始、平成16年度中に結論】
- 介護保険施設の入所定数は地域差が大きく、特に介護老人保健施設、介護療養型医療施設について過剰な定数があり、介護保険給付費用の増大によって、介護保険財政を圧迫する事態が生じている。施設の過剰定数は介護保険料の高騰を招くこととなり、保険者たる市町村は、保険料を納入する被保険者のエージェントとして、適切な施策が必要である。
したがって、保険財政を安定的に運用していく観点から、保険者たる市町村にサービスの供給をコントロールする権限を付与することを、介護保険制度全体の見直しの中で検討し、結論を得るべきである。
(5)介護サービス事業者の情報公開及び第三者評価の推進
- 本年8月より、介護サービス事業者の選択に資する観点から、利用者やその家族が訪問介護事業者を選択する際に活用できるチェックリストが公表されており、その普及を図るとともに、事業者がチェックリストに対応して十分な情報公開を行うよう周知徹底すべきである。【平成14年度中に措置】
また、痴呆性高齢者グループホームについては、特に入所者の特性から事業者の評価が重要である点にかんがみ、本年度から他の介護サービス事業者に先んじて第三者評価制度が実施されたところであるが、特別養護老人ホームや有料老人ホームなど他の事業者についても、順次第三者評価の推進方策を講ずるべきである。【平成15年度中に検討(逐次実施)】
(6)有料老人ホームにおける一時金の保全措置に関する取組の充実【平成15年度中に検討開始、平成16年度中に結論】
- 有料老人ホームは、入居者にとって終の棲家であり、長期間安定した形でサービスを提供し続けることが求められているが、経営主体の倒産等の事態が生じた場合、高額な一時金を支払って入居した入居者は居住の場を失うばかりでなく、生活の継続が困難になるおそれがある。このため、「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」(平成14年7月18日厚生労働省老健局長通知)が定められており、@重要事項説明書を交付し、十分な説明を行うこと、A安定的な経営が見込まれるまでの間は、一時金の返還債務について銀行保証等を付すこと、B有料老人ホームについての経理・会計を明確に区分し、他事業に流用しないこと等が規定され、事前届出制の下での最小限の規制がなされている。
しかしながら、有料老人ホームが、契約の当事者が高齢者であり、多額の一時金を必要とし、住み替えが困難であること、提供されるサービスが介護を含めた入居者の生活全般に及ぶことにかんがみ、銀行保証の内容等一時金の保全措置について、より確実に入居希望者に情報提供させるようにするなど、有料老人ホームにおける一時金の保全措置に関する取組の充実を図るべきである。
2 保育分野
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(1)幼稚園と保育所の連携の推進
- 少子化の進展に伴って幼稚園に通う幼児数は減少している一方で、保育所については年々入所希望者が増加し、待機児童の問題が生じている。働く母親の増加に伴い、利用者のニーズに対応したサービスを提供するとともに、待機児童ゼロ作戦を実行するため、幼稚園における預かり保育の充実を図ることが求められている。また、保育所においても、幼稚園におけるのと同様の幼児教育の実施を求めるニーズも存在しており、一部の自治体においては、これらのニーズへ対応する面もあり、幼稚園と保育所の共用化が進められている。しかしながら、これら2つの施設は、異なる目的と役割を有するため、それぞれの設置基準を満たす必要がある。全ての子供の健全な育成を図るという観点から、関係省庁の関係部署が十分に連携し、幼稚園と保育所の機能を活かし、利用者のニーズに応えていく必要がある。
@ 幼稚園教諭免許・保育士資格の相互取得の促進
幼稚園と保育所の連携を一層促進する観点から、幼稚園教諭免許所有者と保育士資格所有者が相互にそれぞれの資格(免許)を取得することを促進すべきである。
具体的には、幼稚園教諭免許所有者が保育士資格を取得しようとする場合、保育士試験の8科目の筆記試験のうち、例えば、「教育原理」など幼稚園教諭免許の取得に当たって最低限必要な習得科目に含まれている科目については試験を免除すべきである。【平成15年度中に措置】
また、保育士資格所有者が幼稚園免許を取得しようとする場合、現行制度上、大学等において必要単位を修得する以外の取得方法を採ることが困難であるため、教員資格認定試験によっても幼稚園教諭免許を取得することについて検討することも含め必要な措置を講ずるべきである。【平成15年度中に検討・結論】
A 幼稚園と保育所の一体的運営の推進【平成15年度中に措置】
幼稚園と保育所の施設共用化については、「幼稚園と保育所の施設の共用化等に関する指針」(平成10年3月10日文部省初等中等教育局長、厚生省児童家庭局長通知)において、「幼稚園及び保育所について、保育上支障のない限り、その施設及び設備について相互に共有することができる」とされ、自治体において幼稚園と保育所の共用施設が増加している。
したがって、幼稚園と保育所の一体的運営を推進するに当たっては、施設の共用だけではなく、子どもの処遇についても、各地域のニーズに応じ、柔軟な運営が可能となるような措置を講ずるべきである。
(2)保育所の調理室必置義務の見直し【平成15年度中に措置】
- 待機児童の解消が喫緊の課題となっている中、より多くの乳幼児が良質な保育所に入所できるようにする必要がある。0歳児から就学までの乳幼児にとって食生活は重要な意味を持ち、また、乳幼児は、身体的に未熟であり、かつ、心身の発達過程上、重要な時期にあることから、衛生面、栄養面等において配慮がなされる必要があることも事実である。
したがって、上記の点を考慮し、保育所の調理室必置義務については、併設された社会福祉施設の調理室を兼用する場合と同様に、例えば、余裕教室に保育所を設置する場合において調理室の共同利用をするなど、安全性等が確保される場合には、保育所の設置が可能となるよう検討し、措置すべきである。
(3)認可保育所の経営主体や施設基準についての地方自治体への周知徹底【平成14年度中に措置、平成15年度以降も逐次実施】
- 保育所に係る規制については、民間企業による設置経営の容認や、近所の公園を園庭の代替とすることの容認といった施設基準の緩和など、国レベルでは規制緩和が進展している。他方「規制改革推進3か年計画(改定)」においては、「既に実施された規制緩和措置について、地方公共団体に対し、早期かつ逐次、周知徹底を図る」こととされ、昨年度においても措置されているところである。
しかしながら、依然として、合理的な理由が示されないまま設置経営主体や施設設置基準について旧来の基準を維持している地方自治体があるとの指摘もあり、周知はいまだ不十分である。したがって、既に実施された規制緩和措置について、より一層の周知徹底を図るべきである。
(4)認可保育所へ参入した民間企業に対する会計基準の円滑な適用【平成15年度中に措置】
- 平成12年より認可保育所への民間企業の参入が認められたところだが、認可条件として、社会福祉法人の会計基準に従うことが求められている。
しかしながら、前提条件が異なる法人に対する会計基準の適用により減価償却費の扱い等経理業務に混乱を生じさせ、結果として民間企業の参入意欲を削ぐこととなっている。したがって、民間企業に対しては、会計基準を円滑に適用できるよう、技術的な側面も含め、その運用について改善すべきである。
(5)保育所の運営費補助の余剰金に係る会計処理の柔軟化【平成15年度中に措置】
- 介護サービスについては、経営主体を問わず、サービスの対価としての介護報酬が支払われるため、事業者に対しては、その使途に制限は設けられていない。また、支援費制度の導入に伴い、身体障害者福祉サービス・知的障害者福祉サービスについても、平成15年度から同様の取扱いとなる予定である。こうした取扱いにより、事業者は、経営努力により質の高いサービスを提供しつつ、成長していくことが可能となる。
一方、保育所については、運営費補助の余剰金の使途は、徐々に緩和の方向に進んではいるものの依然として限定されており、例えば、借入金の返済や施設の賃貸料の支払いは、民間施設給与等改善費(民改費)の範囲内に制限されている。これまで講じてきた保育所設置要件などの規制緩和措置をより効果的なものとし、多様な提供主体により十分な保育サービスが提供されるよう、余剰金が生じる要因を詳細に分析した上で、余剰金に係る会計処理の柔軟化について検討し、必要な措置を講ずるべきである。
(6)保育サービスに関する情報の一体的な提供の推進【平成14年度中に措置、平成15年度以降も逐次実施】
- 幼稚園と保育所については、両者の間の差異が縮小し、また、幼保の機能を併せ持った施設も開設されているという状況にある。他方、認可外保育施設について、本年10月より届出義務が課されたことから、行政として把握することが可能となった。
以上の状況にかんがみ、利用者による選択の利便性向上と、サービス内容の情報提供の促進を図る観点から、これらの施設についての情報を各地方自治体がインターネット等により提供する場合には、施設の位置付けを明確にした上で、一覧性等を持たせた形で行われるよう、地方自治体に対して積極的に働きかけるべきである。
(7)保育サービスの第三者評価の推進【平成14年度中に措置】
- 保育所については、本年4月に第三者評価に関するガイドラインが作成されたところだが、現時点では、全国保育士養成協議会が認可保育所に限って第三者評価事業を実施しているにすぎない。今後保育サービスの第三者評価が一層促進されるような仕組みを整備するためには、以下について取り組むべきである。
| @ | 多様な主体が第三者評価事業を実施していく中で、認可外保育施設を含め、評価対象の拡大など必要な見直しの検討に向けての事例の収集に着手すべきである。 |
| A | 併せて、第三者評価自体の客観性を高めるため、例えば、財団法人こども未来財団が運営する「i−子育てネット」の「保育所一覧」の中で多様な主体による第三者評価が容易に比較できるような仕組みを整備すべきである。 |
また、幼稚園については、本年4月に幼稚園設置基準が改正され、学校の自己点検評価と積極的な情報開示が規定されたが、かかる観点から、例えば、地方公共団体や関係団体のホームページ上などで、幼稚園の自己点検評価等の情報が閲覧できるようにすべきである。
3 社会福祉法人関係
社会福祉法人に関するインターネット上の情報公開の促進【平成14年度中に措置】
「規制改革推進3か年計画(改定)」においては、「社会福祉法人の公益性にかんがみ、収支決算書、事業報告書、監事の意見書等は、インターネット上での公開を促進する」こととされているが、引き続き、より多くの社会福祉法人が会計情報等の公開を進めるよう、取組を促進すべきである。
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