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7 雇用・労働

【問題意識】

(現状と方向性)
 長期的な経済・社会の構造変化の下で、労働市場の状況や雇用の在り方は大きく変わってくる。これに伴って雇用・労働市場をめぐる規制の在り方も変化する。
 まず、人口の高齢化に伴い、個人の職業人生が長期化する一方で、経済のグローバル化等に伴う競争環境の激化や技術構造の急速な変化などにより、個別企業、産業の栄枯盛衰のテンポは速くなっており、結果として、個々の企業あるいは産業が労働者に対して保障できる雇用期間は短くならざるを得ない。
 また、産業構造の高度化や就業形態の多様化に伴い、集団的に決定されてきた労働条件も、高度な専門能力を有するホワイトカラー層などへの能力・成果主義賃金の浸透など、個別決定化が進むとともに、パートタイム労働や派遣労働などを自発的に選択する個人も増えている。こうした新しいタイプの労働者像に対しては、従来型の規制は必ずしも適切とは言えず、個人がその個性と能力に応じた働き方ができるようにしていくことが重要である。
 以上のような観点から、経済・社会の構造変化に対応して雇用・労働市場の規制の在り方も、より市場を通じた雇用保障を拡充し、多様な就業・雇用形態に対応し得るような形に改革していく必要があり、当会議として、円滑な労働移動を可能とする規制改革、就労形態の多様化を可能とする規制改革、新しい労働者像に応じた規制改革の推進を図ってきたところである。
 この結果、一定の前進はみられるものの、労働者派遣制度や有期労働契約、裁量労働制等に大きな課題が残されており、その改革が不可欠である。
 また、「改革加速のための総合対応策」が本年10月30日策定され、不良債権処理の加速に伴う雇用面のセーフティーネットの拡充が急務であり、雇用情報の充実という観点から、職業紹介等の規制改革の早期実施が急務である。
 なお、規制改革を進めるに当たっては、事後チェック等によって派遣労働者の労働条件の確保が十分に図られ、かつ、求職者の利益がきちんと担保される環境が整えば、派遣労働者の派遣期間の制限や対象業務の制限、求職者からの手数料徴収に関する制限などは、これを原則として撤廃することが望ましいとの考え方に留意すべきである。

(事前規制緩和に対応した事後チェック機能等の強化)
 雇用・労働に関する規制は、労働者等が被るであろう何らかのリスクを事前に抑止することを基本的な目的の一つとしているが、事前規制の緩和を促進していくためには、それに伴ってリスクが発生することについての懸念を払拭することが重要であり、その役割を果たすのが「事後監視・監督」(以下「事後チェック」という。)である。事前規制の緩和により、リスクの発生が増大する可能性があるのであれば、それに備えて事後チェックの整備に向けた検討を行うことが必要である。

【具体的施策】

1 円滑な労働移動を可能とする規制改革

(1)能力開発プログラムの充実

 労働者の就業機会を拡大するためには、能力開発を促進し労働者のポテンシャルを向上させることが効果的である。今般、教育訓練給付制度については、大学・大学院等における高度な社会人向け教育訓練コースの指定拡大、職業との関連性確保等による講座の重点化等講座指定の在り方の見直しが図られたところであるが、労働市場全体のポテンシャル向上という見地からは、制度創設以来の運用実態等を踏まえ、支給対象者の範囲なども含め、教育訓練給付制度等の在り方について更に検討すべきである。【次期通常国会に法案提出等所要の措置】
 また、キャリア・コンサルティングを普及するため、キャリア・コンサルタントの能力の的確な評価の推進を目的としてキャリア形成促進助成金の活用措置が採られるとともに、職業能力評価制度については、民間団体等の活用を促進するため、技能検定の指定試験機関制度による職種の追加や同指定試験機関の指定の措置が採られたところである。今後においても、こうしたキャリア・コンサルティングや職業能力評価制度の拡充、資金の貸付制度等の活用の促進等、個人の自発的な能力開発に対する支援を強化すべきである。【逐次実施】

(2)職業紹介規制の抜本的緩和

@ 求職者からの手数料規制緩和【平成15年度までに措置(速やかに実施)】
 求職者からの手数料徴収の原則禁止は、我が国が批准するILO第181号条約にも定められた原則であり、一面で労働者保護に資するものではあるが、無料原則を貫くことは良質な求職者向けのサービス提供を妨げる面もある。このため、本年2月の省令改正により、年収1,200万円を超える科学技術者・経営管理者からも徴収可能となったところである。
 しかしながら、求職者の実情等を踏まえ、求職者からの手数料規制については、より労働市場のニーズに合致したものとするため、年収要件の大幅な引下げ、職種の拡大により対象者の拡大を図ることについて検討し、その結論を早急に取りまとめ、所要の措置を講ずるべきである。

A 無料職業紹介事業に関する規制緩和【次期通常国会に法案提出等所要の措置】
 職業紹介制度については、既に有料職業紹介・無料職業紹介の双方について制度全体の見直しに向けて検討が行われているところであるが、学校等以外の者の行う無料職業紹介事業の許可制については申請者の存立目的、形態、規約等から必要かつ適当であると認められる範囲の職業紹介を行うものであることを許可要件とする等、裁量行政の余地を残しているという点で問題があるとの指摘もある。そこで、無料職業紹介事業の届出制の範囲の拡大について検討し、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案の提出等所要の措置を講ずるべきである。
 また、昨今の深刻な雇用情勢の下では、国・地方・民間等あらゆる機関の職業紹介能力を十分に活用する必要があり、地方公共団体においても無料職業紹介を事業として行えるようにすべきである。

B 有料職業紹介事業に関する規制緩和【次期通常国会に法案提出等所要の措置】
 すべての事業所に許可が必要としている現行の有料職業紹介事業の許可制は、手続の簡素化の観点から、法人としての許可があれば、事業所の設置は届出で済むよう許可制度を緩和することを含め、検討し、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案の提出等所要の措置を講ずるべきである。なお、職業紹介事業に係る兼業規制については、これを原則として撤廃することも含め検討し、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案の提出等所要の措置を講ずるべきである。

C 公共職業安定所紹介要件の緩和
 特定求職者雇用開発助成金を始めとする雇用関係助成金については、公共職業安定所の紹介要件を緩和し、都道府県労働局長への届出により、民間の職業紹介事業者の紹介による雇入れも支援対象とする措置が講じられたところであるが、不正防止にも留意しつつ、今後とも、要件緩和の趣旨・内容等の周知徹底を図るべきである。【適宜実施】
 なお、こうした助成金の在り方そのものについても、費用対効果の観点からその見直しを行うべきである。【次期通常国会に法案提出等所要の措置】
 また、雇用保険法(昭和49年法律第116号)に定める就職促進給付のうち再就職手当の一部及び常用就職支度金についても、不正防止等の観点から公共職業安定所の紹介が支給要件とされているが、厳しい雇用保険財政に留意しつつこれを緩和すべきである。【次期通常国会に法案提出等所要の措置】

D 職業紹介責任者に係る規制緩和【次期通常国会に法案提出等所要の措置】
 職業紹介制度全体の見直しに併せて、「規制改革推進3か年計画」に記載された下記の項目についても検討し、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案の提出等所要の措置を講ずるべきである。
職業紹介責任者の設置要件(人数)の見直し
責任の所在を明確にするためにも、職務内容の見直しを前提に、設置要件(人数)の大幅な見直しについて検討するべきである。
人事異動の都度必要とされる同責任者の変更手続の簡素化
講習制度について、その在り方及び講習内容の見直し

(3)労働者募集に係る規制緩和【次期通常国会に法案提出等所要の措置】

 職業紹介制度全体の検討に併せて、委託募集の許可制については、平成11年の法改正の施行状況、諸外国の状況等を踏まえ、許可制の在り方について検討し、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案の提出等所要の措置を講ずるべきである。

(4)募集・採用における制限の緩和・差別撤廃

 昨年9月に策定した改正雇用対策法に基づく「指針」においては、求人企業が募集・採用において年齢要件を課す場合にはその理由を明示することを求めており、年齢制限に関して一定の対応が図られたところである。当面は当該指針に関する指導の徹底を図るとともに、適宜指針において年齢上限の設定を認めている例外規定の妥当性についても検討すべきである。【適宜検討】
 さらに、中長期的には、法律によって、例えば年齢上限の設定を行う企業に対してその理由を説明する義務を課すこと、あるいは年齢制限そのものを禁止することについてもその可能性を検討すべきである。【中長期的に検討】
 また、採用または労働条件その他労働関係に関する事項について、人種・信条・社会的身分等を理由としてする不当な差別的取扱いの禁止を定めた「人権擁護法案」が国会に提出されているところであるが、成立後におけるその円滑な施行を図るべきである。【法施行後速やかに実施】

2 就労形態の多様化を可能とする規制改革

(1)派遣就業の機会拡大【次期通常国会に法案提出等所要の措置】

 労働者派遣制度については、昨今の雇用情勢の急速な変化を踏まえ、労働者の働き方の選択肢を広げ、雇用機会の拡大を図る等の目的から、派遣事業許可制度の在り方、派遣期間の延長又はその制限撤廃や「物の製造」の業務の派遣禁止の撤廃等を含めて、調査・検討結果を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案の提出等所要の措置を講ずるべきである。

@ 派遣期間制限の延長又は撤廃【次期通常国会に法案提出等所要の措置】
 派遣期間の制限に関しては、法律に基づく1年の期間制限と行政指導に基づく3年の期間制限のいずれについても、派遣労働者の声を踏まえ、これを延長又は撤廃することも含め検討し、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案の提出等所要の措置を講ずるべきである。

A 派遣対象業務の拡大等【次期通常国会に法案提出等所要の措置】
 現行労働者派遣法は、附則において、当分の間「物の製造」の業務について派遣事業を禁止しているが、製造業務の派遣事業に係る他国の状況も踏まえながら、これを解禁することも含め検討し、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案の提出等所要の措置を講ずるべきである。
 その際、安全衛生等に関する派遣労働者の労働条件の適正な確保を図るために啓発・指導等を行うべきである。

B 労働者派遣事業に関する規制緩和【次期通常国会に法案提出等所要の措置】
 すべての事業所に許可が必要としている現行の労働者派遣事業の許可制については、手続の簡素化の観点から、法人としての許可があれば、事業所の設置は届出で済むよう許可制度の緩和を行うことを含め検討し、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案の提出等所要の措置を講ずるべきである。

C 紹介予定派遣制度の見直し【次期通常国会に法案提出等所要の措置】
 紹介予定派遣を通常の派遣と同様の規定で律することには限界があり、実態調査等を踏まえ、事前面接や履歴書の送付要請、採用内定等の行為の解禁等法制度を含む現行制度の見直しを行うべきである。

D その他
ア 派遣元責任者の選任に係る見直し【平成15年度までに措置】
 派遣元責任者の選任の在り方について、見直すべきである。また、その際、講習制度についても簡素化を検討するべきである。

イ 労働者派遣に係る手続の簡素化【次期通常国会に法案提出等所要の措置】
労働者派遣事業に係る手続を事業所ごとの手続から本社一括の手続に緩和すること、届出書類を削減することを含め検討し、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案提出等所要の措置を講ずるべきである。

ウ 派遣先事業主から派遣元事業主への通知書類の電子化【平成15年度までに措置】
派遣先事業主から派遣元事業主への通知について、労働者保護にも留意しつつ、電子媒体による通知も可能とすることを検討すべきである。

エ 派遣事業と紹介事業の兼業規制の見直し【平成15年度中に検討を開始し、平成16年11月末までに結論】
 労働者派遣事業等の許可基準における@派遣元責任者と紹介責任者が同一の者ではないこと、及びA両事業に係る指揮命令系統が明確に区分され、両事業に係る直接担当職員が両事業の業務を兼任するものではないこととされている要件の在り方を一定の条件の下にその兼任を認める経過措置が終了するまでに検討すべきである。

(2)有期労働契約の拡大【次期通常国会に法案提出等所要の措置】

 有期労働契約については、働き方の選択肢を増やし、雇用機会の拡大を図るためにも、専門職の労働契約期間の上限を5年にするとともに、原則1年の契約期間の上限を3年に延長することを検討し、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案提出等所要の措置を講ずるべきである。

(3)裁量労働制の拡大【次期通常国会に法案提出等所要の措置】

 労働に対する価値観の多様化に対応して、労働者がより創造的な能力を発揮できる環境を整備する観点から、自己の裁量の下で自由に働ける裁量労働制を拡大する必要がある。
 企画業務型裁量労働制については、導入手続が煩雑であり、適用対象事業場等が限定的であることから、その手続の大幅な簡素化や適用対象事業場等の拡大を図ることを検討し、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案提出等所要の措置を講ずるべきである。
 なお、事業場における業務の実態については、当該事業場の労使が最も熟知していることから、将来的には、裁量労働制の対象業務の範囲についても、これら事業場における労使の自治にゆだねる等の方向で制度の見直しを図ることが適当であると考える。

3 新しい労働者像に応じた制度改革

(1)労働基準法の改正等

 現行の裁量労働制は、みなし労働時間制を採用しており、労働時間規制の適用除外を認めたものではないが、その本質は「業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し当該業務に従事する労働者に対し具体的な指示をしないこと」にあることを踏まえると、管理監督者等と同様、時間規制の適用除外を認めることが本来の姿であると考えられる。よって中長期的には、米国のホワイトカラーエグゼンプションの制度を参考にしつつ、裁量性の高い業務については適用除外方式を採用することを検討すべきである。その際、現行の管理監督者等に対する適用除外制度の在り方についても、深夜業に関する規制の適用除外の当否を含め、併せて検討すべきである。【速やかに検討】
 また、最も裁量性の高い職種と考えられる大学教員について、労働時間規制の在り方を早急に検討すべきである。【平成15年度中に検討】
 さらに、解雇について、労働基準法は予告手続等を規定しているだけで、解雇そのものは、現在のところ、いわゆる解雇権濫用法理を始めとする判例法で規制されている。しかし、解雇の有効・無効に関する労使双方の事前予測可能性を高めるためにも、解雇の基準やルールについては、これを立法で明示することを検討し、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案提出等所要の措置を講ずるべきである。その際には、いわゆる試用期間との関係についても検討するとともに、解雇の際の救済手段として、職場復帰だけでなく、「金銭賠償方式」という選択肢を導入することを検討し、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案提出等所要の措置を講ずるべきである。【次期通常国会に法案提出等所要の措置】

(2)社会保険制度の改革等

 就労形態の多様化に対応した社会保険制度の改革等を速やかに検討する必要がある。年金・医療保険においても、パートタイム労働者について適用基準に該当する労働者への適用の徹底を図るとともに、適用範囲の拡大について早急に検討すべきである。【速やかに検討・結論】
 また、雇用保険法は原則としてすべての民間被用者を対象とした制度であり、現在も、低い加入水準にとどまっている私立学校教員等については、雇用保険への加入を更に促進すべきである。【逐次実施】
 さらに、従来型の年金や退職金といった長期勤続を優遇する制度が人材流動化の阻害要因とならないようにする必要がある。企業年金については、転職が不利にならないよう、確定給付型年金の中途脱退者の通算制度の拡大、個人型確定拠出年金への資産移換の仕組みの検討など確定給付型年金のポータビリティ向上に努めるとともに、コストを抑えた効率的な運営システムの整備等による確定拠出型年金の拡大を図るべきである。以上のほか、退職金についても、長期勤続者を過渡に優遇する現行制度の見直しを図るべきである。【速やかに検討】

4 事後チェック機能の強化

(1)個別労使紛争への対応強化【遅くとも平成16年中に措置】

 迅速かつ低廉な費用で個別的な労働関係の紛争を適切に解決するスキームが求められていることから、労働調停制度や労働関係事件固有の訴訟手続の整備の要否等について早急に検討し、所要の措置を講ずるべきである。

(2)社会保険労務士の個別労働関係紛争当事者の代理【適宜実施】

 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の紛争調整委員会におけるあっせんについて、紛争の当事者を代理することを社会保険労務士の業務に加えることを盛り込んだ社会保険労務士法の一部を改正する法律(平成14年法律第116号)が平成14年11月27日に公布されたところであるが、その円滑な施行を図るべきである。