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7 雇用・労働

【問題意識】

(現状と方向性)
 長期的な経済・社会の構造変化の下で、労働市場の状況や雇用の在り方は大きく変わっている。これに伴って雇用・労働市場をめぐる規制の在り方も変化している。
 まず、人口の高齢化に伴い、個人の職業人生が長期化する一方で、経済のグローバル化等に伴う競争環境の激化や技術革新などにより、企業、産業の栄枯盛衰のテンポは速くなっており、結果として、個々の企業あるいは産業が労働者に対して保障できる雇用期間は短くならざるを得ない。
 また、産業構造の高度化や就業形態の多様化に伴い、集団的に決定されてきた労働条件も、高度な専門能力を有するホワイトカラー層などへの能力・成果主義賃金の浸透など、個別決定化が進むとともに、パートタイム労働や派遣労働などを自発的に選択する個人も増えている。こうした新しいタイプの労働者像に対して、従来型の規制をそのまま適用することは必ずしも適切とは言えず、個人がその個性と能力に応じた働き方ができるようにしていくことが重要である。
 したがって、このような経済・社会の構造変化に対応して、雇用・労働市場の規制の在り方も、より市場を通じた雇用保障を拡充し、多様な就業・雇用形態に対応し得るような形に改革していく必要がある。
 また、雇用・労働に関する規制は、これまで労働者が被る何らかのリスクを事前に抑止することを基本的な目的の一つとしてきたが、事前規制の緩和を促進していくためには、それに伴って発生するリスクに対する懸念を払拭することが重要であり、その役割を果たすのが「事後監視・監督」(以下「事後チェック」と言う。)である。事前規制の緩和により、リスクが発生する可能性が増大するのであれば、それに備えて事後チェックの機能を強化することが必要である。
 このような中、当会議としては、これまで円滑な労働移動を可能とする規制改革、就労形態の多様化を可能とする規制改革、新しい労働者像に応じた規制改革及び事後チェック機能の強化の推進を図ってきたところであり、法改正等を通じ一定の前進が見られたことは、これを評価する。
 他方、今年度は当会議の最終年度に当たるが、規制改革の一層の推進を図るとともに、「規制は少しでも労働者の利益になるように」との原則に立ち返って雇用・労働に関する規制の在り方を抜本的に見直していくことが、今後重要な課題となる。こうした観点から具体的には、以下の考え方に留意すべきである。

1 職業紹介事業の規制緩和
 悪質業者によるピンはね等の行為が防止できれば、有料職業紹介事業における求職者からの手数料徴収の対象者を限定することは不要であり、これを撤廃した方が求職者の選択肢を拡大するという点で労働者の利益になる。

2 募集・採用における年齢制限の緩和・解消
 本格的高齢化を迎えて、中高年になってから再就職を余儀なくされる労働者も増えているという状況の下で、募集・採用の年齢制限が依然として広く行われていることは、社会不安を増大させるだけでなく、賃金調整の余地を狭くしてしまうという点において市場効率の面からも問題である。企業が誰を採用するかは、あくまでも本人の仕事能力とその賃金との見合いで決められるべきであって、年齢等の外形的基準によらないようにすることが、求職者の利益になる。

3 労働者派遣事業の規制緩和
 派遣労働者と常用労働者の均衡待遇が実現すれば、派遣対象業務や派遣期間の制限は不要であり、これを撤廃した方が労働者の働き方の選択肢拡大という観点から労働者の利益になる。

4 労働時間規制の適用除外の拡大
 現行の労働時間規制は、労働基準法制定当時(1940年代)の定型労働に従事するブルーカラー労働者を念頭に置いたものであり、こうした労働時間規制にはなじまない非定型労働に従事するホワイトカラー労働者に対して、これをそのまま適用することにはそもそも無理がある。また、かかる一律適用の結果、他方では、本来厳格な労働時間規制の適用を必要とする労働者への対応が不十分なものとなるといった問題も惹起している。このような問題点を是正するためにも、本来労働時間規制の適用になじまないホワイトカラー労働者については、労働者の健康に配慮する措置を講ずること等の条件整備を図りつつ、時間規制の適用除外を図ることが必要であり、ひいてはそれが労働者全体の利益になる。

5 事後チェック機能の強化
 事前規制の緩和は、労使双方にとって選択肢を増やすという利益をもたらす。しかし一方では、事前規制によって守られてきた労働者の利益が損なわれるというおそれもある。事前規制の緩和は、事後チェック機能が有効に働いてこそ労働者の利益となると考えるべきであり、事前規制の緩和と事後チェック機能の強化あるいは事後的な紛争処理制度の整備は、これを一体として進めるべきである。

【具体的施策】

1 円滑な労働移動を可能とする規制改革

(1)職業紹介規制の抜本的緩和

@ 求職者からの手数料規制の緩和
 求職者からの手数料徴収の原則禁止は、我が国が批准したILO第181号条約にも定められた原則であり、一面で労働者保護に資するものではあるが、無料原則を貫くことは良質な求職者向けのサービス提供を妨げる面もある。
 このため、これまでも手数料規制の緩和措置が講じられてきたところであるが、労働市場のニーズに一層合致したものとするため、年収要件を現行の1,200万円超から700万円程度へ引き下げるとともに対象職種を拡大することにより、対象者の拡大を図ることについて所要の措置を早急に講ずるべきである。【平成15年末までに措置】
 また、求職者の選択肢の拡大という観点等から、今後とも求職者からの手数料徴収の在り方について、引き続き検討するべきである。【適宜検討】

(2)募集・採用における制限の緩和・差別撤廃

 平成13年9月に策定された改正雇用対策法(平成13年法律第35号)に基づく「指針」においては、求人企業が募集・採用において年齢制限を付す場合にはその理由を明示することが求められており、年齢制限の緩和については一定の措置が講じられてきたところであるが、さらに、年齢により不当に募集・採用を制限することのないよう、募集・採用において年齢制限を付す事業主に対しては、その説明責任を一層明確にする方向で検討するとともに、指導・助言体制を強化することについて検討を行い、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案の提出等所要の措置を講ずるべきである。【次期通常国会に法案提出等所要の措置】
 さらに、中長期的には、年齢制限そのものを禁止することについてもその可能性を検討すべきである。【中長期的に検討】
 また、国家公務員の採用試験の受験資格として設けられている年齢制限については、存続すべき理由があるものを除き撤廃する方向で検討を行い、結論を得るべきである。【平成16年度中に結論】
 なお、地方公共団体に対して、国家公務員の検討結果を踏まえ適切な対応が図られるよう助言及び情報提供を行うべきである。【適宜実施】

(3)技能検定の受検資格の要件の緩和【平成15年度中に措置】

 近年における技術の進展に伴い、技能の質や内容に変化が生じていること、一定の技能を習得するまでの期間が全体的に短縮傾向にあることなどから、技能検定の受検資格に必要な実務経験年数は、1級技能検定受検資格者のうち実務経験のみの者についてはこれを12年から7年に短縮するなど、技能検定の等級及び受検対象者の学歴等に応じてその短縮を図るべきである。

2 就労形態の多様化を可能とする規制改革

(1)派遣就業の機会拡大

 労働者派遣制度については、労働者派遣法の改正(平成15年法律第82号)により、派遣期間の延長、派遣対象業務の拡大、許可・届出手続の簡素化、紹介予定派遣制度の法定等の措置が講じられたところであるが、更に以下の事項について検討を行い、必要な措置を講ずるべきである。

@ 事前面接の解禁【平成17年度中に検討】
 労働者派遣法の改正により、紹介予定派遣については、一定の条件の下、派遣先による事前面接等が可能となったところであるが、紹介予定派遣以外の派遣を対象とした事前面接の解禁のための条件整備等についても、紹介予定派遣における事前面接等の実施状況を勘案しつつ、その検討を速やかに開始すべきである。

A 派遣事業と紹介事業の兼業規制の見直し【平成16年11月末までに措置】
 労働者派遣事業等の許可基準において、(@)派遣元責任者と紹介責任者が同一の者ではないこと、及び(A)両事業に係る指揮命令系統が明確に区分され両事業に係る直接担当職員が両事業の業務を兼任するものではないこと、とされている要件の在り方について、一定の条件の下にその兼任を認める経過措置が終了するまでの間に当該措置の恒久化を図ることを含め、その検討を行い、結論を得た上で、所要の措置を講ずるべきである。

(2)裁量労働制の拡大等

 労働に対する価値観の多様化に対応して、労働者がより創造的な能力を発揮できる環境を整備する観点から、自己の裁量の下で自由に働ける裁量労働制を拡大する必要がある。
 企画業務型裁量労働制については、労働基準法の改正(平成15年法律第104号)により、導入手続が簡素化され、適用対象事業場も本社等に限定されないこととなったところであるが、制度の広範な活用が可能となるようその周知徹底を図るべきである。【適宜実施】
 また、裁量労働制の導入手続に関しては、企画業務型についても専門業務型と同様に、労使協定による導入を認めるよう求める意見が労使の一部にあることに留意しつつ、その可能性について、改正後の労働基準法の裁量労働制の施行状況を踏まえ、速やかに検討すべきである。なお、事業場における業務の実態については、当該事業場の労使が最も熟知していることから、将来的には、裁量労働制の対象業務の範囲についても、これら事業場における労使の自治にゆだねる等の方向で制度の見直しを図ることが適当であると考える。【平成17年度中に検討】
 なお、最も裁量性の高い職種と考えられる大学教員については、大臣告示の見直し(平成15年厚生労働省告示第354号)により「大学における教授研究の業務」が専門業務型裁量労働制の対象業務になったところであるが、今後その周知徹底を図るべきである。【適宜実施】

3 新しい労働者像に応じた制度改革

(1)労働時間規制の適用除外の拡大等

 現行の裁量労働制は、みなし労働時間制を採用しており、労働時間規制の適用除外を認めたものではないが、その本質は、「業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し当該業務に従事する労働者に対し具体的な指示をしないこと」にあることを踏まえると、管理監督者等と同様、時間規制の適用除外を認めることが本来の姿であると考えられる。よって、米国のホワイトカラーエグゼンプションの制度(その改革の動向を含む。)を参考にしつつ、裁量性の高い業務については、改正後の労働基準法の裁量労働制の施行状況を踏まえ、今般専門業務型裁量労働制の導入が認められた大学教員を含め、労働者の健康に配慮する等の措置を講ずる中で、適用除外方式を採用することを検討すべきである。その際、現行の管理監督者等に対する適用除外制度の在り方についても、深夜業に関する規制の適用除外の当否を含め、併せて検討すべきである。【平成16年度中に海外事例の調査】
 また、解雇について、判例上確立した解雇権濫用法理が労働基準法の改正により明文化されたところであるが、解雇の際における救済手段として、職場復帰だけでなく、「金銭賠償方式」という選択肢を導入することについても、引き続き検討すべきである。【平成16年度中に検討】

(2)社会保険制度の改革等

 就労形態の多様化に対応し、年金・医療保険においても、パートタイム労働者について適用基準に該当する労働者への適用の徹底を図るとともに、適用範囲の拡大について検討し、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案の提出等所要の措置を講ずるべきである。【次期通常国会に法案提出等所要の措置】
 また、雇用保険法(昭和49年法律第116号)は原則としてすべての民間被用者を対象とした制度であり、現在も、低い加入水準にとどまっている私立学校教員等については、雇用保険への加入を更に促進すべきである。【逐次実施】
 さらに、従来型の年金や退職金といった長期勤続を優遇する制度が人材流動化の阻害要因とならないようにする必要がある。企業年金については、転職が不利にならないよう、確定給付型年金に関し、中途脱退者の通算制度の拡大、個人型確定拠出年金への資産移換の仕組みの検討などそのポータビリティ向上に努めるべきである。【次期通常国会に法案の提出等所要の措置】
 以上のほか、退職金についても、長期勤続者を過度に優遇する現行制度の見直しを図るべきである。【平成16年度中に検討】

4 事後チェック機能の強化

(1)職業紹介事業・労働者派遣事業の指導・監督体制の在り方【平成16年度中に措置】

 職業紹介事業及び労働者派遣事業の指導・監督については、現在多くの場合、ハローワークがこれに当たっているが、職業紹介事業を一方で実施しているハローワークが同時に同業者を指導・監督するような体制は、本来望ましくないとの声もある。指導・監督体制の中立性を一層高め、その機能の強化を図るためにも、ハローワークが行っている指導・監督は今後、原則として、これを都道府県労働局等他の機関に移管させるべきである。

(2)個別労使紛争への対応強化【次期通常国会に法案提出等所要の措置】

 迅速かつ低廉な費用で個別的な労働関係の紛争を適切に解決するスキームが求められていることから、都道府県労働局の下に設置されている紛争調整委員会についてその一層の充実を図るとともに、労働審判制度(仮称)を導入することについても併せて検討を行い、その結果を早急に取りまとめ、所要の措置を講ずるべきである。

5 その他

(1)勤労者財産形成制度における事務代行の趣旨の明確化【平成15年末までに措置】

 勤労者財産形成促進法(昭和46年法律第92号)上、事業主が金融機関等に対し行うこととされている事務の代行については、事業主の規模にかかわらず、委託することができる旨を明確化することについて所要の措置を講ずるとともに、その周知を図るべきである。

(2)衛生管理者の選任要件の緩和【平成16年度中に検討・結論】

 職場の衛生管理体制の確保・向上を一層図るという観点から、事業場に直接雇用されていない者を衛生管理者として選任することについて、その可能性を検討し、早急に結論を得るべきである。

(3)産業別最低賃金制度の見直し【平成16年度中に検討】

 労働市場は産業別に形成されているわけでなく、都道府県単位とはいえ、産業別に異なる最低賃金を設定する意義は乏しいと考えられる。また、最低賃金の設定が必要な場合には、労使間の協約・協定で自主的にこれを定めればよいとも考えられる。こうした考え方にも留意し、産業別最低賃金制度については、その在り方を速やかに検討すべきである。