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平成14年12月18日

国際平和協力懇談会報告書の要旨


〔序〕
  1.  2002年5月、小泉総理大臣はシドニーにおける演説で、紛争に苦しむ国々に対して平和の定着や国づくりのための協力を強化し、日本の国際協力の柱とするための検討を行う旨述べた。これをうけて16人の委員(参考)からなる国際平和協力懇談会が開催され、同年6月から12月まで審議を行い、報告書を取りまとめた。
〔国際平和協力の動向〕
  1.  報告書は、国家間の戦争を防止するだけでは、平和の探求として不十分であり、特に冷戦終了後は、国境の壁を超えて行われる大規模暴力や内戦、テロへの対処が必要となっていること、また脅威の伝播がきわめて迅速なため、自国の安全のためにも、世界的な活動が必要とされることを指摘している。
〔国際平和協力の活動の枠組み〕
  1.  このような国際社会の現状においては、国連を中心とする伝統的な平和維持活動だけでは世界の平和と安全の維持のためには十分でなく、脆弱な停戦をより持続的な平和に移行させ、また内戦によって荒廃した社会を安定したものに復活させることが必要になってきている。「平和の定着」とは、紛争が再発するのを防ぐための支援であり、和平プロセスを促進すること、人道・復旧支援を進めること、国内の安定や治安を確保することなどがそれに含まれる。また「国づくり」とは、そのような不安定な地域の政治的・経済的・社会的枠組みづくりを支援することである。これらの活動を総称して「平和構築」と呼ぶことができる。そうした活動は世界の紛争地域で益々多様化しており、迅速で柔軟な参加ぶりが要請されている。
〔我が国の国際平和協力の現状と課題〕
  1.  戦後、我が国には根強い平和主義が育っているが、それはともすると観念的・受動的なものになりがちであった。10年前のカンボジアPKO参加以来、我が国の国際平和協力分野での活動は徐々に拡大してきているが、他の先進諸国に比べてみると、その規模や展開能力に大きな落差があることは否定できない。それを縮めるべく一層の国民的な努力が望まれている。そのためには、国際社会との関わり方についての厚みのある国民的合意がどうしても形成されなければならない。
〔国際平和協力の改善・強化のための方策−提言−〕
  1.  我が国が、国際平和協力分野でより積極的な活動を行うに当たっては、制度上の制約がかなり多く、関係各機関の間の連携も十分といえない。いまや国際平和協力は国の行うべき基本業務の一つとして位置付けられるべきであり、そのための法制度の整備、意思決定組織の見直し、人材の訓練・研修体制の確立が求められている。このような観点から、政府は、国際平和協力に関する組織体制の整備・充実を図るべきである。

  2.  発展途上国へのODAは、平時を前提に貧困人口の削減と様々な格差の是正に重点をおいてきたが、今後は紛争の予防、紛争の早期終結、紛争後の緊急人道援助、復興支援などにより積極的に関わるべきである。難民/国内避難民支援、地雷除去、元兵士の社会復帰、選挙支援、基礎インフラ復旧や、行政、警察、司法分野などいわゆるガバナンス(統治)における支援、さらには教育を含む経済・社会インフラの整備などについてODAの積極的な活用が従来よりも求められる。

  3.  報告書は、紛争予防から、平和の定着と国づくり、本格的な復興開発支援にいたるまでの包括的かつ継ぎ目のないアプローチを提言し、そのため国際協力事業団(JICA)や、NGO、民間企業、学界などの一層の相互提携や協力を求めている。

  4.  また、文民専門家の役割が大きいことに鑑み、そのより積極的な派遣に向け、国際平和協力法による派遣の実現を強調している。他方多面的PKOの展開が増えており、その中での文民警察官の活動が一層拡大していることから、文民警察の行う国際平和協力については、それを警察庁の責務として法律上明確に根拠付けるとともに、そのために警察官隊を警察庁に附置することが必要である。

  5.  「PKO参加5原則」については、今まで想定できなかった新しい国際情勢に鑑み、それを弾力的に解釈することとし、人道援助活動や選挙監視活動に参加する文民専門家は「5原則」の適用範囲から除外すべきである。人道救援活動に従事する文民専門家については、その早期派遣に向けて運用の見直しを図るべきであり、それとともに、国際緊急援助隊法の柔軟な適用による支援が要請される。

  6.  日本はまた、国連PKOの機動的展開を目指す国連待機制度に参加すべきであり、同時に、近年増えつつある国連決議に基づいて派遣される多国間の平和協力活動(いわゆる「多国籍軍」)への我が国の協力(例えば、医療・通信・運輸等の後方支援)について、一般的な法整備の検討の開始を提唱する。

  7.  政府と民間が一体となって国際平和協力の活動ができるようにするため、人材の養成・研修・採用・派遣を効率的・総合的に行えるよう、既存の機構を含む有機的なメカニズムの創設を提唱する。各種人材登録制度の活用やネットワーク化を促進すること、国際平和協力に関する理論的分析を推進すること、国際平和協力関係者に関し包括的なキャリア・プランをつくること、そのため、長期的な観点に立って国内外の人事交流や連携を強めることが必要である。

  8.  報告書は、日本人が求める「安全」の敷居が、国際的にみて過度に高いことを指摘しつつも、同時に国際協力に従事する要員の安全のため、より重層的な取組みを提唱する。安全確保のためのマニュアル整備、非常時の輸送手段の確保、情報収集と分析の強化、危機回避のための研修の充実などを挙げている。

  9.  また、NGO活動が、最近活発になってきていることは歓迎すべきであるが、国際的に見てそれがまだ不十分なので、国連などでの我が国NGOのプレゼンスを強める道を探ることや、NGO緊急人道支援無償等を通じた健康・安全のための支援などの充実を提唱する。平和構築に従事する者が事故にあった場合の補償の格差や、労災保険の適用がないNGOの要員の場合など、適切な補償が考えられるべきである。

  10.  21世紀における世界の平和構築のため、一層の情報公開と国内外向けの発信機能の拡充を通じて、日本が果たすべき具体的な役割や、国際社会から寄せられる期待について、国民が活発な議論を行うようにし、それにより国民各層の理解を深め、より広範で積極的な参加ができるようにすることが急務である。

  (参考) 「国際平和協力懇談会」委員名簿
 
  (座長)明石 康 元国連事務次長
海老沢 勝二 日本放送協会会長
草野 厚 慶応大学総合政策学部教授
小島 明 日本経済新聞社常務取締役 論説主幹
小林 陽太郎 富士ゼロックス株式会社代表取締役会長
嶌 信彦 ジャーナリスト
志村 尚子 津田塾大学学長
田中 明彦 東京大学東洋文化研究所教授
千野 境子 産経新聞社大阪本社編集局特別記者兼論説委員
西元 徹也 元防衛庁統合幕僚会議議長
新田 勇 元大阪府警察本部長
星野 昌子 特定非営利活動法人日本NPOセンター代表理事
山崎 正和 東亜大学学長
山中 Y子 国連大学・北海道大学大学院国際広報メディア研究科客員教授
弓削 昭子 国連開発計画(UNDP)駐日代表
横田 洋三 中央大学法学部教授


(参考) 国際平和協力の改善・強化のための方策−提言−

 国際平和のために我が国がより積極的、包括的、弾力的な協力をすること(―平和の定着と国づくり―)は緊急の課題であり、国としての基本業務に位置付けるべきである。この方針を世界に向けて発信し、その実現のための制度の見直し及び具体的な施策の改善・充実を推進するために以下の提言を行う。

1.国際平和協力の推進体制を整備・充実する。

(1) 国際平和協力は、紛争予防から「平和の定着と国づくり(平和構築)」、そして本格的な復興開発支援に至るまでの包括的なアプローチであり、これが機動的かつ間隙のない形で行われるよう、政府は、国際平和協力に関する組織体制の整備・充実を図る。
(2) 国際平和協力に関わる省庁は、上記(1)の国際平和協力の実施に当たって、国際協力事業団(JICA)やNGO、民間企業、学界などとの相互理解を深め、協力を強化する。

2.文民専門家・文民警察を積極的に派遣する。

(3) 内閣府国際平和協力本部は、文民専門家のより積極的な派遣実現に向け、緊急援助隊の経験・ノウハウを活用し、同事務局における派遣要員の人選(特に、人道救援専門家グループ(HUREX)制度の活用)、研修及び医療器材・物資調達等の運用面の体制を強化する。
(4) 文民警察が行う国際平和協力業務を警察庁の責務として法律上明確に根拠づけ、国際平和協力のため、支援機能を備えた警察官隊を警察庁に附置し、派遣することを目指す。警察官隊の設置に当たっては、その要員は志願制を前提とするとともに、犯罪の増加等厳しさを加える国内の治安情勢を考慮し、また、新たな業務の性格を踏まえ所要の措置を講じる必要がある。
(5) 我が国の警察官の実務能力を踏まえて、それに相応しい業務を行うことができるように国際平和協力法や警察法を改正して新たな業務を付加することを目指す。仮に、業務の付加が困難な場合には指導・助言・監視業務の範囲内での派遣の可能性について検討する。
(6) 内閣府及び警察庁等関係省庁が協力して、警察官を対象とした、語学力、現地事情、武器使用等の教育訓練の実施、装備資機材の整備・開発、生活必需品や宿舎、通信手段等の支援の充実、撤収に係る手続きの明確化及び手段の確保等を図る。なお、日本から派遣される文民警察官は、管理、能率、安全上の観点から、できるだけまとまった単位として編成されるように国連当局と調整する。

3.より柔軟な国際平和協力の実施に向けて早急に法整備を行う。

(7) いわゆるPKO参加5原則に関し、紛争当事者が消滅し、停戦合意や受け入れ同意がそもそも意味を有さない場合には、これらの要件がみたされなくとも、例えば、国連安保理の決議をもって参加を可能とする。
(8) 国際平和協力業務において、国際基準を踏まえ、「警護任務」及び「任務遂行を実力をもって妨げる試みに対する武器使用(いわゆるBタイプ)」を可能とする。
(9) 国際平和協力法第3条に規定する国際平和協力業務を、現行の限定列挙(ポジ・リスト)から、必要不可欠な禁止事項の列挙(ネガ・リスト)へ変更する。
(10) 国際平和協力法において、人道救援活動や選挙監視活動に参加する文民専門家については、いわゆるPKO参加5原則の適用範囲から除外する。
(11) 国際機関の要請に基づく紛争関連の選挙監視活動への派遣について、例えば、紛争後一定期間経過した後で行われる選挙への監視団の派遣や小規模な監視団の派遣等、一定の条件の下で外務省設置法に基づいて柔軟に派遣できるようにする。
(12) 国際平和協力法に基づく人道救援活動に対する文民専門家の早期派遣に向け、人道救援専門家グループ(HUREX)制度の実際の運用を早急に実現すべきである。その一方、紛争後に起こる災害であって、紛争と時間的・空間的に直接関係のないものについては、人員の安全の確保に留意しつつ、国際緊急援助隊法(JDR法)の柔軟な適用による支援の可能性を鋭意検討する。
(13) 国連PKOの機動的展開を目的とする国連待機制度に関し、少なくともレベル1(一定期間で派遣可能な部隊の種類、要員数、派遣期間等につき予め意図表明を行うもの)、できればレベル2(上記事項につきより詳細な計画資料を予め提出するもの)への参加を実現する。
(14) 自衛隊法を改正し、国際平和協力を自衛隊の本務として位置付けるとともに、適時適切な派遣を確保するため自衛隊の中に即応性の高い部隊を準備する。

4.より幅広い平和協力活動に取り組む。

(15) 国際的に経験の豊富な人材を特定の地域紛争を担当する政府代表に任命することや国際機関に推薦すること等を通じ、紛争の終結、和平の実現を目指す紛争当事者との調停や仲介などの努力を一層促進する。
(16) 国連決議に基づき派遣される多国間の平和活動(いわゆる「多国籍軍」)への我が国の協力(例えば、医療・通信・運輸等の後方支援)について一般的な法整備の検討を開始する。
(17) 平和の定着において信頼醸成、武装解除及び治安の維持等に軍事部門が大きな役割を果たすようになっているが、こうした活動に対し、我が国がより機動的に支援することが可能となるような予算の仕組み等につき検討する。
(18) 紛争後に残された兵器等の処理・処分を行う軍縮関連事業への支援について、新たな組織の立ち上げの可能性を含め、体制整備を行う。

5.国際平和協力分野においてODAを一層活用する。

(19) 紛争予防、平和構築、復興開発支援等の各段階において、国際平和協力活動を促進するためにODAを積極的に活用する。
(20) ODAの積極的な活用に当たっては、難民・国内避難民支援、対人地雷除去、DDR、選挙支援、基礎インフラの復旧といった「平和の定着」や、行政・警察・司法分野における支援、経済・社会インフラの整備、教育・メディアの支援といった「国づくり」に重点を置くものとする。
(21) 国際平和協力分野で,他の援助国や国際機関との対話を深め、互いの比較優位を生かした形で協調することにより、効果的な支援を実施する。

6.緊急人道支援から本格的復興支援までのギャップを埋める。

(22) 緊急人道支援から本格的復興支援までギャップのない支援を実施するため、人道機関や開発機関との間の議論等を踏まえつつ、緊急支援調査や日本NGO支援無償資金協力のスキームを一層活用する。
(23) 迅速かつ柔軟な支援を行うため、英国の紛争基金(Conflict Pools)の制度を参考としながら、より柔軟な予算制度について検討する。

7.専門的な人材の養成・研修・派遣体制を整備する。

(24) JICA又は非営利組織等の事業・スキームを活用し、海外の各種の訓練・研修施設や研究機関等とも協力して、国際平和協力分野での専門的な人材養成・研修及び人材のリクルート・派遣をより包括的かつ効果的に行うため、政府・民間が一体となった有機的なメカニズムを創設する。なお、国際平和協力分野での研修は、日本人のみならず,海外の多くの国々からも積極的に研修生を受け入れ、国際社会の平和の構築の基盤になる人材育成に寄与する。
(25) 人材を迅速にリクルート・派遣するために、人材管理の中核となるシステムを確立し、人道救援専門家グループ(HUREX)制度を始めとする各種人材登録制度の活用やネットワーク化を促進するとともに、派遣事前準備、事後のフォローアップ体制の充実を図る。
(26) 国内の研究・研修機関に対し、海外の関係機関との連携を図りつつ、緊急性の高い国際平和協力に関する理論的・学術的分析を推進することを慫慂する。
(27) 国際平和協力分野における大学の機能の向上を図るため、大学教員の派遣を支援する体制を整備し、教員の海外での活動を適切に評価したり、大学自らのコンサルタント登録制度への参加を促進する。

8.国際平和協力関係者の包括的なキャリア・プランを確立する。

(28) 大学・大学院等での専攻分野、インターン制度や奨学金制度、現地ミッションを含む幅広い国際機関などの人材募集情報などキャリア・プラニングに関する情報提供やアドバイスの実施等の支援体制を強化する。
(29) 国際平和協力に意欲を持つ人々が国際平和協力分野の活動に参加しやすいように、出向・休職・ボランティア休暇などの制度の普及や弾力的運用の促進を図る。
(30) 国際機関、国際NGOや他のドナーとの連携による国内外の人事交流や連携プロジェクトによる共同チームの活動等を一層充実化することにより、国際平和協力分野で活動する要員のキャリア・アップを図る。また、日本での国際協力活動経験者の受け皿を広げることにより,これら人材の一層の活用を促進し、国際平和協力分野でキャリア・プランを確立する。
(31) 国際平和協力に意欲を持つ人々が、実務研修を通じて現場の業務を体験できるよう、インターンシップ制度の充実を図るとともに、こうした経験が大学・大学院の単位として認められるような制度の普及を図る。
(32) 既存の各種研修機関リストを活用しつつ、より包括的な情報の把握に資する「国際平和協力関連研修ガイドブック」をウェッブ上で作成し、公開・維持する。

9.安全対策を確立し、補償制度を整備する。

(33) 国際平和協力を行う全ての組織は、現場における情報収集・分析機能の強化を図るため、安全問題の担当者を指名・配置し、また、安全確保のためのマニュアルの整備、通信や避難のための輸送手段の確保、衛生管理・医療など支援機能の確保、危機回避のための研修の充実を図る。
(34) 地方公務員である都道府県の警察官が、警察庁に附置された警察官隊の隊員として派遣され、事故にあった場合に支給される賞じゅつ金については、都道府県警察官として支給される賞じゅつ金との均衡を考慮した水準を確保するための措置を講じる。
(35) 日本NGO支援無償資金協力の支援形態の一つであるNGO緊急人道支援無償等を通じ、紛争・災害等の発生直後に活動するNGO関係者の健康・安全のための支援の充実を検討する。

10.NGOへの支援を促進する。

(36) 国際平和協力に従事するNGOに対し、運営の安定化、国内外での研修やアドバイザー・トレーナーの派遣・雇用などによる専門的な人材の養成、調査研究の充実等が図られるよう政府の各種支援を強化する。
(37) 国連や国際人道救援機関等における人道救援活動に関する決定において、日本のNGOのプレゼンスが確保されるよう、政府とNGOとの対話と連携を一層推進する等、可能な方策を講じる。

11.国民の理解を深め、参加を促進する。

(38) 我が国の果たすべき役割と責務、国際社会から寄せられる期待等について、シンポジウムや各種のメディアによる広報を通じて国民が活発な議論を行うようにし、それにより国民各層の理解を深め、より広範で積極的な参加ができるようにする。
(39) 国際平和協力分野の活動についての情報公開を一層深め、その成果と問題点を国民にわかりやすい形で伝えることにより、国民の理解と参加を促進する。
(40) 人道援助や平和活動、安全保障等につき、我が国が国際社会の中で果たす役割について、海外向けのメディアや国際社会の場等を通じて明確なメッセージを活発に発信する。