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今後の検討に向けた論点の整理


 当会議では1月25日に第1回会合を開いて以来、2回の識者ヒアリングを含め、これまで10回の審議を重ねてきた。これまでの審議をもとに、今後の検討に向けた論点の整理を行えば、以下のとおりである。


平成17年7月26日(火)
皇室典範に関する有識者会議




基本的な用語の説明


〔皇 統〕
「皇統」とは歴代の天皇からつながる血統のこと。
 
〔皇 族〕
「皇族」とは、天皇の一定範囲の親族で、世襲による皇位継承を維持するため 制度上一般の国民とは異なる地位にある者のこと。
皇族となるのは、@天皇・皇族を父として出生した場合と、A皇族でない女子   が天皇・皇族と婚姻する場合に限定されている。
 
〔皇籍離脱〕
皇族が、自らの意思や天皇・皇族以外の男子と婚姻したことにより皇族の身分を   離れること。これにより、皇統に属する者であっても、皇族ではなくなる。
 
〔男系・女系〕
ここでは、天皇と男性のみで血統がつながる(−の部分)子孫を男系子孫という。
ここでは、これ以外のつながりの場合(=の部分)を女系という。
男系女系を問わず女子の子孫は女系となる。


【男系・女系の例】

【男系・女系の例】




T.問題の所在
 象徴天皇の制度をとる我が国にとって、安定的な皇位の継承は、国家の基本に関わる事項である。
 現行の皇室典範を前提にすると、現在の皇室の構成では、早晩、皇位継承資格者が不在となるおそれがあり、将来にわたって安定的な皇位の継承を可能にするための皇位継承制度の在り方を早急に検討することが必要である〔参考1〕。
 このような問題意識に基づき、当会議では、現行の日本国憲法を前提に、皇位継承制度とこれに関連する事項を検討することとする。
 
U.基本的な視点
 日本国憲法においては、天皇は日本国及び日本国民統合の象徴であること、その地位は主権の存する国民の総意に基づくこと、皇位は世襲のものであることが規定されている〔参考2〕。このような憲法の規定から、皇位継承制度には以下のような3つの条件が求められると考えられるため、今後の検討に当たっては、これらを基本的な視点とする。
 1) 国民の理解と支持を得られるものであること
 憲法においては、天皇の象徴としての地位は、国民の総意に基づくものとされている。皇位継承制度は、天皇に関する最も基本的な制度の一つであり、我が国の歴史や制度に対する深い理解に基づく国民の支持が得られるものであることが必要である。
 その際、国民の間の多様な意見を勘案しながら、どのような制度が、将来にわたって、多くの国民の安定的な支持を得られるか、という視点で検討する必要がある。
 2) 伝統を踏まえたものであること
 憲法における天皇の位置付けの背景には、歴史的・伝統的存在としての天皇があると考えられる。したがって、皇位継承制度も、このような天皇の位置付けにふさわしいものであることが求められる。
 伝統の内容は様々であり、皇位継承についても古来の様々な伝統が認められるほか、戦後の象徴天皇の制度の中で形成されてきた皇室の伝統もある。さらに、例外の有無、規範性の強弱など、伝統の性格も多様であると考えられる。
 また、伝統とは、必ずしも不変のものではなく、各時代において選択されたものが伝統として残り、またそのような選択の積み重ねにより新たな伝統が生まれるという面がある。
 このため、現在の状況に照らして、皇位継承制度に関する様々な伝統の中で、何が重要か、何を次の時代に引き継ぐのか、という視点で検討を行うことが必要である。
 3) 制度として安定したものであること
 象徴としての天皇の地位の継承は、国家の基本に関わる事項であり、制度としての安定性が強く求められる。
 安定性の内容としては、
必要かつ十分な皇位継承資格者が存在すること
象徴としての役割を果たすための活動に支障がないこと〔参考3・4〕
皇位継承者が一義的に決まり、裁量的な判断や恣意の入る余地がないものであること
などがあり、これらを総合的に考慮する必要がある。
 
V.主要な論点
 今後、以下のような論点について、ヒアリングなどで示された考え方も参考にしながら、U.で述べた基本的な視点に立って検討を行う。
 
1.皇位継承資格(皇位継承資格者の存在を確保する方策をどのように考えるか)
《歴史と現行制度》

 明治22年の旧皇室典範(以下「明治典範」という。)の制定までは、皇位継承についての明文の規定はなかったが、皇位は、すべて皇統に属する男系の者で皇族の身分を有するものにより継承されてきた。その際、10代8方の女性天皇(男系女子)が存在し、また、半数近くは非嫡系による継承であった。〔参考5〜7〕

 明治典範において、皇室制度の安定化を図るため、皇位継承について初めて明文化されたが、その際、皇位継承資格が男系男子(非嫡出系を含む。)に限定された。さらに昭和22年に制定された現行の皇室典範(以下「現行典範」という。)で、嫡出であるという要件が加えられた。

 この結果、現行制度は、歴史上、皇位継承の仕方が最も狭まったものとなった。〔参考8〕

 現行典範では、皇位継承資格者の要件として、皇統に属する嫡出の男系男子の皇族であることを定めている。この制度の趣旨は以下のとおりである。
 1) 皇統に属すること
 歴代天皇の血統に属することを求めるものであり、世襲制をとる以上当然の要請である。
 2) 嫡出であること
 明治典範では非嫡出子も皇位継承資格を有することとされていたが、戦後、現行典範制定時に、社会倫理等の観点から、嫡出に限定されたものである。
 3) 男系男子であること
 明治典範、現行典範それぞれの制定時に、女性天皇を認めるべきとする議論もあったが、歴史上、皇位は一貫して男系で継承されてきたこと、その時点で男系男子の皇位継承資格者が十分に存在していたことなどから、明治典範、次いで現行典範においても、男系男子という要件が規定された。〔参考9〕
 4) 皇族の身分を有すること
 皇族制度は世襲による皇位継承を維持するための仕組みであり、その趣旨から当然の要請である。


 皇位継承資格者の存在を確保するための方策を考えるに当たっては、現在の皇位継承資格者の要件を維持するか、見直すかの検討が必要であるが、上記の要件のうち、1)「皇統に属すること」及び4)「皇族の身分を有すること」は、制度の趣旨から当然の要請であり、また、2)「嫡出であること」は、国民の意識等から今後とも維持することが適当であるため、3)「男系男子であること」を今後どう考えるかが論点となる。
(1)この点に関して、これまでのヒアリングなどの中で、「男系男子であること」という要件を維持しようとする立場からは、主として次のような論拠により、現在は皇族でない一般国民の中から、昭和22年に皇族の身分を離れた旧皇族〔参考10〕やその子孫のうちの男系男子を対象として、現在の皇族との養子縁組や婚姻、又は単純な復帰・編入といった方法により、皇族とする方策が主張されている。
 皇位は、歴史上、一貫して男系で継承されており、今後もできる限りこの伝統を維持すべきである。
 旧皇族は、現行典範に基づき皇族の身分を有していたもので、皇統に属することが明確である。現実に男系男子の皇位継承者がいなくなるおそれがある以上、旧皇族やその子孫を皇族とする方策を探るほかない。
 他方、旧皇族やその子孫を皇族とすることについては、ヒアリングなどで次のような指摘がなされている。
 旧皇族は、60年近く一般国民として過ごしており、また、今上天皇との共通の祖先は約600年前にさかのぼる遠い血筋の方々である。このような旧皇族やその子孫を皇族とすることについて、国民の理解を得るのは難しいのではないか。
 これまでの男系継承の維持の上で、非嫡出子による継承が大きな役割を果たしてきたことを考えれば、一時的に男系男子の皇位継承資格者が確保されたとしても、非嫡出子による継承がない限り、男系男子の継承はいずれ難しくなるのではないか。
 皇族となるかどうかについては、当事者の意思を尊重することが必要であるため、実際に皇位継承資格者が確保されるか、またそれがどのくらいの数になるかは、個人の意思に依存することとなり、解決策としては不安定ではないか。また、運用次第では、皇族になることを事実上強制することになるおそれもあるのではないか。
 いったん皇族の身分を離れた者が再び皇族となったり、もともと皇族でなかった者が皇族となったりすることは歴史的にも異例で、現行制度でも、皇族以外の男子が新たに皇族となることはないと決められている。このような事実を考えると、旧皇族やその子孫を皇族とすることは、伝統に反し、また、皇族と一般国民との区別を曖昧にするものではないか。〔参考11〕
(2)男系男子を維持するために旧皇族やその子孫を皇族とすべきという主張に対し、現在の皇室の構成を前提に皇位継承資格者の拡大を図ろうとする立場からは、ヒアリングなどの中で、主として次のような論拠により、「男系男子であること」という要件を見直し、男系の皇族女子や女系の皇族も皇位継承資格を有することとする方策が主張されている。
 皇位継承制度の根本は、皇統に属する皇族による皇位の継承であり、女系も皇統に含まれる。
 天皇が象徴としての役割を果たす上で、男女は問題ではなく、男系男子にこだわる合理的な理由はない。国民の意識の上でも、男系男子でなければならないという考え方は薄れている。
 天皇の近親である現在の皇族が皇位を継承することが世襲の在り方として自然であり、歴史的にもそれが支配的である。また、近代以降、特に戦後の日本国憲法下で今日まで皇位を継承されてきた現在の皇室の中で皇位の継承が行われることが、国民にとっても自然である。
 他方、女性天皇・女系天皇については、これまでのヒアリングなどで次のような指摘がなされている。
 女系天皇は、皇位の男系継承の伝統に反し、天皇の正統性に疑念が生じるのではないか。
 国民統合力の源泉は男系男子の継承であり、女性天皇・女系天皇では統合力を期待できないのではないか。
 歴史上の女性天皇は、極めて例外的な存在で、皇位継承の上では中継ぎであり、先例とはならないのではないか。
(3)ヒアリングなどで示された以上のような考え方の違いは、結局、象徴天皇の制度の下での皇位継承について、男系男子の継承を維持するために、天皇との血縁が遠くても、また、現時点では皇族でない者であっても、男系男子の子孫が皇位を継承すべきとするか、現在の皇族の範囲を前提に、天皇の近親の皇族が皇位を継承することが自然であるとするか、などによるものと考えられる。
 
2.皇位継承順位(皇位継承資格の考え方に応じて、皇位継承順位をどのように考えるか)
《歴史と現行制度》

 皇位継承順位については、明治典範制定までは明文の規定はなく、時代時代の社会情勢、価値観等に応じて様々な形がとられてきた。皇位継承を巡っては、歴史上、種々紛争も生じているが、皇統に属していることを不可欠の条件とした上で、母親の血筋、先例等によって、その即位の理由が説明されてきた。

 明治典範において、初めて、明文の皇位継承順位が定められ、基本的にはこれを踏襲した現行典範の制度に至っている。

 現行制度は、皇位継承資格を男系男子皇族に限定した上で、継承順位としては、まず天皇の子など直系子孫を優先し、天皇の子孫の中では年齢順に、長男とその子孫、次男とその子孫…の順に優先し、次いで近親を優先するものであ る。なお、明治典範との違いは、現行典範が、明治典範で認められていた非嫡出系継承を否定したことに伴うもののみである。〔参考12〕

 この順位の考え方は、天皇の子など直系子孫に皇位が継承されることが歴史的にも多数を占めており、国民に受け入れられやすいこと、その中では年齢順を基準とすることが分かりやすく、世襲の在り方として自然であることなどを理由とするものと考えられる。

 皇位継承順位は、皇位継承資格の考え方に応じて検討することが必要である。
(1)皇位継承資格を男系男子に限定する場合には、基本的には、現行の皇位継承順位に係る制度を維持することとなるものと考えられる。ただし、旧皇族やその子孫を皇族とするに当たって、現在の皇族との養子縁組や婚姻という手法をとる場合に、継承順位設定の基準として、実際の血縁によるか、養子縁組や婚姻後の法律関係によるかという点については、これまでのヒアリングなどでは明確な考え方は示されていない。
(2)皇位継承資格を男系の皇族女子や女系の皇族に拡大する場合には、次のような方法があり得る(それぞれの方法については、参考資料「皇位継承順位の説明図」参照)。
 1) 長子優先の考え方
 男女を区別せずに、現行の継承順位の考え方を適用して、天皇の直系子孫をまず優先し、天皇の子である兄弟姉妹の間では、男女を問わず長子を優先する考え方
 2) 兄弟姉妹間で男子優先の考え方
 1)を基本としつつも、現在、男系男子のみが皇位継承資格を有することから、まず、直系子孫を優先し、天皇の子である兄弟姉妹の間では男子を女子に優先する考え方
 3) 男子優先の考え方
 現在、男系男子のみが皇位継承資格を有することから、直系子孫を優先することよりも男子を優先することを重視し、まず、皇族の中で男子を優先した上で、その後に女子を位置付けることとし、男子、女子の中では、直系、長系、近親を優先する考え方(なお、男子にかえて、男系男子をそれ以外の皇族に優先する考え方もあり得る。)
 これらの方法については、直系優先とするか男子優先とするか、また、仮に直系優先とする場合には、男子を優先するか男女を区別しないこととするかなどを整理しつつ検討する必要があるが、これまでのヒアリングなどで、その際留意すべき点として、以下のような事項が指摘されている。
 制度自体により一義的に皇位継承順位が決まり、裁量的な判断や恣意が入る余地がないものであることが必要ではないか。
 国民の期待感、ご養育の方針等との関係で、皇位継承順位はなるべく早い時期に確定することが望ましいのではないか。
 同世代間の皇位継承などは頻繁な皇位継承につながりやすい。その場合、在位期間が短期化し、国民の期待感も定まりにくくなるため、頻繁な皇位継承がなるべく生じない制度であることが望ましいのではないか。
 継承順位は、簡明で分かりやすいものであることが望ましいのではないか。皇位継承に伴って従前の継承順位が逆転したり、子の継承順位が親よりも上位になったりすることは制度として分かりにくいのではないか。
 これまで主に男子が皇位に即いてきたことなど皇位継承の歴史との関係やご活動に伴う負担をどのように考えるか、十分な検討が必要ではないか。
 
3.皇族の範囲(皇位継承資格や皇位継承順位の考え方に応じて、皇族の範囲をどのように考えるか)
《歴史と現行制度》

 7世紀末〜8世紀初に成立した律令においては、天皇の4世の子孫までが皇族とされていたが、実際の運用においては、奈良時代後半以降、次第に、天皇の子であっても皇族でなくなったり、また、世数にかかわらず皇族となったりするなど、弾力的な取扱いがなされるようになった。

 明治典範においては、天皇・皇族の子孫は世数を問わず皇族となる永世皇族制が採用された。その後、明治40年の明治典範増補により、皇族の規模を調整する必要性を背景に皇籍離脱制度が設けられるなどの制度の整備が行われ、現行典範に至っている。〔参考13〕

 現行典範の皇族の範囲の考え方の概要は以下のとおりである。
 天皇・皇族の嫡出子及び嫡男系嫡出の子孫並びに天皇・皇族男子の配偶者を皇族とする。
 天皇・皇族の嫡男系嫡出の子孫は、世数を問わず皇族とする(永世皇族制)。
 2世までの皇族男子を親王、皇族女子を内親王とし、3世以下の皇族男子を王、皇族女子を女王とする。
 内親王・女王は、天皇・皇族以外の者との婚姻により、皇籍を離脱する。
 皇太子・皇太孫以外の親王はやむを得ない特別の事情により、また、内親王・王・女王は、その意思に基づき、又はやむを得ない特別の事情により、皇籍を離脱する。
 天皇・皇族は養子をすることができない。
 皇族以外の者は、女子が天皇・皇族男子と婚姻する場合を除き、皇族とならない。

 皇族の規模を適正に保つための仕組みについては、現行制度では、その範囲を法制度上限定することは困難という判断により、永世皇族制をとりつつ、皇籍離脱制度の運用により、皇族の規模を調整するという考え方をとっている。

 また、皇統が乱れることや国民と皇族との区別が曖昧になり混乱が生じることなどを避けるという明治典範の考え方を引き継いで、皇族になる場合を、天皇・皇族からの出生及び天皇・皇族男子との婚姻に限り、養子の禁止等を定めている。〔参考14〕

 皇族の範囲については、皇位継承資格、皇位継承順位の検討結果に応じて、その具体的内容や皇族の規模を適正に保つための仕組みをどのようなものにするかが主な論点となる。
 
4.その他関連制度
 以上の各項目の検討結果に応じて、必要な場合には、皇室経済制度、皇族配偶者に関連する制度などについて、検討を行うこととする。