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皇室典範に関する有識者会議
報 告 書


平成17年11月24日




目   次


     はじめに

     T.問題の所在

     U.基本的な視点

        1)国民の理解と支持を得られるものであること
        2)伝統を踏まえたものであること
        3)制度として安定したものであること

     V.安定的で望ましい皇位継承のための方策

        1.皇位継承資格
         (1)男系継承の意義等
         (2)男系継承維持の条件と社会の変化
           (補論)旧皇族の皇籍復帰等の方策
         (3)女子や女系の皇族への皇位継承資格の拡大の検討
         (4)今後の望ましい皇位継承資格の在り方
        2.皇位継承順位
         (1)皇位継承順位の設定方法
         (2)直系優先の原則と男子優先の原則
         (3)「長子優先」と「兄弟姉妹間男子優先」
        3.皇族の範囲
         (1)皇族の範囲の考え方
         (2)永世皇族制と世数限定制
         (3)皇籍離脱制度
        4.その他関連制度
         (1)女性天皇、内親王、女王の配偶者に関する制度
         (2)摂政就任資格・順序
         (3)皇室経済制度

     結び

     参考資料

     「皇室典範に関する有識者会議」について



基本的な用語の説明

〔皇 統〕
「皇統」とは歴代の天皇からつながる血統のこと。
 
〔皇 族〕
「皇族」とは、天皇の一定範囲の親族で、世襲による皇位継承を維持するため制度上一般の国民とは異なる地位にある者のこと。
皇族となるのは、1)天皇・皇族を父として出生した場合と、2)皇族でない女子が天皇・皇族と婚姻する場合に限定されている。
 
〔皇籍離脱〕
皇族が、自らの意思や天皇・皇族以外の男子と婚姻したことにより皇族の身分を離れること。これにより、皇統に属する者であっても、皇族ではなくなる。
 
〔男系・女系〕
ここでは、天皇と男性のみで血統がつながる(−の部分)子孫を男系子孫という。
ここでは、これ以外のつながりの場合(=の部分)を女系という。
男系女系を問わず女子の子孫は女系となる。


 「皇室典範に関する有識者会議」は、内閣総理大臣から、将来にわたり皇位継承を安定的に維持するための皇位継承制度とこれに関連する制度の在り方について検討を行うよう要請を受け、本年1月以来、17回の会合を開くとともに、随時、非公式会合を行い、議論を重ねた。

 天皇の制度は、古代以来の長い歴史を有するものであり、その見方も個人の歴史観や国家観により一様ではない。我々は、与えられた課題の重みを深く受け止め、真摯に問題を分析し、様々な観点から論点を整理するとともに、それらを国民の前に明らかにし、世論の動向を見ながら、慎重に検討を進めるよう努めた。

 具体的には、現行憲法を前提として検討することとし、まず、現行の皇位継承に関する制度の趣旨やその背景となっている歴史上の事実について、十分に認識を深めることに力を注いだ。

 5月、6月には、その後の議論の参考とするために、皇室制度、憲法、宗教、歴史など様々な分野の専門的な知識を有する8名の識者から意見を伺った。また、7月には、広く国民に理解と関心を深めていただくための一助となるよう、検討の基本的な視点を明らかにしつつ「今後の検討に向けた論点の整理」を取りまとめ、公表した。それ以降、これに沿って、中長期的視点に立ちつつ、現在の我が国の社会において広く受け入れられる結論を探るべく、議論を深めてきた。

 この報告書は、こうした経過を経て、この度得られた結論を示すものである。



[*各回の会議資料・議事要旨、7月に取りまとめた「論点の整理」及び本報告書は、首相官邸ホームページに掲載。]



 象徴天皇の制度をとる我が国にとって、安定的な皇位の継承は、国家の基本に関わる事項である。

 現行の皇室典範を前提にすると、現在の皇室の構成では、早晩、皇位継承資格者が不在となるおそれがあり、日本国憲法(以下「憲法」という。)が定める象徴天皇制度の維持や長い歴史を持つ皇位の継承が不確実になりかねない状況となっている。〔参考1〕

 したがって、将来にわたって安定的な皇位の継承を可能にするための制度を早急に構築することは、現在の我が国にとって避けて通ることのできない重要な課題である。



 憲法においては、我が国の歴史・伝統を背景としつつ、国民の総意により、天皇が、日本国及び日本国民の統合を象徴する存在として位置付けられており、また、その地位は血統に基づいて継承されるべきものであるとされている。〔参考2〕
 象徴天皇の意義は、天皇の存在そのものや憲法に定められた国事行為により明らかにされており、また、戦没者の慰霊、被災地のお見舞い、福祉施設のご訪問、国際親善のためのご活動、伝統的・文化的なご活動などを通じて、天皇と国民との絆はより強固なものとなっている。このような制度の意義や様々なご活動があいまって、象徴天皇の制度は、多くの国民の支持を得るものとして今日に至っている。〔参考3、4、5〕

 象徴天皇の制度は、我が国の歴史と深い関わりを持ち、国民の支持の上に成立するものであることから、これにふさわしい皇位継承制度について、以下の3点を基本的な視点として、総合的な考察を行うこととする。

1) 国民の理解と支持を得られるものであること
 皇位継承制度は、天皇に関する最も基本的な制度の一つであり、我が国の歴史や制度に対する深い理解に基づく国民の広範な支持が得られるものでなければならない。
 皇位継承制度の在り方については、国民の間に多様な意見が存在するが、これは、天皇の制度や歴史・国家に関する国民の間の様々な考え方を反映したものであり、それぞれの立場は十分に尊重されなければならない。このため、このような多様性を前提としつつ、社会の変化の中で、将来にわたって大多数の国民の安定的な支持が得られると思われる制度の在り方を探る必要がある。
2) 伝統を踏まえたものであること
 憲法における天皇の位置付けの背景には、歴史的・伝統的存在としての天皇があると考えられるため、皇位継承制度も、このような天皇の位置付けにふさわしいものであることが求められる。
 伝統の内容は様々であり、皇位継承についても古来の様々な伝統が認められるほか、戦後の象徴天皇の制度の中で形成されてきた皇室の伝統もある。さらに、例外の有無、規範性の強弱など、伝統の性格も多様であると考えられる。
 また、伝統とは、必ずしも不変のものではなく、各時代において選択されたものが伝統として残り、またそのような選択の積み重ねにより新たな伝統が生まれるという面がある。
 このため、社会の変化や現在の状況に照らして、皇位継承制度に関する様々な伝統の中で、何をどのような形で次の時代に引き継ぐのか、という視点が重要である。
3) 制度として安定したものであること
 象徴としての天皇の地位の継承は、国家の基本に関わる事項であり、制度としての安定性が強く求められる。
 安定性の内容としては、
必要かつ十分な皇位継承資格者が存在すること
象徴としての役割を果たすための活動に支障がないこと
皇位継承者が一義的に決まり、裁量的な判断や恣意の入る余地がないものであること
 などがあり、これらを総合的に考慮する必要がある。



1. 皇位継承資格

《歴史と現行制度》

 明治22年の旧皇室典範(以下「明治典範」という。)の制定までは、皇位継承についての明文の規定はなかったが、皇位は、それぞれの時代の価値観や社会情勢を背景にしつつ、すべて皇統に属する男系の者で皇族の身分を有するものにより継承されてきた。その際、半数近くは非嫡系による継承であった。また、10代8方の女性天皇(男系女子)が存在するが、その性格や位置付けについては、必ずしも一括りにすることはできない。〔参考6、7、8〕

 明治典範において、皇位継承をめぐる争いを回避するなど皇室制度の安定化を図るため、皇位継承について初めて明文化されたが、その際、皇位継承資格が男系男子(非嫡系を含む。)に限定された。

 さらに昭和22年に制定された現行の皇室典範(以下「現行典範」という。)で、嫡出であるという要件が加えられた。

 この結果、現行制度は、歴史上、皇位継承の仕方が最も狭まったものとなった。〔参考9〕

 現行典範では、皇位継承資格者の要件として、皇統に属する嫡出の男系男子の皇族であることを定めている。この制度の趣旨は以下のとおりである。
1) 皇統に属すること
 歴代天皇の血統に属することを求めるものであり、世襲制をとる以上当然の要請である。
2) 嫡出であること
 明治典範では非嫡出子も皇位継承資格を有することとされていたが、戦後、現行典範制定時に、社会倫理等の観点から、嫡出に限定されたものである。〔参考10〕
3) 男系男子であること
 歴史上、皇位は一貫して男系で継承されてきたことなどから、明治典範、次いで現行典範において、この要件が規定された。〔参考11、12〕
4) 皇族の身分を有すること
 皇族制度は世襲による皇位継承を維持するための仕組みであり、その趣旨から当然の要請である。

 上記の皇位継承資格者の要件のうち、1)「皇統に属すること」及び4)「皇族の身分を有すること」は、制度の趣旨から当然の要請であり、また、2)「嫡出であること」は、国民の意識等から今後とも維持することが適当であるため、皇位継承資格者の安定的な存在を確保するための方策を考えるに当たっては、3)の男系男子という要件が焦点となる。


(1)男系継承の意義等
 皇位は、過去一貫して男系により継承されてきたところであり、明治以降はこれが制度として明確にされ、今日に至っている。
 
ア.皇室典範制定時における男系男子限定の論拠
明治典範、現行典範の制定時には、男系継承を制度化するに当たり、それぞれの時代背景の中で、様々な論拠が挙げられている。
具体的には、明治典範制定時には、
男性尊重の国民感情、社会慣習がある中で女性天皇に配偶者がある場合、女性天皇の尊厳を傷つける。
我が国の相続形態は男子を優先し、長子が女子で次子以降に男子がある場合は男子が相続することになっている。
歴史上の女性天皇は臨時・中継ぎのいわば摂位であり、皇統は男統に存するというのが国民の考え方である。また、その在位中、配偶者がなかったが、今日、独身を強いる制度は、道理や国民感情に合わない。
女性天皇の皇子は女性天皇の夫の姓を継ぐものであるから皇統が他に移り、伝統に反する。
配偶者が女性天皇を通し政治に干渉するおそれがある。
女性が参政権を有しないにもかかわらず、政権の最高の地位に女性が就くことは矛盾である。
などの点が指摘され、また、現行典範制定時には、
過去の事例を見る限り男系により皇位継承が行われてきており、それが国民の意識に沿うと考えられる。
歴史上の女性天皇は臨時・中継ぎの存在であったと考えられる。
といったことがその論拠とされた。〔参考11、12〕
 
イ.男系継承の意義についての考え方
男系継承の意義等については、今日においても、
 これが我が国の皇位継承における確立された原理であり、それ以上に実質的な意義を求めること自体が無意味であるとする見解
 女系になった場合には皇統が配偶者の家系に移ったと観念されるため、これを避けてきたものであるとする見解〔参考13〕
 律令や儒教など中国の影響により形成されたものであり、必ずしも我が国社会固有の観念とは合致せず、また現実に、女系の血統が皇位継承において相応の役割を果たしてきた事実もあるとする見解
 武力等を背景とした伝統的な男性優位の観念の結果によるものであり、男系継承自体に固有の原理が存在するわけではないとする見解
など、種々の議論があるが、これらは個人の歴史観や国家観に関わるものであり、それぞれの見解の当否を判断することから皇位継承資格の検討に取り組むことは適当ではない。したがって、ここでは、これまで男系継承が一貫してきたという事実を認識した上で、過去どのような条件の下に男系継承が維持されてきたのか、その条件が今後とも維持され得るのか、を考察することとする。
 
(2)男系継承維持の条件と社会の変化
 男系による継承は、基本的には、歴代の天皇・皇族男子から必ず男子が誕生することを前提にして初めて成り立つものである。
 過去において、長期間これが維持されてきた背景としては、まず、非嫡系による皇位継承が広く認められていたことが挙げられる。これが男系継承の上で大きな役割を果たしてきたことは、歴代天皇の半数近くが非嫡系であったことにも示されている。また、若年での結婚が一般的で、皇室においても傾向としては出生数が多かったことも重要な条件の一つと考えられる。
 このような条件は、明治典範時代までは維持されており、制度上、非嫡出子も皇位継承資格を有することとされていたほか、戦前の皇室においては、社会全般と同様、一般に出生数も多かったことが認められる。
 しかしながら、昭和22年に現行典範が制定されたとき、まず、社会倫理等の観点から、皇位継承資格を有するのは嫡出子に限られ、制約の厳しい制度となった。実際に、現行典範の制定の際の帝国議会では、皇籍離脱の範囲を拡大するとともに、非嫡出子を認めないこととすれば、皇統の維持に不安が生じかねないため、女性天皇を可能とすべきではないかとの指摘もあった。
 近年、我が国社会では急速に少子化が進んでおり、現行典範が制定された昭和20年代前半には4を超えていた合計特殊出生率(一人の女性が、一生の間に産む子供の数)が、平成16年には1.29まで低下している。皇室における出生動向については、必ずしも、社会の動向がそのまま当てはまるわけではない。しかし、社会の少子化の大きな要因の一つとされている晩婚化は、女性の高学歴化、就業率の上昇や結婚観の変化等を背景とするものであり、一般社会から配偶者を迎えるとするならば、社会の出生動向は皇室とも無関係ではあり得ない〔参考14〕。戦前、皇太子当時の大正天皇が結婚された時のご年齢が20歳、その時点で妃殿下が15歳、昭和天皇のご成婚時(同じく皇太子当時)には、それぞれ22歳と20歳であったことを考えると、状況の変化は明らかである。現に、明治天皇以降の天皇及び天皇直系の皇族男子のうち、大正時代までにお生まれになった方については、お子様(成人に達した方に限る。)の数は非嫡出子を含め平均3.3方であるのに対し、昭和に入ってお生まれになった方については、お子様の数は現時点で平均1.6方となっている。
 男子・女子の出生比率を半分とすると、平均的には、一組の夫婦からの出生数が2人を下回れば、男系男子の数は世代を追うごとに減少し続けることとなる(注)。実際には、平均的な姿以上に早く男系男子が不在となる可能性もあれば、逆に男子がより多く誕生する可能性もあるが、このような偶然性に左右される制度は、安定的なものということはできない。
 このような状況を直視するならば、今後、男系男子の皇位継承資格者が各世代において存在し、皇位が安定的に継承されていくことは極めて困難になっていると判断せざるを得ない。これは、歴史的に男系継承を支えてきた条件が、国民の倫理意識や出産をめぐる社会動向の変化などにより失われてきていることを示すものであり、こうした社会の変化を見据えて、皇位継承の在り方はいかにあるべきかを考察する必要がある。
 (注)試みに、仮に現世代に5人の男系男子が存在するとして、現在の社会の平均的な出生率(平成16年合計特殊出生率1.29)を前提に、将来世代の男系男子の数を確率的に計算してみると、男子・女子の出生の確率をそれぞれ2分の1とすれば、子の世代では3.23人、孫の世代では2.08人、曾孫の世代では1.34人と、急速な減少が見込まれる(出生率を1.5としても、曾孫の世代では2.11人となる。)。〔参考15〕
 
(補論)旧皇族の皇籍復帰等の方策〔参考16〕
 男系男子という要件を維持しようとする観点から、そのための当面の方法として、昭和22年に皇籍を離れたいわゆる旧皇族やその男系男子子孫を皇族とする方策を主張する見解があるが、これについては、上に述べた、男系男子による安定的な皇位継承自体が困難になっているという問題に加え、以下のように、国民の理解と支持、安定性、伝統のいずれの視点から見ても問題点があり、採用することは極めて困難である。
旧皇族は、既に60年近く一般国民として過ごしており、また、今上天皇との共通の祖先は約600年前の室町時代までさかのぼる遠い血筋の方々であることを考えると、これらの方々を広く国民が皇族として受け入れることができるか懸念される。皇族として親しまれていることが過去のどの時代よりも重要な意味を持つ象徴天皇の制度の下では、このような方策につき国民の理解と支持を得ることは難しいと考えられる。
皇籍への復帰・編入を行う場合、当事者の意思を尊重する必要があるため、この方策によって実際に皇位継承資格者の存在が確保されるのか、また、確保されるとしてそれが何人程度になるのか、といった問題は、最終的には個々の当事者の意思に依存することとなり、不安定さを内包するものである。このことは、見方を変えれば、制度の運用如何によっては、皇族となることを当事者に事実上強制したり、当事者以外の第三者が影響を及ぼしたりすることになりかねないことを意味するものである。
いったん皇族の身分を離れた者が再度皇族となったり、もともと皇族でなかった者が皇族になったりすることは、これまでの歴史の中で極めて異例なことであり、さらにそのような者が皇位に即いたのは平安時代の二例しかない(この二例は、短期間の皇籍離脱であり、また、天皇の近親者(皇子)であった点などで、いわゆる旧皇族の事例とは異なる。)。これは、皇族と国民の身分を厳格に峻別することにより、皇族の身分等をめぐる各種の混乱が生じることを避けるという実質的な意味を持つ伝統であり、この点には現在でも十分な配慮が必要である。〔参考17〕
 
(3)女子や女系の皇族への皇位継承資格の拡大の検討
 憲法において規定されている皇位の世襲の原則は、天皇の血統に属する者が皇位を継承することを定めたもので、男子や男系であることまでを求めるものではなく、女子や女系の皇族が皇位を継承することは憲法の上では可能であると解されている。〔参考18〕
 皇位継承制度の在り方を考察するに際し、世襲による継承を安定的に維持するという基本的な目的に立ち返れば、皇位継承資格を女子や女系の皇族に拡大することが考えられる。これは、内親王・女王やその子孫も皇位継承資格を有することとするものである。
 女性天皇に関しては、明治典範や現行典範の制定時にもこれを可能にすべきであるという議論があった〔参考11、12〕。現行典範制定の際の当時の帝国議会においては、歴史上も女性天皇の例があること、親等の遠い皇族男子より近親の女性を優先する方が自然の感情に合致すること、皇統の安泰のために必要であることなどの理由から、女性天皇を可能にすべきではないかとの質疑が行われた。その時点では、男系男子の皇族が相当数存在しており、皇位継承に不安がなかったことなどもあり、男系継承の意義や女性天皇を可能とした場合の皇位継承順位などの在り方に関して、なお研究を行った上で結論を得るべきものとされた。男系男子の皇位継承資格者の不在が懸念される状況となっている現在、女性天皇や女系の天皇について、まさに真剣な検討を行うことが求められていると言わなければならない。
 以下では、このような認識に立って、先に述べた3つの基本的視点に照らして、女子や女系の皇族に皇位継承資格を拡大することにつき、考察を行う。
 
ア.安定性
 まず、皇位継承資格者の存在を安定的に確保するという観点から見ると、女子や女系の皇族に皇位継承資格を拡大した場合には、男女を問わず天皇・皇族の子孫が継承資格を有することとなるため、男系男子限定の制度に比べれば、格段に安定的な制度となる(注)。
 また、制度の安定性という観点からは、象徴としての天皇の活動に支障がないことも求められるが、国事行為を始めとする象徴としての活動に、女子や女系の皇族では行い得ないものがあるとは考えられない。女性の妊娠・出産等は、国事行為の臨時代行制度などにより対応可能であり、象徴としての活動の支障にはならない。〔参考19〕
 なお、皇室において継承されてきた宮中祭祀についても、歴史的には女性天皇もこれを行ったとの記録が存在する。〔参考20〕
 
 (注)(2)(注)と同様の条件で試算をすれば、5人の現世代に対して、男系・女系や男子・女子を問わない場合の子孫の数は、子の世代6.45人、孫の世代8.32人、曾孫の世代10.73人となる。〔参考15〕
 
国民の理解と支持
 国民が、象徴としての天皇に期待するものは、自然な血統に加え、皇位とともに伝えられてきた古来の伝統や、現行憲法下の60年近くの間に築かれてきた象徴天皇としての在り方を含め、皇室の文化や皇族としての心構えが確実に受け継がれていくことであろう。このような観点から皇位継承資格者の在り方を考えた場合、今日、重要な意味を持つのは、男女の別や男系・女系の別ではなく、むしろ、皇族として生まれたことや皇室の中で成長されたことであると考えられる。
 皇位が男系で継承されてきた歴史等を背景として、天皇は当然に男性であるとの観念が国民の間に存在してきたことは事実であろう。それは、男子による家督の継承を重んじた明治の民法の制度や一般社会における家の観念、社会における男性の優位の観念とも結び付いていたと思われる。しかし、他面、現行典範が制定された昭和22年以降、我が国では、家族観や社会における男女の役割分担などをめぐって、国民の意識や制度に様々な変化が生じてきていることも考慮する必要がある。
 例えば、戦後の民法の改正により、婚姻の際に女性が男性の家に入る制度や長男が単独で家督を相続する制度が廃止され、現実にも両性の合意による婚姻という観念や相続において長男を特別な存在とはみなさない考え方が広く浸透するなど、男性中心の家族観は大きく変わってきた。家の観念そのものも、男性の血筋で代々継承されるべきものというよりも、生活を共にする家族の集まりととらえる方向へと変化してきているものと見られる。〔参考21〕
 また、女性の社会進出も進み、性別による固定的な役割分担意識が弱まる傾向にあることは各種の世論調査等の示すとおりである。〔参考21〕
 長い歴史や伝統を背景とする天皇の制度と、一般社会における家族観や男女の役割分担についての意識とを直ちに結び付けることはできない。しかし、最近の各種世論調査で、多数の国民が女性天皇を支持する結果となっていることの背景には、このような国民の意識や制度の変化も存在すると考えられる。天皇の制度において、固有の伝統や慣習が重要な意義を有することは当然であるが、他方、象徴天皇の制度にあっては、国民の価値意識に沿った制度であることが、重要な条件となることも忘れてはならない。〔参考22〕
 以上のような事情を考慮すると、国民の間では、女子や女系の皇族も皇位継承資格を有することとする方向を積極的に受け入れ、支持する素地が形成されているものと考えられる。
 
ウ.伝統
 我が国では、これまで、一貫して男系により皇位が継承されてきた伝統があり、女子が皇位に即き、更に女系の天皇が誕生する場合、こうした伝統的な皇位継承の在り方に変容をもたらすこととなる。
 皇位の継承における最も基本的な伝統が、世襲、すなわち天皇の血統に属する皇族による継承であることは、憲法において、皇位継承に関しては世襲の原則のみが明記されていることにも表れており、また、多くの国民の合意するところであると考えられる。
 男系男子の皇位継承資格者の不在が懸念され、また、歴史的に男系継承を支えてきた条件の変化により、男系継承自体が不安定化している現状を考えると、男系による継承を貫こうとすることは、最も基本的な伝統としての世襲そのものを危うくする結果をもたらすものであると考えなければならない。
 換言すれば、皇位継承資格を女子や女系の皇族に拡大することは、社会の変化に対応しながら、世襲という天皇の制度にとって最も基本的な伝統を、将来にわたって安定的に維持するという意義を有するものである。
 
(4)今後の望ましい皇位継承資格の在り方
 これまで見てきたような皇位継承制度をめぐる国民意識や社会環境の変化は、我が国社会の長期的な変化に伴うものである。女性天皇や女系の天皇を可能とすることは、社会の変化に対応しながら、多くの国民が支持する象徴天皇の制度の安定的継続を可能とする上で、大きな意義を有するものである。
 このような意義に照らし、今後における皇位継承資格については、女子や女系の皇族に拡大することが適当である。
 女性天皇や女系の天皇はその正統性に疑問が生じるという見解もあるが、現在の象徴天皇の制度においては、皇統による皇位継承が維持され、幅広い国民の積極的な支持が得られる制度である限り、正統性が揺らぐことはない。
 なお、皇位継承資格を女子に拡大した場合、皇族女子は、婚姻後も皇室にとどまり、その配偶者も皇族の身分を有することとする必要がある。女性天皇や皇族女子が配偶者を皇室に迎えることについては、性別による固有の難しさがあるとは必ずしも考えないが、初めてのことであるがゆえに、配偶者の役割や活動への配慮などを含め、適切な環境が整えられる必要がある。


2. 皇位継承順位

《歴史と現行制度》〔参考23〕

 皇位継承順位については、明治典範制定までは明文の規定はなく、時代時代の社会情勢、価値観等に応じて様々な形がとられてきたが、歴史全体の流れとしては、直系継承へと向かい、直系継承が伝統の軸となっていった。皇位継承をめぐっては、歴史上、種々紛争も生じているが、皇統に属していることを不可欠の条件とした上で、母親の血筋、先例等によって、その即位の理由が説明されてきた。

 明治典範において、初めて、明文の皇位継承順位が定められ、基本的にはこれを踏襲した現行典範の制度に至っている。

 現行制度は、皇位継承資格を男系男子皇族に限定した上で、継承順位としては、まず天皇の子など直系子孫を優先し、天皇の子孫の中では年齢順に、長男とその子孫、次男とその子孫…の順に優先し、次いで近親を優先するものである。なお、明治典範との違いは、現行典範が、明治典範で認められていた非嫡系継承を否定したことに伴うもののみである。

 この順位の考え方は、天皇の子など直系子孫に皇位が継承されることが歴史的にも多数を占めており、国民に受け入れられやすいこと、その中では年齢順を基準とすることが分かりやすく、世襲の在り方として自然であることなどを理由とするものである。


(1)皇位継承順位の設定方法 
 皇位継承資格を皇族女子や女系の皇族に拡大する場合、現行制度との連続性等も勘案すると、皇位継承順位の設定には以下のような方法が考えられる。〔参考24〕
1) 長子優先の考え方
男女を区別せずに、現行の継承順位の考え方を適用して、天皇の直系子孫をまず優先し、天皇の子である兄弟姉妹の間では、男女を問わず長子を優先する考え方
2) 兄弟姉妹間で男子優先の考え方
1)と同様に、まず天皇の直系子孫を優先した上で、伝統的に男性の天皇が圧倒的に多く、国民は天皇が男性であることになじんでいるという認識の下に、天皇の子である兄弟姉妹の間では男子を女子に優先する考え方
3) 男子優先の考え方
現在、男系男子のみが皇位継承資格を有することから、直系子孫を優先することよりも男子を優先することを重視し、まず、皇族の中で男子を優先した上で、その後に女子を位置付けることとし、男子、
女子それぞれの中では、直系、長系、近親を優先する考え方
4) 男系男子優先の考え方
3)において、「男子」に替えて、「男系男子」を優先する考え方
 
(2)直系優先の原則と男子優先の原則
 上記4つの考え方の中では、1)、2)が、天皇の直系子孫をまず優先するものであるのに対し、3)、4)は直系、傍系を問わず、まず男子又は男系男子を優先するものである。
 この点に関しては、
 皇位継承の在り方としては、過去から現在まで伝えられてきた皇位を将来につないでいくことが重要であり、この過去から将来への連続を象徴する形として、親から子に、世代から世代へと伝わる直系継承が最もふさわしい。国民の側から見ても、親から子への継承が最も自然なものと認識される。
 皇位継承者は、天皇の役割を継承する存在であり、天皇の身近で生まれ、成長された皇族であることが望ましい。
 皇位継承資格を嫡出子に限定する制度や少子化という状況の下では、直系子孫の中に男子が不在という状況は決して稀なことではなく、3)、4)の制度をとると、傍系の継承により天皇の系統が比較的頻繁に移転する結果となることが想定される。その場合、お代替わりにより従前の継承順位が変動するなど複雑な制度となり、また、皇位の安定性という意味でも好ましくない。3)の制度の場合は、母親よりもその子(男子)の方が継承順位が上位になることとなり、世襲の在り方として不自然である。〔参考25〕
 伝統的にも直系継承が多数を占めている。
 ことなどから、まず、直系を優先する制度、すなわち、1)「長子優先」又は2)「兄弟姉妹間男子優先」が望ましい。
 
(3)「長子優先」と「兄弟姉妹間男子優先」
 皇位継承順位については、国民が、将来の天皇として、幼少時から、期待をこめてそのご成長を見守ることのできるような、分かりやすく安定した制度であることが求められる。そのことは、ご養育の方針が早い段階で定まるということにもつながる。
 このような観点から、「長子優先」と「兄弟姉妹間男子優先」とを比較すると、「兄弟姉妹間男子優先」の場合、男女の出生順によっては皇位継承順位に変動が生じ得ることとなり、国民の期待やご養育の方針が定まりにくいという結果をもたらす。これは、長子たる女子(姉)の後に男子(弟)が誕生した場合、弟が姉よりも先順位となることに由来するものであり、このことは、現行制度のように皇嗣(皇位継承第1順位者)たる皇子を皇太子とすると、皇太子が交代する事態が生じ得ることを意味するものである。〔参考26〕
 しかも、兄弟姉妹間に生じ得る年齢差を考えると、このような不安定な期間が相当程度継続することがあり得ると考えなければならない。
 これに対し、「長子優先」の場合、出生順に皇位継承順位が決まることから、制度として分かりやすく、また、国民の期待やご養育の方針も早期に定まるという点で優れている。
 国民が、天皇が男性であることになじんでいる面はあるとしても、以上のような意味での安定性は、最大限に尊重されることが望ましい。
 したがって、天皇の直系子孫を優先し、天皇の子である兄弟姉妹の間では、男女を区別せずに、年齢順に皇位継承順位を設定する長子優先の制度が適当である。


3. 皇族の範囲

《歴史と現行制度》〔参考27、28、29〕

 7世紀末〜8世紀初に成立した律令においては、天皇の4世の子孫までが皇族とされていたが、実際の運用においては、奈良時代後半以降、次第に、天皇の子であっても皇族でなくなったり、また、世数にかかわらず皇族となったりするなど、弾力的な取扱いがなされるようになった。

 明治典範においては、天皇・皇族の子孫は世数を問わず皇族となる永世皇族制が採用された。その後、明治40年の明治典範増補により、皇族の規模を調整する必要性を背景に皇籍離脱制度が設けられるなどの制度の整備が行われ、現行典範に至っている。

 現行典範の皇族の範囲の考え方の概要は以下のとおりである。

天皇・皇族の嫡出子及び嫡男系嫡出の子孫並びに天皇・皇族男子の配偶者を皇族とする。
天皇・皇族の嫡男系嫡出の子孫は、世数を問わず皇族とする(永世皇族制)。
2世までの皇族男子を親王、皇族女子を内親王とし、3世以下の皇族男子を王、皇族女子を女王とする。
内親王・女王は、天皇・皇族以外の者との婚姻により、皇籍を離脱する。
皇太子・皇太孫以外の親王はやむを得ない特別の事由により、また、内親王・王・女王は、その意思に基づき、又はやむを得ない特別の事由により、皇籍を離脱する。これらの離脱に際しては、皇室会議の議によることを要する。
天皇・皇族は養子をすることができない。
皇族以外の者は、女子が天皇・皇族男子と婚姻する場合を除き、皇族とならない。

 皇族の規模を適正に保つための仕組みについては、現行制度では、その範囲を法制度上限定することは困難という判断により、永世皇族制をとりつつ、皇籍離脱制度の運用により、皇族の規模を調整するという考え方をとっている。その際、上記の「やむを得ない特別の事由」による皇籍離脱には、規模調整のための離脱が含まれると解されている。

 また、皇統が乱れることや国民と皇族との区別が曖昧になり混乱が生じることなどを避けるという明治典範の考え方を引き継いで、皇族になる場合を、天皇・皇族からの出生及び天皇・皇族男子との婚姻に限り、養子の禁止等を定めている。


(1) 皇族の範囲の考え方
 皇族制度は、世襲による皇位継承を確保するとともに、一定の場合、天皇の国事行為を代行するなど天皇の活動を支えるため、天皇の親族を皇族とし、制度上、一般の国民と異なる地位とするものである。皇族の範囲に関しては、皇位継承資格者の安定的な存在を確保することを大前提にしつつ、皇族は特別な地位にあること、財政的な措置が伴うこと、皇族の規模が過大となった場合には皇室としての一体性が損なわれるおそれがあること等の見地から、皇族の規模を適正に保つことが求められる。女子や女系の皇族に皇位継承資格を拡大した場合においても、このような要請を満たす制度とする必要がある。
 
(2) 永世皇族制と世数限定制
 現行制度では、皇族女子は天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れることとされているが、女子が皇位継承資格を有することとした場合には、婚姻後も、皇位継承資格者として、皇族の身分にとどまり、その配偶者や子孫も皇族となることとする必要がある。
 その場合、将来的に皇族の数が相当程度増加する可能性もあるため、天皇と血縁の遠い子孫から皇族の身分を離れるという考え方の下に、一定の世数を超える子孫を一律に皇族でなくする世数限定の制度をとることも考えられる。しかしながら、世数限定の制度をとった場合には、歴代の天皇や天皇の近親の皇族に、一定数の子が安定的に誕生しなければ、皇位継承資格者の存在に不安が生じることになるため、現在のような少子化傾向の中では、世数限定の制度を採用することはできない。このため、現行制度の考え方を踏襲して、天皇・皇族の子孫は世数を問わず皇族の身分を有するいわゆる永世皇族制を前提にした上で、その時々の状況に応じて、弾力的に皇籍離脱制度を運用することにより、皇族の規模を適正に保つこととすることが適当である。〔参考30、31〕
 なお、現在の皇族女子については、婚姻により皇籍離脱する現行制度の下で成長されてきたことにも配慮が求められる。その際、世数、皇室の構成等も勘案する必要がある。
 
(3) 皇籍離脱制度
 皇籍離脱制度については、現行制度では、親王は意思による離脱ができないのに対し、内親王は、王や女王と同様、皇室会議の議により、意思による離脱ができることとされている。これについては、女子も皇位継承資格を有することとする以上、親王と内親王とを区別する理由はないこと、親王・内親王と王・女王との間では、皇籍離脱の条件等に差が設けられるべきであることから、内親王に関する制度を親王に関する制度に合わせ、共に意思による離脱ができないこととすることが適当である。
 また、やむを得ない特別の事由があるとき、皇室会議の議により、皇籍を離脱する制度については、現行制度と同様、親王、内親王、王、女王すべてについて可能とすることが適当である。現行制度では、皇太子及び皇太孫については、やむを得ない特別の事由による皇籍離脱制度が適用されていないが、今後は、女子の皇太子及び皇太孫についても、同様の制度とする必要がある。
 親王・王が皇籍離脱する場合等の配偶者や直系卑属等の離脱の制度は、内親王・女王の離脱の場合等もこれと同様の制度となるよう見直しを行う必要がある。
 皇籍離脱制度により皇族の規模の調整を行う場合には、以下のような点に配慮し、円滑な運用を図る必要がある。
 若年の皇統に属する皇族の数を目安として、将来における皇族の規模の適正化という観点から、離脱の要否を判断する。
 原則として世数の遠い皇族から離脱する。  
 離脱の決定は、当事者の将来予測を可能にするため、適切な時期に行う。


4. その他関連制度

 現行制度には、以上のほかにも、皇族男子と皇族女子との間で差異が設けられているものが存在する。これらは、主として、皇位継承資格の有無に基づくものであり、皇位継承資格を女子にも拡大することに伴い、見直しが必要となる。具体的には、以下のような関連制度について、基本的には皇族女子に関する制度を皇族男子に合わせる方向で見直すことが必要である。〔参考32〕


(1) 女性天皇、内親王、女王の配偶者に関する制度
1) 配偶者の身分
現行制度では、天皇(男性)、親王、王の配偶者は皇族となることとされている。これと同様に、女性天皇、内親王、女王の配偶者も皇族の身分を有することとする必要がある。これに伴い、戸籍上の扱いも、天皇(男性)、親王、王の配偶者と同様、婚姻の際に、その戸籍から除かれ、皇統譜に登録することとする必要がある。
2) 配偶者の名称
現行制度では、天皇(男性)の配偶者は皇后、天皇(男性)の寡婦は太皇太后、皇太后と称されている。また、親王、王の配偶者には、それぞれ、親王妃、王妃の名称が用いられている。女性天皇、内親王、女王の配偶者等についても、専門的知識を有する有識者等の知見も得て、適切な名称を定める必要がある。
なお、天皇、皇太子、皇太孫という名称は、特に男子を意味するものではなく、歴史的にも、女子が、天皇や皇太子となった事実が認められるため、女子の場合も同一の名称を用いることが適当である。
3) 配偶者の敬称等
現行制度では、皇后、太皇太后、皇太后の敬称は、天皇と同様「陛下」とされ、その他の皇族は「殿下」とされている。また、陵墓についても、皇后、太皇太后、皇太后は、天皇と同様「陵」、その他の皇族は「墓」とされている。女性天皇の配偶者、寡夫についても、これと同じく、天皇と同様の敬称等とする必要がある。
4) 婚姻手続き
現行制度では、天皇(男性)、親王、王の婚姻は、皇室会議の議を経ることとされている。これと同様に、女性天皇、内親王、女王の婚姻についても、皇室会議の議を経ることとする必要がある。
 
(2) 摂政就任資格・順序
 天皇が成年に達しない場合や重大な事故等により国事行為を自ら行うことができない場合は、摂政を置くこととされている。現行制度では、天皇の配偶者・寡婦(皇后、皇太后、太皇太后)も、この摂政に就任する資格を有することとされている。これと同様に、女性天皇の配偶者・寡夫も摂政就任資格を有することとする必要がある。
 また、就任の順序については、現行制度では、皇族男子(皇太子、皇太孫、親王・王)が優先され、次いで皇后・皇太后・太皇太后、さらに内親王・女王、という順位が設定されている。この順序は、皇位継承資格を有する者を優先するという考え方であると思われるため、今後は、まず、男女を問わず皇位継承資格を有する皇族を先順位とし、次いで、天皇の配偶者・寡婦(夫)を位置付けるという考え方をとることが適当である。皇位継承資格者の範囲内では、現行制度と同様、皇位継承順によることが適当である。
 なお、この摂政就任資格・順序は、国事行為の臨時代行にも準用されているため、臨時代行制度にも以上の考え方が適用されることとなる。
 
(3) 皇室経済制度
 皇族としての品位保持の資等に充てるために支出される皇族費について、現行制度では、親王と内親王、王と女王との間で差が設けられている。具体的には、独立の生計を営む場合の年額につき、内親王及び女王は、それぞれ親王及び王の2分の1の額と定められており、これが、皇籍離脱等の際の一時金にも反映される制度となっている。これは、皇位継承資格の有無に着目して設けられた差異であると考えられるため、内親王・女王も皇位継承資格を有することとした場合には、親王・王の水準に合わせる必要がある。
 また、親王・王についてのみ配偶者の皇族費の額が定められているが、婚姻による皇籍離脱制度の見直しに伴い、内親王・女王の配偶者についても、同等の額を定める必要がある。
 なお、皇族費及び内廷の日常の費用等に充てられる内廷費については、皇族としての役割等に照らして十分な水準となるよう適時適切な見直しを行う必要がある。


 象徴天皇の制度は、現行憲法の制定後、60年近くが経過する中で、多くの国民の支持するものとして定着してきた。我々は、古代から世襲により連綿と受け継がれてきた天皇の制度が、将来にわたって、安定的に維持されることが何よりも重要であり、また、それが多くの国民の願いであるとの認識に立って、検討に取り組んできた。

 象徴天皇の制度は、国民の理解と支持なくしては成り立たない。このことを前提に、冒頭述べたように、制度の成り立ちからその背景となる歴史的事実を冷静に見つめ、多角的に問題の分析をした結果、非嫡系継承の否定、我が国社会の少子化といった状況の中で、古来続いてきた皇位の男系継承を安定的に維持することは極めて困難であり、皇位継承資格を女子や女系の皇族に拡大することが必要であるとの判断に達した。

 古来続いてきた男系継承の重さや伝統に対する国民の様々な思いを認識しつつも、議論を重ねる中で、我が国の将来を考えると、皇位の安定的な継承を維持するためには、女性天皇・女系天皇への途を開くことが不可欠であり、広範な国民の賛同を得られるとの認識で一致するに至ったものである。

 検討に際しては、今後、皇室に男子がご誕生になることも含め、様々な状況を考慮したが、現在の社会状況を踏まえたとき、中長期的な制度の在り方として、ここで明らかにした結論が最善のものであると判断した。

 ここでの提言に沿って、将来、女性が皇位に即くこととなれば、それは、近代以降の我が国にとっては初めての経験となる。新たな皇位継承の制度が円滑に機能するよう、関係者の努力をお願いしたい。

 皇位の継承は国家の基本に関わる事項であり、これについて不安定な状況が続くことは好ましいことではない。また、皇族女子が婚姻により皇族の身分を離れる現行制度の下では、遠からず皇族の数が著しく少なくなってしまうおそれがある。さらに、将来の皇位継承資格者は、なるべく早い時期に確定しておくことが望ましい。このような事情を考えると、皇位継承制度の改正は早期に実施される必要がある。

 当会議の結論が、広く国民に受け入れられ、皇位の安定的な継承に寄与することを願ってやまない。