T.プランの基本的構成
第一部沖縄経済の現状と課題
1.厳しい沖縄経済の現状
2.依存型経済の現状
3.沖縄経済の自立化に向けての展望と課題
第二部政策の理念と基本方向
1.政策の基本的理念
2.政策の展開に当たっての基本的考え方
第三部政策の具体化の方向と今後の課題
1.主要分野における産業振興
(1)加工交易型産業の振興
(2)観光・リゾート産業の新たな展開
(3)国際的なネットワークを目指す情報通信産業の育成
(4)農林水産業の新たな展開
2.産業振興のための横断的な取組
(1)新規事業の創出支援体制の充実
(2)研究開発と国際交流の促進
(3)人材の育成と雇用の確保
(4)環境共生型地域の形成
(5)産業活動を支えるインフラ等の整備
3.今後の検討課題
U.プランの概要
第一部沖縄経済の現状と課題
1.厳しい沖縄経済の現状
本土の2倍の失業率に示されるように、沖縄経済の現状は極めて厳しい。 |
(1)雇用情勢
○復帰後、全国を大幅に上回る就業機会の拡大を実現(昭和47年→平成10年:全国26%増、沖縄54%増)したが、全国を上回る大幅な労働力人口の伸び(同全国30%増、沖縄62%増)に十分対応できない状況。
○失業率の動向(平成10年)
全体 | 若年労働者 | 世帯主 | |
7.7% (4.1%) | 15〜19歳 20〜24歳 | 25.0%(10.6%) 15.9%(7.1%) | 4.0% (2.9%) |
○有効求人倍率の動向
平成10年の有効求人倍率は0.19倍(cf.全国0.53倍)と本土復帰時点に逆戻り。
○新規学卒者就職決定率(平成11年3月卒)
高卒者の就職決定率は67.2%で、全国最下位。(cf.全国93.6%)
(2)産業構造
○産業構造
第3次産業の比重が突出して高く、建設業も相対的に高くなっている反面、製造業の比重が極めて低い構造。第3次産業の中でも、特に、政府サービスや観光・リゾート産業を含むサービス業の構成比が高い。
○観光・リゾート産業
昭和47年に約44万人であった入域観光客数が平成10年には約413万人となっており、右肩上がりの増加傾向。今後とも他業種の成長を牽引するリーディング産業としての一層の飛躍を期待。
○情報通信産業
県の戦略的産業として位置づけられており、地域における情報化の推進に寄与するとともに、地域振興と雇用創出の新しい担い手として期待。
2.依存型経済の現状
基地経済への依存は低下してきたものの、財政依存はむしろ拡大。経済自立化への道は険しい。 |
○基地経済への依存度の推移
昭和47年度 | 平成8年度 | |
15.6% | → | 4.9% |
○財政依存度の推移
昭和47年度 | 平成8年度 | |
23.5% | → | 32.7% |
3.沖縄経済の自立化に向けての展望と課題
現状のまま推移すると、長期的にも高失業率及び財政依存型経済は改善されない。 |
○依存型経済の推移
<現状推移ケース>
2020年には沖縄県の経済成長率は1.5%、失業率6%、財政依存度35%と、現状よりむしろ悪化することが見込まれる。
<戦略産業振興ケース>
2020年の沖縄県の経済成長率は2.2%、失業率3%台、財政依存度31%という分析結果なっている。
上記のとおり、産業連関表を用いたシミュレーションの結果をみると、問題の改善に相当の努力が必要であることを示唆している。
第二部政策の理念と基本方向
1.政策の基本的理念
(1)自立型経済の構築に向けて |
(2)我が国経済社会に貢献する地域としての沖縄 |
(3)アジア・太平洋地域の交流拠点としての発展 |
(4)経済振興と基地問題とのバランスある解決 |
(1)政策目的と政策手法 |
(2)「優位性」の重視と「不利性」の克服 |
(3)産業分野別の評価 |
(4)県土の均衡ある発展 |
(5)政策評価の重要性 |
第三部政策の具体化の方向と今後の課題
1.主要分野における産業振興
(1)加工交易型産業の振興
ア.基本的視点
沖縄の製造業が今後発展していく上で、県内需要のみにとらわれない積極的な対外的販路開拓の取組が求められる。遠隔の離島としての沖縄のハンディキャップを踏まえ、企業立地面の条件整備に向けての諸施策に取り組む。 |
(2)観光・リゾート産業の新たな展開
ア.基本的視点
沖縄における基幹産業としてのダイナミックな発展が、県経済全体を牽引していくことを期待し、通年型観光地へのシフト等の課題に取り組む。 |
(3)国際的なネットワークを目指す情報通信産業の育成
ア.基本的視点
沖縄は、その地理的条件、インフラ整備の諸計画等からみて、世界の情報通信ハブ基地として発展する可能性を秘めている。国際的なネットワーク展開の中での沖縄における情報通信産業の発展を目指す。 |
(4)農林水産業の新たな展開
ア.基本的視点
他の都道府県にない沖縄の優位性を活かして戦略的な取組を行い、市場競争力を持った特色ある農林水産物の供給産地を目指す。 |
2.産業振興のための横断的な取組
(1)新規事業の創出支援体制の充実
ア.基本的視点
今後、沖縄経済が21世紀に向けて中長期的に自立的に発展していくためには、良質の雇用機会が若年層にも開かれるような新規産業の成長が必須の課題であり、新規事業創出を積極的に推進する必要がある。 |
(2)研究開発と国際交流の促進
ア.基本的視点
自立型経済の構築に向けて、技術革新の果たす役割が一層高まっており、研究開発について、前向きで、なおかつ地域の特性を活かした着実な取組が期待される。
また、国際交流については、科学技術分野のみならず、学術文化、スポーツ、医療等を含めて、幅広い交流が期待される。 |
(3)人材の育成と雇用の確保
ア.基本的視点
国際的には高い賃金水準の下で、競争力のある産業の振興を図るためには、産業の高付加価値化が必要であり、そのために優秀な人材の確保が求められる。
また、厳しい雇用情勢に対応するため、雇用の確保に資する諸施策を強力に推進する必要がある。 |
(4)環境共生型地域の形成
ア.基本的視点
沖縄において環境共生型地域としてモデル的な発展を追求することは、観光・リゾートの振興、新規ビジネスの創業等の観点から有意義な試みであるといえる。 |
(5)産業活動を支えるインフラ等の整備
ア.基本的視点
社会資本整備に対する基本的ニーズを踏まえつつ、今後とも、産業インフラの効果的・効率的な整備に引き続き努める。 |
3.本プランの位置づけと今後の取扱い
この「沖縄経済振興21世紀プラン」は、
「沖縄経済の自立的成長をいかに図るか」という視点を中心に、その環境整備に向けての政策の理念や基本方向及び具体的な方向を、可能な限り示そうとするもの。 |
今後の個別の沖縄振興策の検討・実施に指針的役割を果たすとともに、沖縄振興策全体の論議の場となる、いわゆる「ポスト三次振計」の検討の場において、経済振興面に関して十分活かしていくこととする。 |
今回の中間報告においては、できる限り最終報告に近いレベルにまで検討を進めたものの、「沖縄国際情報特区」構想や「ゼロエミッション・アイランド沖縄」構想の具体化、「新規事業創出支援体制の総合的検討」等については、今後、政府と県とが連携して検討を進め、最終報告としてとりまとめることとしたい。 |