産業競争力会議

第8回産業競争力会議議事要旨

T.日時   平成12年1月18日(火)10:30〜11:40
 
U.場所   総理大臣官邸大食堂
 
V.出席者  別紙  
 
W.議題   産業技術力の強化、高コスト構造について
 
X.議事概要 

1. 開会

 冒頭、通産大臣から、前回の会議で議論が行われた中小企業・ベンチャー企業の振興について、先の臨時国会で所要の法案及び予算が成立したことを報告。 

2.資料説明

 竹島内閣官房内閣内政審議室長から、ミレニアム・プロジェクトに関する総理決定、国立大学教官等の民間企業の役員兼業に関する対応方針等について説明。
 村田通産省産業政策局長から、高コスト構造について説明。

3.産業界側委員プレゼンテーション

(1)金井 経団連副会長(日立製作所会長)
 産業技術力の強化について、提言。
 第1に、本会議での提案を受けて策定された国家産業技術戦略は、技術革新システムの改革を目指すものであり、次期科学技術基本計画への反映を含め、その実現に努めて頂きたい。
 第2に、次期通常国会に提出される産業技術力強化法案については、以下の3点が重要。

@ 民間から国公立大学への委託・共同研究の資金の扱いを弾力化する、委任経理金制度の創設
A 国立大学教官等による民間企業役員兼業の透明性の確保、公立大学教官等(地方公務員)への兼業許可対象の拡大
B 大学から民間への研究成果移転機関(TLO)の充実のため、その施設の国立大学内での無償設置の可能とすること。

(2)前田 経団連副会長(東レ会長)
 高コスト構造について、総論を説明。
@ 製造業に依存する貿易立国が日本の基本構造。製造業は生産性の伸び率が他産業より高く、日本の経済成長をリード。
A 製造業の海外生産比率の上昇等、生産基盤は空洞化しつつある。その要因は、各種経営資源のコスト高であり、政治のリーダーシップで高コスト構造の見直しを実現していただきたい。
B 瀬谷委員の資料に経団連産業問題委員会で取りまとめた提言等を添付している。次回または次々回の会議でこれに対する各省の検討状況の説明をいただきたい。

(3)瀬谷 旭硝子会長
 高コスト構造是正策について、電力・石油・物流分野に絞って提言。
@電力分野
 ・電力の小売について、自由化の対象範囲の拡大、需給調整契約のメニューの多様化が必要。
 ・託送料金について、欧米並みの水準を目指し、速やかに再設定が必要。
A石油分野
 ・高硫黄C重油について、輸入禁止的な高率関税の早期見直しが必要。
B物流分野
 ・夜間入港規制の緩和、税関手続きの簡素化等による、港湾のフルオープン化(365日・24時間荷役)の実現、荷役作業料金の国際レベルへの引き下げが必要。

(4)宮津 NTT社長
NTTの通信料金低廉化の取り組みについて、説明。
@ NTTは、民営化以降、デジタル化によるコストダウン努力により、ダイヤル通話料等の低廉化を図ってきた。
A インターネット定額制については、現在試験提供中。試験提供の状況を見た上で、料金を下げようと考えている。事業者間接続料金については、現在、まさに米国と交渉中。

(5)奥田 日経連会長(トヨタ会長)
企業の社会的負担の観点から、社会保障改革について、提言。
@ 低成長、少子高齢化の下、「自助・共助・公助のバランスのとれた福祉」を目指し、社会保障制度の抜本改革を断行すべき。
A 年金について、年金改正法案の通常国会での早期成立を期待。その上で、基礎年金部分の税方式への転換などの抜本改革、厚生年金基金の代行部分の返上等の早急な検討が必要。
B 医療制度について、平成12年度における抜本改革の早期実現が必要。少子化問題について、保育サービスの拡充等に重点的に取り組むことが必要。

4.意見交換

(1)産業界側委員

◆今井 経団連会長(新日鐵会長)
@ 産業技術力強化の法案については、金井委員が提言された各種措置は産学連携を個別的・実際的に進める上で重要であり、是非実現して頂きたい。
A 産業競争力強化のために取り組むべき課題は、人材育成、リーディング産業の育成、情報化の推進、企業年金問題、直接金融市場の整備等、まだまだ残されている。是非、引き続き産業競争力会議を開催し、議論して頂きたい。

◆鈴木 イトーヨーカドー社長
 電子商取引に本格的に取り組み始めたところだが、接続料金はまだ高い。昨年11月より孫社長と共同でインターネットを通じた本の販売事業を始めたが、利用は割引時間帯に集中している。今後も、通信インフラの整備とともにコストダウンについても努力を続けていただきたい。

◆江頭 味の素社長
 国公立大学へ年間100件以上研究委託しているが、運用細則等の問題で寄付の形をとっており、これだと成果が返ってこない。米国の大学へは委託でき、成果も返ってくるため、研究を海外に持っていってしまう傾向にある。こうした制度は、明治以来の制度と聞いており、その改善は小さいことのようであるが大事なこと。是非、制度改正していただきたい。

◆孫 ソフトバンク社長
@ 日本の流通には問屋・二次卸制度があり、これが高コストを招いているが、米国ではこれを電子商取引化し、コスト競争力をつけている。日本も米国のように、電子商取引への消費税を時限で3年程度免除するなどして流通の改革を促進する政策を打ち出すべき。
A 2005年には、インターネット利用者数が、中国で3億人、米国で2億人に達する一方、日本は8千万人にしかならないとの試算がある。日本は利用の質を高める必要があり、日本の1000万人の学生1人1人に1台パソコンを与え、インターネットを無料で利用させることを提案したい。そのための投資は、5年間5000億円であり、これで日本の将来が買えると考えれば、効率的な投資である。

◆高原 ユニ・チャーム社長
 情報通信分野は、ビジネスチャンスに満ちており、雇用創出効果も大きい。制度整備の面で、以下のような3点について、総理のリーダーシップをお願いしたい。
@ 行政指導で料金が下がるような仕組みを改め、公正な競争によって結果として料金が下がるようにするべき。
A 通信と放送の融合に対応した制度改革を進める。
B NTT法についても見直しを行う。

◆三浦 三菱化学会長
 ゲノム解析プロジェクトに代表されるようにミレニアム・プロジェクトはいずれも大型で、多くの省庁にまたがる。各省庁がバラバラにならぬよう、司令塔の役割が重要。
 産業技術力の強化については、@民間からの研究資金を大学が自らの裁量で使えるような制度整備、A国立大学の教官の兼業に係る要件の明確化、BTLOの育成のため国立大学の施設の無償での利用等が必要。

◆室伏 伊藤忠商事会長
@ 情報通信のみならず、バイオテクノロジーについても、日米の差が拡大している。バイオについて、国家戦略を策定し、予算を重点配分し、国の研究機関が技術基盤を整備し、ベンチャー等による産業化を推進することが重要。
A 高コスト構造について、通産省の輸入協議会でも外国委員から要望が出ており、港湾、空港、税関等物流の24時間フルオープン化ができていないのは、日本だけであり、改善が必要。
 また、弁護士、公認会計士、税理士といった専門家の数が、米国に比して格段に少なく、ビジネスを進める上で障害になっている。是非、外国人弁護士の活動等について、規制緩和を進めるべき。

(2)政府側委員

◆丹羽 厚生大臣
 公的年金関連法案が、参議院で継続審議中。産業界からも御提案のあった株式の厚生年金基金への拠出の導入等を図るものでもあり、早期成立に努力していきたい。

◆中曽根 文部大臣・科技庁長官
 今井委員等が指摘された点を含め、産学官連携の強化策について、文部省・科技庁としても積極的に取り組みたい。現在、法案の通常国会提出に向け、通産省等と鋭意協議しているところ。

◆八代 郵政大臣
 本日通信コスト低減について、多くの意見があったが、情報通信分野への期待のあらわれと思う。NTTも昨年あたりからコスト低減を図っている。インターネット定額制の導入や事業者間接続料金についての長期増分費用方式の導入も図り、現在行われている日米交渉においても、日本が努力した結果を示していきたい。
 現在では、情報通信はインフラといえる。通信は、コストにだけ目を注ぐのではなく、力強い将来に対する基盤整備の位置付けも必要。

◆二階 運輸大臣
 インフラについては、中枢港湾等について重点的に整備を進めている。規制緩和も着実に実行しており、成果も出てくるものと確信。
 フルオープン化については、既に、主要港では日曜・夜間の荷役は可能となっている。今後とも、規制緩和、競争原理の導入に取り組んでいきたい。

◆保利 自治大臣・国家公安委員会委員長
 自治大臣として、公立学校における産学共同に特段の配慮をしていきたい。
 国家公安委員長としては、インターネットを通じた犯罪が増加しており、技術的にも高度化している。その防止に努めていきたい。
 

5.総理締めくくり発言
@ 本会議で議論してきたミレニアム・プロジェクト、中小企業・ベンチャー企業対策について、迅速かつ効果的な推進を図る。
A 産業技術力の強化については、産学官の連携が円滑に機能するよう、資金面、人材面の各般の措置を盛り込んだ産業技術力の強化法案を次期通常国会に提出したい。
B 高コスト構造については、既存産業の競争力強化とともに、新規産業の発展のためにも重要。規制緩和推進3カ年計画の再改訂等を通じて実効ある措置がとられるよう、各大臣において全力を挙げて 取り組むことをお願いする。
C 今井委員から人材育成、リーディング産業育成、情報化の推進、企業年金、企業の資金調達等の問題に引き続き取り組む必要ありとの提言があった。私としても、提言にあったような重要な問題について、産業競争力会議で議論していきたいと考える。
D いずれにしても、本会議で提言いただいた点は、クイックリスポンスで実現に努めていきたい。

6.閉会


(別紙)

第8回産業競争力会議出席者

政府側 
小渕 恵三内閣総理大臣(主宰)
青木 幹雄内閣官房長官・沖縄開発庁長官
深谷 隆司通商産業大臣(議事進行)
臼井日出男法務大臣
河野 洋平外務大臣
宮澤 喜一大蔵大臣
中曽根弘文文部大臣・科学技術庁長官
丹羽 雄哉厚生大臣
玉沢徳一郎農林水産大臣
二階 俊博運輸大臣・北海道開発庁長官
八代 英太郵政大臣
牧野 隆守労働大臣
中山 正暉建設大臣・国土庁長官
保利 耕輔自治大臣・国家公安委員会委員長
越智 通雄金融再生委員会委員長
続  訓弘総務庁長官
堺屋 太一経済企画庁長官
清水嘉与子環境庁長官

産業界側
今井  敬新日本製鐵株式会社会長
経済団体連合会会長
江頭 邦雄味の素株式会社社長
奥田  碩トヨタ自動車株式会社会長
日本経営者団体連盟会長
金井  務株式会社日立製作所会長
小池 俊二株式会社サンリット産業社長
鈴木 敏文株式会社イトーヨーカ堂社長
瀬谷 博道旭硝子株式会社会長
孫  正義ソフトバンク株式会社社長
高原 慶一朗ユニ・チャーム株式会社社長
濱中 昭一郎日本通運株式会社会長
全国通運連盟会長
樋口 廣太郎アサヒビール株式会社名誉会長
前田 勝之助東レ株式会社会長
前田 又兵衛前田建設工業株式会社会長
日本建設業団体連合会会長
三浦  昭三菱化学株式会社会長
日本化学工業協会会長
宮津 純一郎日本電信電話株式会社社長
室伏  稔伊藤忠商事株式会社会長
日本貿易会会長
(敬称略)