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企業・産業再生に関する基本指針


平成14年12月19日
産業再生・雇用対策戦略本部決定


(前文)
<指針の性格>

I.基本的考え方
 (1)過剰債務問題に対応するための基本的考え方
 (2)過剰供給構造問題に対応するための基本的考え方

II.過剰債務問題への対応
 (1) 株式会社産業再生機構(仮称)の創設
 (2) 産業活力再生特別措置法の活用
@ 過剰債務を抱える企業の事業再生と認定基準
A 企業再生ファンド、他の事業会社等による事業再生と認定基準
 (3) 早期事業再生ガイドラインの策定
@ 過剰債務構造に陥ることを未然に防止するための事業再生の早期着手に向けた取組
A 過剰債務構造を解消するための迅速再生に向けた取組
 (4)その他金融上の支援措置

III.過剰供給構造問題への対応
 (1) 産業活力再生特別措置法の活用
@ 過剰供給構造にある事業分野の特定
A 政策支援対象となる事業者の取組に関する認定基準
B 事業分野の特性への配慮
 (2) その他金融上の支援措置

IV.中小企業の再生支援
 (1) 中小企業の再生支援の考え方
 (2) 再生支援のための方策

V.企業・産業再生に当たっての雇用面での対応

VI.その他
 (1) 独占禁止法の企業結合審査の迅速化・手続きの明確化等及びそのための体制整備
 (2) 事業分野に関する指針




企業・産業再生に関する基本指針


平成14年12月19日
産業再生・雇用対策戦略本部決定


(前文)

<基本指針の性格>
 産業再生・雇用対策戦略本部は、我が国の産業再生を図るため、2つの重要課題、すなわち、@過剰債務企業が抱える優良な経営資源の再生、A過剰供給構造を解消するための産業再編の促進について、基本的考え方、政府として講ずる措置等を明らかにし、政府としての統一方針を示すことにより、あらゆる政策手段を整合性のある形で適用・総動員していくため、本基本指針を定める。


I.基本的考え方

(1)過剰債務問題に対応するための基本的考え方

 政府として現下の重要課題である不良債権問題の解決を図るため、民間金融機関に対し不良債権処理の加速化を促す一方で、いたずらに産業セクターの経営資源を散逸させないよう、政策的な支援措置の拡充と環境整備を通じ企業・産業再生の円滑化、加速化を図る。
 その際、過剰債務に陥った企業の事業再生は、当該企業の自助努力と民間金融機関、再生ファンド等の民間セクターにより市場メカニズムを通じて行われることが本来の姿であることにかんがみ、民間セクターの活動を補完することを原則としてその活動を阻害することのないよう配慮するとともに、むしろ民間の叡智と活力を最大限に活用し、再生市場の育成など民間セクターの活性化を図る。また、政策的な支援が、企業の安易な延命や過剰供給構造の助長につながらないよう配慮し、市場メカニズムの活性化に資するよう努めるものとする。

 また、企業が過剰債務に陥る要因は様々であるが、こうした企業であってもコアとなる事業に関しては十分な競争力がある場合が多く、これを過剰債務の原因となっている不採算部門から切り離すことにより、十分事業の再生を図ることが可能であり、また、こうした取組が雇用や取引先への影響を極力最小限にすることにも資することになる。こうした事業再生への取組は、その着手のタイミングが早ければ早いほど、小さなコストで実行ができる場合が多い。重要なことは、企業ではなく事業、そして過去の実績である企業規模や保有する不動産の価値ではなく将来における事業の収益性に着目することである。過剰債務に陥らないように早め早めに企業が講じるべき対応を整理するとともに、既に過剰債務を抱えている企業にあっては迅速な対応が図られるよう、早期着手に関連した情報開示の充実、事業再建法制の戦略的活用、事業収益に着目した新たな融資慣行等の定着、事業再生を担う専門的人材の育成強化など、官民で取り組むべき事項について提示する。

  
(2)過剰供給構造問題に対応するための基本的考え方

 政府は、国内需要の長期的低迷等により、構造的な過剰供給能力が生じている事業分野が存在し、こうした過剰供給構造が利益率の低迷を通じ不良債権問題の解決を困難にし、国際競争力低下の要因にもなっていることにかんがみ、政策的な支援措置の拡充と環境整備を通じ過剰供給構造の解消と産業再生の円滑化、加速化を図る。

 過剰供給構造に直面している企業は、本来であれば市場の圧力の中で、事業分野の絞り込みを行い、不採算部門からは自主的に撤退していくことが望ましいが、現実には、事業の撤退・縮小については多大なコストがかかるため、痛みを伴う経営判断は先送りされやすい。こうした状況を解消するためには、撤退・縮小に伴う負担を軽減し、不採算部門からの撤退、縮小を円滑化していく必要がある。また、こうした過剰供給構造は、個社ベースのリストラ努力だけに委ねても解消しにくいことから、同業他社と共同で事業統合や合併をすることにより、設備廃棄等の効率的な事業縮小・撤退を図る取組を促していく必要がある。このため、政府は、こうした企業と企業の壁を超えた事業再編、産業再編の取組を促進、円滑化していく支援措置を講じ、市場メカニズムの補完を通じて過剰供給構造を是正し、産業再生を図る。


II.過剰債務問題への対応

(1)株式会社産業再生機構(仮称)の創設

@産業再生機構の位置付け・役割

 事業再構築、事業再編等を通じた企業再生に取り組むための新たな機構を預金保険機構の出資を得て創設する。

 機構は、債権者間の利害調整が困難である等の事由で民間だけでは解決が困難な再生可能性のある案件に関し、債権の集約化を促し、中立的な調整者として企業の再生を加速するための機関として位置付ける。 ただし、企業再生は、本来は民間の力により自律的に行われていくことが望ましいとの考えの下、機構の活動に当たっては、貸出債権マーケットの整備・拡充、その証券化商品の普及、企業再生マーケットの育成なども視野において、民間の叡智・活力を最大限活用するものとする。
 機構の活動に当っては、企業の単なる延命を図ることにつながらないようにするとともに、過剰供給構造となっている事業分野に属する企業については、本「基本指針」のIII.(1)に掲げる改正産業活力再生特別措置法の基準の活用や同法の運用との連携、事業所管官庁の協力を得ること等により、当該事業分野の再編も視野に入れた再生を図ることとし、過剰供給構造を助長しないようにする。
 また、機構の円滑な業務遂行及び金融システムの健全性・安定性を確保していくために、金融当局、預金保険機構、整理回収機構と機構は緊密な連携を図っていくこととする。

 なお、機構の設立・運営は、金融界・産業界等に相当規模の専門家の派遣を要請するなど、可能な限り民間部門の人的・資金的な支援を得て行うとともに、政府として、関係省庁からの出向や機構の資金調達に対し政府保証を付与するなど、所要の人的・財政的支援を行うこととする。また、円滑な再生を行う観点から、機構の人員体系は、市場の実状を踏まえ、株式会社の特性を生かした柔軟なものとする。
 以上の観点から、機構は業務運営の基本方針、役員の選任等に関し、一定の政府の関与を伴う株式会社(株式会社産業再生機構(仮称))とする。

  
A産業再生機構の運営の基本的考え方

 機構は、本「基本指針」に従い、金融機関において「要管理先」等に分類されている企業のうち、メインバンク・企業間で再建計画が合意されつつある等により当該機構が再生可能と判断する企業の債権を、企業の再生を念頭においた適正な時価で、原則として非メインの金融機関(政府系金融機関を含む。)から買い取る。機構とメインバンクで企業の債権の相当部分を保有し、強力に企業のリストラ・経営再建を推進する。企業再生策の作成に当っては、メインバンクの情報、ノウハウ、資金(つなぎ資金、ニュ−マネー)、人材とともに、民間の再生ビジネス関係者の力も最大限活用する。また、再生に際しては、必要に応じ私的整理ガイドラインや民事再生法・会社更生法をも利用する。
 再生計画の実施に当っては、政府系金融機関の出融資の活用や債務の株式化等の手法の活用も図るとともに、最終的には、保有債権・株式等の譲渡も含めた最適な処分を行う。
 なお、機構は債権の買い取り以外に再生企業への追加融資や出資、信託、保証機能等を備えることとし、機構の買い取りは、不良債権処理の加速に対応して、他の分野の構造改革についても、特に平成16年度までの間、集中的に推進する必要があることに鑑み、2年程度の期間に短期かつ集中的に実施する。
 機構は、その存続期間を原則5年とし、その解散時点における最終的な国民負担については最小限となるように努めるものとする。

  
B買い取りの適正性を担保する仕組み

 機構は、債権の買い取りに当たっては、客観性・透明性を確保するための基準に基づくこととする。
 企業再生、産業再生双方の観点から、再建計画及び買取価格等の適正性を一体のものとして総合的に判断するため、機構内に有識者からなる「産業再生委員会(仮称)」を設け、機構は、産業再生委員会の決定なしに、債権の買い取り、処分等を行うことはできないこととする。

 過剰債務企業に関しては、将来性がある有効な経営資源を軸とした事業再生を促していくため、その再生計画の終了時点において生産性が向上し、財務構造が改善することが必要となる。
 具体的には、再生計画(3年以内)の終了時点において、本「基本指針」のII.(2)に掲げる改正産業活力再生特別措置法の生産性向上基準と財務健全化基準(事業所管大臣がIII.(1)Bの指針を策定した場合には、その指針に基づく要件等を含む)を満たすことを機構の買い取りの要件とする。ただし、業種特性等を勘案し、合理的と認められる特段の事情があると産業再生委員会が認める場合には、当該要件を硬直的に適用することとはしない。
 加えて、機構は、実際に債権を買い取り、最終的には当該債権を処分するという立場にあるため、その買い取りに際しては、清算価値よりも回収価値が多いと見込まれること、買取価格は再生計画を踏まえた適正な時価とすること、すなわち、再生計画の終了時点において、新たな再生スポンサーの関与等により当該企業の資金調達(リファイナンス)が可能な状況となり、その結果、当該債権の処分が可能となる蓋然性が高いと見込まれることをその買い取りの要件とする。

(2)産業活力再生特別措置法の活用

 企業の過剰債務問題の解決を図るため、次期通常国会において産業活力再生特別措置法を抜本改正し、必要な措置を講ずる。

@過剰債務を抱える企業の事業再生と認定基準

 過剰債務構造にある企業に関しては、相当程度財務構造が悪化していることから、計画の認定に当たっては、将来性がある有効な経営資源を軸としてその事業再生が実行される必要がある。従って、キャッシュフロー等に着目した指標が短期間に相当程度回復する見込みがあることが、基本的な要件となる。

 具体的には、計画(3年以内)の終了時点において、以下の基準(生産性基準及び財務健全化基準)を満たす場合に、改正産業活力再生特別措置法の事業再構築計画に基づく政策支援措置の対象とする。

<生産性向上基準>(a)b)c)のいずれかをみたすこと)
a)自己資本利益率(ROE)が2%ポイント以上向上
b)有形固定資産回転率が5%以上向上
c)従業員1人当たり付加価値額が6%以上向上

<財務健全化基準>(a)b)のいずれもみたすこと)
a)有利子負債のキャッシュフローに対する比率が10倍以内(注)
b)経常収入が経常支出を上回ること

(注)有利子負債合計額−現預金−信用度の高い有価証券等−運転資金≦10
留保利益+減価償却費+引当金増減

 なお、上記財務健全化基準については、上記を原則として、これに加えて業態特性や固有の事情等を勘案することとし、柔軟性を確保するものとする。

 また、過剰供給構造にある事業分野に属する事業を有する企業の再生に当っては、供給能力の増加を伴わない等当該企業の再建計画が当該事業分野の過剰供給構造の解消を妨げないものであることを支援の要件とする。

  
A企業再生ファンド、他の事業会社等による事業再生と認定基準

 企業再生ファンド、他の事業会社等が、過剰債務企業が抱える再生可能性のある事業を買収し、再生させる場合(他力再生の場合)にあっては、上記財務健全化基準に加えて、当該事業が、再建計画の終了時点で、次の基準(生産性向上基準)をみたす場合に限り、改正産業活力再生特別措置法の経営資源再生計画(仮称)に基づく政策支援の対象とする。

<生産性向上基準>(a)b)c)のいずれかをみたすこと)
a)キャッシュフロー(修正ROA)(注)が2%ポイント向上
(注)指標となるキャッシュフローの選択については、事業分野の特性に配慮する。
b)有形固定資産回転率が5%以上向上
c)従業員1人当たり付加価値額が6%以上向上

 過剰供給構造にある事業分野に属する事業を有する過剰債務企業の再生に当っては、供給能力の増加を伴わない等当該企業の再建計画が当該事業分野の過剰供給構造の解消を妨げないものであることを支援の要件とする。

  
(3)早期事業再生ガイドラインの策定

 企業が早期に事業再生に着手し過剰債務に陥ることを未然に防止するとともに、過剰債務を抱える企業が迅速な事業再生に取り組むことを促すため、経済産業省は、関係省庁の協力を得つつ、来年1月を目途として、「早期事業再生ガイドライン」を策定し、公表する。
 早期事業再生ガイドラインでは、以下のような早期着手及び迅速再生を柱とする新たな事業再生の仕組みを整備するため、早期着手慣行の定着に向けた情報開示の充実、事業収益に着目した新たな融資慣行等の定着、迅速な再生実現に向けた事業再建法制の戦略的活用と事業再生を担う専門的人材の育成強化など、官民で取り組むべき事項について提示する。

@過剰債務構造に陥ることを未然に防止するための事業再生の早期着手に向けた取組

 企業が過剰債務構造に陥ることを未然に防止するためには、事業再生に向けた取組を自主的かつ早期に着手することが有効である。事業再生の早期着手を促進するためには、負債とキャッシュフローの関係、利払いとキャッシュフローの関係、キャッシュフローの蓄積と負債の関係を見ながら、「事業の将来収益性」に着目していくことが重要である。
 企業においては、事業の将来収益性に着目しながら、過剰債務に陥る前に早め早めに自力で事業の再構築(不採算事業の縮小撤退、有望事業への集中)を図るとともに、債権者等においては、事業収益性に着目した融資に取り組みながら、早期の段階で企業が事業再生に向けた取組に着手するよう促していくことが望まれる。
 また、こうした事業収益に着目した取組を促すため、情報開示の充実、事業再編法制度や構成員の有限責任性が確保された事業組織法制の整備などの環境整備を進めることが求められる。

  
A過剰債務構造を解消するための迅速再生に向けた取組

 他方、すでに過剰債務に陥っている企業に関しては、迅速に事業再生を果たすことが重要である。その企業が持つ資産のどこに収益性があるか否かを厳密に見極めて、有効な経営資源を不稼働資産と過剰な債務から極力早期に切り離して事業の再生を図ることが必要であり、こうした迅速な再生に向けた対応が雇用や取引先への影響を最小限にとどめる上でも望ましい。
 企業としては、債権者等の協力のもと、事業再生に関する専門家を活用しながら、債務免除や債務の株式化などを内容とする財務再構築と一体となった事業再建計画を実行していくこととなるが、その際、事業再建計画についてあらかじめ主要な関係者の合意を得た上で、必要に応じて法的事業再建制度を活用する、いわゆるプレパッケージ型の再建計画を活用することが、関係者の迅速な合意形成を実現し、雇用や取引先への影響を最小限にとどめ、事業再生の可能性を高める上で有効である。
 また、こうした迅速再生に向けた取組を促進するため、法的事業再生手続をより円滑に活用できるよう所要の環境整備を進めるとともに、事業再生を担う専門的な人材育成の強化に向けて官民が協力して取り組むことが重要である。

  
(4)その他金融上の支援措置

 法的整理・私的整理により再建計画を策定した過剰債務による経営困難企業の再建を通じて不良債権の処理を促進することに加え、これと継ぎ目なく法的整理・私的整理に至る前に事業の早期再生を促し、不良債権の発生を未然に防止する。このため、日本政策投資銀行の投資ファンドへの出資枠の拡大・出資制度の拡充、事業再生支援融資制度の充実等により政策金融の積極的な活用を図る。なお、その場合にも、市場本来の機能が最大限発揮されるよう適切な配慮を行う。

   


III.過剰供給構造問題への対応

(1)産業活力再生特別措置法の活用

 事業者の産業再編に向けた取組を促進するため、産業活力再生特別措置法を抜本改正し、必要な措置を講じる。

@過剰供給構造にある事業分野の特定

 業態特性を反映した稼働率、機械装置資産回転率、利益率等的確な指標等に基づき、特定の事業分野について、相当長期にわたって稼働率の低下等需要と潜在的な供給力が著しく乖離している状況が認められ、その状況が短期的に解消される見込みがないと認められる事業分野を改正産業活力再生特別措置法に基づく政策支援措置の対象事業分野とする。

  
A政策支援の対象となる事業者の取組に関する認定基準

 事業者の産業再編に向けた取組については、過剰供給構造にある事業分野において供給能力の削減や集約化を通じた収益性の回復や稼働率等の向上を継続性の見込める形で実施していくことが重要である。
 したがって、改正産業活力再生特別措置法に基づき、促進すべき事業者の取組として、同法の共同事業再編計画(仮称)に基づく政策支援措置の対象となるのは、次の要件及び基準をみたす取組とする。
a) 過剰供給構造にあると認められる同一の事業分野に属する二以上の事業者が、共同で事業の再編を行う場合であって(共同事業再編要件)、
b) 計画期間の終了時点で、過剰供給構造の改善を示す指標が改善すること。(キャッシュフロー(修正ROA)(その選択については、事業分野の特性に配慮する。)の2%ポイント以上の向上又は有形固定資産回転率若しくは機械装置資産回転率の5%以上の向上又はこれらに相当する供給能力の削減を示す他の指標の改善)
c) 当該事業分野における適正な競争が確保されること(他の計画においても二以上の事業者の申請に係る計画の場合は当該要件を適用する。)

 なお、過剰供給構造は、企業単位で形成されるものではなく、事業分野ごとに形成され、その解決の方途も事業部門別の合従連衡が有効な方策であることから、上記b)は、企業全体ではなく、共同事業再編計画(仮称)に基づく共同事業再編の対象となった事業部門について計測・認定する。前記財務基準(II(2))は、共同事業再編の対象となった事業を行うために設立又は存続する企業に適用する。

 また、共同事業再編計画(仮称)に基づき、事業撤退を行う場合、供給能力の削減に資することが明らかであり、かつ、事業撤退の対象となった事業部門については、キャッシュフローの増加等が想定されないことから、上記b)の基準は課さない。

 なお、過剰供給構造にある事業分野に属する事業者が単独で行う過剰供給構造の解消に資する取組は、産業活力再生特別措置法の事業再構築計画(II.(2)@参照)の認定基準をみたす場合、同計画の政策支援措置の対象となる。

  
B事業分野の特性への配慮

 必要に応じ、事業所管大臣は、改正産業活力再生特別措置法に基づく基本指針に加えて、過剰供給構造にある事業分野について事業分野別指針を策定し、支援措置を講ずるに当たって業態特性等を反映して付加的に課すべき要件等必要な事項を記載することにより当該事業分野における産業の活力の再生に関する指針を定めることができる。この場合、改正産業活力再生特別措置法に基づく基本指針及び当該事業分野別指針に沿った事業者の取組と認められる場合に、同法に基づく政策支援措置の対象とする。

  
(2) その他金融上の支援措置

 過剰供給構造の解消に向け、事業者が行う産業再編に向けた取組を促すため、産業活力再生特別措置法改正前においても、投資ファンドへの出資制度の拡充等により政策金融の積極的な活用を図る。なお、その場合にも、市場本来の機能が最大限発揮されるよう適切な配慮を行う。また、事業の早期再生を促すための金融上の支援措置(II(4)参照)を講じるに当たっても、産業再編に資するようにその活用を図る必要がある。


IV.中小企業の再生支援

(1)中小企業の再生支援の考え方

 中小企業は極めて数が多く(全国に485万事業者)、業種・企業形態も極めて多種多様である。また、各中小企業とも各々の地域の実情に応じた再生の課題を抱えている等地域性も強い。
 中小企業の再生支援に取り組むに当たっては、このような中小企業の特性を踏まえて柔軟に対応するとともに、中小企業の多種多様な経営上の問題に対して、きめ細かに対応していくことが不可欠である。このため、過剰債務、過剰設備といった課題だけでなく、新事業展開、販路開拓、セーフティネット金融、倒産対策など幅広い施策が活用可能となる仕組みが必要である。

  
(2)再生支援のための方策

@ 自らの努力により経営革新・再生を図る中小企業に対して、経営革新支援法等に基づく予算措置・融資・税制等の支援を行うとともに、経営相談や新事業フェア、企業OB人材活用事業、後継者マッチング、M&Aサポート事業(15年度予算要求検討中)等による経営面における支援策の充実を図る。更に、中小企業信用リスク情報データベース(CRD)を用いた自己診断ソフトを整備(15年度予算要求検討中)し、中小企業が自らの経営状態を簡易に把握できるよう支援する。
 これらの支援措置は、A以下に述べるような措置を通じて再生に取り組む中小企業も活用できる。
A 自らの努力だけでは再生の難しい中小企業の事業再生支援について、各地域の商工会議所等の支援機関が再生支援のための事業を行う。また、当該支援機関に、「中小企業地域再生協議会(仮称)」を設ける。当該支援機関は、事業内容に関する相談助言や各種の支援措置の紹介斡旋、再生専門家による個別支援、中小企業総合事業団などが行う支援事業など、関連する中小企業施策を幅広く活用しつつ、地域の関係者の協力を得て、中小企業の再生の取組を支援する(14年度補正予算要求、15年度予算要求検討中)。
B 整理回収機構に債権が譲渡又は信託された中小企業のうち、再生可能なものについては、政策金融機関等との連携も図りつつ再生を進める。
 他方、産業再生機構を活用した再生支援を進める。
C 民事再生法等の法的手続きにより再生を図る中小企業者に対しても、必要な支援を行う
D 商工中金及び中小公庫は、市場本来の機能が最大限発揮されるよう適切な配慮を行った上で、再生に取り組む中小企業に対し計画策定のための助言を行うとともに、必要な融資を行う。また、改正された中小企業信用保険法に基づき、セーフティネット保証、DIP保証を実施する。
E これらの方策を的確に実施していくため、必要に応じ法的措置を講じる。


V.企業・産業再生に当たっての雇用面での対応

 企業は、雇用の維持・確保が社会的な使命であることを認識し、企業・産業再生の過程において、労働者の理解と協力を得るとともに、雇用する労働者の失業の予防、雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努め、雇用の維持・確保に最大限の努力を行うほか、離転職を余儀なくされる労働者について、当該労働者が行う求職活動に対する援助その他の再就職の援助を行うことにより職業の安定を図るよう努めるものとする。

 政府としては、再生を図る企業における労働者の失業の予防等雇用の安定のために必要な措置を支援するための施策を講じるとともに、離転職を余儀なくされる労働者については、円滑な労働移動、早期再就職の促進のための支援等必要な雇用のセーフティネットの整備のための施策を講ずることとする。

 具体的には、
@再生を図る企業に対して、
・ 一時的な休業等雇用維持に対する支援
・ 新事業展開等に必要な能力開発等に対する支援
等雇用の安定に必要な施策を講ずることとする。
A離転職を余儀なくされる労働者に対して、
・ 円滑な労働移動に対する支援
・ 早期再就職の促進のための支援
・ 新たな雇用機会の創出
・ 再就職に必要となる職業能力開発
・ 雇用関係情報の積極的提供等
等必要な雇用のセーフティネットの整備のための施策を講ずることとする。


VI.その他

(1)独占禁止法の企業結合審査の迅速化・手続きの明確化等及びそのための体制整備

 公正取引委員会は,企業結合審査の迅速化・手続の明確化を図る観点から,本年12月11日に公表されている「企業結合計画に関する事前相談に対する対応方針」に基づき,的確な企業結合審査を行うとともに,当該対応方針で示された審査期間内で極力早期に審査が終了できるよう,企業結合審査体制の整備を図る。特に産業活力再生特別措置法の対象となる案件については,運用指針(迅速審査類型の明示と審査期間等を記載)を定め,当該事業者の協力の下,審査の一層の迅速化を図るとともに,必要に応じて,独占禁止法第15条等で定める合併等の待機期間の短縮を認める。
 また,企業結合審査に対する事前の予測可能性を高めるため,詳細審査を行った企業結合案件については,すべて公表することとし,その内容については,事業者の秘密に関する部分を除き,支障のない限り,その理由を含めた公表内容のより一層の充実を図り,こうした審査結果も参考にしながら,迅速審査が可能な類型を明確化する。

  
(2)事業分野に関する指針

 事業所管省庁が、所管の事業分野の企業・産業再生に関する指針を定める場合には、この基本指針を踏まえて策定するものとする。