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ADR検討会(第24回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成15年10月27日(月)13:30〜17:15

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)青山善充(座長)、安藤敬一、佐成実、木佳子、龍井葉二、原早苗、平山善吉、廣田尚久、三木浩一、山本和彦、綿引万里子(敬称略)
(事務局)山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林徹参事官、山上淳一企画官

4 議 題
(1)ADRにおける時効の中断
(2)ADR和解の執行力
(3)ADR主宰・代理行為等に係る弁護士法72条の特例

5 配布資料
資料24−1 ADRにおける時効の中断(議論用レジュメ)
資料24−2 ADR和解の執行力(議論用レジュメ)
資料24−3 ADR主宰・代理行為等に係る弁護士法72条の特例
   (議論用レジュメ)

6 議 事

次回以降の検討会で議論の収斂を図っていく上で、なお委員の意見に開きが大きいのではないかと思われる、ADRにおける時効の中断、ADR和解の執行力、ADR主宰・代理行為等に係る弁護士法72条の特例の3点の論点について、事務局で用意したレジュメに沿って、集中的な議論を行った。(◎:座長、○:委員、●:事務局)

(1)時効の中断

 まずはじめに、資料24−1に沿って事務局より説明を行った後、ADRにおける時効の中断についての議論が行われた。

◎ 資料24−1は1.から3.までの3本立ての項目によって構成されているが、1.の「時効中断効付与の必要性」については、パブコメの結果を見ても、制度そのものに否定的な意見は少数であった。よって、1.については、2.以下を議論した後に考えていきたい。
 2.の「考えられる案」については、(1)効果、(2)要件の2本立てとなっているが、まずは(2)から議論していきたい。
 幅広く認めるとの意見は理解できるが、民法に手を付けずに特例を設けるとの前提に立てば、不要論を採る場合には、現行制度との整合性の問題を整理する必要がある。レジュメのような要件は必要ないという方がいれば、お考えを伺いたい。何らかの要件が必要ということでよいか。

○ 私は、要件は軽いものであるべきだと考えているが、何らかの要件が必要と考えていることは、不要論ではないと理解してよいか。

◎ そのような理解でかまわない。

◎ 効果との兼ね合いから考えて、時効中断の要件との関係はどのようなものとなるのか。

○ 主宰者が紛争内容等に応じて必要となる知識や経験を具備していることを要件として求めた理由は、おそらく【参考】のAやCのような考え方の延長線上にあると思うのだが、主宰者の能力を時効中断効付与のための要件として考えるのであれば、裁判所か行政庁が事前確認を行うこととなる。事前確認なしに、直接、法律上の要件として主宰者が知識や経験を具備していることを規定しようとすれば、民法改正が必要となるであろう。

● 事務局としては、紛争について真摯な解決を行っているかどうかという観点から要件を考えてみた。それには、主宰者の能力の問題と実効性のある手続が行われているかという問題がある。今夏に実施したパブリックコメントにおいては、要件として手続の適格性を中心に挙げていたが、意見募集を行った結果、主宰者が能力を具備していることを重視する声があったこともあり、主宰者要件を要件立てした。
 確かに、主宰者能力を要件とすれば、一律的・客観的な評価は難しくなる。しかしながら、民法の枠組みとの関係を考えれば、それを見なくてもよいのかといった問題がある。

○ 私は、従来は一律的・客観的に判断できる事項のみを要件とすべきとの考え方であった。しかしながら、ただ今、事務局からも指摘があったとおり、パブコメの意見募集の結果を読んでいるうちに、主宰者能力のようなものも必要なのではないか、当事者間の力の格差の問題などを考えれば、手続の適確性を要件とするのみでは足りないのではないかと考えるに至った。ADRは、主宰者の裁量によってどのようにでもなるといった側面があるので、主宰者要件は必要であると思う。一方、主宰者要件のみで足りるかと言われれば、それも難しい側面がある。将来、ADR士のような資格が設けられた暁には、その資格を具備しているか否かだけを要件とすればよいこともあり得るが、現段階で、主宰者要件のみに着目することとすれば、要件がかえって重くなりすぎるのではないか。
以上の理由により、私は、主宰者要件のみならず、手続要件や事務処理要件も必要と考える。

○ (考えられる要件)が、「単なる催告と区分されるための要件」と「制度の信頼性が確保されるための要件」の2つにわかれているが、ADR機関の信頼性を確保するという問題を考えれば、そのための要件として、事務処理しか挙げられていないのはいかがなものかと思う。ADR機関の信頼性を高めていくためにも、情報開示を要件に加えるべきではないか。

○ 私は、事前確認制度は導入すべきでないとの考え方である。今の2人の御意見は、事前確認制度を導入すべきとの考え方に近いので、反対である。事前確認制度を導入しなくとも、ADR制度に時効中断効は付与できるのではないか。
 また、「適格な」などの価値評価的な文言は法律に規定すべきではない。価値評価的な文言を用いた場合、裁判所の判断によって、利用者に不意打ちを与えてしまう懸念があるので適当ではない。要件としては「一定期間、継続して当事者が出頭しないこと」、「期日が開催されないこと」といった客観的な消極要件を置くことで足りるはずである。このような要件とすれば、送達を要件としなくてもよいし、消費者について、懸念される悪質な事例もなくなり、彼らの利益を保護することができると考える。
 (1)の効果については、@のような民法151条型でも、Aのような個別労働紛争型であってもこだわらないが、@の方が法律として規定しやすいとは思う。

○ そのような要件とした場合、例えば、継続的に集まって、実質的な交渉もなく茶飲み話を行うだけでも時効中断効が付与されてしまうこととなるが、それでは当事者の合意のみにより時効期間が延長されてしまうこととなり、民法との整合性を図ることができないのではないか。

○ ADRは、当事者間がお互いに合意することが主目的なのであるから、茶飲み話的な要素は本質的に伴っているものである。また、茶飲み話の事例は例外中の例外である。いずれにせよ、この議論の基準にすべきではないと考える。

○ 要件については、事前確認制度導入の有無の問題とは切り離しては論じられない。事前確認制度の必要性そのものに議論はあるが、事前確認制度を採らなかった場合、どのようなスキームがありうるのか考えてみた。
 その場合、裁判所が事後的な認定を行うことを勘案する必要があるし、仲裁法とのバランスを考えなければならない。私は3点の要件が必要と考える。@調停の付託合意が書面でなされていること、A調停終了の事実が調停人によって終了証明書といった書面で出されていること。これについては、場合によっては確定日付を求めることもあり得るかも知れない。B調停の付託合意から一定期間以内に訴えを提起することである。
 これら、3つの要件を挙げた理由については、

@ 第1の要件については、とにかく、調停に時効中断効を付与する以上、調停が開始されていなければならず、それは、調停に要件を不要とした場合においても事後的に立証することは可能であるが、予測可能性を高め、確実性を上げるために書面性を要求すしたものである。また、仲裁との関係では、仲裁には時効中断効があるが、少なくとも仲裁は仲裁法に書面でなければならないと書いてあり、それとのバランスを取ったものである。

A 第2の要件については、これが裁判所に訴えを行うための起算点となるわけだから、この部分が確実に担保されていなければ困るからである。仲裁については、その後、訴訟に移行することが予定されていないため、このような要件はないが、仲裁にないからといって調停にも不要であるという結論にはならない。

B 第3の要件については、調停付託合意から一定期間で時効中断効を受けられる権利がなくなるということであるが、手続が始まって放置すれば時効完成を延ばせるかという問題に繋がるものであり、この点についてはパブコメにおいても多くの懸念があるところである。仲裁にはこのような制度はないが、仲裁は仲裁として完結しており、その後はないので、時効完成を延ばすことにより手続を引き延ばすことはない。
 以上は、客観的かつ外観的な要件であり、容易に判断が可能なのではないか。

○ 事前確認制度は、そもそも事前確認基準を設定できるのかという点に疑問を有している。事後確認制度を採っても、要件立てが困難であるという点は同様である。調停の開始時期と終了時期が明確でなければならないことはもちろんである。また、民法と整合的ではない制度設計を行うことには賛同できない。事後的に裁判所が判断できるような要件立てが可能かどうか。さらに、ADRの手続の実質があるということを要件立てすることができるのか。抽象的な要件とならざるを得ないが、それでは判断が難しく、当事者の予見可能性も損なわれると思われる。

○ 調停の実質を有することを要件として規定することは、価値評価的な文言にならざるを得ないため、困難と考える。よって、一定の期間の経過によって、実質的に調停が行われなかったものと見なせばよいのではないか。

○ 民事調停や個別労働紛争のあっせんの手続が仮に「茶飲み話」であったとしても、それらの手続の申立てによって時効が中断するのは、それらの手続においては、当事者同士がキチンと話し合いを行い、調停の実質が確保される、つまり茶飲み話とはならない見込みがあるということが制度的に担保されているからである。

○ 実質的にADRが行われたどうかについては、主宰者要件をもって判断するほかないであろう。つまりは「ここであれば間違いないだろう。」ということを判断するということになる。事前確認制度においても事後確認制度においても、規定すべき要件の内容は同じになるはずだと考えていたが、確かに、主宰者要件の立て方は難しい。ただし、予見可能性を担保するとの観点から考えれば、やはり事前確認制度を採用しなければならないのではないか。

○ たとえ茶飲み話を行っていたとしても、実際にADRの場に当事者が出席していれば、それは、話を纏めるつもりがあるということに他ならないのだから、それで要件としては十分であると考える。

○ 当事者が最初から話を纏める気が全くない場合には、時効中断効は付与されないと考えるべきではないか。

○ 話を纏める気がないのであれば、不調という形で終わるはずである。そもそも、当事者に問題を解決したいという意思がなければ、申立を行うはずがないのだから、やはり、ADRの実質が確保されるという要件は不要ではないか。

◎ ここまでの議論をまとめると、ADRについて時効中断効を付与する必要性があることについては異論ないものと理解する。今、問題となっているのは要件の書き方についてである。事後確認制度を採る場合には、裁判所が要件を判断することとなるが、このような場合には要件は簡潔に書く必要がある。もし、簡潔に書くことができないのであれば、事前確認制度を採って時効中断効を付与するのか、時効中断効の付与そのものをあきらめるのかといった問題になってくると思うが、他の委員の意見はどうか。

○ 消費者の信頼性を確保するという問題とADRの自由度を確保するという問題とを両立させることは難しい。消費者団体にも消費者の信頼性を確保するために事前確認制度を採ってしっかりしたADRを作っていくべきだという意見と、ADRの自由度を確保することが重要であるから事前確認制度は採用すべきではないという意見の双方がある。個人的には事前確認制度は採らないとの考え方に賛同する。事前確認制度さえあればよいという考え方には限界があるのではないか。

○ 私は将来的にはADR士などの資格を設けるべきであるとの考え方であり、そのような資格が創設されれば、事前確認制度を行う際の要件も書きやすくなると考えているが、現実的には、記録の作成や保存をどのように行うのかといったことが問題になると考える。個別の制度もあるので、ADRの共通の制度として位置づけるべきかどうかという疑問もある。

○ 事前確認制度は、必ずしも国による選別に繋がるものではなく、ADR機関に多様性に付与するための手段なのではないかと考える。時効中断効を付与してほしいと考えるADR機関が個々の判断によって時効中断効を申請すればそれでいいわけだから、時効中断効を付与されたADR機関は一流、そうではない機関は二流というたぐいの議論ではないのではないか。

○ 私も今の意見に同感であり、事前確認制度は多様なADR機関が現れるための道筋としての役割を果たすのではないかと考える。
 ADRの多様性を唱えつつ、時効中断効付与の要件に沿った手続を行おうとする機関の動きを批判するのは矛盾している。

○ 時効中断に関する要件は、主宰者との関係でのみ意味を有するものであるから、仮に事前確認制度を導入せざるを得ないのならば、機関ではなく主宰者を認定するという仕組みであるべきである。ただ、ADR士などの資格の創設については、1〜2年といった期間で片が付くような問題ではないから、将来の課題として謳えばよい。時効中断効そのものについては付与した方が良いかとは思うが、強引に導入すればよいのかと言われればそうでもない。そもそも、時効中断効付与の議論は、経緯として、中断効がなくて困っている機関が多く存在することによるものではなく、UNCITRALでの議論が由来となっているものと理解している。

◎ ADR時効中断効に係る事前確認制度の導入については、委員間で賛否が分かれているが、事前確認制度のスキームについての議論は十分に行われなかったものと理解している。事前確認制度については、各委員で抱いているイメージが千差万別であり、「とにかく反対」といった意見もあれば、「むしろ、ADR機関の多様化に資するもの」との意見もあった。仮に、事前確認制度を導入した場合、独立行政委員会のような機関ができるのか。そのような機関ができるとした場合、どのような機関になるのか。このあたりの問題については、事務局にも更に検討してもらいたい。

○ 先ほどから申し上げているとおり、私は事前確認制度の導入には反対する。資料24−1にも、考えられる事前確認制度のスキームとして「主務大臣は、確認制度の施行に必要な範囲で、報告徴求、質問検査、是正命令の権限」と書かれているとおり、報告徴求や質問検査そのものが既にADRの規制である。また、利用当事者からみてADRがどのような制度になるのかといった視点を欠落させてはならないと考える。当事者の立場から考えてみれば、一緒だと考えるのが普通なのではないか。機関によって時効中断効の有無に違いがあるとすると、ADR制度そのものが巧く機能しない。

○ 私は、当事者の視点に立って考えればこそ、事前確認制度の導入はADR機関に幅広い選択肢を提供するものであって、むしろ事前確認制度があることによってADR制度の自由度が増すのではないかと考えている。事前確認制度の導入によって主務大臣の関与など、ある程度の規制がかかってくることは否定しないが、結局は、規制というコストを支払ってでも時効中断効というベネフィットを得たいのか否かの問題に尽きるのではないか。

○ 時効中断効の付与によってADR機関にとっての選択肢が増えることについては歓迎する。ただ、他方、事前確認制度を導入した場合、選択しなかった者が不利益を受ける可能性があることを懸念する。

○ 利用者が安心して申立を行うことができるか否かが重要である。
 利用者側の立場からすれば、どの機関が事前確認を受けていて、時効中断効を付与されているのかがわかることが重要である。そのような措置を講じてはじめて、ADR制度に対する利用者の信頼を得ることができる。要件については、主宰者を要件とするにしても、結局、ADRの事案ごとにADR機関の担当者が主宰者を選任する能力を保証することとなるのだから、ADR機関を保証することで十分と考えている。

◎ 議論の方向性が概ね決まったのではないか。要件はなるべく簡素なものとし裁判所が個別に判断するという考え方と、主宰者要件も含めた実質的な要件をしっかりと書くべきで事前確認制度も仕方がないという考え方の2つの意見にわかれている。
 個人的な見解であるが、私は、委員間で賛否両論はあるものの、事前確認制度の導入については、制度としては成立しうると考えている。裁判所の事後確認のみによる実施は、選択肢としては細い道であると考えているが、結論が出なかったので、今後とも、この検討会において追求していくべき論点であると考える。
 また、事前確認制度に反対する委員から出された論点については、特段の突っ込んだコメントが出てこなかったので、引き続き、次回の検討会でも議論したい。

○ 座長のコメントに一言追加したい。今回の議論で、そもそも実質的な要件をしっかりと書くことができないのではないかとする委員もいたことも留保されたい。

◎ まだ事前確認制度のスキームそのものについては検討していないので、その部分についても議論していきたい。事務局のイメージ案をもとに、この検討会の場できちんと議論していきたいと考えている。

(2)執行力

 次に、資料24−2に沿って事務局より説明を行った後、ADR和解の執行力についての議論が行われた。

◎ 時効中断効の付与の問題とは異なり、執行力については1.の「執行力付与の必要性」が最大の論点であると考えているため、まずは、執行力付与の必要性の有無について議論いただきたい。

○ 私は、理論的根拠が不明確なので、執行力は不要であるというよりもむしろ、そもそも規定を置くことができないと考える。これは、UNCITRALのモデル調停法の議論でも結論が出なかった部分である。理論的根拠が不明確であるとする最大の理由は、ADR和解に執行力があり、相対交渉には執行力がないとされた場合、それはどのような理屈によるものなのかが説明が付かないからであるとともに、民法上の契約であるにもかかわらず、和解の成立過程が異なるという理由のみをもって結論が変わってくることには合理性に欠ける。

○ 私は、執行力の付与に積極的な考えである。しかしながら、現実問題としては濫用される危険性があるので、適格性の要件はしっかりと見ていくべきであると思う。とりわけ、主宰者が公正・適確に手続を遂行する能力があるか否かについては、重要な要件である。

○ 執行力は強力な法的効力を有するものであるから、どのようなADRに執行力を付与するかについては、法律に具体的に規定することが適当と考える。また、事前確認制度と結びつくような制度を創設することには反対である。事前確認制度がどうしても必要なのであれば、執行力の付与は将来の課題とすればよいのではないかと考える。

○ 今はまだ、どのようなADRが出てくるのかわからないのが現状である。そのような現状でADR機関に執行力を付与することは、時期尚早なのではないか。また、執行力が利用者、消費者サイドから見て、実際にどの程度のニーズがあるのかも不明である。個別法で工夫していくこと、もしくは、仲裁法の活用を考えることとし、将来の課題としてはどうか。

○ 執行力を与えられなくとも機能しているADR機関は存在するものの、やはりADR制度を裁判と並ぶものとするためには、執行力を求める者に対しては執行力を与えたい。「ADR和解が不適切に利用されることによる弊害」と「理論的根拠が不明確であること」が不要論の根拠であるが、弊害については全てのADRに付与するわけではないこと、理論的根拠が不明確であることについては仕組みを工夫すれば不可能ではないと考える。
 司法制度改革推進計画では大きなADRの基本的枠組みを求めているが、現在の議論の状況をみれば、辛うじて法律事項になりそうな事項は時効中断効の付与くらいである。法律としてバランスが悪すぎるのではないか。時効中断効のための事前確認制度に対して申請が出てくるのかも疑問である。執行力付与のための事前確認制度を設けることができれば、十分に説明が付くのであるが。弁護士会の仲裁センターも、時効中断効のみでは確認を申請しないのではないか。

○ 執行力は非常に強力な法的効力を伴うものであるから、事前確認制度で求める要件も厳しいものにならざるを得ない。一般的に、ADRに対する厳しい規制には反対する意見が多い。

○ 消費者団体からの聴き取りでも、時効中断効の付与についての賛否は制度の内容次第であるが、執行力の付与には反対する声が多い。

○ 執行力を付与しなければADRが活性化しない、付与すれば活性化するという類の話ではないと考える。ADRの利用が低調な理由は他にあるのではないか。現に仲裁では執行力が付与されているにもかかわらず、それ程活性化されているとは思われない。
 また、ADR法については、端的で簡潔な法律にすることが必要と考えており、時効中断効の付与があればそれで十分ではないか。

○ この問題については中央労働委員会でも検討したが、例えば、紛争の種類の違い、金銭解決問題であれば執行力が付与され、解雇問題であれば付与されないといった話になるのか。ADR法の中で一律に規定することには無理があると思うので、個別法に規定することが適当なのではないか。

○ 個別法によって行政型ADRに執行力を付与することは考えられるが、それでは、行政型ADRだけが活性化し、民間型ADRは活性化しないといった事態にもなりかねない。それでもかまわないのかといった懸念がある。

○ 執行力の付与については、限定的な適用でも構わないので、あった方がよいのではないか。

○ 執行力の付与に反対する立場の人には、執行力が強力であることから、かえってADR制度を利用しにくくなるという考え方も根強く、これを無視して議論するのはいかがなものか。

○ 審議会意見書の「執行力を具体的に検討すべきである」との文言は、あくまでも、ADRの活性化といった目的のための一手段として例示されているものに過ぎないのではないか。

○ 審議会意見書においては「執行力を『検討』すべきである」と言っているのであって、執行力について検討した結果、導入するのは時期尚早という結論に到ったのであれば、それはそれで意見書に従ったことになるのではないか。

○ そうであれば、ADRの拡充・活性化のため、執行力の代替案を提示すべきである。

◎ 執行力の付与については、仮に付与するとなった場合においても制度設計の面において検討すべき点が多い。制度設計の点については、立ち入った御意見は特段なかったが、検討すべき課題は多い。  今回は、必要性の有無について議論したが、意見が両極に分かれた。反対論には傾聴すべき意見が少なくなかったのではないかと考えるので、いずれにせよ、執行力の付与に踏み切るためには、その反対論の論拠を打ち破るだけの説得力ある理由が必要になるものと理解している。

(3)弁護士法第72条の特例

 最後に、資料24−3に沿って事務局より説明を行った後、ADR主宰・代理行為等に係る弁護士法72条の特例に関する議論が行われた。

◎ 弁護士法72条の問題については、大きくわけて主宰と代理の問題があるが、まずは、主宰の問題から議論を進めていくこととしたい。主宰に係る72条の特例の必要性については、意見募集の結果などを見ても、時効中断効付与の必要性の問題と同じく、賛成意見が圧倒的多数を占め、特例を不要とするものであっても、特例そのものを不要とするのではなく、その内容に異議を唱えるものが大半であった。
 よって、この検討会においても、主宰については72条の特例を設ける必要があるという意見を前提としたいと考えているが、このことについて特段の御意見がなければ、2.の「考えられる案」について議論していきたい。
 また、一般論として3.の「事前確認の必要性」についてどう考えるか。特例の必要性や考えられる案を議論いただく際に、併せて事前確認制度の必要性についても触れていただきながら御発言願いたい。

○ 議論の方法の問題について、私自身は調停と仲裁をわけて議論する必要はないと考えているが、調停について要件を厳しく考えるのであれば、仲裁については調停とは別扱いにしてもらいたい。仲裁については国際的なスタンダードが存在し、仲裁の主宰や代理については国際的にも資格を制限している事例は存在しないと理解している。弁護士でなければ仲裁を行うことができないということになれば、国際商事仲裁などで大問題となる。私は、調停についても仲裁と同様、緩やかなものにすべきと考えているが、手続面の問題を考えると、調停については何らかの要件が必要になると考えている。

○ 私は、従来は資料24−3でいう〔B2案〕に賛成していたのだが、その後、議論を重ねるうちに、〔B2案〕を採用した場合、結局は事前確認制度も併せて採用せざるを得なくなる上に、弁護士の関与を不要とすることは困難だから、現在は、調停については〔B1案〕、なかでも〔B1−2案〕が最も合理的なのではないかと考えている。
 仲裁については国際的な実績があるから資格を制限する必要はないと考える。〔A案〕は十分に採りうるべき選択肢である。調停の場合は、人的な面で主宰者の能力が重要になってくる。消費者や労働者などの弱者に対する配慮の観点からも弁護士の関与等の条件が必要ではないか。

○ 主宰については72条の特例を認めるべきであるし、その際、事前確認制度は必要ないと思う。調停に関しても特段、仲裁と区別して論じるべき必要性はないと考えている。この際、仲裁はもちろんのこと、調停についても規制なしでやっていくべきではないか。

○ 72条については、そもそも成り立ちから言っても性善説では処理できない側面がある。弁護士の関与が必要とすれば、罰則をかける際にどのように確認するのかという問題が発生するので、ここは個別法で対応する以外にないのではないか。

○ 「不適格者の排除」についてであるが、ここでいう不適格者の具体的なイメージは、どのようなものを想定しているのか。

● 例えば、暴力団関係者などである。

○ 懲戒歴がある弁護士なども不適格者に該当する可能性はあるのではないか。

○ 仲裁法における収賄罪に該当した者なども不適格者に該当するのではないか。

○ 不適格者に何を採り入れるのかについては、過度に範囲を広げすぎることには反対する。

○ 仲裁は〔A案〕を採用すればしてもよいのではないかと考える。 ただ、調停やあっせんは非常に多様なので、〔B1−2案〕が最も適当と考える。
 ただし、手続の始めから終わりまでを考えると、和解案の提案時、調停の終結時に弁護士が関与していれば足りるという考え方もあり得るのではないか。また、不適格者の排除については必要と考える。

○ 不適格者を排除することは必要であるが、例示がないとイメージがわかれる。いくつかのカテゴリーに具体的に区分して考えるべきではないか。

○ 主宰者の資格要件についてであるが、調停についても弁護士の関与は不要ということにはならないか。調停であるからといって、一律に弁護士の関与を必要とすることには疑問を感じる。

○ 私は、〔B2案〕が適当と考える。ひとつひとつの手続に弁護士が関与することとなれば時間がかかるし、弁護士以外の専門家に頼った方がよい場合もある。迅速性を旨とすべきである。また、事前確認については必要と考える。

○ 〔C案〕は魅力的な選択肢であるが、来年、再来年にどうにかなるといった問題ではない。将来の課題といった位置づけとなるのではないか。

○ この検討会の任務はADR法の検討に尽きるものではない。よって、ADR士の資格創設のような議論についても、時間が許すのであれば行っていくべきである。

○ 単にADR士の資格が創設されれば、それで巧くいくというものではない。

◎ 相談の取扱いについては、ADR法全体の問題において相談を入れるか外すかといった問題となるので、それについての議論は、ここでは留保したい。

○ 相談については、消費者団体などからもかなりの意見があったところであり、規制は困るとのことであった。ADR法の「理念」の部分には相談業務も含めてもらうが、手続規定からは外すこととしてはどうかと思う。

○ 相談については、総論での議論を踏まえて判断したい。

◎ ADR代理行為に係る72条の特例については、必要論と不要論が両立する。代理は主宰よりも高度な法的知識が必要な業務であり、特例の対象も限定されてくる。ADR検討会でどこまで議論を尽くすべきかといった問題がある。差し当たっては、本日は2.の「考えられる案」の「(2)検討対象手続の範囲」を中心に議論を進めていきたいと考える。

○ 2.の(1)の「検討対象者の範囲」において「検討の対象範囲は、隣接法律専門職種等の資格保有者となるか」と言い切っているが、仲裁についてこのような断定を行うことは不当である。仲裁の活性化の観点からすれば、国際的に代理が制限されるのは適切ではなく、また、国際仲裁では外国法によるところも多く、必ずしも日本の資格者が適切であるとは言えない。また、仲裁については、仲裁代理で議論されており、この場で議論することが適切かどうか疑問である。そのことは議論の前提として踏まえておいた方がよい。

○ 実務上では、隣接法律専門職種ではないが、一級建築士などもその専門的な知見を活かしつつ、活躍してもらっている。その辺りの職種の人達については、機関の承認があればADR代理が可能であるとしてもよいのではないか。

○ 隣接法律専門職種によって行っている業務にバラツキがあり、日弁連も「紛争を扱う」との観点からそれぞれの職種に対するニーズを考えてくれないかと言っている。紛争解決を業としているか否かを考えると、司法書士や弁理士などは実際に法廷に立っているのだから問題ないのではないかと考える。その他の職種については、代理の方が主宰よりも高度な法的知識が求められることを前提とすれば、簡単に意見を述べることはできない。
 また、検討対象手続の範囲について〔A案〕でよいと思う。
 しかしながら、ADR手続の外でちょっと相手方の意向を訊いてみたいという場合はもちろん想定され、それすら認められないということでは一切が無権代理になってしまい、制度として硬直的に過ぎる。

○ 〔B2案〕がよいと思う。代理権を付与する範囲を隣接法律専門職種に限るのであれば、彼らはそれぞれの専門分野においてはプロフェッショナルなのであるから、代理行為の範囲に制限を設ける必要はない。

○ 検討対象手続の範囲や対象となる分野に関する線引きは難しい。将来、それぞれの分野での議論を踏まえ、個別法で検討する方がよいのではないか。

○ 〔B2案〕が適当なのではないかと考えている。また、個別法に手当を行うことは全体のスキームが見えてこないので、反対である。規定するのであればADR基本法に規定を置くべきであろう。

○ 〔A案〕をベースにしたいと考えているが、A案を採用した場合、ADR機関を個別に指定していくしか方法はないと思う。

○ 〔B2案〕に賛成である。また、各隣接法律専門職種ごとに検討の上、各個別法にADR代理の規定を置くことは差し支えないと考える。ADR法にはなかなか規定を置きにくいだろう。ただ、検討会で指針を示すことは必要であろう。

○ 仲裁は、仲裁人が法律的判断を示し、代理人が法律論を戦わせるようなものではないので、仲裁代理については幅広に考えていくべきと考える。調停と仲裁を分けて考えていくべきではないか。

◎ ここまで、72条について議論してきたが、未だに意見が分かれているところである。まずは、主宰行為に72条の特例を設けるか否かについてであるが、これについては特例を設けることが前提になっているものと理解した。案としては、仲裁については〔A案〕を支持する意見が多かった。調停については〔A案〕を支持する委員もいたが〔B1−2案〕に賛同する意見も多かった。また、〔C案〕は将来の方向性として考えるべきとの意見もあった。
 代理行為については、仲裁代理について検討対象者の範囲を限定することに反対する意見があった。また、調停代理についても検討対象手続の範囲を〔A案〕とするか〔B2案〕とするかで意見が分かれた。

 次回の第25回ADR検討会は、11月17日の午後1時半から開催し、これまでの検討会の議論や意見募集の結果、現行制度との整合性といった法制的な側面からの要請などを総合的に勘案し、現実論として考えられる「ADRに関する基本的な法制の整備についての体系的なイメージ」を事務局が提出し、それを素材として、論点全体を通して議論を進めていくこととなった。なお、座長から、事務局に提出願う体系的なイメージは、議論の収斂を図っていくためのいわば道具であって、決して、最終案の提示といったものではない旨の確認があった。

(以上)