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ADR検討会(第3回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成14年4月15日(月)14:00〜17:00

2 場 所

司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
青山善充、安藤敬一、木佳子、原早苗、平山善吉、廣田尚久、三木浩一、山本和彦、横尾賢一郎、綿引万里子(敬称略)

(説明者)
田中圭子(全国消費者団体連絡会司法制度改革研究グループADRワーキンググループ)
田島恵一(日本労働組合総連合会(全国一般労働組合中央執行委員長))

(事務局)
松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林徹参事官

4 議 題

(1) 民間ADRに対するアンケート調査の結果について
(2) ユーザーからのヒアリング
(3) 討議

5 配布資料

資料3−1 民間ADRに対するアンケート調査の結果
資料3−2 御議論用メモ(参考)
資料3−3 経済団体連合会関係資料
資料3−4 全国消費者団体連絡会関係関係資料
資料3−5 日本労働組合総連合会関係資料

6 議 事

 (1) 開会

 (2) 民間ADRに対するアンケート調査の結果について

 民間ADRに対するアンケート調査の結果について、事務局より説明があった。
 これに関して、次のような質疑応答がなされた(○:委員、●:事務局)

○ (1)行為規範や運営規範等を制定していないと回答した機関には、どのような特徴がみられるか。(2)紛争解決事例を公開している機関には、公開に当たって当事者の同意を不要とする者が多いようだが、どのような理由によるものか。(3)執行力の付与が必要と回答した機関には、債務名義の付与に限らず、強制的な調査権限のような措置も含めて広くとらえている者もいるのではないか。

● (1)例えば、別の主たる業務に附帯して行っているような場合には、特に規範を制定していないというものもあるようだ。(2)当事者が特定できないように工夫して公開しているのではないか。(3)大部分の機関には債務名義の付与であることを理解してもらっていると思われるが、一部の機関には広い意味でとらえられている者もみられた。

○ アンケートの回答をADR機関の類型別に分類するなど、分析を進めてもらいたい。

● 機関名が特定されないように配慮する必要もあるが、今後各論を議論いただく段階では、さらに細かな分析も考えてみたい。

(3) ユーザーからのヒアリング

 経済団体連合会、全国消費者団体連絡会、日本労働組合総連合会よりヒアリングを行った。
 各説明者より、次のような発言があった。

・ 経済界の立場としては、簡易・迅速、廉価に、消費者契約法やPL法に関連するようなB2Cの紛争(消費者との対応)や知的財産権やITのような専門性の高いB2Bの紛争を解決する手段としてのADRに期待があり、その充実には賛成の立場である。また、私的自治を重視する観点から、市民コートのような新しいタイプのADRにも目を向けて議論して欲しい。
 なお、ADRについて検討する上では、(1)ISOなどの国際的動向にも十分注意を払い、すぐに手直しが必要となるような事態を避ける必要があること、(2)B2Bの紛争は今後増加することが予想され、合理的な解決方法の提供が望まれること、(3)業界型ADRなどB2Cの紛争解決機関については、中立性を追及するあまり当事者の納得が得られないという結果が生じるおそれや、アウトサイダーへの対応による過重なコスト、裁判との連携等のため手続を厳格にするとかえって解決が進まなくなるおそれがあることなどについて留意する必要がある。

・ 消費者の立場としては、消費者問題を解決する選択肢としてのADRに期待がある一方で、現在のADRや司法に対しては、例えば、業界型ADRにつき手続が可視的でない、有償で紛争解決に携われる者が法曹に限定されている等の点で不満を有している。消費者の立場からは、(1)ADRは、当事者が合意し、納得する解決が得られるものであることが重要で、(2)当事者が主宰者や解決方法を選択できるよう、情報開示等が行われる必要があり、また、(3)主宰者は、法的知識以外に、コミュニケーション能力を習得する必要があると考える。
 なお、ADRに関する手続が機関によってまちまちである状況のまま、執行力等の法的効果を付与することは時期尚早であり、まずADRの定義付けをはっきりする必要があると考える。

・ 労働者の立場としては、基本的には、行政型ADRの充実が必要であると考える。一方で、現状をみると、労働委員会は紛争解決の迅速性が失われつつある。また、一方当事者が労働委員会での解決に消極的である場合は解決の場としては無力である。そのため、労働委員会の権限を強化するなどして、ADRとしての実効性を確保することが重要である。また、労働組合で交渉に携わってきた者の委員への登用や、事務局体制の専門化等についても検討されるべきである。

 委員と説明者(説明者である委員を含む)との間で、次のような質疑応答がなされた(○:委員、●:説明者)

○ 経済界の立場からADRが「廉価」であるというのは、どのような状態を念頭に置いているのか。

○ 業界にとっては、ADRの運営にはコストがかかると思われるが、総体として業界が負担するコストについてはどう考えているか。

● 一般に、弁護士費用がかからないことをもって「廉価」であると言っている。

○ 中小企業の場合、PLセンターでの解決事例は次の製品を作るための重要な資料となるため、紛争解決にコストがかかっても「廉価」であるということができる。

○ ADRといっても、仲裁型と調停・あっせん型とでは、手続の質がかなり異なってくると思われるが、消費者、経済界はそれぞれ仲裁型と調停・あっせん型のどちらを主眼にADRへの期待を表明しているのか。

● 消費者問題の分野では、当事者間の情報格差が大きいこと等を前提とすると、現実問題として、最初から仲裁を念頭に置くことは難しく、調停・あっせんが中心とならざるを得ない。一方、当事者の一方のみが主宰者の判断に拘束される片面的な仲裁も現に議論されており、消費者問題の中で仲裁をどのように取り扱うかについては、引き続き考えていくべき問題である。

● 仲裁は当事者の選択肢を狭めてしまうという意見もあって、経済界でも広く活用されるということにはなっていない。

○ 消費者団体としては、調停・あっせん手続の担い手を法曹有資格者が独占するのは適当ではないと考えているのか。また、ADRの定義付けを考える際のポイントはどこにあると考えているか。

● ADRの担い手を法曹有資格者に限るべきではないと考えている。また、司法制度改革審議会意見では隣接法律専門職種の活用が挙げられているが、そこでとどまっていては法曹有資格者が独占するという従来の枠組みが大きくは変化しないのではないかと危惧している。
 ADRの定義付けについては、第三者の関与の仕方について考えるほか、手続のプロセスを細かく分析してADRの定義を明らかにする必要がある。

○ 消費者団体としては、ADRには法曹有資格者が入っていない方がよいと考えているのか。それで本当に紛争が解決できるのか。

● 紛争には、法的な論点が問題となっている場合もあれば、当事者間のコミュニケーションの不足が問題となっている場合もある。ADRは解決方法の情報を開示して、どのようなADRで問題を解決するのが適当かについて、当事者が選択できるようにすべきである。

○ 当事者が選択するためにADRが開示すべき情報としては、どの程度のものを考えているのか。

● 手続主宰者のプロフィールのほか、解決方法の内容や、これまでの解決事例など当事者が選択できるだけの情報の開示が必要と考える。

○ 労働委員会は制度が確立したADRの典型例であると思われるが、紛争解決の実効性が失われていると思われる理由は何か。

● 当事者が労働委員会の命令等に従わない態度を強く示すような場合などには、労働委員会は無力化してしまう傾向があり、強制力を担保する手段の付与が必要である。

○ 私的自治による紛争解決を実現するためには、当事者全体のレベルの底上げを図る必要があると思われるが、実際にはどのような者がADRに相談に訪れているのか。

● ADRに相談に来るケースは氷山の一角であり、苦情を持つ者はその何十倍もいると思われる。

● まず不満を聞いてくれる場があるということが重要であり、多くはアドバイスをすることで解決している。

(4) 討 議

 ADRの現状や課題等について、委員間で次のような意見交換が行われた。

・ 今後の検討を進めるに当たっては、制定すべき法律の構成のイメージを持ちながら議論していく必要がある。ADRのメリットとして、紛争解決手段の選択が可能であることや、当事者が主体的に参加できること等に目を向けるべきであり、一般にいわれている簡易・迅速・廉価といったADRの特徴はその結果に過ぎないことに留意する必要がある。また、ADRのあるべき姿としては、単なる裁判所の露払い的な役割を超えた可能性を探るべきである。
 ADRの認知度は信頼性を高めればついて来るものであり、そのためADRの基本理念と制度の確立を図り、透明性を高めるとともに、担い手のトレーニング手法を拡充し、質の確保を図るべきである。また、執行力の付与については、当事者の選択の余地が確保されることを前提に、十分に議論する必要がある。

・ 紛争解決制度全体の質の向上を図り、当事者が自分に合った紛争解決手段を選択できるようになるためには、ADRがサービス内容のいずれか一つでも裁判に勝ることによって、裁判と競争可能となることが必要である。つまり、国ではなく国民のニーズに応えるという観点から制度を整備する必要がある。
 翻ってADRの現状をみると、認知度・信頼性が低く、裁判と競争できるような基盤に欠けている。このうち、認知度に関しては、アプリオリに認知された存在である裁判と競争し得るようにするためには、少なくとも、ADRを法律で認知し、国としての取組姿勢を明らかにする必要がある。一方、信頼性に関しては、国が個々のADR機関の信頼性を許認可等によって具体的に担保することは相当ではなく、法律では、最低限の規律を定めるにとどめ、情報の開示と組み合わせることによって市場の淘汰に委ねることが望ましい。ただ、裁判と競争し得るサービスを提供できるように法律の規定を置くことは必要であり、時効中断効等の諸項目につき検討を進めるべきであるが、その際、各ADR機関の目指すサービス内容によって、必要な項目が異なってくることを前提に、ある程度の機関からの一定の需要があれば、できる限りそれに応えるという姿勢で検討に臨むべきである。

・ 検討の進め方については、仮定的にでも具体的な論点をあげていかないと議論が進まないのではないか。このためには、(1)審議会意見にあげられた法的効果の付与等に関する5つの論点についての議論、(2)国の責務等の基本理念の構築についての議論が必要であって、(1)の議論を進めるのは非常に厳しいものがあるが、取りあえず(1)の議論に挑戦してみるべきではないか。
 また、(3)ADRを国民に広く認知してもらうためには、ADRという言葉を分かりやすい日本語に訳す必要があると思われ、名前の公募なども考えてみてはどうか。

・ ADRを必ずしも裁判と同じレベルに位置付けるべきと考えるのではなく、ADRにもいくつかのレベルがあると思われ、裁判の前段階に位置付けられるADRがあってもよいのではないか。また、現状のADRは縦割りで組織されている面があるので、より包括的な観点から議論すべきである。

・ ADRが裁判と並ぶ選択肢となるという議論は、裁判が紛争解決の最終手段であるということと必ずしも矛盾するものではない。法的判断のみによらない紛争解決の手段としてADRが根付いていけばよい。ただし、十分な制度設計が行われないままに、簡単にADRに法的効果を与えようとする議論は危険である。

 次回は、5月13日(月)14時から2〜3時間程度。今回の討議の続きを行った後、審議会意見で指摘されている法的効果の付与等のうち、時効中断効について検討することとなった。

(以上)