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ADR検討会(第4回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成14年5月13日(月)14:00〜17:00

2 場 所

司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
青山善充、安藤敬一、木佳子、龍井葉二、原早苗、平山善吉、廣田尚久、三木浩一、山本和彦、横尾賢一郎、綿引万里子(敬称略)

(事務局)
松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、小林徹参事官

4 議 題

(1)ADRに関する基本理念について
(2)法的効果の付与等について(その1)(時効の中断効の付与)

5 配布資料

資料4−1 ADR検討会において出された意見等
資料4−2 議論用資料(基本理念関係)
資料4−3 説明資料(時効中断効の付与)
資料4−4 参考資料(時効中断効の付与)
資料4−5 金融分野の業界団体・自主規制機関における苦情・紛争解決支援のモデル(金融トラブル連絡調整協議会)

6 議 事
 (1) 開会

 (2) ADRに関する基本理念について

 第3回検討会に引き続き、ADRに関する基本理念について討議が行われ、以下のような意見が出された。

○ いわゆるADR基本法に関する検討に臨む基本姿勢、留意点として、次のようなことが挙げられるのではないか。

  •  まず、基本姿勢として、多様なADRを一括りにせず、制度の中身・目的に応じたきめ細かな議論を心がけることが肝要である。例えば、国としてADRを認知し、ADRに健全な発展基盤や法制度の基礎を提供するという場面では、相談・苦情処理のように、必ずしも紛争解決の仲介をする形態ではないようなものもADRの一部と位置付けた議論が求められる一方、ADRに一定の法的効果を付与するという場面では、本来的な意味でのADRを対象に検討を深める必要がある。
     そのためには、ADRとは何か、本来的なADRと相談・苦情処理はどこに境界があるか、あっせんと調停は区別されるのか、行政型・司法型ADRをどこまで取り込むのかといった概念の整理を、いずれかの段階できちんと行う必要がある。
  •  いわゆるADR基本法を制定する場合の留意点としては、@基本法の制定により既存の多様なADRの活動が制約されたり、特定のADRのみが有利・不利に取り扱われたりすることのないようにすること、A規律は最低限のものに留めること、B法的効果を付与する場合に弊害除去のために一定の要件を設けるとしても、事前規制ではなく事後審査を基準とすること、C国が支援等や関与する場合でも、できる限り、ADRの自主性が尊重され、市場原理が決定する領域を広くとるべきこと等が挙げられる。

○ 議論を進めていく前提として、今一度、意見書にいう「裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるようADRを拡充・活性化する」という言葉の意味をじっくりと考える必要があるのではないか。

  •  ADRを裁判と対比させて簡易・迅速・廉価に紛争を解決できる手段としてマジック・ワードであるかのように捉えられており、ADRへの期待が大きくなり過ぎていると思われる面もあるが、簡易さ・迅速性・廉価性のいずれをとっても本質的に難しい問題があり、ADRにも限界があることを認識しておく必要がある。
  •  相談者が二次被害に遭遇しないための担い手要件として、弁護士法72条が存在することから考えれば、その精神を外すことはできないと考えている。このため、紛争解決の担い手としては、法曹有資格者が中心となるべきであり、紛争の種類によって他の専門家を関与させることを考えるべきである。
  •  国としては選択が可能となるだけの基盤を用意すればいいというものではなく、ADR基本法の制定、法的効果の付与等によるADRの利用促進を議論するからには、拡充・活性化された姿につきある程度具体的なイメージを持つ必要がある。
     前回の議論で示された、@裁判所の効率化を図る観点から、裁判手続とADRの役割分担を図る、A行政的手法により、簡易・迅速に権利救済を図る、B私的自治の観点から、当事者が選び出した規範に基づいて自律的規範による解決を進める、というADRへの期待に関する3類型をベースに、各々にどのような価値を置いて、どの程度の拡充・活性化を図っていくのかを示す必要があるのではないか。
     例えば、@のADRとしては、弁護士会仲裁センター等がその典型であろうが、準司法機関という位置付けからすれば、ADRにおける結論が裁判における結論に近いものとなる必要がある。また、AのADRとしては、国民生活センターやPLセンター等の相談・苦情型ADRへの期待ということになろうが、いわゆる行政型ADRについて、全体として、行政への依存、あるいは縦割行政を温存しつつ裁判へのバイパスを作り、実質的に行政の肥大化を招くこととなっていくことが、本当にADRの魅力の向上につながるのかという問題があることを認識する必要がある。Bについては、裁判所において扱いにくい紛争、あるいは規律がまだ確立されていない分野の紛争の解決を図る領域において、ADRの価値が認められるのではないか。
  •  ADRの制度基盤に関しては、ADRの認知度を向上させるためにも、いわゆるADR基本法を制定することは望ましいと考える。一方、法的効果については、ニーズ・有効性を踏まえて検討を進めるのであればともかく、効果を付与することばかりが先行する議論には賛成できない。
     まずは、例えば、3類型のADRにつき、これらをどのように伸ばしていくのかについて検討する必要があるのではないか。なお、弁護士会仲裁センターを念頭に法的効果の必要性を考えると、ADRは自律的なものであるべきという考え方があるので、時効中断効は別として、他はどうしても必要なものとは思われない。もっとも、弁護士会にもいろいろな考え方はあろう。
  •  ADRの事業収益に対する税務上の取扱いについても検討が必要ではないか。
  •  少額紛争については、簡易裁判所等と並ぶ受け皿として弁護士会仲裁センター等の活用が考えられるのではないか。

○ 近代は、権利に基づく物理的な強制力や法の有権判断を国家が司法権として独占する一方で、各人が法的な主体性を持って自分の問題は自分で解決し得る私的自治の原則を貫くという、2つの源流を特色とし、ADRは後者から導かれるもの。ADRへの期待が大きすぎるという意見があったが、この検討会では、ADRは「近代」の意味にも関わる大きな問題として捉えて基本理念の構築を目指していくべき。

○ 労働紛争を念頭に置くと、一方当事者にはトラブルが存在することすら認識のない場合も多く解決を図るために公的権威が必要な場面もあること、裁判によって白黒を付けるのではなく、その前段階で表沙汰にしない形で決着をつけた方がよい場合も多いこと等を踏まえると、紛争の種類に応じて適した紛争解決手段、適したADRのタイプがあるのではないか。

○ 消費者の立場からいえば、次のような点に留意して検討を進めることが必要。

  •  国民生活センター等の現状をみると、相談件数が非常に多いということも検討の視点として必要。
  •  行政型ADRの拡充が行政の肥大化につながるという意見があったが、事業者と消費者の間に交渉力・情報力の面で大きな較差があることを踏まえると、すべての紛争解決を司法型ADRや民間型ADRに委ねられるのかという疑問がある。ただ、いずれにせよ、行政型ADRのあり方についてはきちんと考える必要がある。
  •  ADRの議論は幅広く国民の意見を汲み取って進めていく必要があるが、検討会で議論が進んでいることすら十分には知られていない。国民の意見を聞く方法についても、今後半年間程度の間に考えてもらいたい。

○ 社会に生じる様々な問題について、第三者が援助することで自主的な解決が可能となるケース、代理人に頼んでしまったために解決が困難になるケースも多くあると思われる。裁判と並ぶ競争力を持った紛争解決手段というよりも、裁判に持ち込まなくても済むような紛争解決手段として、ADRというものを議論する必要がある。法的効果を与えるか否かを与えるかを先行させるよりも、多様な紛争解決のメニューがあるという情報を広く提供していくシステムの構築や主宰者の質の確保について議論することが必要ではないか。つまり、最終的な法的な決定がなくても円満に解決が図られるようサポートする機関としてADRを育成することについて議論する必要がある。

○ 裁判と並ぶ魅力的な選択肢」という言葉の意味に関して、ADRは、裁判と同じレベルで並ぶものではなく、裁判を支えるものとして捉えていくべきではないか。また、裁判に至るまでに何段階もあり、それぞれの段階において適切なADRがあると考えないと意味がない。さらに、ADRの担い手については、利用者の選択の幅を広げることも重要ではないか。

○ ADRは担い手の質に負うところが大きい。自分の経験でも、代理人、鑑定人等の形で第三者が関与することでかえって紛争が複雑化してしまうこともあり、そういう意味でも、主宰者の中立性・公平性の確保や主宰者・機関に対する支援は重要である。

○ 意見書において、ADRについては、裁判と並ぶ魅力的な選択肢ということがいわれているが、これは裁判を否定するものではなく、私的自治に基づく紛争解決という多様な選択肢があってよいということである。

  •  裁判が現状よりも魅力的になっていかなければならないことは司法制度改革の趣旨である。一部の国際的な紛争のようにADRによる解決を図らざるを得ないものもあるが、裁判で解決されるべき紛争が裁判の不備のためにやむなくADRでの解決が迫られているのであれば、それは裁判制度の見直しを行うことが本来のあり方である。
  •  ADRのベースとなる私的自治とは、当事者による自己決定・判断が必要になるものであり、ADRをアピールしていく場合には、その点を言わないと、ADRという制度があっても使われないということになる。

○ @裁判と並ぶ魅力的な選択肢とすることの意味を、ADRを裁判に近づけると捉えるのではなく、ADRが本来的に有する特長を更に発揮できるようにすると捉えること、AADRに対する公的支援として、最低限の法的保障を与える必要があること、の2点を基本的な視点として検討を進めるべき。また、@、Aについて考える大前提として、B国家としてADRを含めた紛争解決方法のあり方についてどう考えるかという問題がある。

  •  @に関しては、ADRは、方法、紛争分野等の面で多様性を有すること、柔軟な解決が可能であること、裁判と異なり当事者が主体であって主宰者は当事者の自主解決を支援・補助する役割にあること、非公開が特長ではあるが透明性を確保するためには機関に関する情報開示が求められること等を念頭に置く必要があろう。
  •  Aに関しては、多様なADRにつき法的保障を与える対象の線引きに取り組まなければ議論は前進しないことを念頭に置く必要があろう。
  •  Bに関しては、他の意見にあったように、裁判とADRの関係は近代の司法・私的自治に根ざす大きな問題として捉える必要があること等を念頭に置く必要があるが、いずれにせよ、検討の最後の段階で今一度Bに立ち戻る必要がある。

○ ADRに該当する日本語がいまだ確定しているとはいえないため、自主的な解決することができることを示すメッセージ性を持ったものになればと考える。

 (3) 法的効果の付与等について(その1)(時効の中断効の付与)

資料4−3に沿って、説明が行われた後、以下のような討議が行われた(○:委員。●:事務局)

○ 申立ての内容や申立ての時点、相手方に対する通知がいつ行われたのかについての確認等の手続がどの程度確保できるのかといったことを考慮しないでは、時効中断効を認めるかどうかという議論をすることはできないのではないか。そのためには、現在、時効中断が認められている行政型ADRでは、申立ての受付についてどういう手続が取られているか、相手方に対する通知がいつ到達したかについて、どういう形で確認されているか等について確認する必要があるのではないか。

● ご指摘のADRにおいて、申立ては文書によって提出されている。また、申立ての受理日の確定方法等については、通常の役所の文書受付・発送と同様の確認方法は行っていると思われるが、これらの手続については、実務に絡むことでもあり、後で確認しておきたい。

○ 実態としてADR申立ての中には単なる請求よりも裁判上の請求等に近いものもあり、民法では裁判上の請求や和解のための呼出に時効中断効を認めていることとのバランス、ADRに時効中断効が認められないことにより発生する問題等を踏まえれば、すべてのADRとはいえないものの、それほど厳格に考えることなく、ADRに時効中断効を認めてもよいように思われる。

○ 現在いくつかの行政型ADRに時効中断効が認められていることを考えれば、民間型ADRであるからといって時効中断効が認められないということはない。
 したがって、どのような要件を満たせば時効中断効が認められるかを議論の出発点として、現在、時効中断効が認められている行政型ADRから、時効中断効が認められるための一般的な要件を抽出する作業が必要ではないか。

○ ADRの時効中断効は、民事調停等と同様に認められるべきである。

  •  時効中断効の付与の是非を議論する際、時効制度とは何かという根本的な議論をすることになる。
     民法制定当時には、権利を確保するために相手方に何らかのアクションを起こす行為に時効中断効を認めることとしており、これらは条文の中にすべて網羅されていたはずであるが、その後に創設された制度には時効中断効が規定されておらず、法の欠缺(けんけつ)が生じているものと思われる。これらの制度についても時効中断効を広く認めるべきではないか。民法制定当時には制度がなかった民事調停についても、民法の類推適用によって、申立てに時効中断効が認められているところであり、現在制度を作ろうとしているADRについても、法の欠缺(けんけつ)を埋める作業が必要である。
     私的自治の観点からも、交渉をしている間に時効が成立してしまうといった弊害を除去すべきという理由により、ADRについて時効中断効を認めるべきである。
  •  その際、主宰者の要件を課すことは立法技術的に難しく、また、ADRを規制することにつながるおそれもあると思われることから、主宰者の観点ではなく、当事者の観点から規定を作るべきである。主宰者の要件に関する問題も含め、ADRにおいて行われた手続如何では時効中断効を認めるべきでない場合があるものと考えたとしても、それは、訴訟で時効中断の有無が争点になった場合の立証の問題として解決できるのではないか。

○ 申立て時期や要件の充足性をすべて立証の問題として解決しようとすると、裁判で、徒に時効中断の抗弁が出され、審理が必要な案件が増えてしまうのではないかという懸念がある。裁判所の事務負担という観点からは、定型的に時効中断効があるといってよいだけの実態があるようなADR申立てに限って認めるべき。

○ ADRに時効中断効が認められれば、現在、裁判が受けている事件の一部はADRに流れるので、裁判所の負担は軽減されるという理解が国際的な認識であり、アプリオリに裁判所の負担が増えるので困るということはないのではないか。

○ 時効中断効を付与することにはメリットとデメリットがあるが、消費者の立場から見れば、どちらかというとメリットの方が大きいと思われる。付与する場合、次の点に留意すべきである。

  •  ADR機関が手続を進行しないことによっても時効が延長されてしまうこと等がデメリットとして考えられるが、主宰者要件で対象となるADRを絞ることはやや法律的にも困難であると思われ、他にこのような制度の悪用・弊害を防ぐ手法はないかと考えている。
  •  相談・苦情処理にも様々なレベルのものがあり(例えば、単なる相談等で終わるものと、一連のプロセスの中であっせんに移行していくもの)、これらと時効中断の関係についても検討が必要。

○ ADRの活性化のためには、時効中断効の付与は必要であると考える。ADRで紛争解決をする期間を区切って、その期間だけ時効が進行しないような仕組みも考えられないか。考え方としては、時効中断効というよりも、時効の停止に近いが、このような選択肢も考えられるのではないか。

○ ADRにおける時効の問題を解決する方法としては、本日の資料で示された「時効中断」のほかにも、@UNCITRALモデル調停法の議論の過程で出されたように、時効を「停止」させる(いわゆるチェス・クロック)方式や、Aアメリカで行われているように、時効中断事由は訴えの提起等に限定しつつ、ADRの進行中は裁判の期日を入れない(もっぱら時効中断のための訴えの提起も認める)方式もあり得るので、最初の段階ではあまり選択肢を絞り込まないず、幅広く検討しておくべきではないか。

 (4) その他

 その他、資料4−5「金融分野の業界団体・自主規制機関における苦情・紛争解決支援のモデル(金融トラブル連絡調整協議会)」につき、委員より説明があった。

 次回は、6月10日15:30から2時間程度、時効中断効の議論の続きと執行力の付与について議論することとなった。
 なお、年内の検討会開催は、7月22日、9月30日、10月28日、11月11日、12月9日(いずれも月曜日)の14:00から2〜3時間程度を予定している。

(以上)