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裁判員制度・刑事検討会(第21回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日時
平成15年6月27日(金)13:30〜18:00

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
池田修、井上正仁、大出良知、清原慶子、酒巻匡、四宮啓、井康行、土屋美明、樋口建史、平良木登規男、本田守弘(敬称略)
(事務局)
山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、辻裕教参事官

4 議題
「刑事裁判の充実・迅速化」について

5 配布資料
資料1 裁判員制度・刑事検討会開催予定

6 議事

 前回に引き続き、第19回検討会配布資料1「刑事裁判の充実・迅速化について(その1)」(以下「たたき台」という。)に沿って、刑事裁判の充実・迅速化について議論が行われた。
 議論の概要は、以下のとおりである。

(1) 争点に関連する証拠開示
 たたき台の「5 争点に関連する証拠開示」に関し、主として、以下のような意見が述べられた。

・ たたき台3(3)でA案をとると、論理的には、争点に関連する証拠開示は不要となるのではないかと思われる。

・ たたき台5にいう「証拠の類型」とは、たたき台3(3)B案のアからキの類型に限定されるものではない。

・ たたき台5にいう証拠の「範囲」とは、たたき台3(3)B案にいう証拠の「範囲」と同様の趣旨である。

・ 被告人又は弁護人は、その主張との関連性のほかに、証拠開示の必要性を主張しなければならないのか。関連性が薄い場合には、別途必要性を明らかにする必要があるのか。

・ たたき台においては、関連性は、必要性を裏付ける理由の一要素と考えている。関連性が薄いと考えれば、必要性を別途主張する必要が出てくる場合もあろう。

・ 関連性が高ければ弊害がある程度あっても開示されるし、関連性が低いとある程度弊害があれば不開示となるので、必要性の要件は不要ではないか。

・ 関連性以外にも開示の必要性を裏付ける要因があり得る。関連性の有無だけに着目して判断することにすると、かえって、多少なりとも弊害があれば開示されないことにもなるのではないか。

・ たたき台では、開示によって生じるおそれがある弊害としては、罪証隠滅のおそれ、プライバシー侵害のおそれ、名誉毀損のおそれなどを想定している。

・ 「罪証隠滅のおそれ」というのは、保釈請求に対する判断の場合の罪証隠滅のおそれと同じなのか。弁護士の中には、保釈請求の場合からの連想で、否認していることを理由に罪証隠滅のおそれがあるとして証拠開示がされないことになるのではないかと心配している者もいる。

・ 証拠を開示することに伴う罪証隠滅のおそれなので、被告人を保釈した場合に生じ得る罪証隠滅のおそれの有無の判断とは自ずから違ってくるのではないかと思われる。現在の実務でも、保釈請求が却下された事案であっても、当然に証拠開示命令が出されないという訳では必ずしもないのであるから、心配するようなことはないのではないか。

・ なるべく主観的な判断によらずに、機械的に証拠開示がなされる方が、制度として安定しており、望ましいと考える。

・ 審議会意見書は、証拠開示に伴う弊害のおそれに配慮した制度設計が必要があるとしており、弊害のおそれが予め類型的・機械的に判断し尽くせるものかが問題となろう。

・ できる限り類型的に証拠開示の可否を判断すべきだということは分かるが、個別具体的に判断せざるを得ない場合も残るので、たたき台5の段階で、開示の必要性を明らかにした上で、弊害とのバランスを考慮して判断するというたたき台の考え方がよいのではないか。証拠開示の場合、具体的な必要性が出てきた上での罪証隠滅のおそれとのバランスの判断になるので、保釈の場合における判断とは大分異なってくるのではないか。

・ 制度としての安定性は、争いが生じた場合に裁判所の裁定により解決されることになっていることなどによっても担保されているといえるのではないか。

・ たたき台5の場面では関連性は相当出てくる場合が多いであろうから、弊害が想定されない限りは、開示する方向で運用してほしい。たたき台3(3)のB案に加えて、同A案にいう証拠の標目の一覧表を開示することとし、ただ、証拠漁りの懸念を避けるために、たたき台4の主張の明示の後に、その一覧表に基づく争点関連の証拠開示の請求を認めるということにすべきである。一覧表の内容・形式にもよるが、一覧表から関連性が明らかになる場合もあるのではないか。

・ 包括的・抽象的な証拠開示請求を認めて、捜査側の手の内をすべて見た上で被告人が主張を組み立てるというのは、適当ではない。主張の具体性はどの程度が必要なのか。関連性としては、直接に関連しているということが必要なのではないか。例えば、被告人が事件当日に犯行現場付近に散歩に出たのは間違いないが、どこを歩いたかよく覚えていないという事案で、被告人の当日の行動に関する第三者の供述調書や犯行現場付近から回収された防犯カメラのテープは開示されることになるのか。開示の結果、例えば、被告人が写っているテープはないことを確認した上で当日の行動についての主張を組み立てることを可能にするのは、適当ではないのではないか。
 また、たたき台3(3)と5の割り振りも必ずしも明確でない。例えば、被害者の自宅の前でジャイアンツの帽子をかぶっている男が被害者を刺すのを目撃したという参考人の供述調書が請求されている事案において、ヤンキースの帽子をかぶっていた男が被害者の自宅の前で被害者と立ち話をしているのを目撃したことがあるが、その時刻はよく覚えていないという別の参考人の供述調書については、たたき台3(3)B案のカに該当するというよりは、被告人側から積極的な主張があったことを前提とするたたき台5により開示の可否が決せられるべきであると考えるが、いかがか。

・ 前者の具体例の問題については、被告人の主張の内容にもよるが、現場付近は散歩したが現場には行っていないという主張であれば、たたき台5により開示する場合に該当し得るのではないか。
 後者の具体例の問題については、たたき台3(3)B案のカは、検察官請求証拠と同一場面・状況・事項について供述しているということを基本的には想定している。そうすると、時刻がはっきりしないということであるとすると、同一の場面かどうか相当疑わしいので、基本的にはカの類型に該当しないのではないかと思われる。

・ 前者の設例でも、被告人が犯行に及ぶのを目撃したという供述調書が検察官から請求されているような場合には、防犯ビデオのテープなどもたたき台3(3)B案でも開示される余地があろう。たたき台の3(3)によるか5によるかは、検察官の立証の仕方にもよるのではないか。

・ たたき台5について賛成である。制度全体の大きな枠組みとして、検察側の立証材料及びその証明力を判断するための証拠について開示を受けた後に、被告人側が主張を明らかにした上で当該主張との関連性、必要性を明らかにして更に証拠の開示を求めるという枠組みであり、妥当である。また、開示の必要性と弊害のおそれとを比較衡量した上で相当なものが開示されるという部分は、現在の判例の判断枠組みでもあり、妥当である。

・ たたき台3(3)B案に掲げられていない類型である捜査報告書なども、たたき台5では開示されることがあり得るであろう。

・ たたき台3(3)B案に掲げられた類型に該当しない、例えば暴力団抗争事件での目撃者が暴力団関係者であるということに関する証拠は、たたき台5の開示の対象となるのか。

・ 被告人側で、目撃者が暴力団関係者だと主張し、検察官が争うのであれば、争点に関連する証拠になり得ると考えられる。

・ たたき台の案のとおりでよい。たたき台3(2)、(3)のB案を前提にすると、検察官の主張とその立証に必要な証拠が開示され、特定の検察官請求証拠の信用性を検討するのに重要な一定種類の証拠が開示されることによって、被告人側は検察官の主張立証の全貌を把握するとともにその信用性を吟味することができる上に、さらに被告人側が具体的な主張をして、たたき台5の枠組みの開示がなされるとすると、争点整理も進み、被告人も十分な防御の準備をすることができ、全体としてまとまった制度になる。

・ 保釈に関する規定と同じ文言が使われると、運用が同じことにならないとも限らないので、具体案はまだないが、弊害の中身について、罪証隠滅のおそれとプライバシー侵害のおそれなどの場合とによって書き分けるべきではないのか。

・ たたき台の案に賛成である。たたき台5で開示される証拠には、被告人の主張を補強するもの、弾劾するものがあり、たたき台3(3)を補完する役割を果たすものであろう。

・ アリバイ主張は、どこまで具体的に主張したらアリバイ主張をしたことになるのか。例えば、5、6年前のことは具体的には思い出せないこともあるが、一方では、できる限り詳しくという要請もある。アリバイ主張については、別の証拠開示のルールを考える必要があるのではないか。「犯行現場にいなかった」という主張で、どこまで開示されるのかを考えておく必要がある。例えば、人違いであり、犯行現場にはいなかったという主張をした時点で、被告人の自宅など被告人側から押収した証拠物で、当時の被告人の行動に関する物は機械的に開示するという制度は考えられないか。そのような限定をすれば、罪証隠滅のおそれはあまりないし、被告人がもともと自分のものである手帳などで記憶を喚起する必要もある。たたき台5では、弁護人の主張の仕方によって開示の範囲が異なってしまうかもしれず、弁護人の能力によって開示されるか否かが変わってしまうのは望ましくないので、別途そのようなルールを設ける必要があるのではないか。

・ アリバイ以外の主張の場合にも、弁護人の能力によって実際に開示される範囲が変わるということはあるのではないか。

・ アリバイ主張は、被告人の罪責判断の上で決定的な主張である。

・ 証拠開示の範囲は、全部ではなくても、弁護人が主張を組み立てることができる程度には、広いものであって欲しい。アリバイについては別途のルールをという話が出てくるということは、たたき台の案では、弁護人が主張を組み立てる上で必要なものが十分に開示されないという疑問があることを示しているのではないか。そのような疑問があるのであれば、たたき台3(3)A案の一覧表を開示して、どんな証拠があるのか分かるようにするという考え方があってもいいのではないか。

・ それは、証拠の内容を把握し得るような記載の一覧表であることを前提とする意見だと思われるが、一覧表にどこまでのことを記載するかについては意見が分かれよう。

・ 被告人が犯行現場にいなかったと主張すれば、当時の被告人の行動に関する証拠は関連性が認められて開示されるので、アリバイについて別のルールを作る必要はないのではないか。

・ たたき台5を前提にすると、「その場にいなかった」と主張するだけで、捜査機関が被告人がアリバイ主張をする前から捜査機関が行った、アリバイの有無を確認するための捜査報告書や供述調書が関連証拠として開示されることになってしまうのではないか。そうだとすると、それを踏まえた虚偽のアリバイ主張をすることが可能となり、それはおかしい。そこで、開示の範囲を被告人側から押収された証拠物に限定することに意味があると考えている。自分の物だけはしっかり見て、主張を組み立てて下さい、というのは分かるが、「犯行日時に被告人は自分の部屋にいたかもしれない」というAの供述調書が、被告人のアリバイに関する具体的主張が出る前に開示されるのはおかしい。

・ アリバイ主張の可能性を考えて予め捜査の過程で確認した「被告人は○○にはいなかった」という証拠が開示されると、そのように捜査でつぶしていない所にいたという虚偽の主張を考え出さられ得るので問題かもしれないが、今あげられた例のように、「被告人は自分のところにいたかもしれない」という供述は、検察側も分かっていたものであり、関連性もないとはいえないから、開示してよいのではないか。

・ 最終的には、そのようなAの供述調書も開示されないと困るのではないか。また、必要性と弊害のおそれとの比較衡量による判断枠組みの中で、主張の具体性・内容によって開示の必要性は異なるので、判断は異なり得るであろうが、被告人が「犯行現場にはいなかったことは間違いないが、その時どこにいたのか分からない」と主張している場合でも、「被告人は自分の部屋にいたかもしれない」という供述調書を開示してもいい場合もあるのではないか。

・ すべて相当性判断の枠組みの中で判断するとすると、虚偽弁解作出のおそれは弊害のおそれの中に入ることになるのか。例えば、上記のAの供述調書を見た上で、「犯行日時にはAの部屋にいた」と主張するおそれがあることは弊害に含まれるのか。

・ 虚偽弁解作出のおそれだけでは難しいであろうが、関係者への働きかけや証拠のねつ造のおそれは、弊害のおそれに含まれるであろう。また、上記のAの供述調書を見て、虚偽の弁解を作出するのではなく、記憶が喚起されるという場合もあるであろう。

(2) 更なる争点整理と証拠開示
 たたき台の「6 更なる争点整理と証拠開示」に関し、主として、以下のような意見が述べられた。

・ 必ず3から5の順番で証拠開示等を行うというのではなく、必要に応じて3から5を順番に行ったり並行的に行ったりするという理解でよいのか。

・ たたき台は、そのような理解の下で作成している。

(3) 証拠開示に関する裁定
 たたき台の「7 証拠開示に関する裁定」に関し、主として、以下のような意見が述べられた。

ア 開示方法の指定について(たたき台7(1)の関係)

・ たたき台の案に賛成である。開示すべき証拠について、開示の時期・方法を弊害防止の観点から変更するものであるが、具体的には、証人の供述調書については、証人威迫のおそれがある場合には、主尋問の数日前に開示するという形で時期を遅らせるということが想定でき、方法の指定としては、プライバシーの問題がある部分は、一部墨塗りにして開示するというようなことになるであろう。即時抗告を認める点についても、高等裁判所で判断されるということでやや時間が掛かると思われるけれども、時期・方法の指定について当事者に不服がある場合には、不服申立ての機会を与えるべきであり、妥当である。

・ 時期の指定については、やむを得ない場合には、主尋問終了後の開示も否定するまでのことはないであろうし、方法の指定については、謄写を認めることに問題がある部分については閲覧だけにとどめたり、弁護人にのみ開示するということもあり得るであろう。

・ 一部墨塗りされた部分も証拠調べ請求されるのか。

・ 墨塗りされた部分も含めて証拠調べ請求するのであれば、最後まで墨塗りという訳にはいかないであろうが、当初の開示の段階では墨塗りして、最後の段階で開示するということはあり得るかもしれない。

・ 時期・方法の指定があったとしても、開示された証拠を弾劾をする十分な機会を保障すべきである。

イ 開示命令について(たたき台7(2)の関係)

・ たたき台の案に賛成である。不開示の場合にも不服申立てができるようになり、妥当である。

・ 裁定に不服のある者には、不服申立てを認める必要がある。ただ、現在は、証拠開示を命じない判断に対する不服申立てが認められていないが、その背後には、手続の進行により証拠開示の必要性は変わっていき得るので、いちいち不服申立てを認めるのでは困るということが一つの要因としてあると考えられる。準備手続を行う事件でもその必要性は流動的な場合があるであろうから、準備手続が少しずつ進むたびにいちいち即時抗告があって、その度に手続が止まるというのはいかがなものか。開示をしないという決定に対する即時抗告は、最後の1回だけでもいいのではないかという気もする。また、即時抗告を認めることに反対する訳ではないが、証拠決定に対して不服申立てを認めないこととのバランスをどう考えるのかという点も検討する必要があろう。

・ 裁判所の不開示の決定に対して最後にまとめて1回だけ即時抗告をさせるということにすると、被告人側は十分な開示を受けないまま、争点を示すなどして手続を先に進めなければならないということになるが、それは望ましくないので、不開示決定のつど即時抗告を認めて手続を進めざるを得ないのではないか。

・ たたき台のアについて賛成である。イについては、不開示決定に対しては独立の不服申立てを認める必要はないと考えたこともあったが、争点整理の促進という観点からは、開示すべき証拠が開示されていないと争点を明示できないという事態も生じかねないから、不服申立てを認める必要があろう。

・ 不服申立ては1回だけに限るべきとまで考えている訳ではないが、逐一裁定するのではなくて、裁定を留保しておいて、手続の段階ごとに裁定をし、それに不服があれば一括して不服申立てをしてもらうという運用になるのではないかと考えている。

・ たたき台の3(3)又は5における検察官による開示の時期・方法の指定に不服がある場合にも、開示命令の請求ができるというのが、たたき台の趣旨である。

ウ 証拠の提示命令について(たたき台7(3)の関係)

・ たたき台の案に賛成である。問題になっている証拠を検討することが、裁定のために必要で、そのために当該証拠の提示を求めることができるとするのが相当である。

・ イン・カメラ方式で証拠の実質を認識する場合には、受訴裁判所とは別の裁判所が裁定の主体となるべきである。

・ イン・カメラ方式で判断する場合でも、実質的な予断を生じさせるというわけではないから、裁定の主体は受訴裁判所でよい。

エ 証拠の標目の提出命令について(たたき台7(4)の関係)

・ 裁判所が的確に開示の要否の判断をするためには、検察官が具体的にどのような証拠を保管しているかを知ることに意味がある場合もあると思うので、証拠の標目を記載した一覧表を提出するのは妥当であると思う。一覧表の中身が問題になるが、「○○の供述調書」「○○に関する捜査報告書」などと記載され、そこから裁判所が証拠を特定して提示を求めて、開示につき判断するというパターンも妥当である。

・ 一覧表の提出を受けた後に証拠の提出命令を発して判断するというパターンもあるだろうが、一覧表だけから裁定できる場合などもあるのか。

・ 一覧表には、「供述調書」「鑑定書」といった証拠の類型は記載されるであろうが、供述者の氏名まで記載するか否かは、一覧表を被告人側に開示するか否かにもよるかもしれない。裁判所が何も見ないで、両当事者の主張だけから裁定できる場合もあり得るであろうが、実際には少ないであろう。開示を求める証拠が特定されていれば、証拠の提示命令のみで裁定されることもあろう。一覧表のみを見て、被告人側が開示を求める類型及び範囲に該当する証拠はすべて開示済みで不開示になっているものはないということで裁定が終わるということもあり得るかもしれない。

・ 一覧表だけで判断できるか否かは、一覧表の記載内容次第であろう。

・ 一覧表の内容も、最初はどのような証拠があるのかを示す程度で足りるかもしれないが、場合によっては、さらに、裁判所から検察官に対しより詳しい内容のものを求めることがあってもよいのではないか。後者のような場合は、たたき台では想定していないのか。

・ 後者のような運用ができるかどうかは、一覧表を相手方当事者に開示するか否かの問題と絡んで検討すべき問題であろう。

・ 一覧表から証拠の提示命令という流れの判断ということになると、一覧表を作ることが所与になってしまうかもしれないが、裁判の迅速化の要請との関係でも、一覧表をあらかじめ作っておく必要があるのか、事後的に必要と認める場合に作成すれば足りるのかが重要な問題である。時間的制約のある中で作るのであれば、一覧表に記載する項目も決まってくるであろう。また、裁判所が必要とする時に必要な範囲で作成するというように限定的に目的を捉えれば、イについてはA案ということになろう。一覧表は何のために使うのかということを特定することが重要である。

・ 一覧表はよい制度だと思う。いつ、どんなものを作るのか、その具体的なイメージを抱きづらい部分があるが、有益な制度として機能するには、裁判所が見て理解できるようなものとするのがいいのではないか。また、関連性の問題又は証拠の存否の問題になった場合に、一覧表が事後的に作成される資料ということになると、その内容の正確性に疑義が残るかもしれないので、証拠の類型ごとにあらかじめ一覧表を作成して、問題が生じた場合にそれを提出するということを考えてもよいのではないか。

・ すべての事件において、あらかじめすべての証拠を対象に一覧表を作成することは、膨大な作業になる。場合によっては使わないかもしれないものまで作ることは、人的・時間的制約のある中では到底無理であり、必要な場合に作成するということでなければ、対応できない。

・ 捜査機関は、証拠の一覧表を作成していないのか。どうやって、証拠を管理しているのか。

・ 警察からの送致記録に、送致された簡単な証拠の標目を記載したものが綴られているが、追送致などもあるので、記録全体の中にばらばらに存在しており、結局、一覧表は全部作り直さなければならなくなる。また、通常、検察庁で作成した証拠書類については標目を作成しておらず、一件記録に編てつして管理している。

・ コンピューターを利用すれば、一覧表の作成は可能なのではないか。

・ 事件数が膨大であり、必要性も確かでない段階で、すべての事件で作成するのは、現実問題として無理である。

・ 一覧表は、裁判所の判断に資するためのものであるから、裁判所が必要と判断した場合だけ作成すれば足りる。裁判所が正しい判断をするためには、イのB案を採ると一覧表の情報量が少なくなるので、A案を採用して、一覧表の内容を充実させるべきである。

・ 裁判所にしっかり判断してもらうことが裁判の迅速化のために不可欠である。また、迅速化のためには、一覧表の提出が頻繁に生じないようにすることが必要である。

・ 一覧表の正確性はどのようにして確保するのか。

・ 検察官が正確に一覧表を作成するという前提で、制度の仕組みを考えないといけないであろう。その上で、故意又は重大な過失で記載すべき証拠を一覧表に記載しなかったような場合に、何らかの制裁を課すといった形で、担保すればよいのではないか。

・ 弁護人が存在するはずだと主張する証拠の存否が問題になったようなときに、一覧表が必要になってくるのであろう。弁護人がある程度広めに類型及び範囲を特定してきて、裁判所がそれを踏まえて、検察官に一覧表を求めるということになると思われる。あらかじめ作成するかどうかはともかく、そのような一覧表は必要であろう。裁判所は一覧表を見て分からなければ、検察官に釈明を求めたり、弁護人が「あるはずだ」と主張し続けるのであれば、更に別途の類型・範囲の一覧表の提出を命じたり、証拠の提出命令を発するということになるのであろう。なるべく手間をかけずに、訴訟関係人全員が満足する結論を得るための制度という観点からは、たたき台の案は、骨組みとしては合理的な制度設計であると思う。

・ イについては、B案にならざるを得ない。弁護側が要求している証拠が、本当に一覧表に記載されているのかどうかを弁護側が確認するために、一覧表が開示される必要がある。

・ 弁護側が一覧表を見ることによって、その問題が解決されるのか。一覧表に記載されていないのであれば、裁判所が弁護人にその旨を伝えれば足りるのではないか。

・ 裁判所も誤ることがあるのであり、弁護側が一覧表を見ることによって、一覧表の記載の誤りに気がつくこともあるであろう。

・ B案を採るべき理由としては、一覧表に記載されている証拠につき、裁判所が判断を誤っている場合に、弁護人がそれを是正する機会を与えるということしかないであろう。しかし、そのためには、一覧表で証拠の内容がある程度分かるようしなければならなくなるが、そのようなものを弁護側に見せると、証拠を開示したのと同じになってしまう。結局、裁判所を信頼するしかないのであり、A案を採りつつ、裁判所が判断を誤らないように、一覧表に記載される情報を充実させるということにすべきである。

・ 一覧表の内容や開示に伴う弊害のおそれは事件によって様々であり、開示することに常に弊害があるとは一概に言えないのではないか。裁定に対する納得ということも考えると、B案も考えられるのではないか。

・ A案が妥当である。一覧表は裁判所の的確な判断に資するという目的のために作成されるものであり、その目的からすると、被告人側に開示すべき理由はない。また、開示することにすると、探索目的での証拠開示請求が次々とされて、手続が遅延する懸念がある。さらに、一覧表に供述者の氏名が書かれると、名誉毀損・プライバシー侵害の問題があるし、捜査の協力が得られなくなったり、当該供述者に対する罪証隠滅や圧力がかけられるということも生じ得る。加えて、証拠を離れて、一覧表の開示の可否、要否などを巡って無用な紛争も頻発しかねない。探索目的となるか否かは一覧表の開示を受けた後の被告人の態度次第だから、その弊害の有無を事前に判断して不開示とすることもできない。

・ 探索目的の証拠開示請求や、プライバシー・名誉の問題があるというのはよく分かるが、A案のように全く開示できないということにまでする必要はあるのか。関連する証拠はないと裁判所が判断したが、弁護人が「絶対あるはず」と主張する時に、即時抗告をするとしても、弁護人は一覧表を見ることができないというのでは、不満が残るのではないか。弊害がない場合、誠実な訴訟活動をしている弁護人が、検察官が何か勘違いしているのではないか、どんな一覧表を出してきているのか見たいと言う時に、裁判所が弁護人に一覧表を開示するのが適当な場合もあるのではないか。

・ 弊害の有無の問題ではなく、一覧表に証拠に関する実質的な情報が記載されていると、証拠開示したことと実質的に同じになるという指摘については、どう考えるのか。

・ 弁護人に一覧表を開示した方がいいという場合は、最後のぎりぎりの非常に狭い範囲ではないかと思う。

・ 弁護人に「絶対あるはずだ」と言われても、ないものについては一覧表に記載できないので、一覧表を開示したところで解決する問題ではない。他方、弁護人が「ある調書があるはずだ」と言うのであれば、裁判所が検察官にその調書の有無についての釈明を求めればよいはずである。

オ その他

・ 証拠開示命令に従わなかった場合の制裁はどうなるのか。例えば、公訴棄却や、訴訟手続の法令違反として控訴理由にするということなどが考えられるのではないか。

・ 諸外国では、極端な場合には、制裁の手段として手続きを打ち切るという例もある。また、裁判所侮辱の制裁、懲戒などもあろう。

・ 諸外国では、より穏やかな措置として、手続を中断し、準備期間を置くということもある。

・ 検察官が、裁判所の証拠開示命令に従わないということは基本的には想定できない。仮にあっても、当該検察官は懲戒されるであろう。現在の法制でも対応できるのであり、公訴棄却にまでする理由はないのではないか。

・ 開示命令の対象となった証拠を目的物とする捜索差押えもできるのであろう。

・ 準備手続を行わない事件や公判段階での証拠開示のルールも、いずれもたたき台記載の証拠開示のルールと同じようなものでよいのではないか。

・ たたき台では、準備手続における争点整理との関連で証拠開示のルールが考えられているので、準備手続を行わない事件における証拠開示のルールの在り方については更に検討を要するであろうが、両者をセットで考える必要があると考えるのであれば、準備手続を開いた上で証拠開示を行うということになるのではないか。

・ 裁判員制度対象事件以外でも、証拠開示が問題になるような争いがある事件では、準備手続を行うことになるであろう。

・ 公判段階で証拠開示の可否が問題となったときは、争点整理とは関係なくても、裁定の方法などは同じようなことをすることになるのであろう。

(4) 争点の確認等
 たたき台の「8 争点の確認等」に関し、主として、以下のような意見が述べられた。

ア 争点の確認について(たたき台8(1)の関係)

・ 準備手続における主張の変遷を公判で明らかにするのであれば、各準備手続期日における調書を作成するほかに、最終的にまとめた書面を作成するのがよいと思う。

・ 最後は書面で確認するのがよい。

イ 準備手続終了後の主張について(たたき台8(2)の関係)

・ 主張の明示を義務付けても主張制限はしないということは、論理的にはあり得る。

・ B案を支持する。公判段階での主張の後出しはあってはならないと思うが、確認された争点と異なる主張が出てくることを全く受け入れないとまでする必要はないと考える。また、A案の例外事由に該当するか否かの判断や、「異なる」主張か否かの判断に労力を費やすというのでは、実効性があるのかという気がするし、たたき台4(1)で主張の明示を義務付ければよいのではないか。

・ A案的な方向が全くなくて良いのか、という気がしているが、被告人の主張を全く封じてしまうというのもよくないと思う。検察官、弁護人が、時機に後れて異なる主張をする場合には、一定の不利益を受けるという何らかの規定を置いても良いのではないかという気がする。そういう場合は一種の信義則違反であり、それまでの手続をひっくり返してしまうのであるから、そうするそれなりの理由が必要で、それを主張立証させる必要があり、それができない場合には、不利益を課してもよいのではないか。不利益としては、例えば、心証上不利益に扱われても仕方がないということが考えられる。

・ 被告人が公判で異なることを主張をした場合は、当然一定の信用性評価が伴うであろうが、異なる主張を制限して被告人を黙らせるという訳にはいかないのではないか。時機に後れた主張は、訴訟上の権利の濫用を禁ずる刑事訴訟規則1条2項によって制限するということで対応できるのではないか。

・ 権利濫用ということであれば、一般的には、権利行使をすることができないとされるか、権利行使の法的効果が否定されるということになると解されている。前者の考え方を採れば、主張制限ということになるし、後者の考え方を採れば、主張することは事実上認めるが、訴訟法上の効果は認めないということになって、いずれにしても、結局、主張制限をしないとすることの意味はなくなるのではないか。

・ B案を仮に採用する場合には、どのようにして争点整理の実効性を担保すれば良いのかを考える必要がある。

・ 主張明示義務が課されていれば、主張制限を設けなくても、効果があるのではないか。

・ 主張制限は設けた方がいいと思うが、A案でも本当に主張制限といえるのか。A案でも例外があるので、公判段階で初めて明らかにされた主張でも、それがまともな主張であれば主張することができることになるから、正しい判決に至ることはできるから、A案程度の規定は設けてもいいのではないか。

・ A案でもB案でも実際上はほとんど変わらないであろう。被告人に主張明示義務を課さなければ、特にそうであろう。

・ 争点整理の実効性の担保のためであれば、A案が考えられるであろうが、実際には、新たな主張を始めた被告人に対し発言を禁止して制限するというのは乱暴な気がするので、慎重な検討が必要と考える。

・ 「やむを得ない事由によってすることができなかった場合」とは、どういう場合を意味しているのか。例えば、強盗の事案で、準備手続では争わないとしていたが、公判段階で、被害者と狂言強盗を仕組んだのだと主張することは許されるのか。

・ 基本的に刑事訴訟法382条の2の「やむを得ない事由」を参考に考えているので、それは、「やむを得ない」とは言えないのではないか。

・ 「証拠調べの結果に照らし相当な理由がある場合」に該当すれば、狂言強盗という主張も許されることになるであろう。

・ 例えば、真実は帰宅したところ被害者が病死していたのに、それは信じてもらえないと考えて、準備手続段階では殺人を認めていたが、公判段階で初めて被害者の死因は病死だと主張することは許されるのか。

・ 基本的には「やむを得ない事由によってすることができなかった場合」には該当しないであろう。

・ 長時間の取調べが続くうちに自分が犯人だと思い込むようになり、公判段階でその思い込みが解けて無罪主張をするという場合、A案では、その無罪主張は許されるのか。

・ 現実には、新しい主張とそのための立証が一緒に公判で明らかにされるであろうから、思い込んでいたかどうかではなく、アリバイなどの積極的な弁解に合理性があるかどうかで適切な判断がなされることになるであろう。

・ A案は固すぎるので、真実発見を阻害することがあり得るのではないか。質問をした事例のような事件がA案では救済できなくなるのではないか。現行の民事訴訟法でも、新たな主張をしたことについての説明を求めることができるとされるにとどまっている。以上を考え合わせると、B案が妥当である。

ウ 準備手続終了後の証拠調べ請求について(たたき台8(3)の関係)

・ A案でよい。裁判員制度を前提にすると、公判での不意打ちを前提にした制度設計は望ましくない。また、職権証拠調べの余地があれば、真実確保の要請もなおざりにならないと考える。

・ 少なくとも立証制限を設けないと、争点整理の意味がなくなるし、新たな証拠調べ請求があると審理も中断してしまい、裁判員制度も成り立たなくなる。A案程度の立証制限は絶対必要である。

・ 立証制限の必要性は理解できるが、固すぎる手続にしない方がいい。B案は、民事訴訟法的な制度で考慮に値するが、相当な理由がない場合には、真実確保の要請と衝突する場合が生じ得る。C案でも、不誠実な、濫用的な証拠調べ請求については却下することができるであろうから、C案を支持する。

・ B案でも、「却下することができる」とされているから、相当な理由がない場合に却下するか否かは、裁判所の裁量に委ねられている。

・ A案は固すぎるのではないかと思う。証拠調べ請求の後出しは好ましくないが、固い手続になると予備的な主張、証拠調べ請求が準備手続で出てくるおそれがある。準備手続において証拠調べ請求しなかった理由の説明義務を課すことで、準備手続の目的を十分達することができると考えるので、B案を支持する。

・ A案は固い。C案を支持せざるを得ないという気がしている。被告人に足かせをかけていることによって生じてくる事態を避けた方がいいと考えている。

・ A案でもB案でも取り調べるべき証拠は取り調べることになるので、運用レベルでは両案は異ならないであろうが、控訴審に関する現行法の規定で「やむを得ない事由」という文言が使われていることとの平仄からすると、A案がよいのではないかという気がする。

・ C案を前提に、信義則違反、権利濫用の場合に証拠調べ請求を却下できるとすると、B案とどう違うのか。

・ 法律に書くか書かないかという点と、説明義務があるという形をとるかどうかという点であろう。C案では一般則の解釈として却下できると考えることになる。

・ そもそも、被告人にも準備手続における主張明示・証拠調べ請求を義務付けないと、尻抜けになってしまうと考えるが、たたき台4(1)ア、イでB案を採り、弁護人にのみ準備手続での主張明示・証拠調べ請求を義務付け、被告人にはその義務を課さないという見解を採っても、8(3)でB案を採れば被告人に準備手続段階における証拠調べ請求義務を課していることになるのではないか。また、弁護人に対してだけ義務を課すとすると、被告人が公判段階で弁護人を解任した場合には、新たな主張などもすべてすることができることになってしまうのではないか。

・ 8(3)でB案を採ることと被告人に義務を課すことは、直接論理的につながらないのではないか。証拠調べ請求する者は、請求者として証拠調べの必要性等を述べないと証拠採用されないのであり、請求者としての義務的なものとして、説明義務を課すことを説明できるのではないか。

・ 現在の公判では、例えば、被告人側の反証段階で初めて証拠調べ請求したとしても、時機に後れたものとは考えられていないので、被告人に準備手続での証拠調べ請求義務を課さずに、準備手続で請求しなかったことを理由に証拠調べ請求を却下することができるのか。

・ 準備手続などの手続を踏んできたということで、説明義務の発生を説明することができるのではないか。

・ 被告人に対し準備手続段階での請求義務を課さなければ、被告人としては、準備手続において証拠調べ請求をしなくてもよいはずであるのに、そのような被告人に対し、準備手続で請求しなかったのかと説明を求めることが何故できるのかという疑問がある。

・ 証拠調べ請求する立場からして説明義務があると説明できるような気がする。

・ 準備手続後に証拠調べ請求した場合にその理由を尋ねるということは、請求者に義務がなくても裁判所は事実上のものとしてするのではないか。

・ 事実上できるとしても、法律上は、被告人は説明する義務はないはずで、その場合、説明しなかったことのみを直接の理由にして請求を却下することはできないのではないか。

・ 証拠調べ請求に理由がないような場合には、必要性なしとして却下することになるであろう。

・ 必要性がなければ却下するのは当然だが、ここでの問題を必要性の判断にすべて吸収できるのかは問題であろう。

・ あらかじめ準備手続で請求する義務がなかったので請求しなかっただけだと言われた場合に、請求を却下できるのか疑問である。

・ 被告人に準備手続での証拠調べ請求の義務を課さないとして、被告人が公判の冒頭で初めて証拠調べ請求してきたときに、「なぜ準備手続で証拠調べ請求しなかったのか。」と質問をし、「準備手続で請求する義務がなかったからである。」と答えた場合、その証拠調べ請求を時機に後れたものということができるのか、準備手続で請求しなかったことについて相当な理由がないとして請求を却下することが本当にできるのか、という問題であろう。

・ 準備手続で請求する義務がなければ、論理的には、準備手続で請求しなかったことを証拠調べ請求を却下する理由にはできないであろう。

・ 被告人が弁護人を解任した場合については、公判が始まっていたとしても、準備手続を再開するということもあり得るのではないか。

・ 解任が繰り返されると、準備手続の再開を繰り返すことになるのか。

・ 必ず再開するという訳ではなく、裁判所の判断で争点整理等を改めてする必要がある場合には再開するということになろう。

・ 被告人に準備手続での証拠調べ請求義務が課されていなければ、時機に後れたと評価することや、権利の濫用として証拠調べ請求を却下することはできないのではないかということが、ここでの問題のポイントであろう。

(5) 次回以降の予定

 次回(7月18日)は、引き続き、刑事裁判の充実・迅速化に関する検討を行う予定である。

(以上)