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裁判員制度・刑事検討会(第26回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日時
平成15年9月22日(月)13:30〜18:10

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
池田修、井上正仁、大出良知、清原慶子、酒巻匡、四宮啓、井康行、土屋美明、樋口建史、平良木登規男、本田守弘(敬称略)
(事務局)
山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、辻裕教参事官

4 議題
「刑事裁判の充実・迅速化」について

5 配布資料
資料1「刑事裁判の充実・迅速化について(その2)」の一部修正

6 議事

 第19回検討会配布資料1「刑事裁判の充実・迅速化について(その1)」(以下「たたき台その1」という。)に沿って、刑事裁判の充実・迅速化につき、前回までの議論を踏まえ、なお議論すべき点について議論が行われた。
 議論の概要は、以下のとおりである。

(1)準備手続の主宰者について(たたき台その1の第1の1(4)関係)

  • 受訴裁判所が主宰者となるA案が妥当である。準備手続の趣旨・目的に照らして最も合理的で、特段の弊害もないし、理論的にも問題がない。
  • 基本的にはA案でいいが、裁判員制度対象事件については、証拠開示の裁定や証拠能力の有無の判断のために証拠の中身に触れる場合に限って、受訴裁判所以外の裁判所が主宰者となる制度がいい。外から見た裁判官と裁判員との情報の対等らしさが損なわれないようにする必要がある。
  • A案が妥当である。その理由は、以前の検討会で述べたとおりである。現行法でも提示命令の制度があり、そこで裁判所は証拠の中身に触れても心証形成をしていないのであるから、準備手続において裁判所が証拠に触れるとしても、例外を設ける必要はない。
  • 証拠開示の裁定で裁判所は証拠に接触することになるが、それは専ら裁定のためであり、心証形成をするのではない。また、訴訟手続上の判断は受訴裁判所を構成する裁判官が行うことになっているから、必然的に裁判員との情報の格差は生じることになるが、そうだからと言って、受訴裁判所がそれによって心証を形成したり、裁判員に対して優位に立つというわけではない。予断排除の原則との抵触の問題も生じない。
  • 以前の検討会で、準備手続で実質的に心証形成することもあり得るので、準備手続の経過を公判に顕出すべきであるという意見があったが、そうだとすれば、A案は相当ではない。
  • 従前の議論では、準備手続の経過・結果の公判への顕出は、主張や争点の整理の経過等を公判廷に出すことにより、その経過等が公判廷での証拠調べにおける証拠の評価に場合によっては影響を及ぼすことがあり得るということが主張され、議論されたのであり、準備手続で心証を形成してそれを公判に引き継ぐということは誰も言ってはいなかった。準備手続で実質的に心証形成することもあり得るという意見があったというのは誤解であろう。
  • 準備手続が実体形成に影響を及ぼすということがなければ、A案もあり得る。ただ、A案の下でも、証拠に触れ心証形成する可能性がある場合は、受訴裁判所以外の裁判所が主宰者となることも考える必要がある。
  • A案で問題ない。A案でないと、準備手続と公判手続とが一貫したものとならないおそれが強く、準備手続がうまくいかない。
  • 準備手続で行われるのは、心証形成や量刑判断ではなく、訴訟進行に関する技術的なものであるので、基本的にA案が望ましい。
  • A案が妥当である。理由は、これまでのA案支持者と同じである。
  • A案が妥当である。刑事裁判の充実・迅速化、裁判員制度の円滑な運営のためには、受訴裁判所が主宰者となるのが合理的で自然である。
  • B案の考え方も裁判の公正らしさの外観の確保から理想としては理解できるが、現実的には、地方の裁判所では裁判官の数が少ないし、受訴裁判所以外の裁判所ではうまくいかない場合もあるであろう。受訴裁判所を主宰者としても、現在の裁判所のやり方から見ると、裁判の公正さの外観の点はそれほど心配しなくていいのかなという気がしている。
  • A案でよい。
  • 裁判員制度の下では新たに裁判員が入ってくるので、A案の理由付けとして、現行法上も提示命令が行われているということは、そのまま妥当しない。また、証拠に触れると受訴裁判所が心証形成するから主宰者になるべきではないと考えているのではなく、裁判官と裁判員の対等らしさという観点からそのように考えている。
  • 公判段階でも、受訴裁判所を構成する裁判官が訴訟手続上の判断をするとすると、その判断をするために、場合によっては裁判員のいないところで証拠に触れるということも考えられるので、同じような問題が生じることになるが、その点についてはどう考えるのか。
  • 訴訟手続上の判断も証拠に触れる場合には受訴裁判所以外の裁判所とするのが一貫しているであろう。
  • 受訴裁判所を構成する裁判官が保釈や勾留更新の判断をすることによって裁判員との情報格差が生じるが、それを理由に受訴裁判所以外の裁判所の判断を求めるために手続を中断するのは現実的ではないし、その情報格差が不当だということはない。
  • 受訴裁判所を構成する裁判官が準備手続の主宰者になったり公判段階で訴訟手続上の判断をすることによって、裁判員との情報格差が生じることは不可避であるが、それ自体に特段の問題もないし、その格差を利用して裁判官が裁判員を説得するというようなことはないと考える。
  • 裁判員は専門家ではなく、専門家と対等に議論できるのかという懸念があるので、自分が知らないところで裁判官が手続に関与して何か判断を形成しているのではないかと裁判員に思わせるような部分を、できる限り小さくすべきである。
  • 証拠以外の、判決の理由に書けないことに基づいて判断することはできないから、判決に理由を書くことによって外から見た裁判の公正さが確保されている。
  • 公正さの外観を確保するために裁判員がいない場で受訴裁判所を構成する裁判官が証拠に触れることを避けることをできる限り追求し、共通の土俵の上に立っているのだという了解が裁判員に得られるような手続にすべきである。
  • 問題は、準備手続において証拠に触れることにより心証形成がなされるのではないかと一部の方がおそれておられるのを、受訴裁判所以外の裁判所を主宰者にすることによって解消するのか、公判で取り調べられた証拠に基づいてしか評議では議論できないということを通じて解消するのかということであろう。
  • これまで評議というブラックボックスになっていた部分を、どう見えるようにするかを考える必要があるのではないか。
  • 評議に参加する裁判員には見えるのであり、それ以上に、受訴裁判所以外の裁判所が主宰者にするということによって、裁判員以外の者にまで見えるようにする必要があるのか、ということであろう。

(2)準備手続の方法等について(たたき台その1の第1の2関係)

  • 専ら証拠能力の判断のための事実の取調べについては、例えば、有罪無罪に直結する証拠の証拠能力や違法収集証拠と主張されている証拠の証拠能力の判断のための場合には、公判廷で行うことが適当な場合があるかもしれないし、さらに準備手続において行うにしても、証人尋問を行う場合には公開するのが適当な場合があるかもしれない。これらの使い分けは柔軟に裁判所の判断で決せられるということでいいのではないか。
  • 準備手続において行う場合に公開すべきという理由は何か。
  • 交互尋問を行う場合には、それが公正に行われているということを公開することにより担保するということがあるのではないか。
  • 公正の担保という問題があれば、公判手続で行えばいいのではないか。準備手続で行われたことは公判手続に顕出されるのであるから、あえて公開までする必要はないのではないか。
  • たたき台は、たたき台その1第1の2(3)のアからコの事項を準備手続でしか行うことができないという趣旨ではない。
  • 例えば、鑑定書や実況見分調書の作成の真正だけが問題になっていたり、供述者の所在不明が問題になっている場合のように、「専ら」証拠能力の判断のためということであれば、事実の取調べは実体判断に結びつかないので、裁判員に関与してもらう必要はないのではないか。証拠能力の有無という実体形成の前提問題はできる限り準備手続で解決しておいて、計画的な審理ができるようにした方がよい。もっとも、自白の任意性の有無は実際上、信用性の有無という実体形成上の判断と一体的な事柄であるし、違法収集証拠だという主張のある証拠の証拠能力についての判断の前提となる事実の認定も、裁判員制度対象事件では実体に関係することが多いと思われるので、それらは公判手続で行うのがよいのではないか。
  • 違法収集証拠の主張がされた場合には、収集手続を立証する書証が不同意になって、収集手続の適法性の立証を公判廷での証人尋問によって行わざるを得ないであろう。具体的にどのような場合に、公開して準備手続を行わなければならないのかが分からない。
  • 準備手続はあくまでも公判の準備であるから、準備手続の結果だけを公判で明らかにすればよく、経過まで顕出する必要はないのではないか。
  • 準備手続の経過及び結果の顕出については、たたき台の案のとおりでよい。裁判官と裁判員との情報格差を問題にするのであれば、準備手続の経過も顕出して情報格差を解消すべきではないのか。
  • 顕出されるのは書面化されたものだけで、書面化されなかった部分について、準備手続に立ち会った者とそうでない者との間での情報格差が解消されていない。
  • 検察官が主張する犯行場所が準備手続において変転した場合、顕出しないことによってその変転を裁判員が知らないままに置かれるという方が問題ではないか。
  • 主張が変転した理由について判断するために、裁判員に対して裁判官が有するのと同じ情報を提供できるのか。全く同じ情報を提供できないのであれば、提供しない方が賢明なのではないか。
  • たたき台の案は、現行法上の準備手続についてこれまで行われてきたことを確認しているだけであろう。
  • 裁判員が関与する手続になったにもかかわらず、従前どおりでよいのか。書面化されたものという質的に下がる資料を前提に裁判員が心証形成するのを極力避けるべきである。
  • そのようなことを言うと、準備手続の最初から裁判員が関与すべきということになるのではないか。
  • 準備手続の最終結果だけ明らかにするというのは、あり得るであろう。実際、民事裁判では最後に要約調書を作成して顕出している。しかし、刑事裁判においてはそこまでする必要はなく、現行法上の手続を前提に制度設計すればよい。
  • 本来は公判手続で行うべきところを準備手続で簡易に処理することにした上で、準備手続で行われたことを公判手続に明らかにするというのが、現行法の仕組みと思うが、たたき台の準備手続は、裁判員が判断する対象を明らかにするもの、いわば舞台裏での準備というイメージであり、準備手続を重ねてはっきりした結果を裁判員に提示するということでないと、実効的な準備手続が行えないのではないか。そもそも顕出が本当に裁判員制度の下で必要なのか、少なくとも「経過」の顕出はなくてもいいのではないかと思う。また、準備手続における主張の変遷を弾劾の資料としてどう使うのかについては、調書に記載されていれば現行の証拠法の下で判断することになるであろうが、準備手続は供述を採取する制度ではないので、できるだけシンプルな手続にすべきである。
  • 準備手続が実効的にできなくなるというのは、弁護側として、自由に余り身構えずにいろんな主張をすることができなくなるということか。
  • そういう面もあるかもしれない。
  • 準備手続段階では主張を隠しておいて公判段階での不意打ちを目的とするのでなければ、準備手続において、検察側の主張に対してきちんと反論をしていき、実効的な争点整理をすることができないということはないのではないか。
  • 準備手続は舞台裏での準備ではない。また、準備手続の顕出は、裁判の公開の要請から要求されるものである。検察官又は被告人側で主張の変遷があった場合、その変遷の経過及び理由が裁判員に明らかにされないと、きちんとした裁判ができない。
  • 裁判所が主張の変遷のあったことを裁判員に中間の説示をすればよい。
  • それだと、経過を顕出するのと変わりはないのではないか。
  • 裁判員は変遷があったということだけでなく変遷の理由も知りたいのではないか。
  • 準備手続は公判ではないので、そこが重くなりすぎて、検察官、弁護人、裁判官で裁判の実質的な部分を準備手続で行うということになってはならない。だからこそ、準備手続がどういうものであったかを裁判員に要領よく示す必要がある。顕出についてはたたき台の案のとおりでよいが、準備手続調書の朗読に時間を要しないように、準備手続の経過が明瞭に分かりやすく示される必要がある。準備手続の経過及び結果の顕出がないと、準備手続の意義・機能がかえってあいまいになるのではないか。
  • 準備手続の経過及び結果の顕出は、公判で行うべきことを準備手続で行ったから要求されるということだけではなく、それらを心証形成の資料に利用するには公判につないでおく必要がある、ということから要求されるのであろう。
  • 準備手続と公判手続をつなぐ必要があるので顕出の手続は必要であるが、準備手続調書に書かれていれば、それはすべて「結果」であり、それは公判で明らかにせざるを得ないであろう。明らかにする方法については、裁判員が準備手続の経過及び結果のすべてを理解する必要がある場合と、結論だけで十分という場合があろうが、実際は後者が多いであろう。そうであれば、冒頭陳述で結果を明らかにしてもらい、経過において結論と違った主張などがあればそれを付加して公判で明らかにすればよく、あとは明らかにする方法に関する運用の工夫によればよいのではないか。
     準備手続における被告人の供述等も証拠となるであろうが、証拠とする方法については、当事者から証拠調べ請求するというようにしないと、裁判員にとって分かりにくいのではないか。被告人の供述等が証拠として重要であるのであれば、特に証拠化することを考えるべきではないか。

(3)検察官取調べ請求証拠以外の証拠の開示について(たたき台その1の第1の3(3)関係)

  • 検察官の主張を裏付ける証拠の開示、それ以外の証拠についてのB案の枠組みによる証拠開示と、たたき台その1の第1の5による争点に関連する証拠開示という全体の仕組みによれば、証拠開示をめぐって従来から特に争いになっていたものは解決されるであろうし、B案に示された一定の類型に該当する相当広い証拠が開示されることになるであろうから、B案が妥当である。第23回検討会において法務省から説明がなされた取調べ過程・状況の書面による記録(以下「取調記録書面」という。)も、被告人の自白の証明力を争う場合には重要な基礎資料となり得るものであるので、B案に掲げられた類型に付加してもよいのではないか。
  • B案が妥当である。取調記録書面も類型に付加されるべきである。
  • B案でも前進していると思うが、それで十分かという懸念がある。B案にはいろんな要件があり、弁護人の腕いかんによって開示の範囲が左右されることにもなる。B案に加えて、A案の証拠の標目を記載した一覧表の開示も加えるべきである。取調記録書面を類型に追加しても、捜査報告書全般が類型から抜け落ちており、不十分である。一覧表を開示した場合の弊害として虚偽弁解の作出や証拠漁りが言われているが、一覧表を不開示にするほどのウェイトのある弊害なのか。初動捜査の動きが捜査報告書類により弁護人に明らかになることによってえん罪を防ぐことができたこともあったのであり、一覧表の開示は必要である。一覧表の作成は捜査機関には負担であろうが、それは手続の適正さ、公正さの確保のために対応してもらうしかない。B案にA案を加えた制度が妥当である。
  • 捜査報告書を類型に加えるのでは不十分なのか。B案の要件について、具体的にはどういう点が問題なのか。
  • 犯行現場の目撃者の聞き込みが行われ、被告人以外の者が犯人であることを示唆する情報が記載されている捜査報告書が存在する場合に、B案では、そもそも類型から捜査報告書が外れているし、仮に捜査報告書が類型に掲げられたとしても、一覧表がなければ弁護人にその捜査報告書の存在が分からないのではないか。
  • たたき台その1の第1の5の争点に関連する証拠開示の枠組みによって、必要性が明らかにされれば、争点に関連する証拠ということで、例として挙げられているような捜査報告書は開示されるであろうし、証拠開示の裁定においては一覧表が裁判所に提出されるのであり、それらを含めた全体の仕組みをみれば、B案で問題はない。
  • 一覧表の作成は、証拠の量が莫大なために基本的に不可能な場合もある。
  • B案の表現は分かりにくい。開示の範囲は検察官の能力によっても左右される部分もあるだろうが、それはやむを得ないと思う。
  • B案が妥当である。その理由は、以前に述べたとおりである。問題とされている捜査報告書も、争点に関連する証拠開示によって開示できる仕組みになっており、たたき台その1の第1の3(3)の開示だけで証拠開示の問題をすべて解決しようということではない。
  • 一覧表を開示すると言っても、標目だけのような形式的な事項の記載では意味がないし、証拠の内容も記載するとなると全面的証拠開示と同じことになり問題である。仮に、一覧表に供述者の氏名などを記載するとすると、当該供述者に対する威迫、その者の名誉・プライバシーの侵害のおそれは避けられないし、情報提供をしたことを外部に明らかにして欲しくないという者からの捜査協力も得られなくなる。また、一覧表の開示を前提に、弊害がない限り証拠開示するというのでは、探索目的の証拠開示請求を認めることにもなる。実際問題としても、一覧表に証拠の内容の要旨を記載するのは負担が大きすぎて不可能であるし、要旨の正確性をめぐって紛議が生じかえって混乱するのであって、現実的ではない。
  • 制度としてはB案でいいと思う。「特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために当該類型及び範囲の証拠を検討することが重要であることを明らかにして」という要件の解釈運用は極めて厳格にすべきである。証拠開示制度は、被告人に虚偽の弁解を作出する根拠を与える制度になってはいけない。そういう制度になると、被告人のあらゆる弁解を想定した徹底したつぶしの捜査が必要になって、刑事司法の究極の目的である治安の維持、社会の安全確保のための限られた資源の効果的な使用が阻害されるおそれがある。被告人に有利な記載がある捜査報告書は、被告人側が主張を明示すれば争点に関連する証拠として開示されることになるだろう。
  • A案プラスB案がよい。B案では、類型から捜査報告書が落ちている。また、一覧表があれば、B案を前提に開示を請求する証拠の類型の特定をするに当たって、どんな類型の証拠があるのかが弁護人に分かり、特定に役立つ。
     証拠の標目の一覧表の開示に伴う虚偽弁解作出の弊害が指摘されているが、一覧表の開示により被告人の記憶が喚起される場合もあるので、弊害ばかりではない。一覧表作成の負担もあるだろうが、送致目録の活用も考えられるのではないか。鑑定書が存在したことが再審段階になってはじめて判明したということもある。これらのプラスとマイナスを考えると、一覧表を開示すべきであると考える。
     取調記録書面をB案の開示類型に付加することには賛成である。
     B案に掲げられている類型の証拠は、類型的に必要性が高く弊害も少ないので、証拠の類型と範囲を特定して請求された場合には、弊害がない場合には開示されるような要件にすべきである。
     被告人に有利な証拠についても表現が難しいという問題はあるが、「検察官の主張に反する可能性がある証拠」というイギリスの証拠開示制度での表現もあるので、そういった類型もB案に加えると、より争点整理に役立つのではないかと思う。
  • 一覧表の開示により記憶が喚起される場合とは、具体的にどのような場合か。
  • 供述者、供述録取年月日の記載や、差押えの場所の記載から証拠の存在を思い出すこともあるのではないか。
  • 一覧表の開示により、記憶が喚起されたり、存在を知らない鑑定書の存在を知ることはあるであろうが、一覧表の開示がなくても、B案の枠組みを最大限活用することによって、そのような鑑定書などは開示されることになるであろう。被告人に有利な証拠については、B案の「証明力を判断」という要件により、開示の対象になるのではないかと考える。
  • B案でよい。取調記録書面を類型として付加するのがいいかどうかは別として、問題になったら開示される方が望ましい。
  • 検察官の主張に反する証拠は、B案のカ(検察官主張事実に直接関係する参考人の供述調書)に含まれるのではないか。B案に掲げられた類型は、従来よりも、証拠開示として踏み出したものであると思う。
  • B案のカは、検察官主張事実と同一の事項についての供述調書のことであり、検察官主張事実を補強する場合も弾劾する場合も含む。
  • 一覧表がなくても、被告人側が、「犯行現場の他の目撃者の供述調書」ということで開示を請求すれば、そのような調書が開示され得ることになるのではないか。
  • 検察官が目撃証人を請求していて、同一の状況を目撃した他の参考人の供述調書という特定をしてその他の開示の要件を満たせば、開示されることになる。
  • B案はかなり前進しており、相当である。なお、B案にいう「弊害」の具体的内容を明確に分かり易くなるように制度設計してもらえればと思う。
  • 以前の事務局からのB案に関する説明によると、B案でもかなり証拠が開示されることになり、全体として弁護人が開示して欲しいと思う証拠は相当開示されることになるのではないかと思う。また、現場の裁判官として、被告人の主張を裏付ける証拠が開示されないことのないような制度にすべきであると考えるが、そのような制度になっているので、B案でよい。ただ、B案の要件については、もっとすっきりとさせた方がいいのではないか。弁護人は、開示を請求する証拠の類型及び範囲を特定し、どの検察官請求証拠の信用性の証明力の判断のためなのかを示し、開示の必要性を明らかにするのであるから、「事案の内容及び検察官請求証拠の構造等に照らし」という部分は不要ではないか。また、B案の中で出てくる重要性と必要性はどう違うのか。当事者が重要と主張すればいいのであれば、判断の要件として意味が乏しく、重要性を要件として残す必要があるのか。
     弊害の具体的内容については、事案によって異なるので、たたき台のような書き方をするしかないであろう。
  • 犯人は黒い服を着ていたという目撃者Aの供述調書が検察官から請求されている場合において、Aが犯行時刻の直後にBに「犯人は赤い服を着ていた。」と言ったという内容のBの供述調書は、カに該当するのか。カの「直接関係する」という文言が直接証拠のことを指すと考えると、該当しなくなると思われるが、どうか。
  • たたき台の趣旨からすると、Bの供述調書はカに該当するように思われる。
  • 一覧表が開示されればよいと思っていたが、これまでの議論でB案でもかなり証拠が開示されるということが分かってきたので、一覧表の開示にはこだわらない。被告人側の主張が形成されるような証拠が開示され、検察官の恣意的な判断によって開示されないということがなければ、B案でよいと考える。
  • 取調記録書面をB案の類型に加えるべきである。
  • 取調記録書面はB案の類型として開示の対象になるであろう。
  • 一覧表があると分かり易く便利になる。
  • 証拠の内容が記載されていないのに、一覧表があると分かり易いというのは、具体的にはどういうことか。
  • 内容が記載されていなくても、内容が分かる場合もあるのではないか。
  • 結局、一覧表に基づいて開示を請求して証拠の内容を確かめることになって、証拠漁りになるのではないか。

(4)被告人側による主張の明示及び準備手続終了後の主張・証拠調べ請求について(たたき台その1の第1の4及び同8(2)(3)関係)

  • 4(1)アについては、被告人にも主張の明示義務を課すA案が妥当である。当事者には、準備手続において、きちんと主張を明示してもらいたい。8(2)の準備手続終了後の主張については、制限をしないB案がよい。後出しの主張は出ないことが望ましいが、被告人が最後の最後で本当の主張をすることもあるので、主張制限を設けるのは望ましくないと考える。
  • 4(1)アの被告人側による主張の明示については、A案がよい。その理由は以前の検討会で述べたとおりである。
  • 4(1)アの被告人側の主張の明示については、B案が妥当である。主張を予告させて不意打ちを防止する必要はあるが、弁護人に争点整理への協力義務を負わせることで効果を発揮できるのではないか。主張明示義務を被告人に課すと、被告人の黙秘権に反するという意見もあるし、準備手続が固すぎる手続になるのではないか。
  • 4(1)アの被告人側の主張の明示については、A案が妥当である。被告人を義務の対象から除外するのは、立法政策として望ましくない。公判で混乱が生じることを防ぐためには被告人にも主張明示義務を課すのが妥当である。義務を課しても憲法38条1項違反という問題は生じないと考えている。
  • 4(1)ア・イの被告人側の主張の明示及び証拠調べ請求のいずれについても、A案が妥当である。被告人に義務を課さないとすると、後出しの主張をする権利を認めることになり、準備手続を行う目的にそぐわないことになる。後出しの主張立証が自由になって、主張立証の予定が明らかにならないと、審理計画を策定できず、特に裁判員制度が機能しなくなる。A案は、公判で否認又は事件に関する主張をする場合には準備手続において明示せよということだけであり、それは準備手続を設けた趣旨から当然のことである。弁護人に協力義務を課すだけでは制度として不十分であるし、被告人に主張立証明示義務を課したとしても黙秘権を侵害するものではない。
  • 4(1)ア・イの被告人側の主張の明示及び証拠調べ請求のいずれについても、A案が妥当である。理由は、A案を支持する方々と同じである。
  • 憲法上は自己に不利益な供述を強要されないことが保障されており、主張明示義務は、防御上の主張をする時期を前倒ししているだけであるし、防御上の主張をするか否かの判断をする際に被告人にプレッシャーはかかるが、それは憲法上の強要にまで至るものではない。したがって、被告人に主張明示義務を課するA案(4(1)ア)は、被告人に不利益な供述を強要しているわけではない。
  • 黙秘権の告知も不要になるのか。
  • 主張明示の義務を課すとなると、刑訴法上の黙秘権の規定は改正する必要があるかもしれない。
  • 黙秘権の規定自体を改正しなければならないのか、明示義務の導入により当然改められたと考えるのかは、技術的な問題であろう。
  • 4(1)ア・イの被告人側の主張の明示及び証拠調べ請求のいずれについても、B案でよいのではないか。準備手続には被告人は最後に出頭して審理予定等を確認する程度でいいのではないかと考えているが、被告人にまで義務を課すと、被告人を準備手続に毎回出頭させるという配慮をしなければならなくなるようにも思われるし、弁護人に義務を課すだけで十分争点整理はできるのではないか。
  • 弁護人にのみ義務を課すとすると、準備手続において主張や立証を明示するという行為は弁護人の固有権となるのか。固有権として構成するのは難しいのではないか。
  • 弁護人として、被告人にも義務が課されていると主張を明示しやすいが、そうでないと明示しにくい。
  • 被告人が何も言わないと言っている時には、4(1)アのB案の下でも弁護人が主張を明示するということは考えられない。B案は、正当防衛の主張を被告人が弁護人に言う場合に、弁護人だけが正当防衛の主張を明らかにするが、被告人は何も明らかにしなくていいということであり、被告人が述べる主張と全然異なる主張を弁護人が明らかにするということではない。
  • 被告人の主張に沿った主張を弁護人がするのであれば、弁護人の主張を被告人の主張として扱って、主張明示による法的効果を被告人に帰属させてもいいのではないか。
  • 刑訴法上の黙秘権を前提にすると、被告人に主張明示義務を課すというのには抵抗感があり、4(1)アは、B案がいいように思う。特に主張制限と結びつく場合にはその感が強い。一般論としてできるだけ主張を明示しなさいとするのはいいが、法律上の義務にまですることはないのではないかと思う。
  • 刑訴法上の黙秘権が、「いつ言うか」ということの選択の保障も含んでいるのであれば、それに抵触することになるであろうが、含んでいないと考えれば、主張の時期を前倒ししているだけで、黙秘権の問題ではないということになるであろう。
  • 準備手続において弁護人が明らかにした主張と異なることを被告人が公判で主張すれば、弁護人と被告人との間で主張が異なっていることが裁判員にも分かり、被告人の主張の信用性を否定する方向で評価されるのであろうから、裁判員制度が機能しなくなるということはないのではないか。準備手続の段階で被告人と弁護人の認識が完全に一致するか微妙な場合があるであろうから、全部一致しているということを前提に制度設計するというのには無理があるのではないか。
  • 被告人に義務が課されていないのに、弁護人が明らかにした主張と異なる主張を被告人がしている場合に、そのことを被告人に不利な方向で評価するということが許されるといえるか。
  • 被告人に義務を課さないと、自由に新しい主張立証をすることを許さざるを得ない。新しい主張立証が次々と出ることによって、審理期間が当初の予定より2週間も3週間も延びるということになると、裁判員制度が動かなくなるが、それでよいのか。
  • 4(1)アのB案でも、すべての裁判員制度対象事件の審理計画がおかしくなるわけではない。A案でもB案でも、準備手続の終了後に新たな主張が出て証拠調べが必要になるケースがあることを念頭に置いているのは共通だろうから、どちらでも運用は異ならないのではないか。
  • 運用がどうなるかではなく、制度の在り方としてどうするかという問題であろう。
  • 弁護人だけが義務を負い、被告人と弁護人を切り離すということに違和感がある。4(1)アのA案でも、被告人が何も主張しないと言い張れば、弁護人としてはすべてを争点にして、それを前提に審理計画を立て、途中で事情が変われば審理を予定より短くすることもあるというのが実務の知恵である。制度の在り方として、被告人が右を向いている時に弁護人が左を向いていいというような制度はおかしくないか。
  • 4(1)ア・イの被告人側の主張の明示及び証拠調べ請求のいずれについても、B案を支持する。被告人が後出しの主張をするのは望ましいことではないが、仕方がない。被告人の主張を封じることは望ましくない。
  • 4(1)イの被告人側の証拠調べ請求については、A案が妥当である。ただ、8(3)で準備手続終了後の証拠調べ請求を一律に却下するというのはおかしく、必要性がありそうな場合には一度手続を中断して準備手続に移る場合があることもやむを得ない。
  • 4(1)イの被告人側の証拠調べ請求及び8(3)の準備手続終了後の証拠調べ請求のいずれについても、A案が妥当である。4(1)アの被告人側の主張の明示についてはA案を支持するが、8(2)の準備手続終了後の主張については、被告人の主張を封じるのは適切ではないので、B案を支持する。
  • 8(3)の準備手続終了後の証拠調べ請求に関するA案による制限は、準備手続終了後の新たな主張に関する立証については及ばないのか。
  • たたき台の趣旨としては、8(3)のA案の立証制限は新たな主張に関する立証には及ばないというような限定はしていない。
  • 8(2)の準備手続終了後の主張の制限については、被告人が公判廷で新たな主張をし始めた時にそれに対して発言禁止をして止めさせるというのが公判運営上いいのか、という問題があるが、8(3)で、証拠調べ請求を制限するか否かについては、事案の全体を考察して考えればいいので、立証制限を設けるという構成がいいのではないか。
  • 8(3)の準備手続終了後の証拠調べ請求に関するA案にいう「やむを得ない事由」というのは、新たな主張を準備手続において明らかにしなかったことについてやむを得ない事由がある場合という意味か、主張の内容が真実らしいという場合も該当するのか。
  • たたき台の趣旨は、準備手続において請求できなかったことがやむを得ない場合が、「やむを得ない事由」に該当する場合であり、主張の内容が真実らしいという場合は、裁判所による職権証拠調べによりカバーするというものである。
  • 4(1)イの被告人側の証拠調べ請求については、B案が妥当である。その理由は、被告人側の主張の明示に関しB案を支持した理由と同じである。
  • 主張制限をしないのであれば、被告人に主張明示義務まで課す必要があるのか。また、弁護人の固有権としては構成できないであろうが、そうすると弁護人に協力を義務を課すことができるにとどまることになるのではないかとも思われるが、弁護人に主張明示義務を課すB案(4(1)ア)くらいは必要であろうと思う。被告人に主張明示義務を課すとしても、4(1)アのA案のように「検察官主張事実の全部又は一部を否認する主張」とあると、検察官主張事実について個別に細かく認否を求めるように思われ、それには抵抗がある。より穏当に、被告人側の証拠調べ請求を伴うような事実の主張に明示義務を課すということも考えられるのではないか。
     4(1)イの被告人側の証拠調べ請求についてはB案が妥当である。8(3)の準備手続終了後の証拠調べ請求についてはB案が妥当と考えている。以前の検討会で準備手続における証拠調べ請求義務が被告人に課せられていないと、準備手続終了後に証拠調べ請求があった場合の説明義務を課せないのではないかとの指摘されたが、請求義務を課さなくても、証拠請求者として説明することを義務とすることができるのではないかと考えている。現在でも、公判の後の段階で被告人が証拠調べ請求する場合に、何故より早い段階で請求しなかったかについて説明を要求しているが、それは請求義務があったからというわけではなく、審理に立ち会って請求権がありながらその権利を行使しなかったということについての説明を求めているのであり、8(3)のB案の説明義務も同じように説明できるのではないか。
  • 準備手続における請求義務を課していなくて、「準備手続において当該証拠調べ請求をしなかった理由」の説明義務を課し、さらに、その説明に相当な理由がないときに請求を却下するということはできるのか。そのような説明義務が証拠調べの必要性の説明義務に含まれるといえるか。
  • 証拠採用されるためには関連性や必要性についての説明を証拠調べ請求者はする必要があるのであって、なぜ後の段階で請求するのかを説明しなければならない場合もあるであろう。また、準備手続を行ってきたということに加えて、被告人も準備手続の最後には立ち会ったということから、説明義務の発生を説明できるのではないか。
  • ここでの問題は、証拠調べの必要性があっても、準備手続において請求しなかったことについて相当な理由があることを説明しなかったときに、そのことを理由に請求を却下できるのか、ということであろう。
  • 8(3)の準備手続終了後の証拠調べ請求に関するB案は、相当な理由の説明がなかったということを必要性の判断に反映させようという考え方であり、そうであれば請求義務を課さなくても相当な理由の説明がなければ請求を却下できるのではないか。
  • 公判手続の冒頭で証拠調べ請求をした場合に、説明を求めることまではできても、準備手続における請求義務を前提にしない限り、却下することはできないのではないか。特に、弁護人には義務を課す一方で、被告人に義務を課さないことを明示しているのであれば、なおさらそうではないのか。
  • 準備手続に協力する義務は被告人にも弁護人にもあるであろうが、黙秘権との関係が問題になり得るので、被告人に義務を課すことを明示的に法律に書かない方がいいという考え方もあるであろう。また、請求義務の有無と切り離して、準備手続終了後の証拠調べ請求に関するB案のような説明義務を課すことも可能ではないか。4(1)イの被告人側の証拠調べ請求及び8(3)の準備手続終了後の証拠調べ請求については、いずれもB案がよい。
  • 4(1)イの被告人側の証拠調べ請求についてはB案が妥当であり、それを前提にすると、8(3)の準備手続終了後の証拠調べ請求についてはC案とならざるを得ないであろう。
  • 運用でカバーできると言うが、争点整理がきちんとできない場合に備えて制度を作る必要があるのではないか。
  • 事件について細かいところまで被告人が理解しているのかという問題もあるし、現実問題として、公判終了直前に無罪を主張し無罪となったこともあった。そういう場合にどう対応するかを考える必要があるのではないか。
  • 義務を課し制限を設ける立場からは、そのような場合には制限に対する例外を認めることでカバーしようということであろう。
  • 運用に任せるという制度設計は問題であり、主張明示義務・証拠調べ請求義務を課し、主張立証制限をもうけることにより、きちんとした制度を作るべきである。8(2)・(3)で準備手続終了後の主張立証を制限するA案を採っても、主張しなかったことにやむを得ない事由があったり、理由がありそうなときは職権で取り上げることができるのであるから、例外的な場合には対応できるのではないか。

(5)争点に関連する証拠開示について(たたき台その1の第1の5関係)

  • 考え方はたたき台のとおりでよいが、法律を作るときには表現について分かり易く整理して欲しい。
  • たたき台の案に賛成である。

(6)証拠の標目の提出命令について(たたき台その1の第1の7(4)関係)

  • たたき台のイについてはA案が妥当である。証拠の標目を記載した一覧表が提出されるのは、検察官による証拠開示に関する第1次的な判断に対し、その判断に不服がある弁護人が裁判所に裁定を求めている局面であり、一覧表は、裁判所の裁定の判断材料として役立つものでなければならない。そのような一覧表作成・提出の目的からすると、一覧表は裁判所限りで閲読されるものであればよい。
  • 裁判所が弊害がないと認めているのに被告人側に一覧表を開示してはいけない理由は何なのか。
  • 開示による弊害の有無が判断できるような一覧表というのは、一般的に、個別の証拠に含まれた具体的な個人情報に関する事柄なども記載されているであろうから、そのようなものが外部に出ると、弊害が生じるのではないか。
  • 裁判所が開示による弊害の有無を判断するということになると、検察官としては、一覧表が弁護側に開示されることを考えて、一覧表の記載を内容の乏しいものとするようになるだろう。それでは、裁判所は証拠開示の裁定につき十分な判断ができなくなる。一覧表は証拠開示についての裁判所の裁定のための重要な担保措置であるから、基本的にA案を採り、そこにできる限り情報が盛り込まれるようにすべきである。
  • たとえ一覧表の内容が乏しかったとしても、それを一回裁判所に提出して終わりというわけではなく、裁判所から釈明を求めるということもあるであろう。様々な事案があり得るのであるから、裁判所が弊害がないと判断する場合には被告人側に開示された方が、被告人側が裁判所の裁定に納得できる場合もあるのではないか。つまり、開示請求した証拠の存否が問題になった場合に、一覧表が開示されれば、該当証拠がないという決定に被告人側が納得する場合がある。B案が妥当である。
  • たたき台のイについてはA案が妥当である。一覧表は、裁判所が証拠開示についての裁定をするために必要と認める場合に作成されるものであって、被告人側に開示されることを予定したものではない。また、弊害がなければ開示するということになると、弊害の有無をめぐって紛争が生じ得るし、被告人側に開示するとすると、一覧表の記載内容も簡単なものにとどまることになって、裁判所の裁定に資するという本来の機能を損なうことになる。このように、B案では、混乱が生じるだけである。
  • たたき台のイについてはB案が妥当である。開示請求した証拠の存否が問題になった場合には、最終的な担保措置として一覧表が開示されることで被告人側が納得する場合もある。
  • 被告人側がある証拠が存在していると考えるなら、端的にその証拠の開示を請求すればよいのではないか。
  • 被告人の記憶では証拠は特定できないが、あったはずだという場合には、一覧表が開示されることによって、その証拠であると特定できたり、あると思っていた証拠がないことに納得するということもあり得る。
  • 開示してもらいたい証拠の内容が分かっているなら、それにより特定して証拠開示の請求をすればよいであろう。
  • 開示を請求している証拠が一覧表には記載されているが、裁判所が開示要件に該当しないと判断したという場合であれば、一覧表の開示を受けて、その判断をチェックするという意味はあるかもしれないが、そういうチェックができるためには、一覧表に証拠の実質的な内容を書かざるを得なくなる。しかし、そうなると、裁判所が開示すべきであると裁定もしていないのに、一覧表を開示することにより証拠そのものを開示するのと同じことになってしまうという問題が生じる。開示の問題は、一覧表の記載内容と相関した問題である。    仮に検察官が証拠を隠しているということがあったとして、その場合には、当の証拠は一覧表にも記載されないであろうから、一覧表の開示を受けても役には立たないだろう。

(7)開示された証拠の目的外使用の禁止等について(たたき台その1の第1の9関係)

  • 学術研究目的の場合など、審理の準備の目的以外に、使用が許される例外的な場合を定めるべきである。
  • 目的外使用禁止自体はよいが、たたき台の「審理の準備」という目的では、共同被告人の事件で、別々に開示された証拠について、その「内容」として、「否認している」という程度の抽象的なものを共犯者の弁護人に伝えて打合せすることも禁止されることになりかねず、共同防御ができなくなる場合が生じる。「公判廷での被告人の防御のため」といった目的で使用することができるということにする必要があるのではないか。
  • たたき台のアの精神はいいが、「内容」という部分があいまいである。開示証拠の写しを利用する場合でも、例えば、同種事件の弁護のために使用することまで禁止されるのはいかがなものか。また、刑事専門の弁護士がケース研究をすることまで禁止されることになるのは行き過ぎではないか。たたき台のアについては、「証拠の写し又はその内容」という部分を「証拠の写し又はそれに準ずるもの」に改め、さらに「その他正当な理由」がある場合には公判廷で証拠調べされなかった証拠も含めてその使用が禁止されないようにしてもらいたい。禁止違反に対して罰則を設けることについては反対である。法曹倫理に委ねるべき問題である。
  • 開示された証拠の目的外使用は禁止すべきである。共犯事件でも、各被告人の認否により開示される証拠の範囲が異なり、一方の被告人が他方の被告人に開示された証拠を利用することを認めると、証拠開示のルールが潜脱されてしまうことになる。研究目的等による利用は、刑事確定訴訟記録法のルールにより対処すればよい。「内容」の意義については難しい問題があるが、調書の内容等を逐語的に再現したものは許されないということは確認しておく必要があろう。
  • 開示された証拠の目的外使用は禁止すべきで、たたき台の案に賛成である。禁止しないと、開示される証拠の範囲も狭くなりかねない。また、弁護人には法曹倫理による規制が及ぶとしても、被告人には及ばないので、禁止違反に対する制裁を設けることは必要である。
  • たたき台の「証拠の写し又はその内容」という部分を「証拠の写し又はそれと同視できるもの」などとすることも考えられるが、それ以外の部分についてはたたき台のとおりでよい。
  • たたき台の案のとおりでよい。開示される証拠の範囲が広がるので、目的外使用の禁止は必要で、国民が捜査に協力することをちゅうちょするような事態を招かないようにすべきである。「内容」については、写しと同等程度に詳細なものを禁止の対象にすべきである。
  • 民事事件において記録の取り寄せに時間がかかるような場合にも、開示証拠の民事事件における利用を禁止するのか。
  • 民事事件において利用するには、送付嘱託など公式のルートがあるのであり、それによるべきである。
  • 刑訴法47条は、公判で取り調べられた証拠か否かで、公開の点で区別している。目的外使用の禁止についても、公判において取り調べられた証拠について別に扱う必要があるのではないか。
  • 公判で取り調べられた証拠の取扱いについては、事件の確定後に刑事確定訴訟記録法に基づき公開されるというのが、現行法の仕組みである。
  • 公判で取り調べられた証拠は、事件の確定前にあっては、いわゆる犯罪被害者保護法に基づく被害者等による閲覧謄写の例外を除けば、訴訟当事者の閲覧謄写が許されているだけであり、一般には公開されておらず、確定後に、刑事確定訴訟記録法の枠組みの下で公開されることになっているのであるから、公判で取り調べられた証拠の写し等であっても開示証拠の目的外使用の禁止の対象に含めるべきである。
  • 判決の確定までに法廷を傍聴した者が公判廷で取り調べられた証拠の内容を報道するのは許されるが、同じことを被告人や弁護人が行うことはよいのか。
  • 公開の法廷で傍聴した内容を報道することと開示証拠自体を目的外に使用したり公表することとは、別の話であろう。
  • 報道に規制を及ぼすものとは受け止められないように制度設計してもらいたい。公益目的や正当な目的がある場合には禁止の対象から除くような規定は設けられないか。
  • 禁止違反に対する制裁の規定は必要である。弁護士倫理で解決できれば理想ではあるが、現実にはインターネット上に証拠の内容そのものが流されるといったことがあるのであり、弁護士倫理で対応し切れているわけではない。
  • 制裁として過料及び罰金刑はあり得ると思うが、自由刑は重すぎる。
  • たたき台のイ及びウの両方が必要である。弁護士倫理だけでは対応できないし、被告人に対しても禁止を及ぼす必要があるからである。目的外使用により重要な個人情報が公になる時には、プライバシー侵害など甚大な法益侵害があり、懲役刑が科され得る秘密漏えい罪と同程度の法益侵害をもたらす場合があるので、懲役刑も必要である。もっとも、構成要件の明確性の観点から、「内容」という部分の文言を更に詰める必要がある。
  • 目的外使用の禁止違反は、検察官に対し適用され懲役刑もある国家公務員法上の秘密漏えい罪と同程度に悪質である。
  • たたき台のイ及びウはやむを得ない。例えば、殺人事件の被害者の遺体の写真が出版社に売られて週刊誌に掲載されたというような場合に、制裁が罰金刑だけでは不十分であり、懲役刑も定めるのはやむを得ない。
  • 過去に問題のある事例はあったが、検察官からの懲戒申立ての前に弁護士会が自ら懲戒処分として弁護士資格のはく奪をするなど、迅速で適切な対応をしている。弁護士会の倫理規程も改定中であり、弁護人に対しては弁護士倫理による規律に任せて欲しい。被告人に対しても、名誉毀損罪などの現行法上の罰則規定で対応すればよい。
  • 証拠の写しを第三者に渡したというだけの場合は、「公然と事実を摘示」していないので、名誉毀損罪に当たるとするのは難しいのではないか。
  • 一般論として刑法上の正当化理由があれば、違法性が阻却されて刑事罰が科されなくなるので、特に「正当な理由」がある場合を除外する旨の規定を設ける必要はない。
  • 目的外使用禁止は証拠開示の範囲を広くすることに対する担保という役割もあるし、目的外使用が問題になった事例も現にあるので、禁止違反に対する罰則は必要であり、懲役刑を科す必要がある事案もあると思う。

(8)その他

  • 検察官が証拠開示義務に違反した場合には制裁を課すべきである。具体的には、開示義務違反を絶対的控訴理由とすることが考えられる。公判中に違反が判明した場合には、公訴棄却や公判手続を延期することなど裁判所の裁量に委ねるということも考えられる。
  • 検察官が裁判所による開示命令に意図的に従わないということは考えられない。過失により従わないという場合はあり得るかもしれないが、その場合に一律に公訴棄却などとするのは乱暴な議論である。開示されなかった証拠があることが後に判明した場合には、それを新証拠として控訴や再審請求をすることもできる。
  • 検察官に対しては開示義務の制度的担保措置がない点を心配している。故意に開示義務に違反する場合が絶対あり得ないという前提で制度設計してもよいのか。そのような場合について、法廷侮辱罪のようなものを作って刑事罰を検察官に科すことも検討してよいのではないか。
  • そのような場合には、検察官は懲戒されるであろう。
  • 目的外使用の禁止違反に対して弁護士も懲戒されるであろうが、それでは不十分ということで刑事罰が検討されているのではないか。
  • 目的外使用禁止違反に対しては罰金刑にとどめるべきと考えているので、それとのバランスで罰金刑にとどめるということになるであろうが、検察官の開示義務違反に対しても刑罰を設けるべきである。
  • その場合、侵害される法益は何なのか。
  • 司法の公正さということになろう。
  • 米国では、開示義務違反に対しては、それぞれの地域ごとに種々の制裁が用意されており、公訴棄却を選択肢にしている所もあるが、我が国において、いきなり公訴棄却するというのは難しいであろう。
  • 米国で公訴棄却にする所があるのは、陪審裁判を前提に、重要な証拠が弁護側に開示されずに審理が進んでしまっているような場合に、そこでその証拠を弁護側に開示しても取り返しがつかず、そのまま陪審による審理を続けるのは不都合であるので、手続を打ち切って、新たな陪審により審理させようという考えに基づくではないかと推測される。したがって、事件を終結させるという意味での公訴棄却とは趣旨が違うのではないか。

(9) 次回以降の予定

 次回(9月25日)は、引き続き、刑事裁判の充実・迅速化に関する検討を行う予定である。

(以上)