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裁判員制度・刑事検討会(第27回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日時
平成15年9月25日(木)13:30〜18:00

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
池田修、井上正仁、大出良知、酒巻匡、四宮啓、井康行、土屋美明、樋口建史、平良木登規男、本田守弘(敬称略)
(事務局)
古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、辻裕教参事官

4 議題
「刑事裁判の充実・迅速化」及び「検察審査会制度」について

5 議事

 まず、第22回検討会配布資料2「刑事裁判の充実・迅速化について(その2)」(以下、(1)及び(2)において、「たたき台」という。)に沿って、刑事裁判の充実・迅速化について議論が行われた。
 議論の概要は以下のとおりである。

(1) 連日的開廷の確保
 たたき台の「第2 連日的開廷の確保」関し、主として、以下のような意見が述べられた。

  • 連日的開廷の原則を法定化することに賛成する。さらに、連日的開廷を可能とするために、十分な証拠開示を前提とした争点整理、保釈の運用の見直し、夜間や休日の接見を含めた接見制度の拡充、機械でのリアルタイム速記による公判記録の即時交付など、関連諸制度を併せて整備する必要がある。
  • 連日的開廷の原則を法定化することは望ましいが、仮に、非裁判員事件で連日的開廷が十分に実現できないことが懸念されるとすると、裁判員事件について、非裁判員事件と同じ規定ぶりで足りるのか疑問がある。例えば、現行の刑訴規則の連日的開廷の原則は全件に適用されるとしつつ、裁判員事件については、特に連日的開廷を原則とする旨を法定できないか検討してもらいたい。
  • 裁判員事件については特に連日的開廷を原則とするということを法定して、その規定は非裁判員事件に適用されないとなると、非裁判員事件における連日的開廷の原則が後退したことにならないか。全件について連日的開廷を原則としつつ、裁判員事件について、法文上どこまで、より積極的に連日的開廷の原則を書き込めるかということだろう。

(2) 訴訟指揮の実効性確保
 たたき台の「第3 訴訟指揮の実効性確保」に関し、主として、以下のような意見が述べられた。

  ア 国選弁護人の選任(たたき台第3の1の関係)

  • たたき台の規定の趣旨に賛成する。現在の必要的弁護事件では、弁護人がいないと開廷できないので、例外的事例ではあるが、公判期日の引き延ばしや、不出頭のほのめかしなど、制度が悪用されることもあると承知しており、こうした事態に対処するためには、現に不出頭の場合だけでなく、そのおそれがある場合にも、職権で国選弁護人を附することができる制度とするのが望ましい。
  • 国選弁護人を附することができる要件として、「弁護人が正当な理由なく出頭しないとき」と「弁護人が正当な理由があって不出頭の場合に被告人が異議を述べないとき」であることを明定すべきである。
  • 例えば、病気による不出頭は正当な理由によると言えるだろうが、裁判員裁判では、裁判員の選任から期日指定まで終えた後に、弁護人が病気により出頭できなくなったからといって、指定した期日をすべて取り消すわけにはいかず、そうした場合も想定して、国選弁護人を選任できるよう制度的な手当てをしておく必要がある。したがって、あえて「正当な理由」という要件を加える必要はない。
  • 裁判員裁判では、弁護人不出頭の場合には、正当な理由の有無にかかわらず国選弁護人を選任する必要があるから、「正当な理由」という要件を設ける必要はない。ただ、実際問題として、国選弁護人を選任したとしても相応の準備期間は必要となるので、公判期日の延期は避けられないと思う。
  • あらかじめ弁護人不出頭のおそれが明らかになっていることもあり得、そうした場合には国選弁護人も対応可能だろうから、たたき台の案が相当である。
  • 国選弁護人が相応の準備期間を必要とするときはどう対処することになるのか。
  • 運用で対処するほかないだろう。
  • 私選弁護人が正当な理由があって出頭しない場合については、被告人が自分で依頼した弁護人による弁護を受ける利益との関係について検討しておく必要があると思われる。
  • その場合、被告人の意思を無視して国選弁護人を附することができるかが問題となるが、被告人に異議がなければ附することができるだろう。

  イ 命令の不遵守に対する制裁(たたき台第3の2(1)の関係)

  • 法律家が裁判所の命令に従うべきことは当然であるが、アの出頭命令に関しては、準備手続及び裁判員制度の導入により、審理の在り方をめぐる紛議が相当程度回避できると予想される。また、イの尋問・陳述制限命令に関しては、当事者主義訴訟構造の下では、当事者たる弁護人が熱心で精力的な活動を行うことが期待されているところ、その活動が裁判所に理解されないこともあり得、そうした場合に直ちに制裁を科すのは相当でないだろう。したがって、ア、イともに制裁規定を設けずに、法曹倫理にゆだねるのが適当である。
  • ア、イとも、たたき台のとおり制裁規定は必要である。当事者たる法律家が裁判所の適切な訴訟指揮の下で活動すべきことは当然として、被告人が訴訟指揮に従わない場合には法曹倫理にゆだねることはできないのだから、そうした場合への対処方策を講じる必要がある。また、当事者主義と裁判所の訴訟指揮は矛盾するものではなく、むしろ、当事者主義を適切に機能させるためには、当事者が裁判所の合理的な訴訟指揮に従うことが当然の前提となるから、訴訟指揮の実効性を確保するために、訴訟指揮に従わない訴訟関係人に対して制裁を科せることを法文上明らかにしておくべきである。
  • 刑事訴訟法295条に基づく尋問・陳述制限命令の乱発が懸念されているのだろうか。
  • 裁判所の訴訟指揮に対して不服がある場合には、制度の中で、不服申立ての手続が設けられているから、法律家である以上、その手続を用いるべきである。
  • 当事者主義の訴訟構造であることは、裁判所の訴訟指揮を否定する理由とはならないだろう。現に、当事者主義を採る米国では、裁判長の訴訟指揮に従わない当事者に対して強力な制裁が科され得ることになっている。
  • 裁判所の訴訟指揮が当事者主義と矛盾するということではなく、当事者主義であるがゆえに、当事者の活動が裁判所の理解を得られない場合もあり得るということである。
  • 現に、誰が見てもおかしな尋問を行い、裁判長の制限にも従わないという例があるのだから、そうした場合に対処するために制裁規定をおく必要がある。

  ウ 裁判所による処置請求(たたき台第3の2(2)の関係)

  • イの「適当と認める処置」の内容に関しては、処置を採るか否かも含めて監督権者が判断するという理解でよいのか。
  • 何が適当な処置であるかは、処置をする側で決めてもらうという趣旨である。
  • 裁判所による処置請求を必要的とすることにより、訴訟指揮の実効性確保が期待できるので、たたき台のとおりでよい。
  • (1)の命令不遵守に対して過料の制裁を科すことはやむを得ないとしても、裁判所からの処置請求を必要的とすることには抵抗感がある。弁護士会の綱紀懲戒制度の改革が進展しているところでもあり、弁護士会の協力を得やすくするためにも、処置請求は任意的とすべきではないか。
  • 処置請求を任意的とすると、現行の刑訴規則303条と変わらないのではないか。
  • たたき台の案は、現行の刑訴規則から一歩前進しており、相当である。
  • (1)で、命令不遵守に対する制裁規定を新たに設けることに伴い、処置請求に関する規定を手直しするものと理解すればよいだろう。
  • 現行刑訴規則303条のように「特に必要と認めるとき」という要件を設ける必要はないだろう。裁判所は必要的に処置請求するものとした上で、監督権者の適当な処置にゆだねるのが妥当である。

(3) 即決裁判手続
 第26回検討会配付資料1「『刑事裁判の充実・迅速化について(その2)』の一部修正」中の「第5 即決裁判手続」(以下、(3)において、「たたき台」という。)に関し、主として、以下のような意見が述べられた。

  ア 即決裁判手続の申立て(たたき台第5の1の関係)

  • 即決裁判申立ての要件として、弁護人がいるときは、弁護人にも即決裁判手続によることについて異議の有無を確認することとなっているが、弁護人は、当該事件の証拠開示を受けていない被疑者段階で、異議の有無を判断できるのだろうか。
  • 事件にもよるが、即決裁判手続の対象となる事件は、一般的に、被疑者が自認しており、かつ、証拠関係も単純なものであるから、被疑者や検察官から一通りの説明を受ければ、弁護人として、判断することができる事件が多いだろう。それでも判断がつかない事件は、この手続になじまないということではないか。
  • 証拠を見せてもらえば、弁護人として、疑問なく判断することができる事件もあるので、そうした事件については、被疑者段階から弁護人に証拠を見せることとすれば、手続の使い勝手が一層よくなるのではないか。
  • 被疑者本人が認めている場合でも、弁護人としては、証拠を確認しないと判断できないことがあるのか。
  • そういう場合もあり得るだろう。多くの場合は証拠を見なくとも判断することはできるであろうが、証拠を開示することによる弊害よりもメリットのほうが大きいのではないか。
  • 被疑者段階で事前に証拠を見なければ弁護人が判断できないような複雑な事件では、検察官は即決裁判手続の申立てをしないだろう。ただ、弁護人によっては、証拠開示を受けていない被疑者段階では、異議の有無について意見を留保することがあるかもしれないが、そうした場合でも、被疑者の意思を尊重して、検察官は、公訴提起と同時に即決裁判手続の申立てをすることができるものとし、公訴提起後、弁護人が証拠開示を受けた後に、改めて弁護人の意見を求め、異議があれば通常の手続に移ればよい。
  • 即決裁判手続開始前の弁護人への証拠開示を制度化すると、検察官がこの制度の利用に慎重となり、結局、制度が活用されなくなってしまうだろう。
  • 被疑者の弁護人が異議の有無について意見を留保した場合でも、そこで手続を止めるのではなく、即決裁判手続の申立てをすることはできるものとして手続を先に進めた上で、起訴後に証拠開示を受けてから、改めて異議の有無を確認するものとするのが妥当であろう。
  • 証拠を見なくても弁護人が異議の有無を判断できる事件もあるであろうし、また、証拠を見た後に改めて異議を述べる機会が保障されているのだから、たたき台のとおりでよいだろう。

  イ 公的弁護人の選任(たたき台第5の2の関係)

  • 即決裁判手続による場合に、被疑者に公的弁護人の選任請求権を認めることとなると、被疑者段階における公的弁護の対象事件の範囲が軽微な事件にまで拡大することになるが、弁護士側の対応能力は大丈夫なのだろうか。
  • 現在でも、当番弁護士制度により、年間5万件以上の被疑者弁護に対応していることを踏まえると、十分対応可能であると思う。
  • 起訴後の段階となれば、現在の国選弁護と同じことであるが、国選弁護はほぼ対応できているのではないか。
  • 現在略式手続により処理されている事件がこの手続に流れることにより、対象事件数が増加する可能性もあるのではないか。
  • 略式手続の方が簡略な手続なので、略式手続対象事件をわざわざ即決裁判手続に乗せることはないだろう。
  • (2)で、「検察官の意見を聴いた上で、相当と認められるとき」という要件を設けた理由は何か。
  • 被疑者が即決裁判手続によることに同意するかどうかを判断する場合に弁護人の助言を得ることができるよう、公的弁護人の選任を請求することができるものとすることから、検察官が当該事件について即決裁判手続による意思であるのかどうかを確認する必要があると考えたものである。
  • 検察官に即決裁判手続による意思があることの確認であればよいが、弁護人を選任するかどうかについて、検察官の意見を聴くことが要件となるのであれば問題である。被疑者としては、通常公判による審理を受ける権利の放棄という重大な決定のための援助を求めるのであるから、被疑者から請求があれば、弁護人の選任を認めるべきである。
  • 検察官が弁護人選任の要否について意見を述べるという趣旨ではないだろう。
  • 通常は法律の素人である被疑者が、即決裁判手続によるかどうかを安心して判断するために、求めがあれば弁護士の援助を受けることができるようにすることは望ましく、たたき台の案に賛成する。
  • この手続の運用に当たっては、被疑者の任意の同意を確保することが重要であり、被疑者段階での手続的保障が拡大していくことを希望する。

  ウ 即決裁判手続の決定(たたき台第5の3の関係)

  • 即決裁判手続に係る期日を必要的弁護とすることを含め、たたき台の案に賛成である。被告人の権利保護のため、必ず弁護人を附すとすることは望ましく、適切なことである。
  • (6)アに関連して、被疑者段階で異議がないと述べていた被疑者又は弁護人も、冒頭手続において異議を述べることは可能なのか。
  • たたき台の趣旨は、即決裁判手続の申立て段階で異議がないと述べていたとしても、公判段階で異議を述べることはできるということである。
  • (6)アに関連して、この制度が悪用されないよう、被告人又は弁護人が冒頭手続において有罪の陳述をしなかったときは、公訴を棄却して事件をもう一度捜査に戻す必要がある。自認事件と否認事件とでは証拠の組立て方が異なっており、被疑者が自認しているときは、確かな補強証拠がいくつかあれば足りるのに対し、否認事件の場合には所要の裏付け捜査が必要となる。したがって、自認事件として即決裁判手続の申立てがなされたが、公判廷で自認が覆った場合には、否認事件に必要とされる裏付け捜査をせざるを得ず、事件をいったん捜査に戻さないと、捜査が尽くされないまま公判審理が行われることになってしまい適当でない。
  • たたき台の案は、科刑制限を設けることなどにより公判の合理化に資する制度となっているが、その反射効として、自白事件に必要な捜査を終えた段階で起訴される事件が増えることにより、一定程度の捜査の合理化も期待できる。捜査を真に合理化するためには、有罪陳述が取り消された場合には事件をいったん捜査に戻す制度としなければならないが、今回の制度改正でそこまでするのが難しいのであれば、まずはできる範囲で対処することとし、捜査の合理化は将来的な検討課題としてもらいたい。
  • 捜査段階での合理化が必要なことに異論はないが、即決裁判手続を打ち切って捜査に戻すとなると、手続打切りの方法や、身柄拘束をどうするかなど、困難な問題が生じてくる。即決裁判手続の対象は、量刑に幅のない事件と想定されるが、そうした事件では、確実な証拠があったり、被疑者が現行犯逮捕されているなどして、有罪であることが明らかであって、たとえ自認が覆ったとしても、捜査にあまり影響はないのではないか。
  • 対象犯罪については、主として出入国管理及び難民認定法上のオーバーステイや薬物使用が想定されているのだろうが、捜査の合理化の観点からは、万引きや単純な暴行・傷害なども対象にしないと意味がない。そして、こうした事件も対象になるとすると、被疑者が自認するかどうかによって、必要とされる証拠の構成は大きく異なってくるから、自認が覆っても捜査に影響がないとは言えない。
  • 捜査の合理化には、被疑者の拘束期間の短縮も含まれるのか。
  • 勾留の必要性の判断は別問題であり、直ちに結びつく話ではないだろう。
  • 今まで勾留延長して起訴していた事件を、延長せずに起訴できることもあるだろう。
  • 運用の問題ではあるが、検察官が捜査のどの段階で即決裁判手続を申し立てるかということも、被疑者の拘束期間に影響してくるだろう。
  • 新たな制度を作るに当たっては、現行法体系の中でどこまでできるかを視野に入れて考えなければならず、そうした観点からすると、たたき台の案は評価できる。その一方で、犯罪の組織化・複雑化や治安情勢の悪化などを踏まえると、将来的な課題として、新たな捜査手法や有罪答弁制度の導入などによる捜査の合理化を検討する必要があるだろう。
  • 被疑者が自認しているかどうかによって、捜査事項が増えるかどうかだけでなく、捜査の密度も変わってくる。したがって、対象事件が類型的なものだから自認が覆っても捜査事項が増えるわけではなく捜査に影響しないとは言えず、捜査に戻せることが前提とならなければ必要な捜査量が大幅に減ることはない。
  • 事件を当然に捜査に戻す制度ではなく、公訴を取り消した上、再起訴の要件を緩和するという対応も可能かもしれないが、これは将来の検討課題だろう。

  エ 即決裁判手続による裁判(たたき台第5の4の関係)

  • (4)に関し、簡易公判手続において、有罪の陳述が撤回された場合について、同手続によることが不適法であることを理由に決定を取り消すのか、同手続によることが不相当であることを理由に取り消すのか解釈が分かれており、後者の解釈を採る場合には、理論上は、有罪の陳述が撤回された場合でも、裁判所が簡易公判手続によることが不相当ではないと認められれば、決定は取り消さなくともよいことになる。しかし、即決裁判手続の場合については、有罪の陳述が撤回された場合や異議が述べられた場合には、同手続の決定を必ず取り消すものとするのが相当である。
  • 科刑制限を設けることに賛成である。(5)に関しては、即決裁判手続の決定が取り消された場合に、既に取り調べられた書証について、刑訴法第326条の同意があるものとみなすことには異論があり、元に戻して、原則どおり改めて証拠とすることに同意するかどうかの意見を聴いた上、取り調べるのが筋だろう。
  • 科刑制限に賛成である。(5)に関しては、弁護士の立場としては、同意があるものとみなされては手続の使い勝手が悪くなる。
  • 同意見である。
  • 有罪の陳述が撤回されるなどして即決裁判手続の決定が不相当を理由に取り消された場合に、改めて書証の同意、不同意の意見を聴き、その取調べをやり直さなければならないとなると、せっかく簡易な手続を設けた趣旨が没却されるので、たたき台の案のとおりでよい。被告人は、事実を認め、証拠の開示も受け、異議がないということで即決裁判手続による審理を受けていたのであり、通常の公判手続で、当初事実関係を認めて証拠も同意していたところ、公判の途中で否認に転じた場合に、証拠の同意意見を撤回できないのと同様ではないか。
  • 科刑制限は、たたき台のとおりでよい。(5)についても、たたき台の案でよいのではないか。
  • 即決裁判手続の決定が不相当を理由に取り消されるのは、被告人が否認に転じた場合に限られず、実刑相当であるから通常の裁判によるべきという理由で取り消されることもあるだろうが、そうした場合にまで書証に同意があるものとみなされては、弁護側にとって、即決裁判手続によることに同意することのリスクが大きくなり問題である。
  • 通常の公判手続でも、弁護人が執行猶予を予想して、検察官請求証拠に同意したところ、案に反して実刑が科されたからといって、同意意見を撤回することはできないが、そのような見込み違いの場合と、実質的に変わらないのではないか。また、実刑となるか執行猶予となるかを決するような、重要な供述調書が同意擬制されたとしても、その供述人を証人尋問請求すれば、裁判所が採用するはずだから、問題ない。
  • 即決裁判手続による事件は、被告人側が事実関係を認めている事件であるから、通常の公判手続によったときには書証が同意になるような事件だろう。決定が取り消された場合に、取調べ済みの書証であっても、改めて被告人側が同意しないと証拠にならないとなると、現行の簡易公判手続と同じように、使い勝手の悪い手続となる。また、重要な証人であれば、その供述調書が証拠となっていても、その証人尋問が制限されるわけではないと考えられるので、たたき台のとおり、取調べ済みの書証については同意があるものとみなしてよいのではないか。
  • 100パーセント実刑はないという前提で即決裁判を選択するのだから、通常の裁判における見込み違いと同列に論じることはできない。また、証人申請が採用される保障もないのだから、当事者にとって予測可能性が低く、使いづらい制度となってしまう。
  • 同意とみなす場合、現在の簡易公判手続との整合性をどう説明するかを考える必要がある。
  • 検察官が執行猶予でよいということで即決裁判手続の申立てをし、弁護人に異議がないという事件で、裁判官が実刑相当と判断することはほとんどないと思われるので、被告人側のリスクは微々たるものと評価できるのではないか。
  • 当事者と裁判官との立場の違いにより、リスクの評価が異なるということだろう。
  • 現行の簡易公判手続との整合性に関しては、即決裁判手続は、被疑者と弁護人の同意を得た上で手続を開始するなど、被告人の権利保護がより手厚くなっているとの説明が可能ではないか。

  オ 上訴(たたき台第5の5の関係)

  • 弁護権の保障とのバランスを取った上で上訴権を制限することはあり得ると思うが、気になる点が三つある。第一に、より軽い罪を対象とする略式手続と交通即決裁判手続には上訴制限がないのに、より重い罪を科し得る即決裁判手続に上訴制限を設けることはバランスを失しないかということである。第二に、上訴制限を設けることにより、制度の使い勝手が悪くならないかということであり、裁判所が起訴状記載の事実と違う事実認定をしようとする場合には、即決裁判手続不相当として、この手続を使わなくなるおそれがある。上訴制限を設けなくても、上訴される例は少ないと思われる。第三に、「認定された罪となるべき事実に誤りがあることを理由として」控訴できないとすると、ある事実関係の主張が、その事実が罪となるべき事実として判決書に記載されていれば、事実誤認を理由とするものとして許されなくなり、記載されていなければ、量刑不当の前提の事実主張として許されることになるのではないかということや、控訴人側が、事実誤認として主張するか、量刑不当として主張するかによって、控訴の可否の結論が変わってくるのではないかということが懸念される。
  • 現行の刑事司法の問題点は、両当事者が最悪の場合を想定して過剰捜査と過剰防御を行い、その結果として公判が長期化していることであり、これを改めるのが即決裁判手続の眼目である。上訴制限がないと、検察官は控訴されることを前提に捜査せざるを得ないから、過剰捜査を防ぐために上訴制限は絶対必要である。また、略式手続との比較に関しては、略式手続は実質的に書類裁判であるのに対し、即決裁判手続では被告人の防御権が手厚く保護されており、上訴制限を設けても不当ではない。なお、実質は事実誤認の主張であるのに、量刑不当の主張として上訴することが許されるとなると、この点が制度の抜け道となってしまうおそれがあるので、規定の書き振りを工夫する必要があるだろう。
  • 略式手続と即決裁判手続とは、被告人側への手続的保護が異なるので、同列に論じる必要はない。裁判官の認定が起訴事実と違ってくる可能性があるとの指摘があったが、新たな証拠調べをせずに共通の証拠に基づいた事実認定をするのに、検察官と裁判官とで、事実認定が大きく異なることがあるのか疑問である。また、たとえ上訴する例が少ないとしても、制度として、事件の蒸し返しを封じておく必要があるだろう。
  • 認定された罪となるべき事実を争わずに、量刑の前提事実を争うというのは矛盾しているのではないか。
  • 同じような事実関係を主張しながら、それが事実認定を争う主張であるか、それとも量刑不当の主張であるかを単純に切り分けにくい場合もあるだろう。現在の控訴審では、重要な情状事実に関して争う場合、事実誤認として扱っている例が多い。
  • 上訴制限をもうけることの合理性が、被告人において、弁護人の援助を受けつつ、証拠開示も受けた上、公訴事実につき有罪である旨の陳述を行い、それを判決に至るまで維持したことに求められるとすれば、重要な情状事実であっても、手続上明示されていないものであれば、その事実関係に関する主張を上訴審で制限することは適当ではない。
  • たたき台のとおりでよい。量刑不当の上訴は認めないといけないだろう。

 続いて、第11回検討会配布資料1「検察審査会制度について」(以下、(4)から(6)において「たたき台」という。)に沿って、検察審査会制度について議論が行われた。
 議論の概要は以下のとおりである。

(4) 検察審査会の議決に対するいわゆる法的拘束力の付与
 たたき台「1 検察審査会の議決に対するいわゆる法的拘束力の付与」に関し、主として、以下のような意見が述べられた。

  ア いわゆる法的拘束力のある議決の要件(たたき台1(2)の関係)

  (ア) 検察官等の意見聴取について(たたき台1(2)ア関係)
  • アは、検察官からの意見聴取を必要的とすれば足り、被疑者から意見を聴かなければならないものとする必要はないので、A案でよい。検察官の不起訴処分を審査するのだから、検察官と被疑者の利害関係は一致しているといえるのであり、検察官から意見を聴けば十分である。
  • イでB案の一段階案を採ることとセットで、アはA案でよい。検察官の不起訴処分を審査するのであり、イで一段階案を採るのであれば、手続の慎重を期すために、検察官から意見を聴く必要があるだろう。
  • 検察官と被疑者の利害関係が一致しているとは言えないから、被疑者の意見聴取も必要的とするB案が相当である。
  • 検察官の不起訴処分を審査するという検察審査会制度の構造に照らせば、検察官の意見聴取は必要的とすべきだが、被疑者の意見聴取を必要的とする理由はなく、A案が相当である。
  • 検察官の不起訴処分の当否を審査するのだから、A案が相当である。被疑者の意見を聴く必要があれば、現在でも聴くことができるが、それを必要的にすることはない。
  • A案が相当である。

  (イ) 検察官に再考の機会を与えることについて(たたき台1(2)イ関係)

  • イは、二段階案が望ましい。検察審査会の議決に法的拘束力が付与されることにより、被疑者が起訴されるという重大な結果を生じさせ得る制度となるが、司法制度改革審議会意見書は、公訴提起への民意の反映だけでなく、被疑者に対する適正手続の確保も要請しており、慎重に手続を行う意味で審査の機会を二回とする構造が妥当である。また、二段階とすれば、検察審査会の議決を受けて検察官に再考の機会が与えられることで、一般国民の社会常識とプロの専門的判断との協働が可能となることからも、二段階案が望ましい。
  • 意見書は、「公訴権の在り方に民意をより直截に反映」と述べており、一段階案が相当である。二段階案を採ると、一段階目の起訴相当議決が、実質的に不起訴不当議決と扱われることになり不当である。一般国民と専門家との協働は、検察官からの意見聴取を必要的とすることや、リーガルアドバイザーの制度を設けることで十分に達成できる。さらに、被害者の立場からしても、検察審査会の起訴相当議決に法的拘束力を求める声は強く、国民にとって分かりやすい制度とするためにも一段階案が妥当である。
  • 現行の刑事訴訟法では、検察官による起訴が本来の姿とされており、本来の形で処理できるものについてはそうするのが望ましい。検察審査会の起訴相当の議決が直ちに法的拘束力を持たなくても、その議決を踏まえて検察官が再捜査した結果、最終的に起訴に至れば、民意が反映されたと言うべきだろう。また、被害者の立場も大事であるが、その一方で、起訴という重大な処分を受ける被疑者の立場も考慮しなくてはならず、手続の慎重さと公平性を考慮すれば、二段階案とするのが望ましい。
  • 公訴権の在り方への民意の反映という制度趣旨からして、一段階案が相当である。二段階案を採ると、検察官が再考して事件を検察審査会に戻した時には、検察審査会の構成が変わっているかもしれず、そうなると、一段階目の審査結果が直接反映したとは言い難くなり相当でない。手続の慎重さに配慮するのであれば、被疑者から意見を聴取することとすればよい。
  • 公訴権行使に民意を反映させる必要がある一方、被疑者の権利保護や真実に沿った起訴が行われることの重要性を考慮すると、慎重な判断が求められるから、それぞれの要請を調和させ得るものとして、二段階案が相当である。
  • 一段階目の起訴相当の議決を受けた検察官の再捜査の結果を踏まえて二段階目の判断をするという仕組みには合理性が認められるから、二段階案が妥当である。検察審査会の構成員が変わったとしても、組織として同一の検察審査会であることに変わりはなく、個々の構成員が誰であるかは考慮の対象とすべきではない。
  • 起訴の慎重を期すことと、公訴権への民意の反映とのバランスの問題であるが、二段階案でよいのではないか。
  • 司法制度改革審議会意見書の趣旨に照らすと、一段階案の方が明快であるが、二段階案であっても、二段階目に再度の審査申立てを要しないA2案であれば採り得る選択と思う。
  • 一段階案が明快で望ましい。二段階案とすると、事件係属が長期化して検察審査会の構成が変わる可能性があり相当でない。手続の慎重さは、検察官からの意見聴取とリーガルアドバイザーの関与により担保できるだろう。検察審査会と検察官の判断が異なるのは当然とも言えるのであり、検察審査会の下した結論に従って、速やかに公訴を提起するのが制度趣旨に合致するのではないか。
  • 仮に二段階とした場合、最初の議決終了後、検察官が公訴の提起の当否を判断するまでの一定期間があまり長くなっては問題である。実務的に、公訴提起の当否の判断にどれくらいの期間がかかるものなのか。
  • 事件によるが、通常は3か月あれば起訴の当否を判断できるだろう。しかし、鑑定を要する事件など、3か月では足りない事件もあり得るので、さらに3か月の限度で期間を延長して、最長6か月以内に結論を出すこととすれば、対処できるのではないか。
  • 期間を延長するときは誰かの許可を得ることになるのか。
  • 検察審査会が許可するかどうかを判断することは難しいので、検察官から検察審査会に通知すれば足りることとすればよいのではないか。

  • A1案を採ると、一段階目の起訴相当の議決には意味がないということになりかねないから、A2案が相当である。
  • A2案として、一段階目の議決後に示談が成立した場合、それでも再度の審査を行わなければならないことにならないか。
  • A1案のように、一段階目の起訴相当の議決を終局処分としつつ、審査申立人から、例えば、示談成立などにより、再度の審査は要しないなどと、別段の意思表示があった場合を除き、検察官が一定期間内に公訴を提起しなかったときは、自動的に、二段階目の審査が開始される制度とすることは可能だろう。
  • 一段階目の検察審査会が終局処分として起訴相当の議決をした後、一定期間内に検察官が公訴を提起しなければ、再度の申立てを要することなく、その事件が、再度、検察審査会で審査されるものとするが、第一段階の審査申立人が、不起訴処分に不服がなくなれば、そのまま二段階目の審査は開始されないとするというような、いわばマイルドなA1案とするのが相当ではないか。
  • 二段階案を採るとしても、審査申立人に再度の申立てを求めるのは制度趣旨に反するから、基本的にはA2案が相当ということになる。

  イ いわゆる法的拘束力のある議決後の訴追及び公訴維持の在り方(たたき台1(3)の関係)

  • 二回にわたり検察官に起訴を促したにもかかわらず検察官が起訴しなかった場合に、検察審査会の議決に基づく起訴及び公訴維持を検察官が行うとするのはおかしいので、指定弁護士が行うとするB案が相当である。被害者の立場から見れば、検察官が公訴を維持した場合に、結果として、仮に無罪判決が下された場合に納得できるかということが問題となるし、検察官としても、被告人が有罪であるとの確信が持てないのに公訴維持をするのは難しく、検察官の在り方に反するので、指定弁護士が起訴及び公訴維持を行うのが妥当である。
  • 検察官は独任官庁ではあるが、実際上、検察庁として不起訴と判断した事件を検察審査会の議決に基づき起訴することになるのだから、外から見たときの適正さの外観を確保するためには、検察官が起訴及び公訴維持をするものとするのは適当でない。また、起訴状の作成や略式請求が困難になるので、法律専門家でない検察審査会が起訴するのも適当でないから、結局、指定弁護士が起訴及び公訴維持を行うB案が相当である。公訴の維持については、付審判請求事件で、指定弁護士による補充捜査に困難を来すことがあるので、検察官が公訴の維持をすべきとの指摘があるが、検察審査会の扱う事件は、付審判請求事件のような対象事件の制限がないし、起訴相当の議決に至るまでに検察官による十分な補充捜査が予定されているから、起訴の段階に至ってなお捜査が不十分という問題は少ないと考えられるので、指定弁護士が公訴維持を行うものとしても問題はない。
  • 起訴相当の議決の要件につき二段階案を採るのであれば、外見の公正らしさの点で検察官による公訴の維持には問題があり、付審判請求事件と同じく、指定弁護士が公訴維持を行うとするB案を支持する。ただし、その場合でも、司法警察員等に対する補充捜査の指揮については、人的つながりが重要であるので、付審判請求事件に関し刑訴法268条が規定しているのと同様に、検察官に嘱託して行うこととすべきである。
  • 現在でも、検察審査会が起訴相当の議決をすれば、検察官は検察審査会の指摘を踏まえて慎重な捜査を行い、適切な処分を行っているが、その上で検察官がなお不起訴と判断した事件について検察官に起訴及び公訴維持をさせるのは、被害者側から疑念を招きかねず、制度として公正さを欠き妥当でない。B案を採り、指定弁護士が公訴提起及びその維持をするものとすべきである。
  • 一段階案を採るとしても、公正らしさの観点から公訴維持は指定弁護士が行うべきである。そのためにも、補充捜査の権限に関しては、検察官は嘱託に応じる義務があることを明記すべきである。ただし、公訴提起手続については、検察審査会が行うこととするA案が望ましい。検察審査会が略式請求の当否・選択を判断することができるものとするのは適当でないだろうが、検察審査会がいったん起訴した後に、選任された指定弁護士が略式請求することができる制度としてもよいだろう。また、リーガルアドバイザーが、付審判決定の場合における決定書のような文書を作成することになるであろうが、検察審査会が起訴の主体となるのが相当である。
  • それでは、実質的にB案と変わらないのではないか。
  • B案を採るのであれば、その条件として、補充捜査の権限を十分に担保する必要がある。さらに、刑事手続に精通している人が指定弁護士となるのが望ましいから、運用として、公的弁護制度において検討されている常勤弁護士を指定弁護士に充てるよう配慮してもらいたい。
  • 常勤弁護士が指定弁護士となる場合、利益相反の問題が生じる可能性もあるだろう。
  • B案のアに関し、議決書謄本の提出先は、議決をした検察審査会の所在地を管轄する地方裁判所に事件の管轄がないことも考えられるから、たたき台の「当該検察審査会の所在地を管轄する地方裁判所」ではなく、その事件の管轄地方裁判所とすべきではないか。また、検察審査会は、捜査機関でも訴追機関でもなく、本来、検察官の不起訴処分を審査する機関なのだから、検察審査会が公訴提起手続まで行うこととするのは行きすぎの感がある。また、現行の付審判請求事件においても、司法警察職員等への捜査指揮を検察官に嘱託して行うものとされている点を除き検察官と同じ権限が付与されており、指定弁護士の補充捜査の権限は十分に担保されている。
  • 検察審査会の議決に基づき起訴される事件は、公訴維持が難しい事件になると予想されるので、検察官が公訴維持をするのが適当である。仮に、指定弁護士が公訴維持に当たるものとする場合でも、確かに、現行の付審判事件では、指定弁護士は、検察官と同様の権限が付与されており、検察審査会制度でその点を改めることにはならないとしても、指定弁護士が必ずしも十分に活動できないという実情があるので、現在運用上のネックになっている記録の閲覧・謄写、関連する資料の収集等に関するルールを何らかの形で定めることはできるのではないか。
  • 手続の「公正らしさ」を強調する意見が有力に主張されているが、法律家に求められるのは「公正らしさ」ではなく「公正性」であり、検察官が公正に職務を遂行するのであれば、「公正らしさ」にこだわる必要はない。また、補充捜査について、指定弁護士が実質的に検察官に依拠せざるを得ないとすれば、結局は「公正らしさ」が問題になるのだから、検察官が担当することとするのが直截であり、適当である。
  • 検察官が補充捜査をするわけではないのではないか。
  • 指定弁護士は、検察官に嘱託した補充捜査の結果が不十分であると考えれば、更に捜査を依頼すればよく、最終的には指定弁護士が捜査が十分か否かを判断できるのだから、検察官を通じて補充捜査を依頼するからといって「公正らしさ」が問題になるということにはならない。
  • B案が相当であり、指定弁護士が公訴提起及びその維持をすべきであるが、指定弁護士による十分な公判活動を担保するためには、補充捜査に当たって検察や警察の協力を得ることのできる権限を明確にする必要がある。
  • 指定弁護士の権限については、現在でも、制度上、検察官と同等の権限を有することとされており、新たに権限を付与する必要はない。また、検察事務官及び司法警察職員への捜査指揮に関しては、人的つながりに配慮して、検察官に嘱託することとなっているが、検察官は、指定弁護士の職務遂行に積極的に協力する方針で臨んでおり、支障があるとは思えない。
  • 検察事務官及び司法警察職員への捜査指揮を検察官に嘱託するとしても、何について捜査するかは指定弁護士が判断するのだから、指定弁護士の主体性が失われるわけではない。また、円滑に捜査を遂行するためには、捜査の方法や時期について十分に打ち合わせる必要があり、この点からも、捜査実務に精通した検察官に嘱託した方が効率的であり、検察官及び司法警察職員への捜査指揮は検察官へ嘱託して行うものとするのが合理的である。
  • 付審判事件における指定弁護士の活動を念頭に置いた議論がなされているが、検察審査会の事件では、特に二段階案を採れば、起訴の時点で必要な捜査は尽くされていると思われ、それ以上の補充捜査が必要となることはまれだろう。制度としては、現行の付審判制度における指定弁護士の権限と同じとすればよいと思われる。

(5) 検察審査会の組織、権限、手続等の在り方
 たたき台「2 検察審査会の組織、権限、手続等の在り方」に関し、主として、以下のような意見が述べられた。

  ア リーガルアドバイザー(仮称)の委嘱(たたき台2(1)の関係)

  • アは、議決の要件につき二段階案のA2案とすることを前提として、二段階目の審査は、最終的に起訴相当の議決をするかどうかの判断をするのだから、リーガルアドバイザーの委嘱を必要的としなければならないが、一段階目は、検察審査会が必要と認めるときに委嘱できるものとすれば足りるだろう。
  • 検察審査会は、必要と認めるときはリーガルアドバイザーを委嘱できるものとし、さらに、法的拘束力のある起訴相当の議決を行うときは委嘱を必要的なものとするB案が妥当である。ただし、必要的委嘱とする場合でも、リーガルアドバイザーが会議の期日の開始から終了まで必ず出席する必要まではないだろう。
  • リーガルアドバイザーが常駐しないとなると、リーガルアドバイザーは、不在の間、必要な助言をできないことになるのではないか。
  • リーガルアドバイザーの委嘱を必要的とする場合には、リーガルアドバイザーが常駐すべきことは当然と思う。法律家の目からどう見ても不起訴とすべき事件を、検察審査会が起訴相当と議決する事例を見聞するにつけ、リーガルアドバイザーが責任を持って関与することの必要性を痛感する。
  • 議決の要件として二段階案を採ることを前提として、被疑者を現実に起訴するかどうかを最終的に判断する二段階目の審査では、リーガルアドバイザーの委嘱を必要的とすべきである。B案は、「起訴相当の議決を行うに当たっては」リーガルアドバイザーを委嘱しなければならないとしているが、この規定ぶりでは、どの段階から委嘱すべきか不明確なので、二段階目の審査では最初から委嘱するものとするのが相当である。
  • 二段階目の審査で不起訴になる場合もあるのだから、リーガルアドバイザーの委嘱は起訴相当の議決を行う場合に必要的とすれば十分であり、B案が妥当である。必要的委嘱とする場合の出席に関しては、実質的な議論には立ち会うことが求められようが、常駐しなければならないとまでは言えないだろう。
  • 起訴相当の議決をするときだけリーガルアドバイザーの関与を必要的とするB案の背景には、そうすることで誤った起訴を防止できるという発想があると思われるが、逆に、本来起訴されるべき事件が、不起訴処分とした検察官の説明に惑わされて不起訴となってしまうこともあり得るのだから、B案には賛成しかねる。
  • C案を支持するが、その趣旨は、検察審査会が、法的問題などについて専門家の意見・助言を求めるときは、常にそれに応えることのできる態勢を整えておくべきということである。最終的には検察審査会の主体的な判断が尊重されるべきであって、起訴の当否についてリーガルアドバイザーの判断が優越するようなことは許されない。
  • B案が適当である。リーガルアドバイザーを必要的に委嘱するときに会議の場に常駐すべきかどうかについては、その職務を実質的に行うのに必要な範囲で求めればよいだろう。
  • 起訴相当の議決に特別の効力を認めることになるのだから、その議決を行うに当たってはリーガルアドバイザーを委嘱すべきであり、B案が相当である。
  • 法的拘束力のある起訴相当の議決を行うに当たっては、リーガルアドバイザーは不可欠であるから、B案でよい。
  • B案でよい。

  • イに関して、リーガルアドバイザーには、見落とされている事実認定上及び法律上の問題点を検察審査会に提示する役割も期待されるから、場合によっては、検察審査員からの求めがなくても必要な助言ができるようにすべきだろう。
  • 検察審査員から求めがあれば、リーガルアドバイザーが意見を述べることもあり得るだろう。
  • リーガルアドバイザーは、不起訴処分の当否の判断など、検察審査会だけで決定すべき事項については、求められても意見を述べるべきではないが、法律家として、事実認定上及び法律上の問題の整理、証拠の整理など、基本的な情報を整理し、説明するという役割を担うべきである。見落とされている問題点の指摘についても許容してよいのではないか。
  • リーガルアドバイザーの助言の妥当性・相当性をいかに担保するかが問題となる。結論にかかわる意見は言うべきでないだろう。
  • リーガルアドバイザーが、最終的な判断権者である検察審査会の判断を不当に誘導するようなことがあってはならないが、最終的に判断をするのが検察審査会であることは担保されており、リーガルアドバイザーの意見は参考意見にすぎないから、例えば、検察審査会から過失の成否についての意見を求められた場合に、リーガルアドバイザーが意見を述べることが許されないということにはならないだろう。
  • リーガルアドバイザーが、検察審査会に最終的な結論を押し付けることは許されないが、検察審査会長の指揮監督の下、法律専門家の立場から、法的な見地や事実認定上の問題点等を指摘してもよいだろう。
  • 事件の問題点や考え方の筋道を指摘するのはリーガルアドバイザーの職務の範囲内のものとして認められるが、結論を示すことは助言の範囲を超えるので許されない。個々の証拠の評価についても、本来検察審査員が行うべきだろう。過失の成否の判断は、結論に直結することもあり、意見を述べるのは行きすぎではないか。
  • 過失の成否につき、問題点を整理・解説することと、結論を述べることとの線引きをすることが難しいこともあるだろう。
  • 例えば、道路交通法違反の事実があるときに、それが直ちに過失と評価されないということは助言すべきだろうが、結論はこうあるべきということまで示すのは行きすぎであり、その中間で線を引くしかないのではないか。
  • 例えば、酒に酔って車を運転して人をひき殺したという事実を、危険運転致死罪と評価するのか、それとも道路交通法違反(酒酔い運転)プラス業務上過失致死罪と評価するのかの判断は、一般の人には非常に難しいことであり、そういう点について必要な法律的助言ができないとなると、本来起訴されるべきでない人が起訴されることになり不当である。

  イ 検察審査員の義務・解任(たたき台2(2)の関係)

  • 本来公開されないはずの捜査書類を目にして、他人のプライバシー等に触れることは、裁判員と変わらないのだから、裁判員と同様の義務及び解任の規定を設けるべきである。
  • 検察審査会の起訴相当の議決に法的拘束力を付与することに伴い、審査の公正に対する国民の信頼を確保する要請が強くなることから、そのために必要な義務を検察審査員に課すとともに、義務違反者を検察審査会の議決で解任する制度を設ける必要がある。

  ウ 罰則(たたき台2(3)の関係)

  • 検察審査会の議決に基づき公訴が提起されるという非常に強力な権限を与えるわけであるから、それに見合うよう、裁判員制度と同様の罰則を設けるのはやむを得ない。
  • リーガルアドバイザーの任命に当たり、信頼できる人を選任できる制度となるのであれば、リーガルアドバイザーに対する罰則規定をあえて設ける必要はないだろう。
  • リーガルアドバイザーであれ、検察審査員であれ、補充員であれ、職務上知り得た秘密を守るべきことに変わりはなく、いずれも罰則規定の対象とすべきである。現行の検察審査会法にも罰則規定はあるが、裁判員制度における検討も踏まえ、罰則を整理すべきである。
  • 罰則の在り方については、裁判員制度に関する議論や、現行法の規定を踏まえて見直すこととし、必要最小限度のものとなるように整理してもらいたい。
  • 罰則を定めるとしても、必要最小限にしてもらいたい。特に、現行の検察審査会法44条2項の、新聞・出版物の発行人等に対する罰則については見直す必要があるだろう。
  • 仮に、議決の要件を二段階案とすると、一段階目の検察審査員の役割が相対的に小さくなってしまうのに、罰則だけが重くなることのないよう配慮してもらいたい。
  • 検察審査会の議決に基づき公訴が提起されるようになると、検察審査員が職務上知り得た秘密の要保護性が一層高まるから、その罰則を見直す必要があるし、不当な圧力から検察審査員を保護すべき必要性も高くなるから、威迫罪等の整備も必要である。そのほか、現行の罰則の罰金額についても、現在の社会情勢に応じて、適正な額に引き上げる必要があろう。

  エ 検察審査員の欠格事由等の見直し(たたき台2(4)の関係)

  • 欠格事由等の見直しは、なるべく多くの国民が参加できるようにするという観点から進めてもらいたい。
  • 立法時はともかく、現在の目で見て不合理と思われる規定は見直すべきである。また、裁判員制度における欠格事由等と平仄を合わせる必要もあるだろう。
  • 検察審査会制度と裁判員制度の性質の違いによる相違はあり得るだろう。

  オ 付審判請求手続との調整(たたき台2(5)の関係)

  • アは、検察審査会に対する審査申立期間を特に定めないA案が相当である。検察審査会の起訴相当の議決に法的拘束力を付与するからといって、付審判事件と同様に申立期間を設ける必然性はないし、現在申立期間が定められていないのにこれを新たに設けるのは、犯罪被害者など申立権者にとって障害となるので、立法政策としても妥当でない。また、検察審査会に、申立期間を徒過したかどうかの判断を求めることになるのも望ましくない。
  • 同意見である。現在も審査申立期間は定められていないが、被疑者の地位が不安定で困るという事態にはなっておらず、新たに規定する必要はない。
  • 検察審査会の起訴相当の議決に新たに法的拘束力を付与することになるのだから、今までのように被疑者の地位を長期間不安定のままにするのは酷であり、申立期間を定めるB案が妥当である。現在では、関係者に対する起訴の通知が行われているのだから、検察審査会が申立期間を徒過したかどうかの判断を行うことは可能であるし、申立期間を設けたからといって手続の利用が困難になるとも思えない。
  • 検察審査会の起訴相当の議決に拘束力を認める以上は、被疑者に対する配慮も必要であり、申立期間を設けるB案が相当である。
  • 審査申立期間を制限するとして、その期間はどれくらいとするのか。付審判事件における申立期間は七日間となっているが。
  • 被害者の立場としては、いろいろ考えることもあるだろうから、最低でも1か月くらいは必要だろう。
  • 申立期間は特に定めないA案でよい。不起訴処分の通知が広く行われているとしても、申立権者の範囲はもっと広いのだから、申立期間を設けてもよい理由とはならない。
  • A案でよい。検察審査会は、現在の司法に対する問題点を指摘するという機能も果たしており、そうした点を考慮すると、申立期間を設けるのは相当でない。
  • いったん検察官が不起訴処分としたのに、その後平穏に生活できることにはならず、いつまでも、私人の意向で捜査が開始されて、場合によっては起訴されるかもしれないというのは、おかしいのではないか。公訴時効の制度趣旨からしても問題があるのではないか。
  • 現在でも、いったん不起訴になった者が、その後相当時間が経過してから起訴されて有罪になることもあるのだから、申立期間を定める必要性はないだろう。
  • 起訴相当の議決に拘束力が付与されることや、被疑者の地位の安定性を考慮すると、B案が相当である。
  • B案の論拠は十分理解できるが、一定の親告罪につき告訴期間が撤廃されたこととの整合性を考えると、A案とするのもやむを得ないだろう。

  • イについては、特別の調整規定を設けないA案が相当であり、個別具体的な場合の対処は解釈にゆだねればよいのではないか。
  • 法律で規定するか運用で対応するかは別として、二重起訴を回避するための調整は必要だろう。また、付審判請求の棄却決定が最高裁まで争われて確定した場合に、同一事件について検察審査会が拘束力のある起訴相当の議決を行えるとすることは、理屈上は可能としても、被告人の立場を考えると違和感がある。そうして検察審査会の議決に基づき起訴された結果、無罪判決が下された場合には、検察審査会の判断について国家賠償の責任を問われることは避けられないだろう。こうした事態を回避するため、難しいとは思うが、付審判請求棄却決定について、破棄判決の拘束力と類似した効力を持たせることはできないだろうか。
  • 付審判請求の棄却には、嫌疑なしによるものもあれば、職務犯罪に当たらないことによるものもあり、一律に遮断効を付与するのは難しいのではないか。
  • 付審判請求棄却の決定にはいろいろな理由があり得るし、民意も反映されていない。また、検察審査会の審査に当たり、付審判請求が棄却された事情を判断材料として提供することもできるのだから、調整規定を設けないA案が妥当である。
  • 検察審査会の行為が国家賠償法の対象となるのか検討が必要でではないか。
  • 我が国の国家賠償法の枠組みによれば、検察審査会が免責されることにはならないだろう。
  • 付審判請求棄却決定に対しては、現在通常抗告が許されており、時効完成までは不安定な状態が継続することになるから、抗告申立期間を法定することを検討すべきではないか。


(以上)