第4回配布資料一覧

意見1

2002年2月19日
於 法曹養成検討会

意見表明 レジュメ




I 法科大学院について

1、教育科目、内容

(1)司法試験の必須科目である公法系、民事系、刑事系のそれぞれの単位数と同程度の単位数を必修選択科目に振り向ける。
 必修選択科目は、各法科大学院が、司法試験の必修選択科目の中から1系統以上を選択して教授体制を整え、それによってその法科大学院の特色を出し、特定の系統に特化したヴァラエティーに富んだ法科大学院にできるようにする。
 選択科目は、倒産法(執行法を含む)、知的財産法(特許、実用新案、意匠、著作権、不正競争防止法、理科系の教養課程修了程度の一般的技術知識の試験を含む)、独占禁止法、消費者保護法、金融法、労働法、環境・保安法、社会福祉法、税法(国際租税法を含む)などの法律科目のほか、社会事象を横断的にとらえた契約実務(英文契約実務を含む)、国際取引(国際的紛争処理法、国際家族法を含む)、企業法務、M&Aなどの科目が考えられる。

(2)授業(2年制の1年次、3年制の2年次以降)は、一方通行の講義でなく、学生の予備知識、課題図書の事前勉強を前提として、学生の主体的参加を要求するグループ討議、リーガルサーチ、小論文、法的文書の作成演習、模擬裁判などを主体とし、平常の学習態度、成果を詳細に記録しておくものとする。

(3)知識習得型でなく論理的思考能力養成型の、課題解決型でなく問題点発見型の能力養成を目指す。

(4)最終年次においてはエクスターンシップ、サマークラーク(法律事務所、企業法務部などでのアルバイト兼実習)、法律相談などを取り入れる。

2、第三者評価(適格認定)

(1)認定機関:国の委託を受けた特定の団体(例えば大学評価・学位授与機構を改組したもの)に評価の実務を委託し、その答申に基づいておこなう。認定機関は多数の法科大学院を継続的かつ詳細に調査し、判定できるだけの人的、財政的基盤と権威を必要とする。

(2)評価は施設、教員などのその法科大学院全体としての外形的適合性だけでなく、修了者全員について試験の答案、平常の学習状況をあらわすレポート、討議での発言状況、小論文、平常の小試験の結果などの全資料の提示を受け、これを少なくとも無作為抽出で(修了認定に疑問のある場合は全数)チェックし、法科大学院のつけた成績、修了認定の信頼性を確認する。第三者評価の結果は定期的に、項目別に点数をつけて公表し、法科大学院のレヴェル、序列を世間一般が判断できるようにすることによって、法科大学院間の競争原理が働くようにする。

3、入学者の選抜

(1)入学者の一定割合を法学部以外の他学部出身者、他大学出身者、社会人から入学させることは望ましいことではあるが、制度発足の当初からあらかじめ制度として枠を設けることは実務的に難しい。指導基準として、第三者評価の1要素として位置付けるにとどめるべきでないか。

(2)全国の法科大学院を横断的に共通の適正試験を実施することは切に望ましいが、当初から実施することは実務的には難しいのではないか。将来実施する可能性を規定しておくことが適当であろう。

4、定員

(1)学期の進行とともに学習についていけない者、意欲を喪失する者、適性の無い者が相当数でてくることが当然予想され、これらの者は早期に転進をはかることが本人のためにも望ましいと考えられるから、学生の定員は、1年次より2年次、2年次より3年次と台形状に逐次減少するのが自然である。

(2)学内浪人、留年者を極力減らすために、在学者総数は厳格に定員以内であるべきで、留年者があるとそれだけ新入生を採用できない制度にすべきである。

5、実務家教員


 実務家教員の確保のためには、各地の弁護士会、裁判所、検察庁が、積極的支援をおこない、現職の弁護士、裁判官、検察官をパートタイムで実務家教員として派遣する体制を整える必要がある。

6、経済的支援制度

(1)大きな司法という時代的要請に応えて司法制度の抜本的改革を国家的課題として推進する以上、財政的にも従来の延長線上のものでない、大規模な社会的資源投入が実現されねばならない。

(2)法科大学院は、学生数を少数に制限するなかで密度の濃い高度の教育を求めるものであるから、大学の経営的には成り立ちにくいものである。従って第三者評価機関の審査に適合する法科大学院には思い切った補助金の支給が必要である。

(3)法科大学院の学生にとっては、大学卒業後の課程であり、かつ授業についていくためにはアルバイトに精を出す暇は無いし、経済的負担は深刻である。従って学資と生活費に充てるための相当高額の奨学金を貸与、支給する体制を充実することが新制度に魂を入れるための最重要事項である。法科大学院の学生は法曹になってからは経済的にかなり恵まれるものと思われるから、厳格に返済を求める有利子の奨学金で良い。かつ、学生の勉学意欲を刺激し、法曹となるにふさわしい能力を有する者を貸与対象とする上からも、毎学期の履修単位の状況、成績によって毎学期貸与の可否を審査する制度が望ましい。また国家資金によって十分な金額を確保することが困難であるならば、民間の金融機関と連携し、奨学ローンの制度を新設、充実させ、法科大学院が学生の要請に応じて金融機関に必要な情報を継続的に提供することによって奨学ローンをあっ旋することも考えられる。


II 新司法試験について

1、試験方法

(1)短答式試験は、法律知識の程度を判断するものとし、その要否は新制度実施後数年の間に判断するものとして、実施の可否についての自由度を残しておく。

(2)口述式試験は、具体的法律問題にたいして臨機応変、即時に自己の見解をまとめ、口頭で表現し、説得する能力の程度を判断するものとし、その要否は新制度実施後数年の間に判断するものとし、実施の可否についての自由度を残しておく。実施する場合は、時間、手間の節約のためにも、必ずしも科目毎である必要は無く、1受験者にたいして公・民・刑の試験官が共同で1回の試験をおこなうことも考えられる。(それでも法曹としての人格的、能力的適格性を欠く者を排除する効果は期待できる。)

2、試験の実施時期、受験資格

 受験生の完成された状態での能力を判定するためにも、また法科大学院において不合格者の留年が発生することを防止するためにも、法科大学院卒業を受験資格とし、毎年夏ころに実施する。

3、受験回数の制限


 長期にわたる司法試験浪人を防止し、本人に早期に転進を促すために、法科大学院卒業後3年以内または3回以内とする。

4、予備的な試験

(1)プロセスとしての法科大学院を新制度の根幹とする以上、医師の試験において医学部における学習を条件とするように、1回限りの試験だけで判断する予備的な試験は設けるにしてもあくまでも予備的な位置付けであるべきである。(優秀な学生が法科大学院をバイパスして1発で司法試験に向かうことは必ずしも望ましくない。)

(2)例えば社会人として法律的な職種に長年従事し、法科大学院卒業と同程度の多面的な法的知識経験を積んだ者を対象とするような制度にすべきであり、法律知識を問う短答式試験に加えて、試験場において自分の職務経験に基づいたレポート、論文を作成し、それについての面接試験をおこなうなどバイパス組みを排除する工夫が必要であろう。

5、論文式試験の科目、内容

(1)公法、民事法、刑事法の3系統を必須科目とし、それに加えて法科大学院における必修選択科目(系統)の中から1科目(系統)を選択して受験することを義務付ける。
 (司法試験の科目にはいっていないと学生が熱心に勉強しようとしないことは経験則上の事実である。選択科目を必須とすることは、法曹たろうとするものが基本法だけに偏ることを防止し、多様な法曹を作り出すことにも資するし、法科大学院が特定の選択科目に注力することを通じて、個性をもった多様な存在として発展するためにも有用である。)

(2)試験問題は、抽象的な論述問題を極力避け、相当枚数にわたる事実を与えて、それに関する両当事者の立場からの主張の整理、論点となる法律問題に関する学説判例を下敷きとした法的判断、出題に表れた証拠の評価、補強を要する証拠、事案にたいする結論、簡単な実務的書面の作成などを求める問題とし、予備校的な論点の丸暗記では通用しない、思考力、問題点の抽出能力を問う試験とする。

6、法科大学院の成績と司法試験との関連

 法科大学院の学生が司法試験の準備に熱中し、平常の法科大学院での勉学をないがしろにしないように、法科大学院での成績を第三者機関の評価による法科大学院の格付けと組み合わせて、何等かの方法で司法試験において考慮することは出来ないか。

7、司法研修所における修習

 司法試験合格者を対象とする司法研修所における修習としては、従来の白表紙テキストによる要件事実教育を中心とした修習は、法科大学院の教育と重複するので、これを改変し、裁判所、検察庁、弁護士会における実務実習を主体とし、短期間の集合教育によるオリエンテーションを加えたものとして、修習期間は1年程度が適当である。その後、裁判官、検察官、弁護士志望者にたいして、裁判所、検察庁、弁護士会がそれぞれ導入教育を施すことが望ましい。

以 上