最高裁判所からの説明の後、次のような質疑応答、意見交換がなされた。
○ 新しい集合修習の具体的内容については、どのような検討状況となっているのか。
● これまで集合修習が果たしてきた意義は大きく、新しい集合修習についても、実務修習での個別的な体験を補完、調整し、体系的で汎用性のある能力を修得させる内容となるよう具体的な検討を進めたい。集合修習の容量については、1500人体制の施設を班別構成で有効活用することなどが考えられ、教育方法についても、従来の科目をさらに融合するなどの工夫が考えられる。
○ 最高裁判所の考えは、現行の前期修習の教育内容は、法科大学院でも実施できるということを前提としているのか。
● 法科大学院において、相当程度の実務基礎教育がなされることを期待したい。法科大学院と司法修習との役割分担については、更に検討したい。
○ 司法修習が実務修習から開始されるとすれば、現行の前期修習で行われている法律関係文書の作成に関する教育についても法科大学院で行うことになるのか。いきなり実務修習をさせても、起案ができない可能性があるのではないか。
● 新しい司法修習では、法曹に共通して必要とされる事実の分析能力や法律構成の能力の養成を目指すこととするのであれば、実務修習において、これまでのように判決書等を起案させる必要まではないとも思われるが、司法修習全体でどのような教育を行うかに関わる問題である。
○ 法曹の多様性を前提とすると、司法修習で教育している起案能力については、現在のように技術的なものは不要ということになるのか。その場合には、法廷活動を中心とする狭義の法曹の養成という点からは、質的水準が低下するのではないか。
● 応用力の基礎となるコアの部分を教育したいと考えており、それによって直ちに質的水準が低下することにはならないと考えている。また、技術的な部分は、実務に就いてから修得させることもできると考えられる。
○ 最高裁判所の考えは、起訴状や準備書面のような特別な類型の書面の技術的な書き方まで修得させる必要はなく、法律家として論理的な文章を書く能力を修得させれば足り、技術的な内容は実務修習やOJTにゆだねてもよいということではないか。
○ 混沌とした事実関係を法的に分析する能力や事実認定の基本的な能力についても、法科大学院で修得することを期待するのか。この点に関する法科大学院と司法修習との役割分担についてどのように考えているのか。
● 御指摘の2つの能力の教育は、新しい司法修習においても、エッセンスとして維持する必要があると考えている。法科大学院で総論的な考え方を教育することはできるが、司法修習において、具体的な事件に取り組むことを通じて初めて実践的能力が身につくものと考える。
○ 司法修習が分野別の実務修習から始まることには不安もあると思われるが、ソフトランディングのような柔軟な措置を考えておられるのではないか。法科大学院では、当初は、実務を意識した法理論教育を充実させることがコアの教育内容として期待されており、十分な実務基礎教育を実施できるようになるには、人的態勢の問題もあり、時間がかかるので、法科大学院教育が完成するまでは、中間的な措置が必要になるのではないか。
● 諸外国には、ロー・スクールを卒業後、すぐに実務に入る国もある。法科大学院における実務教育については、教材その他の司法研修所のノウハウの提供や、実務家教員の派遣等にも関連する問題であると考えている。最高裁判所の説明は、法科大学院が成熟した場合の司法修習の在るべき姿として、検討しているところを紹介したものである。
○ 新しい実務修習の総合的なプログラムの具体的なイメージが分かりにくいが、弁護士事務所以外をベースに行う場合もあるのか。外国での修習も考えられるのか。
● 総合的なプログラムの具体的内容は、今後更に検討を進めるが、分野別実務修習を補完するものや、司法修習生が主体的に修習先を開拓するものなど、複数のメニューを検討したい。外国での修習については、費用や期間等の問題があると思われる。
○ 新しい集合修習は、現在と同様に全国1か所に司法修習生を集めて実施するのか。例えば、高裁管内ごとに分散して実施することも考えられるのではないか。
● 集合修習を複数箇所で実施する場合には、人的態勢等を新たに整備する必要があり、現在の人的・物的態勢を有効活用するという観点から、現時点では、1か所で実施するのが適当ではないかと考えている。
○ 司法研修所の稼働期間を増やすことも検討しているのか。
● 集合修習を班別で実施することにより、施設を効率的に使用することも検討している。
○ 審議会意見では、年間の養成数は三千人が上限ではないとされているが、司法修習生が三千人を超えた場合には、どのように対応するのか。
● 人的・物的態勢の整備と修習の体制・方法の工夫との両面での対応が考えられる。
○ 現行の司法修習では、前期修習、分野別の各実務修習、後期修習がいずれも3か月とされているが、それは妥当な期間なのか。修習期間が2年から1年6か月に短縮された理由は何か。
● 法曹養成制度等改革協議会等で2年間の修習期間は長いのではないかとの議論がなされ、修習の効果等も考慮して修習期間が1年6か月に短縮することとされ、前期修習等の期間が各3か月とされたものである。
○ そのほか、分野別の実務修習期間が各4か月の場合は、実務修習中に2期の司法修習生が重複する期間があり、司法修習生の増員に対応するため、これを各3か月にする必要もあった。
○ 実務修習の指導に当たっている実務家の間では、現行の各3か月でも短く、期間が余りに短くなると実務修習が見学で終わってしまうのではないかという意見もある。
○ 特に検察修習では、身柄事件の取調べ修習を行うこととしており、身柄が拘束されている20日間の捜査期間中は司法修習生が関与する必要がある上、常に適当な事件が存在するわけでもないことを考えると、相応の修習期間が必要になる。
○ 給費制については、修習専念義務を課す以上は、その経済的な担保を与える必要があるという意見と、昨今の厳しい財政事情も考慮する必要があるという意見があるが、最高裁判所では、給費制について何か考えはあるのか。
● 給費制の在り方については、本検討会で御議論いただきたい。なお、修習専念義務については、高度の教育を提供することについて司法修習生に授業料を負担させないという点を考慮すれば、やはり修習専念義務が発生するものと考えている。
○ 大学では授業料を取っているが、学生に学業専念義務がある。修習専念義務は、教育効果を高めるために何をすべきかという問題であり、給費制とは関係がないのではないか。
○ 司法修習生の身分の問題も、検討の対象となるのか。
● 例えば、実務修習と集合修習との場所的移動の関係でも、検討する必要があるのではないかという考えもある。
○ 当初から法科大学院での実務教育に強く期待することは、法科大学院を設立する際の支障になりかねないので、直ちに前期修習をなくすのではなく、教材・教員面での協力制度を設けたり、移行期間を設けることなどは考えられないか。
● 具体的には、今後さらに検討してまいりたい。大学に対しても、厳格な成績評価等、教育に対する積極的な取組みを期待したい。
○ 法科大学院がスタートするまでに、最高裁判所あるいは司法研修所と大学とで、協議する必要があるのではないか。
○ 法科大学院の設置を検討している大学が、法科大学院協会の設立準備会を作り、教員の研修や教材開発等についての検討を進めることとしており、これに協力していただきたい。また、厳格な成績評価については、大学関係者としても強く意識する必要がある。
● 最高裁判所、司法研修所としても、できる限り協力してまいりたい。
○ 法曹の多様性の観点から、特定の専門分野に強い法科大学院が作られ、当該分野の実務教育を重視して行うことも考えられるが、そのような場合には、各法科大学院での実務教育が共通のものとはならないのではないか。
○ 最高裁判所の考え方は、法廷活動を行う法曹にもこれを行わない法曹にも共通して求められるコアの部分を集中的に教育し、それ以上は、自己責任で必要な能力を修得していくというものであろう。新しい司法修習で、多様な分野に必要な能力をすべて教育しなければならないとする必要まではないのではないか。