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今後の社会保障の在り方について


T はじめに
 昨年の我が国の人口は、初めて死亡数が出生数を上回り、総人口では約1万9,000人の減少となると見込まれるなど、人口は減少局面に入りつつある。急速な少子高齢化の進行により、年金、医療、介護等の社会保障制度は、給付の面でも負担の面でも国民生活にとって大きなウエイトを占めてきており、家計や企業の経済活動に与える影響も大きくなっている。このため社会保障制度に関する国民の関心は高まり、また制度の持続可能性の確保や世代間・世代内の不公平の是正が重要となっている。団塊世代が後期高齢者となる2025年(平成37年)も念頭に、今後の社会保障の在り方を考えるに当たっては、人口の高齢化や支え手の減少に対応した持続可能なものとすることが重要であり、給付と負担の在り方に加え、就業対策による担い手の拡大、関連する施策なども視野に入れて、一体的な見直しに取り組まなければならない。

 本懇談会は、2004年(平成16年)の年金改正法の附則に社会保障制度全般についての一体的な見直しに係る検討規定が明記されたことを踏まえ、「社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくため、社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付の在り方を含め、一体的な見直しを行う必要がある」との問題意識の下、一昨年7月に議論を開始し、今日まで計18回の審議を行った。また、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」(2004年(平成16年)6月閣議決定)においても、社会保障制度全般について、一体的な見直しを開始し、重点強化期間内を目途に結論を得るとされている。このことから、今般、これまでの改革の成果を踏まえた社会保障の給付と負担の将来見通しを示すとともに、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」の決定に対応するものとして、今後の社会保障の在り方についてこれまでの議論をとりまとめるものである。

U これまでの社会保障制度改革の状況
1 年金改革
 年金制度については、長期的な給付と負担の均衡を図り、将来にわたって制度の持続可能性を確保していくため、2004年(平成16年)の改革において、以下を主な内容とする改革が実施された。
1) 将来の保険料の固定:
仮に、この改革を行わなければ厚生年金保険料率で25.9%までの引上げが必要であったが、この改革により、保険料の水準を2017年度(平成29年度)まで段階的に18.3%まで引き上げた後は、将来にわたり固定することとした。また、国民年金の保険料についても、段階的に引き上げ、2017年度(平成29年度)以降、2004年度(平成16年度)価格で16,900円で固定することとした。
2) マクロ経済スライドの導入:
給付について、公的年金の被保険者数の減少や平均余命の延びに応じ、自動的に給付の伸びを抑制する「マクロ経済スライド」を導入した。(なお、「マクロ経済スライド」の下では、賃金・物価の伸びがマイナスである場合を除き名目年金額は維持される。また、標準的な年金受給世帯で所得代替率50%を上回る給付水準を確保することとし、50%を下回ることが見込まれる場合には、給付と負担の在り方について再検討することとしている。)
3) 基礎年金国庫負担割合の引上げ:
基礎年金国庫負担割合について、所要の安定的な財源を確保する税制の抜本的な改革を行った上で、2009年度(平成21年度)までに2分の1へ引き上げることとした(2006年度(平成18年度)予算では、1/3+25/1000(=約35.8%)まで引き上げられている。)。
4) 積立金の活用:
次世代や次々世代の給付に充てるため、積立金を活用することとした。
2 介護保険改革
 介護保険制度については、2000年度(平成12年度)からの施行状況を踏まえ、制度の持続可能性を確保するとともに、新たな課題に対応するため、以下を主な内容とする改革が実施された。
1) 介護予防への重点的な取組:
軽度者のサービス利用が急増していることを踏まえ、予防給付の内容の見直し、介護予防事業の創設など、介護予防を重視したシステムへの転換を図る。
2) 新たなサービス体系の創設:
認知症高齢者や高齢者世帯が今後急増すると見込まれることに対応し、地域密着型サービスの創設、地域包括支援センターの創設など、新たなサービス体系を創設する。
3) 施設給付の見直し:
施設と在宅の利用者負担の均衡を図るため、施設給付の範囲を見直し、食費・居住費を保険給付の対象外とする。
また、2006年(平成18年)には、マイナス2.4%(2005年(平成17年)10月分を含む。)の介護報酬改定を実施した。
3 医療制度改革
 医療制度については、現役世代と高齢世代の公平化を図るとともに、医療費の伸びを経済財政と均衡の取れたものとし、持続可能な制度としていくため、現在、以下を主な内容とする法案が国会に提出されている。
1) 安心・信頼の医療の確保と予防の重視:
質の高い医療サービスが適切に提供される医療提供体制を確立するとともに、疾病の予防を重視した保健医療体系に転換する。
2) 医療費適正化の総合的な推進:
医療費の伸びが過大とならないよう、糖尿病等の生活習慣病の患者・予備群の減少、平均在院日数の短縮を図るなどの計画的な医療費の適正化対策を推進する。
 現役並みの所得がある高齢者の患者負担の3割への引上げ、療養病床に入院する高齢者の食費・居住費の負担の見直し等の公的保険給付の内容・範囲の見直しを行い、効率化を図る。
3) 新たな医療保険制度体系の実現:
高齢世代と現役世代の負担を明確化し、公平で分かりやすい制度とするため、新たな高齢者医療制度を創設するとともに、保険財政の基盤の安定を図るために都道府県単位を軸とする保険者の再編・統合を推進する。
4) 療養病床の再編成:
療養病床は医療の必要度の高い患者を受け入れるものに限定して医療保険で対応し、医療の必要度の低い高齢者は、老健施設又は在宅、居住系サービスで対応するよう、所要の措置を講じ、効率化を図る。
また、2006年(平成18年)4月には、マイナス3.16%の診療報酬改定を実施した。
4 制度間の重複等の排除
 以上のような改革の結果、制度間の調整も図られている。具体的には、前述の介護保険改革における食費・居住費の範囲の見直し並びに医療制度改革法案における食費・居住費負担の見直し及び療養病床の再編成により、従来からの懸案であった年金制度との給付の重複やいわゆる社会的入院の問題について、対応を図ることとしている。
V 改革後の姿を反映した給付と負担の将来見通し
1 経済前提等
 今後の社会保障の在り方を考える上で、これまでに進められてきた改革の姿を反映した「社会保障の給付と負担の将来見通し」を示した。
 今回の試算に当たっては、これまでの改革の効果が目に見える形となるよう、改革が行われなかった場合の給付と負担の見通しも試算し、これらを比較できる形とした。
 また、経済前提については、経済成長について基本的なケースを設定し、参考として低目のケースも試算した。また、将来推計人口については中位推計を用いた。
2 将来見通しの概要
 将来見通しに関する試算の結果は、およそ以下のとおりであった(数値は基本的なケースの場合)。
給付については、
 年金制度改革は、マクロ経済スライドの導入等により、給付の伸びを抑制。
 介護保険制度改革は、介護予防の推進、利用者負担の見直し等により、2015年度(平成27年度)の給付を改革前より約17%抑制される見通し。
 医療制度改革案は、総合的な医療費適正化の推進、診療報酬改定等により、2015年度(平成27年度)の給付を改革前より約8%抑制される見通し。
また、負担については、経済との関係を分かりやすく表すために、対国民所得%で示すと、
 2006年度(平成18年度)の負担は対国民所得で22.0%。改革前より0.4ポイントの負担軽減。
 2015年度(平成27年度)の負担は対国民所得で24.8%。改革前より1.5ポイントの負担軽減。
 このうち、租税財源である公費負担の対国民所得は、2006年度(平成18年度)の7.7%(改革前7.8%)が、2015年度(平成27年度)に8.9%(同9.7%)に上昇。その額は2006年度(平成18年度)で28.8兆円(改革前29.5兆円)が、2015年度(平成27年度)には同年価格で41兆円(改革前45兆円)に増加。
 なお、社会保障に関しては、給付費のほか、施設整備のための補助金等、国や地方公共団体等の事務処理や行政サービスに係る人件費等の経費及び関連する地方単独事業の経費があるが、これらは将来見通しには含まれていない。
 これに関連し、社会保障は上記経費が給付費と一体で達成されるもので、今後の議論の際はこれらも含めて示すべきとの意見、将来見通しは国民の受益の範囲を念頭に、給付費の範囲で議論すべきとの意見、上記経費については「歳出・歳入一体改革中間とりまとめ」を踏まえ慎重に議論すべきとの意見があった。
W 今後の社会保障制度の在り方
1 社会保障についての基本的考え方
 我が国の福祉社会は、自助、共助、公助の適切な組み合わせによって形づくられるべきものであり、その中で社会保障は、国民の「安心感」を確保し、社会経済の安定化を図るため、今後とも大きな役割を果たすものである。
 この場合、全ての国民が社会的、経済的、精神的な自立を図る観点から、
1) 自ら働いて自らの生活を支え、自らの健康は自ら維持するという「自助」を基本として、
2) これを生活のリスクを相互に分散する「共助」が補完し、
3) その上で、自助や共助では対応できない困窮などの状況に対し、所得や生活水準・家庭状況などの受給要件を定めた上で必要な生活保障を行う公的扶助や社会福祉などを「公助」として位置付ける
ことが適切である。
 その「共助」のシステムとしては、国民の参加意識や権利意識を確保する観点からは、負担の見返りとしての受給権を保障する仕組みとして、国民に分かりやすく負担についての合意が得やすい社会保険方式を基本とすべきである。その際には、国民皆保険・皆年金体制を今後とも維持していく必要がある。
 現在の我が国の社会保険においては、被保険者・事業主・公費の負担比率は概ね1:1:1となっているが、今後の高齢化等に伴い公費負担割合の高い高齢者関係給付が増加することから、公費負担の比重が高まっていくことが見込まれている。社会保険においては、今後とも、コスト意識を喚起する観点、事業主も社会保障制度の利益を受け得るという観点からも、労使折半を原則とする社会保険料を基本とする。そして、税財源による公費負担は、国民皆保険・皆年金体制を堅持する観点から、主に社会保険料の拠出が困難な者を保険制度においてカバーするために投入することを基本とすべきである。
 また、社会保障は、人口構造・家族構成、就業形態・企業福利、財政、税制といった社会保障を取り巻く多様な制度や実態と相互に影響を与えながら存在している。そこで、社会保障の将来を展望するに当たっては、これらの多様な制度についても議論の範囲外として排除するのではなく、一体的に見直していくことが不可欠である。
2 改革後の将来見通しを踏まえた今後の在り方
(基本的考え方)
 社会保障制度は、少子高齢化の進行に加え、従来家族や会社が担ってきた社会保障機能の外部化により機能や規模が拡大している。こうした中で、今後とも、社会保障が担うべき役割・機能を果たしつつ、制度を持続可能なものとしていくためには、給付と負担の不断の見直しとともに、予防や自立支援の推進により、国民の安心感の確保と生活の質の向上を目指すことを通じて社会保障の需要そのものが縮小されるような政策努力が不可欠である。
 したがって、今後の社会保障制度全体の在り方として、給付と負担のバランスを確保しながら、国・地方が協調して政策の重点をリスク発生後の保障だけにとどまらず、予防・自立支援に重点をおいていくことが重要である。このように、健康寿命や労働寿命の延伸等も図りながら、社会保障への需要の増大を抑制していくことが不可欠である。
 また、社会保障の給付と負担については、PDCAサイクル(政策目標の設定(Plan)、実施(Do)、達成状況の検証(Check)、目標達成のための必要な措置(Action))により、将来を見通してそれらが制度の持続可能性に照らして適切か否かを適時検証し、こうした検証の結果に基づいて、必要に応じて制度を見直していくことが求められる。その際には、国民に対して迅速かつ適切に情報提供を行い、給付と負担について国民的議論を深めていくことが不可欠である。
 こうした取組により、社会保障制度全体を将来に向けて安定的で効率的なものとし、社会保険料負担や税負担が特定の世代等に過重なものとならないように配慮することが重要である。そして、世代間及び世代内の給付と負担の在り方の見直しを行いつつ給付に見合う財源を確保するなど、国民の合意を求めながら持続可能な制度としていくことが必要である。
(受給者と拠出者のバランスの確保)
 少子高齢化が一層進行する中で、社会保障制度を安定的なものとしていく上では、高齢者、女性、若者、障害者の就業を促進し、制度の担い手を拡大していくことも重要である。
 高年齢者の就業機会の確保は、高年齢者の高い就業意欲に応えつつ、制度の担い手としての役割が期待されることから、増加する年金給付の抑制や高い年金依存度の緩和につながるという長所がある。さらに、就業可能な健康状態を維持することが前提であるから、生活習慣病対策など予防の重視を一つの柱とする医療制度改革の方向性とも合致する。また、女性の就業を確保するための職場における仕事と家庭の両立支援や、フリーターやニートと呼ばれる若者の就業促進は、少子化対策にも資すると考えられる。
 一方で、各企業においては、近年、競争力強化の観点から、正社員からパート・派遣など非正規雇用に切り替える動きが見られている。今後は、正社員と非正規雇用の間の処遇上の均衡を図っていくとともに、原則すべての雇用労働者について、雇用保険と社会保険で共通の適用ルールとすることにより、社会保険制度を雇用形態の選択に対して中立的な仕組みとする必要がある。つまり、非典型労働者にも雇用者としての社会保険の担い手の役割を付与するとともに、雇用者としての年金保障の充実を図る方向で、2004年(平成16年)の年金改正法附則の趣旨も踏まえ、検討を急ぐべきである。このことは、「共助」のシステムである社会保障の本来の機能の在り方という観点からも、非典型労働者のウエイトが高い産業・企業と低い産業・企業の間において生じている社会保険料負担の不均衡、更には未納・未加入問題や適用範囲の是正の観点からも、重要である。
(保険料と公費の役割・位置付け)
 社会保障制度の財源の在り方については、まず、上記の基本的考え方に沿って、社会保険料を中心とすべき分野と税(公費)を中心とすべき分野及びその関係を明確にする。次に、社会保険料、税それぞれの役割・機能を踏まえた上で、社会保険料負担の在り方(所得比例か、定額制・段階制など)や税財源の在り方(使途との対応関係など)を検討していくべきである。その際には、今後の少子高齢社会においても持続的な経済社会の活性化を実現していくため、制度の中長期的な「持続可能性」を確保する観点と経済の「活力」を確保していく観点がともに重要になる。また、特定の世代等に過重な負担とならないよう、国民の合意と納得の下に、現役世代はもちろん、高齢世代、企業など、幅広い支え手がバランスよく負担し合っていくことが必要である。
 個人・企業を通じた社会保障への負担の在り方については、まず、社会保険方式を基本とする我が国においては、直接保険給付を受け得る被保険者及び制度の利益を受け得る事業主とが、それぞれ受益の内容は異なるものの、労使折半で応分の社会保険料負担を行うことが基本である。その上で、社会保障への負担は、個人については労働意欲の減退を招き労働力供給を減少させるとともに、企業については雇用や投資の減少を招き、経済成長率を低下させる懸念がある。一方で、社会保障負担の雇用や投資への影響は必ずしも明確ではないことに加え、我が国の社会保障への負担は諸外国と比べ高くないこと、また、社会保障が有効需要創出や経済に対する不況時のスタビライザー機能を果たしていることにも留意する必要がある。
 一方で、社会保障における公費負担の比重は、今後とも高齢化の進行等に伴い高まっていくことが見込まれている。年金・医療・介護等、国民全体として互いに支え合う社会保障給付に係る公費負担については、将来世代に先送りすることがないように、現世代が広く公平に分かち合う必要がある。また、社会保障における国と地方を通じた公費負担の在り方については、給付の性格、内容に応じた役割分担や責任の在り方などを踏まえて検討すべきである。
(財政との関係)
 社会保障に要する国の負担は、国の一般歳出の半分に近付きつつある。今後、基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げや、高齢化に伴う医療・介護分野における需要の量的拡大などに伴い更に増加し、現行制度の下で、社会保険料を適切に引き上げたとしてもなお、社会保障に対する公費負担の比重は引き続き高まっていくことが見込まれる。そして、現在のような財政赤字が多額に上るような状況の下では、社会保障給付を賄うための公費を含め、税負担はまさに将来世代に先送りされている。
 今後、人口の減少が見込まれる中で、このように、現世代の給付を賄うための負担の先送りを続ければ、世代間の不公平を更に拡大するとともに、将来世代に過度な負担を課し、社会保障の持続可能性、更には財政の持続可能性を確保できなくなるおそれがある。
 こうした観点からも、社会保障については、国民の合意を得ながら給付について不断の見直しを行い、必要な給付に対する公費負担については、将来世代に先送りすることがないよう、安定的な財源を確保すべきである。この結果、社会保障及び財政の持続可能性に対する信認が高まり、国民生活の安全・安心の確保が可能になる。
 現在、「歳出・歳入一体改革」の議論が進められている。今後、こうした観点から、社会保障の規模や国民負担の将来に向けた見通しも踏まえた上で、社会保障の財源をどう賄うかについても、議論していくことが必要である。
(税制との関係)
 前述のとおり、国民が負担可能な範囲となるよう、給付の適正化努力を不断に続けていく一方で、将来世代への負担の先送りとならないよう、給付に見合う負担を求めていく必要がある。また、基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げについては、2007年度(平成19年度)を目途に、所要の安定した財源を確保する税制の抜本的な改革を行った上で、2009年度(平成21年度)までに実施することになっている。
 いずれにしても、社会保障制度への信認を高め、財政の持続可能性をより確かなものとするために、その財源を安定的に賄えるような財政基盤を確立する必要がある。
 こうした中で、今後、少子高齢化の一層の進行が見込まれており、持続的な経済社会の活性化を実現する観点から、消費税を含む税制全体の改革を検討し、世代内及び世代間の負担の公平を図ることが重要である。
(国民負担率との関係)
 潜在的国民負担率については、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」で「例えば潜在的国民負担率で見て、その目途を50%程度としつつ、政府の規模を抑制する」と閣議決定されている。
 潜在的国民負担率に関しては賛否両論様々な意見があるものの、いずれにしても、社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくためには、その負担水準を給付水準と一体として議論しながら、経済・財政とバランスのとれたものとしていく必要がある。したがって、この潜在的国民負担率の水準については、上記の閣議決定を踏まえ、財政規律を考える上での一つの重要な目安と位置付け、社会保障分野における改革努力を続けていくことが肝要である。
X 社会保障分野に係る今後の課題
 社会保障については、上記のような基本的な考え方に沿って、今後とも各分野において一体的な観点から見直しを行っていく必要があるが、今後の社会保障の在り方に関して、上記のほか、特に、当懇談会で議論等があった課題は以下のとおりである。
1 少子化対策の推進
 我が国の総人口は、従来の予想よりも2年早く減少に転じ、2050年までに2,700万人の人口が減少し、2100年には人口が半減すると予想されている。このような少子化の進行は、社会保障制度はもとより今後の我が国の経済・社会全体に非常に大きな影響を及ぼしていく。この少子化の流れを変えるためには、雇用や経済を含めた幅広い社会経済環境の整備をはじめとして、地域や企業の創意工夫も活かしつつ、家庭や家族を大切にするということについての国民への啓発も含め、国を挙げて少子化対策に全力で取り組むことが必要である。特に、人口規模が大きい第2次ベビーブーム世代が30代にある今後5年間における取組が重要である。
 少子化対策は、国民のニーズや費用対効果なども踏まえつつ、家庭の子育てを地域、職場、行政など社会全体で支えていくことが必要である。この際、仕事と子育ての両立支援や働き方の見直し、若年世代の就労対策の推進、子育ての経済的負担の軽減、子育て支援サービスや小児・産科医療の基盤整備といった各種の施策を総合的に組み合わせ、定期的に政策評価を行いながら、長期的に一貫した形で推進していくべきである。
 検討の際の具体的な視点としては、女性の働く環境が整備された国では出生率が高いという指摘も踏まえ、働きながら子どもを生み育てやすい雇用・就労環境に作り変えるという幅広い視点を持つことが必要である。男女の固定的役割分担に関する意識改革や、子どもを産み育てていくことに当事者はもちろん社会全体が楽しみと喜びを見出す価値観を醸成するなど、企業や国民の意識の改革といった幅広い取組を行うべきである。
 さらに、社会保障給付費全体に占める高齢者関係給付費と児童・家族関係給付費の格差・バランスの見直しに取り組むことが必要である。その際には、企業における家族手当など公的支出以外の企業独自の給付や、税制における控除も含めて比較する必要がある。
 ただし、現行制度の下では、人口構成の変化等に伴い、社会保障給付費総額に占める高齢者関係給付費の比率が高まっていく状況にある。また、一般的に児童・家族関係給付費への財政支出が大きい国では、その分、企業に対して児童・家族関係給付に対する負担も求めているなど、高い国民負担を求めていることにも留意する必要がある。いずれにせよ、今後とも高齢者関係給付の見直しに取り組むとともに、財政的な制約がある中で、政策と財源を一体的に議論すべきである。
 さらに、歳出面だけでなく、税制においても少子化対策に焦点を当てて、総合的な政策を検討する必要がある。
 地方自治体においては、地域の実情に応じたきめ細かな少子化対策を推進していくことが求められる。また、次世代育成支援についての企業の取組については、現行法に定められている内容を一層促進するとともに、自主的な情報開示を促していく。特に、現在、次世代育成支援のための行動計画の策定が義務付けられていない中小企業における自主的な取組を重点的に促進していくことが必要である。
2 就業対策
 社会保障の担い手を増やし、また、社会保障給付への依存を抑制するには、我が国の雇用慣行・実態を踏まえつつ、年齢、性別等を問わず、意欲と能力のある者に就業の機会を確保しつつ、労働力需給のミスマッチを是正することが基本である。そして、活力を発揮しやすい経営環境に向けて構造改革を進める中、雇用主としての企業には、雇用機会の提供努力や労働法制の遵守という社会的責任を果たす責務がある。
 また、社会保障制度のこれからの担い手である若年層における失業・無業や非正規就業による生活の不安定さは、少子化の有力な原因の一つとも考えられている。このため、若者が意欲をもって就業し、経済的に自立できるよう、教育政策を含め、早急かつ集中的な対応が必要である。
 さらに、生活保護の被保護者や障害者施策の受給者など、福祉施策の対象となっている者の自立を支援する観点から、福祉施策と雇用施策の連携を深め、これらの者の就労支援を一層進めていくべきである。こうした施策に取り組むことにより、本人の社会参加を促進し、福祉施策においては給付の適正化にもつながることが期待できる。
3 年金制度改革
(公的年金一元化)
 公的年金制度の一元化については、財政の安定性、ライフスタイルに対する中立性、制度間の公平性、制度の利便性(分かりやすさ)などの観点から、将来的な選択肢の一つである。
 一方において、我が国の就労構造が被用者形態中心となっている中、被用者年金制度の公平性・安定性を確保することは重要である。したがって、公的年金一元化は、まず、給与所得者を対象とするなどの点で共通点がある被用者年金制度の一元化から始めるべきである。
 被用者年金制度の一元化については、2006年(平成18年)4月28日に「被用者年金制度の一元化等に関する基本方針について」が閣議決定されたところである。この中でも触れられているが、被用者年金一元化においては、公的年金制度の一元化を展望しつつ、民間被用者、公務員を通じ、将来に向けて、同一の報酬であれば同一の保険料を負担し、同一の公的年金給付を受けるという公平性確保の視点が重要である。また、公的年金としての職域部分が廃止されるが、民間準拠の考え方などを踏まえながら、公務員の職務や身分の特殊性など公務員制度との関連から新たな仕組みを設ける等の必要がある。
 一元化に際しては、ある程度の分立と拠出者や被保険者による自主的な運営を尊重しつつ、制度間調整によって負担・給付格差を是正するという分権的な一元化の手法を併せて検討することも必要であるとの意見があった。
 一元化後の被用者年金制度全体の1・2階部分の保険料率の上限については、U1で述べたように、2004年(平成16年)の改革において基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げなどと併せて将来の厚生年金の保険料率を18.3%で固定したことを踏まえ、上記の一元化の基本方針においても、共済年金の1・2階部分の保険料率を厚生年金の保険料率(18.3%上限)に統一することとされたところであり、今後ともこうした基礎年金国庫負担割合及び被用者年金一元化に係る方針を堅持することが適当である。
 なお、これに関連して、世代間の不公平の是正、経済活力の維持などの観点から、厚生年金の保険料率の上限は18.3%よりもできる限り低く抑制すべきであるとの意見があった。
 非正規雇用に係る処遇の在り方については、パート労働者などの非正規労働者への年金適用の在り方をどうするかといった課題について、専業主婦(第3号被保険者)への年金適用の在り方という課題にも留意しつつ、検討を進める必要がある。
 国民年金と被用者年金の一元化は、国民に分かりやすく負担についての合意が得やすい社会保険方式によることを基本として、今後検討すべき課題である。
 この場合、高齢(退職)所得リスクの違い、所得形態及び納付形態の違い、保険料賦課基準所得の定義の違いといった被用者と自営業者等との相違点を解消するという条件整備が不可欠である。その際には、仮に納税者番号制度が導入されたとしても、自営業者等の所得把握には一定の限界があることに留意する必要がある。また、事業主負担をどうするかという課題や自営業者等に所得比例保険料負担を求めることに賛同が得られるかという課題がある。さらに、現行制度と比べ給付と負担が大きく異なることとなると考えられるため、これについての十分な分析も必要となる。
 上記のような改革を推進するためには、年金制度等の運営主体や事業実施に対する国民の信頼を確保する観点から、社会保険庁の徹底した改革を断行し、制度の適用の厳格化、保険料収納対策の強化など、法令に基づく適切な事業執行体制の確立と事業運営の効率化に一層努力しなければならない。
4 介護保険制度
(介護予防の推進)
 今般の介護保険制度改正において介護予防サービス(新予防給付・介護予防事業)が新たに制度化された。その実施状況や効果等に関するフォローアップを行いつつ、介護予防の推進の観点から、より効果的・効率的な体制の在り方等について継続的に検討を行い、必要な見直しを行うことが必要である。
(サービス体系全般の見直し)
 在宅サービス等については、地域密着型サービス、地域包括支援センターなどの新たなサービス体系について、その実施状況等を踏まえ、より効果的・効率的な体制の在り方について継続的に検討を行い、必要な見直しを行うべきである。あわせて、医療と介護の連携を含め、中重度者への重点的な対応を図ることが必要である。この場合、地域における高齢者の生活を支援する観点から、福祉施策と住宅施策の連携の強化を図ることが不可欠であるとともに、NPO等のインフォーマルなサービスの活用を図ることが必要である。施設サービスについては、療養病床の見直しも踏まえ、入所者に対する医療の提供の在り方を含め、基本的な在り方について見直しを検討すべきである。
(被保険者・受給者の範囲)
 介護保険の被保険者・受給者の範囲については、制度創設来の課題であり、2005年(平成17年)改正法附則においても「社会保障に関する制度全般についての一体的な見直しと併せて検討を行い平成21年度を目途として所要の措置を講ずる」こととされたところである。
 介護保険制度の将来的な在り方としては、介護ニーズの普遍性の観点や、サービス提供の効率性、財政基盤の安定性等の観点から、年齢や原因を問わず、すべての介護ニーズに対応する「制度の普遍化」を目指すことが方向として考えられる。他方で、これについては、若年層に負担を求めることについての納得感が得られるかどうか、保険料の滞納や未納が増加しないか、また、若年層の介護リスクを保険制度で支えることに理解が得られるかといった点にも留意する必要がある。
 このため、こうした個別の論点を精査し、プロセスと期限を明確化しつつ、関係者による更なる検討を進める必要がある。
5 医療制度改革
(医療費適正化の推進)
 社会保障の中で、医療費、特に高齢者医療費の増大が見込まれることから、医療制度を将来にわたり持続可能なものとしていくためには、医療費適正化を総合的に推進していく必要がある。
 このため、今般の医療制度改革においては、高齢者の自己負担の見直しなどの公的保険給付の内容・範囲の見直しが健康保険法等の一部を改正する法律案に盛り込まれ、診療報酬の引下げ等が行われた。これらに加え、生活習慣病予防や長期入院の是正などの中長期的な医療費適正化対策に取り組むこととしており、今後、実効性ある方策を計画的に実施していく必要がある。
 今般、こうした中長期的な医療費適正化対策による効果も織り込んだ将来の医療給付費の規模の見通しを示し、これを医療給付費の伸びの実績を検証する際の目安とした。そして、一定期間後、この目安となる指標と実績とを突き合わせることにより、医療費適正化方策の効果を検証し、その検証結果を将来に向けた施策の見直しに反映させていくべきである。また、現実に医療給付費の対国民所得比等の一定の増加が見込まれる場合、施策の見直しの必要性について検討を行うべきである。
 診療報酬については、粗診粗療につながらないよう配慮しつつ、患者を効率的・効果的に治療するインセンティブを重視し、「出来高払い制度」から「定額払い制度」への転換を推し進めるべきである。その際には、どのような症例や疾病が定額払いになじむかについての研究を深めることが必要である。
 こうした取組により、医療給付費の伸びを国民が負担可能な範囲としていくことが重要である。
 なお、今や生活習慣病予備群になっているといわれる若年者や子どもたちに対し、どのようにアプローチしていくのかという視点を考えていくことも必要である。
 さらに、この先医療給付費の膨張に歯止めがかからないような事態が続くようなら、改めて保険給付の内容・範囲の見直しについての国民的議論も避けて通れないのではないかと考える。また、高齢者医療制度については、施行後の実施状況も踏まえ、その制度全般の在り方について検討すべきであろう。
(終末期医療の在り方)
 現在、年間死亡者数は約100万人だが、今後、死亡者数は増加し、2038年(平成50年)には年間死亡者数は約170万人に達すると見込まれている。このような多死社会において、多くの人が在宅、地域で最後まで暮らしたいという意向がありながら現実には病院で死を迎えているといった現実がある。また、一人当たり医療費の増加の要因の一つに終末期医療があると考えられる。
 今後、高齢者の生活の質や尊厳を基本において、在宅で死を迎えられる方向をその受け皿と連動させながら考えるべきである。
 このためには、在宅での看取りを望む患者の声に応えられるよう、居住系サービスを含めた地域における生活の場に対する在宅医療提供体制の整備を急ぐとともに、尊厳死や死生観に関する社会的合意に向けて国民的な論議をしていく必要がある。
(小児医療等の整備)
 特に近年、小児・産科医療分野など、特定の診療科における医師不足、地域偏在が拡大している。少子化対策の観点からも、小児・産科医療の集約化をはじめ、国・地方が一体となった総合的な体制が求められる。
6 その他の社会保障分野
 生活保護分野など、その他の主要な社会保障分野についても、引き続き、自立・就労支援等を推進するとともに、給付の増の抑制のための不断の見直しを行う観点から、今後、更に検討していくことが求められる。
 なお、負担の公平と給付の公正化を進める観点から、納税者番号制度、社会保障番号や社会保障制度における個人勘定の整備などの是非も検討すべきであろう。
7 その他の関連施策
 社会保障の関連施策として、自立支援・予防という観点からは、高齢化や障害者等の自立に対応した建築物、公共交通機関及び公共施設のバリアフリー化の推進や、在宅での医療や介護を可能とするための住宅施策の推進等や、社会保障分野でのITの活用や健康増進の観点からの健康関連産業の活性化を図っていくことについても検討すべきであろう。
Y おわりに
(今後社会保障の在り方を議論するに当たって留意すべき点)
 社会保障の在り方の議論は、今後、どのような国を目指すかという問題提起に他ならない。我が国社会は、自己責任の原則の下、自由な企業活動によることを基本とする社会であり、前述のとおり被用者形態中心の就労構造となっている。こうした社会においては、国民に対して安心や安全を保障するセーフティネットを整備することが重要である。
 我が国の社会保障は、税を中心とする公助により事後的に救済する救貧の時代から、社会保険料を中心とする共助により貧困に陥ることを予防する防貧へと重点が移ってきている。このように、自立・自助を基本において、社会全体でセーフティネットを構築し、支えていく姿が成熟した国家の姿である。
 そして、今後、社会保障制度の議論を行っていくに当たっては、こうした観点に立って、国民の合意を得つつ、給付と負担の見通しも踏まえながら、短期的な状況に左右されない一貫した議論を行うことが重要である。
 給付と負担の将来見通しで示されたように、ここ数年の年金・介護・医療制度の改革により給付費の増の一定程度の抑制が図られる見込みであるが、制度の持続可能性を確保する観点から、今後とも、中長期的な視野に立って、年金・医療・介護以外の分野も含め、不断の見直しを行っていく必要がある。
 その際、社会保障の給付と負担は表裏一体であり、給付を抑制しないのであれば負担も増加し、負担を抑制するのであれば給付を削減する必要があるという関係にあることから、社会保障の在り方については、財源も含めて給付と負担全体として議論すべきである。そして、こうした給付と負担の関係や、受給者と担い手とのバランス等にかんがみれば、個々の制度やその一部のみでなく、税・財政なども視野に入れて、社会保障制度全体をとらえた一体的な検討を行うことが必要である。
(国・地方、企業、国民に求められるもの)
 今後の社会保障の在り方については、上記のような中長期的な視野に立って議論していかなければならない。その際、国・地方、企業、国民それぞれについて、特に以下の役割に留意すべきである。

 国は、少子高齢化が一層進行する社会においても、国民生活の安全、安心を確保しつつ、社会保障を将来にわたって持続可能なものとしていくため、「一体的な見直し」を常に念頭に置くべきである。社会保障給付の一層の適正化、給付と負担のバランスの確保、実効ある少子化対策の実施や雇用施策等の担い手の拡大、住宅施策等他施策との連携等、不断の改革努力が求められる。

 地方は、制度の枠にとらわれず、地域の創意工夫を活かした住民の福祉の向上のための施策の実施、NPOやボランティアの育成等を含む地域における福祉基盤の強化等に努めるべきである。それととともに、国と地方との対等な関係の中での密接な連携の下で、社会保障給付の一層の適正化に取り組んでいくことが求められる。

 企業は、社会経済の安定と社会保障の担い手を安定的に確保していく観点から、高齢者・女性・若者・障害者を中心とした雇用機会の提供、少子化対策の観点からの労働者の働き方の見直し等に努めていく必要がある。

 そして何より、国民一人ひとりが、我が国の社会保障制度及び財政が直面する厳しい状況を理解し、制度を後世に引き継いでいくためにはどういう責務を果たすことが必要かを考え、それを実行することが最も重要である。そのためには、国・地方や企業が、それぞれの役割や社会的責任に応じて、国民に対する情報提供や説明を行っていくことが求められる。

〔別添〕
○ 審議の過程において、以下の意見が出された。
 社会保障制度、および老後生活の基盤である公的年金制度への信頼を高め、国民皆年金制度を維持することは、極めて重要である。そのため、公的年金制度の土台である基礎年金の「空洞化」を解消し、無年金・低年金者をなくすため、また、保険料の段階的引き上げによる「世代間の負担の不公平」の是正を図るためにも、基礎年金を全額税で賄う必要がある。

 なお、基礎年金の税方式化を踏まえ、厚生年金の保険料率は15%程度とすべきであり、保険料率が15%を超えるまでに、具体的な見直しに着手すべきである。

○ これに対して、以下の意見が出された。
 社会保険方式は、自立・自助を基本とする我が国の経済社会に整合的であるのに対し、税方式は、給付と負担の関係が明確ではなく、生活保護との違いが不明確になり、我が国の経済社会に相応しくない。

 社会保険方式による年金制度が定着している中での税方式化は、これまで保険料を納付してきた者と、保険料を納付せず税方式の年金を受ける者との公平が図られなくなるなど、国民の不公平感を増すのではないか。

 高齢者に所得格差がある中で、一律に給付を行う基礎年金を全額税財源で賄う仕組みとすることは、税財源による再分配政策としての公平性の観点から、適当ではない。

 基礎年金は、現在、国庫負担割合について2分の1への段階的な引上げを図っているが、厚生年金の保険料率を15%程度とする前提となる全額税方式化は、税財源の更なる大幅な投入が必要となるため、非現実的ではないか。