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 トップ会議等一覧食料・農業・農村政策推進本部 [印刷用(PDF)]


21世紀新農政 2007


平成19年4月4日
食料・農業・農村政策推進本部決定


 農政については、「食料・農業・農村基本計画」(平成17年3月25日閣議決定)の方向付けの下で、「21世紀新農政2006」(平成18年4月4日食料・農業・農村政策推進本部決定)により明確にされた重点課題に対し、政府一体となって集中的に取り組んできている。これにより、我が国農業を、21世紀にふさわしい戦略産業としていくための条件整備が進んでいるところである。
 一方、近年、経済社会のグローバル化が急速に進展する中で、開発途上国の経済発展やバイオ燃料生産の拡大等を背景とした国際的な食料事情の変化への対応、温暖化防止など地球規模での環境問題への対応等が喫緊の課題となっている。
 こうした課題に対し、食料・農業・農村は、その有する諸機能を十分に発揮することにより、課題解決に貢献していくことが期待されている。こうした新たな課題に対して農業や農村が持つ潜在能力を最大限発揮させていくことが、我が国の農業を真に21世紀にふさわしい戦略産業としていく道である。
 このような視点に立って、我が国の食料・農業・農村に係る新たな国家戦略を確立するとの考え方の下、内閣に設置された各種本部と連携を図り、関係府省が一体となって、下記事項を内容とする「21世紀新農政2007」を推進することとする。



T.食と農に関する新たな国家戦略の確立
1.国際的な食料事情の変化に対応した新たな食料戦略の確立
  
(1)変化する世界の食料事情の多角的な分析と国民全体での認識の共有
  刻々と変化する世界の食料情勢に対応し、将来にわたって国民に対する食料の安定供給を確保するため、国際的な食料需給、衛生・検疫制度、関税制度等の情報を一元的に収集・分析するための体制を整備し、その成果を消費者、生産者、事業者や関係機関に対し幅広く提供する。また、国際的な食料事情の変化に対応した新たな食料戦略を確立するため、食料をめぐる国際的な動向や世界の食料需給の見通し等につき客観的な把握・分析を行うとともに、幅広い各界の有識者の参画を得た国民食料会議(仮称)の議論を通じ、食料をめぐる諸問題について国民全体で認識を共有する。
  
(2)国際協力等を通じた世界の食料の安定生産・供給への貢献
  アジア各国で発生している鳥インフルエンザについて、新型インフルエンザの発生防止にも資するよう、アジア各国と連携して、アジア域内の早期通報体制の整備、ウイルスの伝播ルートの解明等の取組を推進する。また、農産物の輸入増加等に対応し、より効率的・効果的な植物検疫を実施するため、病害虫の侵入リスクに応じた検疫制度への見直しを行う。
 このほか、我が国の経済・社会との関連に配慮しつつ、諸外国との政策協調を目指し、稲作等の農業技術や農業者の協同組織化の仕組みやノウハウなどの日本型農業システムの移転等、戦略的な国際協力を推進する。
  
2.我が国農林水産物・食品の市場の拡大
(1)農林水産物・食品の輸出の促進
  我が国農林水産物・食品の輸出を促進するため、検疫交渉を加速化するとともに、輸出先国・地域が求める輸出証明書の発行等の輸出環境の整備の迅速化、品目別のきめ細かな輸出支援、日本食・日本食材の海外への情報発信等に重点的に取り組む。平成25年までに我が国農林水産物・食品の輸出額を1兆円規模とすることを目指す。
  
(2)東アジアを視野に入れた我が国食品産業の活性化
 我が国の食品産業について、東アジア地域の活力を活かした競争力強化等を加速化するため、貿易保険制度の積極的活用等による投資環境の整備や、「海外事業活動支援センター」(仮称)の開設等による国内外の情報収集・提供・相談体制の強化を図る。
  
(3)バイオマスの利活用の加速化
 バイオマスの利活用を加速化し、従来の食料等の生産の枠を超え、農林水産業・農山漁村の新たな領域を開拓する。(後掲(W.1.))
  
3.WTO農業交渉、EPA交渉への戦略的取組
 WTOやEPAの国際交渉に当たっては、「日本経済の進路と戦略」に則し、「多様な農業の共存」を基本理念として、国内農業への影響を十分踏まえ、「守るべきもの」は「守る」との方針の下、国内農業の構造改革の進捗状況にも留意しつつ、日本として最大限の利益を得られるよう取り組む。
 WTO農業交渉については、輸出国と輸入国のバランスのとれた貿易ルールの確立を目指し、関係各国との連携を緊密に図りつつ交渉に取り組む。LDC諸国に対する無税無枠措置の拡大の実施をはじめとした「開発イニシアティブ」(2005年12月公表)の取組により、途上国との連携を強化する。
 EPAについては、WTOを中心とする多国間貿易体制を補完するものとして、農業の重要性を十分認識し、各国・地域とのEPA交渉に戦略的に取り組む。
  
II.国内農業の体質強化
1.担い手への施策の集中化・重点化
(1)効率的・安定的な農業経営の育成の加速化
 意欲と能力のある担い手に限定した品目横断的経営安定対策を着実に実施する。また、本対策の対象の認定農業者に対しては、経営改善計画の達成状況の点検、更なる経営改善努力への支援を実施するとともに、集落営農組織に対しては、経営発展に向けた専門家による課題把握と解決方針の提示等を図り、組織ごとの発展段階に応じた経営支援を実施する。これらを通じ、他産業並みの所得を確保し得る「効率的かつ安定的な農業経営」への経営発展を加速化し、我が国農業の食料供給力を強化する。
  
(2)多様な人材の育成・確保
 農業法人や農業サービス事業体の形態をとる担い手の増加等が見込まれる中、就農希望者の農業知識・技術レベルを客観的に評価する農業技術試験の本格実施、再チャレンジ就農者の新たな発想・アイデアに基づく新分野への進出に対する支援等を推進し、若者をはじめ多様な人材の農業参入・定着を後押しする。
 あわせて、農業生産等で重要な役割を果たしている女性の農業経営者としての位置づけの明確化、農業経営への一層の参画を促進する。
 また、外国人研修・技能実習制度の運営の適正化を図るとともに、開発途上国等の「人づくり」における本制度の役割の重要性や受入側の農業経営体の受入れ体制も踏まえながら、農業分野について、その適正化に向けた見直しを検討する。
  
2.農地政策改革
 農業生産・経営にとって不可欠な資源である農地については、それを有効利用するとの理念を明確化するとともに、担い手への面的集積の加速化を最重点事項として政策全般の改革を進める。具体的には、原則として、地域の一定の組織(面的集積を促進する機能を持つ組織)が農地の利用を一旦プールし、それを面的にまとまった形で担い手へ再配分する仕組みを構築するとともに、農地の出し手と受け手双方にとってのメリット措置の集中化・重点化等を進める。また、地域の関係機関等が有する農地情報の相互利用や一元化を進めるとともに、基盤整備と一体的に担い手への農地利用集積を推進する。これらにより、平成27年において効率的かつ安定的な農業経営が経営する農地面積の7割程度を面的に集積することを目指す。このほか、意欲的な企業や若者の農外からの新規参入を促進するとともに、都市農村交流等の観点から、一定の区域を対象に、都市住民等による農地の農業利用を促進する。また、優良農地の確保、耕作放棄地の発生防止等も含め、総合的な改革を実施する。
  
3.食料供給コストの縮減
 昨年9月に農林水産省が取りまとめた「食料供給コスト縮減アクションプラン」を、実施状況の検証を踏まえ着実に実施していく。また、このプランに基づく取組を一層加速化するため、農業機械・施設への補助制度の見直し、科学的知見等を踏まえた化学肥料の登録有効期間の延長といった規制の見直し等を行う。また、流通面においても、大型包装農薬や輸入高度化成肥料の大量かつ安定的な流通・販売の推進など担い手の経営におけるコスト縮減に重点を置いた流通改革を進める。
 農協系統の経済事業改革について、生産資材価格や流通コストの低減等を確実に実行し、改革の成果が生産者とりわけ担い手に還元されるよう、その取組の徹底を図る。また、農協等の活動に関し不公正な取引が行われないよう、今後、公正取引委員会が策定・公表する「農業協同組合の活動に関する独占禁止法上の指針」等を踏まえ、関係機関が連携して農協等への指導等を実施する。
  
4.イノベーション・知的財産の力による農業の潜在的な力の発揮
(1)イノベーションを先導する技術開発の加速化
 農業生産現場の課題に対応し、ITやロボット等先端技術を活用して、より生産性が高く、高品質な農産物の生産を可能とする新たな技術体系の開発・実証を行う。また、新食品・新素材の開発を行うとともに、国産バイオ燃料生産の低コスト化、新品種育成へのゲノム科学の応用等により、農林水産分野のみならず、医療・工業等の分野も含めた新たな需要の創出や食料・環境・エネルギー問題の解決への貢献など、農林水産業の新たな可能性を開拓する技術開発を推進する。
  
(2)イノベーションの実現を支える知的財産の戦略的な創造・保護・活用
 我が国からアジア各国に対し、「東アジア植物品種保護フォーラム」(仮称)の設置を提唱するなど、アジア全体で植物新品種の育成者権の保護強化やその侵害防止に協力して取り組む体制を強化する。また、技術・種苗等の知的財産の保護・活用に向けた現場の意識改革に取り組む。
  
V.国民・消費者の視点に立った食料政策の展開
1.食品の安全と消費者の信頼の確保に向けた取組の充実
(1)「危害の未然防止」に重点を置いた食品の安全確保に向けた取組の推進
 リスク分析の枠組みに則って的確なリスク管理措置を検討・策定するため、引き続き、我が国において潜在的に問題発生の可能性がある有害な化学物質や微生物による食品汚染実態の調査を実施する。また、農業生産や食品加工の現場段階において、新たにGAP(農業生産工程管理手法)や食品製造段階でのGMP(適正製造規範)等の工程管理手法を積極的に導入・推進し、生産から食卓までの食品安全を確保する。なお、野菜・果樹や米麦等の産地を対象とした農家への研修・指導等を通じ、平成23年度までにおおむね全ての主要な産地(2,000産地)においてGAPの導入を目指す。
  
(2)行動規範の策定等コンプライアンスの徹底
 食品加工業等において、セミナーの集中実施等による企業トップの意識改革や、各企業における行動規範の策定の促進等を通じ、規範意識の高揚を図り、食品安全に係る法令や自主基準も含めたルールの遵守の徹底を図る。
  
2.農林漁業体験活動を通じた食や農への理解の増進
 食育の一層の推進のため、「教育ファーム」や農山漁村での子供たちの長期宿泊体験活動の一層の推進を図り、「いのち」を育む農林漁業の体験活動を、人間の成長を支える教育の場として積極的に推進する。また、農林漁業体験活動の場での「食事バランスガイド」の効果的な活用等により、実体験を通じた「日本型食生活」の普及を図る。さらに、学校給食、観光等地域が一丸となって地産地消に取り組む先進事例を全国に発信すること等を通じ、健全な食生活や食の生産・流通等に関する知識の普及と理解の増進を加速化する。
  
W.地球温暖化対策等の資源・環境対策の推進
1.バイオマスの利活用の加速化
(1)国産バイオ燃料の大幅な生産拡大
 「国産バイオ燃料の大幅な生産拡大」(平成19年2月バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議)に基づき、バイオエタノールの大規模実証等による普及促進等の取組を着実に実施し、平成23年までに国産バイオ燃料を5万kl生産することを目指す。さらに、稲わらや木材等のセルロース系原料や資源作物全体からバイオエタノールを高効率に製造できる技術の開発等により、国産バイオ燃料の大幅な生産拡大を目指す(技術の開発等がなされれば、2030年頃には600万klの国産バイオ燃料の生産が可能(農林水産省試算))。
  
(2)バイオマスプラスチックの利用の加速化
 バイオマスプラスチック利用推進体制の整備、技術開発等により、バイオマスプラスチックの利用を促進する。
  
(3)地域の創意工夫を活かしたバイオマス利活用の推進
 農山漁村に豊富に存在する家畜排せつ物や農作物残さ等のバイオマスの利活用の加速化を図るため、全国津々浦々で自治体、生産者、消費者、産業界が一丸となって取り組むバイオマス利活用に関する調査活動等を支援し、平成22年度までに地域のバイオマスを総合的に利活用するバイオマスタウンを300地区構築することを目指す。
  
2.食品リサイクルの推進
 循環型社会の形成に資する食品循環資源の再生利用等を一層進めるため、食品リサイクル法の見直しに従い、食品関連事業者が農林漁業者やリサイクル業者等と連携して行うリサイクル・ループ(食品の循環資源利用の環)の構築の推進等、食品リサイクルの取組が遅れている食品流通の「川下」に位置する小売業等の食品関連事業者における取組を強化する。
  
3.地球環境保全に対する農林水産業の積極的な貢献
 平成17年度の温室効果ガス総排出量の増加(基準年(原則1990年)比+8.1%)や、深刻な地球温暖化の実態(IPCC第4次評価報告書)等の課題に対応するため、京都議定書の6%削減約束の達成に向けた農林水産分野における地球温暖化防止策や、地球温暖化の進行により懸念される農林水産業への影響に対処するための適応策等を内容とする総合戦略を夏までに策定し、農林水産分野における地球温暖化対策を加速化する。
 また、農林水産業の生物多様性への正負の影響を把握するため、生物多様性の定量的把握のための指標を検討する。さらに、有機農業をはじめとする環境保全型農業の推進、里地里山の整備・保全、藻場・干潟の造成、海洋生物資源の保全・持続的利用等、農林水産分野における生物多様性保全に向けた取組を推進するための総合戦略を夏までに策定し、国土の生物多様性の保全に貢献する農林水産業の実現を図る。
  
X.「美しい国」の原点である農山漁村地域を守り、活性化する政策の推進
1.農山漁村活性化に向けた地域の創意工夫の後押し
(1)農山漁村における居住者、滞在者の増加対策の加速化
 人口減少、高齢化が進み活力が低下している農山漁村を活性化し、農業・森林・水産業の有する多面的機能の発揮を図るため、地域の知恵や資源の活用、人づくり、国際交流・地域間交流、持続的・自立的発展のための条件整備に向けた地域の取組を積極的に支援する。具体的には、団塊世代や若者の活力を最大限活用する地域の創意工夫を後押しするため、農山漁村の活性化のための新たな制度による生活環境整備や交流・滞在施設の整備等の促進、中小企業地域資源活用プログラムによる新商品開発等の推進、頑張る地方応援プログラムによる意欲ある自治体の取組への支援等を新たに実施する。これらにより、今後5年間に全国の市町村の過半(1,000以上)で居住者、滞在者の増加につながる農山漁村の活性化に向けた新たな取組を創出することを目指す。
 また、「立ち上がる農山漁村」や「オーライ!ニッポン」等の優良事例を分析し、全国的な取組への発展のため活用する。
 さらに、農山漁村活性化に向けて、農協等の意志決定過程及び農業経営への女性の参画を促進し、農山漁村における男女共同参画を推進する。
  
(2)農山漁村を支える人のつながりと資源の保全に向けた新たな政策手法の展開
 農山漁村の活性化においては、特に、農山漁村に暮らす人々が地域の活動に積極的に参画していくための環境・条件の整備が重要であることから、農地・農業用水等の資源や環境の良好な保全と質的な向上を図る「農地・水・環境保全向上対策」の円滑な実施・定着等を図る。また、農山漁村における豊かな人間関係と社会的なつながりの維持・再生に向けた新たな政策手法を検討する。
 農業生産に不可欠な地域資源である水を適切に供給する農業水利施設について、その機能を最も効率的かつ経済的に維持するため、新規の施設の建設から既存の施設の有効活用・長寿命化に政策を転換する。
  
2.暮らしを守る鳥獣害対策の展開
 農林水産業のみならず、中山間地域等で暮らす人々の生活にも大きな影響を与える特定の野生鳥獣について、関係府省間の連携強化と併せ、地方自治体、農業関係団体、NPO等と連携を図り、有害鳥獣の市町村レベルの捕獲数管理及び捕獲体制の強化、捕獲獣の地域資源としての活用等新たな視点に立った防除対策の推進、里地里山の管理対策の促進等生息環境対策の強化等、被害の広域化・深刻化に対応した対策の充実
・強化を図る。