4.討議の概要
(1)はじめに、内閣官房内閣内政審議室より挨拶があり、次に運営要領に関する申し合わせ及び事務局による今後の進め方に関する説明を行った後、運営要領に従って少子化への対応を考える有識者会議の八代委員が主査を務めることとなった。
(2)続いて、出席者の自己紹介及び事務局による資料説明の後、八代主査より示された「分科会における検討課題」(別紙)を踏まえた討議があった。意見の概要は以下のとおりである。
○ 国が出生率の向上に口を出すのはおかしいと思うが、エンゼルプラン等の計画が策定されながらなかなか日の目を見ていない原因を探るべき。
○ 農家の嫁は、ゆとりが持てない。労働時間の短縮、男女の固定的な役割分担の見直しが必要。
○ 高齢化が進行する中で、女性の社会進出は加速させるべき。これを前提に仕事と子育てを両立できるような働く環境を整備すべき。
○ 子育て等に関する状況のうち、改善されたもの、変わらないもの、悪化したものを時系列的に明らかにしつつ検討を進めるべき。
○ 企業のトップに立つ50〜60歳代の男性と、若い世代との間に考え方のギャップがある。
○ 育児と仕事の両立に対する理解が非常に少ない職場がある現状を変えていくべき。
○ 現行の諸制度は、サラリーマンにはそれを支える専業主婦がいることを前提に組立てられており、働く女性は被害者意識を持たされている。
社内結婚をしたらどちらかが辞めなければならないとか、旧姓使用を認めないという不文律があるなど、女性が結婚後も働くことに理解がない職場がある。
○ 少子化対策、働き方の検討においては、企業がどう変わっていくかが大きなポイント。
○ 育児と仕事の両立が「しんどくない」ような社会を築くべき。「男女共同参画ビジョン」を全て実行すれば、出生率も北欧並みには上がると思う。特に働き方について、身分の変更なく子育て期の短時間勤務を経てフルタイム勤務に戻れる仕組みを確立すべき。
○ 地域の中で、家庭で子育てに専業している専業主婦も、悩みや閉塞感を持っており、このため育児不安を感じたり、子ども嫌いになることもある。
子どもを産まない生き方を抑圧してはならない。
母親を保護して支えるのではなく、そのエネルギーを活かしていくことをサポートしていくべき。
○ 育児中は仕事時間を半分に落とし、半分家事に振り向けるという生活スタイルが選択できる勤務制度も重要ではないか。
職場における男女差別の問題もあるが、逆に家庭生活に男性がフルに入って いくと、男性にとって居心地の悪いことが多いという状況がある。
○ 企業の制度を変えれば少子化が止まるのか疑問。むしろ、少子化という状況の中で、どのような働き方が求められるか考えることが当面の課題。
○ 既に対応が進んでいる企業であればそれほど変わる余地はないと思われるが、
まだまだ変える余地の大きい企業も多いのではないか。
○ 女性の戦力化を図る上で出産、育児がネックになっており、この点への対応 が社員のみならず企業にとっても重要な課題。
いわゆる「企業戦士」を前提とした従来の画一的な企業風土や仕組みが多 様性に対応できておらず、これにどう対応するかが企業にとっても重要。
育児ほどクリエイティブな仕事はないと思うが、一定の期間のみの仕事であり、そちらを選ぶと働くキャリアにとって不利となるという現状が問題。
○ 日本のビジネス社会の中で実際に効果をあげられる対応が必要。
○ 勤務時間が短くなっても男性の家事時間は増えないという調査結果がある。
○ 育児雑誌等では東京の情報が中心となっている。夜間開業の小児科医や保育所情報等真に必要な情報が特に地方では不足している。
○ 育児中の女性に対するNPO的な活動の支援が重要な対策の一つ。
育児に専業した主婦がその後就労や起業を志してもビジネスチャンスを見つけにくいことが専業主婦が幸せを感じにくい一つの原因になっているのではないか。NPOを含め、地域で起業する主婦等の支援が重要。
○ 育児休業制度は普及したものの、リストラ等により一人に課された仕事の責任及び量は増大しており、育児休業明けの女性の苦悩は増している。企業においては、育児休業・育児時間の取得者は自分勝手と見られる傾向にあり、その状況を見た若い世代は出産・育児と仕事の両立は大変と認識する現状にあり、このような現状では、子どもを産むのは損との意識があるのも当然。子育てを阻害しない働き方を考えるため、労働制度面と企業の精神風土面の双方からアプローチが必要。
○ 在宅での仕事を普及していくことにより、生活社会と仕事社会の両者を共有することができる。
○ 少子化はなぜ問題かについては、少子化の中での少ない子どもの育て方への影響、つまり、主婦が子育てを通しての自己実現に固執するあまりの育児ノイローゼや受験戦争などの弊害にも着目すべき。
○ 人口が減少し、複数の構成員からなる世帯の数が減ると、そのような世帯が消費の主役となっているものを扱っている企業から見れば、気になるところだろうが、個人的には日本人の人口が減少することにそれほど危機感は持っていない。出生率上昇政策を打ち出すのではなく、年齢、性別、障害の有無、日本国籍の有無などに関わらず働き、生活できるバリアフリーな社会をつくるべきであり、そうすれば自然と子どもを産み育てやすい環境が整備できるのではないか。
政府のやることではないが、男性の意識改革が必要。
法人税の軽減措置など育児支援を行う企業にとってプラスになる仕組みを設けるべき。また、表彰制度など国や経済団体、労働組合等で子育て支援に取り組んだ企業を評価する制度を設けるべき。
○ 政府の人口問題審議会報告の趣旨も、政府が個人や家庭の問題に介入するのではなく、子どもを産みたいが産めない人に対し支援することにより間接的に出生率上昇を期待するというもの。
○ 少子化の問題点としては、税金や年金が破綻するおそれがあげられる。現在の生活水準を低下させたくない人が多い状況下で、税や年金を負担する世代が減っていけば、結局働く世代1人当たりの負担がどんどん重くなっていく。
大変な経済的・時間的・身体的・精神的負担を背負って子どもを育てた人と子どもを持たない人が、年金などにおいて同じ取扱いというのはいかがなものか。結局フリーライダーが増加するだけである。
子育ての喜びは産んで初めて分かる面があるが、子育ての楽しさをもっと知らせ、仕事と育児の両立が困難とのイメージが先行しすぎている現状を変えるべき。そうすれば、もっと子どもを産んでみたいという女性も出てくるのではないか。
○ 国の富と人口規模は相関関係にあり、国家政策上の人口適正規模に関する議論はあってしかるべきと考えるが、別途検討すべき課題。
結婚しなくても子どもが持てる制度を作るというのも一つの選択肢。
○ 地球規模という視点で見ると日本の人口は減ってもよいという議論もあるかもしれない。
現在の教育制度では、高学歴の女性にインプットしたものが社会に還元されていない。職業教育、労働教育を充実すべき。
男女が子どもを持つ喜びや働くメリットなど互いのことを知るための情報交流等の仕組みを政府レベルで作るかNPO支援を行ってもよいのではないか。
地域の中で子どもが遊ぶ場所や仲間を確保することについて多少公的な介入が必要ではないか。
○ 税の配偶者控除、国民年金の第3号被保険者制度等女性の生き方を仕事か子育てかに二極分化させている制度については廃止すべき。
子育てしている専業主婦世帯の方が子どものいない共働き世帯(DINKS)よりも有利な面もあり、DINKS=フリーライダーという言い方には反対。
むしろ、保険料を納めずに年金をもらえる専業主婦こそフリーライダーだという認識も根強い。
○ 男性の意識改革に加え、女性も、男女共同参画という観点からの意識改革が必要。
現状では、管理職は部下から育児休暇や結婚退社の申出があると、自分の部局の生産性低下が心配になるのは事実。社員の育児等を支援している企業への表彰制度や税制上の優遇措置など何らかのフォローがあると助かる。
○ 企業の育児支援対応をISOに入れることも考えられるのではないか。
○ ゼネラリスト、スペシャリストの選択、出産、結婚についての選択等、若者に自分の将来のプランを考えさせる機会と情報を早めに与えることに国・企業等が取り組むべき。
○ 有職女性よりも専業主婦の出生率が高いが、希望する子ども数は有職女性の方が高い。共働き家庭の存在を前提とした社会的インフラが不足しており、子どもを持ちたいという有職女性が産みにくくなっているのではないか。
○ 低年齢児保育料が高い、3年間就業しない、時給の安いパートしか就職できないという悪循環を改善し、パートも多様な職種があり、それに見合った報酬がある、またフルタイムの再就職もできる、という雇用環境を実現すべき。そのような雇用環境ができれば3号被保険者の問題も段階的に解決できる。
夫の残業の多い働き方と自分が「主人」という意識が問題。
主婦にとって、夫の転勤による子育てへの影響も大きい。せっかく築いた地域へのきずなが夫の突然の転勤・引っ越しにより壊れてしまう。
妻の出産日及び出産による退院後1週間は夫が休暇を取れる制度を整えるべき。
○ 結婚、出産を望んでいるができない現実があり、その障害を取り除いていくべきという発想でよいのではないか。
女性の変化に男性がついていっていない状況にあるのではないか。
パートタイムとフルタイムの時間あたりの賃金格差の是正は急務。検討中の男女共同参画基本法に間接的な男女差別も禁止する規定を入れるなど、法律的に是正していき、企業戦士でも専業主婦でもない中間的な働き方を政策的に確立すべき。
0歳児保育の待機解消に国と自治体で取り組むべき。
育児休業給付25%は少ない。せめて60%程度とすべき。また、子どもが小学校に入学するまでの間における短時間勤務の義務化、男性にしか取得できない育児休暇を組み合わせるパパクオータ制度導入を検討すべき。
○ 短時間勤務により、企業と子育て中の働きたい女性の双方が利点を享受し合える場合がある。
○ 少子化対策に決め手はなかなかないので、可能性があるものは明るく楽しくやってみようという姿勢が大事。
働き方を変えるためには、女性だけでなく、むしろ男性を対象にすることが必要。
○ 育児期間中の女性を家庭にだけ置いてしまうのは、女性の精神面でも良くない。
労働基準法の女子保護規定撤廃により、女性が仕事漬けになってしまうのでは少子化が加速してしまう。パートタイマー採用に際してさえPTA役員を引き受けないよう念を押すことがあるような職場優先の企業風土を改めることが喫緊の課題。
○ 労働組合の女性は働き方の見直しや働き続けるための条件整備などを主張してきた。少子化であわてているのは男性のような印象が強い。
子どもを産めるけれど産まない人や産めない人が、生きにくくならないような配慮が必要。
子どもが急に熱を出して遅刻したときの職場の皆の冷たい視線がつらいという声がある。制度的な問題ではないが、乳幼児を育てながら働く女性に対する思いやりが欠けているのではないか。
○ 働きたいのに働けない女性が多い。企業側としては、特に男性の意識変革が重要。
子育てを選択して退職した女性が育児終了後復職を希望する場合に復職の選択肢があることが重要。
働きたい女性が自身のキャリアプランニングを明確に持つための教育が必要。
○ 若手の意識調査の結果では、未婚者の72%、既婚者の54%が子どもをほしいと考えているにもかかわらず出生に結びつかないのは、阻害要因があるから。特に2人目以降の子どもを持たない理由としては、有業者では物理的・経済的な理由を、無業者では1人の子どもで十分と考えていることを挙げる割合が大きいことから、有業女性の場合は阻害要因を撤廃できれば産みたい人が産める社会に近づくと思われる。
○ 育児支援策等を、会社のシステムに定着させるには3つの段階が必要。1つ目は選択肢を用意すること(規則の制定)、2つ目は実際に選択ができるようにすること(規則に合理性が必要)、3つ目は選択に伴うストレスを除去すること(企業風土の是正等)である。
○ 0歳児の場合、男女共に2時間通常より勤務時間を短縮して育児時間に充てられるようにすべき。
裁量労働制が目的外に使用されて残業代削減策となってしまうのではないか危惧があり、労働時間がフレキシブルになる中で、育児時間をどう保障するか詰める必要がある。
やり直しのきかない社会の中では、専業主婦は、復職の目途が立たず、この状況がいつまで続くのかという不安を抱えている。
企業の現場では、管理職による子育て中の社員への程度の低いいじめさえある現状。企業の管理職や社員に対し、子育て世代の男女が子育て保障の制度を利用するのは当然の権利という認識を学べる教育機会を設けることが必要。
子育てをしている男性の姿が美しいというアピールをしていくべき。
○ 地方には結婚のできない40代の男性が多数いる一方で、都会では若い女性があふれている。このような状況は、日本社会が、長いスパンで物事を考えず、行き当たりばったりに進んできた結果である。
男女の固定的な役割分担を改革し、男性の家庭化、女性の社会化に向けての国を挙げてのキャンペーンに取り組むべき。
少子化に対する危機意識が本当にあるのであれば、結婚・出産といった個人の問題に国が関与すべきではないなどということを言ってはいられないのではないか。
(3)最後に、事務局より、第2回働き方分科会については、平成10年9月30日(水)午後の開催を予定している旨発言があり、閉会した。
(了)