少子化への対応を考える有識者会議

第1回家庭に夢を分科会議事要旨

1.日時及び場所
 平成10年9月10日(木) 14:00〜16:00
 厚生省共用第9会議室
 
2.出席者(敬称略)
 安達、井上、岩男、うえやま、薄井、小川、川村、杉山、鈴木(り)、詫摩、戸田、西村、根本、萩原、樋口、前田、三浦、宮田、椋野、森、山口
(この他、少子化への対応を考える有識者会議の河野委員が出席。)
 
3.議題
(1)分科会の運営等について
(2)分科会に期待する事項等について
(3)討議

4.討議の概要

(1)はじめに、内閣官房内閣内政審議室より挨拶があり、次に運営要領に関 する申し合わせ及び事務局による今後の進め方に関する説明を行った後、運営要領に従って少子化への対応を考える有識者会議の岩男座長が主査を務めることとなった。

(2)続いて、出席者の自己紹介の後、男女の役割分業の見直し及び結婚をめぐる状況への対応について、以下のような議論が行われた。

○ 男女の役割分業に係る意識は、すぐに変革ができるものではなく、一世代ぐらいはかかる問題ではないか。地方では、男の子にも家事を習得させようと母親が教育しても、周囲から「男の子は家事などするものではない」といった反発を買うという話も聞く。幼少時からの教育が重要であり、男女かかわりなく家事・育児に取り組むことを教えるべきである。

○ ある育児雑誌で、過去5年間に毎年千人の母親に対してアンケート調査を行っているが、それを分析してみると、母親の8割は「子どもは可愛いけれども子育てにいらいらすることがある。」と回答しており、父親が育児に携わっている母親ほど、もう一人生みたいという意欲がある。また、父親の育児への関わりの程度は父親の帰宅時間と反比例しており、父親の帰宅が遅いほど、育児に関わらなくなっている。なぜ今になって父親の役割がこれほど求められるのかという疑問もあるかもしれないが、昔は、おじいちゃん、おばあちゃんや地域の中から自然と子育てに対する支援が受けられたのに対し、現在では核家族化が進み、母親が相談できる人は父親しかいないという状況の中で、父親への期待が大きくなっている。地域の再生も必要だが、一方で、物理的に、父親が本当に子育てをできるような働き方の改革が必要ではないか。

○ 「家族」には夢と同時に「覚悟」も必要であり、女性も、男性が家事や育児に参加してくれないというだけではなく、その状況を変えるための駆け引きを覚える必要がある。また、結婚、出産、子育てといった選択に際し、どのような人生を歩みたいのかを考えた上で、納得した選択肢を選ぶことができるような教育も行うべきである。さらに、20代の若い女性に対し、身体的な面を考えれば子どもは生みたいと思ったときにいつでも生めるものではない、ということを伝えていく必要がある。そのためにも、ピルの解禁を含め、女性が自分自身で確実なバースコントロールをしていけるようにすべきである。

○ 子どもの精神的健康と父親の育児参加には密接な関係がある。日本の家族では、これまで、どちらかというと親子関係が重視され、夫婦関係はその下に置かれるようなところがあったが、夫婦関係は家族の要でありこれを大事にしていくことが必要である。

○ 米国の調査では、子育てにおける父親の不在は、男の子の場合友人関係と成績に問題が生じ、女の子の場合は成績の低迷と自分のキャリアが持てないという問題が生じるといった形で影響するという結果が出ている。父親が子育てに参加しないのは、結局は人間関係がうまく持てないという問題であり、その結果職場に逃避して夜遅くまで家庭に戻らないというような結果になる。人間関係を豊かにできるような教育をすべきである。

○ 自分自身、以前は結婚にも子育てにも関心を持てなかったが、家事を夫と妻で分担している友人夫婦など身近な例を見て、こんな結婚や子育てなら自分もやってみたいと思うようになった。身近に、これは素晴らしいと思えるような夫婦や家族が増えれば、結婚・子育てに夢が持てるようになるのではないか。

○ 男性は、悪気があって家事や育児をやらないのではなく、家庭にいる時間が短いために、家庭ではどのような仕事をやらなければならないのか気付かないのではないか。父親が家庭で家族と時間を共有することが必要である。

○ 誰が家事・育児をするかという議論よりも、家事・育児分担についてどんな選択をしても、偏りなく政策から支援が受けられることが重要。阪神大震災の折、被災地の男性は大阪のホテルから会社に通い、女性と子どもだけが被災地に取り残されるという状況だった。妻が夫から最も子育てを支援されていると感じる瞬間は、おむつを換えてもらったり、お皿を洗ってもらったりした場合ではなく、「あなたはよくやっている」と言われた時だという調査もあり、結局は人間関係の問題である。個が自立した上で互いに信頼しサポートしていけるようなコミュニケーションを引き出す教育やメディアづくりに力点を置くべきである。

○ 自分自身は、家事・育児はとても楽しいものであって、それを夫にもやらせてあげる、というスタンスで夫婦間の分担を進めてきた。分担のやり方も多様であると思う。少子化の直接の原因は未婚率の上昇であるが、男女間の役割分業に関する男性の意識が変われば、結婚に踏み切る層も増えるのではないか。

○ 一見男女が対等に見える産婦人科医の世界でも、勤務医である女性の産婦人科医を対象にしたアンケートを行ったところ、結婚・出産・子育てが女性のネックになっていることがはっきりと結果に現れた。自分自身の経験からも、女性は自分の方が子育ての負担が重いと感じている一方で、男性は均等に分担していると思っていたりする。家事や子育てに関する意識はいつも女性の側の意識が取り上げられるが、男性の意識に関する調査などで男性の意識が分かれば参考になると思う。また、結婚をめぐる状況ということの中には、女性だけの問題ではなく男性も含めていろいろな仕事環境の問題があるのではないか。

○ 少子化の問題では子どもの数という量的な面ばかりがとりざたされるが、どのような子どもが育つかという質的な面も劣らず重要である。男性の育児参加は、時間的には、企業や働き方そのものが変わらない限り、一個人のみが変わることは現状ではリスクが大きすぎる。よって、男女の育児分担における当面の現実的な対応としては、男性が質の面でより深く育児に関わるということしかできないのではないか。これでも教育という面では貢献となろう。

○ 自分は、実際に子どもをもってみて、そのことのよさを初めて知った。世間では育児を取り巻く環境についてマイナス面ばかりを強調する風潮があり、確かに経済面では事実であるが、子どもをもつことそのものの良い面を、まだ子どもをもつことのイメージを持っていない人々にもっとアピールすることが必要。案外イメージの力が大きいものである。

○ 結婚に関しては、メーカーを例にとると、男性は工場に、女性はオフィスにという働き方があるため「男女のふれあう機会」が人為的に減じられていたのを、地域の世話好きな方が男女の仲を取り持つことで穴埋めされていたが、そういう方が少なくなってしまった。そういう機能を代替するものを見つける必要がある。

○ 行政が男女の出会いや交流の場をつくるための会を開催しても、参加者の関心や結婚に対する意識がばらばらで、会として成り立ちにくく、会の開催自体あまり要望されていないと感じる。また、地方では、旧来のままの男女の役割分業が家庭に持ち込まれ易いことや、長男の親の面倒をみることを恐れて、若い女性が長男との結婚をいやがる一方、長男以外の男性は、都会に出てしまって地元には残っていないという状況になっている。

○ 自分の夫は、家事や近所づきあいも、妻である自分以上に熱心にやっている。男性の意識といっても多様化しており、ひとくくりにはできないのではないか。

○ 年輩の男性からは、男女共同参画が実現すれば女性が子どもを生むというのは当たっておらず、現在の少子化は、若い女性がそれほどの自立志向はないまま単にぜいたくになった結果ではないか、という指摘を受ける。ある程度当たっているとは思うが、物質的なぜいたく以外に若い女性が求めるものがないという状況も問題である。ある程度物質的な豊かさを経験すれば、人間は社会的責任を引き受けることを望むのではないか。各国の比較調査では、日本の女性は自己評価が低く、自分の職業を問われて、専業主婦であると堂々と答える女性が多いという結果が出ている。これが、家庭の中で家事・育児を女性が一手に引き受け、「自分がいないと何もできない」という自己満足を得ようとする結果に結びついているのではないか。専業主婦のエネルギーを社会に向けていくことが必要である。

(3)最後に、事務局より、第2回家庭に夢を分科会については、平成10年10月2日(金)午後の開催を予定している旨発言があり、閉会した。

(了)