4.討議の概要
会議においては、分科会主査起案による「働き方分科会報告書(案)」(以下「報告書案」という。)について討議を行った。(報告書案の構成は別紙のとおり。)
討議の概要は以下のとおりである。
◆はじめに
◆1 少子化はなぜ問題か。
○ 政府及び雇用主をはじめとする関係各方面の、本報告書記載事項を実行する責任や、各種制度改革に向けての実行プログラム策定の必要性について記述すべき。
○ 企業にとっては、子ども持つ女性はコストの掛かる経済的に効率の悪い労働力との意識が強く、働き方の変革を企業側から求めるのは容易ではない。よって、改善策を、現行制度の枠内で可能なもの、現行制度を改正する必要があるもの、新たな法律等を作る必要があるものなどに分け、より現実的なものとし、また優先順位なども付けるべきではないか。
○ 労働形態の在り方は大きな社会・経済システムの中で決まるのが通例であり、報告書に盛り込む事項については、その実効性について留意すべきではないか。
○ 有識者会議でのとりまとめにおいては、実行プログラムを取り入れるべき。例えば、子育て支援策を実行している企業を年1回表彰しメディアにおいてプロモーションして一層の推進を図ることなどを実行計画として取り入れるべき。
○ 有識者会議では、分科会の報告を実現する体制について是非検討すべき。
○ 報告書案の全体的なイメージとして、子どもを産むのが「しんどい」という視点が強く出ている。確かに、しんどいというのも事実だが、喜びや楽しみがあるのも事実である。従って、喜びや楽しみをより多くの人が味わえるよう社会全体でサポートするという視点を盛り込むべき。
○ 欧州の研究者などは、少子化は女性のライフスタイルが決定した一つの結果であるとの分析をしており、少子化は必ずしも人々が希望した結果ではないとの表現では少し言葉が足りないのではないか。
○ 少子化の背景としては、男女の固定的役割分担意識が長期間あったことで、家族や結婚、進学、就職における性差別や行政の子育て支援策の遅れにつながったことがあると考える。男女共同参画の視点について、より詳細に触れるべき。
○ 男女共同参画の視点については、女性が仕事をして子育てもするという女性主体の視点だけではなく、男性も働き方を含め生活の在り方を変えていくべきとの表現を強調すべき。
○ 少子化の影響に関して、子どもを通じてしか自己実現できないと思い詰めた専業主婦の母親が、子育ての成功に固執する余り、育児ノイローゼに陥ったり、子どもを虐待したり、また、子どもを受験戦争に駆り立てることがあるという弊害も指摘されている、との表現を記述すべき。
○ 育児ノイローゼや受験競争の問題は専業主婦の場合に限ったことではないので、限定した書き方は避けるべき。
◆2 少子化の要因と日本の働き方の関係
○ 税制や社会保険などの諸制度が配偶者の就労収入の増加に抑制的に機能する場合があるが、就労収入の増加を抑制したい主婦が、パートや派遣社員として企業に安い労働力を提供することとなり、企業の論理に好都合となっており、その結果配偶者の就労収入の増加に抑制的に機能する傾向のある制度の改正を妨げていることを表現すべき。
その意味で、派遣業種の限定を撤廃するという派遣業法の改正は、企業がアウトソーシングのために派遣社員を一般社員に代替させる傾向を促進するものであり問題がある。
○ 派遣社員制度については、収入抑制のみが目的の制度ではない。派遣業種の限定撤廃は、専門的職能を生かそうとする者にとってはむしろ利点があるはず。
○ 情報ネットワーク化の進展などにより、今後は生活を中心に仕事を組み立てられるようになっていくとの可能性について記述するべき。
○ 農村においては、3世代同居が普通であり、家事・育児はもちろん介護に対する社会的支援が非常に重要。
○ 農村女性の農業経営参画の促進や自立支援を推進し、過重な負担があり、ゆとりが持てない状況を改善すべきである旨を明記すべき。
◆3 少子化への対応としての働き方の見直し
◆(1)男女の性別役割分業を前提とした職場優先の企業風土の見直し
○ 企業の健康保険組合の施設等、被扶養者でない家族の利用を排除する福利厚生制度や扶養家族手当等は、結果的に被扶養の配偶者の非就労を奨励するものとなっており、廃止すべき。
○ 男女の固定的な役割分担だけで制度を決めているということも広義ではセクシャルハラスメントに該当するという考え方の下、固定的な役割分担に基づいている制度や内助の功付きの男性だけを優遇しているような制度を持つ企業への是正措置を国が行うべき。また、ジェンダー・バイアスな言葉を使用した制度への規制など、徹底した男女の役割分担意識の改革が必要ではないか。
○ シングルマザーへの支援を充実すべき。欧米に比べシングルマザーの割合が格段に低いのは、日本社会の男女差別意識が大きな原因となっているのではないか。
○ 男女の性別役割分業は根強く、企業意識が変化するには時間がかかる。半ば強制的に行政サイドから企業に目標を与えることが必要。例えば、上場企業に対し、管理職や専門職に一定数の女性を任用すべきとの基準を設定し、実行できない企業には、税負担等のペナルティーを課すことも考えてはどうか。
○ 企業風土の変革を企業の側から求めるよりは、教育で男女共同参画や働き方の見直し、家庭を第一にする意識等を教えることにより、これから企業に勤めることになる者の意識を変革し、企業戦士とならないようにすることが重要。
○ 男性が基幹労働力であり女性がその周辺労働力となってしまっている現状の就業形態への警告等も触れるべき。
◆(2)職場における仕事と育児の両立支援の取組
○ 企業においては、リストラによる人員削減の一方で仕事量は増えているのが現実であり、その中で残業時間の削減について謳っても、結局はサービス残業等実際は残業をしているのに対外的にはしていないという状況が増加することになりかねない。いわゆる36協定も現実にはそのように機能してしまっており、かえって労働者の権利を侵害していることになる。実質的な残業時間減には、罰則を設けたり、労働基準監督署等が頻繁に企業に立ち入る等サービス残業増加を阻止する新たな措置が不可欠であり、その手当てもなされないで残業時間の形式的削減だけを推進するのは問題である。
○ 残業の縮減については、企業経営者に、残業なしで事業の遂行は可能であることを意識付けすべき。
○ 残業を減らすためには、残業することが労働者はもちろん企業にとってもマイナスになるようにすべき。そのため、残業をさせると企業は残業代を払うだけでなく、残業時間に応じた税金を国に納めなければならないとする残業税を設けたらどうか。あるいは、残業超過へのインセンティブになっている残業時の割増賃金について、多様な働き方を考慮し残業代のうち正規の給与分は確保しつつ、割増分への課税をするという方策は取れないか。その際の税収は、育児休業中の所得保障にあてる目的税とすべき。
○ 仕事をしたい個人を、残業などが好ましくないといった理由で、社会が仕事をさせないということは相当の根拠がなければ不可能。独身者や若い人など、短期間に集中的に働いて余暇を充実させたいという考えを持つ人もおり、そのために仕事と子育てを両立するため短時間で働く人が助かっているという面もあるのではないか。
働き方の見直しに当たっては、子育てと仕事を両立させる人の働き方に合わせ一律に短時間勤務を強制させるという方法ではなく、多様な働き方をいかに共存させるかとの視点で検討すべきではないか。
○ 女性の深夜労働禁止が撤廃されるが、育児休業法上の学齢前の子を持つ親への深夜労働免除が、その家庭に16歳以上の者がいる場合は適用除外になってしまうことの問題点についても言及すべき。
○ 子育て支援のためだけではなく、介護やキャリアアップのための時間捻出等も含め、全体としての総労働時間の短縮が必要。そのためには、福利厚生制度におけるカフェテリア方式も方法の1つとして推進すべき。また、深夜労働への規制が必要。グローバライゼーション等により深夜業務が必要だとしても、深夜業務に対応した保育サービスを昼間並みの質で求めることは今後も不可能であり、深夜労働の解禁は結果的に少子化に拍車を掛けるのではないか。
○ 深夜労働についてはそれを全面的に規制すべきではなく、子どもを持っている人が昼間働き、持っていない人が深夜働くというような分業を可能とするような賃金体系、就業体系を検討すべき。
○ 企業と個人が、働く時間と場所の設計を正社員だけでなく、パート就労者や残業の削減による余剰業務のアウトソーシングの対象である在宅ワーカーまで含めてより良い働き方を追求すべき。深夜勤務や土・日曜日だけ就労する者がいることは当然のこととしてその働き方を考えるべき。
○ 地域の中で仕事を起こし、そこに根ざして労働と生活とが切り離されないような生き方をする人が、現在の2倍ぐらいに増えるような社会を目指すべきとのメッセージを盛り込んではどうか。
○ 育児休業取得者を新たな部署へ配置転換することには反対。子育てをしながらキャリアを追求しようとする女性は、スペシャリストとして専門知識等で存在価値を高め企業における地位を築くことにより、育児休業取得後も企業における居場所を確保しようとする者が多い。そのような者にとっては、育児休業後の新部署への異動は自己のキャリアを中断するとの不安が強い。本人が希望しない限り、原職への復帰を義務づけるべき。
○ 育児休業後の原職復帰については、独身者や出産未経験者では原職復帰を望む割合が高いのに対し、育児休業中の者や育児休業終了後の者は、原職復帰後の仕事と育児の両立を非常に難しく感じ退職する者もおり、バックオフィスを望む声が大きい。対策として原職復帰後の自分の生活をどうデザインするかという点について、女性でいえば26〜29歳の内に事前に考えさせる機会を与えるべき。
○ 育児休業取得者の新たな部署へ配置転換は、フルタイム等で完全な仕事をするには厳しい状況にある育児休業後の数年間は別部署に異動するとの意であり、その期間終了後は、希望に応じ原職復帰できるものとすることが前提。
○ 現状において育児時間を有給とする企業が3割存在する中で、短時間勤務制度の促進・定着のために短時間勤務時の月額給与引き下げをあえて推進する必要があるのか。短時間勤務において短縮分の給与を無給にしなくても職場の理解が得られれば、それに越したことはない。
○ 短時間勤務者の月額給与引き下げについては、むしろ給与を下げてもらった方が短時間勤務を選択した者が同僚の嫉妬等に晒されることもなく気が楽との当事者の意見もある。
○ 短時間勤務の際の給与の在り方や在宅ワークに対する報酬などについては、同一価値労働・同一賃金の観点から考えるべき。
○ 同一価値労働・同一賃金との原則に立ち、結婚や子の有無という個人的な選択により賃金が変わることはおかしい。現存の各種手当や社宅等のフリンジベネフィットを廃止すべき。
○ 雇用と賃金の問題は企業によって考え方が異なってしかるべきだが、働く上での生活支援である福利厚生の充実は共通性があるはず。企業における福利厚生を現在の世帯単位のものから個人単位のものへとシフトしていくべき。そのことで性別に関係なく生活支援が得られる。
○ 賃金や福利厚生上の待遇の格差是正については、パートタイムとフルタイムのみでなく、派遣労働者も含めるべき。
○ 現行育児休業法上の短時間勤務制度、フレックスタイム制等の選択制は廃止するべきではなく、現行の選択制は残した上で、短時間勤務制度については義務化とするものにすべき。
○ パートタイム労働者の育児休業取得を促進するため、現行の育児休業法で「期間を定めて雇用される者」を対象外とする部分を削除し、このような者も育児休業を取得できるようにすることが必要。
また、育児休業法における短時間勤務やフレックスタイムの選択制度は、1歳未満の子を養育する者が対象となっているが、同様の育児は少なくとも小学校就学までは続く。したがって、選択制度の対象を小学校就学前まで延長するとともに、短時間勤務制は義務化すべき。また、短時間勤務取得者に対する賃金補償より重要なのは、キャリアの切断にならないことである。
◆(3)出産・育児を期に退職しても過度に不利になることなく再就業できるような労働市場の実現
◆(4)職場における取組を支える社会の仕組みづくり
○ 「第三者機関」には、働く者の健康、特に母性に関する産業保健に関する信頼できる調査及びデータが集中するようにすべき。現状では、産業保健に関する調査等は、男性が長期に企業で働くことについてのものに偏っており、女性が企業で働きながら出産・子育てをする際の健康管理やそのような女性が高齢者になった時の健康への影響等に関する調査・データが不足している。
○ 働き方の見直しに着手する企業の人事部門は人手が足らず現状の仕事で手一杯。例えば、旧姓使用が認められない理由として、婚姻により健康保険証等は新姓を使わねばならず、旧姓も使用ということでは事務負担が増え非効率となることから拒否される場合があるという実態がある。働き方の見直しを求めるのであれば、人口減少社会に向けた雇用環境の整備を担当する専門官を設けた企業に公的な人的または金銭的支援をするなど、企業の人事部門の体制整備に向けた方策も必要。
○ 環境問題におけるエコマークのように、一定の基準の下に男女共同参画を推進している企業に「Family Friendly Company」とでもいうようなマークを与え、当該企業の商品等への使用を認めるといったことも検討すべき。
○ 現状では0歳児の保育所入所が4月しかできないなど、保育所の入所基準の弾力化が必要。また、入所数ヶ月は「慣らし保育」のため午後2時か3時には子を迎えに行かなければならず、時間単位での休暇を認めていない会社では1日休暇を取って子どもを迎えに行かざるを得ない。このような利便性に欠ける制度は改めるべき。また、現状では、1日または半日単位となっている有給休暇を時間単位で取得できるようにすべき。
○ 自治体の財政難により保育所の拡充がままならず全体の受入枠が限られた中で、入所基準を弾力化にすれば、かえってフルタイム勤務者の子の入所が困難になる可能性がある。
○ 安心して働くためには、子どもを預かる場所が単なる子守ではなく、教育まで含めて担うべきであり、保育園の質の向上が必要。
○ 企業を退職した、特に60〜65歳の男性は現状では年金の一部支給を補完する職を求めており、一方その妻は子育てのいわばプロが多い。そのような夫婦の参加により、近隣の子どもを夫婦で預かるという、保育ママに代わる高齢者といった保育サービスも実施すべきではないか。
◆(5)その他
○ 子育て期にある親ではなく、子ども自身に対してクーポンやバウチャーなどを配布し、様々な育児メニューの中から必要なものを選択するという制度も検討すべき。
○ 子育て期の人を、高齢者や障害者等と同様に社会的弱者として捉え、社会全体のバリアフリー化を行政が進めるべき。
○ 子宮内膜症や婦人科系の病気等、女性の健康管理について、企業の健康保険の適用範囲を拡げるべき。不妊治療への医療保険適用や夫を含めて不妊治療のための休暇制度を設けるべき。
◆その他の意見
○ 男女共同参画の視点からの教育、男性が家事や子育てに参加することをマイナスと意識しないようにする教育の充実について記述すべき。
○ 現状の教育の荒廃についても、盛り込むべき。
子を持つことを躊躇する理由に、教育の荒廃がある。非行に走ったり、援助交際をしたり等街角で中高生の姿を見ると、率直な感想として、あのような子どもなら欲しくないと感じる。また、就労しながら子育てをする場合、専業主婦に比べ、子どもに手をかけられない。そのような状況で子どもが不良化などせず育つか不安。
○ 「働き方」を考えるバックグラウンドとして、教育についても盛り込むべきではないか。この際の教育には、小学校から大学への子どもの教育、子育てに対して社会人としてどう考えていくかという企業人及び専業主婦を含め親の教育、さらに、DINKSや独身者も含め、将来今の子どもに世話になる可能性を考慮した上でどのように社会全体で子育てをしていくかという意識付けといった3つの意味がある。現在の子どもたちが将来の日本を担うといった認識が必要。
○ 「楽をしたい」「得をしたい」と考える若者が増える教育の在り方が問題。男女が成熟すれば、自然に特定の異性に惹かれ合い家庭を作るという当然のことを再認識できるような教育にすべき。
○ 「働き方」そのものではなく、その周辺の事項に関しても報告書案に盛り込めないのか。「働き方」の検討だけでは、少子化対策は不十分である。例えば、電化製品の発達等により家事が楽になり、その分のエネルギーが子に向けられ、過保護・過干渉により、自分の生き方さえ決められない子が増えている。一方で、女性の再就職支援が不十分であり、公民館や女性センター等は、趣味の提供など女性を家庭に戻す内容ばかりで子どもを通じてしか自己実現ができないような専業主婦を助長する結果となっている。また、国の審議会等では70代の主に男性が現在の児童環境の方針を決定し、内容が非現実的となっている。本分科会では、女性の能力をすべて100%として議論をしているが、実際には、育児休業中の者と退職後5年たった者とではその仕事の能力が異なるし、子の年齢により病気になる頻度も異なるなど女性の能力はその状況により異なり、それぞれの状況に応じた働き方まで掘り下げなければ実効性はないのではないか。労働省ファミリーサポートセンターや厚生省のトワイライトレディ等、基本的に保育のプロではない者の善意に支えられ、子を預けることの安全性が不十分で、また、実際の利用頻度が疑わしいものに予算をかけるよりは、保育のプロがいる保育所等に予算を使うべきである。また、子育てが子を産んで突然始まるということがないようにするための中学・高校における保育教育の必要性等教育の問題や不妊治療、妊婦検診等に関しても論ずべきである。
○ 分科会を二つに分け、それぞれ中心的な検討課題を分担して討議してきているので、働き方分科会の報告としては自ずから働き方中心ということでよいのではないか。
5.以上の討議を受けて、報告書案に対する追加意見がある場合には、10月26日(月)までに事務局に送付することとし、本討議での意見及び追加意見を踏まえ、主査一任により報告書を取りまとめることとなった。
(以上)