少子化への対応を考える有識者会議・第3回家庭に夢を分科会議事要旨

1.日時及び場所
平成10年10月23日(金) 12:30〜15:30
通商産業省別館第939号会議室

2.出席者(敬称略)
板本、井上、岩男、薄井、落合、川村、杉山、鈴木(光)、詫摩、戸田、西村、 根本、萩原、前田、松尾、宮田、椋野、森、山口
(この他、少子化への対応を考える有識者会議の田尻委員が出席。)

3.議題
分科会報告書案に関する討議

4.討議の概要
(1)開会後、分科会主査起案による「家庭に夢を分科会報告書(案)」(以下「報告書案」という。)のうち、「はじめに」「1.男女の役割分業の見直しと育児をめぐる国民意識について」「2.結婚をめぐる状況への対応について」「3.地域全体での子育て支援や「住」の在り方とまちづくりについて」について、以下のような討議を行った。

○ 中高校生によるベビーシッターは、事故等が起きたときの対応に不安があり、推奨すべきものではない。

○ 中高校生にベビーシッターを頼むか否かは、それぞれの親が判断すればよいことであって、中高校生のベビーシッターに子どもを預けることも、選択肢としてあって良いのではないか。

○ 若い世代が小さい子どもと接して対価を得ることは貴重な経験であるから、学校の空きスペースを利用して保育所を作り、専門家の監督の下に生徒が子どもの面倒を見るというような段階を踏んではどうか。

○ 報告書案の中の提案について、実現可能なものの優先順位をつけて検討していくということも必要ではないか。家庭内の家事や育児を自分の役割と認識していないために協力的でない男性も多いのではないか。母子健康手帳を妊婦手帳と子育て手帳に分けてはどうか。

○ 育児中の母親をサポートする相談機関には、子育ての経験者と併せて、専門的なカウンセラーも配置する必要がある。

○ 全般にもう少し具体的な記述としてはどうか。例えば、安心してベビーカーで外出できるようなまちづくりの具体例として、スウェーデンのようにベビーカーのままバスの乗り降りができるようにするとか、男性のトイレにもおむつ替えのスペースを設けるといったことを盛り込んではどうか。

○ 信頼感のある地域づくりのためには、親以外の地域の住民も、PTAに積極的に参加できるようにすることが必要ではないか。

○ 高校生の保育体験を始めとするボランティア活動を、学校の単位として認めたり、評価していくべきではないか。妊娠や出産に際して、男性が病院や保健所にもっと足を運び易くするような工夫が必要ではないか。

○ 母親学級や家庭教育学級が家庭の在り方や育児の意味について考える機会となるよう、その内容を見直す必要がある。女性センターや公民館の運営や企画を見直して、女性の起業家育成など、就業につながるものにしてほしい。

○ 母親学級の内容を見直し、一方的な指導ではなく双方向で相談ができるようにするとともに、産前・産後を含めた総合的な親になるための教育が望まれているのではないか。

○ 家事・育児の大切さ・楽しさを若い世代に伝えていく一環として、成人式のような場で啓発事業を行うということも考えられるのではないか。育児相談については、昼間働いている人も利用が可能となるように、夜間も対応できるような体制を作ってはどうか。また、まちづくりについては、子どもが安全に遊べる空間ということで、自然な空間を残していくこと、車の入るところと人が歩いたり集ったりする場を分離するというような試みを行ってはどうか。

○ アメリカやイギリスで行われているような、職場に子どもを連れていく日を設けてはどうか。

○ やはり期待すべきは次の世代であり、赤ん坊や家族とはどういうものであるかを自分たちで考え、見て、聞いて、取り組めるような形に是非教育を持っていったら良いのではないか。

○ 保育体験のボランティア活動を単位として認定することとすると、活動自体には関心がないのに、単位の取得や進学を目的としてボランティアを行う生徒が結構出てきてしまう。むしろ、保育体験を関連資格の取得に結びつけていく方が良いのではないか。

(2)次に、報告書案のうち、「4.保育等子育てサービスの在り方について」について、以下のような討議を行った。

○ 子育てサービスに関する情報が、役所の窓口から利用者側に十分に伝わっていない現状にあるので、手続きの簡略化とともに、窓口の担当者が、子育てサービスについてわかりやすく説明・紹介し、ライフデザインをサポートできるくらいの能力を持ってほしい。地方自治体ごとの子育てやさしさ指標のようなものを作って、子育て支援に対する取組み状況を公開し、相互に比較できるようにしてはどうか。

○ 働いている母親や、これから働こうとする母親に対し、どのようなサービスがどのような手続きで利用できるのか、カウンセリングができる職員を配置してほしい。公立保育園の民営化については、公立保育すべてを民営化するというような印象を与えないように、公立保育所と民間保育所の役割分担を進めるという形の記述にすべきである。

○ 無認可保育所に対しても補助を行うことによって、認可保育所との間の保育の質の平準化を図ることができるのではないか。

○ 認可外保育所だからといって、子どもが危険な状態で放置されたまま対策がとられないのはおかしい。

○ 地域のニーズをきめ細かく把握し、認可保育所の定員を増やすことによって待機児の解消を進めるべき。また、専業主婦も保育所を利用できるようにする必要がある。

○ 年金の第三号被保険者の問題などで専業主婦は優遇されているという議論があるが、一方では専業主婦は保育所が利用できず不利であり、不毛な議論である。親ではなく子ども一人一人に着目してサービスが受けられるような、バウチャー方式のような形も検討の必要があるのではないか。

○ 親のために保育サービスを考えるのではなく、子どものために考えるという姿勢が必要。保育所のみならず幼稚園でも子育て相談など多様な取組みが可能であり、それが読み込めるような記述とすべき。

○ インターネットを利用すれば離れた地域の人とも交流が可能であり、出会いのチャンスを増やすことができるのではないか。

○ 公務員の雇用制度の流動化が困難であるために弾力的なサービス提供や効率的な運営が難しくなっている現実がある。

○ 自治体が保育の質のチェックをするためには、直営の保育所を持っていることが必要。民間では提供しきれないサービスを公立保育所が行うべき。

○ 公立保育園の役割として、市民全員に対しサービスを行うという観点から、専業主婦に対するカウンセリングを積極的に実施している例もある。

○ 母子健康手帳に保育所の入園手続きの方法を載せるようにしてはどうか。

○ 保育の民営化を進める際には、基準の設定や監査の充実などにより、保育の質の担保・向上をしっかりと行う必要がある。

○ 自治体のみならず企業についても子育て支援の取組み状況に関する情報公開、評価を行って、ファミリー・フレンドリー・カンパニーのような認定基準を設けてはどうか。

(3)次に、報告書案のうち、「5.学歴偏重社会の見直しなど教育関係について」「6.子育てのための経済的負担軽減措置」「7.働き方の在り方その他検討を要する事項について」について、以下のような討議を行った。

○ 学歴偏重社会の見直しのためには、学校を卒業して企業に勤めるのみならず、多様な生き方があるということを教えてあげられる場が必要。生徒の親に限らず、社会的に様々な経験を持つ地域の人が、そういった授業や生き方を生徒に教えられれば素晴らしいのではないか。

○ 多様な経験を持った教員がいることが望ましく、教員採用の年齢制限を引き上げてはどうか。学校内部では、責任の所在がはっきりしないことも多く、オープンな情報公開が必要である。また、離婚したシングルマザーに対するサポートについても考えてほしい。不妊治療については、保険適用の検討や職場でのサポート、患者と医療の場をつなぐコーディネーターの養成が必要。

○ 助産婦に対し、出産準備教育ないし親になるための教育の追加トレーニングを行って、妊婦検診の際に、医療以外のサービスも盛り込むような工夫を行ってはどうか。

○ 自ら進んで育児や介護を行っている主婦については、その経験を生かして次の就業のステップとしていくような仕組みができないか。十分な情報がないまま、専業主婦と共働きの女性の間でどちらが得かという論争を行うのではなく、具体的な根拠に基づいて双方が対話を行うことが重要ではないか。

○ 年金の第三号被保険者や税金面における配偶者特別控除の扱い、子どもを持つ人と持たない人の公平の問題や、ピルの解禁については、様々な異なる意見や立場があり、それを考慮した記述とすべきではないか。

○ 予防接種については、利用者の利便を図るために、どの医療機関で受けても公費負担となるようにしてほしい。また、共働き家庭にとっては、現金での給付と比較すれば、むしろ物理的・時間的なサービス提供の方を優先させてほしい。

○ ひとり親家庭や養子を迎えている家庭など、多様な家庭の形のいずれにおいても子育てをする人が夢を持てるような支援が必要。共働きで一歳より上の子どもを養子に迎えるときにも育児休業が取れるようにすべき。保育に係る費用については、働くために必要な経費であり、保育料の税の控除を提案したい。

○ 大学について、年齢を問わず学びたいと思ったときに自由に勉強できる柔軟な仕組みが望ましいのではないか。また、現在の扶養控除では、子育てに係る費用をとてもまかないきれない。

○ 育児や家事は、共働きでもひとり親家庭であってもやっており、年金の第三号被保険者や税の配偶者控除制度は、ライフスタイルに対する中立性を欠いている。固定化した性別役割分業が現在の少子化のネックとなっていることを考えれば、段階的にでもこれを廃止するべきである。

○ 学校教育において、単位制や選択制をもっと活用し、意欲に応じて柔軟に学べるようにすべき。

○ 地域に密着した小児科のネットワークを支援する仕組みができると良いのではないか。

○ 学校だけですべてを解決していこうとするのは大変難しい。学校には、地域と連携、協力して子どもを育てていこうという姿勢を取ってほしい。

○ 小・中学生のうちから、社会の仕組みを教えるため、月に一回とか、親が自分の得意分野を教えるような、開かれた教育というのがあっても良いのではないか。また、第三号被保険者や配偶者控除・配偶者特別控除についてはすべて廃止し、育児や介護の負担に着目して支援を行うべき。

○ 不妊治療に対して保険給付が行われることの意義は大きいが、逆に歯止めのない治療に追い込まれる可能性がある。また、無認可保育園に対する支援は是非必要であるが、現在の認可保育園制度は、改良の余地はあるにせよ守っていくべきである。専業主婦と共働き女性の間の公平の問題を損得論で割り切るのは難しい。むしろ、子育てという大事なものを、母親が働いていてもいなくても評価していこうという方式で考えていった方が良いのではないか。

○ 結婚・出産後も働き続けている女性の実情を明らかにするための統計・調査研究の充実が必要である。

○ 学歴偏重社会の原因には価値観や人生観の問題もあり、一つに特定はできない。子どもが、人間関係づくりとか、人とかかわっていく部分に楽しさを見出すようにしていくことが必要。

○ 親の学校に対するニーズが、いい大学を出ていい会社に入ってというところから変わらなければ、学校が変わろうとしても限界があるのではないか。

○ ロールプレイングなどを利用して、若い世代が自分のライフデザインを考えるような教育をしてほしい。

○ 専業主婦に対する保護をなくす場合には、女性が男性と同等に働けるように、雇用機会均等法の充実・徹底と併せて行うことが必要。

○ 地域で子育てに対する支援を行いたいという意欲を持っている高齢者層と、支援を受けたいというニーズを持っている家庭との間の仲介役を行政が担うことによって、地域の中の子育て力を引き出していくべきではないか。

○ マル高神話が三歳児神話と同様に強くあり、35歳以上の女性を男性が敬遠する傾向がある。

○ 家庭の中に、なるべく多様な考え方を持ち込めば、子どもも勉強以外の選択肢があるということを学べるのであって、母親も外で働き家庭の中に多様性を持ち込むことによって、学歴偏重社会の解消にもわずかながらつながるのではないか。学校についても、様々なタイプのいろいろな経験を持った教員を採用することによって、均一の価値観を生徒に押し付けなくて済むようになるのではないか。

○ 豊かな社会的経験を持つ親による授業という提言があったが、一方では、子どもの内申書をあげたいといった理由で参加を希望する親が殺到するという扱いにくい問題もあることを考慮しておくべき。まず、助産婦の養成課程において、親になることの意味といったものも取り入れ、その知識を健診であるとか母親学級などで是非活用してはどうか。

○ 報告書の中の各提案の間に優先順位をつけるのは有識者会議の役割ではないか。

(4)以上の討議を受けて、報告書案に対する追加意見がある場合には、10月27日(火)までに事務局に送付することとし、本討議での意見及び追加意見を踏まえて、主査一任により報告書をとりまとめることとなった。

(以上)