少子化への対応を考える有識者会議
家庭に夢を分科会報告書
平成10年10月30日
少子化への対応を考える有識者会議
家庭に夢を分科会
家庭に夢を分科会報告書概要
少子化の最大の原因である晩婚化をもたらしているのは、さまざまな人生の選択肢が増えている中で、若い男女特に女性にとって結婚・出産・子育てに伴う負担感が大きく意識されていること、と考えられる。
現在の少子化傾向を緩和するためには、働き方や結婚後の生活・子育てについて、負担を軽減して夢多いものにしていくことが必要。
| 1.男女の役割分業の見直しと育児をめぐる国民意識について |
男性が女性とともに家事・育児を分担することが重要であり、このため、小中高生、若い夫婦、社会全体に対する男女共同参画の視点に立った教育・啓発を促進することが必要。
○子育ての大切さ・楽しさを次代を担う若い世代が家庭など様々な場で実感できることが必要。
○学校では、実体験に基づく教育に重点を、ボランティア活動の充実を。
○小中高校生が保育所・幼稚園で子どもと触れ合う機会を。
○幼少時から家庭で男女を問わず家事・育児への共同参画を、学校教育で積極的な男女共同参画に関する教育の推進を。
○「父子手帳」の配布や、男性に産休や育児休業の取得の義務づけを。
○子育ての社会的責任や素晴らしさ・楽しさの社会全体への訴えかけを。
○職場に子どもを連れていく日を設けるといった取組みにより、子育てを社会全体で担うという国民的合意の確立や家族のきずなの大切さに対する認識の深化を。
○三歳児神話の払拭、子どもの育ち方は多様であることの認識の普及 等。
結婚後の役割分担等についての男女間の認識の違いがあり、女性が結婚後の家事・育児の負担が自分に偏りがちと感じていることを軽減していくことなどが必要。
○様々なパートナーシップの形が受け入れられるようにすることが必要。
○夫婦で揃って外出できるための地域で子どもを預かる場の設置を 等。
| 3.地域全体での子育て支援や、「住」の在り方とまちづくりについて |
地域の持つ子育ての力を引き出す工夫、多世代の交流や子育て世代等に配慮した街づくりが必要。
○子育てサークルへの活動場所の提供等を、NPOの取組への支援を。
○子育てに関する学級について、父親や祖父母の参加を、休日・夜間開催を。
○PTAや自治会などが互いに協力して地域活動を。PTAに親以外の地域住民もより積極的な参加を。
○子育て経験を持つ女性や高齢者を活用したベビーシッターの普及を。
○育児中の親が気軽にまた夜間でも利用できる電話などによる相談体制の整備を。
○男性トイレにもおむつ替えのスペースを設けるなど安心して子連れで外出できる配慮の行き届いたまちづくりを 等。
多様な保育サービス、情報公開を通じた良質なサービスの効率的提供、子どもの立場に立った保育の質の確保が必要。
○保育所の経費・費用負担・利用や待機状況に関する情報公開を。
○各自治体における子育て支援の取組み状況を指数化し、市町村別のベスト30・ワースト30の公表を。
○都市部での低年齢児保育の拡大や延長保育の実施を。
○母親の有職無職を問わず育児相談等の場として保育所の活用を。
○保育者に対する教育を、保育の質の評価の研究や情報提供を。
○放課後児童クラブの充実を 等。
学歴偏重の風潮は、ゆとりの喪失と親の経済的負担の増加により、子どもの数を抑制する一因。この改善のため、教育行政での取組みや多様な価値観の形成が必要。
○身体を使った体験を通じての教育を積極的に学校教育に組み入れることが必要。
○奨学金の抜本的拡充、奨学金の要件から親の経済状況を除外、進学せずに技能習得等を選択した者に対しても資金貸付を 等。
社会保障、税・社会保険料において負担のバランスを如何にとるか。
○妊娠・出産・育児休業・保育に関する経済的負担の軽減を。
○年金の三号被保険者や税の配偶者控除の在り方の検討を。
○税の控除全体を見直して子の扶養控除の大幅引き上げを 等。
○勤務時間の差に応ずる以外は待遇差のないパートタイム労働の形態の普及を。
○長い職業人生の中で1年間くらい自由に使える長期休暇を。
○少子化対策の実施の際に不妊等の人への配慮を。
○性別役割分業の見直しや家庭と仕事の両立支援に積極的な職場に対し、Family Friendly Companyといった公認マークの付与を 等。
家庭に夢を分科会報告書
| 平成10年10月30日 |
| 少子化への対応を考える有識者会議 |
| 家庭に夢を分科会 |
私達「家庭に夢を分科会」は、「家庭に夢を持てるように」をテーマに、「少子化への対応を考える有識者会議」から示された検討項目に沿って、長時間にわたり参加者が活発な議論を行った。
家庭に夢を持てるようにすることは、家庭・家族が時間的にも空間的にもゆとりをもって、互いを大切にし合える豊かな人間関係をつくって、これを維持することができる、という社会を築いていくことであろう。
私達は、このような観点から議論を重ねたが、その過程においては、提案の幅を広げることを優先し、個々に詰めた検討や意見の集約は図ってはいない。提案は多岐にわたり、少子化対策としての効果も一様ではないが、一方では、少子化への対応のみならず、急激に進行する高齢化への対応としても望ましいと考えられる提案も多く、さらには性別や年齢を問わず国民の各層が我が国をより住み易いところとして実感できるような社会をつくっていく上で資するところが多いものと考えている。今後、これらの提言を素材にして「有識者会議」で議論が深められることを期待する。また、「有識者会議」での議論と並行して、これらの提言の実効性について事前評価できるような工夫が望まれる。さらに、政府においては、少子化対策の重要性に鑑み、可能なものから速やかに実現できるよう検討を開始することを強く希望する。
はじめに
結婚をためらう、あるいは、結婚しても子どもを産み育てることを躊躇する、あるいは、子どもを産むにしても一人又は二人とするなど、若い世代が子どもを産まなくなってきている。現在、合計特殊出生率が1.39と低下してきているが、このような結果をもたらしている最大の原因は、結婚の時期が遅れていることであると分析されている。
若い世代のうち、「一生結婚するつもりはない」とする人は5%前後に止まっており、「いずれ結婚するつもり」という人は、若干減少傾向にあるものの、9割前後と圧倒的多数である。つまり、若い世代の多くは条件さえ整えば結婚したいのだ、と言える。にもかかわらず結婚に結びつかないのは、社会が豊かになり、さまざまな人生の選択肢が増えている中で、若い男女特に女性にとって、結婚・出産・子育てに伴う負担感が大きく意識されるようになっているから、と考えられる。
もちろん、好きな相手と共に暮らして子どもを産み育てることは、たとえ苦労も伴うものであっても、人生のよろこびであり、生きがいである。しかし、同時に、結婚して子どもができれば、仕事をもう一つの生きがいであると思っている女性にとっても、仕事を続けることに相当な困難が伴う。一人目はもちろん、二人目三人目となれば尚更だ。一旦退職して子育てが終わったら再就職するという途もあるが、その場合には、それまでの経験が役に立たなくなったり、仕事の選択の幅が狭まったり、賃金も安くなりがちだ。子育てには、お金も掛かるし、時間もとられるし、行動の自由も制約される。共働きであってもなくても、家庭内では、男性の多くは育児や家事を自分の仕事ではないと考えているので協力的でないか、あるいは協力する意志があっても今の働き方が変わらなければ時間的に不可能だ。結局、家庭内の仕事は自分に偏りがちだ、と感じる女性が多い。女性が担っている苦労に対して、夫や周囲からの評価も不十分だ。また、近隣社会においても、近所のおじさんやおばさんが子ども同士の遊ぶ姿を見守るということや、子連れの親に手を貸したり相談にのったりするということは、ほとんどなくなってきている。子育て中の若い夫婦とりわけ妻にとって、子育ての負担は過重となりがちだ。
結婚後の仕事・生活・子育てに関する負担は重そうだと感じれば感じるほど、結婚をためらい、あるいは、条件の合う結婚相手を見つけにくくなり、また、結婚しても子どもを産むことをためらうことになる。働き方や結婚後の生活・子育てについて、その負担を軽減し、夢多いものにしていくことが、現在の少子化傾向を緩和するために必要となっている。働き方の見直しについてはもう一つの分科会で論議されているので、私達は、家庭そして学校や地域の在り方に論議の重点を置いた。家庭を持ち子どもを産みたいと思っている若い人がその望む途を選べるよう、以下のような環境整備を思い切って進めていく必要がある。
1.男女の役割分業の見直しと育児をめぐる国民意識について
家庭内においては、男女の固定的な役割分担を見直し、男性が家庭により労力を傾け、夫婦が協力して家事を含めた家庭の仕事を、父母が協力して子育てを、担うことが望まれる。家事・育児への共同参画を進めるためには、夫婦双方が家事や子育てに関して一定の知識や体験を持っていることが望ましい。
また、幼い子どもに触れ合ったことがないために子育ての負担を実際以上に過重と想像しているならば、それは、人生の選択の幅を狭める結果をもたらす。
したがって、小中高生の時期やはじめての子どもができた時期における教育・啓発や体験が重要である。
これらについて、当分科会において提案された意見は次のとおりである。
[家事・育児に関する若い世代への教育]
- 子が生まれれば、親から子へ、子から孫へという時の流れの中に自分がいることを実感でき、子と共に生きることで、親として生きる勇気が湧き生活に張りができ、子が成長して昔を振り返れば、何ものにも替えられぬ経験であったと思える。子育てには苦労も多いが、子育ては楽しい「夢」でもある。様々な形はあろうが、親しい人と生活しながら子を産み育てていくことは、人間が生きていく上の基本的な営みである。その大切さ・楽しさを、次代を担う若い世代が、家庭をはじめとする様々な場で実感できることが必要である。なお、成人式をそのための機会として活用することも考えられないか。
- 学校教育においては、実体験に基づいた教育に重点を置くことや、家庭科教育のより一層の活用、ボランティア活動の充実等を図ることが必要ではないか。
- また、小・中・高校生が保育所・幼稚園で子どもと触れ合う機会を設けたり、学校の空きスペースを利用して保育所を学校に併設し、その場で児童・生徒によるボランティア活動を実施する、といった若い世代が子どもと触れ合う機会を設ける試みをしてはどうか。この場合、高校では保育体験を単位認定できる制度となっているのでそれを活用したり、保育体験を関連する資格取得に結びつけていくことも考えてはどうか。
- 若い世代が保育について学び親しむ機会を充実するため、高校生・大学生などが必要な研修を受けるなどして、働く体験やボランティア体験の一つとしてベビーシッターを行えるような仕組みを考えてはどうか。
[性別役割分業にとらわれない教育の在り方]
- 男女が共に社会的責任と家庭責任を分かち合うためには、個々人の意識改革と努力が不可欠であり、とりわけ、幼少時から、男女の固定的な役割を押し付けない教育が基礎となるのではないか。
- 具体的には、家庭において、男女を問わず家事・育児に参加させるとともに、学校教育において積極的に男女共同参画に関する教育を行うことが考えられるのではないか。また、ジェンダー(社会的文化的性別)に関する教育についての副読本の作成や男女役割分業の見直しについて、教員への研修も必要ではないか。
- 男女が互いに自立した個として互いに支援し合う豊かな人間関係を築くために、教育やメディアを通じた働き掛けも必要ではないか。
[男性の育児・家事参加の推進]
- 男性の育児・家事参加を進めるためには、子育てを男女の問題としてとらえ、男性に対して子育てや家事の喜びや楽しさを実感できるような環境整備を行うことが必要ではないか。
- 具体的方策としては、様々なメディアを利用して男性の意識変革を促すとともに、男性に対する産休や育児休業の取得の義務づけ、男性の意識に関する調査・研究の実施などが考えられるのではないか。
- また、現在、妊婦に対しては母子健康手帳が配布されているが、これに対応するような「父子手帳」を配布するとか、母子健康手帳を妊婦手帳と子育て手帳に分け、後者については夫婦で利用できるような内容にする、といった工夫を行ってはどうか。
- 妻の妊娠中の時期から夫が両親学級に参加したり、出産時に夫が立会ったりできるように、夫が病院や保健所等に足を運び易くする配慮が必要ではないか。
- いずれにせよ、時間的に父親が家事・子育てに携わることができるよう、働き方の改革が不可欠である。
[社会全体としての子育て意識]
- 子育ては、次の世代を育てる社会の基本的な営みであり、その社会的責任とともに素晴しさ・楽しさを改めて社会全体に訴えていくことが必要ではないか。
また、今後は環境汚染や人心の荒廃が進んで世の中は悪くなる一方だというような将来に対する悲観論を強調する風潮も少子化の一因と言われており、これも改められるべきではないか。
- 子どもは社会全体の財産であって、子育ては社会全体で共に担うという国民的合意の確立が必要ではないか。例えば、親の職場に子どもを連れていく日を設けるといった取組みによって、子どもの存在や家族のきずなの大切さに対する社会の認識が深まるのではないか。
- 子が三歳までは家で母親が面倒を見るべきという三歳児神話は根拠がなく、払拭されるべきである。また、子どもの育ち方は個々の子どもごとに違うものであって長い目で見る必要があるという認識を広める必要がある。
- 少子化がこのまま進んだ場合に将来に及ぼす影響は深刻であり、少子化への対応に取り組む必要性が高いことについて、政策決定者に対して十分な理解を促すとともに、国・地方のいずれにおいても少子化対策への重点的な配分が行われるよう働き掛けていく必要があるのではないか。「少子化問題対策本部(仮称)」を内閣の下に設け、総合的な取組みを進めることも検討されるべきではないか。
2.結婚をめぐる状況への対応について
独身の理由として、「適当な相手にめぐり会わない」ことを掲げる人が独身者のほぼ半数に上っている(複数回答)。仕事や休暇などに関して多様な選択が可能となっている中、結婚後の生活スタイルや役割分担において男女が相手に求めるものが食い違っている、と考えられる。また、結婚することによって自由や気楽さを失いたくないと考える独身者は女性の方に多いが、これは、子育てを含む結婚後の生活についての負担が女性に偏りがちと感じていることの裏返しと思われる。
さらに、置かれた状況や地域によっては、出会いの場が少なくなっていることもあると考えられる。
結婚をめぐるこのような状況に関しては、夫婦双方の仕事と家庭の時間配分や夫婦の子育ての協力体制など結婚後の生活における男女の役割の見直しを、男女共同参画の視点から進めることが重要と考えられるが、この他、当分科会において提案された意見は次のとおりである。
- それぞれの生き方にあった多様なパートナーシップの形があるという認識を社会的に広く受け入れられるようにしていくとともに、戸籍制度の見直し、同棲に対する社会的偏見の除去などを通じて、様々なパートナーシップの形がとれるようにする必要があるのではないか。
- これまでの親子関係を中心とした家庭の在り方を改め、夫婦関係がもっと家庭の中心となるようにすることが重要ではないか。そのためには、意識の改革も重要であるが、例えば、荒川区で最近スタートした、週末の夜に夫婦が揃って外出できるように地域で子どもを預かる場をつくったりする工夫が望まれる。
- ある程度の年齢に達した子どもは親元から巣立っていくことが自然であるとの認識が広がって親子双方とりわけ親の意識が変わらないと、親の子育て負担が過重なものとなってしまうし、子ども自身の結婚も遅れてしまうのではないか。
- これまで、家庭の中で家事・育児にのみ向けられる傾向のあった専業主婦のエネルギーを社会に向けていく方策が必要ではないか。
- 出会いの場がないような若い男女のために、出会いの場をつくったり、仲を取り持つ役割の担い手が必要となっているのではないか。その際、インターネットを活用した出会いの場も考えられるのではないか。
- 高齢出産のリスクを強調しすぎると30歳台後半の女性の結婚の支障となってしまうのではないか。
- 農村の結婚難の問題について、調査・研究が必要ではないか。
3.地域全体での子育て支援や、「住」の在り方とまちづくりについて
子育てについて、かつては近隣の人や祖父母の果たす役割は大きかった。現状では、近隣の役割は相当低下しているし、祖父母の役割も次第に低下してきている。したがって、今後、地域の持つ子育ての力を引き出すような工夫が必要となっている。
また、「住」はやすらぎの場であるとともに家族や知人が触れ合う生活の場であり、「街」は多様な人々が交流する場であるはずであるが、高度成長期からの住や街のつくり方は、結局、閉じた空間としての「住」と、遠距離通勤を伴うような「街」を産み出して来た。その転換が図られ始めているが、街づくりにおいては、ハード面でもソフト面でも、多世代の交流ができ、子どもや子育て世代への配慮も行われることを基本とすべきである。
地域と住まい・街づくりに関して、当分科会において提案された意見は次のとおりである。
[地域での子育て支援・子育て中の親支援]
- 地域で現在行われている親同士の子育てサークルは、子育てに伴う孤立感・不安感の解消や母親の社会参加の場づくりという点で大きな役割を果たしており、活動場所を提供するなどにより、その自主性を損なわずに、こうした活動が一層普及するよう支援していくべきではないか。
- 子どもが成長して子育てサークルを卒業した母親がその経験を生かして、地域の子育て支援の担い手として活躍できる仕組みが必要ではないか。
- 近隣で、幅広い年齢の子どもと親の世代が共に集まって、中高生なども巻き込んだ「子育て隣組」といった活動が広がる工夫ができないか。
- また、これから子どもを持ちたいと考えている層など子育てに関心を持つ様々な世代も子育てサークルの活動に参加できるような工夫が必要ではないか。
- 子育て支援に参加したいと考えている高齢者層と、支援を受けたいと考えている家庭との間の橋渡しとなる活動を行政で行ってはどうか。
- 地域での子育て支援に関しては、様々な活動を行っているNPOの取組みを生かすような支援、特に、NPO同士が互いに知り合って情報交換できるような連携の支援に重点を置く必要があるのではないか。
- 父親が仕事で培った多様な経験を地域の活動に活かせるよう、職場では働き方の改革を進め、地域では、保育所、幼稚園、PTA、放課後児童クラブなどへの父親の積極的な参加を可能とするような環境整備が必要ではないか。
- 母親学級や家庭教育学級など子育てに関する学級についても、次のようにしたらどうか。
母親だけでなく父親も対象とし、名称も「両親学級」とする。
祖父母も、現在の育児の考え方がわかるよう、対象とする。
働く親も参加しやすいよう休日や夜間に開催する。このことは、PTAの会合についても同じである。
企業も、働く親がこれらに参加しやすいよう工夫する。
家庭や子育ての在り方を考える場としても両親学級を活用するとともに、家庭や職場などで置かれた状況にきめ細かく対応できるよう保健婦等が相談に応ずること とする。
育児仲間をつくりやすいよう、出産後の親子の参加も工夫する。
- また、子どもの成長に応じて変化する子育ての悩みに対応して乳幼児健診(3か月、1歳6か月、3歳)の際に、子育てに関する学級をそれぞれ開催したり、育児不安への対し方や育児不安に関する相談支援機関に関する情報提供を充実する、といったことも必要ではないか。
- 女性センターや公民館などの活動を見直し、子育てのために就業を中断した母親の起業や再就職を支援する活動内容を充実すべきではないか。
- 「他人の子も叱れる」ような信頼感のある地域づくりのために、PTAや自治会などが、より多くの参加が得られるように開かれた運営としつつ、互いに協力して地域活動を行うことが必要ではないか。また、PTAに親以外の地域住民もより積極的に参加できるようにしてはどうか。
- 子育て環境の悪化を解消していくためには、地域に誇りの持てる教育が必要である。このため、社会教育の場などで大人や子どもの地域活動を拡充していくことが必要であり、その拠点となる関連施設の充実が大切ではないか。
- 仕事に限らず母親の趣味や気晴らしのためにも安心して気軽に利用できるベビーシッターなどの保育サービスの普及を図ることが必要ではないか。その際、子育ての経験を持つ女性や高齢者など、子育て支援に意欲と関心のある層を活用できないか。
- 出産後の母体の回復期に、身の回りの世話や新生児の面倒を見てくれる産褥ヘルパーの派遣について、支援を行うことが必要ではないか。
- 育児不安の解消とともに、子どもとの関係を見つめ直すきっかけづくりとしても、育児中の母親に対する相談の機会の拡充を図る必要があるのではないか。例えば、気軽に立ち寄れる児童館のようなところにカウンセラー役となる子育て経験者や専門家を配置したり、あるいは、気軽にまた夜間でも利用できる電話相談体制を整備することとしてはどうか。
- 子育て支援のためには、地域の小児科のネットワークづくりが大切ではないか。
[まちづくり]
- 子どもが安全に遊べるよう、原っぱのような自然を生かした空間を設けたり、公園等では植裁・照明・建物配置などを工夫したり、集合住宅等では中庭空間を配置したり、屋上や途中階にルーフガーデンを設けたり、居住空間等では、歩道をゆったりととり、車道を曲線化するなど、歩く人を優先する、といった配慮が必要ではないか。
- このような空間は、乳幼児だけでなく高齢者まで多様な年代層が憩えるまちをつくるものともなる。また、まちに暮らす人々についても、様々な年代層から構成されるものとなるような配慮が必要ではないか。
- 地域全体での子育て支援を進めるには、連帯感のある地域社会の形成が必要であり、そのためには、職住をできるだけ近接させた生活圏にあったまちづくりが必要ではないか。
- 安心してベビーカーで外出できるようなまちづくり、妊婦・子ども連れ優先車両のある電車、おむつ替えのスペースのある公共施設など、安心して子ども連れで外出できるような配慮の行き届いた子育てに優しいまちづくりを進める必要があるのではないか。例えば、おむつ替えのためのスペースを男性トイレにも設けたり、バスもベビーカーのまま乗り降りできるようなきめ細かい配慮が必要ではないか。
- また、そうするとともに、子連れの外出について、公共の場でどのような行動がふさわしいのかを社会全体で議論し、乳幼児連れの親が過度に負担感を持たなくて済むよう、共通のルールづくりをしていくことが必要ではないか。
- 子育てを軸にした中心市街地活性化を進め、子育てしやすい都心型のまちづくりを試みてはどうか。
- 子育てに夢を持てる住宅づくりに関するイベントを実施し、新しいこれからの住宅を考えるための世論を盛り上げる必要があるのではないか。
- 首都機能移転・分散など、地方を活用する方策を考える必要があるのではないか。
4.保育等子育てサービスの在り方について
保育所は、共働き世帯などの子育てにとって欠かせない拠り所となっている。であるからこそ、都市部に見られる待機の解消は急を要する課題であるし、また、より利用しやすいものとなることも望まれる。さらに、多様な生活スタイルに対応した様々な保育サービスが提供されるようになることが望まれる。保育は、子育て期において多くの人が利用する身近なサービスであるから、地域で、情報が公開され、十分議論が行われ、そして需要に対応できる良質なサービスが効率的に提供されるべきである。
また、保育サービスが一層弾力化する中においては、偏に「親の都合」ばかりが優先されて保育の質がおろそかにならぬよう、子どもの立場に立って保育の質を確保していくための体制の強化が望まれる。
これらについて、当分科会において提案された意見は次のとおりである。
[地域における情報公開と整備の計画的実施]
- 保育所について、その経費や費用負担、利用や待機の状況などに関し、自治体が住民に対して情報公開を行うことが必要ではないか。
小中学校の状況についても、住民への情報公開が必要ではないか。
なお、情報公開・提供に当たっては、インターネットの活用も含めて誰もがいつでも利用できるものにする必要がある。このことは、保育所などに限らずすべての情報公開・提供に共通することである。また、情報提供に際しては、NPOの活動を通じて築かれた幅広いネットワークを活用するとともに、提供された情報についてNPOがチェックを行うことも重要ではないか。
- 保育所をはじめとする子育て支援サービスの利用手続をより利用しやすいものに改善していくことが必要ではないか。また、母子健康手帳に保育所の利用手続の仕組みを掲載するとともに、いつでも、円滑に子育て支援全般に係る相談や情報提供を受けられるような仕組みを設けられないか。
- 各自治体において、保育サービスに対するニーズをきめ細かく調査し、自治体ごとの保育サービスの整備目標や計画を設定していくことが必要ではないか。
- 特に、保育所の入所について待機児童のある市町村については、緊急整備計画を策定し、待機児童の早急な解消を図るべきではないか。
- 各自治体における子育て支援の取組み状況を指数化した「子育てやさしさ指標」といったものをつくって、市町村ベスト30・ワースト30といった形で公表してはどうか。
[待機の解消やサービスの弾力化等への取組みの支援]
- 保育サービスの整備は緊急の課題であることから、保育所に対する国の支援の強化を図る必要がある。
- 都市部での認可保育所における乳児等の低年齢児保育の拡大や延長保育の実施が必要である。
- 特に、低年齢児の待機が深刻となっていることから、年齢別定員や年齢に応じた認可保育所の諸基準の見直しが必要ではないか。
- 乳児保育、延長保育、病児保育、夜間保育、休日保育など様々な施策の拡充を進めることが必要ではないか。
- 現行の緊急保育対策等5か年事業を着実に実施するとともに、これに続く新5か年事業についても計画の策定が必要ではないか。
- 保育サービスの整備に際しては、認可保育所を中心とした機能強化を図るべきではないか。農村・過疎地域はその立地条件から公立保育所を親子を含めた地域共同体の基礎と位置づけるなど、地域ニーズに応じた公営、民間の役割を考えるべきではないか。
- 公営保育所は、年功序列制、長期雇用の正規職員中心という公務員の雇用制度により、利用しやすい弾力的なサービス提供や効率的な運営が困難になっているので、公営保育所の業務の全部・一部の委託を含めて民間の認可保育所を活用することによって、認可保育所全体のサービスの向上と効率化を図るべきではないか。委託に際し、サービス水準が向上するよう、認可保育所への適正な指導、予算が必要ではないか。
- 必ずしも質の確保が十分ではない認可外保育サービスの利用者にも費用助成するとともに、質に関するガイドラインの作成と認可外保育サービスの情報公開を進めて質の向上を誘導するようにすれば、不公平の是正と多様な保育サービス間の競争の促進も図られるので、サービスの向上と効率化が期待できるのではないか。
- 母親の通院や入院の際、安心して子どもを預けられるよう、病院内に一時保育所を設置してはどうか。
- より利用しやすくするため、保育所や、保育所へ子どもを送迎してくれる中継場所を、通勤のため乗車する駅の近くに設置することはできないか。
- 保育サービスについては自治体によって大きな格差があることから、市町村格差の是正が必要ではないか。
- 保育所や幼稚園を、母親の有職・無職を問わず気軽な育児相談や集団遊びの場としても利用でき、育児負担軽減に役立つものとしていくことが必要ではないか。
- 専業主婦であっても必要に応じて保育園を利用できる一時保育制度を一般化するとともに、幼稚園についても、同様の一時的な利用ができるよう工夫してはどうか。
- 利用に際して雇用者以外の親が不利にならないような保育所運営が必要ではないか。
- 延長保育や病児保育の受け皿作りの一環として、認可保育所を中心とした地域の保育者のネットワークづくりが必要ではないか。
- 子育て支援については、保育所のみならず、幼稚園における2歳児教室や子育て相談も重視すべきではないか。
[保育の質の確保]
少子化や働く女性の現状等についての保育者の側の理解が十分でないケースも見られることから、子育てを取り巻く様々な環境の変化を踏まえ、保育者に対する教育を充実する必要がある。
- 利用する側が真に適切な保育サービスを選択できるよう、保育の質の評価に関する研究や情報提供を進める必要がある。
- 保育サービスの在り方については、親の都合だけでなく、子どもの視点に立った検討が必要ではないか。
- 午後も園児を幼稚園で預かるという預かり保育を含め、就学前児童の保育・教育の在り方については幼保一元化との指摘もあり、検討を進めて、ガイドラインの作成や情報公開の推進なども行う必要があるのではないか。
[学童期への対応]
- 学童期に入っても子育てに係る支援は重要であり、放課後児童クラブ等昼間保護者のいない家庭の小学生に対する支援の充実を図る必要があるのではないか。
- 具体的には、放課後児童クラブの対象年齢の拡大、生活空間の改善、指導員に係る資格制度の創設等が考えられるのではないか。
- また、仕事を持つ親に対する学校側の認識を高め、放課後児童クラブと学校の連携を推進していくことも必要ではないか。
5.学歴偏重社会の見直しなど教育関係について
学歴偏重の風潮は、子どもにも親にもゆとりを失わせるとともに親の経済的負担を重くするなどの問題があり、親が産む子どもの数を少なくする方向に働くと考えられる。学歴偏重の風潮には依然として根強いものがある。教育行政における改革の方向を一層強めるべきである。このことについては、教育関係者の論議の深化を期待したいが、当分科会において提案された意見は次のとおりである。
- 学歴偏重社会の原因の一つは、日本の職場における人事制度であり、終身雇用制等の職場風土の見直しが必要ではないか。
- 学歴偏重社会の主な原因を職場の人事制度にあると特定することは無理である。家庭が多様な価値観を持つことが、学歴偏重の是正のためにも有効である。このためには、妻も社会で働くことがよいのではないか。
- 知育に偏った教育が、人同士の交流の楽しさと難しさを知ったり交流の方法を学ぶ機会を少なくさせており、これが結婚や子育てという新たな人間関係を築くのを煩わしく感じさせているのではないか。したがって、様々な場で様々な世代の人と共に学び体験し作業していくという機会を増やす必要があるのではないか。
- 身体を使った体験を通じての教育を積極的に学校教育に組み入れていく必要があるのではないか。
- 子どもが、家事や家族とのコミュニケーションなど家庭生活の在り方を学べるよう、学校への泊まり込み体験や、地方自治体間の協力による山村留学制度、様々な経験を持つ外部の社会人による授業などを実施してはどうか。
- 地域住民が学校運営を支援できるようにするなど学校教育と地域との連携を進めるべきではないか。
- 教える側の教員に対しても、年齢や職業経験等多様な人材の登用の推進、自己啓発のための研修休業制度の創設とともに、一学級の定員数削減と複数の教師の配置等、教育への財源投入の拡充が必要ではないか。
- 望む者については早く社会に出られるよう、飛び級制度の導入・普及や、高校での単位制の積極的活用、就労可能年齢の引下げを検討すべきではないか。
- 多様な人生設計に対応でき、年齢にかかわらず意欲に応じて学べるような大学の履修システムの整備が必要ではないか。
- 教育費とりわけその大部分を占める大学での教育費負担は重いものとなっており、それを軽減するため、奨学金を抜本的に拡充するべきではないか。
- 大学教育に掛かるコストを学生に認識させるべきであり、そのためにも、奨学金の支給に当たっては親の経済状況を問わないこととし、学生自らが奨学金により学費を払うようにすべきではないか。
- 大学進学者に奨学金を貸し付けるだけでなく、進学せずに技能習得等を選択した者に対しても、技能習得等のための資金を貸し付けることを考えて良いのではないか。
6.子育てのための経済的負担軽減措置について
夫婦が理想の子どもの数までは産まない理由として、意識調査では、子育てや子どもの教育に費用が掛かることをあげる人が多い。同時に、なにがしか給付が増えればそれを理由として子どもを持つ人が増えるかどうかは疑問であるとの意見もある。
また、論議の中では、子どもは社会全体の宝であって公共財ともいうべき存在であるので、子育てをする者としない者との間で負担のバランスを図ることは考えられてしかるべきではないかとの意見や、そのためには、税の控除の全体を見直して子の扶養控除を大幅に引き上げることが考えられるという意見があった。
一方、税や社会保障は極力個人単位化を進めるべきとの意見もあった。
当分科会において提案された意見は次のとおりである。
[社会保障関係]
- 妊娠期から産後の健康診査等の全額公費負担、出産育児一時金の引上げなど出産までの経済負担を軽減するとともに、乳幼児医療費の無料化を段階的に図ってはどうか。
- 予防接種については、どの医療機関でいつ受けても公費で負担する仕組みとできないか。
- 育児休業期間中の給付金の割合を引上げるべきではないか。このことは、男性が育児休業を取得しやすくするものともなる。
- 児童手当の額の引上げや支給期間の延長、所得制限額の大幅な引上げなどを行ってはどうか。
- 児童手当の拡充によって子どもを持つきっかけになるとは考えにくく、限られた財源の中での優先順位はむしろ低いのではないか。
- 低所得者対策については別として、基本的には同じサービスを受けているのだから、保育料負担の均一化を図るべきではないか。
- 公費の投入割合を拡大することによって保育料負担の軽減を図るべきではないか。
- 保育料の体系を平準化し、低年齢児の保育料引下げを行うべきではないか。
[税・社会保険料関係]
- 個人の人生選択に対して中立的な制度とする観点から、介護や育児に対する支援の充実や女性の働く環境の整備を進めつつ、年金制度における被扶養配偶者に関する第三号被保険者や税金面における配偶者特別控除について、廃止や認定基準の引下げの方向で見直してはどうか。
なお、廃止や認定基準の引下げを行うべきではないとの意見もあった。
- 少なくとも、生涯にわたる課税負担において、子どもを育てる家庭が子どもを持たない家庭に比べて不利にならないようにした上で、前者に対する公的支援を手厚く付与することが必要なのではないか。
- 税の控除の全体を見直し、子の扶養控除を大幅に引き上げるべきではないか。
- N分N乗方式(世帯員数で割った後の世帯所得を課税対象として世帯員に各々課税する方式)を取り入れたらどうか。
- 二人目の子どもを持つことを躊躇する人が増えていることから、二人目の子どもに係る税制優遇措置を拡充すべきではないか。
- 乳幼児関連の商品・サービスについては、消費税の課税を撤廃してはどうか。
- 子どものいる世帯に対しては、住宅購入に係る優遇策を講じてはどうか。
- 保育料は働くための必要な費用であるから、税の控除制度を設けるべきではないか。
- 税や社会保障の個人単位化を進めるために控除などは廃止し、その一方で、保育などの育児支援のために使える利用券を支給することにしたらどうか。
7.働き方の在り方その他検討を要する事項について
(1) 働き方に関しては、職場優先の企業風土・性別役割分業を前提とした職場の在り方の見直しが極めて重要であるが、また、勤務時間の差に応ずるもの以外は正規職員と同等の取扱いを受けるパートタイム労働の形態が普及することも、大きなポイントとなろう。これは、子育てなどと仕事を両立させるとともに、それまで培ったキャリアを中断させずに能力を発揮できる道を開くものであるからである。
また、職場はいくつか変わろうが結局は半世紀前後ともなる長い職業生活の中で(まとめてでも分割してでも)1年間くらいの休暇をいつでも取れるように仕組むことも、考えられて良いのではないか。
(2) これまで述べてきたことの他、当分科会において提案された意見は次のとおりである。
[妊娠・出産に関わるもの]
- 公共施設における妊娠・出産・育児に係る情報提供を進めるとともに、病・産院に対する出産に関する情報開示を義務づける必要があるのではないか。
- 病院における託児室の整備が必要ではないか。
- 妊婦に対するきめ細かい総合的な支援の担い手となれるよう、助産婦養成課程の充実を図るとともに、妊婦健康診査における助産婦の活用を進めてはどうか。
- 不妊治療に対し医療保険を適用するかどうかに関し、検討を進めるべきではないか。
- 少子化対策を行うに際しては、不妊等により子どもを持つことができない人に対する配慮が必要ではないか。
- 不妊に悩む人と医療とをつなぐコーディネーターが必要ではないか。
- 女性が主体的に子どもを持つことを選択できるようにするため、不妊の問題なども含めた性教育の充実やピルの解禁等を進めるべきではないか。なお、ピルの解禁については、進めるべきではないとの意見もあった。
[家庭の多様な在り方に関わるもの]
- 不妊などの者も子育ての喜びを得られるよう、養子・里親制度の一層の活用を図り、支援すべきではないか。共働きの者も制度を活用できるよう、子どもが一歳を超えていても、養親・里親になった時点から一年間は育児休業の対象として認めてはどうか。
- 婚外子出生に対する社会的差別や偏見の除去を図るべきではないか。
- 問題を抱える家庭から個人を保護し、相談助言、支援を行う施設や機能について、その充実を図るべきではないか。
- 安価な住宅の提供や再就職の援助など単親家庭に対する支援の充実を図る必要があるのではないか。
[働き方や企業の在り方に関わるもの等]
- 子どもの看護休暇の制度化
- 子育て中の親に配慮した労働時間規制
- 深夜勤務のルールづくりや割増賃金率の引上げ
- 残業日数の制限
- 人事評価基準・各種支援制度に係る情報提供等女性が将来に対して展望の持てる仕組みの導入
- 固定的な性別役割分業の見直しや家庭と仕事の両立支援に積極的な職場に対する Family Friendly Companyといった公認マークの付与
- 育児のため就業を中断している主婦への就業能力開発支援
- 結婚・出産後も働き続けている女性の実情を明らかにする統計・調査研究の充実
- 企業を介しない個人のための社会的セフティーネットの構築
- 共同体として企業をとらえる考え方から労働者と企業の間の契約を重視するなど機能体として企業をとらえる考え方への移行
- 女性の就労をめぐる環境を踏まえ、多様な選択肢の人生設計が可能となるような学生に対する進路指導の実施
- 環境問題対策の強化