少子化への対応を考える有識者会議

家庭に夢を分科会報告書

平成10年10月30日
少子化への対応を考える有識者会議
家庭に夢を分科会



家庭に夢を分科会報告書概要


 少子化の最大の原因である晩婚化をもたらしているのは、さまざまな人生の選択肢が増えている中で、若い男女特に女性にとって結婚・出産・子育てに伴う負担感が大きく意識されていること、と考えられる。
 現在の少子化傾向を緩和するためには、働き方や結婚後の生活・子育てについて、負担を軽減して夢多いものにしていくことが必要。

1.男女の役割分業の見直しと育児をめぐる国民意識について

 男性が女性とともに家事・育児を分担することが重要であり、このため、小中高生、若い夫婦、社会全体に対する男女共同参画の視点に立った教育・啓発を促進することが必要。

 ○子育ての大切さ・楽しさを次代を担う若い世代が家庭など様々な場で実感できることが必要。

 ○学校では、実体験に基づく教育に重点を、ボランティア活動の充実を。

 ○小中高校生が保育所・幼稚園で子どもと触れ合う機会を。

 ○幼少時から家庭で男女を問わず家事・育児への共同参画を、学校教育で積極的な男女共同参画に関する教育の推進を。

 ○「父子手帳」の配布や、男性に産休や育児休業の取得の義務づけを。

 ○子育ての社会的責任や素晴らしさ・楽しさの社会全体への訴えかけを。

 ○職場に子どもを連れていく日を設けるといった取組みにより、子育てを社会全体で担うという国民的合意の確立や家族のきずなの大切さに対する認識の深化を。

 ○三歳児神話の払拭、子どもの育ち方は多様であることの認識の普及 等。

2.結婚をめぐる状況への対応について

 結婚後の役割分担等についての男女間の認識の違いがあり、女性が結婚後の家事・育児の負担が自分に偏りがちと感じていることを軽減していくことなどが必要。

 ○様々なパートナーシップの形が受け入れられるようにすることが必要。

 ○夫婦で揃って外出できるための地域で子どもを預かる場の設置を 等。

3.地域全体での子育て支援や、「住」の在り方とまちづくりについて

 地域の持つ子育ての力を引き出す工夫、多世代の交流や子育て世代等に配慮した街づくりが必要。

 ○子育てサークルへの活動場所の提供等を、NPOの取組への支援を。

 ○子育てに関する学級について、父親や祖父母の参加を、休日・夜間開催を。

 ○PTAや自治会などが互いに協力して地域活動を。PTAに親以外の地域住民もより積極的な参加を。

 ○子育て経験を持つ女性や高齢者を活用したベビーシッターの普及を。

 ○育児中の親が気軽にまた夜間でも利用できる電話などによる相談体制の整備を。

 ○男性トイレにもおむつ替えのスペースを設けるなど安心して子連れで外出できる配慮の行き届いたまちづくりを 等。

4.保育等子育てサービスの在り方について

 多様な保育サービス、情報公開を通じた良質なサービスの効率的提供、子どもの立場に立った保育の質の確保が必要。

 ○保育所の経費・費用負担・利用や待機状況に関する情報公開を。

 ○各自治体における子育て支援の取組み状況を指数化し、市町村別のベスト30・ワースト30の公表を。

 ○都市部での低年齢児保育の拡大や延長保育の実施を。

 ○母親の有職無職を問わず育児相談等の場として保育所の活用を。

 ○保育者に対する教育を、保育の質の評価の研究や情報提供を。

 ○放課後児童クラブの充実を 等。

5.学歴偏重社会の見直しなど教育関係について

 学歴偏重の風潮は、ゆとりの喪失と親の経済的負担の増加により、子どもの数を抑制する一因。この改善のため、教育行政での取組みや多様な価値観の形成が必要。

 ○身体を使った体験を通じての教育を積極的に学校教育に組み入れることが必要。

 ○奨学金の抜本的拡充、奨学金の要件から親の経済状況を除外、進学せずに技能習得等を選択した者に対しても資金貸付を 等。

6.子育てのための経済的負担軽減措置について

 社会保障、税・社会保険料において負担のバランスを如何にとるか。

 ○妊娠・出産・育児休業・保育に関する経済的負担の軽減を。

 ○年金の三号被保険者や税の配偶者控除の在り方の検討を。

 ○税の控除全体を見直して子の扶養控除の大幅引き上げを 等。

7.働き方の在り方その他検討を要する事項について

 ○勤務時間の差に応ずる以外は待遇差のないパートタイム労働の形態の普及を。

 ○長い職業人生の中で1年間くらい自由に使える長期休暇を。

 ○少子化対策の実施の際に不妊等の人への配慮を。

 ○性別役割分業の見直しや家庭と仕事の両立支援に積極的な職場に対し、Family Friendly Companyといった公認マークの付与を 等。


家庭に夢を分科会報告書

平成10年10月30日
少子化への対応を考える有識者会議
家庭に夢を分科会

 私達「家庭に夢を分科会」は、「家庭に夢を持てるように」をテーマに、「少子化への対応を考える有識者会議」から示された検討項目に沿って、長時間にわたり参加者が活発な議論を行った。
 家庭に夢を持てるようにすることは、家庭・家族が時間的にも空間的にもゆとりをもって、互いを大切にし合える豊かな人間関係をつくって、これを維持することができる、という社会を築いていくことであろう。
 私達は、このような観点から議論を重ねたが、その過程においては、提案の幅を広げることを優先し、個々に詰めた検討や意見の集約は図ってはいない。提案は多岐にわたり、少子化対策としての効果も一様ではないが、一方では、少子化への対応のみならず、急激に進行する高齢化への対応としても望ましいと考えられる提案も多く、さらには性別や年齢を問わず国民の各層が我が国をより住み易いところとして実感できるような社会をつくっていく上で資するところが多いものと考えている。今後、これらの提言を素材にして「有識者会議」で議論が深められることを期待する。また、「有識者会議」での議論と並行して、これらの提言の実効性について事前評価できるような工夫が望まれる。さらに、政府においては、少子化対策の重要性に鑑み、可能なものから速やかに実現できるよう検討を開始することを強く希望する。

はじめに

 結婚をためらう、あるいは、結婚しても子どもを産み育てることを躊躇する、あるいは、子どもを産むにしても一人又は二人とするなど、若い世代が子どもを産まなくなってきている。現在、合計特殊出生率が1.39と低下してきているが、このような結果をもたらしている最大の原因は、結婚の時期が遅れていることであると分析されている。

 若い世代のうち、「一生結婚するつもりはない」とする人は5%前後に止まっており、「いずれ結婚するつもり」という人は、若干減少傾向にあるものの、9割前後と圧倒的多数である。つまり、若い世代の多くは条件さえ整えば結婚したいのだ、と言える。にもかかわらず結婚に結びつかないのは、社会が豊かになり、さまざまな人生の選択肢が増えている中で、若い男女特に女性にとって、結婚・出産・子育てに伴う負担感が大きく意識されるようになっているから、と考えられる。

 もちろん、好きな相手と共に暮らして子どもを産み育てることは、たとえ苦労も伴うものであっても、人生のよろこびであり、生きがいである。しかし、同時に、結婚して子どもができれば、仕事をもう一つの生きがいであると思っている女性にとっても、仕事を続けることに相当な困難が伴う。一人目はもちろん、二人目三人目となれば尚更だ。一旦退職して子育てが終わったら再就職するという途もあるが、その場合には、それまでの経験が役に立たなくなったり、仕事の選択の幅が狭まったり、賃金も安くなりがちだ。子育てには、お金も掛かるし、時間もとられるし、行動の自由も制約される。共働きであってもなくても、家庭内では、男性の多くは育児や家事を自分の仕事ではないと考えているので協力的でないか、あるいは協力する意志があっても今の働き方が変わらなければ時間的に不可能だ。結局、家庭内の仕事は自分に偏りがちだ、と感じる女性が多い。女性が担っている苦労に対して、夫や周囲からの評価も不十分だ。また、近隣社会においても、近所のおじさんやおばさんが子ども同士の遊ぶ姿を見守るということや、子連れの親に手を貸したり相談にのったりするということは、ほとんどなくなってきている。子育て中の若い夫婦とりわけ妻にとって、子育ての負担は過重となりがちだ。

 結婚後の仕事・生活・子育てに関する負担は重そうだと感じれば感じるほど、結婚をためらい、あるいは、条件の合う結婚相手を見つけにくくなり、また、結婚しても子どもを産むことをためらうことになる。働き方や結婚後の生活・子育てについて、その負担を軽減し、夢多いものにしていくことが、現在の少子化傾向を緩和するために必要となっている。働き方の見直しについてはもう一つの分科会で論議されているので、私達は、家庭そして学校や地域の在り方に論議の重点を置いた。家庭を持ち子どもを産みたいと思っている若い人がその望む途を選べるよう、以下のような環境整備を思い切って進めていく必要がある。

1.男女の役割分業の見直しと育児をめぐる国民意識について

 家庭内においては、男女の固定的な役割分担を見直し、男性が家庭により労力を傾け、夫婦が協力して家事を含めた家庭の仕事を、父母が協力して子育てを、担うことが望まれる。家事・育児への共同参画を進めるためには、夫婦双方が家事や子育てに関して一定の知識や体験を持っていることが望ましい。
 また、幼い子どもに触れ合ったことがないために子育ての負担を実際以上に過重と想像しているならば、それは、人生の選択の幅を狭める結果をもたらす。
 したがって、小中高生の時期やはじめての子どもができた時期における教育・啓発や体験が重要である。
 これらについて、当分科会において提案された意見は次のとおりである。

[家事・育児に関する若い世代への教育]

[性別役割分業にとらわれない教育の在り方]

[男性の育児・家事参加の推進]

[社会全体としての子育て意識]

2.結婚をめぐる状況への対応について

 独身の理由として、「適当な相手にめぐり会わない」ことを掲げる人が独身者のほぼ半数に上っている(複数回答)。仕事や休暇などに関して多様な選択が可能となっている中、結婚後の生活スタイルや役割分担において男女が相手に求めるものが食い違っている、と考えられる。また、結婚することによって自由や気楽さを失いたくないと考える独身者は女性の方に多いが、これは、子育てを含む結婚後の生活についての負担が女性に偏りがちと感じていることの裏返しと思われる。
 さらに、置かれた状況や地域によっては、出会いの場が少なくなっていることもあると考えられる。
 結婚をめぐるこのような状況に関しては、夫婦双方の仕事と家庭の時間配分や夫婦の子育ての協力体制など結婚後の生活における男女の役割の見直しを、男女共同参画の視点から進めることが重要と考えられるが、この他、当分科会において提案された意見は次のとおりである。

3.地域全体での子育て支援や、「住」の在り方とまちづくりについて

 子育てについて、かつては近隣の人や祖父母の果たす役割は大きかった。現状では、近隣の役割は相当低下しているし、祖父母の役割も次第に低下してきている。したがって、今後、地域の持つ子育ての力を引き出すような工夫が必要となっている。
 また、「住」はやすらぎの場であるとともに家族や知人が触れ合う生活の場であり、「街」は多様な人々が交流する場であるはずであるが、高度成長期からの住や街のつくり方は、結局、閉じた空間としての「住」と、遠距離通勤を伴うような「街」を産み出して来た。その転換が図られ始めているが、街づくりにおいては、ハード面でもソフト面でも、多世代の交流ができ、子どもや子育て世代への配慮も行われることを基本とすべきである。
 地域と住まい・街づくりに関して、当分科会において提案された意見は次のとおりである。

[地域での子育て支援・子育て中の親支援]

[まちづくり]

4.保育等子育てサービスの在り方について

 保育所は、共働き世帯などの子育てにとって欠かせない拠り所となっている。であるからこそ、都市部に見られる待機の解消は急を要する課題であるし、また、より利用しやすいものとなることも望まれる。さらに、多様な生活スタイルに対応した様々な保育サービスが提供されるようになることが望まれる。保育は、子育て期において多くの人が利用する身近なサービスであるから、地域で、情報が公開され、十分議論が行われ、そして需要に対応できる良質なサービスが効率的に提供されるべきである。
 また、保育サービスが一層弾力化する中においては、偏に「親の都合」ばかりが優先されて保育の質がおろそかにならぬよう、子どもの立場に立って保育の質を確保していくための体制の強化が望まれる。
 これらについて、当分科会において提案された意見は次のとおりである。

[地域における情報公開と整備の計画的実施]

[待機の解消やサービスの弾力化等への取組みの支援]

[保育の質の確保]

[学童期への対応]

5.学歴偏重社会の見直しなど教育関係について

 学歴偏重の風潮は、子どもにも親にもゆとりを失わせるとともに親の経済的負担を重くするなどの問題があり、親が産む子どもの数を少なくする方向に働くと考えられる。学歴偏重の風潮には依然として根強いものがある。教育行政における改革の方向を一層強めるべきである。このことについては、教育関係者の論議の深化を期待したいが、当分科会において提案された意見は次のとおりである。

6.子育てのための経済的負担軽減措置について

 夫婦が理想の子どもの数までは産まない理由として、意識調査では、子育てや子どもの教育に費用が掛かることをあげる人が多い。同時に、なにがしか給付が増えればそれを理由として子どもを持つ人が増えるかどうかは疑問であるとの意見もある。
 また、論議の中では、子どもは社会全体の宝であって公共財ともいうべき存在であるので、子育てをする者としない者との間で負担のバランスを図ることは考えられてしかるべきではないかとの意見や、そのためには、税の控除の全体を見直して子の扶養控除を大幅に引き上げることが考えられるという意見があった。
 一方、税や社会保障は極力個人単位化を進めるべきとの意見もあった。
 当分科会において提案された意見は次のとおりである。

[社会保障関係]

[税・社会保険料関係]

7.働き方の在り方その他検討を要する事項について

(1) 働き方に関しては、職場優先の企業風土・性別役割分業を前提とした職場の在り方の見直しが極めて重要であるが、また、勤務時間の差に応ずるもの以外は正規職員と同等の取扱いを受けるパートタイム労働の形態が普及することも、大きなポイントとなろう。これは、子育てなどと仕事を両立させるとともに、それまで培ったキャリアを中断させずに能力を発揮できる道を開くものであるからである。
 また、職場はいくつか変わろうが結局は半世紀前後ともなる長い職業生活の中で(まとめてでも分割してでも)1年間くらいの休暇をいつでも取れるように仕組むことも、考えられて良いのではないか。

(2) これまで述べてきたことの他、当分科会において提案された意見は次のとおりである。

[妊娠・出産に関わるもの]

[家庭の多様な在り方に関わるもの]

[働き方や企業の在り方に関わるもの等]