少子化への対応を考える有識者会議

第4回議事録

内閣官房内閣内政審議室


 

−夢と絆の家庭支援−
少子化への対応を考える有識者会議第4回議事次第

日 時  平成10年12月21日(月)16:00〜16:40
 
場 所  内閣総理大臣官邸大食堂
 
1.開会
 
2.議事
(1)「夢ある家庭づくりや子育てができる社会を築くために(提言)」案について
(2)その他

3.閉 会

【岩男座長】 定刻になりましたので、ただいまから第4回「少子化への対応を考える有識者会議」を開かせていただきます。委員の皆様には大変お忙しい中を御出席いただきましてありがとうございます。ちょっと風邪をひいておりますので、大変お聞き苦しいと思いますがお許しいただきたいと思います。
 本日は、後ほど小渕総理がご出席になられますので、ただいまこちらに向かっていらっしゃるということですが、間もなく御到着になると思います。また、本日は御覧のように関係省庁の各大臣にも御出席をいただいております。総理と各大臣には後ほどお言葉をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、議事に入らせていただきます。
 前回の会議で、河合先生と八代先生、私の3人で提言の素案を準備させていただくということを御了承いただきました。その素案については、本日の会議に先立ち委員の皆様全員にお目通しをいただきました。そして、皆様よりいただいた貴重な御意見を踏まえ、本日、お手元に資料2の提言案として取りまとめさせていただきました。
 本日は報道関係の方もいらっしゃいますので、提言案のポイントを私から簡単に御紹介させていただきます。
 提言の構成は4つの部分、すなわち「はじめに」と「環境整備すべき内容」「推進体制」「環境整備の具体的方策と実施主体等に関する提案」からなっております。
 まず、これまでの議論と2つの分科会報告書から大きな方向を整理して打ち出し、その上で各委員から出されたさまざまな具体的方策を大きな方向ごとに仕分けして、できるだけ網羅的に提示するという構成案にいたしました。
 その際、個別の方策ごとに、検討・実施の中心となることを期待する主体を明示するとともに、特に早急に検討・実施を期待する事項――つまり、法改正などを必要としないという意味ですけれども、星印をつけるという工夫も加え、できる限り実践的な要綱のようなものをという、私どもに対する総理の付託に応えるよう努めました。
 それでは、以下、提言案に沿ってポイントを御説明いたします。

 まず、1ページの「はじめに」では、現在の日本には、若い男女が新たな家庭を築き、子どもを育てていく喜びや楽しさを経験しにくくするさまざまな要因があり、これらは社会全体の取り組みとして取り除いていくべきだ、つまり環境整備をすべきだという基本認識を述べております。
 また、これらの環境整備は、ひとり少子化への対応だけではなく、高齢化への対応としても望ましく、さらにはこれからの日本をだれもが住みよいところとして実感できるような社会にするものであることを述べ、そのような社会のイメージを明記いたしました。
 次に、個別の提案に先立ち、3つの留意点を示してございます。
 第1に、度々ここでも出ましたけれども、結婚や出産は当事者の自由な選択に委ねられるべきものであって、社会が個人に押しつけてはならないこと。
 第2に、少子化の進行は、その過程で経済的にも社会的にも将来の国民に深刻な影響を及ぼすこと。
 第3に、女性を家庭に戻すべきという意見は非現実的であり、不適切・不合理であることであります。
 続いて、2ページの中段からになりますが、「環境整備すべき内容」を「働き方に関する事項」と「家庭、地域、教育のあり方などに関する事項」に分けて、その対応策を貫く基本的な考え方を明らかにしております。

 「働き方に関する事項」としては4点です。
 第1に、男女の性別役割分業を見直し、また職場優先の企業風土を是正すること。
 第2に、多様な働き方を可能とし、育児休業など仕事と育児の両立支援の取り組みを充実するとともに、仕事の効率性を高めて就業者全体の職場への拘束時間を削減すること。
 第3に、出産・育児のため退職した場合にも、不利になることなく再就業できる開かれた労働市場を実現すること。
 第4に、企業の育児支援の取り組みを勧奨・評価することを掲げました。

 また、3ページになりますが、「家庭、地域、教育のあり方」などに関する事項としては6点掲げました。
 1点目は、家庭において男女共同参画を推進すること。
 2点目は、地域では、子育てを社会全体で支援するという国民的合意を確立するとともに、ハード・ソフト両面にわたる環境整備を行うこと。
 3点目は、若いころから子育ての楽しさなどを啓発広報し、体験する機会づくりを進めること。
 4点目は、保育などの子育てサービスについて、需要の多いサービス、多様なサービス、良質なサービスを効率的に提供すること。また、子どもの立場に立った保育の質の確保を図ること。
 5点目は、教育に関しては学歴偏重を是正する取り組みを推進するとともに、広い意味の奨学金の抜本的拡充を図ること。
 6点目は、子育ての経済的負担を社会的に支援する税制や社会保障制度のあり方を検討することであります。

 続いて、4ページになりますが、「推進体制」を提案しております。
 ここでは内閣総理大臣の趣旨に賛同する各界関係者の参加を募り、国民会議とも言うべき場を設けて、提言の実行に向けた取り組みを促進することにより、少子化への対応が国民的な広がりを持つ取り組みとしていくことを提言するとともに、国が実施主体となるべき方策の推進については、内閣に閣僚レベルの取り組み体制を整備することを提言しております。
 これらの国民的な広がりのある推進体制を整備することで、提言が「絵に描いた餅」にならず、各界で少子化への対応が進められていくための重要なポイントになると思っております。

 5ページ以降の「環境整備の具体的方策と実施主体等に関する提案」では、個別、具体的方策を整理しております。この会議では、個々の提案について詰めた検討や意見集約を行っておりませんけれども、2つの分科会報告などで示された多様なアイデアを検討・実施の主体となることを期待する各方面の関係者に提示し、各主体においてそれらの提案を検討し、実施に移していってほしい、そういう思いから検討・実施の主体を明らかにしつつ、個々の具体的提案を環境整備すべき内容として項目ごとに整理いたしました。
 そして、国民会議において提言の検討・実施状況をフォローアップしていくことを、私ども有識者会議として強く望むことを表明いたしております。
 提言は以上のような内容になっております。

 この有識者会議は、御承知のように4回の審議を重ねてまいりました。また、その間、8月〜10月にかけては「働き方分科会」と「家庭に夢を分科会」でそれぞれ3回の討議を行い、10月末に分科会報告書がまとめられました。
 そうした中で、この会議が国民的議論の発信源としての役割を期待されているということを考慮しまして、まずはできるだけ早く有識者会議としての提言を出し、関係する方々に少子化への対応策を検討し、実施していただくことが必要と考えました。
 このような考えに立って、本日の会議に先立ち、先ほど申し上げましたように、委員の皆様方には提言案にお目通しをいただき、そして事前にお諮りいたしまして、そのいただいた御意見を反映させて本日提言案をこの場に提示させていただいたものでございます。私といたしましてはこの案で提言を取りまとめさせていただき、先ほど小渕総理が御到着になると申し上げたんですが、もうそろそろお見えになると思いますけれども、小渕総理がお見えになりましたら総理に私どもの提言としてお渡しして御報告をしてはいかがかと思いますけれども、いかがでございましょうか。

〔「はい」という声あり〕

【岩男座長】 よろしゅうございますか。
 では、皆様に御了承いただいたということで、私の方から後ほど総理にお手渡しをしたいと思います。大変ありがとうございました。総理がおいでになり次第ということで、1、2分お待ちいただきたいと思います。

〔総理入室・カメラ入室〕

【岩男座長】 それでは、私が委員を代表いたしまして、総理に提言書をお渡しさせていただきます。
 私ども「少子化への対応を考える有識者会議」では、2つの分科会の検討も含めて、計10回の審議を重ねた結果、提言を取りまとめました。
 この提言には、非常に豊富な御体験をお持ちの委員の方々の大変優れたアイデアがたくさん盛り込まれてございます。そのように自負しておりますので、総理におかれましても家庭や子育てに夢を持つことができる社会の実現に向けて一層の取り組みをいただき、指導力を発揮していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

〔提言書を手渡し〕

【総理】 ただいま貴重な御提言をいただき、まことにありがとうございます。この機会に一言お礼と御挨拶を申し上げます。
 岩男座長を初め委員の皆様方には御多忙にもかかわらず、これまで4回、さらには2つの分科会につきましてそれぞれ3回ずつ、延べ6回にわたり精力的に御議論をいただき、心から感謝申し上げます。
 結婚や子育てに夢を持てる社会を実現するための環境整備について具体的な提言をいただくことにとどまらず、会議自体も国民的議論の発信源としての役割を果たしていただいたと思います。
 私としてもさまざまな現場からの御意見をお聞きし、私の考えを直接お話しする機会を設けてまいりましたが、去る10月28日には中央区にあります晴海保育園や佃児童館などを訪問し、子どもたちとの交流や御両親との意見交換を行いました。
 晴海中学校や「マイホームはるみ」という老人ホームと合築いたしました保育園では、高齢者との交流や中学生によるホームへのボランティア活動が日常的に行われておりまして、世代間交流がいかに有意義なものであるかを目の当たりにいたしました。
 また児童館の視察や意見交換を通じまして、子どもたちが健やかに成長していくことがいかに大切であるか、そのための環境整備の必要性を改めて感じました。
 もとより結婚や出産は個人の選択の問題であり、国や社会が干渉すべきものではありませんが、個人が望む選択ができるよう御提言に基づき、必要な取り組みを進めていく決意でございます。
 また、少子化への対応は国民的広がりのある実践が不可欠であります。今回御提言いただきました「国民会議」の場を設け、夢を持って男女がともに暮らし、子どもを産み育てていく明るい社会を築くために、国民の皆様とともに取り組んでまいりたいと考えております。
 少子化への対応は、幅広い課題を持ち、直ちに実行可能なことばかりではなく、息の長い取り組みが求められることも多いと思います。今回の御提言がそのような粘り強い取り組みの契機となると信じまして、今後とも御協力をお願いし、私のあいさつとさせていただきます。どうもありがとうございました。

〔カメラ退室〕

【岩男座長】 それでは、せっかくの貴重な機会でございますので、皆様方お一人お一言ずつ、本当にお一言ずつですけれども、感想などをお述べいただきたいと思います。
 では、第1回とは逆回りにして、今回は渡里委員からお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【渡里委員】 日経連の副会長の社会保障関係を担当している渡里でございます。
 自民党の予算案が出まして、ちょうどタイミングよく少子化対策の拡充というのがありまして、低年齢の保育所待機児の解消措置、それから都市型小規模保育所の整備などが盛り込まれておりまして、まさに時宜を得たものだと思っております。
 これを推進するについて総理にぜひお願いしたいことがありまして、これは前回宮下大臣にも申し上げたんですけれども、モデルとして東京都の待機児の解消というものをぜひ実現していただきたい。というのは、東京都は出生率が1.05と全国で最低でございます。一方で、待機児が一番多い、これは数が多いですから当然ですけれども、私のところに来ている統計では 8,000人という待機児がある。この待機児の解消が出生率にどう結果として結びつくか、ぜひ実験していただきたいと思いますので、これを私の提案として申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。

【厚生大臣】 委員のおっしゃられたような点は十分配慮して、都市部等の保育所設置基準は、これまでも定員を60人から30人に下げ、さらに保育所分園方式としても対処できるようにするといった対応をしているところであり、今回の予算においても都会の視点に一層配慮して、要求し、内示をいただいておるところでございます。今後、さらにそういった視点を拡充していきたいと思います。

【岩男座長】 八代委員、1分以内でお願いいたします。

【八代委員】 私は「働き方分科会」の方を担当させていただきまして、今、渡里委員がおっしゃいましたように、保育所の充実ということが非常に大きな柱でございますが、同時に働くということと子育てを両立できるような就業体制ということも大事であります。そのためには、固定的な「男性は仕事、女性は家庭に戻る」というような慣行ではなくて、できるだけ柔軟で自由な働き方の選択ができるような雇用システムというものが重要ではないかと思いますので、その点についても議論いたしましたので、ぜひご検討いただければと思います。

【三浦委員】 この会議の最初、第1回でも申しましたが、少子化というのはさまざまな社会的な要因が絡まり合った一つの結果でございまして、その社会的要因には経済、社会、女性の問題から、企業の慣行から、あるいはまちづくりとか非常に幅広い問題が絡まり合っているというふうに私は認識しております。
 逆に言いますと、こちらの報告書にもありますように、少子化の問題を解決できるということは非常に広く多くの国民にとってよりよい社会が実現できるということにつながると思いますので、具体的な提案になっておりますので、ぜひこの推進をお願いしたいと思います。

【前田委員】 ライフデザイン研究所の前田と申します。
 私自身が保育園や学童保育に子どもを預けながら働いている母親ですので、今回の会議に出て大変うれしく思いました。
 もう既にいろいろな先生方からのお話があるんですけれども、男性の雇用が今非常に不安定になっておりますので、出産、結婚を機会に職業をやめる女性が非常に減ってきておりまして、その意味で低年齢児保育に入れない待機児が非常に増えているんですね。厚生大臣のお話があったんですが、ぜひ安心して子どもを産み育てられるように保育のことを改革していただきたいと思うんです。
 それから、八代委員からもお話がありましたように、少子化の問題は保育園の問題だけでありませんで、今回の子育て減税などもありましたけれども、単発でいろいろやってもなかなか効果が上がらなくて、整合的に保育と働く場、そして年金とか健康保険制度とか社会保障制度全体の中で少子社会をどう支えるかということと、どう安心して子どもを産み育てられる社会制度を整えるかという、整合性のある総合対策が必要だと思うんです。
 ですから、緊急避難的にまず取り組むものと少し時間をかけても日本の将来ビジョン、安心して子どもを産み育てる、こういう夢のある社会を描こうという夢のもとに大きなビジョンを描いていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【直江委員】 ソニーの直江と申します。
 今回、働くことと子育てと両立するということでいろいろな提言を織り込んでおりますが、その分、企業の負担も今よりも増える方向だと思いますので、その辺、負担が社会的に公平になるような、バランスのとれた負担になるような方策をぜひ国の方でもサポートしていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【田尻委員】 田尻です。
 民間企業に夫婦で勤めておりまして、2人子どもを育てているんですけれども、やはりなかなかそれはしんどいことでして、子育てと仕事が男女とも両立できるような社会を築いていただきたい。そういう体験を語らせていただきまして、私自身、かなりいい提言ができたと思います。要は、これをいかに実現していくかという次のステップだと思います。来年できるでありましょう男女共同参画社会基本法の目指すところとかなり近いものがいっぱい入っていると思います。そういう男女共同参画社会をつくるために何か私どもがお役に立つようなことがありましたらぜひ声をかけていただいて、あと10年くらい企業に勤めが残っていますけれども、それを投げうってでも何かやってみたいと思いますので、ぜひ何かありましたら声をかけてください。よろしくお願いいたします。

【高木委員】 連合副会長の高木でございます。拝見しまして、労使という表現が囲みに入っている数がかなり多いなと。すぐやれるものもあるでしょうし、もう既に取り組んでいるものもあります。けれども、ここには日本の企業社会の構造改革みたいな部分もたくさんあるように思います。日経連の渡里さんもお見えになりますので、またいろいろご相談して、我々は我々の立場で努力していきたいと思います。ありがとうございました。

【鈴木委員】 小説家の鈴木光司です。僕は、「家庭に夢を分科会」の方をやっていたんですけれども、その中でいろいろと思ったのは将来に対する漠然とした不安感というものが日本の社会の中に漂っておりまして、そういった風潮の中ですと「こんな時代に子どもを産んでも子どもがかわいそうだ」というような意見なども聞かれたりするんですね。そうすると、そういった暗い雰囲気というものが微妙に精神的に影響を与えて、何となく産みかねているという方も非常に多いのではないかと。
 僕は作家という立場から、漠然とした雰囲気というものをどうするかということを考えていきたいと思っているんです。例えば、これまでの日本の小説では「生きる」ということは苦悩に満ちているという小説がものすごく多かったわけですね。読み終わったときに、読者に「人生というのは楽しいんだ。生き生きと生きるということはすばらしいことだ。未来は明るい」と提示している小説が非常に少なかった。
 僕はこういった会議に参加したおかげで、未来がいかに明るいか、生きるに値するかということを小説のテーマとしてこれから取り上げていこうと思っています。

【杉山委員】 妊娠したり、育児中のお母さんたちがお読みになっていらっしゃいます雑誌のライターをしております杉山と申します。よろしくお願いいたします。
 提言では具体的にいろいろなことが発言できまして、とてもいいものができたと思っております。お母さんたちもいつもサービスを受けるだけの立場ではなくて、自分たちも積極的に社会とかかわっていかなければいけないんだということを常々思っておりまして、最初“労使”という言葉はあったんですけれども、“市民”といいますか、そういった“労使”から漏れてしまうような人たちもその中に入っていけたらいいだろうなというふうに思いまして、“地域住民”とかそういうふうな形でこの中にも加えていただきました。
 もう一つ、具体的提言にはならないとは思って言うのを控えてきたんですけれども、妊娠・出産というのはその前に必ず性の問題がつきまとっていると思うんですね。今まではどうしても性というのはここでは言わないことにしようみたいなタブーな部分でずっと扱ってきたと思うんですけれども、もうそろそろ前向きで積極的で、夢のある性についていろいろな部分で語り合っていくということも大切なのではないかと思っております。以上です。

【河野委員】 キャリアネットワークの河野と申します。日ごろ、企業の人事向けに雇用や人材開発の仕事をしておりまして、管理職の現場ですとか一社員の現場を見ている「現場の声」ということで参加させていただきました。
 このテーマは個人的にも、夫婦で、社員で、子どもも2人いて、個人的にも課題なんですが、経営者の意識改革というのは非常に大きい課題だと思います。それから、あとは人事政策を変えねば──八代先生もおっしゃっていましたが、雇用環境を変えるのと個人の意識改革が3点セットにならなければと日ごろから思っています。
 実は、今回、とてもいいものができて、各省庁まで落とし込まれていて大変力強いんですが、企業で言うと「これは終わりでなくスタートです」という一言のもとに、この後、各省庁でアクションプランやフォロー体制ができてくると思うので、ぜひこれを現実に向けての社会を変えていく一つの提言にして使っていくような方向性で行っていただければと思います。ありがとうございました。

【落合委員】 家族社会学を研究しております落合と申します。
 私は今度の報告書の中で、この2ページ目にございます「はじめに」の3点目の「出生率上昇のために女性が家庭に戻れば良いとするのは非現実的である」という、そこから出発したのは非常に良かったと思っております。
 今のことはただ女性の働き方だけですけれども、それだけではなくて、今は本当に人口構造と家族のあり方の変わり目だと思うんですね。今までの常識がそのままではもう立ち行かないということ、それを確認したのがこの研究会の大きな成果であったと思います。
 今までの常識といいますのは、標準家族と申しますか、夫婦が性別分業をしていて、子どもが2人という、これが当たり前だというのは今や少数派になっているわけでして、それの上に乗っかっていた社会保障制度とか税制とか、それから男性の働き方も婚姻制度等々、いろいろなことの見直しがこれから必要になっていくと思うんですけれども、狭い意味で少子化に関係しているこの提言の中に入っていないようなものに対しましても、これからの変化の方向を考え続けていっていただきたいと思います。

【尾崎委員】 私はマスコミと人口学者でつくっている人口問題協議会の立場で参加させていただきまして、第一線で御活躍の方々の大変具体的な意見発表に私自身が大変勉強させていただきました。
 最初に、私は日本だけの問題ではなくて、国際的な視野で少子化の問題に取り組んでいただきたいということを申し上げましたけれども、結果的に非常にその観点が出ております。特に国際的な舞台で一番キーワードになっております“リプロダクティブ・ヘルス”という観点が2ページの「妊娠・出産に関する女性の自己決定」というところに入っておりますので、大変いい答申になったと思っております。
 それから、この答申は性急な結論ではなくて、男女共同参画社会を実現する過程の中で、多様な生き方の中で解決していこうという視点が出てきたのが非常にいいと思います。国会には男女共同参画社会基本法も出る予定ですし、自民党の日本再生会議からは少子化社会対策基本法も発表されております。次の国会では総理も安全保障や経済の問題で大変だと思いますけれども、こういう問題に積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 もう1点だけ。国民会議を発足させるについては、やはりマスメディアを巻き込んでいくことに積極的に取り組んでいただきたいと思います。

【内海委員】 企業で働く女性の立場で参画させていただきましたNECの内海と申します。
 私の会社は 8,500人の女性社員が働いておりますが、その3分の1が結婚しております。子どもを持っている女性社員もたくさんおります。8年前に導入いたしました育児休職制度を取得した人の数が8年間で 1,000人を超しました。今、働く現場は、女性社員が子どもを産み育てながら働き続けるのが当たり前になってきております。そういったことを前提に、国の制度ですとか仕組みをぜひ見直しをしていただきたいと思います。
 もう一つ、人口の半分は女性です。ぜひ女性にもっと期待していただきたい。きっと期待に応えて、さらに女性の力は伸びると信じております。

【伊藤委員】 都市計画を専門にしている伊藤でございます。
 私たちの仕事で、都市計画に“生活”という言葉をつけて、“生活都市計画”という言葉を今使おうとしています。これはもうおわかりのように歩道を広くしたり、あるいは車いすでお互いに通れるように歩道を広くするとか、バス停と老人用のお手洗いとできたら交番を一緒に3点セットでつくると非常に高齢者に安全になるわけですね。
 申し上げたいことは、高齢者が相互に助け合いながら暮らせるまちにというのは、子どもにとってもよいし、また非常に伸び伸びと働ける場所である。そういう点に配慮したまちづくりというのは、高齢者が結果として保育に非常に積極的に介入できるだろう、手伝うことができるだろう、そういうまちづくりなんです。
 これはどこにでもありまして、下町でやられているわけです。ただ、山の手でやられておりませんので、山の手にそういう下町的センスでのまちづくりをやろうということで、私たちはこれからの21世紀は「生活都市計画」を一生懸命やろうとしておりますので、そのことだけ忘れないで覚えておいていただきたいと思います。

【板本委員】 板本と申します。結婚相談所という出会いのところで仕事をしておりまして、結婚してからということは具体的に制度とかいろいろ変更できるんですが、結婚する前を具体的にどういうふうに反映したらいいのかと、いつももどかしい思いをしながらこの会議でいました。なかなか難しいと思います。
 やはり30代の男女が、理想も信念も持っている人たちが自分の生き方とお互いの生き方を折り合いをつけて、人間関係をつくって、そしてパートナーになっていくということを具体的にどこで制度とか、そういうことを援助していくのかということはとても難しいと思っておりますけれども、このさまざまなでき上がったものが結婚に戸惑っている人や出会いのない人の背中を具体的に押すような形になれば、これはいい要因になるのではないかと感じています。
 農村に関しましては、厚生省や農林省がいろいろ対応してくださっていますので、いろいろな具体的な調査に入れそうなので、その中で具体的な姿が浮き彫りになればいい報告ができるかというふうに感じております。

【安達委員】 東京女子医大の産婦人科におります安達と申します。
 私も子どもを2人育てながらずっと常勤で仕事しておりましたので、今回のこの少子化の有識者会議に出させていただきまして、自分のことも含めまして大変有意義な会議だったと思います。
 私は産婦人科の中でも専門は不妊症、生殖医学というところにいて、毎日のように不妊症の方や生殖医学の現場に立っているわけです。今回、ちょっと触れなかったんですが、私が日ごろ感じているのは、不妊症の方は10%のカップルがそうなんですけれども、その中でお子さんが欲しいと思っている方にはぜひお子さんをつくってさしあげたいと思うわけですが、実際には仕事などで不妊治療に通う時間帯とか、そういったものも全然考慮されていないのが現状なんです。そういうことを、私は今回「家庭に夢を」の方でしたので反映できなかったことがちょっと心残りかと思いますが、しかし今回このような提言が出せたことは大変私もうれしく思っております。
 ただ、この提言を掲げるということは、たくさんの委員の方がおっしゃいましたけれども、スタートラインの上に立ったということですね。これを実現させるというのは時間と忍耐とエネルギーの要る仕事だと思うんですが、私たちのここからの発信源ということですので、皆様も御自身の家庭からスタートしまして、職場や所属していらっしゃる団体などでぜひこのような皆様の意識の改革を促すような、そういった啓蒙も含めた運動をなさっていただきたいと思いますし、私もそうしたいと思っております。以上です。

【岩男座長】 ありがとうございました。
 それでは、これから各大臣に御感想などお述べいただきたいと思いますが、その前に私もちょっと一言(笑)。
 提言には星印がつけてございますけれども、運用面だけの工夫で意思と知恵さえあればたくさんございますので、ぜひ、それをすぐにでも実行に移していただきたいと思います。
 それから、ここに掲げましたさまざまな方策は、少子化対策だけではなくて日本全体のみんなにとって住みよいところにするという、そういうアイデアがたくさん並んでおりますので、ぜひその点をお酌み取りいただきたいと思っております。
 それでは、各大臣に御発言をいただきたいと思いますが、労働大臣からまずお願いいたします。

【労働大臣】 労働大臣の甘利でございます。少子化の進行というのは社会のいろいろな部分に大きな影響を与えるわけでありまして、これは政府全体で取り組んでいかなければならない、特に労働省の仕事も大きいと思います。
 要するに、子どもを産んで育てることがハンディキャップにならない雇用環境をどうやってつくっていくかということになろうと思いますし、そうした中で男女がともに社会の中で自己実現を図るよう環境整備をしていくということであろうと思っております。
 我が省といたしましては、従来から育児休業の定着など仕事と子育ての両立のための環境の整備に取り組んできておるわけであります。それから、先般発表されました税制改正大綱の中でも子育てに配慮しました経済的負担の軽減措置、いわゆる子育て減税というのを盛り込むことができたところであります。
 今般いただきました提言の中につきましては、個々に検討を行いまして、可能なものから順次取り組んでいきたいというふうに考えております。特に、提言の趣旨に沿うものといたしまして、私どもは次年度予算要求で「家庭にやさしい企業」の表彰等の実施を考えておりまして、地域における仕事と育児との両立のための支援体制の整備などについては労働省としても今後重点的に取り組んでいこうということでありまして、それらを推進していくことによりまして、雇用と労働に関する施策を担う立場から、少子化への対応について引き続き積極的に努力ができるのではないかと思っております。

【岩男座長】 厚生大臣、お願いいたします。

【厚生大臣】 岩男座長さんを初め委員の皆様方には大変終始熱心に御討議をいただき、また広範な見地から御議論いただいたことを、私も2時間半くらい参加させていただきまして、本当に感銘深くいたしたところでございます。
 本日、こうした立派な提言ができました。今、お話にございますように、少子化対策としては基盤整備も必要でございますし、各般の総合的な施策が必要である、前田委員からも言われたとおりでございまして、私どもはこの提言は極めて具体的で、コメ印もつけ、それから各項目についての実施主体まで明記されている特異な提言だと思います。そういう意味で非常にわかりやすく整理されておられますので、私どもはこれを真剣に受けとめまして、その実現に努力させていただきたいと思います。
 なお、渡里さんにさっきお話し申し上げたように、保育所の問題は当面の問題でございますので、私どもこのエンゼルプランの充実等を図ると同時に、保育所だけではもちろんございませんけれども、予算でできることは実現をさらに促進してまいりたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【岩男座長】 ありがとうございました。建設大臣、よろしくお願いいたします。

【建設大臣】 すばらしい御提言をいただきましてありがとうございました。
 建設省におきましても従来よりゆとりのある持ち家の取得に対する支援、それから家族向けの良質な賃貸住宅の供給の促進あるいは公園などの子どもの遊び場の整備等を行っていっているところでございます。やはり大きなお家に育った子どもほど大きな人物になるというようなことをおっしゃっている方も大勢いらっしゃるようですが、私は確かにそうだろうと思いまして、なお努力したいと思っております。
 また、最近、新聞でも報道されておりますが、税金の軽減によって持ち家を促進するということで住宅ローン控除制度を創設することといたしておりますし、子育て世帯の方々の住宅取得の促進にも金融公庫では特別な枠を構えておりますので、そういう角度から努力していきたいと思っております。
 それから、先ほど、2、3の先生から御意見もございましたが、都心の住居の一層の推進、その中にありましても、今、勤務に2時間かかる人などが大勢いらっしゃる。こういうことでは女性の方などは特にお疲れになってしまうわけですから、職住近接──職場と住宅を近接するというようなことをやっていく、そして近くに保育所もある。
 先般新聞で見ましたけれども、駅のところに保育所をつくられたそうでございまして、お母さんが勤務に行くときに駅を通るわけですから、そこの駅にお子さんを預けて、帰るときにお子さんと一緒に帰るという、本当にすばらしいことだろうと思うわけでございますが、住宅の立場から努力していきたいと思います。どうもありがとうございました。

【岩男座長】 ありがとうございました。それでは通産大臣お願いいたします。

【通産大臣】 今回の皆様の提言を真摯に受けとめまして、通産省としてもSOHOの推進など、関係省庁、企業等とも協力しながら実現に努力してまいります。また、少子化が経済面に及ぼすマイナスの影響を少なくするため、生産性の向上など、我が国産業の再生にも尽力してまいる所存でございます。
 加えまして、少子化を前提とした対策にとどまらず、国民が将来に希望を持って安心して子どもを産めるよう、我が国経済の持続的発展を確保する政策も長期的には少子化対策として重要であると認識しております。

【岩男座長】 ありがとうございました。
 それでは、最後になりましたけれども、文部大臣お願いいたします。

【文部大臣】 きょうは教育の面からも貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。具体的な御提案をありがたく思っております。
 実は、中央教育審議会でも、教育の面から少子化の問題について審議していただくことになっております。第1回が先日行われましたが、そこで実は皆様方の有識者会議の審議状況を御紹介させていただき、中央教育審議会においても参考にさせていただくことにいたしました。
 文部省といたしましては、皆様の非常に真剣な御議論の結果といたしまして、今日いただきました御提案を大いに参考にしながら、さらにまた中央教育審議会で議論を積み重ねまして、少子化に対応した適切な教育施策を推進したいと思っております。また、いろいろな御意見がありましたら、ぜひお教えいただければ幸いでございます。

【岩男座長】 ありがとうございました。
 以上をもちまして、本日の議事は終了いたしました。
 委員の皆様方には本当に熱心に取り組んでいただきまして、心から感謝申し上げます。おかげさまで大変有意義な提言がまとめられたと思っております。また、事務局が大変よくサポートしてくださいましたことを加えてここでお礼申し上げておきたいと思います。
 今後、この提言の内容の実現に向けて、委員の皆様それぞれのお立場でいろいろ御尽力をいただきますよう、重ねてお願いしたいと思います。
 本当に長い間、お忙しい中、ありがとうございました。
 総理にも大変お忙しい中、ありがとうございました。

【総理】 冒頭御挨拶いたしましたが、改めてご提言いただきましたことに感謝申し上げます。関係省庁はもとより内閣としても全力で取り組ませていただきたいと思っております。
 ちょっと教えてもらいたいんですが、若干、北欧で出生率が上がっているかどうか……、これは原因はだれか調べていただいているんですか。

【岩男座長】 スウェーデンが上がっておりますのは落合さんあたりが詳しいんじゃないかと。

【総理】 そうですか、後でまた教えてください。どういうところに原因があるのか、一般的には北欧はタックスの問題などいろいろあって出生率は下がっているんだろうと思っていたんですが……。

【岩男座長】 男女共同参画が進んで出生率が回復したという……。

【総理】 それから、鈴木先生、大変いいお話だと思うんですね。ペシミズムばっかりがこの世の中にあるんですが、やっぱりいいことを書いてもらう。漠然たる不安は芥川龍之介だけで終わって、もっと明るいものをやらなきゃだめじゃないかと私は思うんですね。
 実は、経済全体も非常に不安感ばかりなんですけども、最近、新聞も明るいことを書いたり、景気のいい話をすると売れるというんですね。ですから、そういうところだけ特集した新聞まで最近は出始めました(笑)。
 もちろん人間は悲劇もあれば喜劇もあるし、いろいろあるんでしょうけれども、やはり明るい展望に立ってのお話もあれば、世の中それに向かって進むんじゃないかと思います。
 政府としては、御提言いただきましたことを十分に受けとめて真剣に取り組んでいきたいと思っております。改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。