知的財産戦略本部会合
議事録

日時:平成27年6月19日(金)7:45〜8:16
場所:官邸4階 大会議室


○山口知的財産戦略担当大臣 おはようございます。それでは、時間でございますので、ただいまから「知的財産戦略本部会合」を開催いたします。
 皆様方には、お忙しい中、お集まりいただきましてまことにありがとうございます。
 本日は、原山本部員が欠席でございます。
 また、安倍総理は途中からの御出席となります。
 本日の議題は「知的財産推進計画2015」についてであります。
 4月の本部会合での総理指示を受けまして、検証・評価・企画委員会での審議を踏まえ「知的財産推進計画2015」(案)を取りまとめました。
 計画本文は資料2、工程表は資料3のとおりでございます。
 資料1の概要に沿いまして、そのポイントを御説明いたします。
 推進計画2015の全体構成でありますが、総理から御指示をいただいた重点3本柱を第1部に、それ以外の重要8施策を第2部としております。
 重点3本柱のうち、地方における知財活用の推進につきましては、中小企業の知財戦略を強化するため、地域での相談機能・連携体制の強化、地域中小企業と大企業、大学の知財連携強化のため、橋渡し・事業化支援機能の強化、農林水産業の知財戦略強化などの施策を「地方知財活用促進プログラム」として推進することを盛り込んでおります。
 「知財紛争処理システムの活性化」につきましては、権利の安定性の向上、証拠収集手続の改善、ビジネスの実態を反映した損害賠償額の実現など、知財紛争処理システムの機能強化のための総合的検討を行うほか、中小企業・地方当事者の知財訴訟遂行への支援や、知財訴訟についての情報公開・海外発信の拡充などの取り組みを盛り込んでおります。
 4ページですが、「コンテンツ及び周辺産業との一体的な海外展開の推進」につきましては、海外展開しやすいコンテンツの制作・確保や、海外への継続的発展のための支援、これに加えまして、コンテンツと周辺産業など非コンテンツ産業とが、業種の垣根を越えて連携をするための横断的組織「官民連携プラットフォーム」を創設することなどを盛り込んでおります。
 なお、一昨日、私が座長を務めております「クールジャパン戦略推進会議」で取りまとめました「クールジャパン戦略官民協働イニシアティブ」、参考資料1、2として配付をさせていただいておりますが、ここにおきましても、このプラットフォームを核に官民が連携してクールジャパン戦略を推進することとしております。
 5ページの重要8施策につきましては、世界最速・最高品質の審査体制の実現や、国際標準化・認証への取組、デジタル・ネットワークの発達に対応した法制度等のあり方についての検討、アーカイブの利活用促進に向けた連携・横断の促進や、著作権制度の整備、インターネット上の国境を越えた侵害対応など、国際的な知財の保護・協力の推進、知財人財の戦略的な育成・活用などを盛り込んでおります。
 次に、検証・評価・企画委員会の両座長から御発言をお願いいたしたいと思います。大体1分ぐらいでお願いをできたらと思っておりますが、まずは、中村座長、お願いいたします。

○中村検証・評価・企画委員会座長 コンテンツを担当いたしました、中村でございます。
 最重要課題であるコンテンツの海外展開は、政府の施策が厚みを帯びてきたこともありまして、産業界も本腰を入れるようになりました。
 東京オリンピック・パラリンピックで海外の注目が集まるということもチャンスと受けとめております。
 ただし、成果があらわれるのは、まだ、これからのことであります。施策を継続して、成果を上げていく必要があります。
 特に、他の産業との連携が重要です。コンテンツに食、ファッション、観光などを連携した総合戦略が求められます。省庁の縦割り構造を乗り越えて対応をしていただきたいと存じます。
 このたび、クールジャパン戦略推進会議が取りまとめた戦略とも連動して、政府一体となった取り組みをお願いいたします。
 以上です。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
 次に、渡部座長からお願いいたします。

○渡部検証・評価・企画委員会座長 産業財産権を担当させていただきました渡部でございます。
 まず大事なのは中小企業の減少を食い止め、開業を促進するということです。
 優れた技術を保有し、世界に挑んでいる地域中小企業というのは、決して少なくはございません。また、大学や大企業の知財を活用して商品化をするという事例も最近は増えております。
 今回の推進計画では、これら中小企業の優れた技術を知財としてしっかり守り、それを生かしていく。さらに、大学や大企業との効果的な連携を支援する。そういう施策を盛り込んでおります。第一にこれをしっかり進めていただきたいと存じます。
 もう一つ大事なのが、知財紛争処理システム、裁判でございます。知財を侵害されても証拠が被告人に握られていて、なかなか勝てない。勝っても裁判費用さえ払えないというような現状がございますので、紛争処理システムを見直して、知財を武器とする企業、これを後押ししていくというような施策を進めていかなければならないと思います。
 政府においては、これらの施策を、現在、中小企業は385万社ありますが、何社に、いつまで、どのような形で届けさせるというような目標を決めて実行していただきたいと存じます。
 ありがとうございました。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
 それでは、意見交換に移らせていただきますが、最初に各閣僚から御発言をいただきますが、30秒程度でお願いをできたらと思っております。
 それでは、まずは、下村文部科学大臣、お願いいたします。

○下村文部科学大臣 文部科学省におきましては、大学等の保有する知的財産の活用を含めた技術移転・事業化を支援する「マッチングプランナー」を積極的に各地域に派遣するとともに、海賊版対策やコンテンツの海外移転への取組、アーカイブの利活用促進に向けた著作権制度の整備など、本計画に盛り込まれている内容について、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
 続きまして、宮沢経済産業大臣、お願いいたします。

○宮沢経済産業大臣 我が国企業が保有する技術を利益につなげていくためには、技術の秘匿化、権利化、標準化などを総合的に組み合わせた知的財産戦略の推進が重要です。
 経済産業省としても「知的財産推進計画」に記載された中小企業からの相談をワンストップで受け付ける全国47都道府県にある「知的総合支援窓口」での支援強化や、地域における巡回相談などの実施、知財紛争で負けない「質の高い権利」を世界で最も早く付与する特許審査体制の整備、現地化・プロモーション支援事業などによるコンテンツを核とした産業横断的な海外展開支援、中堅・中小企業も含めた官民連携による戦略的な標準化の取り組みの推進、これらを通じて、我が国の知的財産政策を着実に実施してまいります。
 以上です。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
 それでは、甘利経済再生担当大臣、お願いいたします。

○甘利内閣府特命担当大臣 産業競争力会議で検討してきた大学改革では、大学の経営力強化に向けて、企業から資金を獲得し、交付金依存を減らすことが重要と位置づけております。企業との共同研究を1つの柱に掲げております。
 ところが、大学が企業に求める知財の不実施補償が障害となって、企業と大学の共同研究が進まないとの指摘もあります。
 不実施補償というのは、企業と大学が共同して開発し、取得した特許について、大学が持っている半分の権利をパートナー以外に渡さないということに対して、パートナー企業から補償金を取るということであります。
 特許出願の在り方や、不実施補償の実態等を調査し、大学と企業の共同研究の促進に向けた望ましい契約の在り方について、大学、企業双方の理解を図るべく働きかけを行うことを含め、知的財産戦略本部が司令塔となって実行をお願いしたいと思います。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
 続きまして、石破地方創生担当大臣、お願いいたします。

○石破内閣府特命担当大臣 ローカル・アベノミクス実現のためには、地域における知的財産の活用などにより、イノベーションを促進し、各企業や産業の稼ぐ力の向上を図ることが重要であります。
 先般、地方創生に向けた主要な施策を深化させるために取りまとめた報告書におきましても、戦略的な知財マネジメントの強化等により、地域の特色に応じた、新産業・新事業の創出に取り組むべき旨が述べられております。
 これを踏まえまして、策定されます、まち・ひと・しごと創生基本方針2015の下、関係省庁と緊密に連携し、知的財産の積極的な活用に向けた環境整備に努めてまいります。
 以上です。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
 次に、林農林水産大臣、お願いいたします。

○林農林水産大臣 この資料の束の最後に、参考資料の3というのをつけておきましたので、ご覧になっていただきたいと思います。
 このマークでございますが、これが、地理的表示産品のGIマークでございます。富士山の上に日の丸でございますが、この特産物になっております食品・農林水産物の名称、これを知的財産として保護する地理的表示保護制度が6月1日からスタートしました。年内に最初の産品が登録できるように作業が進んでいるところでございます。
 我が国の高品質な食品、農林水産物の生産販売の拡大、消費者の利益の保護に活用されますように、農林水産省としての知的財産戦略を5月28日に取りまとめました。
 今後、この戦略に基づいて施策を展開していきたいと思っております。
 以上です。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
 次に、高市総務大臣、お願いいたします。

○高市総務大臣 ありがとうございます。
 総務省としても、地方の創生やビジット・ジャパン戦略に貢献すべく、放送コンテンツを軸に、周辺産業と連携を図りながら、海外展開を推進することが大変重要だと考えており、ASEANなどを対象とする取り組みを重点的に進めております。
 先般、私自身がタイを訪問しました際にも、企業や自治体を含む幅広い関係者とタイの企業とのマッチングを実施しました結果、関係者間で具体的な話し合いも開始されたと聞いております。今後も、一層戦略的な取り組みを進めてまいります。
 また、IoT社会の実現に向けた取り組みも重要であり、我が国主導でIoTに関する国際標準を獲得するべく、あわせて戦略的に取り組んでまいります。
 以上です。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
 次に、有識者の本部員の皆様方から御発言をお願いしたいと思います。
 閣僚は30秒でしたが、皆様方は、1分程度でお願いをできたらと思っております。
 それでは、前回とは逆の順番で、最初に宮川本部員からお願いいたします。

○宮川本部員 弁護士の宮川と申します。
 重点政策3本柱の1つといたしまして、知財の紛争処理システムの活性化と機能強化を取り上げていただきましたことは、これからのグローバルな日本の知財戦略にとりまして、誠に意義深いものだと考えております。
 今年で設立10周年を迎えました知財高裁を含めまして、日本の司法機関の信頼性や公平性は、以前にも増して世界的に高い評価を得ていると認識しておりますが、今後において、更なるシステムの活性化と機能強化を図る御検討におきましては、逆にこれが我が国、日本のイノベーション創出を阻害することにならないように是非御配慮いただきまして、権利者、そして、被告、侵害者と言われている方の双方にとりまして、公平なシステムになりますよう、期待しております。
 また、地方あるいは中小企業を含めました国民の紛争処理システムへのアクセスを向上させる施策につきましては、日弁連や弁護士知財ネットの一員として、これからも協力していきたいと思っております。
 以上です。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
 次に、奥山本部員、お願いいたします。

○奥山本部員 ありがとうございます。
 大変立派な計画ができたと思っております。事務局の御努力に感謝します。
 私が申し上げたいのは、4点ほどございまして、まず、知財訴訟制度の改革は、究極的な課題に手がつくということで、大変喜ばしいと思っております。日本の知財訴訟制度がグローバルな視点で最適化されていかないといけません。現行の日本法の文脈に縛られることなく、ここでは大胆な改革が求められると考えています。
 2つ目は、今回まとまった計画の先のテーマを考えますと、1つはよくなっている特許庁の審査の中でも特許法36条の要件、つまり、特許がある範囲で取れるとして、どこまでの記載が特許出願に求められるのかという点を、後からの研究成果の提出と絡めて見直していただきたいと思います。
 現在、公表されている審査基準がございますが、それをユーザーの代表、大企業と中小企業、弁理士を含めて意見を聞いた上で、定期的に見直していける仕組みが必要でないかと思います。
 3つ目に、国際的な状況を考えますと、やはり、質のよい審査官の増員ということを真剣に考えていただきたいと思います。
 最後に意匠権の強化です。今年の5月13日から意匠の国際出願ができるようになって、それ自体は大変歓迎するべきことですが、他方、日本の意匠出願は、ピークから半分になって、政策的に極端に件数を増やしてきている中国は言うに及ばず、韓国の件数をも下回っております。意匠制度の使い勝手の改善を日本企業の国際競争力を高めるという側面からぜひ推進していただきたいと思います。
 以上です。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
 続きまして、竹宮本部員、お願いいたします。

○竹宮本部員 大変細かいところまできちんとまとめられた計画になっているかと思います。
 私が申し上げたいのは、アーカイブについてと、著作権についてなのですけれども、アーカイブするということが進められるということで、大変ありがたいことなのですけれども、利活用の問題にどうしても著作権がかかわってくるということで、著作者はどうなのだろうということをもっと考えていただけたらと思っております。
 そして、著作者の意見を、死後も残せる形があればと思います。著作物を残すときに、それをつけ加えるという形で残せたら、もっとうまい活用の仕方があるのではないか。守りたい人もいれば、オープンにした人もいるわけです。そういうことを考えて、利活用の仕方をもっと進めて、踏み込んでいっていただきたいと思っています。
 利活用するために、最初のキックオフというのは、きちんと決められた形でなくてもよいから、走ってみて、ほかからの意見をルールとして入れていくという形につくり上げていったらいいのではないかと思っています。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、川上本部員、お願いいたします。

○川上本部員 先日の会議でも発言させていただいた内容ですけれども、知財のグローバル化に伴い、知財の訴訟もグローバル化することにどうやって対策をしていくのかというのが重要だと思います。
 国内企業の法務部というのは、大体どの企業でも、今日一日が無事に過ぎればいい、できれば、一生何ごとも起こらなくてもいいと、そう考える人が、大体法務部に入ってくることが多いと思うのですけれども、要するに、闘おうとしない、実践経験が不足しているというのが、日本の法務部の実情だと思います。
 特許権についても、特許件数を増やすことばかりやっていて、実際の権利行使をしたことがないので、いざ訴訟になると、ちゃんとした権利取得ができていないというのが実情です。
 米国のような訴訟社会にすることが、必ずしも私はいいと思いませんけれども、グローバル化において、日本が、このままでは国内から一方的に利益を吸い上げられるという、そういう構造になりかねないと思います。そのためには、もっと訴訟を普通にやるような環境作りが必要だと思います。
 実は、私の会社でも、以前から法務部員には、年間1件は必ず訴えろと、年間10件は必ず内容証明を出せと、これは、ノルマで、数値目標としてやれということを言っているのですけれども、これは、冗談と思われて、実行してもらえていないのです。
 ですが、海外の権利行使に強い企業というのは、実際にそれをやっています。本当に数値目標を持ってやっていますというのが国際競争の実態だと思います。ですので、これは、半分冗談ですけれども、日本においても年間1件企業が訴訟するのを国が補助金を出すとか、そうしない会社からは特許権を取り上げるとか、そういったぐらいのことをやっていただいて、国の意識改革をやっていただきたいなと思います。
 以上です。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
 続きまして、迫本本部員、お願いいたします。

○迫本本部員 知的財産の活性化が国益に資するという観点から、こういうような計画が進められることは、本当にすばらしいことだと思います。本当にありがとうございます。
 コンテンツの海外展開という点から考えた場合に、強いコンテンツを作るという根っこは、やはり民間のいい意味での山っ気といいますか、世界中をうならせるぞとか、大儲けするぞみたいな、いわば民間の自助努力が根幹だと思っております。
 それに対して、国に助成を求めるべきではないというのが私の意見でありまして、個別の助成ですと、どうやって選ぶのかと、それがうまくいかなかったら国の負担の無駄遣いになりますし、うまくいったら、他の選ばれなかった人たちの民業圧迫ということにもつながると思います。
 そういう意味では、やはりそれは海外のマーケットが選ぶべきだというのが私の意見でして、したがって、国は、そういうことが発信し続けられるような制度を作るということが重要だと思います。地味ではありますけれども、寄付をしやすく、出資しやすくするとか、税法上、会計上の繰り延べを認めるという形で、制度的な基盤を整えて、本当に面白いものをつくった人は、個人であろうが、企業であろうが、どういうところでもその恩恵に被られるという意味で、マーケットメカニズムがうまく働くような、価値中立的な制度というのができれば、日本人は必ずすばらしいコンテンツを作るのではないかと確信しております。
 そういう意味で、資料2の25ページの最後のところに、制度的課題の検討というのを入れていただいたのですけれども、これを地道ではありますけれども進めていただければ、必ず国に貢献できるようなコンテンツ、海外展開のできるコンテンツというものができるのではないかと、そして、国の負担も非常に少なく済むのではないかと思っております。
 以上です。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
 続きまして、五神本部員、お願いいたします。

○五神本部員 東京大学の五神です。
 先ほど、下村大臣、甘利大臣からも言及がありましたように、知財の創出、活用を促進していく上で、大学の機能を強化していくことは極めて重要であります。私も4月に総長に就任してから、東京大学の産学連携の10年間の活動を精査し、具体的な計画の設計を進めているところです。
 総理も先ごろシリコンバレーの視察をされたとうかがっておりますけれども、ベンチャー、大学、ベンチャー・キャピタル、大企業の四者の連携がシリコンバレーのイノベーションを支えています。
 東京大学では、この10年間の間に合計1兆円以上の時価総額の、200社を超えるベンチャーが出てきています。私の想像以上に、かなり進んできたと思いますが、シリコンバレーに比べると、まだまだ桁違いの規模です。
 ただ、中身を見ますと、理系だけではなく、文系も含めた多様な若手の人材が、その活動に参加しています。若手人材の中に起業家精神はかなり芽生えているなと思っており、日本の若者のポテンシャルは十分あると認識しています。大学改革を進める中で、これを加速していきたいと思っているわけですが、米国と比べますと、この四者のうち大企業との連携が極めて脆弱であることが課題です。その原因としては、甘利大臣から指摘がありましたような知財の扱い、あるいは不実施補償などの問題があります。
 産学の本気の共同研究を推進しまして、その成果の事業化を企業だけに任せるのではなくて、大学もリスクをとって、大企業と共同でベンチャー創出に携わっていくというような活動を新たに強化していきたいと考えています。産業界との信頼関係を強め、経団連とも連携して進めていきたいと思います。
 それによって、日本全体として地域のイノベーション創出に貢献し、大学を役立てていきたいと考えています。よろしくお願いします。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
 次に、日覺本部員、お願いいたします。

○日覺本部員 経団連知財委員長の日覺でございます。
 「知的財産推進計画2015」には、数多くの重要施策が盛り込まれております。ぜひ積極的に検討、実施を進めていただくようお願いいたします。
 その上で、3点簡単に申し上げます。
 まず、1点、経団連では職務発明制度の見直しと営業秘密の保護強化が、我が国企業の知財戦略にとって極めて重要と考え、特許法と不正競争防止法の改正をお願いしてまいりました。両法の改正案は、現在、国会で審議中です。産業界としては、早期成立を強く期待するとともに、イノベーション創出に一層努めてまいる所存です。
 第2点、地方創生の実現に向け、地方における知財活用の推進は重要な課題となっています。その観点から、経団連としても、中小企業と大企業との連携に関する協力方策について検討してまいりたいと考えております。
 3点目ですが、イノベーション創出のためには、ベンチャー企業や大学と大企業との連携も重要です。経団連としても、具体策を講じていく所存ですので、よろしくお願いします。
 以上です。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
 続きまして、山田本部員、お願いいたします。

○山田本部員 前回の会議で、地域の中小企業が抱える知財の問題は、知財をビジネスとしてどのように活用したらよいかわからない点にあり、ビジネスに直結したアイデアまで相談できるアドバイザーの育成が必要だと申し上げました。
 今回の計画では、その内容がかなり網羅されていると思っています。今後、これを実行ベースに移した場合、窓口の連携強化や支援人材育成をどのように進めるのかの方法論がポイントになります。
 本計画の1つの目的は、地方中小企業の知財戦略強化ですので、実行計画を立てる各省庁の方には、ぜひ地方の中小の現場を見に行き、できれば若い方で、ちょっと長い間いていただいて、現場で実際に起きている問題点を把握し、成果が出る施策になるよう具体化していただきたい。
 中小企業が特許、商標等を出願できたとしても、その後、売れなければ意味がありませんので、計画の成果をはかる指標として、特許の件数や相談件数だけではなく、新製品の開発案件数、また、その売り上げや販売総数の増加率等の指標も今後検討をいただきたいと思います。
 また、今回見直された国際標準化は、今までは1社では出せず、その業界でコンセンサスをとらなければ申請できない状況でしたので、非常によい方向性だと思っています。
 ぜひ、地方にも国際標準化を推進できる人材を、教育及び配置していただければと思います。
 以上です。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
 続きまして、小林本部員、お願いいたします。

○小林本部員 資料1の重要8施策の5番目にあります、デジタル・ネットワーク時代を支える知財戦略について申し上げたいと思います。
 今や、産業は製造業やサービス業といったコンベンショナルな区分よりも、むしろアトム、すなわち現物からなるリアル経済と、ICT、すなわちビットを中心としたサイバー経済からなる複合構造になっております。日本が得意としてきた安く、品質のよい製品をつくりさえすれば売れる時代は既に終わりまして、単に物ではなく、IoT、AI、ビッグデータ、3Dプリンティングなどを活用した量から質への急激な産業構造の転換が起きております。アトム・トゥ・ビット、そして、ビット・トゥ・アトムへの融合や転換こそが、世界での次の最大の主戦場になると思われます。世界最高の知財立国を目指すための今後の最重要課題であります。守りとしてのサイバーセキュリティー対策と同時に、攻めの政策、言うなれば、サイバー経済の発展やリアル経済との融合を後押しするためのサイバーフィジカルシステム、すなわちデータを核とするビジネスモデルの構築のためのルールや、国の体制づくりを同時に進めていただきたいと思います。
 また、大学等において知的財産マネジメントとICT双方に精通した人材を育成すべきであると考えます。
 最後に、総合科学技術イノベーション会議及び産業競争力会議とも平仄をあわせて、具体的な施策と、これを具体化する時間軸を明確にするとともに、リアルとサイバーの融合や、その進化に応じたルールや政策を柔軟に変えていくことも必要だろうと考えます。
 以上でございます。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございました。
 それでは、時間もまいりましたので、議論はここまでとさせていただきたいと思います。
 それでは「知的財産推進計画2015」につきましては、本案のとおり、知的財産戦略本部決定といたしたいと思いますが、よろしゅうございますか。

(「異議なし」と声あり)

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
 それでは、本案のとおり決定をさせていただきます。
 最後に本部長であります、安倍総理から締め括りの御挨拶をいただきたいと思いますが、プレスが入室しますので、しばらくお待ちください。

(報道関係者入室)

○山口知的財産戦略担当大臣 それでは、総理、お願いいたします。

○安倍内閣総理大臣 ただいま「知的財産推進計画2015」を決定いたしました。
 地域中小企業の知財戦略の強化や、大企業、大学との連携強化のため、地方知財活用促進プログラムを推進していきます。また、我が国のコンテンツと周辺産業が業種の垣根を越えて連携して海外展開するため、意欲ある事業者のマッチングの場である官民連携プラットフォームを創設してまいります。クールジャパン戦略もこれを核に、官民が連携して一層推進していただきたいと思います。
 さらに、我が国の知財紛争処理システムの機能強化に向け、証拠収集手続や損害賠償額の在り方などの総合的な検討を進めてまいります。また、人工知能、3Dプリンティングの普及が進むなど、デジタル・ネットワーク時代にふさわしい著作権法などの法制度の在り方などの検討にもしっかりと取り組んでまいります。
 高度な技術、豊かな文化コンテンツなど、我が国の知的財産を活用し、国際競争力を高め、成長を確かなものとするよう、政府一丸となって知財戦略を進めていく考えでございますので、何とぞどうぞよろしくお願いします。

○山口知的財産戦略担当大臣 ありがとうございます。
 それでは、プレスの方は御退席をお願いします。

(報道関係者退室)

○山口知的財産戦略担当大臣 ただいま、安倍総理から御発言がございましたとおり、本日、決定した「知的財産推進計画2015」、この着実な推進に、関係閣僚及び有識者本部員の皆様方の御協力をよろしくお願いいたします。
 以上で、知的財産戦略本部を閉会といたします。
 本日は、ありがとうございました。